説明

スピンドルモータ及び穿孔加工装置

【課題】 穿孔加工装置に用いた場合に、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲の穴を形成することが可能なスピンドルモータを提供する。
【解決手段】筒状筐体110と、モータ120と、モータ120と一体になって回転可能な基端側回転体130と、基端側回転体130とともに回転可能な先端側回転体140と、先端側回転体140と一体になって回転可能な穿孔工具把持部150と、基端側回転体130の回転力を先端側回転体140に伝達する回転力伝達棒160と、回転力伝達棒160の捩れ変形に基づいて回転負荷を検出する回転負荷検出装置166とを有するスピンドルモータ100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータ及び穿孔加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の穿孔加工装置900を説明するために示す図である。図10(a)は穿孔加工装置900の全体構成を示す図であり、図10(b)は穿孔加工装置900の回転変形部925を示す図であり、図10(c)は穿孔加工装置900の回転負荷検出手段954を示す図である。
【0003】
従来の穿孔加工装置900は、図10に示すように、穿孔工具Dを回転させる回転駆動装置920と、穿孔工具Dを所定方向に送る送り駆動装置910と、回転駆動装置920の駆動力を伝達する回転伝達経路途中(回転駆動軸924とスピンドル917との間)に配置され、回転方向に捩れ変形可能な回転変形部925(図10(b)参照。)と、回転変形部925の前後における回転位相のずれに基づいて回転負荷を光学的に検出する回転負荷検出装置950(回転状態検出手段952及び回転状態検出手段954(図10(a)及び図10(c)参照。))と、送り駆動手段910による駆動力を伝達する送り伝達経路途中に配置され、送り方向に変形可能な送り変形部948と、送り変形部948の前後における送り量のずれに基づいて送り負荷を検出する歪センサ949とを有している。そして、回転負荷検出装置950により検出された回転負荷と、歪センサ949により検出された送り負荷とによって表される負荷データが、回転負荷と送り負荷とを変数とする所定の負荷限界値を超えた場合に、穿孔工具Dの送り動作を中断するように構成されている。従来の穿孔加工装置900においては、回転変形部925は、図10(b)に示すように、回転方向に大きな捩れ変形が可能な帯状片からなる。
【0004】
このため、従来の穿孔加工装置900によれば、回転変形部925の捩れ変形と送り変形部948の撓み変形とに基づいて回転負荷と送り負荷とを検出することが可能となる。このため、穿孔工具の破損を的確に予測することにより穿孔工具Dの折損をより確実に防止することが可能となり、信頼性が高く、かつ、効率的な穿孔加工を実現することが可能となる。
【0005】
また、従来の穿孔加工装置900によれば、回転変形部925が上記したように回転方向に大きな捩れ変形が可能な帯状片からなるため、高感度の捩れ変形特性を得ることが可能となり、回転負荷を高精度で検出することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−341014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、様々な分野で、従来よりもさらに微細な穴(例えば、内径30μm以下。)を形成することのできる穿孔加工装置が求められている。このためには、回転負荷を従来よりも高感度で検出することが必要である。
【0008】
しかしながら、従来の穿孔加工装置900において、回転負荷を従来よりも高感度で検出するためには、帯状片の厚さを薄くして帯状片の捩れ変形量を大きくする必要があるが、帯状片の厚さを薄くすると帯状片の剛性が低下するため、同じ穿孔加工装置を用いて比較的大きな穴(例えば、500μm以上。)を形成することが困難となる。
【0009】
すなわち、従来の穿孔加工装置900においては、回転負荷を従来よりも高感度で検出して従来よりも微細な穴を形成することができる反面、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲の穴を形成することが困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、穿孔加工装置に用いた場合に、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲の穴を形成することが可能なスピンドルモータを提供することを目的とする。また、そのように優れたスピンドルモータを有する穿孔加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明のスピンドルモータは、筒状筐体と、前記筒状筐体内で回転可能なモータと、前記筒状筐体内で前記モータと一体になって回転可能な基端側回転体と、前記筒状筐体内で前記基端側回転体とともに回転可能な先端側回転体と、前記先端側回転体と一体になって回転可能な穿孔工具把持部と、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間の回転力伝達経路途中に配設され、回転方向に沿って捩れ変形可能な部材からなり、前記基端側回転体の回転力を前記先端側回転体に伝達する回転力伝達棒と、前記回転力伝達棒の捩れ変形に基づいて前記基端側回転体に対する前記先端側回転体の回転負荷を検出する回転負荷検出装置とを有することを特徴とする。
【0012】
このため、本発明のスピンドルモータによれば、基端側回転体の回転力を先端側回転体に伝達するのに回転力伝達棒を用いているため、回転負荷を従来よりも高感度で検出するために回転力伝達棒の太さを比較的細くしたとしても、従来のように帯状片の厚さを薄くするのに比較すると、回転力伝達棒の剛性の低下を十分に抑制することが可能となる。その結果、本発明のスピンドルモータによれば、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲(例えば、30μm〜500μm。)の穴を形成することが可能となる。
【0013】
また、本発明のスピンドルモータによれば、上記したように、回転力伝達棒の太さを比較的細くしたとしても、回転力伝達棒の剛性の低下を十分に抑制することが可能となるため、穴を高速かつ高精度で形成することが可能となる。
