スピーカアレイ装置
【課題】スピーカアレイ装置の設置場所の自由度が高く、音声ビームの設定をユーザが容易に行うことのできるスピーカアレイ装置を提供する。
【解決手段】スピーカアレイ装置1は、音声ビームの角度を調整できる帯域に制限された音声信号による音声ビームを、スピーカアレイ10の前面において0度から180度までスイープさせて、無指向性のマイクロフォン2でこの音声ビームの直接音や反射音を集音する。そして、集音した音声データを分析して閾値以上のピークを検出して各ピークの対称性を確認し、対称性がある場合には各ピークを検出した角度をサラウンド音声の各チャンネル用の音声ビームを出力する角度に設定する。これにより、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や設置位置に応じて、音声ビームの出射角度を最適な位置に設定することができる。
【解決手段】スピーカアレイ装置1は、音声ビームの角度を調整できる帯域に制限された音声信号による音声ビームを、スピーカアレイ10の前面において0度から180度までスイープさせて、無指向性のマイクロフォン2でこの音声ビームの直接音や反射音を集音する。そして、集音した音声データを分析して閾値以上のピークを検出して各ピークの対称性を確認し、対称性がある場合には各ピークを検出した角度をサラウンド音声の各チャンネル用の音声ビームを出力する角度に設定する。これにより、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や設置位置に応じて、音声ビームの出射角度を最適な位置に設定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の音声ビームを出力してサラウンド音声を再生するスピーカアレイ装置に関し、特に設置場所の自由度が高く音声ビームの設定を容易に行うことができるスピーカアレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マトリックス状に配置された複数のスピーカから成るスピーカアレイを用いて複数の音声ビームを形成することにより、音声信号伝搬の指向性を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術を用いることで、従来のサラウンドシステムのように複数のスピーカをユーザ(聴取者)の周囲に設置しなくても良くなり、1枚のパネル状のスピーカアレイから複数の音声ビームを出力させてサラウンド音声を再生することができる。
【0003】
図12は、特許文献1に記載のスピーカ装置を設置した部屋の上面透視図であり、スピーカアレイを備えたスピーカ装置で5.1chサラウンドシステムを構成した例を示している。ここで、以下の説明では、5.1chサラウンドシステムにおいて、フロントの左チャンネルをL(Left)ch、フロントの右チャンネルをR(Right )ch、センタチャンネルをC(Center)ch、リアの左チャンネルをSL(Surround Left)ch、リアの右チャンネルをSR(Surround Right)ch、サブウーハをLFE(Low Frequency Effects)chと称する。
【0004】
図12に示すスピーカ装置213は、1つのパネルに所定の配列で配置された数百個のスピーカユニットを備えており、各スピーカユニットからサラウンド音声を出力するタイミングをチャンネル毎に調整してビーム状に放射し、音声ビームが空間の任意の点で焦点を結ぶように遅延制御する。そして、各チャンネルの音声を天井や壁に反射させることで、壁方向に音源を作り出し、マルチチャンネルの音場を再生する。図12に示すように、部屋の壁220の中央部付近であって、ユーザUの前方に設置された映像装置222の下部に配置したスピーカ装置213は、センタスピーカ(C)及び低音補強用のサブウーハ(LFE)と同様の音声を直接ユーザに対して出力する。また、スピーカ装置213は、ユーザUの左右の壁221,222に音声ビームを反射させて、仮想Rchスピーカ214と仮想Lchスピーカ215を作り出す。さらに、スピーカ装置213は、ユーザの左右の壁221,222及びユーザUの後方の壁223に音声ビームを反射させて、ユーザUの後方の左右に仮想SRchスピーカ216と仮想SLchスピーカ217を作り出す。このように、スピーカアレイによるサラウンドシステムでは、各チャンネルの音声信号を遅延制御してビーム化し、このビーム化した音声を壁に反射させて複数の音源を作ることにより、ユーザUの周囲に複数のスピーカを設置したかのようなサラウンド感を得ることができる。
【特許文献1】特表2003−510924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスピーカアレイ装置を設置する際には、ユーザのリスニング位置の情報や、設置環境の形状情報として部屋の幅・奥行き・高さをスピーカアレイ装置に与えることで、音声ビームの角度を自動計算させて音声ビームを設定していた。また、スピーカアレイ装置に上記のような設定機能が設けられていない場合には、専門家がリスニング位置においてスピーカアレイ装置の再生音を聞きながら、音声ビームの角度を手動で変更しながら調整を行っていた。
【0006】
しかし、前者の方法の場合、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状及び設置場所が制限されるという問題があった。つまり、スピーカアレイ装置を設置する部屋が図12に示したような直方体や立方体といった理想的な形状であり、かつ計算可能条件に合致する位置・方向にスピーカアレイ装置を設置しないと音声ビームの正しい角度が求められなかった。そのため、特殊な形状の部屋や大型の家具が設置されている部屋では、スピーカアレイ装置の音声ビームの設定を自動で行うことができず、手動でビーム角度の調整を行わなければならないことがあった。
【0007】
また、後者の方法の場合、音声ビームの調整は、設定者の主観に依存する部分が多いため、視聴環境に個人差が発生しやすく、また設定操作に知識と慣れが必要である。そのため、音声ビームの調整は、前記のように通常はビーム角度の調整を専門に行う専門家が実行しており、ユーザがビーム角度の調整を行うのは困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、スピーカアレイ装置の設置場所の自由度が高く、音声ビームの設定をユーザが容易に行うことのできるスピーカアレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0010】
(1)マトリックス状またはライン状に配置された複数のスピーカを有するスピーカアレイと、
外部から入力された音声信号を前記スピーカアレイの全部または一部のスピーカに対して分配し、これらのスピーカから出力する音声の出力タイミングを制御して前記スピーカアレイから音声ビームを出力させる信号処理手段と、
前記信号処理手段にテスト音声信号を出力するとともに、この信号処理手段にテスト音声信号の出力タイミングを制御する信号を出力して、前記テスト音声信号により形成したテスト音声ビームを前記スピーカアレイから出力させて、このテスト音声ビームを旋回させるテスト音声出力手段と、
聴取位置に設置され、前記スピーカアレイが出力したテスト音声ビームの直接音及び反射音を集音するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンが集音した前記テスト音声ビームの音声データをテスト音声ビームの旋回角度と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶した音声データの信号レベルに基づいて複数のピークを選択し、選択した複数のピークの旋回角度に基づいて、マルチチャンネルサラウンド音声の各チャンネルの音声ビームを出力する角度であるビーム出力角度を設定するビーム設定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
従来のスピーカアレイ装置でサラウンド音声を再生させるためには、この装置の設置後に専門家が音声を再生しながら各チャンネルの音声ビームを出力する方向を調整する必要があり、コストアップの要因となっていた。この構成においては、スピーカアレイ装置を室内に設置する際に、ユーザの聴取位置にマイクロフォンを設置して、スピーカアレイからテスト音声の音声ビームを自動的に旋回(スイープ)させながら出力して、このときにマイクロフォンでテスト音声ビームを集音する。そして、スピーカアレイから直接マイクロフォンに向けて出力されたテスト音声や、部屋の壁からマイクロフォンに向けて反射したテスト音声から、信号レベルのピークを検出する。したがって、聴取位置において最適なサラウンド音声を再生させるためには、アレイスピーカから出力した音声ビームを部屋の壁のどの位置に反射させるとマルチチャンネル音声信号を最適に再生できるかを短時間で容易に検出することが可能となる。また、ピークを検出した旋回角度をマルチチャンネル音声信号の各チャンネルの音声ビームを出力する角度として設定することで、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や家具の配置などにかかわらず、スピーカアレイ装置を設置後にマルチチャンネルサラウンド音声の再生設定をユーザでも簡単に行うことができる。
【0012】
(2)前記ビーム設定手段は、前記記憶手段が記憶するテスト音声信号の信号レベルから選択したピーク数がマルチチャンネルサラウンド音声のチャンネル数よりも少ない場合、
選択したピークの旋回角度をマルチチャンネルサラウンド音声のいずれかのチャンネルのビーム出力角度として設定するとともに、ビーム出力角度を設定したチャンネル以外のチャンネルの音声を、聴取位置へ直接伝搬するように出力する直接音に設定することを特徴とする。
【0013】
この構成においては、テスト音声信号の信号レベルから選択したピーク数がマルチチャンネルサラウンド音声のチャンネル数よりも少ない場合、マルチチャンネルサラウンド音声のすべてのチャンネルを音声ビームとして出力するように設定することができない。そこで、ビーム出力角度を設定したチャンネル以外のチャンネルの音声として、壁反射を利用せずに聴取位置へ直接伝搬する直接音を出力するように設定する。例えば、5.1チャンネルサラウンド音声の場合、ピークを3つ検出した場合には、最大のピークをセンタチャンネルのビーム出力角度に、残りのピークをサラウンドチャンネルのビーム出力角度に設定して、フロントチャンネルを直接音を出力するように設定する。このようにすることで、スピーカアレイ装置の設置位置や室内形状や家具の配置などによって各チャンネルを音声ビームとして出力できない場合であっても、状況に応じてマルチチャンネルサラウンド音声の再生設定を適切に行うことができる。
【0014】
(3)前記ビーム設定手段は、前記テスト音声信号の信号レベルが最大となるピークの旋回角度を、マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度として設定することを特徴とする。
【0015】
通常、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状にかかわらずスピーカアレイから聴取位置に向けて出力された直接音を、マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルの音声ビームに設定する。この直接音は壁に反射した音声ビームよりも信号レベルが大きく、スピーカアレイ装置から出力する音としては直接音の信号レベルが最も大きいものとなる。したがって、記憶手段が記憶したテスト音声信号の信号レベルから最大のピークを選択すれば良いので、センタチャンネルの出力角に設定すべきピークを容易に検出することができる。また、センタチャンネルの音声ビームの出力角度を決定することで、ユーザに対する左右の判定が行え、この出力角度に基づいて他のチャンネルの出力角度を容易に設定することができる。
【0016】
(4)前記ビーム設定手段が設定した前記マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度が、前記アレイスピーカ正面に垂直な方向から一定角度以上ずれている場合に、聴取位置の変更を促す旨か、または音声再生方法の変更を促す旨を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度が、アレイスピーカ正面に垂直な方向から一定角度以上ずれている場合には、各ピークを音声ビームの出力角に設定して、サラウンド音声を再生すると、サラウンド音声はバランスが崩れたものとなる。この構成においては、報知手段でユーザに対して聴取位置の変更を促す旨か、または音声再生方法の変更を促す旨を前記報知手段が報知するので、上記のような場合にはサラウンド音声をバランス良く再生できるよう設定変更することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスピーカアレイ装置は、室内に設置する際に、ユーザの聴取位置にマイクロフォンを設置して、スピーカアレイからテスト音声を出力して音声ビームを自動的に旋回(スイープ)させて、このときにマイクロフォンで音声ビームを集音することで、スピーカアレイから直接マイクロフォンに向けて出力された音声や、部屋の壁からマイクロフォンに向けて反射した音声を、信号レベルのピークとして検出することができる。これにより、聴取位置において最適なサラウンド音声を再生させるためには、アレイスピーカから出力した音声ビームを部屋の壁のどの位置に反射させるとマルチチャンネル音声信号を最適に再生できるかを短時間で容易に検出することが可能となる。また、ピークを検出した旋回角度をマルチチャンネル音声信号の各チャンネルの音声ビームを出力する角度として設定することで、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や家具の配置などにかかわらず、スピーカアレイ装置を設置後にマルチチャンネルサラウンド音声の再生設定をユーザでも簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るスピーカアレイ装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、スピーカアレイの配置図であり、(A)はマトリックス状にスピーカを配置した場合、(B)はライン状にスピーカを3列配置した場合、(C)はライン状にスピーカを3列配置し、2列目のスピーカをずらした配置にした場合である。以下の説明では、スピーカアレイ装置の一例として、5.1chサラウンドシステム用のものについて説明する。また、以下の説明では、5.1chサラウンドシステムにおいて、フロントの左チャンネルをL(Left)ch、フロントの右チャンネルをR(Right)ch、センタチャンネルをC(Center)ch、リアの左チャンネルをSL(Surround Left)ch、リアの右チャンネルをSR(Surround Right)ch、サブウーハをLFE(Low Frequency Effects)chと称する。なお、5.1chサラウンドシステムにおいて、LFEchの音声信号は指向性がほとんどなく、スピーカアレイ装置から直接ユーザに対して出力するので、以下の説明ではLFEchの音声信号の処理については説明を省略する。
【0020】
