説明

スピロ−オキシインドール化合物のエナンチオマーおよび治療剤としてのその使用

本発明は、式(I)の化合物:


の(S)−エナンチオマーまたはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグに関する。この(S)−エナンチオマーは、電位開口型ナトリウムチャネルの調節によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態(例えば、疼痛)の処置に有用である。別の局面において、本発明は、哺乳動物の細胞における電位開口型ナトリウムチャネルを介してイオンフラックスを低下させる方法を提供し、ここで上記方法は、上記細胞と、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)とを接触させる工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、スピロ−オキシインドール化合物の特定のエナンチオマー、具体的には、哺乳動物(好ましくは、ヒト)における、電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態を処置するためのヒトもしくは脊椎動物の治療剤におけるエナンチオマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
特許文献1(その開示は、全てが本明細書に参考として援用される)は、特定のスピロ−オキシインドール化合物、特に、1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン、すなわち、以下の式(I)の化合物:
【0003】
【化1】

を開示する。
【0004】
これら化合物は、電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかもしくは緩和される、哺乳動物(好ましくは、ヒト)における疼痛のような疾患もしくは状態を処置するにおいて有用であるとそこで開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/110917号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、以下の式(I)の化合物:
【0007】
【化2】

の上記(S)−エナンチオマーおよび上記(R)−エナンチオマーが、電位開口型ナトリウムチャネル活性の阻害の有効性に差異を示すという発見に関する。
【0008】
よって、一局面において、本発明は、1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンの(S)−エナンチオマー、すなわち、以下の式(I−S):
【0009】
【化3】

を有する(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。好ましくは、上記(S)−エナンチオマーは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない。
【0010】
別の局面において、本発明は、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)、および1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)を、薬学的に受容可能なキャリア中でかつ動物(好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒト)に投与される場合に、疼痛に関連した疾患もしくは状態を処置するために有効な量で含む薬学的組成物に関する。
【0012】
別の局面において、本発明は、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)、および1種以上の他の既存の治療剤と組み合わせて、あるいは既存のもしくは将来の薬物治療の効力を増大させるか、または既存のもしくは将来の薬物治療と関連した有害事象を減少させるためにその任意の組み合わせとして、薬学的治療を提供する。一実施形態において、本発明は、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)と、本発明において列挙された適応症のための確立されたもしくは将来の治療剤とを合わせた薬学的組成物に関する。
【0013】
別の局面において、本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において疾患もしくは状態を処置する方法を提供し、ここで上記疾患もしくは状態は、疼痛、鬱病、心血管疾患、呼吸器疾患、精神医学的疾患、神経学的疾患および癲癇発作、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され、ここで上記方法は、治療上有効な量の(S)−エナンチオマー(上記に示されるとおり)、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグを投与が必要な哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0014】
別の局面において、本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)における疼痛の処置の方法を提供し、ここで上記方法は、投与が必要な哺乳動物に、治療上有効な量の上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)を投与する工程を包含する。
【0015】
別の局面において、本発明は、疾患、状態、もしくは障害(ここで1種以上の電位開口型ナトリウムチャネルタンパク質(Na1.1、Na1.2、Na1.3、Na1.4、Na1.5、Na1.6、Na1.7、Na1.8、もしくはNa1.9の電位開口型ナトリウムチャネルが挙げられるが、これらに限定されない)の活性化もしくは活動亢進が、上記疾患、状態もしくは障害に影響を及ぼす)を処置するかもしくはその重篤度を軽減する方法を提供し、上記方法は、投与が必要な哺乳動物に、治療上有効な量の上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)を投与する工程を包含する。
【0016】
別の局面において、本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)における、電位開口型ナトリウムチャネルの活性と関連する疾患もしくは状態を処置する方法を提供する。よって、本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)における、電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態を処置する方法を提供する。このような疾患もしくは状態の例としては、任意の性質および原因の疼痛、HIVと関連した疼痛、HIV処置誘導性神経障害、三叉神経痛、疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、発作性エピソード性疼痛障害(Paroxysmal Extreme Pain Disorder)(PEPD)、eudynia、熱感受性、サルコイドーシス、過敏性腸症候群、クローン病、多発性硬化症(MS)と関連する疼痛、MSと関連する運動障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、掻痒症、高コレステロール血症、良性前立腺過形成、末梢神経障害、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、発作性ジストニー、周期性麻痺、筋無力症症候群、ミオトニー、悪性高体温、嚢胞性線維症、偽性アルドステロン症、横紋筋融解症、双極性鬱病、不安、統合失調症、ニューロンもしくは筋肉の過興奮性を促進する殺虫剤もしくは他の薬剤への曝露に起因する病気、家族性肢端紅痛症、二次性先端紅痛症、家族性直腸痛、家族性顔面痛、片頭痛、頭痛、神経痛様頭痛、家族性片麻痺性片頭痛、頭部痛(cephalic pain)と関連した状態、副鼻腔性頭痛(sinus headache)、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経損傷、癌、癲癇、部分的および全身的な強直発作、不穏下肢症候群、不整脈、線維筋痛症、発作(stroke)・緑内障もしくは神経外傷によって引き起こされる虚血状態下での神経保護、頻拍性不整脈、心房細動および心室細動が挙げられるが、これらに限定されず、ここで方法は、投与が必要な哺乳動物に、治療上有効な量の上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)を投与する工程を包含する。
【0017】
別の局面において、本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)における疾患もしくは状態を、哺乳動物における電位開口型ナトリウムチャネルを介したイオンフラックスの阻害によって処置する方法を提供し、ここで方法は、投与が必要な上記哺乳動物に、治療上有効な量の上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)を投与する工程を包含する。
【0018】
別の局面において、本発明は、哺乳動物の細胞における電位開口型ナトリウムチャネルを介してイオンフラックスを低下させる方法を提供し、ここで上記方法は、上記細胞と、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)とを接触させる工程を包含する。
【0019】
本発明は、電位開口型ナトリウムチャネルの活性と関連する疾患もしくは状態の処置における医薬組成物の調製における、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)の使用をさらに提供する。よって、本発明は、電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態の処置における医薬組成物の調製における、上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ(上記のように、好ましくは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない)の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために含められる。本発明は、本明細書に示される特定の実施形態の詳細な説明と合わせて、これら図面のうちの1つ以上を参照することによってよりよく理解され得る。
【図1】図1は、本明細書中の生物学的実施例1のグアニジンインフラックスアッセイにおける上記(S)−および(R)−エナンチオマーの濃度応答関係を示す。
【図2】図2は、本明細書中の生物学的実施例3の炎症性疼痛モデルにおける経口投与での上記(S)−および(R)−エナンチオマーの効力の比較を示す。
【図3】図3は、本明細書中の生物学的実施例3の神経障害性疼痛モデルにおいて局所投与での上記(S)−および(R)−エナンチオマーの効力の比較を示す。
【図4】図4は、生物学的実施例7に記載されるインビボアッセイでの未処置マウスにおけるヒスタミン誘導性掻痒の時間経過を示す。データは、平均値±SD 掻痒発作(itching bout)として表される。
【図5】図5は、8%(w/v)の上記(S)−エナンチオマーを含む局所に適用される軟膏剤のヒスタミン誘導性掻痒に対する効力を示す。データを、平均値±SD 掻痒発作として表される。
【図6】図6は、局所ではなく経口投与される場合のヒスタミン誘導性掻痒に対する上記(S)−エナンチオマーの効力を示す。データは、平均値±SD 掻痒発作として表される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、そうでないと特定されなければ、以下の用語は、示された意味を有する。
【0022】
「痛覚脱失」とは、通常は疼痛のある刺激に対する応答において、疼痛がないことをいう。
【0023】
「異痛」とは、通常は無害な感覚(例えば、圧力もしくは軽い接触)に疼痛があると認める状態をいう。
【0024】
「エナンチオマー」とは、空間において異なる配置を有する2つの異なる異性形態で存在し得る不斉分子をいう。エナンチオマーを示すかもしくはこれに言及するために使用される他の用語としては、「立体異性体」(キラル中心の周りに異なる配置もしくは立体化学に起因する;全てのエナンチオマーは、立体異性体であるが、全ての立体異性体がエナンチオマーであるわけではない)もしくは「光学異性体」(異なる方向に平面偏光を回転させる異なる純粋なエナンチオマーの能力である、純粋なエナンチオマーの光学活性に起因する)が挙げられる。それらは、対称な平面を有しないので、エナンチオマーは、それらの鏡像と同一ではなく;2種のエナンチオマー形態で存在する分子はキラルであり、このことは、上記分子が「左手」形態および「右手」形態で存在すると考えられ得ることを意味する。有機分子におけるキラリティーの最も一般的な原因は、4つの異なる置換基もしくは基に結合した四面体炭素の存在である。このような炭素は、キラル中心、もしくは不斉炭素原子(stereogenic center)といわれる。不斉炭素原子での原子(もしくは配置)の三次元配置を示す方法は、最も低い順位の基が、仮想観測者から離れて配向した場合の基(複数)の配置の順位をいうものである:残りの3種の基の、より高い順位からより低い順位への配置が時計回りである場合、不斉炭素原子は、「R」配置(もしくは「D」配置)を有し;配置が反時計回りである場合、不斉炭素原子は、「S」配置(もしくは「L」配置)を有する。
【0025】
エナンチオマーは、同じ実験化学式を有し、一般に、それらの反応、それらの物理的特性、およびそれらの分光特性においては化学的に同一である。しかし、エナンチオマーは、他の不斉化合物に対する異なる化学反応性を示し、不斉物理障害(asymmetric physical disturbance)に対して異なって応答する。最も一般的な不斉障害は、偏光である。
【0026】
エナンチオマーは、平面偏光を回転し得る;従って、エナンチオマーは、光学的に活性である。同じ化合物の2種の異なるエナンチオマーは、反対の方向に平面偏光を回転させる;従って、光は、仮想観察者にとって左側もしくは反時計回りに回転させられ得る(これは、左旋性(levarotatory)もしくは「l」、またはマイナスもしくは「−」)か、あるいは光は、右側もしくは時計回りに回転させられ得る(これは、右旋性もしくは「d」、またはプラスもしくは「+」である)。旋光度(+)もしくは(−)の記号は、R,S呼称には関連していない。2種のキラルエナンチオマーの等量の混合物は、ラセミ混合物もしくはラセミ化合物といわれ、右旋性形態および左旋性形態の混合物を示すために、記号(+/−)、もしくは接頭辞「d,l」のいずれかによって示される。式(I)の化合物は、本明細書に記載されるように、ラセミ化合物である。ラセミ化合物もしくはラセミ混合物は、ゼロ旋光度を示す。なぜなら、等量の(+)形態および(−)形態が存在しているからである。一般に、単一のエナンチオマーの存在は、ただ1つの方向に偏光を回転させる;従って、単一のエナンチオマーは、光学的に純粋といわれる。
【0027】
呼称「R」および「S」は、そのキラル中心(複数可)の周りの分子の絶対配置を示すために使用される。上記呼称は、接頭辞もしくは接尾辞として現れ得る;それらは、ハイフンによって上記エナンチオマー名から分けられていてもよいし、そうでなくてもよく;それらは、ハイフンでつなげられていてもよいし、そうでなくてもよく;そしてそれらは、括弧で囲まれていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0028】
呼称もしくは接頭辞「(+)および(−)」は、上記化合物によって平面偏光の回転の形跡を示すために、本明細書で使用され、(−)は、上記化合物が左旋性である(左に回転する)ことを意味する。(+)が接頭辞として付されている化合物は、右旋性である(右に回転する)。
【0029】
ラセミ化合物もしくはラセミ混合物に言及して使用される場合に「分割」もしくは「分割する」とは、その2種のエナンチオマー形態(すなわち、(+)および(−);(R)および(S)形態)へとラセミ化合物を分けることに言及する。
【0030】
「エナンチオマー過剰」もしくは「ee」とは、一方のエナンチオマーが他方より過剰に存在する生成物に言及し、各エナンチオマーのモル画分における絶対的差異として定義される。エナンチオマー過剰は、代表的には、他方のエナンチオマーに対する、混合物中に存在するあるエナンチオマーの割合として表される。本発明の目的のために、本発明の(S)−エナンチオマーは、該(S)−エナンチオマーが、80%より高い、好ましくは、90%より高い、より好ましくは、95%より高い、および最も好ましくは、99%より高いエナンチオマー過剰で存在する場合に、上記(R)−エナンチオマーを「実質的に含まない」とみなされる。
【0031】
本明細書で使用される化学的命名プロトコルおよび構造模式図は、ACD/Name Version 9.07ソフトウェアプログラムを使用して、I.U.P.A.C.命名システムの改変形態である。例えば、式(I)の化合物は、本発明の要旨において上記で示されるように、本明細書で1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンと称される。その対応する(S)−エナンチオマー、すなわち、式(I−S)の(S)−エナンチオマーは、発明の要旨において上記に記載されるように、本明細書で(S)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3-f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンと称される。その対応する(R)−エナンチオマー、以下の式(I−R)の(R)−エナンチオマー:
【0032】
【化4】

またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグは、本明細書で(R)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3-f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンと称される。
【0033】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下で、もしくは本発明の生物学的に活性な化合物に対する加溶媒分解によって変換され得る化合物を示すことを意味する。従って、用語「プロドラッグ」とは、薬学的に受容可能な本発明の化合物の代謝前駆物質に言及する。プロドラッグは、投与が必要な被験体に投与される場合に不活性であり得るが、インビボで、本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは、代表的には、インビボで迅速に変換されて、例えば血中での加水分解によって本発明の親化合物を生じる。プロドラッグ化合物は、しばしば、溶解度、組織適合性もしくは哺乳動物体における遅延放出という利点を提供する(Bundgard,H.,Design of Prodrugs(1985),pp.7−9,21―24(Elsevier,Amsterdam)を参照のこと)。プロドラッグの考察は、Higuchi,T.ら,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」,A.C.S.Symposium Series,Vol.14,において、およびBioreversible Carriers in Drug Design,Ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(これらはともに、その全体が本明細書に参考として援用される)において提供される。
【0034】
用語「プロドラッグ」はまた、任意の共有結合したキャリアを含むことを意味し、プロドラッグは、このようなプロドラッグが、哺乳動物被験体に投与される場合に、本発明の活性化合物をインビボで放出する。本発明の化合物のプロドラッグは、本発明の化合物に存在する官能基を、慣用的な操作においてもしくはインビボで、本発明の親化合物へ切断するというような方法で改変することによって調製され得る。プロドラッグは、本発明の化合物を含み、ここでヒドロキシ、アミノもしくはメルカプト基は、本発明の化合物のプロドラッグが哺乳動物被験体に投与される場合、切断して、それぞれ、遊離ヒドロキシ、遊離アミノ、もしくは遊離メルカプト基を形成するような任意の基に結合される。プロドラッグの例としては、アルコールのアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体、または本発明の化合物中のアミン官能基のアミド誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で開示される発明はまた、1個以上の原子を異なる原子質量もしくは質量数を有する原子で置き換えることによって同位体標識されている、本明細書で開示される(S)−エナンチオマーおよび(R)−エナンチオマーを含むことが意味される。上記開示される化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素の同位体(例えば、それぞれ、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、および18F)が挙げられる。これら放射標識された化合物は、例えば、上記電位開口型ナトリウムチャネルの作用部位もしくは作用様式、または上記電位開口型ナトリウムチャネル上の薬理学的に重要な作用部位に対する結合親和性を特徴付けることによって、上記化合物の有効性を決定もしくは測定するのを助けるのに有用であり得る。同位体標識された化合物は、薬物および/もしくは基質の組織分布研究において有用である。上記放射活性同位体である、トリチウム(すなわち、H)および炭素−14(すなわち、14C)は、これらの組み込みの容易さおよび整った検出手段に鑑みれば、この目的に特に有用である。トリチウム(H)を組み込む放射リガンドは、トリチウムが、崩壊の長い半減期を有し、放射が、比較的低エネルギーでありかつ放射性同位体が従って比較的安全であるので、電位開口型ナトリウムチャネルを含む膜とのリガンド結合研究に特に有用である。上記放射リガンドは、代表的には、トリチウムと、非標識化合物中の水素とを交換することによって調製される。特定のラセミ化合物の活性エナンチオマーおよび不活性エナンチオマーの同定は、リガンド結合アッセイの開発を容易にする。なぜなら、上記非標識不活性エナンチオマーは、上記トリチウム化活性エナンチオマーの非特異的結合を低下させるか、排除するか、もしくは別の方法で制御するために、上記アッセイに添加され得るからである。
【0036】
より重い同位体(例えば、重水素(すなわち、H))での置換は、より大きな代謝的安定性(例えば、インビボ半減期の増加もしくは必要とされる投与量の低減)から生じる、特定の治療的利点を提供し得、よって、一部の状況において、好ましい場合がある。
【0037】
陽電子放射同位体(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)での置換は、基質レセプター占有を調べるための陽電子放射断層撮影(PET)研究において有用であり得る。本発明の同位体標識されたエナンチオマーは、一般に、当業者に公知の従来技術によって、または以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用する、本明細書で記載されるプロセスに類似のプロセスによって、調製され得る。
【0038】
本明細書で開示される発明はまた、上記開示されるエナンチオマーのインビボでの代謝生成物を含むことが意味される。このような生成物は、上記投与される化合物の、主に酵素プロセスに起因する、例えば、酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などから生じ得る。よって、本発明は、本発明のエナンチオマーと、哺乳動物とを、代謝生成物を生じるに十分な時間にわたって接触させる工程を包含するプロセスによって生成される代謝生成物を含む。このような代謝生成物は、本発明の放射標識したエナンチオマーを動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、サル、もしくはヒト)に検出可能な用量で投与し、代謝が起こるに十分な時間を可能にし、尿、血液もしくは他の生物学的サンプルから上記代謝生成物を単離することによって、同定され得る。
【0039】
「選択性」および「選択的」とは、本明細書で使用される場合、電位開口型ナトリウムチャネルの間で、もしくはその中でと同様に、本発明の化合物が、一方のもの(もしくは他方の群)とは対照的に、もう一方のものと優先的に結合する傾向の相対的尺度である。例えば、上記選択性は、速度論および平衡結合親和性の比較測定、ならびに/もしくは電位開口型ナトリウムチャネルを介するイオン輸送の機能測定によって決定され得る。化合物が電位開口型ナトリウムチャネルと結合する傾向は、多くの異なる技術によって測定され得、結合の多くのタイプは、本明細書中で他の箇所に開示されるように、当業者に公知である。選択性は、特定の方法で測定された特定のタイプの結合において、化合物が、他の電位開口型ナトリウムチャネルのうちの1種以上とは対照的に、ある電位開口型ナトリウムチャネルと結合する傾向もしくは優先的な結合を実証することを意味する。この結合は、異なるアッセイタイプもしくは異なる測定方法ごとに異なり得る。
【0040】
「安定なエナンチオマー」および「安定な構造物」とは、反応混合物から有用な程度の純度への単離および有効な治療剤への処方に耐えるに十分強い化合物を示すことを意味する。
【0041】
「哺乳動物」は、ヒト、ならびに飼い慣らされた動物(例えば、実験動物および家庭用のペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、およびウサギ))および飼い慣らされていない動物(例えば、野生動物など)を含む。
【0042】
「薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤」としては、任意のアジュバント、キャリア、賦形剤、滑剤(glidant)、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤(flavor enhancer)、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張剤、溶媒、もしくは乳化剤が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、非限定的な例としては、ヒトもしくは飼い慣らされた動物における使用に適切であるとしてUnited States Food and Drug Administration、Health CanadaもしくはEuropean Medicines Agencyによって承認されている。
【0043】
「薬学的組成物」とは、本発明の化合物および媒体(一般に、哺乳動物(例えば、ヒト)への、生物学的に活性な化合物の送達のために、当該分野で受け入れられている)の処方物をいう。従って、このような媒体としては、全ての薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤が挙げられる。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤(これらとしては、非限定的な例として、United States Food and Drug Administration、Health CanadaもしくはEuropean Medicines Agencyによって、ヒトもしくは飼い慣らされた動物における使用に適していると承認された、任意の溶媒、アジュバント、バイオアベイラビリティ増強剤、キャリア、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張剤、緩衝剤および/もしくは乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない)を含む。例示的な薬学的に受容可能な賦形剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
ベンジルアルコール
安息香酸ベンジル
カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrasol(登録商標))
ジメチルアミン(「DMA」)
エタノール
2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(例えば、Transcutol(登録商標))
グルコース(溶液)
グリセリルカプリレート/カプレートおよびPEG−8(ポリエチレングリコール)カプリレート/カプレート複合体(例えば、Labrasol(登録商標))
イソプロピルアルコール
ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(例えば、Gelucire(登録商標) 44/14)
マクロゴール−15ヒドロキシステアレート(例えば、Solutol(登録商標)HS15)
中鎖トリグリセリド(例えば、Miglyol(登録商標) 810、Miglyol(登録商標) 840もしくはMiglyol(登録商標) 812)
ラッカセイ油
ポリソルベート80(例えば、Tween(登録商標) 80)
ポリエチレングリコール(PEG)
ポリエチレングリコール400(PEG400、例えば、Lutrol(登録商標) E 400)
ポリエチレングリコール 6000
ポリオキシル35ひまし油(例えば、Cremophor(登録商標) EL)
ポリオキシル40水素化ひまし油(例えば、Cremophor(登録商標) RH 40)
プロピレングリコール(PG)
プロピレングリコールモノカプリレート(Capryol(登録商標) 90)
大豆油
スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(例えば、Capitsol(登録商標))
TPGS(α−トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート)
水。
【0045】
さらなる薬学的に受容可能な賦形剤が、本明細書で開示される。
【0046】
しばしば、結晶化は、本発明の化合物の溶媒和物を生じる。本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物の1種以上の分子と、1個以上の溶媒の分子とを含む集合物(aggregate)をいう。上記溶媒は、水であり得、その場合、上記溶媒和物は、水和物であり得る。あるいは、上記溶媒は、有機溶媒であり得る。従って、本発明の化合物は、水和物(一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などが挙げられる)、およびその対応する溶媒和化形態として存在し得る。本発明の化合物は、完全溶媒和物(true solvate)であり得る一方で、他の場合には、本発明の化合物は、付随的な水を保持しているに過ぎなくてもよいし、もしくは水に加えて一部の付随的な溶媒の混合物であってもよい。
【0047】
「治療上有効な量」とは、哺乳動物(好ましくは、ヒト)に投与される場合に、上記哺乳動物(好ましくは、ヒト)において目的の疾患もしくは状態の処置(以下で定義されるとおり)を行うに十分である本発明の化合物の量に言及する。「治療上有効な量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、状態およびその重篤度、投与様式、ならびに処置されるべき哺乳動物の年齢に依存して変動するが、当業者自身の知識および本開示を重要視する当業者によって慣用的に決定され得る。
【0048】
「処置する」もしくは「処置」とは、本明細書で使用される場合、目的の疾患もしくは状態を有する哺乳動物(好ましくは、ヒト)において、上記目的の疾患もしくは状態の処置を網羅し、そして以下が挙げられる:
(i)上記疾患もしくは状態が上記哺乳動物に存在しないように、予防すること(特に、このような哺乳動物に上記状態の素因があるが、それを有しているとは未だ診断されてない場合);
(ii)上記疾患もしくは状態を阻害すること(すなわち、その発生を止めること);
(iii)上記疾患もしくは状態を軽減すること(すなわち、上記疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと);または
(iv)上記疾患もしくは状態から生じる症状を軽減すること(すなわち、根底にある疾患もしくは状態に対処して、もしくは対処することなく、疼痛を軽減すること)。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「改善する」、「改善された」、「緩和する」もしくは「緩和された」とは、それらの一般に受容可能な定義を与えられるものとする。例えば、「改善する」ことは、一般に、改善する事象の前の状態に比べて、その状態をよりよくするもしくは改善することを意味する。「緩和する」ことは、一般に、緩和する事象の前の状態に対してより耐えられる状態にすることを意味する。本明細書で使用される場合、「改善する」もしくは「改善された」は、本発明の化合物の投与によって、よりよくなったかもしくは改善された疾患もしくは状態に言及し得る。本明細書で使用される場合、「緩和する」もしくは「緩和された」とは、本発明の化合物の投与によってより耐えられるようにされた疾患もしくは状態に言及し得る。例えば、疼痛を「緩和する」とは、疼痛の重篤度もしくは量を低下させることを含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」、「障害」および「状態」とは、交換可能に使用され得るか、または特定の疾患もしくは状態が、既知の原因因子を有さなくてもよく(その結果、病因が未だ解かれていない)、従って、疾患として未だ認識されているのではないが、多かれ少なかれ特定の症状のセットが、臨床医によって同定された望ましくない状態もしくは症候群としてのみ認識されているという点で異なり得る。
【0051】
(本発明の化合物の有用性および試験)
本発明は、1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3-f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンの(S)−エナンチオマー、本発明の(S)−エナンチオマーを使用する薬学的組成物および方法、ならびに電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかまたは緩和される疾患もしくは状態(好ましくは、疼痛および掻痒に関連した疾患および状態);中枢神経系の状態(例えば、癲癇、不穏下肢症候群、不安、鬱病および双極性疾患);心血管状態(例えば、不整脈、心房細動および心室細動);神経筋状態(例えば、筋麻痺、ミオトニーもしくは持続性筋強直);発作、神経外傷および多発性硬化症に対する神経保護;ならびにチャネロパチー(channelopathy)(例えば、先端紅痛症および家族性直腸痛症候群)の、電位開口型ナトリウムチャネルブロッカー調節(特に、阻害)剤、好ましくは、本発明のエナンチオマーの有効量を、このような処置の必要な患者に投与することによる処置のための薬学的組成物に関する。
【0052】
一般に、本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)を処置するための、または哺乳動物(好ましくは、ヒト)を、電位開口型ナトリウムチャネルの活性と関連した疾患もしくは状態(特に、疼痛)の発生から保護する方法を提供し、ここで上記方法は、上記哺乳動物に、治療上有効な量の上記(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグを、発明の要旨において上記に示されるように投与する工程を包含し、ここで上記(S)−エナンチオマーは、上記電位開口型ナトリウムチャネルのうちの1種以上の活性を調節する(好ましくは、阻害する)。
【0053】
タンパク質の電位開口型ナトリウムチャネルファミリーは、広範囲に研究されてきており、多くの生命維持に必要な身体機能に関与することが示された。この領域における研究は、チャネル機能および活性において大きな変化を生じるαサブユニットの変異体を同定し、この変異体は、最終的には、主要な病態生理学的状態をもたらし得る。さらに、過剰なナトリウムインフラックスは、過興奮性を生じる炎症因子(inflammatory agents or factors)を介して間接的に生じ得る。このタンパク質ファミリーは、機能の中に治療的介入の主要なポイントを潜在的に含むとみなされる。電位開口型ナトリウムチャネルタンパク質であるNa1.1およびNa1.2は、脳中で高度に発現され(Raymond,C.K.ら,J.Biol.Chem.(2004),279(44):46234−41)、正常な脳機能に極めて重大である。ヒトにおいて、Na1.1およびNa1.2における変異は、癲癇状態を生じ、いくらかの場合においては、精神的衰えおよび片頭痛を生じる(Rhodes,T.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2004),101(30):11147−52;Kamiya,K.ら,J.Biol.Chem.(2004),24(11):2690−8;Pereira,S.ら,Neurology(2004),63(1):191−2;Meisler,M.H.ら,J.Physiol.(Lond.)(印刷中)。よって、両方のチャネルが、癲癇の処置のための確認された標的とみなされてきた(PCT公開特許公報WO 01/38564を参照のこと)。
【0054】
Na1.3は、新生仔動物の中枢神経系に主に発現され、成体の身体全体では低レベルで発現される(Raymond,C.K.ら,前掲)。神経系傷害後のラットの後角(dorsal horn)感覚ニューロンにおいてその発現が上方制御されていることが実証された(Hains,B.D.ら,J.Neurosci.(2003),23(26):8881−92)。この分野の多くの専門家は、Na1.3を疼痛治療のための適切な標的とみなした。なぜなら、その発現は、神経損傷によって誘導されるからである(Lai,J.ら,Curr.Opin.Neurobiol.(2003),(3):291−72003;Wood,J.N.ら,J.Neurobiol.(2004),61(1):55−71;Chung,J.M.ら,Novartis Found Symp.(2004),261:19−27;考察27−31、47−54;Priest,B.T.,Curr.Opin.Drug Discov.Devel.(2009)12:682−693)。
【0055】
Na1.4発現は、本質的に筋肉に限定される(Raymond,C.K.ら,前掲)。この遺伝子の変異は、麻痺を含む、筋機能に対する顕著な作用を有することが示された(Tamaoka A.,Intern.Med.(2003),(9):769−70)。従って、このチャネルは、周期性麻痺、ミオトニー、異常筋収縮、痙攣もしくは麻痺の処置のための標的とみなされる。
【0056】
心臓の電位開口型ナトリウムチャネル、Na1.5は、主に心筋において発現され(Raymond,C.K.ら,前掲)、心房、心室、洞房結節、房室結節およびプルキンエ細胞において見いだされ得る。心臓の活動電位の急激な上昇(upstroke)および心臓組織を介した急激な刺激伝導は、Na1.5の開口に起因する。このように、Na1.5は、心臓不整脈に関与する。ヒトNa1.5における変異は、多発性不整脈症候群(multiple arrhythmic syndrome)(例えば、長いQT3(LQT3)、ブルガダ症候群(BS)、遺伝性心臓伝導障害、夜間発症性突然死症候群(sudden unexpected nocturnal death syndrome)(SUNDS)および乳児突然死症候群(SIDS)(Liu,H.ら,Am.J.Pharmacogenomics(2003),3(3):173−9;Ruan,Yら,Nat.Rev.Cardiol.(2009)6:337−48)が挙げられる)を生じる。電位開口型ナトリウムチャネルブロッカー治療は、心臓不整脈を処置することにおいて広範に使用されてきた。1914年において発見された、最初の抗不整脈薬であるキニジンは、ナトリウムチャネルブロッカーとして分類される。
【0057】
Na1.6は、中枢神経系および末梢神経系全体を通じて見いだされ、神経軸索のランビエ絞輪に密集した、豊富な広く分布した電位開口型ナトリウムチャネルをコードする(Caldwell,J.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000),97(10):5616−20)。マウスにおける機能喪失の変異は、運動失調および痙攣を生じる(Papale,L.A.ら,Human Mol.Genetics(2009)18,1633−1641)。ヒトにおける変異は検出されなかったが、Na1.6は、多発性硬化症と関連した症状の発現において役割を果たすと考えられ、この疾患の処置のための標的としてみなされてきた(Craner,M.J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2004),101(21):8168−73)。
【0058】
Na1.7は、感覚ニューロンおよび交感ニューロンの両方において、末梢神経系において主に発現される(Raymond,C.K.ら,前掲)。ヒトにおける機能喪失の変異は、認知機能もしくは運動機能の障害なしに、先天性無痛覚症(congenital indifference to pain)(CIP)を引き起こす(Cox,J.J.ら,Nature(2006)444(7121),894−8;Goldberg,Y.P.ら,Clin.Genet.(2007)71(4),311−9)。CIPを有する個体は、炎症性もしくは神経障害性疼痛を経験せず、このことから、Na1.7の選択的ブロックが、中枢神経系にも末梢神経系にも、筋肉にも有害な影響なしに、慢性疼痛および急性疼痛の複数の形態を排除することが示唆される。さらに、Na1.7開口の時間依存性および電位依存性に対する非常に繊細な効果を有する一塩基多型(R1150W)が、疼痛認知に対して大きな影響を有する(Reimann,F.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010),107(11),5148−53)。種々の疼痛状態を有する患者のうちの約10%は、疼痛に対してより大きな感受性を与える対立遺伝子に関してヘテロ接合性である。疼痛応答の媒介におけるNa1.7の関与はまた、先端紅痛症もしくは発作性激痛症を生じる機能変異の獲得によって証明されている(Dib−Hajj S.D.ら,Adv.Genet.(2009)63:85−110)。Na1.7は、末梢神経系において主に発現されるが、Na1.7における点変異は、熱性痙攣を引き起こし、このことは、CNSにおけるこのチャネルの役割を示す。従って、電位開口型ナトリウムチャネルブロッカーは、抗痙攣剤として有用であり得る。
【0059】
Na1.8の発現は、後根神経節(DRG)において優勢である(Raymond,C.K.ら,前掲)。DRGからの感覚ニューロンにおける活動電位の上昇は、Na1.8を介する電流によって主に行われるので、この電流のブロックは、疼痛応答をブロックするようである(Blair,NT and Bean,BP,J.Neurosci.22:10277−90)。この知見と一致して、ラットにおけるNa1.8のノックダウンは、アンチセンスDNAもしくは低分子干渉RNAを使用することによって達成されてきた。そして神経障害性疼痛の実質的に完全な改善(reversal)は、脊髄神経結紮モデルおよび慢性狭窄損傷モデル(chronic constriction injury model)において達成された。Na1.8の選択的ブロッカーが既に報告されており、これは、神経障害性疼痛および炎症性疼痛の両方をブロックすることにおいて有用である(Jarvis,M.F.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2007),104(20),8520−5)。PCT公開特許出願 WO03/037274A2は、中枢神経系状態もしくは末梢神経系状態(特に、上記示された状態の始まりもしくは再発と関連したナトリウムチャネルをブロックすることによる疼痛および慢性疼痛)の処置のためのピラゾール−アミドおよびスルホンアミドを記載する。PCT公開特許出願 WO03/037890A2は、中枢神経系状態もしくは末梢神経系状態(特に、上記示された状態の始まりもしくは再発と関連したナトリウムチャネルをブロックすることによる疼痛および慢性疼痛)の処置のためのピペリジンを記載する。これら発明の化合物、組成物および方法は、PN3(Na1.8)サブユニットを含むチャネルを介したイオンフラックスの阻害によって、神経障害性疼痛もしくは炎症性疼痛を処置するために特に有用である。
【0060】
Dib−Hajj,S.D.,ら(Dib−Hajj,S.D.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998),95(15):8963−8を参照のこと)によって開示される、末梢神経系電位開口型ナトリウムチャネルであるNa1.9は、後根神経節において発現されることが示された。Na1.9は、神経栄養因子(BDNF)が引き起こす脱分極および興奮の基礎となることが実証された。このチャネルの発現の制限されたパターンは、それを疼痛の処置の候補標的にした(Lai,J,ら,前掲;Wood,J.N.ら,前掲;Chung,J.M.ら,前掲)。
【0061】
NaXは、電位開口型であることが示されていない想定のナトリウムチャネルである。肺、心臓、後根神経節、および末梢神経系のシュワン細胞における発現に加えて、NaXは、CNSの制限された領域における、特に、体液ホメオスタシスに関与する室周囲器官における、ニューロンおよび上衣細胞において見いだされる(Watanabe,E.ら,J.Neurosci.(2000),20(20):7743−51)。NaXヌルマウスは、水除去条件および塩類除去条件下の両方で高張性塩類溶液の異常な取り込みを示した。これら知見は、上記NaXが、体液ナトリウムレベルの中心的な感知および塩類取り込み行動の調節において重要な役割を果たすことを示唆する。発現および機能のそのパターンは、それを、嚢胞性線維症および他の関連する塩類調節疾患の処置の標的として示唆する。
【0062】
