説明

スフィンゴシン−1−リン酸アゴニストとしてのピラゾール−1,2,4−オキサジアゾール誘導体

式(I):


(式中、
nは、0か、または1〜4から選択される整数であり;
R1は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよく;
そして、R2、R3、R4、およびnは本明細書に記載のとおりである)
の化合物または医薬的に許容されるその塩について記載する。
また、そのような化合物をGタンパク質結合受容体S1P1に対する選択的アゴニストとして用いる方法、およびそのような化合物を含有する医薬組成物についても記載する。これらの化合物は、様々な治療領域の疾患もしくは障害(例えば自己免疫疾患および血管疾患)の処置、予防、もしくは進行の遅延において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、S1P1アゴニストとして有用な置換ピラゾール化合物に関する。本願は、置換ピラゾール化合物、そのような化合物を含有する組成物、およびそれらの使用方法を提供する。本発明はさらに、S1P1アゴニズムに関連する症状(例えば自己免疫疾患および血管疾患)の処置に有用である、少なくとも1つの本発明の化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、血小板凝集、細胞増殖、細胞形態(cell morphology)、腫瘍細胞浸潤、内皮細胞および白血球走化性、内皮細胞 in vitro 血管新生、およびリンパ球トラフィッキングをもたらすものを含む、多くの細胞性効果を誘導することが示されている。従って、S1P受容体は、様々な治療的適用(例えば腫瘍増殖阻害、血管疾患、および自己免疫疾患)に対する良好な標的である。S1Pは、部分的に、S1P1もしくはS1P1、S1P2もしくはS1P2、S1P3もしくはS1P3、S1P4もしくはS1P4、およびS1P5もしくはS1P5(当初は各々、EDG-1、EDG-5、EDG-3、EDG-6、およびEDG-8と称された)と命名された一連のGタンパク質結合受容体を介して、細胞にシグナルを送る。
【0003】
S1Pは、血管系および免疫系の主要な制御因子でもあるため、人体全体において重要である。血管系において、S1Pは、血管新生、血管安定性および血管透過性を制御する。免疫系において、S1Pは、T-およびB-細胞のトラフィッキングの主要な制御因子として認識されている。S1Pとその受容体S1P1との相互作用は、リンパ器官(例えば胸腺およびリンパ節)からリンパ管への免疫細胞の放出に必要である。従って、S1P受容体の調節が免疫調節に重要であることが示されており、S1P受容体調節因子は新規の免疫抑制剤である。
【0004】
S1P1受容体は多くの組織で発現している。それはリンパ球で発現している主なファミリーメンバーであり、リンパ球トラフィッキングにおいて重要な役割を果たす。S1P1受容体の下方制御により、様々な組織へのリンパ球の遊走およびホーミングが乱される。このことによってリンパ器官におけるリンパ球の隔離(sequestration)がもたらされ、それにより患部組織へ遊走できる循環リンパ球の数が減少される。従って、自己免疫性および異常な炎症プロセスに関連する標的部位へのリンパ球の遊走を抑制するS1P1受容体薬(receptor agent)の開発が、多くの自己免疫性および炎症性の疾患状態に有効であり得る。
5つのS1P受容体のうち、S1P1は、広く分布しており、内皮細胞上に非常に豊富であり、そこでS1P3と協調して働いて、細胞の遊走、分化、およびバリア機能を制御する。非選択的S1P受容体調節によるリンパ球再循環の阻害によって、移植片拒絶を防止する臨床的な免疫抑制がもたらされるが、そのような調節により一過性徐脈も引き起こされる。研究により、S1P1活性が循環リンパ球の喪失と有意に相関していることが示されている。その対照的に、S1P3受容体アゴニズムは有効性に必要とされない。代わりに、S1P3活性は、非選択的S1P受容体アゴニストの観察される急性毒性(望ましくない心血管系への影響(例えば徐脈および高血圧)をもたらす)において重要な役割を果たす。(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照。)
【0005】
S1P1アゴニストの例がFTY720である。この免疫抑制性化合物FTY720(JPI 1080026-A)は、動物およびヒトにおいて循環リンパ球を減少させ、臓器拒絶反応および免疫不全の動物モデルにおいて疾患調節活性を有することが示されている。ヒトにおけるFTY720の使用は、ヒト腎臓移植における臓器拒絶反応の比率を低下させ、再発寛解型多発性硬化症における寛解率を増大させるのに有効である(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;および非特許文献13を参照)。その発見後、FTY720はプロドラッグであり、それはin vivoでスフィンゴシンキナーゼによりリン酸化されて、S1P1、S1P3、S1P4、およびS1P5受容体でのアゴニスト活性を有する、さらに生物学的に活性な物質になることが確立されている。動物およびヒトにおけるFTY720の薬理効果に大きく関与するのは、S1P受容体ファミリー上でのこの作用である。
【0006】
臨床研究によって、FTY720を用いた治療は、治療の最初の24時間において徐脈を引き起こすことが示されている(非特許文献13)。観察される徐脈は、S1P3受容体でのアゴニズムに起因すると一般的に考えられている。この結論は、多くの細胞ベースの実験および動物実験に基づいている。これらには、野生型マウスと違ってFTY720投与後に徐脈を示さないS1P3ノックアウト動物の使用、およびS1P1選択的化合物の使用が挙げられる(非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献14)。
以下の出願には、S1P1アゴニストとしての化合物が記載されている:特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、および特許文献14。また、非特許文献15も参照。
【0007】
S1P1アゴニストとして有用であり、それにもかかわらずS1P3を上回る選択性を有する化合物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 03/061567(米国特許出願第2005/0070506号)
【特許文献2】WO 03/062248(米国特許第7,351,725号)
【特許文献3】WO 03/062252(米国特許出願第2005/0033055号)
【特許文献4】WO 03/073986(米国特許第7,309,721号)
【特許文献5】WO 03/105771
【特許文献6】WO 05/058848
【特許文献7】WO 06/047195
【特許文献8】WO 06/100633
【特許文献9】WO 06/115188
【特許文献10】WO 06/131336
【特許文献11】WO 2007/024922
【特許文献12】WO 07/116866
【特許文献13】WO 08/023783(米国特許出願第2008/0200535号)
【特許文献14】WO 08/074820
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hale et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14:3501 (2004)
【非特許文献2】Sanna et al., J. Biol. Chem., 279:13839 (2004)
【非特許文献3】Anliker et al., J. Biol. Chem., 279:20555 (2004)
【非特許文献4】Mandala et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 309:758 (2004)
【非特許文献5】Brinkman et al., J. Biol. Chem., 277:21453 (2002)
【非特許文献6】Mandala et al., Science, 296:346 (2002)
【非特許文献7】Fujino et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 305:45658 (2003)
【非特許文献8】Brinkman et al., Am. J. Transplant., 4:1019 (2004)
【非特許文献9】Webb et al., J. Neuroimmunol., 153:108 (2004)
【非特許文献10】Morris et al., Eur. J. Immunol., 35:3570 (2005)
【非特許文献11】Chiba, Pharmacology & Therapeutics, 108:308 (2005)
【非特許文献12】Kahan et al., Transplantation, 76:1079 (2003)
【非特許文献13】Kappos et al., N. Engl. J. Med., 335:1124 (2006)
【非特許文献14】Koyrakh et al., Am. J. Transplant., 5:529 (2005)
【非特許文献15】Hale et al., J. Med. Chem., 47:6662 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人らは、S1P1アゴニストとしての活性を有する有効な化合物を見出した。さらに、本出願人らは、S1P1アゴニストとして活性を有し、S1P3以上に選択的である化合物を見出した。これらの化合物は、それらの薬剤能に重要である望ましい安定性、生物学的利用能、治療指数、および毒性値を有する医薬品として有用であると、提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
nは、0か、または1〜4から選択される整数であり;
R1は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてもよく;
各R2は、独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから選択され;
R3は、水素、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-NRaRb、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてもよく;
各R4は、独立して、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、および/またはベンジルから選択され;そして、
RaおよびRbは、各々、独立して、水素、アルキル、および/またはベンジルである]
の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供することにより、前述のニーズを満たす。
【0012】
また、式(I)の化合物、もしくは医薬的に許容されるその塩;および医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物も記載する。
【0013】
さらに、Gタンパク質結合受容体S1P1の活性に関連する疾患もしくは障害の処置方法であって、哺乳動物患者に式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩を投与することを含む方法も記載する。
【0014】
式(I)の化合物、および該化合物を含有する組成物はS1P1アゴニストであり、それはS1P3活性以上にS1P1活性に対して選択的である。式(I)の化合物、および該化合物を含有する組成物は、S1P3活性による副作用を減少もしくは最小化するとともに、様々なS1P1受容体関連症状の処置、予防、もしくは治療に用いられうる。これらの化合物を含有する医薬組成物は、様々な治療領域の疾患もしくは障害(例えば自己免疫疾患および血管疾患)の処置、予防、もしくは進行の遅延において有用である。
【0015】
(詳細な説明)
一実施態様は、
nが、0か、または1〜4から選択される整数であり;
R1が、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよく;
各R2が、独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから選択され;
R3が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ハロゲン、-NRaRb、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてもよく;
各R4が、独立して、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、および/またはベンジルから選択され;そして、
RaおよびRbが、各々、独立して、水素、C1〜C6アルキル、および/またはベンジルである、
式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0016】
一実施態様は、nが0または1である、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0017】
一実施態様は、nが0である、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0018】
一実施態様は、式(I)の化合物の2,2,2-トリフルオロ酢酸塩を提供する。
【0019】
一実施態様は、R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよいアリールである、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。好ましくは、R1はフェニルである。例えば、この実施態様は、nが0または1である式(I)の化合物を提供する。好ましくは、R3は、C1〜C4アルキル、C1〜C2ハロアルキル、ハロゲン、-NH(C1〜C4アルキル)、C3〜C6シクロアルキル、フェニル、またはピリジニルであり、ここで、該シクロアルキル、フェニル、およびピリジニルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から3個の置換基で適宜置換されていてよい。R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよいアリール(好ましくはフェニル)であり;そして、R3が、ハロアルキル、-NRaRb、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい化合物が、この実施態様に含まれる。
【0020】
一実施態様は、R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよいフェニルであり;R3が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ハロゲン、-NRaRb、C3〜C6シクロアルキル、フェニル、またはピリジルであり;R4が、C1〜C4アルキルであり;そして、RaおよびRbが、独立して、水素および/またはC1〜C6アルキルである、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。例えば、この実施態様は、nが0または1であり;そして、好ましくは、nが0である式(I)の化合物を提供する。この実施態様の他の例には、R3が、メチル、エチル、1-プロピル、シクロペンチル、トリフルオロメチル、ブロモ、クロロ、フェニル、2-ピリジル、または-NHRaである化合物;そして、Raが、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、またはイソブチルである化合物が含まれる。
【0021】
一実施態様は、R1が、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。R1についての適切な基としては、C3〜C8シクロアルキル、およびN、O、もしくはSから独立して選択される1から2個のヘテロ原子を有する1-環のヘテロアリール;ならびに、N、O、もしくはSから独立して選択される1から2個のヘテロ原子を有する1-環のヘテロアリールが挙げられる。適切なR1基の例としては、限定はされないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、およびピペリジニルが挙げられる。この実施態様は、nが0または1であり;そして、好ましくはnが0である、式(I)の化合物を提供する。この実施態様の他の例としては、R3がメチル、エチル、1-プロピル、シクロペンチル、トリフルオロメチル、ブロモ、クロロ、フェニル、2-ピリジル、または-NHRaである化合物;そして、Raがメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、またはイソブチルである化合物が含まれる。R1が、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル、好ましくはシクロペンチルまたはピリジニルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよく;そして、R3がハロアルキル、-NRaRb、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい化合物が、この実施態様に含まれる。
【0022】
一実施態様は、R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよいシクロアルキルである、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。R1についての適切な基としては、C3〜C8シクロアルキル基、およびC3〜C6シクロアルキル基が挙げられる。この実施態様は、nが0または1であり;そして、好ましくはnが0である、式(I)の化合物を提供する。この実施態様の他の例には、R3がメチル、エチル、1-プロピル、シクロペンチル、トリフルオロメチル、ブロモ、クロロ、フェニル、2-ピリジル、または-NHRaである化合物;そして、Raがメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、またはイソブチルである化合物が含まれる。R1が、シクロアルキル、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよく;そして、R3が、ハロアルキル、-NRaRb、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキルは、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい化合物が、この実施態様に含まれる。
【0023】
一実施態様は、R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよいヘテロアリールである、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。R1についての適切な基としては、N、O、もしくはSから独立して選択される1から4個のヘテロ原子を有する、1-および2-環のヘテロアリールが挙げられる。R1についての他の適切な基としては、1個の窒素ヘテロ原子および、適宜、N、O、もしくはSから独立して選択される1から3個の他のヘテロ原子を有する、1-および2-環のヘテロアリールが挙げられる。適切なヘテロアリール基の例としては、限定はされないが、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラゾリル、およびインドリルが挙げられる。好ましくは、R1は、0から3個の置換基;そして、さらに好ましくは、0から2個の置換基で置換されている。この実施態様の他の例としては、R3がメチル、エチル、1-プロピル、シクロペンチル、トリフルオロメチル、ブロモ、クロロ、フェニル、2-ピリジル、または-NHRaである化合物;そして、Raがメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、またはイソブチルである化合物が挙げられる。R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよいヘテロアリール、好ましくは1-環のヘテロアリール(例えばピリジニル)であり;そして、R3が、ハロアルキル、-NRaRb、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい化合物が、この実施態様に含まれる。
【0024】
一実施態様は、
R1が、式:
【化2】

