説明

スピロインドリノンピリジン誘導体



一般式(I)の化合物、又は医薬的に許容可能なその塩、エステル、若しくは鏡像異性体が提供される(式中、W、X、Y、V、R、及びRは、明細書に記載の通りである)。この化合物は抗増殖剤として、特に抗がん剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)を持つスピロインドリノンのピリジン類似体:
【化1】

又は医薬的に許容可能なその塩、エステル、若しくは鏡像異性体に関する(式中、W、X、Y、V、R、及びRは、明細書に記載の通りである)。
この化合物は抗増殖剤として、特に抗がん剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
p53は、がん発生の予防に中心的な役割を果たす腫瘍抑制タンパク質である。p53は細胞の完全性を監視し、回復不能な損傷を受けた細胞のクローンを、増殖阻害又はアポトーシス誘導により増殖防止する。分子レベルでは、p53は、細胞周期及びアポトーシスの調節に関与する遺伝子群を活性化し得る転写因子である。細胞レベルでは、p53は、MDM2により強固に調節される強力な細胞周期阻害剤である。MDM2とp53とは、フィードバック制御ループを形成する。MDM2はp53に結合し、p53調節性遺伝子群の転写活性化能を抑制し得る。更に、MDM2は、p53のユビキチン依存性分解を媒介する。p53はMDM2遺伝子の発現を活性化し、MDM2タンパク質の細胞内レベルを上昇させ得る。このフィードバック制御ループにより、正常増殖細胞ではMDM2及びp53の両方が低レベルに維持される。また、MDM2は、細胞周期の調節において中心的な役割を果たすE2Fの補因子でもある。
【0003】
多くのがんにおいては、p53に対するMDM2(E2F)の比が調節不全となっている。例えば、p16INK4/p19ARF遺伝子座において頻繁に生じる分子欠陥は、MDM2タンパク質の分解に影響を与えることが示されている。野生型p53を有する腫瘍細胞においてMDM2−p53相互作用を抑制すると、p53の蓄積、及び/又は、細胞周期の停止、及び/又は、アポトーシスが引き起こされ得る。従って、MDM2アンタゴニストを用いれば、単剤療法として、或いは広範囲の他の抗がん療法との組み合わせ療法として、がん治療に対する新たなアプローチが提供される。この方策が実現可能であることは、MDM2−p53相互作用を抑制する様々な高分子ツール(例えば抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド等)によって示されてきた。MDM2は、p53の保存結合領域を介してE2Fとも結合し、サイクリンAのE2F依存性転写を活性化することから、MDM2アンタゴニストがp53変異細胞に有効である可能性も示唆される。
【0004】
これまでMDM2アンタゴニストとして、種々のスピロインドリノンが、J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 10130 及び 2007年9月13日に公開された米国特許出願公開第2007−0213341−A1号に開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、MDM2−p53相互作用の小分子阻害剤であるスピロインドリノン誘導体を提供する。無細胞アッセイ及び細胞アッセイにおいて、本発明の化合物は、MDM2タンパク質とp53様ペプチドとの相互作用を抑制することが示された。細胞アッセイでは、これらの化合物は機構的な活性を示す。がん細胞を野生型p53と共にインキュベートすると、p53タンパク質が蓄積し、p53により調節されるp21遺伝子が誘導され、G1期及びG2期で細胞周期が停止する結果、インビボの野生型p53細胞に対する強力な抗増殖活性が生じる。逆に、変異したp53を有するがん細胞では、化合物が同程度の濃度のときにはこの活性は観察されなかった。従って、MDM2アンタゴニストの活性はその作用機構と関連している可能性が高い。これらの化合物は強力且つ選択的な抗がん剤になり得る。
【0006】
本発明は、一般式(I)のスピロインドリノン:
【化2】