スピーカアレイ装置1は、マイクロフォン2、A/Dコンバータ3、システム制御部4、操作部6、表示部7、ファントム形成部8、ビーム形成部9、及びスピーカアレイ10を備えている。また、スピーカアレイ装置1は、5.1chサラウンド音声信号の外部入力端子として、Lch端子、Rch端子、SLch端子、SRch端子、Cch端子を備えている。さらに、ファントム形成部8は、Lch用アンプ21a,21b、Rch用アンプ22a,22b、SLch用アンプ23a,23b,23c、SRch用アンプ24a,24b,24c、Lch用加算器25、Rch用加算器26、及びCch用加算器27を備えている。加えて、ビーム形成部9は、ファントム形成部8から出力された5つの音声信号をそれぞれ遅延処理する遅延部31、遅延部31から出力された5つの音声信号を増幅するパワーアンプ32−1〜32−5、及び各パワーアンプ32−1〜32−5から出力された信号を加算する加算器33を備えている。また、ビーム形成部9はn個のブロックから成り、スピーカアレイ10はn個のスピーカ30から成り、各ビーム形成部9の出力にはスピーカ30がそれぞれ接続されている。
【0021】
なお、スピーカアレイ装置1のマイクロフォン2を除いた部分を本体1hと称する。
【0022】
マイクロフォン2は、無指向性のマイクロフォンであり、A/Dコンバータ3に接続されている。
【0023】
A/Dコンバータ3は、マイクロフォン2が集音したアナログ音声信号をディジタル音声信号に変換(サンプリング)して、システム制御部4へ出力する。
【0024】
システム制御部4は、ユーザI/F処理部11、ビーム制御処理部12、測定データ分析処理部13、及び音源位置補正処理部14を備えている。
【0025】
ユーザI/F処理部11は、操作部6で受け付けた操作に応じて、制御信号をスピーカアレイ装置1の各部へ出力する。また、ユーザI/F処理部11は、装置の状況に応じてユーザに報知すべき内容を表示部7へ表示させる。
【0026】
ビーム制御処理部12は、スピーカアレイ装置1の設置時などに各チャンネルの音声ビームを出力する角度を設定する音声ビーム設定モードの実行時に、ビーム形成部9ヘテスト音声信号を出力して、スピーカアレイ10から出力させるテスト音声の音声ビームをスイープ(旋回)させる。
【0027】
測定データ分析処理部13は、音声ビーム設定モード実行時に、スピーカアレイ10から出力されてマイクロフォン2で集音したテスト音声信号を記憶させる。また、測定データ分析処理部13は、音声信号の収集が完了すると、記憶部5に記憶させた音声信号を読み出して音声信号のピークを検出し、各ピークに基づいてCch、Lch、Rch、SLch、SRchの各チャンネルの音声を出力する角度を設定し、その結果をビーム制御処理部12へ出力する。
【0028】
ビーム制御処理部12は、測定データ分析処理部13から出力された分析結果に基づいて各チャンネルの角度設定を行うための角度設定信号をビーム形成部9へ出力する。また、測定データ分析処理部13は、マイクロフォン2で集音したスイープ信号を分析した結果、各チャンネルの角度バランスが悪い場合には、音源位置補正処理部14へ信号を出力する。
【0029】
音源位置補正処理部14は、測定データ分析処理部13から受け取った信号に基づいて、ファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。
【0030】
なお、システム制御部4は、測定精度を上げるように設定された場合には、スイープを複数回実行させて、音声信号の積算・平均化処理などを実行するようにスピーカアレイ装置1の各部を制御する。
【0031】
記憶部5は、A/Dコンバータ3からシステム制御部4を介して出力されたディジタル音声信号を記憶する。
【0032】
操作部6は、スピーカアレイ装置1の設置時などに、ユーザからの各種の設定入力を受け付けてシステム制御部4へ入力に応じた信号を出力する。
【0033】
表示部7は、システム制御部4から出力された制御信号に基づいてユーザに伝達する内容を表示する。
【0034】
ファントム形成部8は、ファントム(虚像)の形成が必要な場合に、システム制御部4が出力した音源位置補正信号に基づいて特定チャンネルの音声信号をファントム化する処理を行い、作成したファントム形成信号をビーム形成部9へ出力する。
【0035】
ここで、ファントムとは、異なる方向から到来する複数の(同じ)音声信号により、その異なる方向の中間の方向(信号のパワーに応じて内分された方向)に定位される仮想的な音源であり、上記のように異なる方向から複数の音声信号が到来しても、聴取者はこれらの信号を別に認識することなく、このファントムから到来する1つの音声信号として認識する。ファントム形成部8は、システム制御部4が出力した音源位置補正信号に基づいて特定チャンネルの音声信号をファントム化する処理を行い、作成したファントム形成信号をビーム形成部9へ出力して、ユーザの聴取位置へ異なる方向から複数の音声ビームが到来するようにすることで、ファントム音源から音声が出力しているように設定する。
【0036】
ビーム形成部9は、システム制御部4から出力された各チャンネルの角度設定信号に基づいて各チャンネルの音声ビームを形成して、スピーカアレイ10へ音声信号を出力する。また、ビーム形成部9は、システム制御部4からスイープ信号が出力された場合には、スピーカアレイ10から出力する音声ビームをスイープさせるように音声信号を処理して、スピーカアレイ10へ音声信号を出力する。
【0037】
スピーカアレイ10は、ビーム形成部9から出力された音声信号に基づいて、各チャンネルの音声ビームを出力する。
【0038】
ここで、図2に示すようにスピーカアレイ10は、複数(n個)のスピーカ30が1つのパネルにマトリックス状やライン状など所定の配列で配置したものであり、各スピーカからサラウンド音声を出力するタイミングをチャンネル毎に調整してビーム状に放射し、音声ビームが壁面など任意の位置で焦点を結ぶように遅延制御する。そして、各チャンネルの音声をスピーカアレイ装置1が設置された部屋の壁に反射させることで、任意の点に音源を作り出し、マルチチャンネルの音場を形成して、サラウンド音声を再生する。
【0039】
次に、スピーカアレイ装置1の動作について説明する。図3は、スピーカアレイ装置を設置する部屋の上面図であり、スピーカアレイ装置が音声ビームをスイープする動作、及びマイクロフォンが音声ビームを集音する動作を説明するための図である。ここで、図3には、本発明を容易に理解できるように、スピーカアレイ装置1を設置する部屋40が理想的な形状である直方体であり、スピーカアレイ装置1の本体1hを部屋40の前壁41の中央付近における壁際に設置した場合について説明する。
【0040】
スピーカアレイ装置1を部屋40に設置する場合には、図3(A)に示すようにスピーカアレイ装置1の本体1hを、ユーザの所望の位置である前壁41の中央部における壁際に、スピーカアレイ10の前面が前壁41と平行となり、後壁43に対向させて室内に向けて音声を出力するように設置する。また、スピーカアレイ装置1のA/Dコンバータ3に接続されたマイクロフォン2を、ユーザのリスニングポジション(聴取位置)に設置する。このとき、マイクロフォン2の高さは、ユーザの耳の位置に合わせると良い。図3(A)には、聴取位置を部屋40の中心よりも後壁43に近い位置とした場合を示している。
【0041】
スピーカアレイ装置1は、スピーカアレイ装置1の本体1h及びマイクロフォン2の設置が完了して、音声ビーム設定モードが設定されると、スピーカアレイ10を部屋40の上方から見てスピーカアレイ10の前面と平行な一方の方向(以下、0度方向と称する。)から、スピーカアレイ10の前面と平行な他方の方向(以下、180度方向と称する。)までの間において、音声ビームをスイープ(旋回)させる。なお、スピーカアレイ装置1を設置する部屋の形状やスピーカアレイ装置1の設置位置によっては、音声ビームのスイープ角θを0゜≦θ≦180°以外の値に設定することも可能である。
【0042】
このように、音声ビームをスイープさせると、スピーカアレイ10から出力した音声ビームのスイープ角θに応じて、部屋40の左壁42・後壁43・右壁44に音声ビームが反射する。このとき、マイクロフォン2で音声ビームの直接音や各壁で反射した間接音を集音して、音声ビームを出力する最適な角度を求める。
【0043】
例えば、図3(B)に示すように、スイープ角θ=θ1の場合、音声ビーム34aは左壁42及び右壁44で反射してからマイクロフォン2に到達するので、Lチャンネルの音声ビームを出力する角度としては不適である。また、スイープ角θ=θ2の場合、音声ビーム34bは左壁42で反射してからマイクロフォン2に到達するので、音声ビームを出力する角度としては適当な角度であり、Lchの音声ビームの出力角度に設定することができる。さらに、スイープ角θ=θ3の場合、音声ビーム34cは左壁42及び後壁43で反射してからマイクロフォン2に到達するので、SLchの音声ビームを出力する角度としては適当であり、SLchの音声ビームの出力角度に設定することができる。加えて、スイープ角θ=θ4の場合、音声ビーム34dは直接マイクロフォン2に到達するので、音声ビームを出力する角度としては適当であり、Cchの音声ビームの出力角度に設定することができる。
【0044】
音声ビーム設定モードのときにスピーカアレイ10から出力させる音声ビームは、相関性がなく、スピーカアレイ装置1の形状とスピーカアレイ10の各スピーカの配置によって決まるビーム角度をコントロール可能な帯域に制限された音声信号を出力するようにシステム制御部4に設定されている。テスト音声信号としては、例えば、4kHzを中心とする周期性のない音波やノイズのように周期性のない音波などが好適である。これにより、所望の範囲内に音声ビームを旋回させることができ、また、反射前の音声ビームと、壁などで反射後の音声ビームが重なった場合でも、干渉が発生することなく確実にテスト音声を集音することができる。
【0045】
また、スピーカアレイ装置1は、その設置位置や高さに応じて、スピーカアレイ10の前面から出力する音声ビームの仰角(俯角)を任意の角度に設定することができる。加えて、スピーカアレイ装置1は、音声ビームを0度〜180度までスイープする毎に仰角(俯角)を変更して、部屋全体に音声ビームを出力するように設定しても良い。これにより、例えば、天井及び後壁に音声ビームを反射させることで最適位置に仮想スピーカを形成できる場合に、最適な音場を形成することができる。
【0046】
図4は、スイープ信号の角度とゲインの関係、及び角度と焦点距離の関係を示すグラフである。スピーカアレイ10からスイープさせながら出力するテスト音声の音声ビーム(以下、スイープ信号とも称する。)のゲインは、ユーザの推奨聴取位置(スピーカアレイ10の正面に垂直な方向)において最も高くなるように、テスト音声の信号レベルを、前記音声ビームの旋回範囲内の中央が最大となるエンベロープで変調するように設定すると良い。すなわち、図4(A)に示すように、スイープ信号のゲインレベルが90°をピークとする放物線状に変化するように設定すると良い。これにより、スピーカアレイ10の正面に聴取位置を設定した場合には、Cchの音声ビームの出力角度を90°に設定することになり、Cchの音声ビームの出力角度を容易に設定することができる。また、ビーム経路が長くなるサラウンドチャンネルの検出感度(SN比)を上げることができる。さらに、各チャンネルの音声ビームの最適な角度設定も容易に行うことができる。
【0047】
また、スイープ信号の焦点距離は、各スイープ角度においてユーザの聴取位置でビーム径が最も細くなるように焦点距離を設定すると良い。すなわち、図4(B)に示すように、ビーム径が最も細くなる焦点距離が90°をピークとする放物線状に変化するように設定すると良い。これにより、マイク位置におけるビームの角度感度を改善することができる。
【0048】
次に、スピーカアレイ装置1を設置した際における音声ビームの出力角度の具体的な設定動作について説明する。図5は、スピーカアレイ装置の設置時の動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋における前壁中央の壁際に設置したときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフ、(C)はスピーカアレイ装置を設置後における直方体型の部屋の上面図である。
【0049】
図5に示すように、理想的な形状の部屋である直方体型の部屋50においてスピーカアレイ装置1の本体1hを前壁51の中央部の壁際に設置した場合、ユーザUがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定すると、音声ビームのスイープが開始される。すなわち、スピーカアレイ装置1は、スピーカアレイ10の前面の0度方向から180度方向までの間において、音声ビームをスイープさせながら、マイクロフォン2で集音して、音声データを記憶部5に格納する。音声ビームのスイープが終了すると、システム制御部4は記憶部5からデータを読み出して分析を行う。その結果、図5(B)に示すような結果が得られた。ここで、図5(B)には、ノイズを除去したデータを示しているが、実際にはノイズなどにより測定データの波形は歪んだり細かく波形が変化したりする。また、図5(B)に示すグラフの横軸をビーム角度、縦幅をマイクロフォン2で集音した音声データのゲインに設定している。音声データから複数のピークを容易に検出するために、壁に反射した回数が2回までの音声ビームのみを検出できるレベルに閾値を設定する。さらに、これ以降に説明する角度−ゲインのグラフはすべて図5(B)と同様に表示する。
【0050】
システム制御部4は、妥当な範囲にあり一定幅以上である最もゲインレベルの高いピーク57のスイープ角θa3をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。Cchに設定する音声は、音声ビームの直接音を測定しているため、最も高いレベルとなる。また、図1(A)に基づいて説明したように、90゜をピークとする放物線状にゲインを変化させることで、Cchの音声が最も高いレベルとなる。
【0051】
続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側(時間的に前後、角度的に左右)の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピーク57に近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。システム制御部4は、このピーク数がCchに設定したピーク57を挟んで同数の場合は、Cchに設定したピーク57に近い方からサラウンドチャンネル、フロントチャンネルという順に割り当てて、その角度を割り出す。すなわち、システム制御部4は、スイープ角θa1をLchの出力角に、スイープ角θa2をSLchの出力角に、スイープ角θa3を前記のようにCchの出力角に、スイープ角θa4をSRchの出力角に、スイープ角θa5をRchの出力角に、それぞれ設定する。
【0052】
スピーカアレイ装置1は、外部からオーディオ音声などが入力されると、図5 (C)に示すように、ユーザUに対して、Cchの音声を直接音として出力し、Lchの音声を左壁52で1回反射する反射音として出力し、SLchの音声を左壁52及び後壁53で2回反射する反射音として出力し、SRchの音声を右壁54及び後壁53で2回反射する反射音として出力し、Rchの音声を右壁54で1回反射する反射音として出力する。したがって、ユーザUは、聴取位置において理想的なサラウンド音声を楽しむことができる。
【0053】
図6は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋のコーナに設置したときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)はノイズを除去した測定データを示すグラフ、(C)はスピーカアレイ装置を設置後における直方体型の部屋の上面図である。
【0054】