(式中、
mは、0、1、2、または3であり;
XおよびYは、各々、独立して、窒素(N)および/またはCR5であり;
Zは、酸素(O)、硫黄(S)、またはN-R6であり;
各R5は、独立して、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから選択され;
R6は、C1〜C4アルキルまたはベンジルであり;そして、
各R4は、独立して、C1〜C4アルキルから選択される)
から選択される、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。
この実施態様は、nが0または1であり;そして好ましくは、nが0である、式(I)の化合物を提供する。
【0025】
一実施態様は、
R1が、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよい2-ピリジルであり;
R3が、C1〜C4アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C4ハロアルキル、ハロゲン、フェニル、ピリジル、または-NRaRbであり;R4が、C1〜C4アルキルであり;そして、
RaおよびRbが、各々、独立して、水素および/またはC1〜C4アルキルである、
式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。
この実施態様は、nが0または1であり;そして好ましくは、nが0である、式(I)の化合物を提供する。
【0026】
一実施態様は、R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよいヘテロシクリルである、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。R1についての適切な基としては、N、O、もしくはSから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を有する1-および2-環のヘテロシクリルが挙げられる。R1についての他の適切な基としては、1個の窒素ヘテロ原子および適宜、N、O、もしくはSから独立して選択される1から2個の他のヘテロ原子を有する、1-および2-環のヘテロシクリルが挙げられる。適切なヘテロシクリル基の例としては、限定はされないが、オキセタニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、およびキヌクリジニルが挙げられる。この実施態様の他の例としては、R3がメチル、エチル、1-プロピル、シクロペンチル、トリフルオロメチル、ブロモ、クロロ、フェニル、2-ピリジル、または-NHRaである化合物;そして、Raがメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、またはイソブチルである化合物が挙げられる。R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよいヘテロシクリル、好ましくは1-環のヘテロシクリルであり;そして、R3が、ハロアルキル、-NRaRb、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで、該シクロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい化合物が、この実施態様に含まれる。
【0027】
一実施態様は:
1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(イソプロピルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(エチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-プロピル-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-シクロペンチル-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(1-(6-エトキシピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(1-シクロヘキシル-5-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-フェニル-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-クロロ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(イソブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(n-ブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;および、
1-(4-(5-(1-フェニル-5-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
からなる群から選択される、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。この実施態様の化合物は、2,2,2-トリフルオロ酢酸塩として提供されうる。
【0028】
一実施態様は、式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩;および、医薬的に許容される担体を含有する組成物を提供する。
【0029】
一実施態様は、哺乳動物患者に式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、Gタンパク質結合受容体S1P1の活性に関連する疾患もしくは障害を処置する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(定義)
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読むことで、当業者によってさらに容易に理解されうる。当然のことながら、上部および下部の別個の実施態様中に明確な根拠として記載された本発明のある特定の特徴を組み合わせて、単独の実施態様を形成してもよい。反対に、単独の実施態様中に簡潔な根拠として記載された本発明の様々な特徴を組み合わせて、それらのサブコンビネーションを形成してもよい。本明細書において、例として特定された実施態様かまたは好ましい実施態様は、例示目的であって限定するものではないことが意図される。
【0031】
本明細書において他に特に記載のない限り、単数形の言及には複数の言及もまた含まれうる。例えば、「a」および「an」は、1かまたは1以上のいずれかを示しうる。
【0032】
他に指示のない限り、原子価が満たされていないいずれかのヘテロ原子は、その原子価を満たすのに十分な水素原子を有すると考える。
【0033】
本明細書に記載の定義は、引用により本明細書に援用されるいずれの特許、特許出願、および/または特許出願公開に記載された定義よりも優先される。
【0034】
本発明を説明するために用いられる様々な用語の定義を以下に記載する。これらの定義は、本明細書の全体を通して(それらが他に特定の場合に限定されない限り)、個別にか、またはより大きな基の一部としてのいずれかで用いられる用語に適用される。
【0035】
本明細書の全体を通して、基およびそれらの置換基は、安定な部分および化合物をもたらすように、当業者により選択されうる。
【0036】
当分野で用いられる慣習に従って、
【化3】