(式中、
Xは、F、Cl、又はBrであり、
Yは、H又はFであり、
Vは、F又はClであり、
は、Me、Et、又はnPrであり、
は、OH、OMe、又はNHSOMeであり、
Wは、F、Cl、又はBrである)、
又は医薬的に許容可能なその塩、エステル、若しくは鏡像異性体に関する。
【0007】
より好ましいのは、一般式(I)において、
Xが、F、Cl、又はBrであり、
Yが、Hであり、
Vが、F又はClであり、
が、Me又はEtであり、
が、OH又はNHSOMeであり、
Wが、Clである化合物である。
【0008】
最も好ましい化合物を以下に示す。
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、表示のある箇所では、種々の基が、1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基で置換されていてもよい。斯かる置換基は、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、(ベンゾジオキシル基等を形成する)ジオキソ−低級アルキレン、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF、NH、N(H,低級アルキル)、N(低級アルキル)、アミノカルボニル、カルボキシ、NO、低級アルコキシ、チオ−低級アルコキシ、低級アルキルスルホニル、アミノスルホニル、低級アルキルカルボニル、低級アルキルカルボニルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキル−カルボニル−NH、フルオロ−低級アルキル、フルオロ−低級アルコキシ、低級アルコキシ−カルボニル−低級アルコキシ、カルボキシ−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ヒドロキシ−低級アルコキシ、NH−低級アルコキシ、N(H,低級アルキル)−低級アルコキシ、N(低級アルキル)−低級アルコキシ、ベンジルオキシ−低級アルコキシ、モノ−低級アルキル置換アミノ−スルホニル、ジ−低級アルキル置換アミノ−スルホニル、並びに、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、N(H,低級アルキル)又はN(低級アルキル)で置換されていてもよい低級アルキルからなる群から選択される。前記のアリール環、ヘテロアリール環、及び複素環の好ましい置換基は、ハロゲン、低級アルコキシ、低級アルキル、及びアミノである。
【0010】
アルキル、アルケニル、アルキニル等の基が同一部分構造の両端に結合すると、環構造が形成される場合がある。ここで前記部分構造の2つの水素が、アルキル、アルケニル、アルキニル等の基の両端によって置換されると、テトラリン、マクロ環、又はスピロ化合物等の環構造が作り出される。
【0011】
「アルキル」という用語は、1〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を表わす。特定の実施態様によれば、アルキル置換基は低級アルキル置換基である。「低級アルキル」という用語は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、特定の実施態様によれば、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表わす。アルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル等が挙げられる。
【0012】
本明細書において、「シクロアルキル」は、任意の安定な単環系又は多環系で、炭素原子のみからなり、いずれの環も飽和しているものを表わし、「シクロアルケニル」という用語は、任意の安定な単環系又は多環系で、炭素原子のみからなり、少なくとも1つの環が部分的に不飽和であるものを表わす。シクロアルキルの例としては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、シクロオクチル、ビシクロアルキル(その中にはビシクロオクタン(例えば[2.2.2]ビシクロオクタンや[3.3.0]ビシクロオクタン)、ビシクロノナン(例えば[4.3.0]ビシクロノナン等)、ビシクロデカン(例えば[4.4.0]ビシクロデカン(デカリン))等)、スピロ化合物等が挙げられる。シクロアルケニルの例としては、これらに限定されるものではないが、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられる。
【0013】
本明細書において、「アルケニル」という用語は、二重結合を1つ有し、2〜8個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。このような「アルケニル基」の例としては、ビニル(エテニル)、アリル、イソプロペニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、及び5−ヘキセニルが挙げられる。
【0014】
本明細書では、「アルキニル」という用語は、三重結合を1つ有し、2〜6個、好ましくは2〜4個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。このような「アルキニル基」の例は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニルである。
【0015】
定義において用いる「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、ヨウ素、又は臭素を意味する。中でもフッ素及び塩素が好ましい。
【0016】
「アリール」は、単環又は二環の1価の芳香族炭素環炭化水素基を意味する。中でも6〜10員の芳香族環系が好ましい。好ましいアリール基としては、これらに限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、トリル、及びキシリル等が挙げられる。
【0017】
「ヘテロアリール」は、最大2つの環を有する芳香族複素環系を意味する。好ましいヘテロアリール基としては、これらに限定されるものではないが、チエニル、フリル、インドリル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、オキサゾリル、チアオキソリル、キノリニル、ピリミジニル、イミダゾール、及びテトラゾリル等が挙げられる。
【0018】
二環のアリール又はヘテロアリールの場合は、一方の環がアリール、他方の環がヘテロアリールであってもよく、いずれも置換されていてもいなくてもよいと解すべきである。
【0019】
「複素環」は、置換又は無置換の5〜8員の単環又は二環の芳香族炭化水素又は非芳香族炭化水素において、1〜3個の炭素原子が、窒素原子、酸素原子、又はイオウ原子から選択されるヘテロ原子で置換されたものを意味する。例としては、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、ピペリジニル、及びモルホリン−4−イル等が挙げられる。