図6には、直方体型の部屋60の前壁61と左壁62との端部であるコーナにスピーカアレイ装置1をスピーカアレイ10の前面を室内に向けて斜めに設置した場合を示している。この場合も、同様に音声ビーム設定モードを実行して、音声データを収集する。
【0055】
スピーカアレイ装置1を図6(A)に示すように配置して、音声ビーム設定モードを実行して音声データを収集すると、図6(B)に示すように、閾値よりもゲインレベルの高いピーク65〜69が得られた。この場合、閾値よりもゲインレベルの高いピークが5つであるため、スピーカアレイ装置1は図5(B)と同様に、音声ビームを出力する角度を設定してしまう。
【0056】
しかしながら、図6(A)に示すように、Lchに設定すべきピーク65は左壁62と後壁63に2回反射した音声ビームであり、Rchに設定すべきピーク69は右壁64と後壁63に2回反射した音声ビームであり、フロントチャンネルの音声がサラウンド音声が聞こえるべき方向から聞こえるため、音声ビームを出力する角度として適切ではない。
【0057】
スピーカアレイ装置1は、このような不具合を防ぐために、音声ビーム設定モードを実行する前に、スピーカアレイ装置1の設置位置を入力するアシスト情報機能を備えている。スピーカアレイ装置1は、部屋のコーナまたは壁沿いのいずれかの位置に設置されたことを受け付ける。スピーカアレイ装置1は、アシスト情報機能を備えることにより、音声ビームのピーク検出角度と、スピーカアレイ装置1の設置位置情報に基づいて、音声ビームを出力する角度を設定することができる。
【0058】
例えば、図6に示した例では、ユーザはスピーカアレイ装置1を部屋60のコーナに設置しているので、音声ビーム設定モードを実行する前に、操作部6を操作して「コーナ設置」を選択する。
【0059】
これにより、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、図6(B)に示すように、センタピークを挟んで対称に2つずつピークを検出しても、センタピークに近い2つのピークをサラウンドチャンネルに設定し、フロントチャンネルを直接音としてステレオ再生するように設定する。
【0060】
システム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク67のスイープ角θb3をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。また、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピーク67に近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。すなわち、スイープ角θ=θb2及びθb4のときのピーク66,68を選出する。この場合には、ピーク数がCchに設定したピーク66を挟んで同数であるが2つだけであるため、2つのピーク値をサラウンドチャンネルに割り当て、フロントチャンネルは直接音をステレオ再生するように割り当てる。
【0061】
したがって、スピーカアレイ装置1は、外部からオーディオ音声などが入力されると、図6(C)に示すように、ユーザUに対して、Cch・Lch・Rchの音声を直接音として出力し、SLchの音声を後壁63で1回反射する反射音として出力し、SRchの音声を右壁64で1回反射する反射音として出力する。したがって、ユーザUは、聴取位置において理想的なサラウンド音声を楽しむことができる。
【0062】
なお、スピーカアレイ10からCch・Lch・Rchの音声を直接音として出力する際には、例えば、スピーカアレイ10の中央部からCchの音声を出力し、スピーカアレイ10の中心よりも向かって左側からLchの音声を出力し、スピーカアレイ10の中心よりも向かって右側からRchの音声を出力するように設定すると良い。また、Lch・Rchを出力する領域をビーム化しないように低域・中域・高城に分割して、各領域から音声を出力するように設定すると良い。
【0063】
図7は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋における前壁中央の壁際に設置して、聴取位置を図5とは別の位置にしたときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフである。
【0064】
図7には、図5に示した直方体型の部屋50においてスピーカアレイ装置1の本体1hを前壁51の中央部の壁際に設置して、ユーザの聴取位置を部屋の中心と左壁52との中間に設定した場合を示している。ユーザUがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定して測定を行い、収集したデータを記憶部5に格納する。システム制御部4は、記憶部5から収集した音声データを読み出して分析を行い、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク71のスイープ角θ=θc2をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピーク71を挟んで両側の領域にゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピークに近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。その結果、スイープ角θ=θc1,θc3,θc4,θc5のときの計4点のピーク70,72,73,74を選定する。このとき、聴取位置がスピーカアレイ10の正面から著しくずれているので、Cchに設定したピーク71を挟んで残りのピークが同数にならない。そのため、各ピークを音声ビームの出力角に割り当てると、この聴取位置では、バランスの崩れたサラウンド音声となってしまう。そこで、スピーカアレイ装置1は、予め設定された一定角度以上聴取位置の角度がずれている場合には、聴取位置を変更するか、または音声ビームのコンフィギュレーションの変更をユーザに促す内容を表示部7に表示させる。例えば、スピーカアレイ装置1は、聴取位置の変更を促す内容として、聴取位置をスピーカアレイ10の正面に対向する位置に移動して音声ビーム設定モードを再度実行する指示を表示部7に表示させる。または、スピーカアレイ装置1は、コンフィギュレーションの変更を促す内容として、全チャンネルをステレオ再生する設定モード、またはLch・Rchをステレオ音声として再生し、SLch・SRchをサラウンド音声として再生する設定モードを選択する指示を表示部7に表示させる。ユーザは、この指示に従って視聴位置を変更し、再度音声ビーム設定モードを実行する。またはコンフィギュレーションを変更することで、スピーカアレイ装置1にサラウンド音声を適正に再生するように設定することができる。
【0065】
次に、スピーカアレイ装置1を理想的ではない部屋に設置した場合の音声ビームの出力角度の具体的な設定動作について説明する。図8は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は部屋の前壁中央の壁際に設置して音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフである。
【0066】
図8には、直方体型の部屋の右壁81側に後壁78に沿って廊下75Rが設けられた部屋75を示している。また、スピーカアレイ装置1の本体1hを前壁76の中央部の壁際に設置して、廊下75Rを除いた部屋75の中心にユーザの聴取位置を設定している。ユーザUがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定すると、スピーカアレイ装置1は音声ビームのスイープを開始して音声データを収集する。その結果、図8(B)に示すように、ゲインが閾値よりも大きなピークは、スイープ角θd1のときのピーク82,スイープ角θd2のときのピーク83,スイープ角θd3のときのピーク84,スイープ角θd4のときのピーク86の計4点であった。システム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク値のスイープ角θ=θd3をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピーク84を挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピークに近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。その結果、スイープ角θ=θd1,θd2,θc4のときの計3点のピーク82,83,86を選定する。スピーカアレイ装置1は、Cchに設定したピーク84を挟んで残りのピークが同数にならないため、各ピークを音声ビームの出力角に割り当てると、この聴取位置では、バランスの崩れたサラウンド音声となってしまう。そのため、スピーカアレイ装置1は、聴取位置を変更するか、または音声ビームのコンフィギュレーションの変更をユーザに促す内容を表示部7に表示させる。
【0067】
例えば、スピーカアレイ装置1は、コンフィギュレーションの変更を促す内容として、全チャンネルをステレオ再生する設定モード、またはLch・Rchをステレオ音声として再生し、SLch・SRchをサラウンド音声として再生する設定モードを選択する指示を表示部7に表示させる。
【0068】
ユーザは、この指示に従って、コンフィギュレーションを変更して、Lch・Rchをステレオ音声として再生し、SLch・SRchをサラウンド音声として再生する設定モードを選択した場合には、Cchに設定したピーク84を挟んでほぼ対照的な位置となるスイープ角θ=θd1,θd4をSLch,SRchに割り当て、フロントチャンネルの音声であるLch,Rchをステレオ再生するように設定する。
【0069】
また、スピーカアレイ装置1は、自動判定モードに設定しておくことで、Cchに設定したピークを挟んで残りのピークが同数にならない場合には、自動的にコンフィギュレーションを変更して、上記のようにCchに設定したピーク84を挟んでほぼ対照的な位置となるスイープ角θ=θd1,θd4をSLch,SRchに割り当て、フロントチャンネルの音声であるLch,Rchをステレオ再生するように設定する。
【0070】
スピーカアレイ装置1は、外部からオーディオ音声などが入力されると、図8(C)に示すように、ユーザUに対して、Cch・Lch・Rchの音声を直接音として出力し、SLchの音声を左壁77で1回反射する反射音として出力し、SRchの音声を右壁81で1回反射する反射音として出力する。したがって、ユーザUは理想的ではない形状の部屋75においても、サラウンド音声を適正に再生することができる。
【0071】
図9は、スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モード時に収集したデータ例を示すグラフである。スピーカアレイ装置1を設置する部屋が理想的な形状でない場合や、理想的な形状の部屋であっても家具の配置状態によって閾値よりも大きなピークが必要なチャンネル数よりも多い場合や少ない場合がある。例えば、スピーカアレイ装置1をある部屋に設置する際に、音声ビーム設定モードを実行して音声ビームをスイープした結果、図9(A)に示すようなデータを得た。この場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、前記のように妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク値を選定する。図9(A)に示したデータにおいては、ピーク96のゲインレベルは最も高いが、波形がパルス状で幅が一定値以下であり音声ビームとしては有り得ない形状の波形であるため、ノイズとして除外する。そして、システム制御部4は、ピーク96を除いて最もゲインレベルが高いピーク94をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。このとき、Cchに設定したピーク94に近すぎるピーク93,95は、ビームがユーザと被り、定位がスピーカ方向となる可能性があるため除外する。また、ピーク91は、ユーザがスピーカ直近に位置している場合に相当し、通常の使用では有り得ない。また、推奨しない設定角度であるため除外する。その結果、システム制御部4は、ピーク92をSLch,ピーク97をSRchの音声ビームを出力する角度に設定する。
【0072】
また、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(B)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク103をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(B)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク103を挟んでピークが2個と3個とになるため、対称性を検討する。このとき、ピーク103との角度の差は、ピーク101とピーク106がほぼ等しく、また、ピーク102とピーク104がほぼ等しいので、ピーク105を除外して、ピーク101をLch、ピーク102をSLch、ピーク104をSRch、ピーク106をRchの音声ビームの出力角に設定する。
【0073】
さらに、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(C)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク114をCchの出力角に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閥値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(C)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク114を挟んでピークが同数であるが各3個であるため、妥当な範囲にあるピークを選出する。システム制御部4は、Cchに設定したピーク114の両隣のピーク113,115は、妥当な角度であり、ピーク114を挟んでほぼ対照な角度であるため、ピーク113をSLchに、ピーク115をSRchの出力角に設定する。また、システム制御部4は、ピークが複数存在する場合には、リアサラウンド音声に割り当てたピークから妥当な範囲でできるだけ角度の離れているピークをフロントチャンネルに割り当てるように設定されているので、ピーク112,116を採用せずにピーク111をLchの出力角に、ピーク117をRchの出力角に設定する。
【0074】
加えて、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(D)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク123をCchの出力角に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(D)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク123を挟んでピークが1個と2個とになるため、対称性を検討する。このとき、ピーク123との角度の差は、ピーク121とピーク124がほぼ等しいので、ピーク122を除外して、ピーク121をSLchの出力角に、ピーク124をRchの出力角に設定する。また、Lch,Rchは、ステレオ音声として再生するように設定する。
【0075】