【0014】
本発明のスピンドルモータにおいては、回転力伝達棒の断面形状は、円又は正多角形(正三角形、正方形、正五角形、正六角形、正八角形等)であることが好ましい。回転力伝達棒の断面形状がこれらの形状である場合には、回転力伝達棒の太さを比較的細くしても剛性が低下しにくいからである。
【0015】
本発明のスピンドルモータにおいては、回転力伝達棒は、基端側回転体と先端側回転体との間に直接配設されていてもよいし、基端側回転体と先端側回転体との間に他の部材を介して間接的に配設されていてもよい。
【0016】
(2)本発明のスピンドルモータにおいては、前記回転力伝達棒は、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間に機械的遊びの無い状態で配設されていることが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、高速で穿孔加工を行う場合であっても、望ましくない振動の発生を抑制することが可能になる。その結果、従来よりも高速でモータを回転させる場合であっても、安定した回転状態を維持できるようになり、結果として従来の穿孔加工装置よりも高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0018】
(3)本発明のスピンドルモータにおいては、前記基端側回転体は、先端側に円柱状の空洞部が形成され、前記先端側回転体は、前記空洞部内で前記基端側回転体とともに回転可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、先端側回転体は基端側回転体とともに安定して回転するようになる。その結果、従来よりも高速でモータを回転させる場合であっても、安定した回転状態を維持できるようになり、結果として従来の穿孔加工装置よりも高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0020】
また、上記のように構成することにより、先端側回転体の慣性モーメントを小さくすることが可能となる。このため、回転負荷をさらに高感度で検出することが可能となり、従来の穿孔加工装置よりも微細な穴(例えば、内径30μm以下。)を形成することが可能となる。
【0021】
また、上記のように構成することにより、先端側回転体と基端側回転体とが一体化された、より小型のスピンドルモータを構成することが可能となる。
【0022】
(4)本発明のスピンドルモータにおいては、前記基端側回転体における前記先端側回転体との対向面には、第1の空気静圧軸受が配設されていることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、基端側回転体に対する先端側回転体の回転抵抗を極めて小さなレベルにまで低減することで、回転負荷の値が変化するのに応じて基端側回転体と先端側回転体との間の回転位相差が変化し易くなる。このため、回転負荷をさらに高感度で検出することが可能となり、従来の穿孔加工装置よりも微細な穴(例えば、内径30μm以下。)を形成することが可能となる。
【0024】
第1の空気静圧軸受としては、多孔質絞り、オリフィス絞り、自成絞り、表面絞りなどからなる空気静圧軸受を用いることができるが、軸受内部に空気を均一に供給することができ剛性が高く負荷容量の高い多孔質絞りからなる空気静圧軸受を特に好適に用いることができる。
【0025】
(5)本発明のスピンドルモータにおいては、前記筒状筐体における前記基端側回転体との対向面には、第2の空気静圧軸受が配設されていることが好ましい。
【0026】
このように構成することにより、筒状筐体に対する基端側回転体の回転抵抗を極めて小さいレベルにまで低減することで、安定した回転状態を維持できるようになるため、高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0027】
第2の空気静圧軸受としても、第1の空気静圧軸受の場合と同様に、多孔質絞り、オリフィス絞り、自成絞り、表面絞りなどからなる空気静圧軸受を用いることができるが、軸受内部に空気を均一に供給することができ剛性が高く負荷容量の高い多孔質絞りからなる空気静圧軸受を特に好適に用いることができる。
【0028】
(6)本発明のスピンドルモータにおいては、前記回転負荷検出装置は、前記基端側回転体に対する前記先端側回転体の回転負荷を非接触で検出することが好ましい。
【0029】
このように構成することにより、回転負荷を非接触で検出することが可能となるため、回転負荷をさらに高感度で検出することが可能となり、微細な穴を形成することが可能となる。また、回転負荷の検出を行うことに起因する回転抵抗を極めて小さいレベルにまで低減することで、安定した回転状態を維持できるようになるため、高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0030】
この場合、回転負荷検出装置は、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間の回転方向に沿った位相差によって変化する静電容量を測定する静電容量センサからなることが好ましい。
【0031】
このように構成することにより、回転負荷検出装置は静電容量を測定することにより回転負荷を検出するため、回転力伝達棒の太さを比較的太くしても、高感度で回転負荷を検出することが可能となり、その結果、微細な穴から比較的大きな穴までのさらに比較的広い範囲の穴を形成することが可能となる。
【0032】
また、この場合、基端側回転体の先端側には円柱状の空洞部が形成され、当該空洞部内で先端側回転体が基端側回転体とともに回転可能に構成されている場合には、基端側回転体に対する先端側回転体の相対的な回転量は極めて僅か(位相差が生じる程度で実際には回転しないと考えてもよいレベル。)であるため、空気の粘性による回転抵抗も極めて僅かなものになり、回転負荷を高精度かつ高感度で検出することが可能になる。
【0033】
(7)本発明のスピンドルモータにおいては、前記回転負荷検出装置に対して非接触でエネルギーを供給するエネルギー供給手段をさらに有し、前記回転負荷検出装置は、前記エネルギー供給手段から供給されたエネルギーを用いて回転負荷を検出することが好ましい。
【0034】
このように構成することにより、回転負荷検出装置に電力を供給するための配線の引き回しが不要になり、スピンドルモータの構造を単純なものにすることが可能となる。
【0035】