【0020】
「ヘテロ原子」は、N、O、及びSから選択される原子を意味する。
【0021】
「アルコキシ、アルコキシル、低級アルコキシ」は、上記の任意の低級アルキル基が、1個の酸素原子に結合してなる基を表わす。典型的な低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、プロポキシ、及びブチルオキシ等が挙げられる。更に、アルコキシには、多重アルコキシ側鎖(例えばエトキシエトキシ、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ等)や、置換アルコキシ側鎖(例えばジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジメトキシホスホリルメトキシ等)も含まれる。
【0022】
医薬的に許容可能な基剤、賦形剤等の「医薬的に許容可能な」は、当該化合物を投与される患者にとって医薬的に許容可能で実質的に非毒性であることを意味する。
【0023】
「医薬的に許容可能な塩」は、本発明の化合物の生物学的有効性及び特性を保持する従来の酸添加塩又は塩基添加塩であって、適切な非毒性の有機若しくは無機酸又は有機若しくは無機塩基から形成されるものを表わす。酸添加塩の例としては、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸)に由来するものと、有機酸(例えばp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸等)に由来するものとが挙げられる。塩基添加塩の例としては、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化第四級アンモニウム(例えば水酸化テトラメチルアンモニウム)に由来するもの等が挙げられる。医薬化合物(即ち薬物)の化学修飾による塩の形成は、その物理的安定性、化学的安定性、吸湿性、流動性、溶解性を向上させる技術として、薬理化学者には周知である。例えばAnsel et al., "Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (6th Ed. 1995)の196頁及び456〜457頁を参照されたい。
【0024】
一般式(I)の化合物及びその塩は、少なくとも1つの不斉炭素原子を有するため、ラセミ混合物や種々の立体異性体として存在し得る。種々の異性体は公知の分離法(例えばクロマトグラフィー)により分離できる。本発明にはあらゆる立体異性体が含まれる。
【0025】
本発明の化合物は、細胞増殖性疾患、特に腫瘍性疾患の治療又は制御に有用である。この化合物及びこれを含む製剤は、固形腫瘍(例えば乳房、大腸、肺、及び前立腺腫瘍等)の治療又は制御に有用である可能性がある。
【0026】
本発明に係る化合物の治療有効量とは、疾患の症状を予防、緩和、又は改善するか、或いは治療対象の生存期間を延長する、化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の能力の範囲である。
【0027】
本発明に係る化合物の治療有効量又は投与量は、広い範囲の中から、当業者に公知の手法で決定し得る。斯かる投与量は個別の事案毎に、個々の要請(例えば投与する具体的な化合物、投与経路、治療対象の疾患、治療対象の患者)に応じて調整すればよい。一般に、体重約70kgの成人への経口又は非経口投与の場合は、1日投与量約10mg〜約10,000mg、好ましくは約200mg〜約1,000mgが適切であるが、指示のある場合は上限を超えてもよい。1日投与量は1回で投与しても、複数回に分けて投与してもよく、非経口投与の場合は連続輸液で投与してもよい。
【0028】
本発明の製剤としては、経口、鼻腔、局所(口腔及び舌下を含む)、直腸内、膣内、及び/又は非経口投与に適した製剤が挙げられる。製剤は便宜上、単位投与形態で供してもよい。これは薬剤学で周知の任意の方法で調製し得る。単回投与剤形の製造において担体材料と組み合わせ得る活性成分の量は、治療対象の患者や、具体的な投与形態に応じて異なる。単回投与形態の製造において担体材料と組み合わせ得る活性成分の量は、一般に、一般式(I)又は(II)又は(III)の化合物が治療効果を生じる量である。一般にこの量は、100%に対し、活性成分が約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%となる。
【0029】
これらの製剤や組成物を調製する方法は、本発明の化合物を基剤と、更に任意により1種類以上の補助成分と、混合する工程を有する。一般に、前記製剤は、本発明の化合物を、液状担体若しくは微粉化した固状担体、又はその両方と一様且つ密に混合した後、必要に応じて製品を整形することにより調製される。
【0030】
経口投与に適した本発明の製剤としては、カプセル、カシェ、サシェ、ピル、錠剤、ロゼンジ(風味剤、通常はスクロースとアラビアゴム又はトラガカントゴムを用いる)、粉末、顆粒の形態や、水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液、水中油エマルジョン、油中水エマルジョン、エリキシル、シロップ、トローチ(不活性基剤、例えばゼラチンやグリセリン等、又はスクロース及びアラビアゴムを用いる)、マウスウォッシュ等の形態であって、各々所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する形態が挙げられる。また、本発明の化合物はボーラス、舐剤、又はペーストとして投与してもよい。
【0031】
「有効量」は、疾患の症状を予防、緩和、又は改善するか、或いは治療対象の生存期間を延長するのに有効な量を意味する。
【0032】
「IC50」は、測定する特定の活性を50%抑制するのに必要な対象化合物の濃度を表わす。IC50は、特に、後述の方法に従って測定し得る。
【0033】
「医薬的に許容可能なエステル」は、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有する一般式(I)の化合物を従来法でエステル化したものであって、一般式(I)の化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、インビボで(生体内で)開裂して、対応する活性なカルボン酸又はアルコールを生じるものを意味する。
【0034】
合成
本発明の一般式(I)の化合物は、以下の一般スキームに従って合成することができる。当業者には容易に理解し得るように、一般合成経路の試薬や薬剤を置換すれば、種々の一般式(I)の化合物を調製可能である。キラルクロマトグラフィーによる精製を用いれば、種々の一般式(I)の化合物を、光学的に純粋な、或いは豊富化された鏡像異性体として得ることができる。
【0035】
【化3】