は本明細書において、コアもしくは骨格構造への部分もしくは置換基の結合点である結合を表すために、構造式中で用いられる。
【0037】
本明細書で用いる用語「ハロ」および「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを言う。
【0038】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、例えば、1〜12個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、または1〜4個の炭素原子を含む、分枝鎖および直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を言う。アルキル基の例としては、限定はされないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびi-プロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、およびt-ブチル)、およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-メチルペンチル、ならびに4-メチルペンチルが挙げられる。シンボル「C」の後に下付き文字で数字が記載されている場合、該下付き文字は特定の基が有しうる炭素原子の数をより具体的に定義する。例えば、「C1-C6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキル基を意味する。
【0039】
本明細書で用いる用語「ハロアルキル」は、1個以上(1から、最大で親アルキル基中に存在し得る水素原子の総数までの範囲であり得る)の水素原子がハロゲン原子により置換されている、アルキル基を言う。ハロアルキル基の代表的な例としては、限定はされないが、クロロメチル(CH2Cl-)、トリフルオロメチル(CF3-)、および2,2,2-トリフルオロエチル(CF3CH2-)が挙げられる。シンボル「C」の後に下付き文字で数字が記載されている場合、該下付き文字は特定のハロアルキル基が有しうる炭素原子の数をより具体的に定義する。例えば、「C1-C4ハロアルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖ハロアルキル基を意味する。
【0040】
本明細書で用いる用語「シクロアルキル」は、飽和環炭素原子から1個の水素原子を除去することによって、非芳香族の単環式もしくは多環式の炭化水素分子から得られる基を言う。シクロアルキル基の代表的な例としては、限定はされないが、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。シンボル「C」の後に下付き文字で数字が記載されている場合、該下付き文字は特定のシクロアルキル基が有しうる炭素原子の数をより具体的に定義する。例えば、「C3-C6シクロアルキル」は、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0041】
本明細書で用いる用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合したアルキル基、例えば、メトキシ基(-OCH3)を言う。
【0042】
本明細書で用いる用語「アリール」は、芳香環に結合している1個の水素を除去することによって該芳香環を含有する分子から得られる原子団を言う。アリール基の代表的な例としては、限定はされないが、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、および1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-5-イルが挙げられる。
【0043】
本明細書で用いる用語「ベンジル」は、水素原子のうちの1個がフェニル基によって置換されているメチル基を言う。
【0044】
本明細書で用いる用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、および窒素を言う。
【0045】
本明細書で用いる用語「ヘテロシクリル」は、非芳香族の3-〜7-員単環式基、7-〜11-員二環式基、および10-〜15-員三環式基を言い、その中で、該環のうち少なくとも1つは、少なくとも1個のヘテロ原子(O、SまたはN)を有しており、該ヘテロ原子含有環は、好ましくは、O、S、および/またはNから独立して選択される、1、2、もしくは3個のヘテロ原子を有している。ヘテロ原子を含むそのような基の各環は、1または2個の酸素原子または硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を含むことができるが、但し、各環におけるヘテロ原子の総数は4個以下であり、さらに、該環は少なくとも1個の炭素原子を含む。該窒素原子および硫黄原子は適宜酸化されていてもよく、該窒素原子は適宜四級化されていてよい。該二環式基および三環式基を完成させる縮合環は、炭素原子のみを含みうるが、飽和、部分飽和、または不飽和であってもよい。ヘテロシクロ基は、いずれの可能な窒素原子または炭素原子に結合していてよい。
【0046】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、オキセタニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジル、2-オキソピロロジニル(oxopyrrolodinyl)、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル(piperidonyl)、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、およびテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニルが挙げられる。二環式ヘテロシクロ基の例としては、キヌクリジニルが挙げられる。
【0047】
本明細書で用いる用語「ヘテロアリール」は、芳香族の5-または6-員単環式基、9-または10-員二環式基、および11-〜14-員三環式基を言い、該環のうちの少なくとも1つに少なくとも1個のヘテロ原子(O、SまたはN)を有しており、該ヘテロ原子含有環は、好ましくは、O、S、および/またはNから独立して選択される、1、2、もしくは3個のヘテロ原子を有している。ヘテロ原子を含む該ヘテロアリール基の各環は、1個または2個の酸素原子または硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を含むことができるが、但し、各環におけるヘテロ原子の総数は4以下であり、各環は少なくとも1個の炭素原子を有する。二環式基および三環式基を完成させる縮合環は、飽和、部分飽和、または不飽和であってよい。該窒素原子および硫黄原子は適宜酸化されていてよく、該窒素原子は適宜四級化されていてよい。二環式または三環式であるヘテロアリール基には、少なくとも一つの完全な芳香環が含まれていなければならないが、他の縮合環は芳香族または非芳香族であってもよい。該ヘテロアリール基は、いずれの環のいずれの可能な窒素原子または炭素原子に結合していてよい。
【0048】
単環式ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、およびテトラゾリルが挙げられる。
【0049】
二環式ヘテロアリール基の例としては、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジル、ジヒドロイソインドリル、およびテトラヒドロキノリニルが挙げられる。
【0050】
三環式ヘテロアリール基の例としては、カルバゾリル、ベンゾイドリル(benzidolyl)、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、およびキサンテニルが挙げられる。
【0051】
該フレーズ「医薬的に許容される」は本明細書において、適切な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して用いるのに適した、化合物、物質、組成物、および/または剤形を意味するように用いられる。
【0052】
本明細書で用いる「医薬的に許容される塩」は、親化合物がその酸性塩もしくは塩基性塩を製造することにより修飾される、開示化合物の誘導体を意味する。医薬的に許容される塩の例としては、限定はされないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩もしくは有機酸塩;および、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩もしくは有機塩が挙げられる。医薬的に許容される塩には、例えば無毒の無機酸もしくは有機酸から形成された親化合物の通常の無毒の塩または四級アンモニウム塩が含まれる。本発明の医薬的に許容される塩は、通常の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、水中もしくは有機溶媒中またはその2つの混合液中において、遊離酸もしくは塩基の形態のこれらの化合物を、化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることによって製造することができ;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, p. 1418, (1985)に記載されており、該開示は引用により本明細書に援用される。
【0053】
式(I)の化合物の塩は、例えば、媒質中で、式(I)の化合物と、例えば同等量の酸もしくは塩基とを反応させることによって形成することができ、新しく形成された塩を、例えば、析出させるか、または凍結乾燥によって単離することができる。無機および/または有機酸を用いて式(I)の化合物が形成できる酸性塩の例としては、限定はされないが、例えば、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、酸性クエン酸塩(acid citrate)、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、グルタミン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、イソニコチン酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩(acid phosphate)、サッカラート、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、およびパモ酸塩[すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]が挙げられる。そのような塩は、当業者に公知の方法に従って製造することができる。
【0054】
無機および/または有機塩基を用いて式(I)の化合物が形成できる塩基性塩の例としては、限定はされないが、例えば、アンモニウム塩;例えばナトリウム、リチウムおよびカリウム塩のような、アルカリ金属塩:例えばカルシウムおよびマグネシウム塩のような、アルカリ土類金属塩;例えばベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トリスアミンもしくはトリス)、ヒドラバミン(例えば、N,N-ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンなど)、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グリカミド、およびt-ブチルアミンのような、有機塩基を用いて形成される塩;例えばアルギニンおよびリジンのような、アミノ酸を用いて形成される塩;ならびに、例えば低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および硫酸ジアミル)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、およびアラルキルハライド(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)のような、塩基性窒素-含有基を四級化する剤(agent)を用いることにより形成される塩が挙げられる。そのような塩は、当業者に公知の方法に従って製造することができる。
【0055】
加えて、式(I)の化合物は、製造後に単離および精製して、重量で99%以上の式(I)の化合物(「実質的に純粋」)を含む組成物を得て、次いでそれを本明細書に記載のとおり用いるかまたは製剤化するのが好ましい。そのような「実質的に純粋」な式(I)の化合物もまた、本発明の一部として本明細書において意図される。
【0056】
in vivoで変換されて生理活性剤(すなわち、式(I)の化合物)を供することができるいずれの化合物も、本発明の範囲および精神内におけるプロドラッグである。
【0057】
本明細書で用いる用語「プロドラッグ」には、当業者に公知の方法を用いて、式(I)の化合物の1つ以上のヒドロキシルを、アルキル、アルコキシもしくはアリール置換アシル化剤と反応させて、アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエートなどを生成させることによって形成される、エステルおよびカーボネートが含まれる。
【0058】
様々な形態のプロドラッグが当分野において周知であり、以下:
a)Wermuth, C.G. et al., The Practice of Medicinal Chemistry, Chapter 31, Academic Press (1996);
b)Design of Prodrugs, Bundgaard, H. ed., Elsevier (1985);
c)Bundgaard, H., Chapter 5, “Design and Application of Prodrugs,” A Textbook of Drug Design and Development, pp. 113-191, Krosgaard-Larsen, P. et al., eds., Harwood Academic Publishers (1991); and
d)Testa, B. et al., Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH (2003) に記載されている。
【0059】
加えて、式(I)の化合物は、製造後に単離および精製して、重量で99%以上の式(I)の化合物(「実質的に純粋」な化合物I)を含む組成物を得て、次いでそれを本明細書に記載のとおり用いるかまたは製剤化するのが好ましい。そのような「実質的に純粋」な式(I)の化合物もまた、本発明の一部として本明細書において意図される。
【0060】
「安定な化合物」および「安定な構造」とは、反応混合物から有用な純度への単離、および有効な治療薬への製剤化に耐えるのに十分強い化合物を示すことを意図する。本発明は安定な化合物を具体化するものと意図される。
【0061】
「治療上有効な量」は、S1P1を上方制御するのに有効であるか、または血管疾患もしくは自己免疫疾患の処置もしくは予防に有効である、本発明の化合物単独の量か、特許請求された化合物の組み合わせの量か、または他の活性成分と組み合わされた本発明の化合物の量を包含することを意図する。
【0062】
本明細書で用いる「処置すること」または「処置」には、哺乳動物、とりわけヒトにおける疾患状態の処置が含まれ、ならびに:(a)とりわけ、哺乳動物が疾患状態に罹りやすいが、まだ罹患していると診断されていない場合において、哺乳動物での疾患状態が生じるのを予防すること;(b)疾患状態の抑制、すなわち、その進行を抑止すること;および/または(c)疾患状態を軽減すること、すなわち、疾患状態の退行をもたらすこと、が含まれる。
【0063】