この場合、前記エネルギー供給手段として、前記筒状筐体内に配設され、前記モータの回転とともに回転する太陽電池と、前記筒状筐体の外から前記太陽電池に向けて光を供給する光ファイバとを有するエネルギー供給手段を好適に用いることができる。
【0036】
(8)本発明のスピンドルモータにおいては、前記穿孔工具把持部からの送り負荷を検出する送り負荷検出装置をさらに有することが好ましい。
【0037】
このように構成することにより、本発明のスピンドルモータを用いて穿孔加工装置を構成する場合に送り負荷検出装置を別途設ける必要がなくなるため、穿孔加工装置の構成を簡易なものにして穿孔加工装置を小型化することが可能となる。また、穿孔加工装置を使用する際の作業性やメンテナンス性が向上する。
【0038】
(9)本発明のスピンドルモータにおいては、前記送り負荷検出装置は、前記穿孔工具把持部からの送り負荷を受けて送り方向に沿って撓み変形可能な撓み変形部分と、前記撓み変形部分の撓み変形に基づいて送り負荷を検出する歪センサとからなることが好ましい。
【0039】
このように構成することにより、撓み変形部分の撓み変形を歪センサにより簡易に検出することが可能となる。歪センサとしては、電気抵抗変化を用いて歪を検出する歪センサ、圧電効果を用いて歪を検出する歪センサ又は静電容量を用いて歪を検出する歪センサを好適に用いることができる。
【0040】
(10)本発明のスピンドルモータにおいては、前記穿孔工具把持部からの送り負荷を前記撓み変形部分に伝達する送り負荷伝達部材をさらに有し、前記基端側回転体は、前記穿孔工具把持部からの送り負荷を前記送り負荷伝達部材に伝達する鍔部を有し、前記送り負荷伝達部材における前記鍔部との対向面には、第3の空気静圧軸受が配設されていることが好ましい。
【0041】
このように構成することにより、送り負荷の検出を行うことに起因する回転抵抗を極めて小さいレベルにまで低減することで、安定した回転状態を維持できるようになるため、高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0042】
この場合、前記鍔部は、先端側で前記筒状筐体とも対向していることが好ましく、また、この場合、前記筒状筐体における鍔部との対向面には、第4の空気静圧軸受が配設されていることが好ましい。
【0043】
このように構成することにより、基端側回転体は、鍔部に案内されて、筒状筐体内における送り方向に沿った所定位置で安定した回転状態を維持することが可能となる。
【0044】
なお、第3の空気静圧軸受又は第4の空気静圧軸受としては、第1の空気静圧軸受や第2の空気静圧軸受の場合と同様に、多孔質絞り、オリフィス絞り、自成絞り、表面絞りなどからなる空気静圧軸受を用いることができるが、軸受内部に空気を均一に供給することができ剛性が高く負荷容量の高い多孔質絞りからなる空気静圧軸受を特に好適に用いることができる。
【0045】
(11)本発明のスピンドルモータにおいては、前記送り負荷に対抗して前記基端側回転体を先端側に向けて押圧する押圧装置をさらに有することが好ましい。
【0046】
このように構成することにより、送り負荷を受けて撓み変形部分が撓み変形するのに対抗して基端側回転体を先端側に向けて押圧することで、送り負荷を高感度で検出するために撓み変形部分を薄くしたとしてもその撓み変形部分の剛性の不足を補うことが可能となる。
【0047】
(12)本発明の穿孔加工装置は、本発明における上記(1)〜(7)のいずれかに記載のスピンドルモータと、所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有することを特徴とする。
【0048】
このため、本発明の穿孔加工装置によれば、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲の穴を形成することが可能なスピンドルモータを用いているため、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲の穴を形成することが可能な穿孔加工装置となる。また、穴を高速かつ高精度で形成することが可能な穿孔加工装置となる。
【0049】
(13)本発明の穿孔加工装置は、本発明における上記(8)〜(11)のいずれかに記載のスピンドルモータと、所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有することを特徴とする。
【0050】
このため、本発明の穿孔加工装置によれば、上記(12)に記載の穿孔加工装置が有する効果に加えて、以下の効果を有する。すなわち、スピンドルモータとは別に送り負荷検出装置を設ける必要がなくなるため、穿孔加工装置の構成を簡易なものにして穿孔加工装置を小型化することが可能となる。また、穿孔加工装置を使用する際の作業性やメンテナンス性が向上する。
【0051】
(14)本発明の穿孔加工装置(上記(13)に記載の穿孔加工装置)においては、前記回転負荷検出装置により検出された回転負荷と、前記送り負荷検出装置により検出された送り負荷とによって表される負荷データが、回転負荷と送り負荷とを変数とする所定の負荷限界値を超えた場合に、前記所定の送り動作を中断するように構成されていることが好ましい。
【0052】
このように構成することにより、回転力伝達棒の捩れ変形と撓み変形部材の撓み変形とに基づいて回転負荷と送り負荷とを精度良く検出することが可能となるため、穿孔工具の破損を的確に予測することにより穿孔工具の折損をより確実に防止することが可能となり、信頼性が高く、かつ、効率的な穿孔加工を実現することが可能となる。
【0053】
本発明の穿孔加工装置においては、前記負荷データが前記負荷限界値を超えた場合に、前記所定の送り動作を中断するとともに前記所定の送り動作についての送り方向とは逆方向に所定量だけ前記スピンドルモータを戻し、その後、前記所定の送り動作を中断したときの送り位置よりも所定量手前まで前記スピンドルモータを高速で送り、さらにその後、所定の送り動作を行うように構成されていることが好ましい。
【0054】
このように構成することにより、穿孔加工再開までにおける穿孔工具の破損事故を防止しながら、穿孔作業の中断時間を短縮化して穿孔加工の生産性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明のスピンドルモータ及び穿孔加工装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0056】