脳の特定の領域のニューロン活動を低下させるために使用される電位開口型ナトリウムチャネルブロッカーであるテトロドトキシン(TTX)での研究は、嗜癖の処置においてその潜在的な使用を示す。薬物と対にした刺激は、常用者における薬物の切望ならびに再発、およびラットにおける薬物探索行動を誘発する。扁桃体基底外側部(BLA)の機能的完全性は、コカイン条件付け刺激によって(しかし、コカイン自体によるのではない)誘発されるコカイン探索行動の回復に必要である。BLAは、ヘロイン探索行動の回復において類似の役割を果たす。ラットモデルにおける消去されたヘロイン探索行動の条件付けおよびヘロインで活性化した回復に対するBLAのTTX誘導性不活化(Fuchs,R.A.およびSee,R.E.,Psychopharmacology(2002)160(4):425−33)。
【0063】
C線維のサブセットは、掻痒原因子(pruritogenic agent)に対する応答(特に、ヒスタミン、PAR−2レセプターのアクチベーター、胆汁鬱滞、およびウイルス感染によって引き起こされる掻痒)を媒介する(Steinhoff,M.ら,J.Neurosci.23:6176−80;Twycross,R.ら,Q.J.Med.96:7−26)。電位開口型ナトリウムチャネルは、C線維において発現され、C線維神経インパルスを媒介する。
【0064】
電位開口型ナトリウムチャネルイオンフラックスを調節(特に、阻害する)ことにおける本発明の(S)−エナンチオマーの一般的価値は、以下の生物学的アッセイの節において記載されるアッセイを使用して決定され得る。あるいは、状態および疾患を処置することにおける本発明の(S)−エナンチオマーの一般的価値は、疼痛を処置することにおいて化合物の効力を実証する産業的標準動物モデルにおいて確立され得る。ヒト神経障害性疼痛状態の動物モデルが開発されており、これは、感覚試験によって評価され得る持続した期間にわたって、再現性のある感覚障害(異痛、痛覚過敏、および自発痛)を生じる。存在する機械的、化学的、および温度誘導性の異痛および痛覚過敏の程度を確立することによって、ヒトにおいて認められるいくつかの生理病理学的状態がかたどられ、薬物療法の評価を可能にする。
【0065】
末梢神経損傷のラットモデルにおいて、損傷した神経における異所性の活動は、疼痛の行動兆候と相関する。これらモデルにおいて、本発明の(S)−エナンチオマーの静脈内適用および局所麻酔剤であるリドカインは、異所性活動を抑制し得、全体的な行動および運動機能に影響を及ぼさない濃度において接触性異痛を改善し得る(Mao,J.and Chen,L.L, Pain(2000),87:7−17)。これらラッドモデルにおいて有用な用量のアロメトリックスケーリング(allimetric scaling)は、ヒトにおいて有効であることが示される用量に類似の用量へと変換される(Tanelian,D.L.and Brose,W.G.,Anesthesiology(1991),74(5):949−951)。さらに、皮膚パッチの形態で適用されるリドカインであるLidoderm(登録商標)は、疱疹後神経痛の現在FDAが認可している治療薬である(Devers,A.and Glaler,B.S.,Clin.J.Pain(2000),16(3):205−8)。
【0066】
電位開口型ナトリウムチャネルブロッカーは、疼痛に加えて、臨床的使用を有する。癲癇、および心臓不整脈は、しばしば、ナトリウムチャネルブロッカーの標的である。動物モデルの近年の証拠から、電位開口型ナトリウムチャネルブロッカーはまた、発作もしくは神経外傷によって引き起こされる虚血状態下での神経保護に、および多発性硬化症(MS)を有する患者において有用であり得ることが示唆されている(Clare,J.J.ら,前掲およびAnger,T.ら,前掲)。
【0067】
本発明の(S)−エナンチオマーは、哺乳動物において、特に、ヒトにおいて、電位開口型ナトリウムチャネルを介してイオンフラックスを調節する(好ましくは、阻害する)。任意のこのような調節は、イオンフラックスの部分的なもしくは完全な阻害もしくは防止であろうと、本明細書で「ブロックする」とときおり言及され、対応する化合物は、「ブロッカー」もしくは「インヒビター」といわれる。一般に、本発明の化合物は、電位開口型ナトリウムチャネルの活性を下方に調節し、上記電位開口型ナトリウムチャネルの電位依存性活動を阻害し、そして/または電位開口型ナトリウムチャネル活動(例えば、イオンフラックス)を防止することによって、細胞膜を横断するナトリウムイオンフラックスを低下もしくは防止する。
【0068】
本発明の(S)−エナンチオマーは、ナトリウムチャネルブロッカーであり、従って、哺乳動物における、好ましくは、ヒト、および他の生物における疾患および状態(異常な電位開口型ナトリウムチャネル生物学的活性の結果であるか、または電位開口型ナトリウムチャネル生物学的活性の調節(好ましくは、阻害)によって改善され得るかもしくは緩和され得る全てのそれらヒト疾患および状態を含む)を処置するのに有用である。
【0069】
本明細書で定義されるように、電位開口型ナトリウムチャネルの調節、好ましくは、阻害によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態は、電位開口型ナトリウムチャネルの調節、好ましくは、阻害によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態に言及し、これらとしては、疼痛および掻痒症;中枢神経状態(例えば、癲癇、不安、鬱病)(Morinvilleら,J.Comp.Neurol.,504:680−689(2007)および双極性疾患(Ettinger and Argoff,Neurotherapeutics,4:75−83(2007));心血管状態(例えば、不整脈、心房細動および心室細動);神経筋状態(例えば、不穏下肢症候群および筋麻痺もしくは持続性筋強直);発作、神経外傷および多発性硬化症に対する神経保護;ならびにチャネロパチー(例えば、先端紅痛症および家族性直腸痛症候群)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
さらなる疾患および状態としては、HIVと関連した疼痛、HIV処置誘導性神経障害、三叉神経痛、舌咽神経痛、転移性浸潤に二次的なニューロパチー、有痛性脂肪蓄積症、視床病変、高血圧症、自己免疫疾患、喘息、薬物嗜癖(例えば、オピエート、ベンゾジアゼピン、アンフェタミン、コカイン、アルコール、ブタン吸入)、アルツハイマー病(Kim DY,Careyら,Nat.Cell Biol.9(7):755−764(2007))、認知症、加齢性記憶障害、コルサコフ症候群、再狭窄、泌尿器機能不全(urinary dysfunction)、失禁、パーキンソン病(Do and Bean,Neuron 39:109−120(2003);Puopoloら,J.Neurosci.27:645−656(2007))、脳血管虚血、神経症、胃腸疾患、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球症、移植拒絶、心不全、心筋梗塞、再灌流傷害、間欠性跛行(intermittant claudication)、アンギナ、痙攣、呼吸障害、脳虚血もしくは心筋虚血、QT延長症候群、カテコールアミン作動性多形性心室性頻拍(Catecholeminergic polymorphic ventricular tachycardia)、眼窩疾患、痙性、痙性対麻痺、ミオパチー、重症筋無力症、先天性パラミオトニア、高カリウム血性周期性麻痺、低カリウム血性周期性麻痺、脱毛症、不安障害、精神病性障害、躁病、偏執症、季節性情動障害、パニック障害、強迫性障害(OCD)、恐怖症、自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、崩壊性障害、注意欠陥障害、攻撃性、衝動制御障害、血栓症、子癇前症(pre clampsia)、鬱血性心不全、心停止、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳性運動失調、振戦、筋力低下、ミエロパシー、神経根症、全身性エリテマトーデス、肉芽腫性疾患、オリーブ橋小脳萎縮症、脊髄小脳性運動失調、発作性運動失調、ミオキミア、進行性淡蒼球萎縮症、進行性核上性麻痺および痙性、外傷性脳傷害、脳浮腫、水頭傷害、脊髄損傷、神経性食欲不振、過食、プラダー・ウィリ症候群、肥満症、視神経炎、白内障、網膜出血、虚血性網膜症、色素性網膜炎、急性緑内障および慢性緑内障、黄斑変性、網膜動脈閉塞症、舞踏病、ハンチントン病、ハンチントン舞踏病、脳浮腫、直腸炎、疱疹後神経痛、eudynia、熱感受性、サルコイドーシス、過敏性腸症候群、トゥレット症候群、レッシュ・ナイハン症候群、ブルガダ症候群、リドル症候群、クローン病、多発性硬化症および多発性硬化症(MS)と関連する疼痛、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、播種性硬化症、糖尿病性ニューロパチー、末梢神経障害、シャルコーマリートゥース症候群、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、軟骨石灰化症、発作性ジストニー、筋無力症症候群、ミオトニー、筋強直性ジストロフィー、筋ジストロフィー、悪性高体温、嚢胞性線維症、偽性アルドステロン症、横紋筋融解症、精神発達障害、双極性鬱病、不安、統合失調症、ナトリウムチャネル毒素関連疾患、家族性肢端紅痛症、原発性先端紅痛症、直腸痛、癌、癲癇、部分的および全身的な強直発作、熱性痙攣、アブサンス発作(小発作)、ミオクローヌス発作、脱力発作、間代性発作、レノックス・ガストー、ウェスト症候群(点頭癲癇)、洞機能不全症候群(Haufe V, Chamberland C, Dumaine R, J.Mol.Cell Cardiol.42(3):469−477(2007))、多耐性発作(multiresistant seizure)、発作予防(抗てんかん)、家族性地中海熱症候群、痛風、不穏下肢症候群、不整脈、線維筋痛症、発作もしくは神経外傷によって引き起こされる虚血条件下での神経保護、頻拍性不整脈、心房細動および心室細動、ならびに全身性もしくは局所性感覚脱出が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「疼痛」とは、その性質もしくは原因に拘わらず、疼痛の全てのカテゴリーに言及し、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛、特発性疼痛、神経痛性疼痛、口腔顔面痛、熱傷痛、慢性骨痛、腰痛、頚痛、腹痛、口腔灼熱症候群、体性痛、内臓痛(腹部を含む)、筋筋膜痛(myofacial pain)、歯痛、癌性疼痛、化学療法性疼痛、筋筋膜痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、顎関節痛、外傷性疼痛、発作性激痛症、手術疼痛、術後疼痛、陣痛(childbirth pain)、陣痛、反射性交感神経性ジストロフィー、腕神経叢引き抜き損傷(brachial plexus avulsion)、神経因性膀胱、急性疼痛、筋骨格痛、術後疼痛、慢性疼痛、持続性疼痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、片頭痛、家族性片麻痺性片頭痛、頭部痛と関連した状態、副鼻腔性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経損傷、発作後疼痛、視床病変、神経根症、HIV疼痛、疱疹後疼痛、非心臓性胸痛、過敏性腸症候群ならびに腸障害と消化不良とに関連した疼痛、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されないことが理解される。
【0072】
本発明はまた、化合物、薬学的組成物、ならびに疾患もしくは状態(例えば、良性前立腺過形成(BPH)、高コレステロール血症、癌および掻痒症(掻痒))の処置もしくは予防のための上記化合物および薬学的組成物を使用する方法に関する。
【0073】
良性前立腺過形成(BPH)(良性前立腺肥大症としても公知)は、老齢男性に影響を及ぼす最も一般的な疾患のうちの1つである。BPHは、尿道の閉塞を生じる、前立腺組織の結節性増大によって特徴付けられる進行性の状態である。BPHの結果としては、膀胱平滑筋の肥大、非代償性膀胱、急性尿閉および尿路感染症の増大した発生率が挙げられ得る。
【0074】
BPHは、高度な公衆衛生の影響を有し、年配の男性の中で、外科的介入の最も一般的な理由のうちの1つである。その原因論および病原論を明らかにしようとする試みがなされてきており、その目的のために、実験モデルが開発された。自然発症動物モデルは、チンパンジーおよびイヌに限定されている。男性およびイヌにおけるBPHは、多くの共通する特徴を共有する。両方の種において、BPHの発症は、加齢によって自然に起こり、初期/思春期前の去勢によって予防され得る。外科手術に代わる医学的代替手段は、BHPを処置するためおよびその帰結のために非常に望ましい。
【0075】
男性およびイヌの両方における前立腺上皮過形成は、アンドロゲン感受性であり、アンドロゲン除去による退縮を受け、アンドロゲンが置換された場合には上皮過形成を再開する。前立腺に由来する細胞は、高レベルの電位開口型ナトリウムチャネルを発現することが示された。免疫染色研究から、前立腺組織における電位開口型ナトリウムチャネルの証拠が明らかに示された(Prostate Cancer Prostatic Dis.2005;8(3):266−73)。テトロドトキシン(選択的ブロッカー)による電位開口型ナトリウムチャネル機能の阻害は、前立腺癌および乳癌に由来する細胞の移動を阻害する(Brackenbury,W.J.and Djamgoz,M.B.A.,J.Physiol.(Lond)(2006)573:343−56;Chioni,A−M.ら,Int.J.Biochem.Cell Biol.(2009)41:1216−1227)。
【0076】
高コレステロール血症、すなわち、上昇した血中コレステロールは、例えば、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、高脂血症、発作、高インスリン血症、高血圧症、肥満症、糖尿病、心血管疾患(CVD)、心筋虚血、および心臓発作の発症における確立されたリスク因子である。従って、高レベルのコレステロールを有する個体において総血清コレステロールのレベルを低下させると、これら疾患のリスクを低下させることが公知であった。特に、低密度リポタンパク質コレステロールを低下させることは、CVDの予防において必須の工程である。種々の高コレステロール血症治療が存在するが、この技術分野において代替治療について必要性が継続しておりかつ研究も継続している。
【0077】
本発明は、抗高コレステロール血症剤として有用である化合物およびそれらの関連する状態を提供する。本発明の化合物は、種々の方法において作用し得る。いかなる特定の作用機構にも拘束されることは望まないが、上記化合物は、酵素アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)の直接的もしくは間接的インヒビターであり得、コレステロールのエステル化を阻害して腸壁を横断するコレステロール輸送の阻害をもたらす。別の可能性は、本発明の化合物が、肝臓におけるコレステロール生合成の直接的もしくは間接的インヒビターであり得るということであり得る。本発明のいくつかの化合物は、ACATおよびコレステロール生合成の直接的インヒビターもしくは間接的インヒビターの両方として作用し得ることが考えられる。
【0078】
掻痒症(一般には、掻痒として既知)は、一般的な皮膚科学的状態である。原因論に基づくと、掻痒には2つの広いカテゴリーがある:炎症性皮膚掻痒および神経障害性掻痒(Binderら,Nature Clinical Practice,4:329−337,2008)。炎症性皮膚掻痒の場合、炎症性メディエーターは、皮膚の掻痒受容器(cutaneous pruriceptor)、主に、無髄C線維である皮膚の求心性神経線維のサブセット、を活性化する。この掻痒タイプの処置は、炎症性因子のレセプターをブロックすること(例えば、抗ヒスタミン剤)、もしくは続いて起こる電気的活動をブロックすることのいずれかからなる。電位開口型ナトリウムチャネルは、ニューロンにおける電気的活動の伝導において中心的な役割を有し、電位開口型ナトリウムチャネルの調節は、このシグナル伝達を調節する十分に確立された手段である。神経障害性掻痒症の原因は複雑でありかつあまり十分に理解されていないが、皮膚における感覚ニューロンC線維からの入力の中心的感知および過敏性の十分に確立された証拠が存在する。炎症性掻痒に関しては、ナトリウムチャネルは、皮膚からCNSへの電気的シグナルを伝達するのに必須なようである。掻痒インパルスの伝達は、不快な感覚を生じ、掻きたいという欲求もしくは反射を誘発する。
【0079】
炎症性掻痒および神経障害性掻痒の両方は、公知の電位開口型ナトリウムチャネルブロッカー(最も一般的には、リドカイン(Villamilら,American Journal of Medicine 118:1160−1163,2005;Inanら,Euorpean Journal of Pharmacology 616:141−146,2009;Fishmanら,American Journal of Medicine 102:584−585,1997;Rossら,Neuron 65:886−898,2010))によってブロックされ得る。掻痒を軽減するために必要とされるリドカインの用量は、疼痛を処置することにおいて有効な用量に匹敵する。両方の感覚回路は、共通するメディエーターおよび関連するニューロン経路を共有する(Ikomaら,Nature Reviews Neuroscience,7:535−547,2006)。しかし、疼痛のための他の治療薬は、掻痒に対しては無効であり、掻痒症を軽減するよりむしろ、増悪させ得る。例えば、オピオイド(特に)は、疼痛を軽減することにおいて有効であるが、重篤な掻痒症を生じ得る。従って、電位開口型ナトリウムチャネルブロックは、疼痛および掻痒の両方についての特に見込みのある治療である。
【0080】
本発明の化合物は、1mg/Kg〜100mg/Kgの範囲に及ぶ経口用量で、いくらかの動物モデルにおいて鎮痛効果を有することが示された。本発明の化合物はまた、掻痒症を処置するために有用であり得る。
【0081】
掻痒もしくは皮膚刺激のタイプとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
a)乾癬性の掻痒、血液透析に起因する掻痒、水源性(aguagenic)掻痒、および皮膚障害によって引き起こされる掻痒(例えば、接触性皮膚炎)、全身性障害、ニューロパチー、心因性の要因もしくはこれらの混合;
b)アレルギー反応、昆虫咬創、過敏によって引き起こされる掻痒(例えば、乾燥肌、ざ瘡、湿疹、乾癬)、炎症性状態もしくは傷害;
c)外陰部前庭炎と関連した掻痒;
d)別の治療剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤および抗ヒスタミン剤)の投与に由来する皮膚刺激もしくは炎症的影響;ならびに
e)PAR−2 G−プロテイン共役レセプターの活性化に起因する掻痒。
【0082】
本発明の(S)−エナンチオマーは、電位依存性ナトリウムチャネルを介して、イオンフラックスを調節する(好ましくは、阻害する)。好ましくは、本発明の(S)−エナンチオマーは、休止した/閉じた状態に対して低い親和性を有しかつ不活性化状態に対して高い親和性を有する、電位開口型ナトリウムチャネルの状態依存性もしくは頻度依存性改変因子(modifier)である。いかなる特定の作用機構にも束縛されることを望まないが、本発明の(S)−エナンチオマーは、他の状態依存性ナトリウムチャネルブロッカーに関して記載されるチャネルに類似のチャネルのナトリウム伝導性孔の内部空洞に位置した重複する部位と相互作用するようである(Cest閧撃・CS.ら,前掲)。本発明の(S)−エナンチオマーはまた、上記内部空洞の外側の部位と相互作用し、上記チャネルの孔を介してナトリウムイオン伝導に対してアロステリック効果を有するようであり得る。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の(S)−エナンチオマーは、Na1.7の活性を調節する(好ましくは、阻害する)。本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の(S)−エナンチオマーは、他の電位開口型ナトリウムチャネル(すなわち、Na1.1〜Na1.6およびNa1.8〜Na1.9)の調節もしくは阻害と比較して、Na1.7の活性を選択的に調節する(好ましくは、阻害する)。大部分の他のナトリウムチャネルは、他の重要な生理学的プロセス(例えば、心臓の収縮および律動性(Na1.5)、骨格筋の収縮(Na1.4)、ならびにCNSおよび運動ニューロンにおける電気的活動の伝導(Na1.1、Na1.2およびNa1.6))に関連しているので、本発明の(S)−エナンチオマーが、これら他のナトリウムチャネルの顕著な調節を回避することは望ましい。
【0084】
これら結果のいずれかが、最終的に、本発明の(S)−エナンチオマーによって提供される全体的な治療利益に関与し得る。
【0085】
代表的には、本発明の成功裏の治療剤は、以下の基準のうちのいくつかもしくは全てを満たす。経口アベイラビリティは、20%以上であるべきである。動物モデルの効力は、約0.1μg〜約100mg/Kg体重より小さく、目標のヒト用量は、0.1μg〜約100mg/Kg体重の間であるが、この範囲の外側の用量は、受容可能であり得る(「mg/Kg」は、投与される被験体の体重1kgあたりの化合物のミリグラムを意味する)。治療指数(もしくは毒性用量 対 治療剤用量の比)は、100より大であるべきである。有効性(IC50値によって表される場合)は、10μMより小さい、好ましくは、1μM未満、および最も好ましくは、50nM未満であるべきである。IC50(「阻害濃度−50%」)は、本発明のアッセイにおいて、特定の期間にわたってナトリウムチャネルを介するイオンフラックスの50%阻害を達成するのに必要とされる本発明の(S)−エナンチオマーの量の尺度である。
【0086】
本発明の別の局面は、生物学的サンプルもしくは哺乳動物(好ましくは、ヒト)において、Na1.1、Na1.2、Na1.3、Na1.4、Na1.5、Na1.6、Na1.7、Na1.8、もしくはNa1.9の活性を阻害することに関し、その方法は、本発明の(S)−エナンチオマーもしくは本発明の(S)−エナンチオマーを含む組成物を上記哺乳動物に投与する工程、または上記生物学的サンプルと、本発明の(S)−エナンチオマーもしくは本発明の(S)−エナンチオマーを含む組成物とを接触させる工程を包含する。用語「生物学的サンプル」とは、本明細書で使用される場合、細胞培養物もしくはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料もしくはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、もしくは他の体液またはその抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の(S)−エナンチオマーの前述の使用に加えて、上記化合物はまた、当業者に公知の種々の目的のために、生物学的サンプル中の電位開口型ナトリウムチャネル活性の調節(好ましくは、阻害)において有用であり得る。このような目的の例としては、生物学的現象および病理学的現象における電位開口型ナトリウムイオンチャネルの研究;ならびに新たなもしくは他の電位開口型ナトリウムイオンチャネルモジュレーターの比較評価が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の(S)−エナンチオマーはまた、電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態について、非ヒト哺乳動物を処置するため(すなわち、獣医学的処置法)、特に炎症および疼痛を処置するために使用され得る。このような処置は、コンパニオン哺乳動物(例えば、イヌおよびネコ)について特に重要であることが理解される。
【0089】
(本発明の薬学的組成物および投与)
本発明はまた、本発明の(S)−エナンチオマーを含む薬学的組成物に関する。一実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア中に、および電位開口型ナトリウムチャネルを介するイオンフラックスを調節して(好ましくは、阻害して)、動物(好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒト患者)に投与される場合に疾患(例えば、疼痛)を処置するのに有効な量で、本発明の(S)−エナンチオマーを含む組成物に関する。
【0090】
純粋な形態の、もしくは適切な薬学的組成物中における、本発明の(S)−エナンチオマーの投与は、類似の有用性に役立つ薬剤の受容された投与様式のうちのいずれかを介して行われ得る。本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物と、適切な薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤とを合わせることによって調製され得、固体、半固体、液体もしくは気体の形態(例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射物、吸入物、ゲル、マイクロスフェアおよびエアロゾル)にある調製物へと処方され得る。このような薬学的組成物を投与する代表的経路としては、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、直腸、膣、および鼻内が挙げられるが、これらに限定されない。用語非経口は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射もしくは注入の技術が挙げられる。本発明の薬学的組成物は、そこに含まれる活性成分を、患者へ上記組成物を投与した際に、バイオアベイラブルにすることが可能になるように、処方される。被験体もしくは患者(好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト)に投与される組成物は、1種以上の投与単位の形態をとり、ここで例えば、錠剤は、単一投与単位であり得、エアロゾル形態にある本発明の化合物の容器は、複数の投与単位を保持し得る。この容易な剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または明らかである;例えば、The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)を参照のこと。投与されるべき組成物は、いずれにしても、本発明の教示に従って目的の疾患もしくは状態を処置するために、治療上有効な量の本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む。
【0091】
本明細書において有用な薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリア(任意の適切な希釈剤もしくは賦形剤を含む)を含み、これらとしては、上記組成物を受ける個体に有害な抗体の生成をそれ自体誘導せず、過度な毒性なく投与され得る任意の薬学的な因子が挙げられる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、液体(例えば、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなど)が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、および他の賦形剤の詳細な議論は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.,最新版)に示される。
【0092】
本発明の薬学的組成物は、固体もしくは液体の形態であってよい。一局面において、キャリア(複数可)は粒状であり、その結果、上記組成物は、例えば、錠剤もしくは散剤の形態にある。上記キャリア(複数可)は、液体であり得、上記組成物は、例えば、経口シロップ剤、注射用液体、もしくは吸入投与において有用なエアロゾルである。
【0093】
経口投与が意図される場合、上記薬学的組成物は、好ましくは、固体もしくは液体形態のいずれかにあり、ここで半固体、半液体、懸濁物およびゲルの形態が、本明細書において固体もしくは液体のいずれかと考えられる形態内に含まれる。
【0094】
経口投与のための固体組成物として、上記薬学的組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮された錠剤、丸剤、カプセル剤、チューイングガム、ウェハなどの形態へと処方され得る。このような固体組成物は、代表的には、1種以上の不活性な希釈剤もしくは食用のキャリアを含む。さらに、以下のうちの1種以上が、存在し得る:結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプン、ラクトースもしくはデキストリン)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、コーンスターチなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotex);滑剤(例えば、コロイド性二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン);香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味剤);および着色剤。