また、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(E)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク126をCchの出力角に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(E)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク123を挟んでピークが1個と0個とになり、対称性がない。そのため、システム制御部4は、直接音により、Lch,Rchをステレオ音声として再生するように設定するか、または、直接音によりCchをモノラル音声として再生するように設定する。
【0076】
次に、スピーカアレイ装置1が音声ビーム設定モードでの測定結果に基づいてファントムを形成する場合について説明する。図10は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋の前壁左寄りの壁際に設置したときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフ、(C)はスピーカアレイ装置を設置後の直方体型の部屋の上面図である。
【0077】
図10に示すように、理想的な形状の部屋である直方体型の部屋130においてスピーカアレイ装置1の本体1hを前壁131の中央部よりも左寄りの壁際に設置した場合、ユーザがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定して音声データを収集する。システム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク137のスイープ角度をCchの出力角に設定する。
【0078】
続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図10(B)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク137を挟んでピークが2個ずつ存在するので、妥当な範囲にあるピークを選出する。システム制御部4は、Cchに設定したピーク137以外のピーク135,136,138,139がそれぞれ妥当な角度であるか否かと、各ピークの対称性について判定する。
【0079】
システム制御部4は、各ピークの対称性の判断に以下の式を用いる。すなわち、
Δfront=angle(frontL)−{180°−angle(frontR)}………(式1)
Δsurround=angle(surroundL)−{180°−angle(surroundR)}………(式2)
を用いて演算を行い、Δfront及びΔsurroundが予め設定した閾値以上であるか否かを判定する。
【0080】
システム制御部4は、図10(B)に示したデータの場合、Δfront及びΔsurround が予め設定した閾値よりも大きな値であったため、ファントム音源を形成するための処理を行う。スピーカアレイ装置1のシステム制御部4には、ファントム音源は、聴取者に届く音声ビームとCchに設定する音声ビームとの成す角度が小さい方の音声ビームと対照的な位置に形成するように設定されている。
【0081】
例えば、図10(A)に示した音声ビームの場合、Lchに相当するピーク135とCchに設定するピーク137との成す角θ11と、Rchに相当するピ−ク139とCchに割り当てるピーク137との成す角θ12と、の小さい方の角度に合わせてファントム音源を形成する。すなわち、システム制御部4は、図10(B)に示すデータに基づいてCchに設定したピーク137とピーク135との成す角cと、ピーク137とピーク139との成す角dと、を比較して、角度の小さいθcを選択する。
【0082】
また、SLchに相当するピーク136とCchに割り当てるピーク137との成す角θ13と、SRchに相当するピーク138とCchに割り当てるピーク137との成す角θ14と、の小さい方の角度に合わせてファントム音源を形成する。すなわち、システム制御部4は、図10(B)に示すデータに基づいてCchに設定したピーク137と隣接するピーク136との成す角aと、ピーク137とピーク138との成す角θbと、を比較して、角度の大きいθbを選択する。
【0083】
システム制御部4は、フロント音声・サラウンド音声とも音声ビームによって形成する場合、フロント音声については、Lch用のファントム音源はCchとLchを用いて形成し、Rch用のファントム音源はCchとRchを用いて形成するようにファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。また、サラウンド音声については、SLch用のファントム音源はLchとSLchを用いて形成し、SRch用のファントム音源はRchとSRchを用いて形成するようにファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。
【0084】
一方、システム制御部4は、サラウンド音声のみ音声ビームによって形成する場合、サラウンド音声については、SLch用のファントム音源はCchとSLchを用いて形成し、SRch用のファントム音源はCchとSRchを用いて形成するようにファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。
【0085】
したがって、システム制御部4は、図10(B)に示したデータの場合には、図10(C)に示すように、Lch及びSRchはサラウンド音声として音声ビーム135,138によって形成し、SLch及びRchはファントム140,141を形成する。これにより、ユーザの聴取位置が部屋130の中央ではなく左右非対称な場合でも、ユーザは適正に再生されたサラウンド音声を楽しむことができる。
【0086】
スピーカアレイ装置1は、以上のような設定を自動調整により行った後に、テストトーンによる設定確認をユーザUに対して促す。そして、問題がなければ、従来技術である各チャンネルレベル調整、周波数特性調整、タイムアラインメント調整など自動調整シーケンスを行うことで、さらに最適なサラウンド音声をユーザUに提供することができる。
【0087】
次に、スピーカアレイ装置1が音声ビーム設定モードを実行する際の動作についてフローチャートに基づいて説明する。図11は、スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モードを実行する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【0088】
ユーザUは、スピーカアレイ装置1の本体1hを部屋の所望の位置に設置するとともに、マイクロフォン2を聴取位置に設置する。そして、本体1hの操作部6を操作して、室内におけるスピーカアレイ装置1の設置位置(コーナまたは壁沿い)を入力後に、音声ビーム設定モードを開始させる。
【0089】
スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、操作部6が操作されて、スピーカアレイ装置1の設置位置の入力後に、音声ビーム設定モードの開始入力が行われたことを検出すると(s1)、システム制御部4は、スイープ信号を形成して、ビーム形成部9へ出力して、ビーム形成部9で形成したビーム信号をスピーカアレイ10へ出力して、スイープ信号を0度方向から180度方向までの間においてスイープさせる。そして、部屋の壁に反射した音声またはスピーカアレイ10から出力された直接音をマイクロフォン2で集音して、集音した音声データをA/Dコンバータ3でディジタル音声信号に変換して、記憶部5に蓄積させる(s2)。
【0090】
システム制御部4は、スイープ動作が終了すると、信号を出力して、システム制御部4に音声信号の分析を開始させる。すなわち、システム制御部4は、記憶部5から音声データを読み出して分析を行い、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク値のスイープ角度をCchに設定する(s3)。そして、システム制御部4は、Cchに設定するスイープ角度が許容範囲内(一定角度以下)であるか否かを判定する(s4)。システム制御部4は、Cchに設定するスイープ角度が許容範囲内でない場合には、マイクロフォン2を設置した聴取位置を変更するか、またはスピーカアレイ装置1の設置位置を変更するようにユーザに促す内容を表示部7に表示させる(s5)。そして、システム制御部4は、ユーザが指示に従って位置変更を行い、操作部6の操作を再度行ったことを検出するまで待機する(s1)。
【0091】
一方、ステップs4において、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側(時間的に前後、角度的に左右)の領域に、ゲインの閾値を超えたピーク(サイドピーク)が幾つ存在するかを確認し、Cchに設定したピークに近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。また、この時、Cchに対するサイドピークの対称性について検討が行われる(s6)。
【0092】
システム制御部4は、Cchに設定したピークの両側にサイドピークを選定・検出できない場合には(s7)、聴取位置に対してスピーカアレイ10から直接音をステレオモードまたはモノラルモードで再生するように設定する(s10)。そして、システム制御部4は、スピーカアレイ装置1から出力される音声の設定を確認するためにユーザチェックを行うように促す内容を表示部7に表示させる(s16)。
【0093】
一方、ステップs7において、システム制御部4は、Cchに設定したピークの両側のサイドピークを複数個選定・検出できた場合には、スピーカアレイ装置1の設置位置を確認し、設置位置が壁沿いの場合には(s8)、Cchに設定したピークの両側のサイドピーク数を確認し(s9)、Cchを挟んで両側に2つずつピークがある場合には、フロント音声、サラウンド音声とも音声ビームとして出力するように、各ピークに各チャンネルを割り当てる(s11)。続いて、システム制御部4は、サラウンド音声に割り当てた各ビーム音声のチャンネル間の角度差を、前記の式1,式2を用いて算出する(s13)。
【0094】
また、ステップs8において、スピーカアレイ装置1の設置位置が室内のコーナの場合(s8)、及びステップs9において、Cchを挟んで両側に1つずつピークがある場合には、サラウンド音声を音声ビームで再生するように各ピークをサラウンド音声に割り当てて、フロント音声をステレオ再生するように設定する(s12)。そして、ステップs13の処理を行う。
【0095】
システム制御部4は、ステップs13の処理が完了すると、サラウンド音声に割り当てた各ビーム音声のチャンネル間の角度差が閾値よりも大きいか否かを判定する(s14)。システム制御部4は、角度差が閾値よりも大きい場合には、角度補正を行ってファントム音源を形成する処理を行う(s15)。システム制御部4は、ステップs15が終了するかまたはステップs14において角度差が閾値以下の場合には、サラウンド音声の設定を確認するためにユーザチェックを行うように促す内容を表示部7に表示させて、操作部6から入力があるまで待機する(s17)。
【0096】
システム制御部4は、操作部6で受け付けた結果がOKであった場合には、その設定を保持して、処理を終了する。一方、ステップs17においてシステム制御部4は、操作部6で受け付けた結果がNGであった場合には、ステップs5の処理を実行する。
【0097】
以上のように、本発明では、スピーカアレイ装置において従来困難であった音声ビームの設定が容易かつ素早く行うことができる。また、従来技術である自動レベル、音質、距離補正技術との親和性が良く、本発明により一連の音声ビーム設定を自動測定によって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係るスピーカアレイ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】スピーカアレイの配置図である。
【図3】スピーカアレイ装置を設置する部屋の上面図であり、スピーカアレイ装置が音声ビームをスイープする動作、及びマイクロフォンが音声ビームを集音する動作を説明するための図である。
【図4】スイープ信号の角度とゲインの関係、及び角度と焦点距離の関係を示すグラフである。
【図5】スピーカアレイ装置の設置時の動作を説明するための図である。
【図6】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図5とは異なる図である。
【図7】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するため図5,6とは異なる図である。
【図8】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図5〜7とは異なる図である。
【図9】スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モード時に収集したデータ例を示すグラフである。
【図10】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図である。
【図11】スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モードを実行する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】特許文献1に記載のスピーカ装置を設置した部屋の上面透視図である。
【符号の説明】
【0099】
1−スピーカアレイ装置 2−マイクロフォン 3−コンバータ
4−システム制御部 5−記憶部 6−操作部 7−表示部
8−ファントム形成部 9−ビーム形成部 10−スピーカアレイ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の音声ビームを出力してサラウンド音声を再生するスピーカアレイ装置に関し、特に設置場所の自由度が高く音声ビームの設定を容易に行うことができるスピーカアレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マトリックス状に配置された複数のスピーカから成るスピーカアレイを用いて複数の音声ビームを形成することにより、音声信号伝搬の指向性を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術を用いることで、従来のサラウンドシステムのように複数のスピーカをユーザ(聴取者)の周囲に設置しなくても良くなり、1枚のパネル状のスピーカアレイから複数の音声ビームを出力させてサラウンド音声を再生することができる。
【0003】
図12は、特許文献1に記載のスピーカ装置を設置した部屋の上面透視図であり、スピーカアレイを備えたスピーカ装置で5.1chサラウンドシステムを構成した例を示している。ここで、以下の説明では、5.1chサラウンドシステムにおいて、フロントの左チャンネルをL(Left)ch、フロントの右チャンネルをR(Right )ch、センタチャンネルをC(Center)ch、リアの左チャンネルをSL(Surround Left)ch、リアの右チャンネルをSR(Surround Right)ch、サブウーハをLFE(Low Frequency Effects)chと称する。
【0004】