[実施形態1]
実施形態1は、本発明のスピンドルモータを説明するための実施形態である。
【0057】
図1は、実施形態1に係るスピンドルモータ100を説明するために示す図である。図1(a)はスピンドルモータ100を示す斜視図であり、図1(b)はスピンドルモータ100における先端側回転体140及び穿孔工具把持部150を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るスピンドルモータ100の縦断面図である。図3は、実施形態1に係るスピンドルモータ100の要部を拡大した縦断面図である。図3(a)は図2の要部拡大断面図であり、図3(b)は回転力伝達棒160をさらに拡大した図である。図4は、実施形態1に係るスピンドルモータ100における回転負荷検出装置166を説明するために示す図である。図5は、実施形態1に係るスピンドルモータ100における送り負荷検出装置186を説明するために示す図である。
【0058】
実施形態1に係るスピンドルモータ100は、図1に示すように、概略円筒状のスピンドルモータであって、穿孔加工装置(後述する実施形態2の図6参照。)に用いるためのスピンドルモータである。
【0059】
実施形態1に係るスピンドルモータ100は、図1〜図5に示すように、筒状筐体110と、筒状筐体110内で回転可能なモータ120と、筒状筐体110内でモータ120と一体になって回転可能な基端側回転体130と、筒状筐体内110で基端側回転体130とともに回転可能な先端側回転体140と、先端側回転体140と一体になって回転可能な穿孔工具把持部150と、基端側回転体130と先端側回転体140との間の回転力伝達経路途中に配設され、回転方向に沿って捩れ変形可能な部材からなり、基端側回転体130の回転力を先端側回転体140に伝達する回転力伝達棒160と、回転力伝達棒160の捩れ変形に基づいて基端側回転体130に対する先端側回転体140の回転負荷を検出する回転負荷検出装置166とを有する。
【0060】
なお、筒状筐体110、モータ120、基端側回転体130、先端側回転体140、穿孔工具把持部150、回転負荷検出装置166などは、単一の部材からなっていてもよいし、複数の部材からなっていてもよい。
【0061】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転力伝達棒160は、回転方向に沿って捩れ変形可能な部材としての金属(例えば、ステンレス鋼、各種工具鋼その他の比較的剛性が高く、弾性降伏点の高い金属。)製の丸棒(例えば外径1.0mm。)からなる。
【0062】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転力伝達棒160は、基端側回転体130と先端側回転体140との間に機械的遊びの無い状態で配設されている。具体的には、回転力伝達棒160は、図3に示すように、その両端部164,164で、基端側回転体130に一体に固定された基端側固定部材132と、先端側回転体140に一体に固定された先端側固定部材142とに一体に固定されている。
【0063】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図2及び図3(a)に示すように、基端側回転体130は、先端側(穿孔工具把持部150側)に円柱状の空洞部が形成され、先端側回転体140は、当該空洞部内で基端側回転体130とともに回転可能に構成されている。
【0064】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図3(a)に示すように、基端側回転体130における先端側回転体140との対向面には、多孔質絞りからなる第1の空気静圧軸受134が配設されている。
【0065】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図3(a)に示すように、筒状筐体110における基端側回転体130との対向面には、多孔質絞りからなる第2の空気静圧軸受112が配設されている。
【0066】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転負荷検出装置166は、基端側回転体130に対する先端側回転体140の回転負荷を非接触で検出する。具体的には、回転負荷検出装置166は、図4に示すように、基端側回転体130と先端側回転体140との間の回転方向に沿った位相差によって変化する静電容量を測定する静電容量センサからなる。静電容量センサは、基端側回転体130における所定位置に形成された基端側電極168と、先端側回転体140における所定位置に形成された先端側電極170との間の間隔によって変化する静電容量を検出する。基端側電極168及び先端側電極170は、例えば位相差がないときに10μm以下の間隔となるように配置する。
【0067】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転負荷検出装置166に対して非接触でエネルギーを供給するエネルギー供給手段をさらに有し、回転負荷検出装置166は、エネルギー供給手段から供給されたエネルギーを用いて回転負荷を検出する。具体的には、図2及び図3(a)に示すように、エネルギー供給手段として、筒状筐体110内に配設され、モータ120の回転とともに回転する太陽電池200と、筒状筐体110の外から太陽電池200に向けて光を供給する光ファイバ202とを有するエネルギー供給手段を用いている。
【0068】
実施形態1に係るスピンドルモータ100は、図2及び図3(a)に示すように、穿孔工具把持部150からの送り負荷を検出する送り負荷検出装置186をさらに有する。
【0069】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、送り負荷検出装置186は、穿孔工具把持部150からの送り負荷を受けて送り方向に沿って撓み変形可能な撓み変形部分182(撓み変形部材180の内周部(図3(a)及び図5参照。))と、撓み変形部分182の撓み変形に基づいて送り負荷を検出する半導体歪センサ184とからなる。
【0070】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図3(a)に示すように、穿孔工具把持部150からの送り負荷を撓み変形部分182に伝達する送り負荷伝達部材188をさらに有する。基端側回転体130は、穿孔工具把持部150からの送り負荷を送り負荷伝達部材188に伝達する鍔部136を有する。送り負荷伝達部材188における鍔部136との対向面には、多孔質絞りからなる第3の空気静圧軸受190が配設されている。