本発明の化合物は1個以上のさらなる不斉炭素原子を有し得ることから、2つ以上の立体異性体が存在する。本発明は、可能な個々の立体異性体、それらの個々の互変異性体、並びにそれらの混合物の全てを含む。ジアステレオ異性体の分離は、従来の技術、例えば、本発明の化合物またはその適当な塩もしくは誘導体の立体異性体混合物の分別結晶、クロマトグラフィーまたはHPLCにより達成されうる。該化合物の個々のエナンチオマーはまた、必要に応じて、対応する光学的に純粋な中間体からか、または分割(例えば、適当なキラル担体を用いた対応するラセミ体のHPLC、または対応するラセミ体と適当な光学活性な酸または塩基との反応によって形成されたジアステレオ異性体塩の分別結晶)によって、製造されてもよい。本発明の化合物の全ての立体異性体は、混合形態か、または純粋もしくは実質的に純粋な形態のいずれかであることが意図される。
【0064】
本発明の化合物は、本発明の化合物に出現する原子の全ての同位体を含むことを意図する。同位体には、原子番号が同一であるが質量数が異なる原子が含まれる。一般的な例として、限定されることなく、水素の同位体にはジュウテリウムおよびトリチウムが含まれる。炭素の同位体としては13Cおよび14Cが挙げられる。同位体で標識された本発明の化合物は一般に、当業者に公知の通常の技法によってか、または本明細書に記載されたものと類似した方法によって、他で用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体-標識試薬を用いて、製造することができる。
【0065】
1つ以上の無毒の、医薬的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント(本明細書中では「担体」物質と総称する)、および、必要であれば、他の有効成分と合わせて式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を含む医薬組成物のクラスもまた、本発明の範囲内に包含される。式(I)の化合物は、いずれかの適当な投与経路で、好ましくはそのような投与経路に適応した医薬組成物の形態で、および目的とする治療に有効な用量で投与されうる。本発明の化合物および組成物は、例えば、通常の医薬的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含む用量単位剤形の状態で、経口、粘膜、または非経口(parentally)(血管内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内および注入技法を含む)で投与してもよい。例えば、該医薬担体はマンニトールまたはラクトースおよび微結晶セルロースの混合物を含み得る。該混合物は、例えば滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウムなど)および崩壊剤(例えばクロスポビドンなど)などのさらなる成分を含み得る。該担体混合物はゼラチンカプセルに充填するか、または錠剤として圧縮してもよい。
【0066】
本発明の医薬的に活性な化合物を薬学の従来の方法に従って加工処理して、ヒトおよび他の哺乳類を含む患者への投与用薬剤を製造することができる。
【0067】
経口投与において、該医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、懸濁剤または液剤の形態であってよい。該医薬組成物は、好ましくは特定の量の有効成分を含有する用量単位の形態で製造される。そのような用量単位の例は、錠剤またはカプセルである。例えば、これらは、約1から2000 mg、好ましくは約1から500 mg、より好ましくは約5から150 mgの量の活性成分を含みうる。ヒトまたは他の哺乳類に適した1日量は、患者の症状および他の因子に依存して幅広く変えてもよいが、再度、ルーチンな方法を用いて決定することができる。
【0068】
投与する化合物の量、および本発明の化合物および/または組成物を用いた病状の治療のための投与レジメンは、対象の年齢、体重、性別および病状、疾患の種類、疾患の重篤性、投与経路および投与回数、および用いる特定の化合物などの様々な因子に依存する。従って、該投与レジメンは大きく変化させてもよいが、標準的な方法を用いて既定通りに決定することができる。1日量は、約0.01から1500 mg/kg体重、好ましくは約0.5から約50 mg/kg体重、最も好ましくは約0.1から20 mg/kg体重が適切であり得る。該1日量を、1日当たり1から4回で投与することができる。
【0069】
治療目的で、本発明の活性化合物は、通常、指定された投与経路に適する1つ以上のアジュバントと組み合わされる。経口投与の場合、該化合物を、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合した後、投与しやすいように錠剤化するかまたはカプセルに包んでもよい。そのようなカプセルまたは錠剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に活性化合物が分散した状態で提供することができるような、徐放剤形が含まれうる。
【0070】
式(I)の化合物を含有するエマルジョンの油相は、既知の方法で既知の成分から構成されうる。該相は単に乳化剤のみを含んでよい一方、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪もしくは油、または脂肪および油の両方との混合物を含んでもよい。好ましくは、親水性乳化剤は安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。また、油および脂肪の両方が含まれることも望ましい。一緒になって、安定剤の有無にかかわらず乳化剤はいわゆる乳化ワックスを組成し、該ワックスは油および脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を組成する。本発明の製剤における使用に適した乳化剤およびエマルジョン安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリルが、単独か、またはワックスもしくは当分野で周知の他の物質と共に含まれる。
【0071】
医薬的なエマルジョン製剤に用いられることが多い大部分の油中における該活性化合物の溶解性は非常に低いので、該製剤に適した油または脂肪の選択は、所望する美容特性の達成に基づく。従って、該クリーム剤は望ましくは、チューブまたは他の容器からの漏出を回避する適当な稠度の非-油脂性、非-染色性および水洗性の生成物であるべきである。直鎖または分枝鎖のモノ-またはジ-塩基性アルキルエステル(例えば、ジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミスチリン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシルなど)または分枝鎖エステルの混合物が用いられうる。これらは、単独または目的の特性に応じた組み合わせで用いられ得る。あるいは、高融点の脂質(例えば白色軟パラフィンおよび/または流動パラフィンなど)、または他の鉱油を用いることができる。
【0072】
非経口投与用製剤は、水性または非-水性の等張無菌注射用液剤または懸濁剤の形態であってよい。これらの液剤および懸濁剤は、経口投与用製剤での使用について記載した1つ以上の担体または希釈剤を用いて、あるいは他の適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、無菌粉末または顆粒から製造されうる。該化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーンオイル、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカントゴム、および/または様々なバッファー中に溶解させてよい。他のアジュバントおよび投与方法は、製薬の分野において十分にかつ広く知られている。該活性成分はまた、適切な担体(生理食塩水、ブドウ糖または水が含まれる)、またはシクロデキストリン(すなわちキャプティソル(登録商標))、共溶媒可溶化剤(すなわちプロピレングリコール)もしくはミセル可溶化剤(すなわちTween80)を有する組成物として注入により投与してもよい。
【0073】
該無菌の注射用製剤はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射用液剤または懸濁剤、例えば1,3-ブタンジオールの液剤、であってよい。許容されるビヒクルおよび溶媒のうちで用いてもよいものは、水、リンガー液、および生理食塩水である。加えて、無菌の固定油が、溶媒または懸濁化媒質として通常用いられる。この目的のため、いずれの刺激の少ない固定油(合成モノ-またはジグリセリドが含まれる)を用いてもよい。さらに、脂肪酸(例えばオレイン酸など)が注射剤の製造で用いられる。
【0074】
該医薬組成物は、通常の製薬工程(例えば滅菌など)で処理してもよく、および/または通常のアジュバント(例えば保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、バッファーなど)を含んでもよい。錠剤および丸薬は、さらに腸溶コーティングで製造することができる。そのような組成物はまた、アジュバント(例えば湿潤剤、甘味剤、香料、および芳香剤)を含みうる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、式(I)の化合物、または医薬的に許容されるその塩、および適宜、いずれかの医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルから選択されるさらなる物質(agent)を含んでよい。本発明の別の組成物は、本明細書に記載の式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩、および医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む。
【0076】
本発明の医薬組成物に用いてもよい医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルには、限定はされないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)(例えばd-α-トコフェロールポリエチレングリコール 1000 コハク酸塩)、医薬剤形で用いる界面活性剤(例えばTweenまたは他の同様のポリマーデリバリーマトリックスなど)、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロック重合体、ポリエチレングリコール)および羊毛脂が含まれる。シクロデキストリン(例えば、α-、β-、およびγ-シクロデキストリン)または化学修飾誘導体(例えば、2-および3-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリン)、または他の可溶化誘導体もまた、本明細書に記載の式の化合物の送達を高めるために、有利に用いられうる。
【0077】
(有用性)
ヒト免疫系は、感染症、疾患または死を引き起こし得る、微生物、ウイルス、および寄生生物から身体を防御するように発展してきた。複雑な制御メカニズムは、免疫系の様々な細胞成分が、個体に永久的もしくは著しいダメージをもたらすことなく、外来物質または器官を標的とすることを確実なものとする。現時点では起因事象はよく分かっていないが、自己免疫疾患状態において、該免疫系はその炎症反応を罹患個体の標的器官に向ける。種々の自己免疫疾患は、典型的には、影響を受ける主要なもしくは最初の標的器官もしくは組織により特徴づけられる;例えば、関節リウマチの場合は関節、橋本甲状腺炎の場合は甲状腺、多発性硬化症の場合は中枢神経系、1型糖尿病の場合は膵臓、そして、炎症性腸疾患の場合は腸。従って、免疫系においてまたは免疫系のある特定の細胞型(例えば、B-リンパ球、およびTリンパ球、T細胞)において作用する治療薬は1つ以上の自己免疫疾患において有用性を有しうることが認められている。
【0078】
S1P受容体は自己免疫疾患を含む幅広い治療的適用のための良好な標的であることが、本明細書に引用された文献を含め、当分野において良く認識されている。S1P受容体は、個々の受容体が組織-特異的および反応-特異的の両方であるため、良好な薬物標的となる。1つの受容体に対して選択的なアゴニストもしくはアンタゴニストの開発によって、その受容体を含有し、望ましくない副作用を制限する組織に対する細胞応答が限局化されるので、S1P受容体の組織特異性は重要である。S1P受容体の反応特異性はまた、他のプロセスに影響を与えることなく、ある特定の細胞応答を惹起もしくは抑制するアゴニストもしくはアンタゴニストの開発を可能にするので、重要である。従って、あるいくつかのS1P受容体ファミリーメンバー上では作用するが、他のファミリーメンバーにおいては活性が低下しているかもしくは活性のない化合物が望ましく、改善された副作用プロファイル(すなわち、望ましくない副作用の縮小または排除)とともに、治療効果をもたらすことが予期される。
【0079】
本明細書で用いる、S1P1に関する該用語「アゴニスト」は、薬理作用(例えば、T細胞の運動性の低下、T細胞のトラフィッキングの低下、またはリンパ組織からのT細胞の放出の低下)を発現する物質を言う。(Rosen et al., Trends in Immunology, 28:102 (2007)).
【0080】
アゴニストとしてのそれらのS1P1活性のおかげで、本発明の化合物は自己免疫疾患もしくは慢性炎症疾患の処置もしくは予防に有用な免疫調節剤である。本発明の化合物は、免疫抑制が整っている免疫系(例えば、骨髄)、器官もしくは移植片拒絶、自己免疫疾患および慢性炎症疾患(全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、1型糖尿病(diabete mellitus)、炎症性腸疾患、胆汁性肝硬変、ぶどう膜炎、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、自己免疫性筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、魚鱗癬、グレーブス眼症、および喘息を含む)を抑制するのに有用である。
【0081】