図12に示すスピーカ装置213は、1つのパネルに所定の配列で配置された数百個のスピーカユニットを備えており、各スピーカユニットからサラウンド音声を出力するタイミングをチャンネル毎に調整してビーム状に放射し、音声ビームが空間の任意の点で焦点を結ぶように遅延制御する。そして、各チャンネルの音声を天井や壁に反射させることで、壁方向に音源を作り出し、マルチチャンネルの音場を再生する。図12に示すように、部屋の壁220の中央部付近であって、ユーザUの前方に設置された映像装置222の下部に配置したスピーカ装置213は、センタスピーカ(C)及び低音補強用のサブウーハ(LFE)と同様の音声を直接ユーザに対して出力する。また、スピーカ装置213は、ユーザUの左右の壁221,222に音声ビームを反射させて、仮想Rchスピーカ214と仮想Lchスピーカ215を作り出す。さらに、スピーカ装置213は、ユーザの左右の壁221,222及びユーザUの後方の壁223に音声ビームを反射させて、ユーザUの後方の左右に仮想SRchスピーカ216と仮想SLchスピーカ217を作り出す。このように、スピーカアレイによるサラウンドシステムでは、各チャンネルの音声信号を遅延制御してビーム化し、このビーム化した音声を壁に反射させて複数の音源を作ることにより、ユーザUの周囲に複数のスピーカを設置したかのようなサラウンド感を得ることができる。
【特許文献1】特表2003−510924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスピーカアレイ装置を設置する際には、ユーザのリスニング位置の情報や、設置環境の形状情報として部屋の幅・奥行き・高さをスピーカアレイ装置に与えることで、音声ビームの角度を自動計算させて音声ビームを設定していた。また、スピーカアレイ装置に上記のような設定機能が設けられていない場合には、専門家がリスニング位置においてスピーカアレイ装置の再生音を聞きながら、音声ビームの角度を手動で変更しながら調整を行っていた。
【0006】
しかし、前者の方法の場合、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状及び設置場所が制限されるという問題があった。つまり、スピーカアレイ装置を設置する部屋が図12に示したような直方体や立方体といった理想的な形状であり、かつ計算可能条件に合致する位置・方向にスピーカアレイ装置を設置しないと音声ビームの正しい角度が求められなかった。そのため、特殊な形状の部屋や大型の家具が設置されている部屋では、スピーカアレイ装置の音声ビームの設定を自動で行うことができず、手動でビーム角度の調整を行わなければならないことがあった。
【0007】
また、後者の方法の場合、音声ビームの調整は、設定者の主観に依存する部分が多いため、視聴環境に個人差が発生しやすく、また設定操作に知識と慣れが必要である。そのため、音声ビームの調整は、前記のように通常はビーム角度の調整を専門に行う専門家が実行しており、ユーザがビーム角度の調整を行うのは困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、スピーカアレイ装置の設置場所の自由度が高く、音声ビームの設定をユーザが容易に行うことのできるスピーカアレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0010】
(1)マトリックス状またはライン状に配置された複数のスピーカを有するスピーカアレイと、
外部から入力された音声信号を前記スピーカアレイの全部または一部のスピーカに対して分配し、これらのスピーカから出力する音声の出力タイミングを制御して前記スピーカアレイから音声ビームを出力させる信号処理手段と、
前記信号処理手段にテスト音声信号を出力するとともに、この信号処理手段にテスト音声信号の出力タイミングを制御する信号を出力して、前記テスト音声信号により形成したテスト音声ビームを前記スピーカアレイから出力させて、このテスト音声ビームを旋回させるテスト音声出力手段と、
聴取位置に設置され、前記スピーカアレイが出力したテスト音声ビームの直接音及び反射音を集音するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンが集音した前記テスト音声ビームの音声データをテスト音声ビームの旋回角度と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶した音声データの信号レベルに基づいて複数のピークを選択し、選択した複数のピークの旋回角度に基づいて、マルチチャンネルサラウンド音声の各チャンネルの音声ビームを出力する角度であるビーム出力角度を設定するビーム設定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
従来のスピーカアレイ装置でサラウンド音声を再生させるためには、この装置の設置後に専門家が音声を再生しながら各チャンネルの音声ビームを出力する方向を調整する必要があり、コストアップの要因となっていた。この構成においては、スピーカアレイ装置を室内に設置する際に、ユーザの聴取位置にマイクロフォンを設置して、スピーカアレイからテスト音声の音声ビームを自動的に旋回(スイープ)させながら出力して、このときにマイクロフォンでテスト音声ビームを集音する。そして、スピーカアレイから直接マイクロフォンに向けて出力されたテスト音声や、部屋の壁からマイクロフォンに向けて反射したテスト音声から、信号レベルのピークを検出する。したがって、聴取位置において最適なサラウンド音声を再生させるためには、アレイスピーカから出力した音声ビームを部屋の壁のどの位置に反射させるとマルチチャンネル音声信号を最適に再生できるかを短時間で容易に検出することが可能となる。また、ピークを検出した旋回角度をマルチチャンネル音声信号の各チャンネルの音声ビームを出力する角度として設定することで、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や家具の配置などにかかわらず、スピーカアレイ装置を設置後にマルチチャンネルサラウンド音声の再生設定をユーザでも簡単に行うことができる。
【0012】
(2)前記ビーム設定手段は、前記記憶手段が記憶するテスト音声信号の信号レベルから選択したピーク数がマルチチャンネルサラウンド音声のチャンネル数よりも少ない場合、
選択したピークの旋回角度をマルチチャンネルサラウンド音声のいずれかのチャンネルのビーム出力角度として設定するとともに、ビーム出力角度を設定したチャンネル以外のチャンネルの音声を、聴取位置へ直接伝搬するように出力する直接音に設定することを特徴とする。
【0013】
この構成においては、テスト音声信号の信号レベルから選択したピーク数がマルチチャンネルサラウンド音声のチャンネル数よりも少ない場合、マルチチャンネルサラウンド音声のすべてのチャンネルを音声ビームとして出力するように設定することができない。そこで、ビーム出力角度を設定したチャンネル以外のチャンネルの音声として、壁反射を利用せずに聴取位置へ直接伝搬する直接音を出力するように設定する。例えば、5.1チャンネルサラウンド音声の場合、ピークを3つ検出した場合には、最大のピークをセンタチャンネルのビーム出力角度に、残りのピークをサラウンドチャンネルのビーム出力角度に設定して、フロントチャンネルを直接音を出力するように設定する。このようにすることで、スピーカアレイ装置の設置位置や室内形状や家具の配置などによって各チャンネルを音声ビームとして出力できない場合であっても、状況に応じてマルチチャンネルサラウンド音声の再生設定を適切に行うことができる。
【0014】
(3)前記ビーム設定手段は、前記テスト音声信号の信号レベルが最大となるピークの旋回角度を、マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度として設定することを特徴とする。
【0015】
通常、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状にかかわらずスピーカアレイから聴取位置に向けて出力された直接音を、マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルの音声ビームに設定する。この直接音は壁に反射した音声ビームよりも信号レベルが大きく、スピーカアレイ装置から出力する音としては直接音の信号レベルが最も大きいものとなる。したがって、記憶手段が記憶したテスト音声信号の信号レベルから最大のピークを選択すれば良いので、センタチャンネルの出力角に設定すべきピークを容易に検出することができる。また、センタチャンネルの音声ビームの出力角度を決定することで、ユーザに対する左右の判定が行え、この出力角度に基づいて他のチャンネルの出力角度を容易に設定することができる。
【0016】
(4)前記ビーム設定手段が設定した前記マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度が、前記アレイスピーカ正面に垂直な方向から一定角度以上ずれている場合に、聴取位置の変更を促す旨か、または音声再生方法の変更を促す旨を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度が、アレイスピーカ正面に垂直な方向から一定角度以上ずれている場合には、各ピークを音声ビームの出力角に設定して、サラウンド音声を再生すると、サラウンド音声はバランスが崩れたものとなる。この構成においては、報知手段でユーザに対して聴取位置の変更を促す旨か、または音声再生方法の変更を促す旨を前記報知手段が報知するので、上記のような場合にはサラウンド音声をバランス良く再生できるよう設定変更することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスピーカアレイ装置は、室内に設置する際に、ユーザの聴取位置にマイクロフォンを設置して、スピーカアレイからテスト音声を出力して音声ビームを自動的に旋回(スイープ)させて、このときにマイクロフォンで音声ビームを集音することで、スピーカアレイから直接マイクロフォンに向けて出力された音声や、部屋の壁からマイクロフォンに向けて反射した音声を、信号レベルのピークとして検出することができる。これにより、聴取位置において最適なサラウンド音声を再生させるためには、アレイスピーカから出力した音声ビームを部屋の壁のどの位置に反射させるとマルチチャンネル音声信号を最適に再生できるかを短時間で容易に検出することが可能となる。また、ピークを検出した旋回角度をマルチチャンネル音声信号の各チャンネルの音声ビームを出力する角度として設定することで、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や家具の配置などにかかわらず、スピーカアレイ装置を設置後にマルチチャンネルサラウンド音声の再生設定をユーザでも簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るスピーカアレイ装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、スピーカアレイの配置図であり、(A)はマトリックス状にスピーカを配置した場合、(B)はライン状にスピーカを3列配置した場合、(C)はライン状にスピーカを3列配置し、2列目のスピーカをずらした配置にした場合である。以下の説明では、スピーカアレイ装置の一例として、5.1chサラウンドシステム用のものについて説明する。また、以下の説明では、5.1chサラウンドシステムにおいて、フロントの左チャンネルをL(Left)ch、フロントの右チャンネルをR(Right)ch、センタチャンネルをC(Center)ch、リアの左チャンネルをSL(Surround Left)ch、リアの右チャンネルをSR(Surround Right)ch、サブウーハをLFE(Low Frequency Effects)chと称する。なお、5.1chサラウンドシステムにおいて、LFEchの音声信号は指向性がほとんどなく、スピーカアレイ装置から直接ユーザに対して出力するので、以下の説明ではLFEchの音声信号の処理については説明を省略する。
【0020】
スピーカアレイ装置1は、マイクロフォン2、A/Dコンバータ3、システム制御部4、操作部6、表示部7、ファントム形成部8、ビーム形成部9、及びスピーカアレイ10を備えている。また、スピーカアレイ装置1は、5.1chサラウンド音声信号の外部入力端子として、Lch端子、Rch端子、SLch端子、SRch端子、Cch端子を備えている。さらに、ファントム形成部8は、Lch用アンプ21a,21b、Rch用アンプ22a,22b、SLch用アンプ23a,23b,23c、SRch用アンプ24a,24b,24c、Lch用加算器25、Rch用加算器26、及びCch用加算器27を備えている。加えて、ビーム形成部9は、ファントム形成部8から出力された5つの音声信号をそれぞれ遅延処理する遅延部31、遅延部31から出力された5つの音声信号を増幅するパワーアンプ32−1〜32−5、及び各パワーアンプ32−1〜32−5から出力された信号を加算する加算器33を備えている。また、ビーム形成部9はn個のブロックから成り、スピーカアレイ10はn個のスピーカ30から成り、各ビーム形成部9の出力にはスピーカ30がそれぞれ接続されている。
【0021】
なお、スピーカアレイ装置1のマイクロフォン2を除いた部分を本体1hと称する。
【0022】
マイクロフォン2は、無指向性のマイクロフォンであり、A/Dコンバータ3に接続されている。
【0023】
A/Dコンバータ3は、マイクロフォン2が集音したアナログ音声信号をディジタル音声信号に変換(サンプリング)して、システム制御部4へ出力する。
【0024】
システム制御部4は、ユーザI/F処理部11、ビーム制御処理部12、測定データ分析処理部13、及び音源位置補正処理部14を備えている。
【0025】
ユーザI/F処理部11は、操作部6で受け付けた操作に応じて、制御信号をスピーカアレイ装置1の各部へ出力する。また、ユーザI/F処理部11は、装置の状況に応じてユーザに報知すべき内容を表示部7へ表示させる。
【0026】
ビーム制御処理部12は、スピーカアレイ装置1の設置時などに各チャンネルの音声ビームを出力する角度を設定する音声ビーム設定モードの実行時に、ビーム形成部9ヘテスト音声信号を出力して、スピーカアレイ10から出力させるテスト音声の音声ビームをスイープ(旋回)させる。
【0027】
測定データ分析処理部13は、音声ビーム設定モード実行時に、スピーカアレイ10から出力されてマイクロフォン2で集音したテスト音声信号を記憶させる。また、測定データ分析処理部13は、音声信号の収集が完了すると、記憶部5に記憶させた音声信号を読み出して音声信号のピークを検出し、各ピークに基づいてCch、Lch、Rch、SLch、SRchの各チャンネルの音声を出力する角度を設定し、その結果をビーム制御処理部12へ出力する。
【0028】
ビーム制御処理部12は、測定データ分析処理部13から出力された分析結果に基づいて各チャンネルの角度設定を行うための角度設定信号をビーム形成部9へ出力する。また、測定データ分析処理部13は、マイクロフォン2で集音したスイープ信号を分析した結果、各チャンネルの角度バランスが悪い場合には、音源位置補正処理部14へ信号を出力する。
【0029】
音源位置補正処理部14は、測定データ分析処理部13から受け取った信号に基づいて、ファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。
【0030】
なお、システム制御部4は、測定精度を上げるように設定された場合には、スイープを複数回実行させて、音声信号の積算・平均化処理などを実行するようにスピーカアレイ装置1の各部を制御する。
【0031】
記憶部5は、A/Dコンバータ3からシステム制御部4を介して出力されたディジタル音声信号を記憶する。
【0032】
操作部6は、スピーカアレイ装置1の設置時などに、ユーザからの各種の設定入力を受け付けてシステム制御部4へ入力に応じた信号を出力する。
【0033】
表示部7は、システム制御部4から出力された制御信号に基づいてユーザに伝達する内容を表示する。
【0034】