【0095】
上記薬学的組成物は、カプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の形態にある場合、上記タイプのうちの材料に加えて、液体キャリア(例えば、ポリエチレングリコールもしくはオイル)を含み得る。
【0096】
上記薬学的組成物は、液体の形態(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、液剤、エマルジョンもしくは懸濁物)にあり得る。上記液体は、2つの例として、経口投与のためもしくは注射による送達のためであり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本発明の(S)−エナンチオマーに加えて、甘味剤、保存剤、染料/着色剤および風味増強剤のうちの1種以上を含む。注射による投与であるように意図された組成物においては、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定化剤および等張剤のうちの1種以上が含まれ得る。
【0097】
本発明の液体薬学的組成物は、これらが溶液、懸濁物などの形態であろうと、以下のアジュバントのうちの1種以上を含み得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用水、塩類溶液、好ましくは、生理食塩水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム、溶媒もしくは懸濁媒体として作用し得る不揮発性油(例えば、合成モノグリセリドもしくはジグリセリド)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールもしくは他の溶媒;抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコールもしくはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウム);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、アセテート、シトレートもしくはホスフェート)および等張性の調節のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムもしくはデキストロース)。非経口用調製物は、ガラスもしくはプラスチックから作られたアンプル、使い捨てシリンジもしくは複数用量バイアル中に封じ込められ得る。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射用薬学的組成物は、好ましくは、無菌である。
【0098】
非経口投与もしくは経口投与のいずれかが意図された本発明の液体薬学的組成物は、適切な投与量が得られるように、ある量の本発明の(S)−エナンチオマーを含むべきである。代表的には、この量は、上記組成物中に少なくとも0.01%の本発明の(S)−エナンチオマーである。経口投与が意図される場合、この量は、上記組成物の重量のうちの0.1〜約70%の間であるように変動し得る。好ましい経口用薬学的組成物は、約4%〜約50%の間の本発明の(S)−エナンチオマーを含む。本発明に従う好ましい薬学的組成物および調製物は、非経口投与単位が、希釈前に、0.01〜10重量%の間の本発明の(S)−エナンチオマーを含むように、調製される。
【0099】
本発明の薬学的組成物は、局所投与について意図され得る。その場合、上記キャリアは、溶液、エマルジョン、軟膏基剤もしくはゲル基材を適切に含み得る。上記基材は、例えば、以下のうちの1種以上を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、ミネラルオイル、希釈剤(例えば、水およびアルコール)、および乳化剤および安定化剤。増粘剤は、局所投与のための薬学的組成物中に存在し得る。経皮投与が意図される場合、上記組成物は、経皮パッチもしくはイオン導入デバイスを含み得る。局所処方物は、約0.1〜約10% w/v(単位体積あたりの重量)の本発明の(S)−エナンチオマーの濃度を含み得る。
【0100】
局所適用のために、本発明に従う有効量の薬学的組成物を、処置されるべき末梢神経に隣接している標的領域(例えば、皮膚表面、粘膜など)へ投与することが好ましい。この量は、一般に、使用が診断的であろうと、予防的であろうと、治療的であろうと、処置されるべき領域に、症状の重篤度に、および使用される局所用ビヒクルの性質に依存して、1回の適用あたり約0.0001mg〜約1gの本発明の(S)−エナンチオマーの範囲に及ぶ。好ましい局所的調製物は、軟膏基剤1ccあたり約0.001〜約50mgの活性成分が使用される軟膏剤である。上記薬学的組成物は、経皮的組成物もしくは経皮送達デバイス(「パッチ」)として処方され得る。このような組成物は、例えば、バッキング、活性化合物レザバ、制御膜、ライナーおよび接触接着剤(contact adhesive)を含む。このような経皮的パッチは、連続パルス状(continuous pulsatile)を提供するために、もしくは所望の通り本発明の化合物の要求次第の送達を提供するために使用され得る。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、例えば、坐剤(これは、直腸で融解し、薬物を放出する)の形態での直腸投与について意図され得る。直腸投与のための組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含み得る。このような基剤としては、ラノリン、カカオ脂およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
筋肉内投与もしくは鞘内(intrathecal)投与のための局所的処方物は、油中の活性成分の懸濁物または溶液、あるいは油(例えば、ラッカセイ油もしくはごま油)中の活性成分の溶液からなる。静脈内投与もしくは鞘内投与のための局所的処方物は、例えば、活性成分およびデキストロースもしくは塩化ナトリウム、またはデキストロースおよび塩化ナトリウムの混合物を含む、滅菌等張性水溶液からなる。
【0103】
本発明の組成物は、当該分野で公知の手順を使用することによって、患者へ投与した後に、活性成分(すなわち、本発明の(S)−エナンチオマー)の迅速な、持続性の、もしくは遅延放出を提供するように、処方され得る。制御放出薬物送達システムは、浸透圧ポンプシステム、およびポリマーコーティングされたレザバもしくは薬物−ポリマーマトリクス処方物を含む溶解システムを含む。制御された放出システムの例は、米国特許第3,845,770号および同第4,326,525号に、ならびにP.J.Kuzmaら,Regional Anesthesia 22(6):543−551(1997)(これらは全て、本明細書に参考として援用される)に示される。
【0104】
本発明の組成物はまた、局所的、全身的、および鼻から脳への医療的治療のために、鼻内薬物送達システムを介して送達され得る。制御された粒子分散(CPD)TM技術、伝統的な鼻スプレーボトル、吸入器もしくはネブライザは、当業者によって公知であり、嗅覚領域および副鼻腔を標的とすることによって、薬物の有効な局所的送達および全身送達を提供する。
【0105】
本発明はまた、ヒトもしくは動物の雌性への投与に適した膣内シェルもしくはコア薬物送達デバイスに関する。上記デバイスは、ポリマーマトリクス中の、シースによって囲まれた上記活性な薬学的成分から構成され得、上記デバイスは、PCT公開特許出願WO 98/50016に記載されるように、テストステロンを適用するために使用されるデバイスに類似の、毎日を基本として実質的にゼロ次のパターンで本発明の(S)−エナンチオマーを放出し得る。
【0106】
眼の送達のための現在の方法は、局所投与(点眼剤)、結膜下注射、眼周囲注射、硝子体内注射、外科的インプラントおよびイオン導入(小さな電流を使用して、身体組織の中へおよび身体組織を通ってイオン化薬物を輸送する)を含む。当業者は、安全かつ有効な眼内投与のために、最もよく適した賦形剤を、本発明の(S)−エナンチオマーと合わせる。
【0107】
最もよく適した投与経路は、処置される状態の性質および重篤度に依存する。当業者はまた、投与法(例えば、経口、静脈内、吸入、皮下、直腸など)、投与形態、適切な薬学的賦形剤、および本発明の(S)−エナンチオマーの送達が必要な被験体に該(S)−エナンチオマー送達することに関連する他の問題(matter)を決定するのに精通している。
【0108】
本発明の薬学的組成物は、固体投与単位もしくは液体投与単位の物理的形態を改変する種々の材料を含み得る。例えば、上記組成物は、上記活性成分の周りのコーティングシェルを形成する材料を含み得る。上記コーティングシェルを形成する材料は、代表的には、不活性であり、例えば、糖、シェラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、上記活性成分は、ゼラチンカプセル中に収容され得る。
【0109】
固体形態もしくは液体形態にある本発明の薬学的組成物は、本発明の(S)−エナンチオマーに結合し、それによって、上記化合物の送達を補助する薬剤を含み得る。この能力において作用し得る適切な薬剤としては、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、タンパク質もしくはリポソームが挙げられる。
【0110】
本発明の薬学的組成物は、エアロゾルとして投与され得る投与単位からなり得る。用語、エアロゾルは、コロイドの性質のシステムから加圧パッケージからなるシステムまでの範囲に及ぶ種々のシステムを示すために使用される。送達は、液化ガスもしくは加圧ガスによってであり得るか、または上記活性成分を分与する適切なポンプシステムによってであり得る。本発明の(S)−エナンチオマーのエアロゾルは、上記活性成分(複数可)を送達するために、単相、二相、もしくは三相システムで送達され得る。上記エアロゾルの送達は、必要な容器、アクチベーター、バルブ、サブコンテナなどを含み、これらは、一緒になってキットを形成し得る。当業者は、過度な実験なしに、好ましいエアロゾルを決定し得る。
【0111】
本発明の薬学的組成物は、薬学分野において周知の方法論によって調製され得る。例えば、注射によって投与されることが意図される薬学的組成物は、本発明の(S)−エナンチオマーを、滅菌蒸留水と合わせて、溶液を形成することによって調製され得る。界面活性剤は、均一な溶液もしくは懸濁物の形成を促進するために添加され得る。界面活性剤は、水性送達システムにおいて上記化合物の溶解もしくは均一な懸濁物を容易にするように、本発明の(S)−エナンチオマーと非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0112】
本発明の(S)−エナンチオマーは、治療上有効な量で投与されるべきであり、これは、種々の要因(使用される特定の化合物の活性;本発明の(S)−エナンチオマーの代謝的安定性および作用の期間;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;投与の様式および時間;排出速度;薬物組み合わせ;特定の障害もしくは状態の重篤度;ならびに治療を受けている被験体が挙げられる)に依存して変動する。一般に、本発明の(S)−エナンチオマーの治療上有効な日用量は、(70Kgの哺乳動物に対して)約0.001mg/Kg(すなわち、0.07mg)〜約100mg/Kg(すなわち、7.0g)であり;好ましくは、治療上有効な用量は、(70Kgの哺乳動物に対して)約0.01mg/Kg(すなわち、0.70mg)〜約50mg/Kg(すなわち、3.5g)であり;そしてより好ましくは、治療上有効な用量は、(70Kgの哺乳動物に対して)約1mg/Kg(すなわち、70mg)〜約25mg/Kg(すなわち、1.75g)である。
【0113】
本明細書に提供される有効用量の範囲は、好ましい用量範囲を限定しかつ表すことは意図しない。しかし、最も好ましい投与量は、関連技術の当業者によって理解され、決定可能であるように、個々の被験体に合わせられる(例えば、Berkowら,eds.,The Merck Manual,16th edition, Merck and Co.,Rahway,N.J.,1992;Goodmanetna.,eds.,Goodman and Cilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th edition,Pergamon Press,Inc.,Elmsford,N.Y.,(2001);Avery’s Drug Treatment:Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics,3rd edition,ADIS Press,LTD.,Williams and Wilkins,Baltimore,MD.(1987),Ebadi,Pharmacology,Little,Brown and Co.,Boston,(1985);Osolci al.,eds.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990);Katzung,Basic and Clinical Pharmacology,Appleton and Lange,Norwalk,CT(1992)を参照のこと)。
【0114】
各処置に必要とされる合計用量は、望ましい場合、複数用量によって、またはその日の過程にわたって単一用量で投与され得る。一般に、処置は、上記化合物の至適用量より小さい、より小さな投与量で開始される。その後、上記投与量は、その状況下で最適な効果が達成されるまで、少しずつ増大される。診断的な薬学的化合物もしくは薬学的組成物は、単独で、あるいは病状に関する、もしくは病状の他の症状に関する他の診断剤および/または薬剤とともに、投与され得る。有効量の本発明の(S)−エナンチオマーもしくは本発明の組成物は、約0.1μg〜約100mg/Kg体重であり、4〜72時間の間隔で、2時間〜1年の期間にわたって、および/またはその中の任意の範囲もしくは値(例えば、0.0001〜0.001mg/Kg、0.001〜0.01mg/Kg、0.01〜0.1mg/Kg、0.1〜1.0mg/Kg、1.0〜10mg/Kg、5〜10mg/Kg、10〜20mg/Kg、20〜50mg/Kgおよび50〜100mg/Kg)で、1〜4時間、4〜10時間、10〜16時間、16〜24時間、24〜36時間、24〜36時間、36〜48時間、48〜72時間の間隔で、1〜14日、14〜28日、もしくは30〜44日の期間、または1〜24週間、あるいはその中の任意の範囲もしくは値にわたって、投与される。
【0115】
本発明の(S)−エナンチオマーおよび/もしくは本発明の組成物の投与のレシピエントは、任意の動物(例えば、哺乳動物)であり得る。哺乳動物の中でも、好ましいレシピエントは、霊長目(ヒト、ならびに類人猿およびサルを含む)、偶蹄目(arteriodactyla)(ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタを含む)、齧歯目(rodenta)(マウス、ラット、ウサギ、およびハムスターを含む)、および食肉目(ネコ、およびイヌを含む)の哺乳動物である。トリの中では、好ましいレシピエントは、シチメンチョウ、鶏、および同じ目の他のメンバーである。最も好ましいレシピエントは、ヒトである。
【0116】
(組み合わせ治療)
本発明の(S)−エナンチオマーは、通常は、1種以上の他の治療剤と合わせられ得るか、またはこれらの任意の組み合わせとして、電位開口型ナトリウムチャネルの調節(好ましくは、阻害)によって改善されるかもしくは緩和される哺乳動物(好ましくは、ヒト)における疾患もしくは状態の処置において、合わせられ得る。例えば、本発明の(S)−エナンチオマーは、他の治療剤と組み合わせて、同時、逐次的にもしくは別個に投与され得る。上記他の治療剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・オピエート鎮痛剤(例えば、モルフィン、ヘロイン、コカイン、オキシモルフィン、レボルファノール、レバロルファン、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、ナルメフェン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフィン、メリピジン(meripidine)、メタドン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィンおよびペンタゾシン);
・非オピエート鎮痛剤(例えば、アセトメニフェン(acetomeniphen)、サリチレート(例えば、アスピリン);
・非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルシナル(diflusinal)、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスルリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチンおよびゾメピラック);
・抗痙攣薬(例えば、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、ラモトリギン、バルプロエート、トピラメート、ガバペンチンおよびプレガバリン);
・抗鬱剤(例えば、三環系抗鬱剤(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、デスプラミン、イミプラミンおよびノルトリプチリン));
・COX−2選択的インヒビター(例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、およびルミラコキシブ);
・αアドレナリン作動薬(例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デクスメタトミジン、モダフィニル、および4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン);
・バルビツレート鎮静剤(例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール(butabital)、メフォバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、テアミラール(theamylal)およびチオペンタール);
・タキキニン(NK)アンタゴニスト、特に、NK−3アンタゴニスト、NK−2アンタゴニストもしくはNK−1アンタゴニスト、例えば、(R,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル)]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]−ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチルフェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]−メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタントもしくは3−[[2−メトキシ5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−メチルアミノ]−2−フェニルピペリジン(2S,3S);
・コールタール鎮痛剤(coal−tar analgesics)、特に、パラセタモール;
・セロトニン再取り込みインヒビター(例えば、パロキセチン、セルトラリン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンデスメチル代謝産物)、代謝産物デメチルセルトラリン、’3 フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝産物デスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l−フェンフルラミン、フェモキセチン、イホキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミン、トラゾドンおよびフルオキセチン);
・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込みインヒビター(例えば、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン(mirtazepine)、オキサプロチリン、フェゾラミン、アトモキセチン(tomoxetine)、ミアンセリン、ブプロピオン(buproprion)、ブプロピオン代謝産物ヒドロキシブプロピオン、ノミフェンシンおよびビロキサジン(Vivalan(登録商標)))、特に、選択的ノルアドレナリン再取り込みインヒビター(例えば、レボキセチン、特に、(S,S)−レボキセチン、およびベンラファキシン、デュロキセチン神経弛緩薬 鎮静薬/抗不安薬;
・二重セロトニン−ノルアドレナリン再取り込みインヒビター(例えば、ベンラファキシン、ベンラファキシン代謝産物O−デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝産物デスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびイミプラミン);
・アセチルコリンエステラーゼインヒビター(例えば、ドネペジル);
・5−HT3アンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン);
・代謝調節型グルタメートレセプター(mGluR)アンタゴニストもしくはアゴニストまたはmGluRにおけるグルタメートのアロステリック増強剤;
・局所麻酔剤(例えば、メキシレチンおよびリドカイン);
・コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン);
・抗不整脈薬(例えば、メキシレチンおよびフェニトイン);
・ムスカリンアンタゴニスト(例えば、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム(tropsium t chloride)、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリンおよびイプラトロピウム);
・ムスカリンアゴニストもしくはムスカリンレセプターにおけるアセチルコリンのアロステリック増強剤
・カンナビノイドもしくはカンナビノイドレセプターにおけるエンドルフィンのアロステリック増強剤;
・バニロイドレセプターアゴニスト(例えば、レシニフェラトキシン(resinferatoxin))もしくはバニロイドレセプターアンタゴニスト(例えば、カプサゼピン);
・鎮静薬(例えば、グルテチミド、メプロバメート、メタカロン、およびジクロラールフェナゾン);
・抗不安薬(例えば、ベンゾジアゼピン)、
・抗鬱剤(例えば、ミルタザピン)、
・局所剤(topical agent)(例えば、リドカイン、カプサシン(capsacin)およびレシニフェラトキシン(resiniferotoxin));
・筋弛緩剤(例えば、ベンゾジアゼピン、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモールおよびオルフェナドリン(orphrenadine);
・抗ヒスタミン剤もしくはH1アンタゴニスト;
・NMDAレセプターアンタゴニスト;
・5−HTレセプターアゴニスト/アンタゴニスト;
・PDEVインヒビター;
・Tramadol(登録商標);
・コリン作動性(ニコチン性)鎮痛剤;
・α−2−δリガンド;
・プロスタグランジンE2サブタイプアンタゴニスト;
・ロイコトリエンB4アンタゴニスト;
・5−リポキシゲナーゼインヒビター;ならびに
・5−HT3アンタゴニスト。
【0117】
このような組み合わせを使用して処置および/もしくは予防され得る疾患および状態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:疼痛、中枢媒介性および末梢媒介性の急性、慢性、神経障害性の疾患、ならびに疼痛および他の中枢神経障害と関連する他の疾患(例えば、癲癇、不安、鬱病および双極性疾患);もしくは心血管障害(例えば、不整脈、心房細動および心室細動);神経筋障害(例えば、不穏下肢症候群および筋麻痺もしくは持続性筋強直)(Hamann M,Meisler MH,Richter,A Exp.Neurol.184(2):830−838(2003));発作に対する神経保護、神経外傷、および多発性硬化症;ならびにチャネロパチー(例えば、先端紅痛症および家族性直腸痛症候群)。
【0118】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」とは、本発明の(S)−エナンチオマーと1種以上のさらなる治療剤との任意の混合物もしくは並べ替えに言及する。状況が別のことを明らかにしているのでなければ、「組み合わせ」は、本発明の(S)−エナンチオマーと、1種以上の治療剤との同時もしくは逐次的な送達を含み得る。状況が別のことを明らかにしているのでなければ、「組み合わせ」は、本発明の(S)−エナンチオマーと、別の治療剤との剤形を含み得る。状況が別のことを明らかにしているのでなければ、「組み合わせ」は、本発明の(S)−エナンチオマーと別の治療剤との投与経路を含み得る。状況が別のことを明らかにしているのでなければ、「組み合わせ」は、本発明の(S)−エナンチオマーと、別の治療剤との処方物を含み得る。剤形、投与経路および薬学的組成物としては、本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明の1つの組み合わせ治療としては、本発明の(S)−エナンチオマーと経口薬剤との局所適用が挙げられる。本発明の(S)−エナンチオマーの局所適用は、非常に低い全身曝露を有し、多くの経口鎮痛剤と付加的な活性を有する。別の考えられる組み合わせ治療は、本発明の(S)−エナンチオマーと経口薬剤との経口投与を含む。本発明のさらなる組み合わせ治療は、本発明の(S)−エナンチオマーと局所剤との局所適用を含む。
【0120】
本発明の(S)−エナンチオマーは、移植可能な医療用デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステントおよびカテーテル)をコーティングするための組成物に組み込まれ得る。よって、本発明は、別の局面において、上記のように、本発明の化合物および移植可能なデバイスをコーティングするのに適したキャリアを含む移植可能なデバイスをコーティングするための組成物を含む。さらに別の局面において、本発明は、本発明の(S)−エナンチオマーおよび移植可能なデバイスをコーティングするのに適したキャリアを含む組成物でコーティングされた移植可能なデバイスを含む。適切なコーティングおよびコーティングされた移植可能なデバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載される。
【0121】
(キットのパーツ)
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含むキットを提供する。上記キットはまた、イオンチャネルの活性を調節して疼痛ならびに本明細書で開示される他の有用性のあるものを処置するための、上記薬学的組成物の使用説明書を含む。好ましくは、市販のパッケージは、上記薬学的組成物の1以上の単位用量を含む。例えば、このような単位用量は、静脈内注射の調製物に十分な量であり得る。光感受性および/もしくは空気感受性であるこのような組成物が、特別なパッケージングおよび/もしくは処方を必要とし得ることは、当業者に明らかである。例えば、光に対して不透明なパッケージングが使用され得、そして/または周囲の空気との接触から密封され得、そして/または適切なコーティングもしくは賦形剤とともに処方され得る。
【0122】
(本発明の(S)−エナンチオマーの調製)
本発明の(S)−エナンチオマーおよび対応する(R)−エナンチオマーは、いずれかのキラル高圧液体クロマトグラフィー法を使用して、もしくは以下の反応スキームにおいて記載されるように、擬似移動層クロマトグラフィー法(simulated moving bed chromatography method)によって、本発明の要旨において上記に示されるように、式(I)の化合物の分割によって調製される。ここで「キラルHPLC」とは、キラル高圧液体クロマトグラフィーに言及し、「SMB」とは、擬似移動層クロマトグラフィーに言及する:
反応スキーム
【0123】
【化5】