【0036】
一般に、適切に選択したアルデヒド(I)を、リチウムヘキサメチルジシラミド、クロロトリアルキルシラン、塩化アセチルと、ワンポット複数ステップ法で反応させ(スキーム1)、生成した2−アザ−1,3−ブタジエン(II)を粗成物として使用し得る。Ghosez, L.らは、2−アザ−1,3−ブタジエンの調製法と、それを用いてアザ・ディールス・アルダー反応により複素環を形成する方法を報告している(参考:Tetrahedron, 1995, 11021;J. Am. Chem. Soc., 1999, 2617;及びこれらにおいて引用される文献)。適切に選択したアルデヒド(I)は、市販品が入手可能であるか、或いは汎用されている種々の文献記載の方法で合成可能である。
【0037】
【化4】

【0038】
オキシインドール(III)を、適切に置換されたアルデヒド(VI)と、塩基の存在下、加熱条件下、メタノールやエタノール等のプロトン性溶媒、或いはトルエン、o−キシレン等の非プロトン性溶媒中で反応させることにより、中間体(IV)を得ることができる。一般に利用される塩基は、ピロリジン又はピペリジンである。保護反応によって中間体(IV)を変換して中間体(V)にすることができる。保護基(Pg)は、汎用されている種々の文献記載の方法に従い、クロロギ酸エチル、ジカルボン酸ジ−t−ブチル、SEM−Cl、臭化ベンジルや、塩基(例えば4−(ジメチルアミン)ピリジン(DMAP)、トリエチルアミン、NaH、LiH等)を用いて結合させることができる。保護基の形成法及びそれらの脱保護法の例は、Greene, T. W.らの"Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd Edition", John Wiley & Sons Inc.に包括的に記載・概説されている。
【0039】
【化5】

【0040】
中間体(V)を、スキーム1で選択的に調製した2−アザ−ブタジエン(II)と、トルエン又はo−キシレン中、110℃〜160℃の加熱下、無水条件下にて反応させることにより、主生成物として、中間体(VII)及び(VII’)を形成することができる。ここでは2種類の鏡像異性体のラセミ混合物として示す。その後、保護基(Pg)を除去する反応によって、種々のR由来の化合物(VIII)及び(VIII’)が得られる(スキーム3)。PgがBoc基である場合、Boc基の除去は、トリフルオロ酢酸によって、或いはトリフルオロ酢酸を用いない場合は、化合物(V)と(II)とのアザ・ディールス・アルダー反応時に、110〜116℃の温度で長時間加熱することによって行うことができる。化合物(VII)と(VII’)、或いは化合物(VIII)と(VIII’)のラセミ混合物は、キラル超流体クロマトグラフィー(Super Fluid Chromatography:SFC)によって、又はキラルHPLCによって、又はキラル・カラムクロマトグラフィーによって、2種類のキラル鏡像異性体に容易に分割することができる。
【0041】
【化6】