ファントム形成部8は、ファントム(虚像)の形成が必要な場合に、システム制御部4が出力した音源位置補正信号に基づいて特定チャンネルの音声信号をファントム化する処理を行い、作成したファントム形成信号をビーム形成部9へ出力する。
【0035】
ここで、ファントムとは、異なる方向から到来する複数の(同じ)音声信号により、その異なる方向の中間の方向(信号のパワーに応じて内分された方向)に定位される仮想的な音源であり、上記のように異なる方向から複数の音声信号が到来しても、聴取者はこれらの信号を別に認識することなく、このファントムから到来する1つの音声信号として認識する。ファントム形成部8は、システム制御部4が出力した音源位置補正信号に基づいて特定チャンネルの音声信号をファントム化する処理を行い、作成したファントム形成信号をビーム形成部9へ出力して、ユーザの聴取位置へ異なる方向から複数の音声ビームが到来するようにすることで、ファントム音源から音声が出力しているように設定する。
【0036】
ビーム形成部9は、システム制御部4から出力された各チャンネルの角度設定信号に基づいて各チャンネルの音声ビームを形成して、スピーカアレイ10へ音声信号を出力する。また、ビーム形成部9は、システム制御部4からスイープ信号が出力された場合には、スピーカアレイ10から出力する音声ビームをスイープさせるように音声信号を処理して、スピーカアレイ10へ音声信号を出力する。
【0037】
スピーカアレイ10は、ビーム形成部9から出力された音声信号に基づいて、各チャンネルの音声ビームを出力する。
【0038】
ここで、図2に示すようにスピーカアレイ10は、複数(n個)のスピーカ30が1つのパネルにマトリックス状やライン状など所定の配列で配置したものであり、各スピーカからサラウンド音声を出力するタイミングをチャンネル毎に調整してビーム状に放射し、音声ビームが壁面など任意の位置で焦点を結ぶように遅延制御する。そして、各チャンネルの音声をスピーカアレイ装置1が設置された部屋の壁に反射させることで、任意の点に音源を作り出し、マルチチャンネルの音場を形成して、サラウンド音声を再生する。
【0039】
次に、スピーカアレイ装置1の動作について説明する。図3は、スピーカアレイ装置を設置する部屋の上面図であり、スピーカアレイ装置が音声ビームをスイープする動作、及びマイクロフォンが音声ビームを集音する動作を説明するための図である。ここで、図3には、本発明を容易に理解できるように、スピーカアレイ装置1を設置する部屋40が理想的な形状である直方体であり、スピーカアレイ装置1の本体1hを部屋40の前壁41の中央付近における壁際に設置した場合について説明する。
【0040】
スピーカアレイ装置1を部屋40に設置する場合には、図3(A)に示すようにスピーカアレイ装置1の本体1hを、ユーザの所望の位置である前壁41の中央部における壁際に、スピーカアレイ10の前面が前壁41と平行となり、後壁43に対向させて室内に向けて音声を出力するように設置する。また、スピーカアレイ装置1のA/Dコンバータ3に接続されたマイクロフォン2を、ユーザのリスニングポジション(聴取位置)に設置する。このとき、マイクロフォン2の高さは、ユーザの耳の位置に合わせると良い。図3(A)には、聴取位置を部屋40の中心よりも後壁43に近い位置とした場合を示している。
【0041】
スピーカアレイ装置1は、スピーカアレイ装置1の本体1h及びマイクロフォン2の設置が完了して、音声ビーム設定モードが設定されると、スピーカアレイ10を部屋40の上方から見てスピーカアレイ10の前面と平行な一方の方向(以下、0度方向と称する。)から、スピーカアレイ10の前面と平行な他方の方向(以下、180度方向と称する。)までの間において、音声ビームをスイープ(旋回)させる。なお、スピーカアレイ装置1を設置する部屋の形状やスピーカアレイ装置1の設置位置によっては、音声ビームのスイープ角θを0゜≦θ≦180°以外の値に設定することも可能である。
【0042】
このように、音声ビームをスイープさせると、スピーカアレイ10から出力した音声ビームのスイープ角θに応じて、部屋40の左壁42・後壁43・右壁44に音声ビームが反射する。このとき、マイクロフォン2で音声ビームの直接音や各壁で反射した間接音を集音して、音声ビームを出力する最適な角度を求める。
【0043】
例えば、図3(B)に示すように、スイープ角θ=θ1の場合、音声ビーム34aは左壁42及び右壁44で反射してからマイクロフォン2に到達するので、Lチャンネルの音声ビームを出力する角度としては不適である。また、スイープ角θ=θ2の場合、音声ビーム34bは左壁42で反射してからマイクロフォン2に到達するので、音声ビームを出力する角度としては適当な角度であり、Lchの音声ビームの出力角度に設定することができる。さらに、スイープ角θ=θ3の場合、音声ビーム34cは左壁42及び後壁43で反射してからマイクロフォン2に到達するので、SLchの音声ビームを出力する角度としては適当であり、SLchの音声ビームの出力角度に設定することができる。加えて、スイープ角θ=θ4の場合、音声ビーム34dは直接マイクロフォン2に到達するので、音声ビームを出力する角度としては適当であり、Cchの音声ビームの出力角度に設定することができる。
【0044】
音声ビーム設定モードのときにスピーカアレイ10から出力させる音声ビームは、相関性がなく、スピーカアレイ装置1の形状とスピーカアレイ10の各スピーカの配置によって決まるビーム角度をコントロール可能な帯域に制限された音声信号を出力するようにシステム制御部4に設定されている。テスト音声信号としては、例えば、4kHzを中心とする周期性のない音波やノイズのように周期性のない音波などが好適である。これにより、所望の範囲内に音声ビームを旋回させることができ、また、反射前の音声ビームと、壁などで反射後の音声ビームが重なった場合でも、干渉が発生することなく確実にテスト音声を集音することができる。
【0045】
また、スピーカアレイ装置1は、その設置位置や高さに応じて、スピーカアレイ10の前面から出力する音声ビームの仰角(俯角)を任意の角度に設定することができる。加えて、スピーカアレイ装置1は、音声ビームを0度〜180度までスイープする毎に仰角(俯角)を変更して、部屋全体に音声ビームを出力するように設定しても良い。これにより、例えば、天井及び後壁に音声ビームを反射させることで最適位置に仮想スピーカを形成できる場合に、最適な音場を形成することができる。
【0046】
図4は、スイープ信号の角度とゲインの関係、及び角度と焦点距離の関係を示すグラフである。スピーカアレイ10からスイープさせながら出力するテスト音声の音声ビーム(以下、スイープ信号とも称する。)のゲインは、ユーザの推奨聴取位置(スピーカアレイ10の正面に垂直な方向)において最も高くなるように、テスト音声の信号レベルを、前記音声ビームの旋回範囲内の中央が最大となるエンベロープで変調するように設定すると良い。すなわち、図4(A)に示すように、スイープ信号のゲインレベルが90°をピークとする放物線状に変化するように設定すると良い。これにより、スピーカアレイ10の正面に聴取位置を設定した場合には、Cchの音声ビームの出力角度を90°に設定することになり、Cchの音声ビームの出力角度を容易に設定することができる。また、ビーム経路が長くなるサラウンドチャンネルの検出感度(SN比)を上げることができる。さらに、各チャンネルの音声ビームの最適な角度設定も容易に行うことができる。
【0047】
また、スイープ信号の焦点距離は、各スイープ角度においてユーザの聴取位置でビーム径が最も細くなるように焦点距離を設定すると良い。すなわち、図4(B)に示すように、ビーム径が最も細くなる焦点距離が90°をピークとする放物線状に変化するように設定すると良い。これにより、マイク位置におけるビームの角度感度を改善することができる。
【0048】
次に、スピーカアレイ装置1を設置した際における音声ビームの出力角度の具体的な設定動作について説明する。図5は、スピーカアレイ装置の設置時の動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋における前壁中央の壁際に設置したときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフ、(C)はスピーカアレイ装置を設置後における直方体型の部屋の上面図である。
【0049】
図5に示すように、理想的な形状の部屋である直方体型の部屋50においてスピーカアレイ装置1の本体1hを前壁51の中央部の壁際に設置した場合、ユーザUがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定すると、音声ビームのスイープが開始される。すなわち、スピーカアレイ装置1は、スピーカアレイ10の前面の0度方向から180度方向までの間において、音声ビームをスイープさせながら、マイクロフォン2で集音して、音声データを記憶部5に格納する。音声ビームのスイープが終了すると、システム制御部4は記憶部5からデータを読み出して分析を行う。その結果、図5(B)に示すような結果が得られた。ここで、図5(B)には、ノイズを除去したデータを示しているが、実際にはノイズなどにより測定データの波形は歪んだり細かく波形が変化したりする。また、図5(B)に示すグラフの横軸をビーム角度、縦幅をマイクロフォン2で集音した音声データのゲインに設定している。音声データから複数のピークを容易に検出するために、壁に反射した回数が2回までの音声ビームのみを検出できるレベルに閾値を設定する。さらに、これ以降に説明する角度−ゲインのグラフはすべて図5(B)と同様に表示する。
【0050】
システム制御部4は、妥当な範囲にあり一定幅以上である最もゲインレベルの高いピーク57のスイープ角θa3をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。Cchに設定する音声は、音声ビームの直接音を測定しているため、最も高いレベルとなる。また、図1(A)に基づいて説明したように、90゜をピークとする放物線状にゲインを変化させることで、Cchの音声が最も高いレベルとなる。
【0051】
続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側(時間的に前後、角度的に左右)の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピーク57に近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。システム制御部4は、このピーク数がCchに設定したピーク57を挟んで同数の場合は、Cchに設定したピーク57に近い方からサラウンドチャンネル、フロントチャンネルという順に割り当てて、その角度を割り出す。すなわち、システム制御部4は、スイープ角θa1をLchの出力角に、スイープ角θa2をSLchの出力角に、スイープ角θa3を前記のようにCchの出力角に、スイープ角θa4をSRchの出力角に、スイープ角θa5をRchの出力角に、それぞれ設定する。
【0052】
スピーカアレイ装置1は、外部からオーディオ音声などが入力されると、図5 (C)に示すように、ユーザUに対して、Cchの音声を直接音として出力し、Lchの音声を左壁52で1回反射する反射音として出力し、SLchの音声を左壁52及び後壁53で2回反射する反射音として出力し、SRchの音声を右壁54及び後壁53で2回反射する反射音として出力し、Rchの音声を右壁54で1回反射する反射音として出力する。したがって、ユーザUは、聴取位置において理想的なサラウンド音声を楽しむことができる。
【0053】
図6は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋のコーナに設置したときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)はノイズを除去した測定データを示すグラフ、(C)はスピーカアレイ装置を設置後における直方体型の部屋の上面図である。
【0054】
図6には、直方体型の部屋60の前壁61と左壁62との端部であるコーナにスピーカアレイ装置1をスピーカアレイ10の前面を室内に向けて斜めに設置した場合を示している。この場合も、同様に音声ビーム設定モードを実行して、音声データを収集する。
【0055】
スピーカアレイ装置1を図6(A)に示すように配置して、音声ビーム設定モードを実行して音声データを収集すると、図6(B)に示すように、閾値よりもゲインレベルの高いピーク65〜69が得られた。この場合、閾値よりもゲインレベルの高いピークが5つであるため、スピーカアレイ装置1は図5(B)と同様に、音声ビームを出力する角度を設定してしまう。
【0056】
しかしながら、図6(A)に示すように、Lchに設定すべきピーク65は左壁62と後壁63に2回反射した音声ビームであり、Rchに設定すべきピーク69は右壁64と後壁63に2回反射した音声ビームであり、フロントチャンネルの音声がサラウンド音声が聞こえるべき方向から聞こえるため、音声ビームを出力する角度として適切ではない。
【0057】
スピーカアレイ装置1は、このような不具合を防ぐために、音声ビーム設定モードを実行する前に、スピーカアレイ装置1の設置位置を入力するアシスト情報機能を備えている。スピーカアレイ装置1は、部屋のコーナまたは壁沿いのいずれかの位置に設置されたことを受け付ける。スピーカアレイ装置1は、アシスト情報機能を備えることにより、音声ビームのピーク検出角度と、スピーカアレイ装置1の設置位置情報に基づいて、音声ビームを出力する角度を設定することができる。
【0058】
例えば、図6に示した例では、ユーザはスピーカアレイ装置1を部屋60のコーナに設置しているので、音声ビーム設定モードを実行する前に、操作部6を操作して「コーナ設置」を選択する。
【0059】
これにより、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、図6(B)に示すように、センタピークを挟んで対称に2つずつピークを検出しても、センタピークに近い2つのピークをサラウンドチャンネルに設定し、フロントチャンネルを直接音としてステレオ再生するように設定する。
【0060】
システム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク67のスイープ角θb3をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。また、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピーク67に近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。すなわち、スイープ角θ=θb2及びθb4のときのピーク66,68を選出する。この場合には、ピーク数がCchに設定したピーク66を挟んで同数であるが2つだけであるため、2つのピーク値をサラウンドチャンネルに割り当て、フロントチャンネルは直接音をステレオ再生するように割り当てる。
【0061】
したがって、スピーカアレイ装置1は、外部からオーディオ音声などが入力されると、図6(C)に示すように、ユーザUに対して、Cch・Lch・Rchの音声を直接音として出力し、SLchの音声を後壁63で1回反射する反射音として出力し、SRchの音声を右壁64で1回反射する反射音として出力する。したがって、ユーザUは、聴取位置において理想的なサラウンド音声を楽しむことができる。
【0062】
なお、スピーカアレイ10からCch・Lch・Rchの音声を直接音として出力する際には、例えば、スピーカアレイ10の中央部からCchの音声を出力し、スピーカアレイ10の中心よりも向かって左側からLchの音声を出力し、スピーカアレイ10の中心よりも向かって右側からRchの音声を出力するように設定すると良い。また、Lch・Rchを出力する領域をビーム化しないように低域・中域・高城に分割して、各領域から音声を出力するように設定すると良い。