式(I)の化合物は、PCT公開特許出願WO 2006/110917に開示される方法によって、本明細書に記載される方法によって、または当業者に公知の方法によって調製され得る。
【0124】
当業者は、個々のエナンチオマーの分割に適した上記の反応スキームにおいてバリエーションを認識する。
【0125】
あるいは、式(I−S)の(S)−エナンチオマーおよび式(I−R)の(R)−エナンチオマーは、公知である出発材料から、または公知のプロセスに類似のプロセスを使用して容易に調製される出発材料から、合成され得る。
【0126】
好ましくは、本明細書で開示される分割法によって得られる本発明の(S)−エナンチオマーは、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まないか、またはごく微量の(R)−エナンチオマーを含む。
【実施例】
【0127】
以下の合成実施例は、上記の反応スキームによって開示される分割法を例示するために供し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0128】
(合成実施例1)
(1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン(式(I)の化合物)の合成)
【0129】
【化6】

アセトン(50mL)中のスピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン(1.0g,3.6mmol)(これは、PCT公開特許出願WO 2006/110917に開示される方法に従って調製され得る)および炭酸セシウム(3.52g,11mmol)の懸濁物に、2−ブロモメチル−5−トリフルオロメチルフラン(1.13g,3.9mmol)を一度に添加し、上記反応混合物を、55〜60℃で16時間にわたって攪拌した。周囲温度へと冷却した際に、上記反応混合物を濾過し、その濾液を、減圧下でエバポレートした。その残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(1/9〜1/1)で溶出するカラムクロマトグラフィーに供して、1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン(すなわち、式(I)の化合物)(1.17g,76%)を白色固体として得た: mp 139−141℃;
【0130】
【数1】