【0042】
スキーム4の中間体(VI)は、アルデヒド(X)を、試薬(IX)と、KCOやCsCO等の塩基とともに、無水N,N−ジメチルホルムアミド中、加熱条件下にて処理することにより調製できる(スキーム4)。アルデヒド(X)及び試薬(IX)は、市販品が入手可能であるか、或いは汎用されている種々の文献記載の方法で合成可能である。類似体(XI)及び(XII)は、スキーム5に示す方法で調製される。
【0043】
化合物(VIII)を加水分解して酸(XI)にした後、周知の方法を利用してカップリング反応を実施すると、類似体(XII)が得られる。R3がメチル基でない場合には、酸(XI)を類似体(XIII)に変換することができる。
【0044】
【化7】

【0045】
本発明の更なる実施態様は、一般スキーム1〜5による、一般式(I)の化合物の合成法に関する。
【0046】
以下の実施例及び参考文献は、本発明の理解の助けとして提示するものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の通りである。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
中間体3−ブロモ−5−クロロ−ピリジン−2−オールの調製
【0048】
【化8】

【0049】
氷酢酸(25ml)に5−クロロ−2−ピリジノール(2.9g、20ミリモル)を溶かした溶液に、室温にて臭素(1.2ml、24ミリモル)を一滴ずつ添加した。室温で一晩にわたって撹拌した後、酢酸エチルと水を添加した。有機層を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残留物をジエチルエーテルと研和し、沈殿物を濾過し、乾燥させると、表題の化合物が得られた(1.5g)。
【0050】
[実施例2]
中間体5−クロロ−2−ヒドロキシ−ピリジン−3−カルバルデヒドの調製
【0051】
【化9】

【0052】
アルゴン雰囲気下にて、無水THF(20ml)にNaH(0.22g、油中の60%懸濁液、5.5ミリモル)を懸濁させた懸濁液に3−ブロモ−5−クロロ−ピリジン−2−オール(1.03g、5ミリモル)を少量ずつ添加した。水素の発生が終了した後、この混合物を−78℃に冷却し、温度が−65℃よりも高くならないようにしながらt−ブチルリチウム(10ミリモル)を添加した。この混合物を5分間にわたって撹拌した後、温度を−50℃未満に維持しながらDMF(15ミリモル)を添加した。この混合物を放置して室温まで温めた後、酢酸エチルと1N HClに分けた。有機層を分離し、飽和NaClで洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、表題の化合物が得られた(300mg)。
【0053】
[実施例3]
中間体2−(5−クロロ−3−ホルミル−ピリジン−2−イルオキシ)−2−メチル−プロピオン酸の調製
【0054】
【化10】

【0055】
5−クロロ−2−ヒドロキシ−ピリジン−3−カルバルデヒド(8g、51ミリモル)と、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸メチルエステル(27.6g、153ミリモル)と、Cs2CO3(28g、86.7ミリモル)の混合物を含むDMF(80ml)を3時間にわたって126℃に加熱した。この混合物を室温まで冷却した後、水の中に注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を水とブラインで洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残留物をフラッシュ・カラムによって精製すると、表題の化合物が得られた(6.2g)。
【0056】
[実施例4]
中間体E/Z−2−[5−クロロ−3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−インドル−3−イリデンメチル)−ピリジン−2−イルオキシ]−2−メチル−プロピオン酸メチルエステルの調製
【0057】
【化11】

【0058】
6−クロロオキシインドール(4.9g、29.3ミリモル)と2−(5−クロロ−3−ホルミル−ピリジン−2−イルオキシ)−2−メチル−プロピオン酸メチルエステル(7.2g、28ミリモル)の混合物を含むメタノール(50ml)にピロリジン(2.3ml、28ミリモル)を一滴ずつ添加した。次にこの混合物を1時間にわたって70℃に加熱した。この混合物を室温まで冷却した後、濾過し、沈殿物を回収し、乾燥させると、表題の化合物が黄色の固形物として得られた(9g)。
【0059】
[実施例5]
中間体E/Z−6−クロロ−3−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イルメチレン]−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−インドール−1−カルボン酸t−ブチルエステルの調製
【0060】
【化12】