より具体的には、本発明の化合物は:器官もしくは組織の移植、移植に関連してもたらされる移植片対宿主病、自己免疫症候群(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、1型糖尿病、ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎を含む)、感染後自己免疫疾患(リウマチ熱および感染後糸球体腎炎を含む)、炎症性および過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、血管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症(cutaneous eosinophilia)、エリテマトーデス、ざ瘡、円形脱毛症、角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病に関連するぶどう膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィー(dystrophia epithelialis corneae)、角膜白斑、眼類天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト・小柳・原田症候群、サルコイドーシス、花粉アレルギー、可逆性閉塞性気道疾患(reversible obstructive airway disease)、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、粉塵喘息、慢性もしくは難治性の喘息、遅発型喘息および気道過敏症、気管支炎、胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症により引き起こされる血管損傷、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷に関連する腸の病変、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、片頭痛、鼻炎、湿疹、間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎(polyneuritis)、反復性神経炎(multiple neuritis)、単発神経炎、神経根障害、甲状腺機能亢進症、バセドウ病、赤芽球癆、再生不良性貧血、低形成性貧血(hypoplastic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、赤血球形成不全、骨粗鬆症、サルコイドーシス、肺線維症、特発性間質性肺炎、皮膚筋炎、尋常性白斑(leukoderma vulgaris)、尋常性魚鱗癬(ichthyosis vulgaris)、光アレルギー性過敏症、皮膚T細胞リンパ腫、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発動脈炎、心筋症、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、脂肪症、好酸球性筋膜炎、脱毛の予防もしくは発毛をもたらすことおよび/または発毛および毛髪の成長の促進による歯肉、歯周組織、歯槽骨、歯セメント質(substantia ossea dentis)、糸球体腎炎、男性型脱毛症または老人型脱毛症の病変、筋ジストロフィー、濃皮症(pyoderrna)およびセザリー症候群、アジソン病、保存か、移植かもしくは虚血性疾患で生じる器官の虚血再灌流障害、エンドトキシンショック、偽膜性大腸炎、薬剤もしくは放射線照射により引き起こされる大腸炎、虚血性急性腎不全、慢性腎不全、肺-酸素もしくは薬剤により引き起こされる中毒症、肺癌、肺気腫、白内障、鉄沈着症、網膜色素変性症、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕(vitreal scarring)、角膜アルカリ熱傷(corneal alkali burn)、多形性紅斑皮膚炎(dermatitis erythema multiforme)、線状IgA水疱性皮膚炎(linear IgA ballous dermatitis)およびセメント皮膚炎(cement dermatitis)、歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染、加齢、発癌、カルシノーマの転移および高山病により引き起こされる疾患、ヒスタミンもしくはロイコトリエン-C4放出により引き起こされる疾患、ベーチェット病、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝部分切除、急性肝壊死、毒素、ウイルス性肝炎、ショック、もしくはアノキシアにより引き起こされる壊死、B型ウイルス性肝炎、非-A/非-B型肝炎、硬変症、アルコール性肝硬変、肝不全、劇症肝不全、遅発性肝不全、慢性肝不全の急性憎悪(“acute-on-chronic” liver failure)、化学治療効果の増強、サイトメガロウイルス感染症、HCMV感染症、AIDS、癌、老年認知症、トラウマ、ならびに慢性細菌感染症、からなる群から選択される疾患もしくは障害の処置もしくは予防に有用である。
【0082】
移植に対する抵抗または器官もしくは組織の移植拒絶反応の予防または処置を必要とする哺乳動物患者において、それらを予防もしくは処置する方法もまた本発明内において具体化され、それには式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を投与することが含まれる。移植に対する抵抗または移植拒絶反応の予防または処置のために治療上有効な量が投与されうる。
【0083】
さらなる別の実施態様は、免疫系の抑制を必要とする哺乳動物患者において免疫系を抑制する方法であって、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を患者に投与することを含む方法である。免疫系を抑制するために治療上有効な量が投与されうる。
【0084】
何よりもとりわけ、本明細書に記載の方法は、骨髄または器官移植拒絶反応を処置または予防する方法であって、そのような処置または予防が必要な哺乳動物患者に式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を投与することを含む方法を包含する。骨髄または器官移植拒絶反応の処置または予防のために治療上有効な量が投与されうる。
【0085】
一実施態様は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患の処置方法であって、それを必要とする哺乳動物に少なくとも1つの式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を投与することを含む方法を提供する。別の実施態様は、免疫疾患および/または炎症性疾患の処置のための療法において用いるための、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。別の実施態様において、自己免疫疾患および/または炎症性疾患の処置もしくは予防のための医薬の製造における式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩の使用を提供する。これらの実施態様において、治療上有効な量が用いられうる。好ましくは、これらの実施態様において、該自己免疫性および炎症性疾患は、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、乾癬、または薬剤として防ぐ移植器官の拒絶反応(as an agent to prevent the rejection of transplanted organs)から選択される。
【0086】
別の実施態様において、血管疾患を処置するための方法であって、それを必要とする哺乳動物に少なくとも1つの式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を投与することを含有する方法を提供する。別の実施態様は、血管疾患の処置のための療法における使用のための式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩を提供する。別の実施態様において、血管疾患の処置のための医薬の製造における式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩の使用を提供する。これらの実施態様において、治療上有効な量が用いられうる。好ましくは、これらの実施態様において、該血管疾患はアテローム性動脈硬化症または虚血再灌流障害から選択される。
【0087】
一実施態様は、Gタンパク質結合受容体S1P1の活性に関連する疾患もしくは障害を処置する方法であって、式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩(それはトリフルオロ酢酸塩として提供されうる)を哺乳動物患者に投与することを含む方法を提供する。本実施態様の方法には、治療上有効な量の式(I)の化合物または医薬的に有効なその塩の投与が含まれる。
【0088】
S1P1-関連症状を処置する方法には、式(I)の化合物を単独か、あるいは、互いに組み合わせてかおよび/またはそのような症状の処置に有用な他の適切な治療薬と組み合わせて、投与することが含まれうる。従って、「治療上有効な量」は、S1P1受容体においてアゴニストとして作用するのに有効である請求の化合物の組み合わせの量を含むことも意図する。化合物の組み合わせは、好ましくは、相乗的な組み合わせである。相乗作用は、例えばChou et al., Adv. Enzyme Regul. 22:27-55 (1984)によって記載されるように、組み合わせて投与された場合の化合物の効果が、単剤として単独で投与された場合の化合物の相加効果よりも大きい場合に生じる。通常、相乗効果は、該化合物の最適以下(sub-optimal)の濃度にて最も明瞭に示される。相乗作用は、低い細胞毒性の観点から、個々の成分と比べた場合の組み合わせの有効性もしくは他の有益な効果を増大させることができる。
【0089】
そのような他の治療薬の例としては、副腎皮質ステロイド薬もしくはグルココルチコイド、例えばデキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、およびプレドニゾン;PDE4阻害薬、例えばロリプラム、シロミラスト、ロフルミラスト、およびオグレミラスト;サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID)およびp38キナーゼの阻害薬、米国特許第4,200,750号に開示の4-置換イミダゾ[1,2-A]キノキサリン;細胞表面分子、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD20(例えばリツキサン(登録商標))、CD25、CD30、CD40、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA(例えば、アバタセプト(オレンシア(登録商標))、またはそれらのリガンド(CD154(GP39、もしくはCD40L)を含む)を対象とする抗体もしくは融合タンパク質;ヒトサイトカインもしくは成長因子に対する抗体か、あるいはヒトサイトカインもしくは成長因子の融合タンパク質かまたは可溶性受容体(例えば、インフリキシマブ(レミケード(登録商標))、エタネルセプト(エンブレル(登録商標))、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))といったTNF、LT、Il-1(例えばアナキンラ(キネレット(登録商標))(IL-1受容体アンタゴニスト))、IL-2、IL-4、IL-5、Il-6(例えばCNTO 328(キメラ抗-IL-6抗体))、Il-7、Il-8、Il-12、Il-15、Il-16、Il-17、Il-21、Il-23、例えばウステキヌマブ(ヒト抗-IL-12/23モノクローナル抗体)、ならびにインターフェロン(例えばインターフェロンβ 1a(アボネックス(AVOREX)(登録商標)、REBIF(登録商標))、インターフェロンβ 1b(BETASERON(登録商標));インテグリン受容体アンタゴニスト、例えばタイサブリ(登録商標);高分子剤、例えば酢酸グラチラマー(コパクソン(登録商標));スルファサラジン、メサラミン、ヒドロキシクロロキン、非-ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばサリチル酸塩(アスピリン、サルサラート、およびサリチル酸マグネシウムを含む)および非-サリチル酸塩(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、メロキシカム、セレコキシブおよびロフェコキシブ);抗ウイルス薬、例えばアバカビル;抗増殖薬、例えばメトトレキサート、メルカプトプリン、レフルノミド、シクロスポリン、ミコフェノレート(mycophenololate)、FK506(タクロリムス、プログラフ(登録商標));細胞傷害性薬剤、例えばアザチオプリンおよびシクロホスファミド;核移行阻害剤(nuclear translocation inhibitor)、例えばデオキシスパガリン(DSG);金含有製剤、例えばオーラノフィン(auronofin);ペニシラミン(penicllamine)、およびラパマイシン(シロリムスもしくはラパミューン(登録商標))、あるいはそれらの誘導体が挙げられる。
【0090】
上記の他の治療薬は、本発明の化合物と組み合わせて用いる場合、例えば、Physicians' Desk Reference(PDR)に示される量か、または他に当業者により決定される量で用いられうる。本発明の方法において、そのような他の治療薬は、本発明の化合物より前、同時、または後に投与してもよい。
【0091】
(製造方法)
本発明の化合物は、有機合成の分野の当業者に周知の多くの方法で製造することができる。本発明の化合物は、以下に記載される方法、ならびに有機合成化学の分野で公知の合成方法、あるいは当業者により認められているその改変方法を用いて合成することができる。好ましい方法としては、限定はされないが、以下に記載のものが挙げられる。本明細書中の全ての引用文献は、引用によりその全般が本明細書に援用される。
【0092】
本発明の化合物は、この項に記載の反応および技法を用いて製造されうる。該反応は、用いる試薬および物質に適した溶媒中で実施され、もたらされる変換に適切である。また、以下に記載の合成方法の説明において、提示した反応条件(溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験時間およびワークアップ方法を含む)は全て、該反応の標準である条件となるように選択されていると理解され、それは当業者によって容易に認識されるであろう。分子の様々な部分に存在する官能性が、提示された試薬および反応に適合しなければならないことは、有機合成の分野の当業者により理解される。反応条件に適合する置換基がそのように制限されることは当業者にとっては容易に明白であり、代替方法が用いられなくてはならない。これにより、本発明の目的の化合物を得るために、合成工程の順序を改変する判断か、またはさらに別の1つのプロセススキームを選択する判断が、しばしば必要とされうる。また、この分野のいずれの合成経路の計画における別の主流の判断が、本願に記載の化合物に存在する反応性官能基の保護のために用いられる保護基の賢明な選択であることが認識されるであろう。Greeneら(Protective Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley and Sons (1999))により、熟練した施術者のための多くの別法についての信頼できる説明が記載されている。
【0093】
式(I)の化合物は、以下のスキームにおいて説明される方法を参照することによって、製造されうる。そこに示されるように、最終生成物は、式(I)と同じ構造式を有する化合物である。スキームに従って、試薬を適切に選択して適切に置換することにより、いずれの式(I)の化合物も製造されうることが理解されるであろう。溶媒、温度、圧力、および他の反応条件は、当業者により容易に選択されうる。出発物質は市販されているか、あるいは当業者により容易に製造される。化合物の組成は、この項かまたは明細書の他の部分に記載される通りである。
【0094】
スキーム1に示すとおり、本発明のオキサジアゾール化合物(1.4)は、様々なカップリング試薬(例えば、EDC、HOBt、BOP、BOP-Cl)を用いてカルボン酸(1.1)とN'-ヒドロキシベンズイミドアミド(1.2)を反応させることによって製造されうる。別法として、該N'-ヒドロキシベンズイミドアミドを、酸フルオリド化合物(1.5)もしくは酸クロリド化合物(1.6)と反応させてもよい。各場合において、はじめに形成された該N'-アシルオキシベンズイミドアミド(1.3)は、該反応条件下において、オキサジアゾールに自然に変換しうる。該N'-アシルオキシベンズイミドアミド(1.3)が自然に環化しない場合は、それを単離し、反応条件で処理して、1.4への脱水環化を達成してもよい。そのような条件には、加熱(従来型かマイクロ波のいずれか)、またはフルオリド源(例えばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を用いた処理が含まれうる。
スキーム1
【化4】