【0063】
図7は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋における前壁中央の壁際に設置して、聴取位置を図5とは別の位置にしたときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフである。
【0064】
図7には、図5に示した直方体型の部屋50においてスピーカアレイ装置1の本体1hを前壁51の中央部の壁際に設置して、ユーザの聴取位置を部屋の中心と左壁52との中間に設定した場合を示している。ユーザUがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定して測定を行い、収集したデータを記憶部5に格納する。システム制御部4は、記憶部5から収集した音声データを読み出して分析を行い、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク71のスイープ角θ=θc2をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピーク71を挟んで両側の領域にゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピークに近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。その結果、スイープ角θ=θc1,θc3,θc4,θc5のときの計4点のピーク70,72,73,74を選定する。このとき、聴取位置がスピーカアレイ10の正面から著しくずれているので、Cchに設定したピーク71を挟んで残りのピークが同数にならない。そのため、各ピークを音声ビームの出力角に割り当てると、この聴取位置では、バランスの崩れたサラウンド音声となってしまう。そこで、スピーカアレイ装置1は、予め設定された一定角度以上聴取位置の角度がずれている場合には、聴取位置を変更するか、または音声ビームのコンフィギュレーションの変更をユーザに促す内容を表示部7に表示させる。例えば、スピーカアレイ装置1は、聴取位置の変更を促す内容として、聴取位置をスピーカアレイ10の正面に対向する位置に移動して音声ビーム設定モードを再度実行する指示を表示部7に表示させる。または、スピーカアレイ装置1は、コンフィギュレーションの変更を促す内容として、全チャンネルをステレオ再生する設定モード、またはLch・Rchをステレオ音声として再生し、SLch・SRchをサラウンド音声として再生する設定モードを選択する指示を表示部7に表示させる。ユーザは、この指示に従って視聴位置を変更し、再度音声ビーム設定モードを実行する。またはコンフィギュレーションを変更することで、スピーカアレイ装置1にサラウンド音声を適正に再生するように設定することができる。
【0065】
次に、スピーカアレイ装置1を理想的ではない部屋に設置した場合の音声ビームの出力角度の具体的な設定動作について説明する。図8は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は部屋の前壁中央の壁際に設置して音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフである。
【0066】
図8には、直方体型の部屋の右壁81側に後壁78に沿って廊下75Rが設けられた部屋75を示している。また、スピーカアレイ装置1の本体1hを前壁76の中央部の壁際に設置して、廊下75Rを除いた部屋75の中心にユーザの聴取位置を設定している。ユーザUがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定すると、スピーカアレイ装置1は音声ビームのスイープを開始して音声データを収集する。その結果、図8(B)に示すように、ゲインが閾値よりも大きなピークは、スイープ角θd1のときのピーク82,スイープ角θd2のときのピーク83,スイープ角θd3のときのピーク84,スイープ角θd4のときのピーク86の計4点であった。システム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク値のスイープ角θ=θd3をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピーク84を挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するか、Cchに設定したピークに近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。その結果、スイープ角θ=θd1,θd2,θc4のときの計3点のピーク82,83,86を選定する。スピーカアレイ装置1は、Cchに設定したピーク84を挟んで残りのピークが同数にならないため、各ピークを音声ビームの出力角に割り当てると、この聴取位置では、バランスの崩れたサラウンド音声となってしまう。そのため、スピーカアレイ装置1は、聴取位置を変更するか、または音声ビームのコンフィギュレーションの変更をユーザに促す内容を表示部7に表示させる。
【0067】
例えば、スピーカアレイ装置1は、コンフィギュレーションの変更を促す内容として、全チャンネルをステレオ再生する設定モード、またはLch・Rchをステレオ音声として再生し、SLch・SRchをサラウンド音声として再生する設定モードを選択する指示を表示部7に表示させる。
【0068】
ユーザは、この指示に従って、コンフィギュレーションを変更して、Lch・Rchをステレオ音声として再生し、SLch・SRchをサラウンド音声として再生する設定モードを選択した場合には、Cchに設定したピーク84を挟んでほぼ対照的な位置となるスイープ角θ=θd1,θd4をSLch,SRchに割り当て、フロントチャンネルの音声であるLch,Rchをステレオ再生するように設定する。
【0069】
また、スピーカアレイ装置1は、自動判定モードに設定しておくことで、Cchに設定したピークを挟んで残りのピークが同数にならない場合には、自動的にコンフィギュレーションを変更して、上記のようにCchに設定したピーク84を挟んでほぼ対照的な位置となるスイープ角θ=θd1,θd4をSLch,SRchに割り当て、フロントチャンネルの音声であるLch,Rchをステレオ再生するように設定する。
【0070】
スピーカアレイ装置1は、外部からオーディオ音声などが入力されると、図8(C)に示すように、ユーザUに対して、Cch・Lch・Rchの音声を直接音として出力し、SLchの音声を左壁77で1回反射する反射音として出力し、SRchの音声を右壁81で1回反射する反射音として出力する。したがって、ユーザUは理想的ではない形状の部屋75においても、サラウンド音声を適正に再生することができる。
【0071】
図9は、スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モード時に収集したデータ例を示すグラフである。スピーカアレイ装置1を設置する部屋が理想的な形状でない場合や、理想的な形状の部屋であっても家具の配置状態によって閾値よりも大きなピークが必要なチャンネル数よりも多い場合や少ない場合がある。例えば、スピーカアレイ装置1をある部屋に設置する際に、音声ビーム設定モードを実行して音声ビームをスイープした結果、図9(A)に示すようなデータを得た。この場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、前記のように妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク値を選定する。図9(A)に示したデータにおいては、ピーク96のゲインレベルは最も高いが、波形がパルス状で幅が一定値以下であり音声ビームとしては有り得ない形状の波形であるため、ノイズとして除外する。そして、システム制御部4は、ピーク96を除いて最もゲインレベルが高いピーク94をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。このとき、Cchに設定したピーク94に近すぎるピーク93,95は、ビームがユーザと被り、定位がスピーカ方向となる可能性があるため除外する。また、ピーク91は、ユーザがスピーカ直近に位置している場合に相当し、通常の使用では有り得ない。また、推奨しない設定角度であるため除外する。その結果、システム制御部4は、ピーク92をSLch,ピーク97をSRchの音声ビームを出力する角度に設定する。
【0072】
また、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(B)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク103をCchの音声ビームを出力する角度に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(B)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク103を挟んでピークが2個と3個とになるため、対称性を検討する。このとき、ピーク103との角度の差は、ピーク101とピーク106がほぼ等しく、また、ピーク102とピーク104がほぼ等しいので、ピーク105を除外して、ピーク101をLch、ピーク102をSLch、ピーク104をSRch、ピーク106をRchの音声ビームの出力角に設定する。
【0073】
さらに、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(C)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク114をCchの出力角に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閥値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(C)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク114を挟んでピークが同数であるが各3個であるため、妥当な範囲にあるピークを選出する。システム制御部4は、Cchに設定したピーク114の両隣のピーク113,115は、妥当な角度であり、ピーク114を挟んでほぼ対照な角度であるため、ピーク113をSLchに、ピーク115をSRchの出力角に設定する。また、システム制御部4は、ピークが複数存在する場合には、リアサラウンド音声に割り当てたピークから妥当な範囲でできるだけ角度の離れているピークをフロントチャンネルに割り当てるように設定されているので、ピーク112,116を採用せずにピーク111をLchの出力角に、ピーク117をRchの出力角に設定する。
【0074】
加えて、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(D)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク123をCchの出力角に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(D)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク123を挟んでピークが1個と2個とになるため、対称性を検討する。このとき、ピーク123との角度の差は、ピーク121とピーク124がほぼ等しいので、ピーク122を除外して、ピーク121をSLchの出力角に、ピーク124をRchの出力角に設定する。また、Lch,Rchは、ステレオ音声として再生するように設定する。
【0075】
また、音声ビーム設定モードを実行した結果、図9(E)に示すようなデータを取得した場合、スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピークであるピーク126をCchの出力角に設定する。続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図9(E)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク123を挟んでピークが1個と0個とになり、対称性がない。そのため、システム制御部4は、直接音により、Lch,Rchをステレオ音声として再生するように設定するか、または、直接音によりCchをモノラル音声として再生するように設定する。
【0076】
次に、スピーカアレイ装置1が音声ビーム設定モードでの測定結果に基づいてファントムを形成する場合について説明する。図10は、スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図であり、(A)は直方体型の部屋の前壁左寄りの壁際に設置したときの音声ビームの測定動作を示す上面図、(B)は測定データを示すグラフ、(C)はスピーカアレイ装置を設置後の直方体型の部屋の上面図である。
【0077】
図10に示すように、理想的な形状の部屋である直方体型の部屋130においてスピーカアレイ装置1の本体1hを前壁131の中央部よりも左寄りの壁際に設置した場合、ユーザがマイクロフォン2をサラウンド音声の聴取位置に設置して、音声ビーム設定モードを設定して音声データを収集する。システム制御部4は、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク137のスイープ角度をCchの出力角に設定する。
【0078】
続いて、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側の領域に、ゲインの閾値を超えたピークが幾つ存在するかを選定・検出する。図10(B)に示したデータの場合には、Cchに設定したピーク137を挟んでピークが2個ずつ存在するので、妥当な範囲にあるピークを選出する。システム制御部4は、Cchに設定したピーク137以外のピーク135,136,138,139がそれぞれ妥当な角度であるか否かと、各ピークの対称性について判定する。
【0079】
システム制御部4は、各ピークの対称性の判断に以下の式を用いる。すなわち、
Δfront=angle(frontL)−{180°−angle(frontR)}………(式1)
Δsurround=angle(surroundL)−{180°−angle(surroundR)}………(式2)
を用いて演算を行い、Δfront及びΔsurroundが予め設定した閾値以上であるか否かを判定する。
【0080】
システム制御部4は、図10(B)に示したデータの場合、Δfront及びΔsurround が予め設定した閾値よりも大きな値であったため、ファントム音源を形成するための処理を行う。スピーカアレイ装置1のシステム制御部4には、ファントム音源は、聴取者に届く音声ビームとCchに設定する音声ビームとの成す角度が小さい方の音声ビームと対照的な位置に形成するように設定されている。
【0081】
例えば、図10(A)に示した音声ビームの場合、Lchに相当するピーク135とCchに設定するピーク137との成す角θ11と、Rchに相当するピ−ク139とCchに割り当てるピーク137との成す角θ12と、の小さい方の角度に合わせてファントム音源を形成する。すなわち、システム制御部4は、図10(B)に示すデータに基づいてCchに設定したピーク137とピーク135との成す角cと、ピーク137とピーク139との成す角dと、を比較して、角度の小さいθcを選択する。
【0082】