【0061】
E/Z−2−[5−クロロ−3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−インドル−3−イリデンメチル)−ピリジン−2−イルオキシ]−2−メチル−プロピオン酸メチルエステル(9g、0.022モル)をジクロロメタン(100ml)に溶かした溶液に室温にてジカルボン酸ジ−t−ブチル(5.3g、0.024モル)を添加した後、4−ジメチルアミノピリジン(1g、0.008モル)を添加した。この混合物を室温にて0.5時間にわたって撹拌した後、濃縮した。残留物をフラッシュ・カラムによって精製すると、表題の化合物が得られた(11g)。
【0062】
[実施例6]
中間体1−(5−フルオロ−2−メチルフェニル)−3−トリメチルシリオキシ−2−アザ−1,3−ブタジエンの調製
【0063】
【化13】

【0064】
窒素雰囲気下で室温にて1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(2.18ml、10.5ミリモル)(オールドリッチ社)にn−ブチルリチウム(2.5M、4.2ml、10.5ミリモル)(オールドリッチ社)を添加した、この反応混合物を室温にて10分間にわたって撹拌した。次に乾燥テトラヒドロフラン(30ml)を添加し、次いで5−フルオロ−2−メチル−ベンズアルデヒド(1.38g、10ミリモル)(プラット社)を添加した。この混合物を室温にて0.5時間にわたって撹拌した後、塩化トリメチルシリル(1.33ml、10.5ミリモル)(オールドリッチ社)を一滴ずつ添加した。次に、冷却用の氷浴の上でこの混合物の温度を0℃まで下げた。この混合物にトリエチルアミン(1.9ml、13.6ミリモル)を一度に添加した後、ジエチルエーテル(50ml)に塩化アセチル(0.97ml、13.6ミリモル)を溶かした溶液を一滴ずつ添加した。冷却用の浴を除去し、混合物を室温にて1時間にわたって撹拌した。窒素雰囲気下にてこの混合物をセライト上で素早く濾過し、濾液を減圧下で濃縮すると、粗1−(5−フルオロ−2−メチルフェニル)−3−トリメチルシリオキシ−2−アザ−1,3−ブタジエンが黄色のゴムとして得られた。それをさらに精製せずに次のステップで使用した。
【0065】
[実施例7]
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0066】
【化14】

【0067】
1−(5−フルオロ−2−メチルフェニル)−3−トリメチルシリオキシ−2−アザ−1,3−ブタジエン(18ミリモル)のトルエン溶液(50ml)にE/Z−6−クロロ−3−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イルメチレン]−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−インドール−1−カルボン酸t−ブチルエステル(3g、6ミリモル)を添加した。次にこの反応混合物を2時間にわたって130℃に加熱した。この溶液を室温まで冷却した後、メタノールを添加し、次いでこの混合物を濃縮した。次に、トリフルオロ酢酸(10ml)とジクロロメタン(30ml)の混合物を添加した。得られた反応混合物を室温にて10分間にわたって撹拌した。この溶液を濃縮し、残留物を分離用HPLCによって精製すると、表題の化合物が白色の固形物として得られた(170mg)。
m/z(M+H):586
【0068】
[実施例8]
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0069】
【化15】

【0070】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(160mg、0.27ミリモル)と、LiOH・HO(250mg、5.94ミリモル)と、HO(5ml)と、メタノール(15ml)の混合物を40分間にわたって80℃に加熱した。この溶液を室温まで冷却した後、1NのHCl溶液を添加することによって酸性化して「pH」を1にした。水層をEtOAcで抽出した。有機層を水とブラインで洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮すると、表題の化合物が明るい黄色の固形物として得られた(140mg)。
m/z(M+H):572
【0071】
[実施例9]
キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0072】
【化16】

【0073】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(50mg)からキラルSFCによって2種類の鏡像異性体を分離すると、キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(11mg)、キラル(2’R,3R,4’S)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(10mg)得られた。
m/z(M+H):572
【0074】
[実施例10]
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0075】
【化17】

【0076】
実施例8で調製したラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(100mg、0.17ミリモル)とCDI(57mg、0.35ミリモル)をDMF(1ml)に溶かした溶液を2時間にわたって60℃に加熱した。次に、この溶液に、メタンスルホンアミド(129.2mg、1.36ミリモル)とNaH(54.4mg、60%、1.36ミリモル)の混合物を含むDMF(2ml)を室温にて2時間にわたって撹拌しておいたものを添加した。得られた混合物を室温にて1時間にわたって撹拌した後、水の中に注ぎ、濃塩酸を添加することによって水溶液を酸性化して「pH」を1〜2にした。水相をEtOAcで2回抽出した後、1つにまとめた有機相を無水NaSO上で乾燥させ、濃縮し、残留物をフラッシュ・カラムによって精製すると、表題の化合物が白色の固形物として得られた(80mg)。
m/z(M+H):649
【0077】
[実施例11]
キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0078】
【化18】