【0071】
この場合、鍔部136は、図3(a)に示すように、先端側で筒状筐体110とも対向している。また、筒状筐体110における鍔部136との対向面には、多孔質絞りからなる第4の空気静圧軸受114が配設されている。
【0072】
実施形態1に係るスピンドルモータ100は、図2に示すように、送り負荷に対抗して基端側回転体130を先端側に向けて押圧する押圧装置210をさらに有する。
【0073】
以上のように構成された実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、基端側回転体130の回転力を先端側回転体140に伝達するのに回転力伝達棒160を用いているため、回転負荷を従来よりも高感度で検出するために回転力伝達棒160の太さを比較的細くしたとしても、従来のように帯状片の厚さを薄くするのに比較すると、回転力伝達棒160の剛性の低下を十分に抑制することが可能となる。その結果、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲(例えば、30μm〜500μm。)の穴を形成することが可能となる。
【0074】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、上記したように、回転力伝達棒160の太さを比較的細くしたとしても、回転力伝達棒160の剛性の低下を十分に抑制することが可能となるため、穴を高速かつ高精度で形成することが可能となる。
【0075】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転力伝達棒160の断面形状が円であるため、回転力伝達棒160の太さを比較的細くしても剛性が低下しにくい。
【0076】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転力伝達棒160は基端側回転体130と先端側回転体140との間に機械的遊びの無い状態で配設されているため、高速で穿孔加工を行った場合であっても、望ましくない振動の発生を抑制することが可能になる。その結果、従来よりも高速でモータを回転させる場合であっても、安定した回転状態を維持できるようになり、結果として従来の穿孔加工装置よりも高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0077】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、基端側回転体130は、先端側に円柱状の空洞部が形成され、先端側回転体140は、空洞部内で基端側回転体130とともに回転可能に構成されているため、先端側回転体140は基端側回転体130とともに安定して回転するようになる。その結果、従来よりも高速でモータを回転させる場合であっても、安定した回転状態を維持できるようになり、結果として従来の穿孔加工装置よりも高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。また、先端側回転体140の慣性モーメントを小さくすることが可能となるため、回転負荷をさらに高感度で検出することが可能となり、従来の穿孔加工装置よりも微細な穴(例えば、内径30μm以下。)を形成することが可能となる。さらにまた、先端側回転体140と基端側回転体130とが一体化された、より小型のスピンドルモータを構成することが可能となる。
【0078】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、基端側回転体130における先端側回転体140との対向面には、多孔質絞りからなる第1の空気静圧軸受134が配設されているため、基端側回転体130に対する先端側回転体140の回転抵抗を極めて小さなレベルにまで低減することで、回転負荷の値が変化するのに応じて基端側回転体130と先端側回転体140との間の回転位相差が変化し易くなるため、回転負荷をさらに高感度で検出することが可能となり、従来の穿孔加工装置よりも微細な穴(例えば、内径30μm以下。)を形成することが可能となる。
【0079】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、筒状筐体110における基端側回転体130との対向面には、多孔質絞りからなる第2の空気静圧軸受112が配設されているため、筒状筐体110に対する基端側回転体130の回転抵抗を極めて小さいレベルにまで低減することで、安定した回転状態を維持できるようになるため、高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0080】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転負荷検出装置166は、基端側回転体130と先端側回転体140との間の回転方向に沿った位相差によって変化する静電容量を測定する静電容量センサからなるため、回転負荷を非接触で検出することが可能となる。その結果、回転負荷をさらに高感度で検出することが可能となり、微細な穴を形成することが可能となる。また、回転負荷の検出を行うことに起因する回転抵抗を極めて小さいレベルにまで低減することで、安定した回転状態を維持できるようになるため、高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。また、回転力伝達棒160の太さを比較的太くしても、高感度で回転負荷を検出することが可能となり、その結果、微細な穴から比較的大きな穴までのさらに比較的広い範囲の穴を形成することが可能となる。また、基端側回転体130に対する先端側回転体140の相対的な回転量は極めて僅か(位相差が生じる程度で実際には回転しないと考えてもよいレベル。)であるため、空気の粘性による回転抵抗も極めて僅かなものになり、回転負荷を高精度かつ高感度で検出することが可能になる。
【0081】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転負荷検出装置166に対して非接触でエネルギーを供給するエネルギー供給手段を有し、このエネルギー供給手段として、筒状筐体110内に配設され、モータ120の回転とともに回転する太陽電池200と、筒状筐体110の外から太陽電池200に向けて光を供給する光ファイバ202とを有するエネルギー供給手段を用いているため、回転負荷検出装置166に電力を供給するための配線の引き回しが不要になり、スピンドルモータの構造を単純なものにすることが可能となる。