【0095】
上記の手段によって酸(1.1)、酸フルオリド(1.5)もしくは酸クロリド(1.6)とN-ヒドロキシアミジン誘導体2.1(例えば(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(2.1.1))を反応させて構造2.2の化合物を製造することを介して、式(I)の化合物を製造してもよい。エステル誘導体(2.2)の脱保護(t-ブチルエステル誘導体の場合は、酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いた処理によって)により、式(I)の化合物を得る。
スキーム2
【化5】

【0096】
別法として、式(I)の化合物はまた、スキーム3に記載の通りに製造されうる。上記の手段によって、酸(1.1)、酸フルオリド(1.5)もしくは酸クロリド(1.6)と(Z)-N'-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)ベンズイミドアミド(3.2)を反応させて、構造3.3の化合物を得ることができ、それを、対応するアルデヒド(3.4)に酸化させた後、アゼチジン-3-カルボン酸(3.5)もしくはアゼチジン-3-カルボキシレートエステル(3.6)を用いた還元的アミノ化を経て、各々、式(I)もしくは2.2の化合物を得ることができる。化合物2.2を、上記のとおり、式(I)の化合物に変換してもよい。ヒドロキシメチル化合物(3.3)をベンジルハライド誘導体(3.8)に変換してもよい。3.8とアゼチジン-3-カルボン酸(3.5)もしくはアゼチジン-3-カルボキシレートエステル(3.6)を反応させて、各々、式(I)もしくは2.2の化合物が得られる。
スキーム3
【化6】