【0079】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(50mg)からキラルSFCによって2種類の鏡像異性体を分離すると、キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(19mg)、キラル(2’R,3R,4’S)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(18mg)得られた。
【0080】
m/z(M+H):649
【0081】
[実施例12]
中間体1−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)−3−トリメチルシリオキシ−2−アザ−1,3−ブタジエンの調製
【0082】
【化19】

【0083】
Ar雰囲気下で室温にて乾燥テトラヒドロフラン(100ml)にLiHMDS(97ミリモル、97ml)の1M THF溶液を添加した後、5−クロロ−2−メチル−ベンズアルデヒド(15g、97ミリモル)を添加した。この混合物を室温にて1時間にわたって撹拌した後、塩化トリメチルシリル(12.3ml、97ミリモル)を一滴ずつ添加した。次に、冷却用の氷浴の上でこの混合物の温度を0℃まで下げた。この混合物にトリエチルアミン(17.6ml、126ミリモル)を一度に添加した後、塩化アセチルをジエチルエーテル(200ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。冷却用の氷浴を除去し、混合物を室温にて一晩にわたって撹拌した。窒素雰囲気下にてこの混合物をセライト上で素早く濾過し、濾液を減圧下で濃縮すると、粗1−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)−3−トリメチルシリオキシ−2−アザ−1,3−ブタジエンが黄色のゴムとして得られた。それをさらに精製せずに次のステップで使用した。
【0084】
[実施例13]
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0085】
【化20】

【0086】
実施例8に記載した方法と同様にして、実施例5で調製したE/Z−6−クロロ−3−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イルメチレン]−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−インドール−1−カルボン酸t−ブチルエステル(3g、6ミリモル)を、1−(5−クロロ−2−メチルフェニル)−3−トリメチルシリオキシ−2−アザ−1,3−ブタジエン(17ミリモル)を含むトルエンと反応させ、次いでトリフルオロ酢酸を含むジクロロメタンと反応させると、表題の化合物が白色の固形物として得られた(200mg)。
m/z(M+H):602
【0087】
[実施例14]
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0088】
【化21】

【0089】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(200mg、0.33ミリモル)と、LiOH・HO(280mg、6.6ミリモル)と、HO(5ml)と、メタノール(15ml)の混合物を40分間にわたって80℃に加熱した。この溶液を室温まで冷却した後、1NのHCl溶液を添加することによって酸性化して「pH」を1にした。水層をEtOAcで抽出した。有機層を水とブラインで洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮すると、表題の化合物が明るい黄色の固形物として得られた(200mg)。
m/z(M+H):588
【0090】
[実施例15]
キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0091】
【化22】

【0092】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(60mg)からキラルSFCによって2種類の鏡像異性体を分離すると、キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(20mg)、キラル(2’R,3R,4’S)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(21mg)得られた。
m/z(M+H):588
【0093】
[実施例16]
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0094】
【化23】

【0095】
実施例14で調製したラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(100mg、0.17ミリモル)とCDI(57mg、0.35ミリモル)をDMF(1ml)に溶かした溶液を2時間にわたって60℃に加熱した。次に、この溶液に、メタンスルホンアミド(129.2mg、1.36ミリモル)とNaH(54.4mg、60%、1.36ミリモル)の混合物を含むDMF(2ml)を室温にて2時間にわたって撹拌しておいたものを添加した。得られた混合物を室温にて1時間にわたって撹拌した後、水の中に注ぎ、濃塩酸を添加することによって水溶液を酸性化して「pH」を1〜2にした。水相をEtOAcで2回抽出した後、1つにまとめた有機相を無水NaSO上で乾燥させ、濃縮し、残留物をフラッシュ・カラムによって精製すると、表題の化合物が白色の固形物として得られた(80mg)。
m/z(M+H):665
【0096】
[実施例17]
キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンの調製
【0097】
【化24】