【0082】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100は、穿孔工具把持部150からの送り負荷を検出する送り負荷検出装置186をさらに有するため、穿孔加工装置を構成する場合に送り負荷検出装置を別途設ける必要がなくなるため、穿孔加工装置の構成を簡易なものにして穿孔加工装置を小型化することが可能となる。また、穿孔加工装置を使用する際の作業性やメンテナンス性が向上する。
【0083】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、送り負荷検出装置186は、穿孔工具把持部150からの送り負荷を受けて送り方向に沿って撓み変形可能な撓み変形部分182と、撓み変形部分182の撓み変形に基づいて送り負荷を検出する半導体歪センサ184とからなるため、撓み変形部分182の撓み変形を半導体歪センサ184により簡易に検出することが可能となる。
【0084】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、穿孔工具把持部150からの送り負荷を撓み変形部分182に伝達する送り負荷伝達部材188をさらに有し、基端側回転体130は、穿孔工具把持部150からの送り負荷を送り負荷伝達部材188に伝達する鍔部136を有し、送り負荷伝達部材188における鍔部136との対向面には、多孔質絞りからなる第3の空気静圧軸受190が配設されているため、送り負荷の検出を行うことに起因する回転抵抗を極めて小さいレベルにまで低減することで、安定した回転状態を維持できるようになるため、高速かつ高精度で穿孔加工を行うことが可能となる。
【0085】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、鍔部136は、先端側で筒状筐体110とも対向しており、筒状筐体110における鍔部136との対向面には、多孔質絞りからなる第4の空気静圧軸受114が配設されているため、基端側回転体130は、鍔部190に案内されて、筒状筐体110内における送り方向に沿った所定位置で安定した回転状態を維持することが可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100は、送り負荷に対抗して基端側回転体130を先端側に向けて押圧する押圧装置210をさらに有するため、送り負荷を高感度で検出するために撓み変形部分182を薄くしたとしてもその撓み変形部分182の剛性の低下を補うことが可能となる。
【0087】
[実施形態2]
実施形態2は、本発明の穿孔加工装置を説明するための実施形態である。
【0088】
図6は、実施形態2に係る穿孔加工装置10を説明するために示す図である。図7は、実施形態2に係る穿孔加工装置10における負荷限界直線Cに基づいて制御された負荷データを示すグラフである。図8は、実施形態2の穿孔加工装置10における制御系の構成を示すブロック図である。図9は、実施形態2の穿孔加工装置10における送り動作を説明するために示す図である。
【0089】
実施形態2に係る穿孔加工装置10は、図6に示すように、スピンドルモータ100と、所定の送り動作によってスピンドルモータ100を送り方向に沿って移動させる送り駆動装置20と、穿孔加工対象物品Wを把持する穿孔加工対象物品把持装置40とを有する穿孔加工装置である。
【0090】
スピンドルモータ100は、実施形態1で説明したとおりのスピンドルモータである。
【0091】
送り駆動装置20は、ベース22と、送り駆動モータ24と、送り駆動モータ24によって回転可能な送りねじ26と、送りねじ26と螺合して送り方向に移動可能な移動台28と、移動台28に固定されているスピンドルモータ固定部30とを有する。
【0092】
穿孔加工対象物品把持装置40は、基台部42と、穿孔加工対象物品把持部44とを有し、穿孔加工対象物品把持部44にはワークとしての穿孔加工対象物品Wが取り付けられる。ここで、穿孔加工対象物品把持部44は、基台部42に内蔵された図示しない回転駆動モータによって回転駆動されるように構成されている。なお、穿孔加工対象物品把持部44の位置を上下、左右、前後方向に調整可能に構成してもよい。
【0093】
スピンドルモータ100の穿孔工具把持部150には、穿孔工具Dが取り付けられている。
【0094】
実施形態2に係る穿孔加工装置10は、スピンドルモータ100における回転負荷検出装置166により検出された回転負荷と、スピンドルモータ100における送り負荷検出装置186により検出された送り負荷とによって表される負荷データが、回転負荷と送り負荷とを変数とする所定の負荷限界値を超えた場合に、所定の送り動作を中断するように構成されている(図7参照。)。
【0095】
以上のように構成された実施形態2に係る穿孔加工装置10によれば、実施形態1に係るスピンドルモータ100を有するため、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲の穴を形成することが可能な穿孔加工装置となる。また、穴を高速かつ高精度で形成することが可能な穿孔加工装置となる。
【0096】
また、実施形態2に係る穿孔加工装置10によれば、回転力伝達棒160の捩れ変形と撓み変形部分182の撓み変形とに基づいて回転負荷と送り負荷とを精度良く検出することが可能となるため、穿孔工具Dの破損を的確に予測することにより穿孔工具Dの折損をより確実に防止することが可能となり、信頼性が高く、かつ、効率的な穿孔加工を実現することが可能となる。
【0097】
実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、図8に示すように、MPU(マイクロプロセッサユニット)などからなる制御装置230が設けられ、制御装置230は、回転負荷検出装置166からの検出信号及び送り負荷検出装置186からの検出信号を受け、これらの検出信号の値に応じて上記の回転負荷(ラジアル方向負荷)及び送り負荷(スラスト方向負荷)を求め、これらの負荷値に応じて送り駆動モータ24を駆動制御するように構成されている。この場合に、負荷値に応じた制御態様として、上記送り駆動モータ24に加えてスピンドルモータ100におけるモータ120の回転量を制御するようにしてもよい。例えば、送り駆動モータ24による送り動作を中断し、若しくは、逆方向に送る際には、スピンドルモータ100におけるモータ120の回転量を低下させたり、或いは、回転方向を逆転させたりすることができる。