(合成実施例2)
(キラルHPLCによる式(I)の化合物の分割)
式(I)の化合物を、本発明の(S)−エナンチオマーおよび対応する(R)−エナンチオマーへと、以下の条件下でキラルHPLCによって分割した:
カラム:Chiralcel(登録商標)OJ−RH; 20mm I.D.×250mm, 5 mic; Lot: OJRH CJ−EH001(Daicel Chemical Industries,Ltd)
溶出液:アセトニトリル/水(60/40, v/v, 均一濃度)
流速:10mL/分
実行時間:60分
負荷:1mLのアセトニトリル中100mgの式(I)の化合物
温度:周囲
上記キラルHPLC条件下で、式(I)の化合物の(R)−エナンチオマー(すなわち、(R)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3-f][1,3]−ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン)を、白色固体として第1の画分として単離した;ee(エナンチオマー過剰)>99%(分析OJ−RH, 水中55%アセトニトリル);mp 103-105 °C;
【0131】
【数2】

式(I)の化合物の(S)−エナンチオマー(すなわち、(S)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ−[フロ[2,3-f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン)を、白色固体として第2の画分として単離した;ee>99%(分析OJ−RH,水中55%アセトニトリル);mp 100-102 °C;
【0132】
【数3】

(合成実施例3)
(SMBクロマトグラフィーによる式(I)の化合物の分割)
式(I)の化合物を、以下の条件下で、SMBクロマトグラフィーによって本発明の(S)−エナンチオマーおよび対応する(R)−エナンチオマーへと分割した:
抽出物:147.05mL/分
ラフィネート:76.13mL/分
溶離液:183.18mL/分
供給:40mL/分
リサイクリング:407.88mL/分
実行時間:0.57分
温度:25℃
圧力:46バール
供給溶液(1.0Lの移動相(アセトニトリル/メタノール/トリフルオロ酢酸の25:75:0.1(v:v:v)混合物))中の式(I)の化合物25g)を、固定相として110g(1カラムあたり,9.6cm,4.8cm I.D.)のキラルPAK−ADを含む2−2−2−2配置で8つの同一カラムを備えたSMBシステム(Novasep Licosep Lab Unit)へと連続して注入した。第1の溶出エナンチオマー(式(I)の化合物の(R)−エナンチオマー)は、ラフィネートストリーム中に含まれ、第2の溶出エナンチオマー(式(I)の化合物の(S)−エナンチオマー)は、抽出物ストリーム中に含まれていた。上記SMB分割から得られた(S)−エナンチオマーおよび(R)−エナンチオマーの特徴付けデータは、キラルHPLCを利用して、上記で得られたものに同一であった。
【0133】
式(I)の化合物を、Waters分取用LCMS自動精製システムで、その成分エナンチオマーへと分割した。上記キラルカラムからの第1の溶出エナンチオマーを、臭素化して(その不斉炭素原子から十分に移動した部位で)、対応する5’−ブロモ誘導体を得、これを、その後結晶化して、X線結晶解析に適した単結晶を生成した。上記第1の溶出エナンチオマーのこの臭素化誘導体の結晶構造物を得、その絶対配置は、本発明の(R)−エナンチオマーと同じであることが見いだされた。よって、上記キラルカラムからの第2の溶出エナンチオマーは、本発明の(S)−エナンチオマーである。さらに、上記SMB分割の抽出物ストリームから得られた材料は、上記のLC分割から得られた材料のものと同じサイン(ポジティブ、すなわち、右旋性)の比旋光度を有した。
【0134】
(生物学的アッセイ)
種々の技術は、本発明の化合物の活性を試験することについて、もしくは公知の薬学的に受容可能な賦形剤中でのそれらの溶解度を決定することについて、当該分野で公知である。本明細書に記載される発明が、より十分に理解され得るように、以下の生物学的アッセイが示される。これら実施例は、例示目的に過ぎず、いかなる様式においても本発明を限定するとして解釈されるべきでないことが理解されるものとする。
【0135】
(生物学的実施例1)
(グアニジンインフラックスアッセイ(インビトロアッセイ))
この実施例は、内因性に発現された起源もしくは異種で発現された起源のいずれかの細胞において安定に発現された、ヒトもしくはラットの電位開口型ナトリウムチャネルに対する試験薬剤を試験し、かつプロファイリングするためのインビトロアッセイを記載する。このアッセイはまた、電位開口型ナトリウムチャネルを調節する(好ましくは、ブロックする)化合物のIC50を決定するために有用である。上記アッセイは、Reddy,N.L.,ら,J.Med.Chem.(1998),41(17):3298−302によって記載されるグアニジンインフラックスアッセイに基づく。
【0136】
上記グアニジンインフラックスアッセイは、ハイスループットマイクロプレートベースの形式において電位開口型ナトリウムチャネルのイオンフラックス活性を決定するために使用されるラジオトレーサーフラックスアッセイである。上記アッセイは、維持されたインフラックスを生じる種々の公知の電位開口型ナトリウムチャネル調節因子と組み合わせて14C−グアニジン塩酸塩を使用して、試験薬剤の有効性をアッセイするものである。有効性は、IC50計算によって決定される。選択性は、目的の電位開口型ナトリウムチャネルに対する上記化合物の有効性と、他の電位開口型ナトリウムチャネルに対するその有効性とを比較することによって決定される(「選択性プロファイリング」ともいわれる)。
【0137】
試験薬剤の各々を、目的の電位開口型ナトリウムチャネルを発現する細胞に対してアッセイする。電位開口型ナトリウムチャネルは、TTX感受性もしくは感受性がないとして特徴付けられる。この特性は、他の電位開口型ナトリウムチャネルとの混合集団中に目的の電位開口型ナトリウムチャネルがある場合に、目的の電位開口型ナトリウムチャネルの活性を評価するときに有用である。以下の表1は、TTXの存在下もしくは非存在下での特定の電位開口型ナトリウムチャネル活性についてのスクリーニングにおいて有用な細胞系をまとめる。
【0138】
【表1−1】

【表1−2】

電位開口型ナトリウムチャネルを異種発現する不死化細胞系を使用することもまた、可能である。このような細胞系のクローニング、安定なトランスフェクションおよび増殖は、当業者に公知である(例えば、Klugbauer,Nら,EMBO J.(1995),14(6):1084−90;およびLossin,C.ら,Neuron(2002),34,pp.877−884を参照のこと)。
【0139】
目的の電位開口型ナトリウムチャネルを発現する細胞を、供給元に従って増殖させるか、または組換え細胞の場合には、選択的増殖培地(例えば、G418(Gibco/Invitrogen))の存在下で増殖させる。上記細胞を、培養ディッシュから酵素溶液(1×)トリプシン/EDTA(Gibco/Invitrogen)で分離し、血球計算板(Neubauer)を使用して密度および生存率について分析する。分離した細胞を洗浄し、それらの培養培地中で再懸濁し、次いで、ポリ−D−リジンコーティングしたシンチプレート(Perkin Elmer)へ播種し(約100,000細胞/ウェル)、37℃/5% COで20〜24時間にわたってインキュベートする。低ナトリウムHEPES緩衝化食塩溶液(LNHBSS)(150mM 塩化コリン(choline chloride)、20nM HEPES(Sigma)、1mM 塩化カルシウム、5mM 塩化カリウム、1mM 塩化マグネシウム、10mM グルコース)で完全に洗浄した後、試験薬剤をLNHBSSで希釈し、次いで、所望の濃度で各ウェルに添加する(試験薬剤の種々の濃度が使用され得る)。上記活性化/放射標識混合物は、電位開口型ナトリウムチャネルを通過するフラックスを測定するために、アルカロイド(例えば、ベラトリジンもしくはアコニチン(Sigma))またはピレスロイド(例えば、デルタメトリン、サソリLeiurus quinquestriatus hebraeus由来の毒(Sigma))および14C−グアニジン塩酸塩(ARC)を含む。
【0140】
上記細胞に試験薬剤および活性化/放射標識混合物を添加した後、上記ポリ−D−リジンコーティングしたシンチプレートを、周囲温度でインキュベートする。インキュベーション後、上記ポリ−D−リジンコーティングしたシンチプレートを、グアニジン(Sigma)を補充したLNHBSSで完全に洗浄する。上記ポリ−D−リジンコーティングしたシンチプレートを乾燥させ、次いで、Wallac MicroBeta TriLux(Perkin−Elmer Life Sciences)を使用して計数する。上記試験薬剤が電位開口型ナトリウムチャネル活性をブロックする能力を、上記異なる電位開口型ナトリウムチャネルを発現する細胞の内部に存在する14C−グアニジンの量を比較することによって決定する。このデータに基づいて、本明細書の他の箇所で示されるように、種々の計算が、特定の電位開口型ナトリウムチャネルに対して試験薬剤が選択的であるか否かを決定するために使用され得る。
【0141】
特定の電位開口型ナトリウムチャネルに対する試験薬剤のIC50値は、上記の一般的方法を使用して決定され得る。上記IC50は、1μM、5μMもしくは10μMの出発濃度で、ナノモル未満の範囲、ナノモル範囲および低マイクロモル範囲に達する最終濃度で連続希釈して、2連もしくは3連において3点、8点、10点、12点もしくは16点の曲線を使用して決定され得る。代表的には、試験薬剤の中点濃度を1μMで設定し、1/2希釈大きいもしくは小さい一連の濃度が、適用される(例えば、0.5μM;5μMおよび0.25μM;10μMおよび0.125μM;20μMなど)。上記IC50曲線は、4パラメーター論理モデルもしくは正弦用量−応答モデル式(適合=(A+((B−A)/(1+((C/x)^D))))を使用して計算される。
【0142】
倍数選択性、選択性の係数(factor of selectivity)もしくは選択性の倍数は、試験電位開口型ナトリウムチャネルのIC50値を参照電位開口型ナトリウムチャネル(例えば、Na1.5)で除算することによって計算される。
【0143】
よって、式(I)の化合物である、式(I)の化合物の(S)−エナンチオマー(すなわち、本発明の(S)−エナンチオマー)、および式(I)の化合物の(R)−エナンチオマーは、このアッセイにおいて使用される場合、以下の表2に示されるように、hNa1.7に対する電位開口型ナトリウムチャネルブロッキング活性を示した:
【0144】
【表2】

本発明の(S)−エナンチオマーおよび上記(R)−エナンチオマーの濃度−応答関係は、図1に示される。実線の曲線は、1:1結合等温線に対する最小2乗ベストフィットを示す;これら曲線を記載するIC50は、表2に示される。本発明の(S)−エナンチオマーは、対応する(R)−エナンチオマーの阻害有効性と比較した場合、このモデルにおいてhNa1.7に対して有意に高い(すなわち、>1000倍)阻害有効性を実証した。
【0145】
これら結果は、より高い薬理学的活性が、おそらくより少ない副作用で、より低い投与量レベルで達成され得るという点で、本明細書に記載される有用性について、上記(R)−エナンチオマーもしくは式(I)の化合物(ラセミ体)より本発明の(S)−エナンチオマーの使用に有利である。さらに、上記(R)−エナンチオマーは、安全性研究のための非常に重要なツールである。なぜなら、上記(R)−エナンチオマーは、機構ベースの効果(ナトリウムチャネルのブロックによって媒介されるもの)と、効力を損なうことなくアナログにおいて排除され得るオフターゲット活性との間を区別することを可能にするからである。有害作用が、機構ベースである場合、上記(S)−エナンチオマーは、上記(R)−エナンチオマーよりはるかに強力である。なぜなら、二次的な作用部位は、同一の立体選択性を有する可能性は低く、上記2種のエナンチオマーは、二次的な作用部位に対して類似の効果(有効性を含む)を有するようであるからである。
【0146】
(生物学的実施例2)
(電気生理学的アッセイ(インビトロアッセイ))
hNa1.7を発現するHEK293細胞を、0.5mg/mL G418、±1% PSG、および10% 熱不活性化ウシ胎仔血清を含むDMEM増殖培地(Gibco)中、37℃および5% COで培養した。電気生理学的記録については、細胞を、10mmディッシュ上に播種した。
【0147】
全細胞の記録を、Axopatch 200B増幅器およびClampexソフトウェア(Axon Instruments,Union City,CA)を使用して、全細胞電位クランプ(Beanら,前掲)の確立された方法によって試験した。全ての実験を、周囲温度で行った。電極を、2〜4Mオーム電圧エラーの抵抗へと先端熱加工し、キャパシタンス人工物を、それぞれ、一連の抵抗補償およびキャパシタンス補償によって最小化した。データを40kHzで取得し、5kHzでフィルタにかけた。外部(バス)溶液は、以下からなった:NaCl(140mM)、KCl(5mM)、CaCl(2mM)、MgCl(1mM)、HEPES(10mM)(pH7.4)。内部(ピペット)溶液は、以下からなった(mM単位):NaCl(5)、CaCl(0.1)、MgCl(2)、CsCl(10)、CsF(120)、HEPES(10)、EGTA(10)(pH7.2)。
【0148】
上記チャネルの休止状態および不活性化状態(それぞれ、KおよびK)についての化合物の定常状態親和性を評価するために、−60〜+90mVへの脱分極電位までの、−120mVの保持電位からの12.5ms試験パルスを使用して、電流−電圧関係(I−V曲線)を構築した。上記IV−曲線(−30〜0mV)のピーク付近の電圧を、上記実験の残り全体を通じて試験パルスとして使用した。次いで、定常状態不活性化(アベイラビリティ)曲線を、−120〜−10mVの範囲に及ぶ電位への1秒のコンディショニングパルス後に、8.75ms試験パルスの間に活性化した電流を測定することによって構築した。
【0149】
電位開口型ナトリウムチャネルへの化合物の結合の定常状態電位依存性を、2種の保持電位におけるイオン流のブロックを測定することによって決定した。静止状態チャネルへの結合を、最大のアベイラビリティが達成されるように、−120mVの保持電位を使用することによって決定した。不活性化状態のチャネルへの結合を、上記チャネルのうちの約10%のみが開いて利用可能であるように、保持電位において評価した。膜電位を、薬物結合が平衡に達し得るように、少なくとも10秒間にわたってこの電圧において保持した。
【0150】
各電圧での見かけの解離定数は、以下の式で計算した:
【0151】
【数4】

ここでKは、解離定数(KもしくはKいずれか)であり、[薬物]は、上記試験化合物の濃度である。
【0152】
よって、式(I)の化合物、式(I)の化合物の(S)−エナンチオマー(すなわち、本発明の(S)−エナンチオマー)、および式(I)の化合物の(R)−エナンチオマーは、このモデルにおいて試験した場合、以下の表3に示されるように、hNa1.7の上記静止/閉じた状態および不活性化状態に対する親和性を示した:
【0153】
【表3】