また、SLchに相当するピーク136とCchに割り当てるピーク137との成す角θ13と、SRchに相当するピーク138とCchに割り当てるピーク137との成す角θ14と、の小さい方の角度に合わせてファントム音源を形成する。すなわち、システム制御部4は、図10(B)に示すデータに基づいてCchに設定したピーク137と隣接するピーク136との成す角aと、ピーク137とピーク138との成す角θbと、を比較して、角度の大きいθbを選択する。
【0083】
システム制御部4は、フロント音声・サラウンド音声とも音声ビームによって形成する場合、フロント音声については、Lch用のファントム音源はCchとLchを用いて形成し、Rch用のファントム音源はCchとRchを用いて形成するようにファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。また、サラウンド音声については、SLch用のファントム音源はLchとSLchを用いて形成し、SRch用のファントム音源はRchとSRchを用いて形成するようにファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。
【0084】
一方、システム制御部4は、サラウンド音声のみ音声ビームによって形成する場合、サラウンド音声については、SLch用のファントム音源はCchとSLchを用いて形成し、SRch用のファントム音源はCchとSRchを用いて形成するようにファントム形成部8へ音源位置補正信号を出力する。
【0085】
したがって、システム制御部4は、図10(B)に示したデータの場合には、図10(C)に示すように、Lch及びSRchはサラウンド音声として音声ビーム135,138によって形成し、SLch及びRchはファントム140,141を形成する。これにより、ユーザの聴取位置が部屋130の中央ではなく左右非対称な場合でも、ユーザは適正に再生されたサラウンド音声を楽しむことができる。
【0086】
スピーカアレイ装置1は、以上のような設定を自動調整により行った後に、テストトーンによる設定確認をユーザUに対して促す。そして、問題がなければ、従来技術である各チャンネルレベル調整、周波数特性調整、タイムアラインメント調整など自動調整シーケンスを行うことで、さらに最適なサラウンド音声をユーザUに提供することができる。
【0087】
次に、スピーカアレイ装置1が音声ビーム設定モードを実行する際の動作についてフローチャートに基づいて説明する。図11は、スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モードを実行する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【0088】
ユーザUは、スピーカアレイ装置1の本体1hを部屋の所望の位置に設置するとともに、マイクロフォン2を聴取位置に設置する。そして、本体1hの操作部6を操作して、室内におけるスピーカアレイ装置1の設置位置(コーナまたは壁沿い)を入力後に、音声ビーム設定モードを開始させる。
【0089】
スピーカアレイ装置1のシステム制御部4は、操作部6が操作されて、スピーカアレイ装置1の設置位置の入力後に、音声ビーム設定モードの開始入力が行われたことを検出すると(s1)、システム制御部4は、スイープ信号を形成して、ビーム形成部9へ出力して、ビーム形成部9で形成したビーム信号をスピーカアレイ10へ出力して、スイープ信号を0度方向から180度方向までの間においてスイープさせる。そして、部屋の壁に反射した音声またはスピーカアレイ10から出力された直接音をマイクロフォン2で集音して、集音した音声データをA/Dコンバータ3でディジタル音声信号に変換して、記憶部5に蓄積させる(s2)。
【0090】
システム制御部4は、スイープ動作が終了すると、信号を出力して、システム制御部4に音声信号の分析を開始させる。すなわち、システム制御部4は、記憶部5から音声データを読み出して分析を行い、妥当な範囲にある最もゲインレベルの高いピーク値のスイープ角度をCchに設定する(s3)。そして、システム制御部4は、Cchに設定するスイープ角度が許容範囲内(一定角度以下)であるか否かを判定する(s4)。システム制御部4は、Cchに設定するスイープ角度が許容範囲内でない場合には、マイクロフォン2を設置した聴取位置を変更するか、またはスピーカアレイ装置1の設置位置を変更するようにユーザに促す内容を表示部7に表示させる(s5)。そして、システム制御部4は、ユーザが指示に従って位置変更を行い、操作部6の操作を再度行ったことを検出するまで待機する(s1)。
【0091】
一方、ステップs4において、システム制御部4は、Cchに設定したピークを挟んで両側(時間的に前後、角度的に左右)の領域に、ゲインの閾値を超えたピーク(サイドピーク)が幾つ存在するかを確認し、Cchに設定したピークに近すぎるピークや仮想スピーカの設置角度として常識的に有り得ない角度であるピークを除外して、選定・検出する。また、この時、Cchに対するサイドピークの対称性について検討が行われる(s6)。
【0092】
システム制御部4は、Cchに設定したピークの両側にサイドピークを選定・検出できない場合には(s7)、聴取位置に対してスピーカアレイ10から直接音をステレオモードまたはモノラルモードで再生するように設定する(s10)。そして、システム制御部4は、スピーカアレイ装置1から出力される音声の設定を確認するためにユーザチェックを行うように促す内容を表示部7に表示させる(s16)。
【0093】
一方、ステップs7において、システム制御部4は、Cchに設定したピークの両側のサイドピークを複数個選定・検出できた場合には、スピーカアレイ装置1の設置位置を確認し、設置位置が壁沿いの場合には(s8)、Cchに設定したピークの両側のサイドピーク数を確認し(s9)、Cchを挟んで両側に2つずつピークがある場合には、フロント音声、サラウンド音声とも音声ビームとして出力するように、各ピークに各チャンネルを割り当てる(s11)。続いて、システム制御部4は、サラウンド音声に割り当てた各ビーム音声のチャンネル間の角度差を、前記の式1,式2を用いて算出する(s13)。
【0094】
また、ステップs8において、スピーカアレイ装置1の設置位置が室内のコーナの場合(s8)、及びステップs9において、Cchを挟んで両側に1つずつピークがある場合には、サラウンド音声を音声ビームで再生するように各ピークをサラウンド音声に割り当てて、フロント音声をステレオ再生するように設定する(s12)。そして、ステップs13の処理を行う。
【0095】
システム制御部4は、ステップs13の処理が完了すると、サラウンド音声に割り当てた各ビーム音声のチャンネル間の角度差が閾値よりも大きいか否かを判定する(s14)。システム制御部4は、角度差が閾値よりも大きい場合には、角度補正を行ってファントム音源を形成する処理を行う(s15)。システム制御部4は、ステップs15が終了するかまたはステップs14において角度差が閾値以下の場合には、サラウンド音声の設定を確認するためにユーザチェックを行うように促す内容を表示部7に表示させて、操作部6から入力があるまで待機する(s17)。
【0096】
システム制御部4は、操作部6で受け付けた結果がOKであった場合には、その設定を保持して、処理を終了する。一方、ステップs17においてシステム制御部4は、操作部6で受け付けた結果がNGであった場合には、ステップs5の処理を実行する。
【0097】
以上のように、本発明では、スピーカアレイ装置において従来困難であった音声ビームの設定が容易かつ素早く行うことができる。また、従来技術である自動レベル、音質、距離補正技術との親和性が良く、本発明により一連の音声ビーム設定を自動測定によって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態に係るスピーカアレイ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】スピーカアレイの配置図である。
【図3】スピーカアレイ装置を設置する部屋の上面図であり、スピーカアレイ装置が音声ビームをスイープする動作、及びマイクロフォンが音声ビームを集音する動作を説明するための図である。
【図4】スイープ信号の角度とゲインの関係、及び角度と焦点距離の関係を示すグラフである。
【図5】スピーカアレイ装置の設置時の動作を説明するための図である。
【図6】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図5とは異なる図である。
【図7】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するため図5,6とは異なる図である。
【図8】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図5〜7とは異なる図である。
【図9】スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モード時に収集したデータ例を示すグラフである。
【図10】スピーカアレイ装置の設置動作を説明するための図である。
【図11】スピーカアレイ装置が音声ビーム設定モードを実行する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】特許文献1に記載のスピーカ装置を設置した部屋の上面透視図である。
【符号の説明】
【0099】
1−スピーカアレイ装置 2−マイクロフォン 3−コンバータ
4−システム制御部 5−記憶部 6−操作部 7−表示部
8−ファントム形成部 9−ビーム形成部 10−スピーカアレイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス状またはライン状に配置された複数のスピーカを有するスピーカアレイと、
外部から入力された音声信号を前記スピーカアレイの全部または一部のスピーカに対して分配し、これらのスピーカから出力する音声の出力タイミングを制御して前記スピーカアレイから音声ビームを出力させる信号処理手段と、
前記信号処理手段にテスト音声信号を出力するとともに、この信号処理手段にテスト音声信号の出力タイミングを制御する信号を出力して、前記テスト音声信号により形成したテスト音声ビームを前記スピーカアレイから出力させて、このテスト音声ビームを旋回させるテスト音声出力手段と、
聴取位置に設置され、前記スピーカアレイが出力したテスト音声ビームの直接音及び反射音を集音するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンが集音した前記テスト音声ビームの音声データをテスト音声ビームの旋回角度と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶した音声データの信号レベルに基づいて複数のピークを選択し、選択した複数のピークの旋回角度に基づいて、マルチチャンネルサラウンド音声の各チャンネルの音声ビームを出力する角度であるビーム出力角度を設定するビーム設定手段と、
を備えたスピーカアレイ装置。
【請求項2】
前記ビーム設定手段は、前記記憶手段が記憶するテスト音声信号の信号レベルから選択したピーク数がマルチチャンネルサラウンド音声のチャンネル数よりも少ない場合、
選択したピークの旋回角度をマルチチャンネルサラウンド音声のいずれかのチャンネルのビーム出力角度として設定するとともに、ビーム出力角度を設定したチャンネル以外のチャンネルの音声を、聴取位置へ直接伝搬するように出力する直接音に設定する請求項1に記載のスピーカアレイ装置。
【請求項3】
前記ビーム設定手段は、前記テスト音声信号の信号レベルが最大となるピークの旋回角度を、マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度として設定する請求項1または2に記載のスピーカアレイ装置。
【請求項4】
前記ビーム設定手段が設定した前記マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度が、前記アレイスピーカ正面に垂直な方向から一定角度以上ずれている場合に、聴取位置の変更を促す旨か、または音声再生方法の変更を促す旨を報知する報知手段を備えた請求項3に記載のスピーカアレイ装置。
【請求項1】
マトリックス状またはライン状に配置された複数のスピーカを有するスピーカアレイと、
外部から入力された音声信号を前記スピーカアレイの全部または一部のスピーカに対して分配し、これらのスピーカから出力する音声の出力タイミングを制御して前記スピーカアレイから音声ビームを出力させる信号処理手段と、
前記信号処理手段にテスト音声信号を出力するとともに、この信号処理手段にテスト音声信号の出力タイミングを制御する信号を出力して、前記テスト音声信号により形成したテスト音声ビームを前記スピーカアレイから出力させて、このテスト音声ビームを旋回させるテスト音声出力手段と、
聴取位置に設置され、前記スピーカアレイが出力したテスト音声ビームの直接音及び反射音を集音するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンが集音した前記テスト音声ビームの音声データをテスト音声ビームの旋回角度と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶した音声データの信号レベルに基づいて複数のピークを選択し、選択した複数のピークの旋回角度に基づいて、マルチチャンネルサラウンド音声の各チャンネルの音声ビームを出力する角度であるビーム出力角度を設定するビーム設定手段と、
を備えたスピーカアレイ装置。
【請求項2】
前記ビーム設定手段は、前記記憶手段が記憶するテスト音声信号の信号レベルから選択したピーク数がマルチチャンネルサラウンド音声のチャンネル数よりも少ない場合、
選択したピークの旋回角度をマルチチャンネルサラウンド音声のいずれかのチャンネルのビーム出力角度として設定するとともに、ビーム出力角度を設定したチャンネル以外のチャンネルの音声を、聴取位置へ直接伝搬するように出力する直接音に設定する請求項1に記載のスピーカアレイ装置。
【請求項3】
前記ビーム設定手段は、前記テスト音声信号の信号レベルが最大となるピークの旋回角度を、マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度として設定する請求項1または2に記載のスピーカアレイ装置。
【請求項4】
前記ビーム設定手段が設定した前記マルチチャンネルサラウンド音声のセンタチャンネルのビーム出力角度が、前記アレイスピーカ正面に垂直な方向から一定角度以上ずれている場合に、聴取位置の変更を促す旨か、または音声再生方法の変更を促す旨を報知する報知手段を備えた請求項3に記載のスピーカアレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−110744(P2007−110744A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318031(P2006−318031)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【分割の表示】特願2004−185364(P2004−185364)の分割
【原出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【分割の表示】特願2004−185364(P2004−185364)の分割
【原出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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