【0098】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン(50mg)からキラルSFCによって2種類の鏡像異性体を分離すると、キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(19mg)、キラル(2’R,3R,4’S)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオンが白色の固形物として(18mg)得られた。
m/z(M+H):665
【0099】
[実施例18]
インビトロ活性アッセイ
【0100】
化合物がp53タンパク質とMDM2タンパク質の間の相互作用を抑制する能力をHTRF(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイによって測定した。このアッセイでは、組み換えGSTをタグとして有するMDM2が、p53のMDM2相互作用領域と似たペプチドに結合する(Lane他)。GST−MDM2タンパク質とp53ペプチド(そのN末端がビオチニル化されている)の結合は、ユーロピウム(Eu)で標識した抗GST抗体とストレプトアビジンを共役させたアロフィコシアニン(APC)の間のFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)によって記録される。
【0101】
黒色の平底384ウエル・プレート(コスター社)の中で、全体積40μlにて試験を実施する。その体積に含まれるのは、90nMのビオチニル化したペプチドと、160ng/mlのGST−MDM2と、20nMのストレプトアビジン−APC(パーキンエルマーウォラック社)と、2nMのEu標識化抗GST抗体(パーキンエルマーウォラック社)と、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)と、1mMのジチオトレイトール(DTT)と、20mMのトリス−ホウ酸緩衝化生理食塩水(TBS)である。この試験は以下のようにして実施する。10μlのGST−MDM2(640ng/mlの作業溶液)を含む反応緩衝液を各ウエルに添加する。希釈した10μlの化合物(反応緩衝液中で1:5に希釈)を各ウエルに添加し、振盪することによって混合する。20μlのビオチニル化されたp53ペプチド(180nMの作業溶液)を含む反応緩衝液を各ウエルに添加し、振盪装置の上で混合する。37℃にて1時間にわたってインキュベートする。0.2%BSAを含むTBS緩衝液にストレプトアビジン−APCとEu−抗GST抗体の混合物20μlを添加し、室温にて30分間にわたって振盪し、TRFが可能なプレート読み取り装置(Victor 5、パーキンエルマーウォラック社)を用いて665nmと615nmで読み取る。特に記載していない場合の試薬はシグマ・ケミカル社から購入した。
【0102】
本発明の生物学的活性を表わすIC50は、約10μM未満の活性を示す。
代表的な値は、例えば以下の通りである。
実施例 IC50(μM、0.02%BSA)
8 0.145
9 0.108
11 0.135
15 0.056

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式の化合物:
【化1】

(式中、
Xは、F、Cl、又はBrであり、
Yは、H又はFであり、
Vは、F又はClであり、
は、Me、Et、又はnPrであり、
は、OH、OMe、又はNHSOMeであり、
Wは、F、Cl、又はBrである)、
又は医薬的に許容可能なその塩、エステル、若しくは鏡像異性体。
【請求項2】
Xが、F、Cl、又はBrであり、
Yが、Hであり、
Vが、F又はClであり、
が、Me又はEtであり、
が、OH又はNHSOMeであり、
Wが、Clである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−フルオロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−6−クロロ−4’−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシカルボニル−1−メチル−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
ラセミ(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン;
キラル(2’S,3S,4’R)−4’−[5−クロロ−2−(2−メタンスルホニルアミノ−1,1−メチル−2−オキソ−エトキシ)−ピリジン−3−イル]−6−クロロ−2’−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)スピロ[3H−インドール−3,3’−ピペリジン]−2,6’(1H)−ジオン
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
一般式の化合物:
【化2】

(式中、
Xは、F、Cl、又はBrであり、
Yは、H又はFであり、
Vは、F又はClであり、
は、Me、Et、又はnPrであり、
は、OH、OMe、又はNHSOMeであり、
Wは、F、Cl、又はBrである)、
又は医薬的に許容可能なその塩、エステル、若しくは鏡像異性体と、医薬的に許容可能な基剤又は賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項5】
がん、特に固形腫瘍、とりわけ乳房腫瘍、大腸腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍を治療又は制御するための、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬として使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
がん、特に固形腫瘍、とりわけ乳房腫瘍、大腸腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍を治療又は制御するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
がん、特に固形腫瘍、とりわけ乳房腫瘍、大腸腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍を治療又は制御するための医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−512849(P2012−512849A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541521(P2011−541521)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051252
【国際公開番号】WO2010/091979
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】