これら結果によって示されるように、本発明の(S)−エナンチオマーは、上記静止/閉じた状態に対して低親和性および上記不活性化状態に対して高親和性を有する、hNa1.7の状態依存性もしくは電位依存性改変因子である。上記結果は、上記(S)−エナンチオマーが、hNa1.7の不活性化状態への結合において、上記(R)−エナンチオマーより約5倍強力であることを実証した。さらに、上記結果は、上記(S)−エナンチオマーが、上記ラセミ体(すなわち、式(I)の化合物)の有効性の主な原因であることを実証した。
【0154】
(生物学的実施例3)
(インビボアッセイ)
(急性疼痛(ホルマリン試験))
上記ホルマリン試験を、急性疼痛の動物モデルとして使用する。上記ホルマリン試験において、動物を、20分間にわたって、実験日の前日に、プレキシグラス試験チャンバに短時間ならす。試験日に、動物に、上記試験物品を無作為に注射する。薬物投与の30分後に、ラットの左後脚の足底表面に、50μLの10% ホルマリンを皮下注射する。ビデオデータ取得を、90分の期間にわたって、ホルマリン投与直後に開始する。
【0155】
上記画像を、*.llii拡張子のファイルを保存するActimetrix Limelightソフトウェアを使用して取り込み、次いで、これを、MPEG−4コードに変換する。上記ビデオを、行動分析ソフトウェア「The Observer 5.1」(Version 5.0、Noldus Information Technology,Wageningen,The Netherlands)を使用して分析する。上記ビデオ分析を、上記動物行動を注視し、各々をタイプに従ってスコア付けし、その行動の長さを確定することによって行う(Dubuisson and Dennis,1977)。スコア付けした行動は、以下を含む:(1)通常の行動、(2)脚に体重をかけない、(3)脚を浮かす、(4)脚をなめる/噛むもしくは引っ掻く。注射した脚を挙上する、かばう、もしくは過剰になめる、噛むおよび引っ掻く、は、疼痛応答を示す。化合物からの鎮痛応答もしくは保護は、上記注射した脚を明らかにかばう、過剰になめる、噛むおよび引っ掻くことなしに、両脚が床上で休息している場合に示される。
【0156】
上記ホルマリン試験データの分析は、2つの因子に従って行われる:(1)%最大能力阻害効果(%MPIE)および(2)疼痛スコア。上記%MPIEは、一連の工程によって計算され、ここで第1は、各動物の通常でない行動(行動1,2,3)の長さを合計することである。上記ビヒクル群の単一の値は、上記ビヒクル処置群内での全てのスコアを平均することによって得る。以下の計算により、各動物についてのMPIE値が得られる:
MPIE(%)=100−[(処置合計/平均ビヒクル値)×100%]。
【0157】
上記疼痛スコアは、上記のように重み付けしたスケールから計算される。上記行動の期間は、重み(上記応答の重篤度の評価)を掛け、観察の合計の長さで割って、各動物についての疼痛評価を決定する。上記計算は、以下の式によって表される:
疼痛評価=[0(To)+1(T1)+2(T2)+3(T3)]/(To+T1+T2+T3)。
【0158】
(CFA誘導性慢性炎症性疼痛)
この試験において、接触性異痛を、較正したvon Freyフィラメントで評価する。まる1週間の飼育施設への順応の後に、150μLの「完全フロイントアジュバント」(CFA)エマルジョン(CFA0.5mg/mLの濃度での油/食塩水(1:1)エマルジョン中の懸濁物)を、軽いイソフルラン麻酔下で、ラットの左後脚の足底表面の皮下に注射した。動物を麻酔から回復させ、全ての動物のベースライン温度閾値および機械的侵害受容閾値を、CFAの投与後1週間、評価した。全ての動物を、実験開始の前日に20分間にわたって、実験装置になれさせた。上記試験物品およびコントロール物品を上記動物に投与し、上記侵害受容閾値を、薬物投与後の規定された時間で測定して、6種の利用可能な処置の各々に対する鎮痛応答を決定した。使用した時間点は、各試験化合物についての最高の鎮痛効果を示すために予め決定された。
【0159】
本発明の(S)−エナンチオマーおよび対応する(R)−エナンチオマーを、経口投与および局所投与の両方を使用して比較した。図2は、経口投与での本発明の(S)−エナンチオマーおよび上記(R)−エナンチオマーの効力の比較を示す。各エナンチオマーを、10mg/Kg、30mg/Kg、100mg/Kg、もしくは200mg/Kgで投与した。各用量で達成された血漿濃度もまた決定した。そして疼痛応答の改善(ベースライン閾値からの%増加として)を、血漿濃度の関数としてプロットする。
【0160】
上記(S)−エナンチオマーは、200mg/Kgで投与した場合に、より大きな最大効果を有した。上記(R)−エナンチオマーは、等しい用量レベルにおいて遙かに高い血漿濃度を達成した。このことは、予測外かつ稀な知見であった。結果として、上記ラセミ体(すなわち、式(I)の化合物)の使用は、上記不活性エナンチオマー(すなわち、上記(R)−エナンチオマー)の約10倍過剰をもたらす。よって、本発明の(S)−エナンチオマーの使用は、立体選択的でないオフターゲット活性に遭遇する最小の機会で効力を得る可能性を大いに改善した。
【0161】
本発明の(S)−エナンチオマーをまた、種々の投与量(1%、2%、4%および8%(w/v))で上記動物に局所投与し、上記侵害受容閾値を、薬物投与後の規定された時間点で測定して、利用可能な処置の各々に対する鎮痛効果を決定した。使用した時間点は、各試験化合物についての最高の鎮痛効果を示すために予め決定した。
【0162】
触覚刺激に対する上記動物の応答閾値を、Hargreaves試験に従うModel 2290 Electrovonfrey触覚計(IITC Life Science,Woodland Hills,CA)を用いて測定した。上記動物を、ワイヤメッシュ表面上に設置した高所のプレキシグラス囲いに配置した。15分間の順応後、予め較正したVon Frey毛様物を、十分な力で、上記動物の同側後脚の足底に対して直角に適用し、グラム単位で測定して、上記脚の鮮明な応答(crisp response)を誘発した。上記応答は、疼痛刺激からの引っ込めを示し、効力のエンドポイントを構成した。上記脚による迅速な払いのけを最低の力で誘導する上記毛様物が決定されるまで、または約20gのカットオフ力(cut off force)に達する場合、試験は継続する。このカットオフ力は、上記動物の体重のうちの約10%を表し、この力はより硬い毛様物(これは、上記刺激の性質を変化させる)の使用に起因する脚全体の挙上を防止するように働くので、使用される。上記データを、グラム単位で測定したベースライン閾値からの%増加として表した。
【0163】
本発明の(S)−エナンチオマーは、このモデルにおいて試験した場合、以下の表4に示されるように、鎮痛効果を示した。
【0164】
【表4】

2%、4%および8%(w/v)での本発明の(S)−エナンチオマーは、鎮痛効果を示すベースラインからの%増加(IFB)によって表される場合、von Frey機械的脚引っ込め閾値における増大を示した。上記(S)−エナンチオマーについての鎮痛効果は、8%(w/v)という試験した最高用量まで用量が増大するにつれて増大した。その最高用量は、+45.1%という最大%IFBを示した。しかし、上記1%(w/w)投与量群は、von Frey機械的脚引っ込め閾値において観察可能な増大を示さなかった。上記結果は、上記(S)−エナンチオマーが、updateupdate2%〜8%(w/v)の範囲でCFA誘導性炎症性疼痛モデルにおいて鎮痛効果を有することを示す。
【0165】
(侵害受容の術後モデル)
このモデルにおいて、脚の平面内切開によって引き起こされる痛覚過敏(hypealgesia)は、上記動物が適用された刺激からその脚を引っ込めるまで、脚に増大した触覚刺激を適用することによって測定される。動物を、ノーズコーンを介して送達される3.5% イソフルラン下で麻酔する間に、1cmの長軸方向の切開を、左後脚の足底面に皮膚および筋膜を貫通して、踵の近位端の0.5cmから始まって、足指の方向へ延びて、ナンバー10の外科用メスの刃を使用して作製した。切開後、皮膚を、2,3−0滅菌絹縫合糸を使用してあわせする。傷害した部位をPolysporinおよびBetadineで覆う。動物を、一晩の回復のために、彼らのホームケージに戻す。
【0166】
手術した(同側の)脚および手術していない(対側の)脚の両方について触覚刺激に対する動物の引っ込め閾値を、Model 2290 Electrovonfrey触覚計(IITC Life Science,Woodland Hills,CA)を使用して測定し得る。動物を、ワイヤメッシュ表面(mire mesh surface)上に設置した高所のプレキシグラス囲いに配置する。少なくとも10分間の順応後に、予め較正したVon Frey毛様物を、10g毛様物から始まる上向性の順序で、上記脚に対する上記毛様物の僅かな歪みを引き起こすのに十分な力で、上記動物の両脚の足底表面に対して垂直に適用する。上記脚による迅速な払いのけを最低の力で誘導する上記毛様物が決定されるまで、または約20gのカットオフ力に達する場合、試験は継続した。このカットオフ力は、上記動物の体重のうちの約10%を表し、この力はより硬い毛様物(これは、上記刺激の性質を変化させる)の使用に起因する脚全体の挙上を防止するように働くので、使用される。
【0167】
(神経障害性疼痛モデル;緊縛傷害)
このモデルにおいて、約3cmの切開を、ナンバー10外科用メスの刃を使用して、上記動物の左後脚の大腿中央レベルにおいて、皮膚および筋膜を貫通して作製した。左坐骨神経を、出血を最小限にするように気をつけながら、大腿二頭筋を介する鈍的な切開によって露出させた。4つのゆるい結紮糸を、4−0非分解性滅菌絹縫合糸を使用して、1〜2mmの間隔で、坐骨神経に沿って結んだ。上記ゆるい結紮糸の張力は、4倍の倍率で解剖顕微鏡下で観察した場合に、坐骨神経のわずかな緊縮を誘導するに十分堅い。偽手術した動物において、左の坐骨神経を、さらなる操作なしに露出させた。抗菌軟膏剤を創傷に直接適用し、筋肉を、滅菌縫合糸を使用して閉じた。Betadineを、上記筋肉の上およびその周りに適用し、続いて、手術用クリップで皮膚の閉鎖を行った。
【0168】
触覚刺激に対する動物の応答閾値を、Model 2290 Electrovonfrey触覚計(IITC Life Science,Woodland Hills,CA)を使用して測定した。動物を、ワイヤメッシュ表面上に設置した高所のプレキシグラス囲いに配置した。10分間の順応後、予め較正したVon Frey毛様物を、0.1g毛様物から始まる上向性の順序で、上記脚に対する上記毛様物の僅かな歪みを引き起こすのに十分な力で、上記動物の両脚の足底表面に対して垂直に適用した。上記脚による迅速な払いのけを最低の力で誘導する上記毛様物が決定されるまで、または約20gのカットオフ力に達する場合、試験は継続する。このカットオフ力は、上記動物の体重のうちの約10%を表し、この力はより硬い毛様物(これは、上記刺激の性質を変化させる)の使用に起因する脚全体の挙上を防止するように働くので、使用される。
【0169】
上記動物の温度侵害受容閾値を、Hargreaves試験を使用して評価した。触覚閾値の測定後に、動物を、加熱ユニットを備える高所のガラスプラットフォームの上部に設置したプレキシグラス囲いに配置した。上記ガラスプラットフォームを、全ての試験試行にわたって約24〜26℃の温度で、サーモスタットで制御した。動物を、全ての検査行動が終わるまで、上記囲いに配置した後10分間にわたって順応させた。Model 226 Plantar/Tail Stimulator Analgesia Meter(IITC,Woodland Hills,CA)を使用して、ガラスプラットフォームの下から後脚の足底表面へ放射熱ビームを適用した。全ての試験試行の間に、上記熱源の空転時強度および作動時強度を、それぞれ1および55に設定し、20秒間のカットオフ時間を、組織損傷を防ぐために使用した。
【0170】
上記(S)−エナンチオマーを、上記CFAモデルについて記載されるように、薬物の局所適用を使用してこのCCIモデルにおいて、対応する(R)−エナンチオマーおよびラセミ体(式(I)の化合物)と比較した(図3を参照のこと)。各試験化合物を、2%(w/v)を含む軟膏剤として投与した。電位開口型ナトリウムチャネルインヒビターとしてこれら2種のエナンチオマーの異なる活性と一致して、本発明の(S)−エナンチオマーのみが、疼痛応答を改善した一方で、上記(R)−エナンチオマーは、ベースラインからの有意な増加を有さなかった。上記(S)−エナンチオマーおよび上記ラセミ体の両方が、ベースラインから類似の%増加を示す。このことは、上記(S)−エナンチオマーが鎮痛作用に関与することを示唆する傾向にある。
【0171】
(生物学的実施例4)
(アコニチン誘導性不整脈アッセイ)
本発明の化合物の抗不整脈活性は、以下に試験によって実証される。不整脈は、生理食塩水中に溶解したアコニチン(2.0μg/Kg)の静脈内投与によって誘発される。本発明の試験化合物は、アコニチンの投与後5分で静脈内投与される。上記抗不整脈活性の評価を、上記アコニチン投与から期外収縮(ES)の発生までの時間および上記アコニチン投与から心室頻拍(VT)の発生までの時間を測定することによって行う。
【0172】
イソフルラン麻酔下(2%の1/4〜1/3)のラットにおいて、気管切開を、頸部領域に切開をまず作り、次いで、気管を分離し、2mmの切開をつくって、気管チューブの開口部が口のちょうど上部に配置されるようにチューブを気管の中へ2cm挿入することによって行う。上記チュービングを、縫合糸で固定し、上記実験の期間にわたって人工呼吸器に取り付ける。
【0173】
次いで、切開(2.5cm)を、大腿領域に鈍的な切開プローブを使用してつくり、大腿血管を切り離す。両方の大腿静脈を、一方は、ペントバルビタール麻酔維持(0.02〜0.05mL)のために、一方は、薬物およびビヒクルの注入および注射のためにカニューレ挿管する。大腿動脈を、トランスミッターの血圧ゲルカテーテルとともにカニューレ挿入する。
【0174】
ECG導線を、誘導II(Lead II)位置で(右上/心臓の上−白色誘導および左下/心臓の下−赤色誘導)胸筋へ取り付ける。誘導を縫合糸で固定する。
【0175】
全ての術野を、0.9% 食塩水で湿らせたガーゼで覆う。食塩水(1〜1.5mLの0.9% 溶液)を、術後領域を湿らせるために供給する。上記動物のECGおよび換気を、少なくとも30分間にわたって平衡化させる。
【0176】
上記不整脈を、5分間にわたる2μg/Kg/分 アコニチン注入で誘導する。この時間の間に、上記ECGを記録し、連続してモニターする。
【0177】
(生物学的実施例5)
(虚血誘導性不整脈アッセイ)
心室不整脈の齧歯類モデルは、迅速な電気的除細動および予防パラダイムの両方において、ヒトにおける心房不整脈および心室不整脈の両方について潜在的な治療剤を試験することにおいて使用されてきた。心筋梗塞をもたらす心虚血は、罹病率および死亡率の一般的な原因である。虚血誘導性心室頻拍および心室細動を予防する化合物の能力は、心房頻拍および心室頻拍ならびに心房細動および心室細動の両方についての臨床的設定において、化合物の効力を決定するための受け入れられたモデルである。
【0178】
麻酔を、最初に、ペントバルビタール(i.p.)によって誘導し、i.v.ボーラス注入によって維持する。雄性SDラットは、10mL/Kgの1回拍出量、60拍/分において、部屋の空気での人工換気のために気管カニューレ挿入した。右の大腿動脈および大腿静脈を、それぞれ、平均動脈血圧(MAP)記録および化合物の静脈内投与のために、PE50チュービングでカニューレ挿入する。
【0179】
第4肋骨と第5肋骨との間の胸部を開いて、心臓が見えるように、1.5cm開口部を作る。各ラットを、へこみのあるプラットフォーム上に置き、金属拘束手段を、胸郭に引っかけて、胸腔を開く。縫合針を使用して、上げた心房の直下で心室を貫通させ、30%より大きく50%より小さい閉塞ゾーン(OZ)が得られるように、下向き対角方向に心室を出る。出口位置は、大動脈が左心室に繋がる場所の約0.5cm下である。緩いループ(閉鎖部(occluder))が動脈の枝の周りに形成されるように、上記縫合糸を結ぶ。次いで、胸部を、胸部の外側から接近可能な閉鎖部の末端で閉じる。
【0180】
以下のようにECG測定のために、電極を誘導II(右心房から心尖)に配置する:一方の電極を右前脚に挿入し、他方の電極を左後脚に挿入する。
【0181】
体温、平均動脈圧(MAP)、ECG、および心拍数を、実験の間、絶えず記録する。重要なパラメーターがいったん安定したら、1〜2分間の記録をとって、ベースライン値を確立する。いったんベースライン値が確立されたら、本発明の化合物もしくはコントロール物質の注入を開始する。化合物もしくはコントロールの5分間の注入後、縫合糸をきつく引っ張って、LCAを結紮し、左心室に虚血を作り出す。MAPが、少なくとも3分間にわたって20〜30mmHgの重大なレベルに達しなければ、結紮後20分間にわたって連続して重要なパラメーターを記録する。この場合に、上記動物が死亡宣告されるので記録を停止し、次いで、屠殺する。本発明の化合物が不整脈を予防し、正常に近いMAPおよびHRを維持する能力をスコア付けし、コントロールと比較する。
【0182】
(生物学的実施例6)
ラセミ体(すなわち、式(I)の化合物)と比較すると、上記(R)−エナンチオマーを実質的に含まない上記(S)−エナンチオマーは、種々の薬学的に受容可能な賦形剤においてより良好な溶解度プロフィールを有する。従って、上記(S)−エナンチオマーは、上記ラセミ体より少ない数の投与単位で処方され得る。この特性は、効力を達成するために投与を必要とされる場合、より高レベルで患者の投与を容易にする。溶解度の差異の例は、以下の表5に示される:
【0183】
【表5】