【0098】
実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、制御装置230は、穿孔対象加工物品Wに穿孔工具Dが近接するまで図9に示す高速送りモードHで穿孔工具Dを送り、その後、低速送りモードIで穿孔対象加工物品Wに対して接触し穿孔加工を行いながら送り続ける。この低速送りモードIは、図7に示す負荷限界直線Cを越えない負荷データが得られている間は継続される。その後、図7中の負荷限界直線Cを超えた負荷データが得られた時点で、穿孔工具Dの送り動作を中断し、高速戻しモードJで穿孔工具Dを穿孔対象加工物品W内から脱出するまで引き戻す。さらにその後、再び高速送りモードHで穿孔対象加工物品W内に入るように送り、先ほど加工した最先端位置(加工穴の最深部)よりも少し手前で低速送りモードIに移行し、加工を再開する。以後、上記と同様の送り動作の中断、戻り、再加工の繰り返し動作を、負荷限界直線Cを超えた負荷データが発生する都度同様に実施して、断続的な加工を行っていく。
【0099】
最終的に目的の穿孔深さが得られると送り動作は停止され、高速戻しモードJで穿孔工具Dは穿孔対象加工物品Wから離反される。また、目的の穿孔深さが得られない時点でも、異常な状況が生じた場合、すなわち、穿孔工具Dの寿命が尽きたと考えられる場合、及び、加工状態に異常が発生したと考えられる場合には、加工を終了して、高速戻しモードJで穿孔対象加工物品Wから穿孔工具Dを離反させる。
【0100】
上記の穿孔工具Dの寿命が尽きたと考えられる場合とは、上記のように図7に示す負荷限界直線Cを越える負荷データが得られたときになされる加工の中断が頻繁になり、加工がほとんど進まなくなった場合である。また、加工状態に異常が発生したと考えられる場合とは、穿孔時に穿孔工具Dに切りくずなどが絡み、切りくずが排出されない状態が何らかの理由で解消されず、良好な穿孔加工ができなくなった場合である。いずれの場合にも、そのまま穿孔加工を継続しても穿孔加工が進まないか、或いは、穿孔工具Dが破損する可能性がきわめて高いため、穿孔加工を終了させるのである。
【0101】
以上、本発明のスピンドルモータ及び穿孔加工装置を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0102】
(1)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、断面が円形状の回転力伝達棒160を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、断面が正多角形(正三角形、正方形、正五角形、正六角形、正八角形等)の形状の回転力伝達棒を用いることもできる。
【0103】
(2)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1の空気静圧軸受134、第2の空気静圧軸受112、第3の空気静圧軸受190及び第4の空気静圧軸受114として多孔質絞りからなる空気静圧軸受を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、オリフィス絞り、自成絞り、表面絞りなどからなる空気静圧軸受を用いることもできる。
【0104】
(3)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転負荷検出装置166に対して非接触でエネルギーを供給するエネルギー供給手段として、太陽電池200と、光ファイバ202とを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コイルと、当該コイルに誘導電流を起こさせる電線とからなるエネルギー供給手段を用いることもできる。
【0105】
(4)実施形態2に係る穿孔加工装置10は、送り負荷検出装置186を有するスピンドルモータ100を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、送り負荷検出装置を有しないスピンドルモータを用いることもできる。
【0106】
(5)実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、スピンドルモータ100を横置きにした場合を例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スピンドルモータ100を縦置きにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施形態1に係るスピンドルモータ100を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係るスピンドルモータ100の縦断面図である。
【図3】実施形態1に係るスピンドルモータ100の要部を拡大した縦断面図である。
【図4】実施形態1に係るスピンドルモータ100における回転負荷検出装置166を説明するために示す図である。
【図5】実施形態1に係るスピンドルモータ100における送り負荷検出装置186を説明するために示す図である。
【図6】実施形態2に係る穿孔加工装置10を説明するために示す図である。
【図7】実施形態2に係る穿孔加工装置10における負荷限界直線Cに基づいて制御された負荷データを示すグラフである。
【図8】実施形態2の穿孔加工装置10における制御系の構成を示すブロック図である。
【図9】実施形態2の穿孔加工装置10における送り動作を説明するために示す図である。
【図10】従来の穿孔加工装置900を説明するために示す図である。
【符号の説明】
【0108】