【0097】
tert-ブチル アゼチジン-3-カルボキシレート(3.6.1)は、アゼチジン-3-カルボン酸(3.5)から、アミンを(例えば、CBZ基を用いて)保護した後、カップリング試薬(例えば、CDI)の存在下においてtert-ブチル アルコールを用いて該酸をエステル化し、次いでアミン保護基を除去することにより、製造されうる。(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(2.1.1)は、tert-ブチル アゼチジン-3-カルボキシレート(3.6.1)と4-ホルミルベンゾニトリル(4.2)を還元条件下において反応させて4.3を得た後、ヒドロキシルアミンと反応させることにより、得ることができる。別法として、還元条件下においてアゼチジン-3-カルボン酸(3.5)と4-ホルミルベンゾニトリル(4.2)を反応させることによって得られる4.5をエステル化することにより、化合物4.3を製造してもよい。
スキーム4
【化7】

【0098】
本発明のカルボン酸フラグメント(1.1)は、スキーム5に記載されたものを含む様々な方法により製造されうる。アセト酢酸エステル化合物(5.1)を、例えば、触媒量の酸(例えばパラ-トルエンスルホン酸)の存在下において、各々、オルトギ酸トリエチルもしくはN,N-ジメチルホルムアミド-ジメチルアセタール(DMF-DMA)を用いた反応によって、活性化メチレン誘導体(5.2もしくは5.6)に変換することができる。次いで、様々な溶媒(極性、非-極性、プロトン性、非プロトン性)中で、必要に応じてさらなる塩基の存在下もしくは非存在下において、化合物5.2もしくは5.6を一置換ヒドラジンと反応させて、ピラゾールエステル(5.4)を得ることができる。化合物5.4を、単離することができるか、あるいは対応するピラゾール酸(5.5)に直接、加水分解することができる。
スキーム5
【化8】