(生物学的実施例7)
(掻痒症の処置のためのインビボアッセイ)
ヒスタミンは、ヒトにおいて掻痒症(掻痒)を誘導する。よって、このアッセイは、雄性ICRマウスにおけるヒスタミン誘導性掻痒症に対して局所投与および経口投与した本発明の(S)−エナンチオマーの効力を評価する。
【0184】
上記動物を、試験群(未処置群、8%(w/v) (S)−エナンチオマーを含む局所的薬学的組成物で処置した群、および50mg/Kg (S)−エナンチオマーの経口的薬学的組成物で処置した群を含む)へと無作為に分けた。試験の1日前に、上記動物の肩甲骨領域をバリカンで剃毛した。試験日に、上記動物を、平坦な表面に対して垂直に配置した透明なプラスチックチューブから構成される試験チャンバ中で60分間順応させた。順応期間の後、上記動物を、上記プラスチックチューブから取り出し、拘束手段に配置し、上記剃毛した肩甲骨領域にヒスタミンを注射した。上記注射を、ハミルトンシリンジを使用して、少体積の注射物(10μL)で皮膚の中に皮内で行った。上記注射溶液は、100μg/10μL(もしくは10mg/mL)の濃度で食塩水中に溶解したヒスタミンからなった。10μgの上記溶液を、各マウスに注射した。注射直後に、上記動物を、上記試験チャンバに戻し、合計50分間にわたって上記試験チャンバの上に配置したカメラによって観察した。上記カメラを、デジタルビデオファイルが作られ、保存され、分析されるコンピューターに接続した。
【0185】
掻痒発作の回数を、40分間にわたってスコア付けした。「掻痒発作」を、後ろ脚の挙上(肩甲骨領域を引っ掻くために後脚を使用し、次いで、地面に戻す)として定義した。あるいは、上記後ろ脚を地面に戻す代わりに、上記マウスが脚をなめることが観察された場合、そのtooを、掻痒発作として計数した。
【0186】
未処置群に対して、動物(n=7)を上記試験チャンバ中でヒスタミン注射前に60分間順応させた。上記ヒスタミン誘導性掻痒症における局所的(S)−エナンチオマーを評価するために、動物(n=16/群)を、30分間にわたって上記試験チャンバ中で順応させ、続いて、50mgの8%(w/v) 局所的(S)−エナンチオマーもしくはビヒクルを、背中の剃毛した領域に適用した。上記動物を、ヒスタミン注射前に、さらに30分間の順応のために上記試験チャンバに戻した。経口(S)−エナンチオマーを評価するために、動物(n=8/群)を、50mg/Kg (S)−エナンチオマーもしくはビヒクルによる経口栄養によって投与し、続いて、上記ヒスタミン注射の前に60分間にわたって、上記試験チャンバに順応させた。
【0187】
上記データを、GraphPad Prism 5統計分析ソフトウェアを使用して分析し、片側t検定を、一変量分析のために使用した。結果を、平均値±SEMとして表す。p<0.05レベルの有意性に達した値を、統計的に有意と見なした。
【0188】
(結果)
皮膚へのヒスタミン注射は、上記動物に、1〜2秒持続する発作での掻痒を単発的に引き起こした。上記未処置群において、掻痒発作は、注射後直ぐに始まり、その後およそ40分間にわたって続いた(図4を参照のこと)。8% (w/v)の局所的(S)−エナンチオマーで処置した群は、有意に低下した掻痒を示した(図5を参照のこと)。ビヒクルのみで処置した動物は、合計回数134.3±13.31(n=16)掻痒発作を有したのに対して、局所的(S)−エナンチオマー出処置したマウスは、89.00±10.51(n=16)掻痒発作を有した。これら群の間の差異は、p値0.0122で統計的に有意であった。50mg/Kg 経口的(S)−エナンチオマーで処置した群は、有意に低下した掻痒を同様に示した(図6を参照のこと)。ビヒクルのみで処置した動物は、合計回数42.88±6.667(n=8)の掻痒発作を有したのに対して、(S)−エナンチオマーで処置したマウスは、17.25±6.310(n=8)掻痒発作を有した。上記経口処置した群の間の差異はまた、p値0.0144で統計的に有意であった。上記結果は、経口投与したおよび局所投与した(S)−エナンチオマーが、掻痒を低下させることを実証した。さらに、2種の一般的薬物送達様式(経口および局所)は、(S)−エナンチオマーを送達して、この治療効果を達成するために使用され得ることが明らかである。
【0189】
(生物学的実施例8)
(原発性/遺伝性先端紅痛症(IEM)の処置のためのヒトにおける臨床試験)
原発性/遺伝性先端紅痛症(IEM)は、稀な遺伝性疼痛状態である。IEMの根底にある原因は、本発明の(S)−エナンチオマーが阻害することが示されたNa1.7電位開口型ナトリウムチャネルにおける1つ以上の機能獲得変異(gain−of−function mutation)であり得る。
【0190】
IEMを有するヒト患者は、頭部および脚における発赤および熱感と関連する強い灼熱感のある疼痛の再発エピソードを有するが、ついには、その疼痛は、恒常的になる。上記疼痛は冷却によって軽減されるが、薬理学的介入に対しては大いに抵抗性であった。しかし、この状態の中程度から顕著な疼痛軽減を示す電位開口型ナトリウムチャネルブロッカーの報告がある。
【0191】
IEMを改善するかもしくは緩和することにおける本発明の(S)−エナンチオマーの効力を決定するための臨床試験を、参加者の脱落率を最小にするために、3相の二重盲検の複数用量のクロスオーバー研究であるように設計し得、登録した患者が、わずか10日間の研究に参加できることを考慮に入れる。この研究に登録した各患者は、彼ら自身のコントロールとして役立ち、クロスオーバー様式において、プラセボおよび400mgの本発明の(S)−エナンチオマーを両方、1日に2回受けている。
【0192】
(生物学的実施例9)
(歯痛の処置のためのヒトにおける臨床試験)
この臨床試験の目的は、埋伏第3臼歯の抜歯後の疼痛の軽減について、単一の500mg用量の本発明の(S)−エナンチオマー 対 プラセボ用量の安全性および効力(始まり、軽減の期間、および全体的な効力)を比較することであった。
【0193】
61名の被験体を、この研究に登録した。上記被験体の平均年齢は、20.4歳であり、被験体は全て男性であった。被験体の大部分は、白人であった(95.1%)。
【0194】
上記疼痛の重篤度および軽減を、11点の疼痛強度数値ランク付けスケール(0=全く疼痛なし〜10=想像できる限り最悪の疼痛まで等級付けした)(PINRS)および5点分類疼痛軽減スケール(REL)を使用して測定した。被験体は、手術後であるが本発明の(S)−エナンチオマーの投与前に、上記PINRSを完了した。有効性変数を、上記RELおよびPINRSのスコアから得、総疼痛軽減(TOTPAR)、疼痛強度差異(PID)、および総計疼痛強度差(SPID)を含め、本発明の(S)−エナンチオマーの投与の4時間後、6時間後、8時間後および12時間後の時点で評価した。
【0195】
しかし、第1のおよび全ての二次的なエンドポイントは、上記(S)−エナンチオマーをプラセボから明らかに隔てて、一致した鎮痛傾向を示した。これら結果は、上記(S)−エナンチオマーが鎮痛特性を有するが、プラセボからの統計的有意性は、2つの主な理由に起因して達成されなかった:(1)相対的に高いプラセボ応答率、および(2)(S)−エナンチオマーの作用のゆっくりとした始まり。利用した歯科モデルは、迅速開始薬物(例えば、NSAIDクラスの抗炎症剤)の評価のために設計され、最もよく適している。本発明の(S)−エナンチオマーは、このようなNSAID様の迅速な作用開始を有さないことが、この研究から明らかになった。しかし、上記(S)−エナンチオマーを受けた被験体によって実証された疼痛軽減は、全ての有効性集団が、評価した全てのエンドポイントについて一致した鎮痛シグナルを示すほど十分に、上記プラセボのみを受けた被験体と比較して高かった。
【0196】
(生物学的実施例10)
(本発明の(S)−エナンチオマーの安全性についてのヒトにおける臨床試験)
この臨床試験は、本発明の(S)−エナンチオマーを含む局所適用される軟膏剤の安全性および薬物動態を評価するための、健康な被験体におけるフェーズ1の、無作為化した二重盲検のプラセボ対照研究であった。
【0197】
上記(S)−エナンチオマー軟膏剤を、21日間連続して毎日適用して、上記(S)−エナンチオマーの局所的皮膚毒性/刺激性を決定した。全身の薬物動態および局所的皮膚薬物レベルもまた、評価した。局所適用後の上記(S)−エナンチオマーへの全身曝露および上記(S)−エナンチオマー軟膏剤の複数用量後の局所的皮膚刺激を評価した。各被験体は、21日間連続で5種の処置を受けた:4%および8%(w/w)(1×100μL;それぞれ、処置Aおよび処置B)を有する軟膏剤としての(S)−エナンチオマー、軟膏剤としてのプラセボ(処置C)、食塩水(0.9%)溶液(1×100μL;ネガティブコントロール;処置D)、およびラウリル硫酸ナトリウム(SLS) 0.1%溶液(1×100μL;ポジティブコントロール;処置E)。上記処置を、閉塞した様式で(5種の処置)および部分的に閉塞した様式で(最初の3種の処置)、各被験体の上背部の2つの異なる部位に適用した。各部位における各処置の位置(閉塞した部位に関して処置A、処置B、処置C、処置D、および処置E、ならびに部分的に閉塞した部位に関して処置A、処置B、および処置C)を無作為化した。被験体を、1日目の最初の投与前の約18時間から、2回目の投与(2日目)後の約8時間まで臨床研究施設に拘束した。被験体には、投与および研究手順のために、19日間連続して(3日目から21日目まで)毎日来させた。
【0198】
重篤な有害事象(SAE)も死亡も報告されなかった。全ての有害事象(AE)は、重篤度においては軽度もしくは中程度であり、AEの大部分は、閉鎖包帯を付着させるために使用されるサージカルテープに由来する局所的皮膚反応に関連した。全ての被験体は、ポジティブコントロールに対して反応した。上記ポジティブコントロールは、上記被験体からの過度の不快感という苦情に従って、4日目に全ての被験体において中止した。皮膚刺激スコアは、投与した全ての処置については低く(0〜7のスールで測定して、最大スコア3)、このことは、(S)−エナンチオマー軟膏剤が、局所的に十分に許容されたことを示す。(S)−エナンチオマー 4%(w/w)、(S)−エナンチオマー 8%(w/w)、プラセボ軟膏剤およびネガティブコントロール(0.9% 食塩水)についての累積刺激スコアの間に差異は認められなかった。刺激の徴候は、被験体の大部分については、28日目(最終投与の7日後)に完全に消散した。
【0199】
心電図記録は、上記被験体において脈拍数、静止状態(quiescent resting state)、もしくはQT間隔に臨床的に有意な変化を示さず、上記被験体のバイタルサイン、身体検査、もしくは実験室評価においても、ベースラインからの臨床的に有意な変化は認められなかった。(S)−エナンチオマーへの全身的曝露は、血漿中の(S)−エナンチオマー濃度が大部分のサンプル(546のうちの489=約90%)において定量化の下限(LLOQ)(0.1ng/mLもしくは100pg/mL)を下回ったので、無視できる程度であった。(S)−エナンチオマーの最高のレベルは、投与期間の間(22日目)に1名の被験体において認められ、それは994pg/mLであった。最小の局所刺激および有利な安全性プロフィールとともに、低い(S)−エナンチオマーの全身的曝露に基づくと、本発明の(S)−エナンチオマーが、局所的鎮痛剤として十分許容されかつ安全であることが結論づけられた。
【0200】
(生物学的実施例11)
(疱疹後神経痛の処置のためのヒトにおける臨床試験)
疱疹後神経痛(PHN)は、神経障害性疼痛を研究するための十分に確立されかつ十分に認識されたモデルである。さらに、PHNは、ナトリウムチャネルブロッカー効力の強力な証拠を示す。以下の研究は、PHNを有する患者に局所的に投与した本発明の(S)−エナンチオマーの安全性、許容性、予備的効力および全身曝露を評価するために、無作為化した二重盲検プラセボ対照の2種の処置、2種の期間のクロスオーバー研究を表す。主な目的は、(a)PHNを有する患者における疼痛の軽減について、(S)−エナンチオマーを含む軟膏剤の安全性および効力と、プラセボのそれとを比較すること、および(b)PHNを有する患者における(S)−エナンチオマーの局所適用後の、上記(S)−エナンチオマーへの全身曝露の程度を評価すること、である。上記処置は、(S)−エナンチオマー 8%(w/w)軟膏剤およびマッチングするプラセボ軟膏剤からなる。
【0201】
研究は、以下の4つの期間を含む:
1.初期スクリーニングおよび洗い出し期間(最大3週間まで);
2.一重盲検のプラセボ導入期間(1週間);
3.2週間の洗い出し/一重盲検プラセボ導入で分けられた、各々3週間続く2種の処置期間(合計で8週間)からなるクロスオーバー処置期間;および
4.安全性の追跡期間(2週間)。
【0202】
本明細書において言及された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物の全ては、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0203】
前述の発明は、理解を容易にするために幾分詳細に記載されてきたが、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかである。よって、記載される実施形態は、例示であって限定ではないと解釈されるべきであり、本発明は、本明細書に示された詳細に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の範囲および等価物内で改変され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式式(I−S):
【化7】

を有する1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンの(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
薬学的に受容可能な賦形剤および請求項1に記載の(S)−エナンチオマーまたはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグを含む、薬学的組成物。
【請求項3】
疼痛、鬱病、心血管疾患、呼吸器疾患、精神医学的疾患、神経学的疾患および癲癇発作、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、哺乳動物における疾患もしくは状態を処置する方法であって、ここで該方法は、投与が必要な該哺乳動物に、治療上有効な量の請求項1に記載の(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグを投与する工程を包含する、方法。
【請求項4】
前記疾患もしくは状態は、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、癌性疼痛、歯痛、化学療法性疼痛、外傷性疼痛、手術疼痛、陣痛、神経因性膀胱、潰瘍性大腸炎、慢性疼痛、持続性疼痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経損傷、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患もしくは状態は、HIVと関連する疼痛、HIV処置誘導性神経障害、三叉神経痛、疱疹後神経痛、eudynia、熱感受性、サルコイドーシス、過敏性腸症候群、クローン病、多発性硬化症と関連する疼痛、筋萎縮性側索硬化症、掻痒症、高コレステロール血症、良性前立腺過形成、糖尿病性ニューロパチー、末梢神経障害、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、発作性ジストニー、筋無力症症候群、ミオトニー、悪性高体温、嚢胞性線維症、偽性アルドステロン症、横紋筋融解症、双極性鬱病、不安、統合失調症、ナトリウムチャネル毒素関連疾患、家族性肢端紅痛症、原発性先端紅痛症、家族性直腸痛、発作性エピソード性疼痛障害、癌、癲癇、部分的および全身的な強直発作、不穏下肢症候群、不整脈、線維筋痛症、発作もしくは神経外傷によって引き起こされる虚血状態下の神経保護、頻拍性不整脈、心房細動ならびに心室細動からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物における疾患もしくは状態を、該哺乳動物における電位開口型ナトリウムチャネルを介するイオンフラックスの阻害によって処置する方法であって、ここで該方法は、投与が必要な該哺乳動物に、治療上有効な量の請求項1に記載の(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグを投与する工程を包含する、方法。
【請求項7】
哺乳動物における細胞の電位開口型ナトリウムチャネルを介してイオンフラックスを低下させる方法であって、ここで該方法は、該細胞と、請求項1に記載の(S)−エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な溶媒和物もしくはプロドラッグとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項8】
哺乳動物における電位開口型ナトリウムチャネルの阻害によって改善されるかもしくは緩和される疾患もしくは状態の処置のための医薬の調製における、請求項1に記載の(S)−エナンチオマーの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532107(P2012−532107A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517823(P2012−517823)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/040187
【国際公開番号】WO2011/002708
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(506030826)ゼノン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (47)
【氏名又は名称原語表記】XENON PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】