10,900…穿孔加工装置、20…送り駆動装置、22,911…ベース、24,913…送り駆動モータ、26,912…送りねじ、28…移動台、30…スピンドルモータ固定部、40,930…穿孔加工対象物品把持装置、42,931…基台部、44,932…加工対象物品把持部、100…スピンドルモータ、110…筒状筐体、112…第2の空気静圧軸受、114…第4の空気静圧軸受、120…モータ、122…ステータ、124…ロータ、130…基端側回転体、132…基端側固定部材、134…第1の空気静圧軸受、136…鍔部、140…先端側回転体、142…先端側固定部材、150…穿孔工具把持部、160…回転力伝達棒、162…回転力伝達棒本体、164…両端部、166…回転負荷検出装置、168…基端側電極,170…先端側電極、180…撓み変形部材、182…撓み変形部分、184…半導体歪センサ、186…送り負荷検出装置、188…送り負荷伝達部材、190…第3の空気静圧軸受、200…太陽電池、202…光ファイバ、204…LED光源、210…押圧装置、220…圧縮空気供給装置、222…圧縮空気供給路、230…制御装置、910…送り駆動装置、914…螺合部、915…送り台、916,923…軸支部、917…スピンドル、917a,924a…反射面、917b,924b…スリット、918…チャック、920…回転駆動装置、921…回転駆動モータ、922…駆動ベルト、923…軸支部、924…回転駆動軸、925…回転変形部、925a,925b…端部、941,942…支持枠、943,944…発光素子、945,946…受光素子、947…軸受体、948…送り変形部、949…歪センサ、950…回転負荷検出装置、952,954…回転状態検出手段、D…穿孔工具、W…穿孔加工対象物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状筐体と、
前記筒状筐体内で回転可能なモータと、
前記筒状筐体内で前記モータと一体になって回転可能な基端側回転体と、
前記筒状筐体内で前記基端側回転体とともに回転可能な先端側回転体と、
前記先端側回転体と一体になって回転可能な穿孔工具把持部と、
前記基端側回転体と前記先端側回転体との間の回転力伝達経路途中に配設され、回転方向に沿って捩れ変形可能な部材からなり、前記基端側回転体の回転力を前記先端側回転体に伝達する回転力伝達棒と、
前記回転力伝達棒の捩れ変形に基づいて前記基端側回転体に対する前記先端側回転体の回転負荷を検出する回転負荷検出装置とを有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスピンドルモータにおいて、
前記回転力伝達棒は、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間に機械的遊びの無い状態で配設されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスピンドルモータにおいて、
前記基端側回転体は、先端側に円柱状の空洞部が形成され、
前記先端側回転体は、前記空洞部内で前記基端側回転体とともに回転可能に構成されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のスピンドルモータにおいて、
前記基端側回転体における前記先端側回転体との対向面には、第1の空気静圧軸受が配設されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記筒状筐体における前記基端側回転体との対向面には、第2の空気静圧軸受が配設されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記回転負荷検出装置は、前記基端側回転体に対する前記先端側回転体の回転負荷を非接触で検出することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記回転負荷検出装置に対して非接触でエネルギーを供給するエネルギー供給手段をさらに有し、
前記回転負荷検出装置は、前記エネルギー供給手段から供給されたエネルギーを用いて回転負荷を検出することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記穿孔工具把持部からの送り負荷を検出する送り負荷検出装置をさらに有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のスピンドルモータにおいて、
前記送り負荷検出装置は、前記穿孔工具把持部からの送り負荷を受けて送り方向に沿って撓み変形可能な撓み変形部分と、前記撓み変形部分の撓み変形に基づいて送り負荷を検出する歪センサとを有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のスピンドルモータにおいて、
前記穿孔工具把持部からの送り負荷を前記撓み変形部分に伝達する送り負荷伝達部材をさらに有し、
前記基端側回転体は、前記穿孔工具把持部からの送り負荷を前記送り負荷伝達部材に伝達する鍔部を有し、
前記送り負荷伝達部材における前記鍔部との対向面には、第3の空気静圧軸受が配設されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記送り負荷に対抗して前記基端側回転体を先端側に向けて押圧する押圧装置をさらに有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載のスピンドルモータと、
所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、
穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有することを特徴とする穿孔加工装置。
【請求項13】
請求項8〜11のいずれかに記載のスピンドルモータと、
所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、
穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有することを特徴とする穿孔加工装置。
【請求項14】
請求項13に記載の穿孔加工装置において、
前記回転負荷検出装置により検出された回転負荷と、前記送り負荷検出装置により検出された送り負荷とによって表される負荷データが、回転負荷と送り負荷とを変数とする所定の負荷限界値を超えた場合に、前記所定の送り動作を中断するように構成されていることを特徴とする穿孔加工装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−229826(P2007−229826A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51492(P2006−51492)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(596070168)株式会社ダイヤ精機製作所 (9)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】