【0099】
スキーム5に従って、C5でハロ、アミノ、もしくはアルキルアミノ置換を有するピラゾールを製造することができる。化合物6.1(例えば2-エトキシメチレン-マロノニトリルもしくは2-シアノ-3-エトキシ-アクリル酸エチルエステル)と一置換ヒドラジンとの反応により、該C4位がニトリルもしくはエステルにより置換されているC5-アミノ-ピラゾール 6.2が得られる。tBuONOと臭化銅(II)もしくは塩化銅(II)との反応を介して、該C5-アミノ基のC5-ハロ基への変換を達成することができる。エステルもしくはニトリルのカルボン酸(6.4)への加水分解は、標準的な条件(塩基性もしくは酸性)下において実施することができる。
【0100】
適切な塩基(例えばNaH)の存在下においてアルキルハライド(例えばエチルブロミド)と反応させることによって、アミノピラゾール 6.2をアルキル化することができる。エステルもしくはニトリルの加水分解によって、C5-アルキルアミノ置換ピラゾールカルボン酸(6.6)が得られる。アミノピラゾール(6.7)はまた、カルボニル化合物(6.8)を用いた還元的アミノ化によって修飾されてもよい。
スキーム6
【化9】

(略語)
Ac アセチル
AcOH 酢酸
AIBN アゾビスイソブチロニトリル
aq. 水性(または水溶液)
CDI カルボニルジイミダゾール
CEM CEM Corp., PO Box 200, 3100 Smith Farm Rd, Matthews NC 28106
Biotage Biotage AB, Kungsgatan 76 SE-753 18 Uppsala, Sweden
Bn ベンジル
Boc tert-ブトキシカルボニル
BOP ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウム-ヘキサフルオロホフフェート
BOP-Cl ビス(2-オキソオキサゾリジン-3-イル)ホスフィン酸クロリド
Bu ブチル
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)
DCE 1,2-ジクロロエタン
DMAP N,N-ジメチルピリジン-4-アミン
DMA N,N-ジメチルアセトアミド
DMF ジメチルホルムアミド
DMF-DMA N,N-ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC, EDCI 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
EtOAc 酢酸エチル
Et エチル
Ether ジエチルエーテル
EtOH エタノール
H 水素
h, hr 時間
i イソ
Isco Teledyne Isco, Inc. 4700 Superior St., Lincoln NE 68504
Hex. ヘキサン
HMPA ヘキサメチルホスホルアミド
HOAc 酢酸
HOBt 1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-オール
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
LC 液体クロマトグラフィー
Me メチル
MeOH メタノール
MeOD 重水素化メタノール(CD3OD)
min. 分
M+1 (M+H)+
MS 質量分析
n 規定濃度
Pd/C パラジウム炭素
pet. ether 石油エーテル
Ph フェニル
Pr プロピル
Prep. HPLC 逆相プレパラティブHPLC
PSI ポンド/平方インチ
Ret Time 保持時間
rtまたはRT 室温
sat. 飽和
t 第三級
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMS トリメチルシリル
Phenomenex Phenomenex, Macclesfield, Cheshire, UK
YMC YMC, Inc, Wilmington, NC 20403
【実施例】
【0101】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施態様を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。化学的な略語および記号ならびに科学的な略語および記号は、他に特別の定めのない限り、それらの通常および慣習の意味を有する。本明細書の実施例および他の部分で用いられるさらなる略語は、上記されている。共通中間体は、通常、1つ以上の実施例の製造に有用であり、中間体1、中間体2などのように連続的に識別され、Int.1、Int.2などのように省略される。場合によって、共通中間体の製造には、製造するために複数の工程が必要とされうる。各工程は、共通中間体および工程により特定される(例えば、Int.1-A、Int.1-B、その他)。実施例の化合物は、それが製造される実施例および工程(例えば、「1-A」は実施例1,工程Aを示す)によってか、あるいは、該化合物が実施例の表題の化合物である場合は実施例のみ(例えば、「1」は実施例1の表題の化合物を示す)によって特定される。場合によっては、中間体もしくは実施例の別の製法が記載される。合成の分野に熟練した化学者によって、1つ以上の検討事項、例えば、より短い反応時間、より安価な出発物質、操作の容易さ、触媒作用の受けやすさ、有害な試薬の回避、特定の機器使用のアクセス性、および直線的な工程数の減少、などに基づく望ましい別の製法が、しばしば考案されうる。別の製法を記載する意図は、本発明の実施例の製造をさらに可能にすることである。
【0102】
マイクロ波オーブン(microwave oven)で実施することを明記している実験は、SmithSynthesizerオーブン(Personal Chemistry製)かまたはDiscoverマイクロ波オーブン(CEM社製)において実施した。該マイクロ波オーブンは、60〜250℃の間で選択することができる温度を発生させる。該マイクロ波オーブンは、0〜300 PSIの圧力を自動的にモニターする。反応ホールド時間および温度設定値がレポートされる。
【0103】
中間体1(Int.1)の製造
(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)-ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化10】

Int.1-A. 1-(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン-3-カルボン酸
【化11】

水(1.75 L)中のアゼチジン-3-カルボン酸(88 g, 0.871 mol)および炭酸水素ナトリウム(161 g, 1.92 mol)の溶液に、室温にて、ベンジル 2,5-ジオキソピロリジン-1-イルカーボネート(239 g, 0.959 mol)/テトラヒドロフラン(3.5 L)溶液を加えた。該反応混合液を、終夜、室温にて撹拌した。溶媒を減圧下において除去し、水層を酢酸エチル(2 x 500 mL)で洗浄した。該水層を、1.0 N 塩酸水溶液を用いて酸性化した後、酢酸エチル(3 x 750 mL)で抽出した。有機層を、水、続いて食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下において濃縮して、1-(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン-3-カルボン酸を、無色の油状物として得た(202 g, 99%収率)。該化合物は、HPLC 保持時間 = 2.27分であった - カラム: YMC COMBISCREEN(登録商標) ODS-A 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA。 LC/MS M+1 = 236.15. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 3.39 - 3.49 (m, 1H), 4.22 (d, J=7.28 Hz, 4H), 5.11 (s, 2H), および 7.29 - 7.39 (m, 5H).
【0104】
Int.1-B. 1-ベンジル 3-tert-ブチル アゼチジン-1,3-ジカルボキシレート
【化12】

1-(ベンジルオキシカルボニル)アゼチジン-3-カルボン酸(200 g, 0.851 mol)/ジクロロメタン(6.0 L)溶液に、0℃にて、t-ブタノール(158 g, 2.13 mol)、DMAP(52.0 g, 0.425 mol)、およびEDCI(163 g, 0.853 mol)を加えた。該反応液を室温で終夜撹拌した。該反応混合液を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解させた。有機層を、10%クエン酸水溶液、10%炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下において濃縮し、1-ベンジル-3-tert ブチル-アゼチジン-1,3-ジカルボキシレート(200 g, 81%収率)を無色の油状物として得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 3.27分であった - カラム: YMC COMBISCREEN(登録商標) ODS-A 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA。 LC/MS M+1 = 292.15. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.46 (s, 9H), 3.24 - 3.33 (m, 1H), 4.14 (d, J=7.53 Hz, 4H), 5.10 (s, 2H), および 7.30 - 7.39 (m, 5H).
【0105】
Int.1-C. tert-ブチル アゼチジン-3-カルボキシレート
【化13】

酢酸エチル(1.40 L)中の1-ベンジル-3-tert-ブチル-アゼチジン-1,3-ジカルボキシレート(140 g, 0.480 mol)および10%パラジウム炭素(28.0 g)の混合液を、終夜、3.0kg/cm2の水素圧下のオートクレーブ中に入れた。該反応混合液を、セライト(登録商標)を通して濾過し、該セライト(登録商標)ベッドを酢酸エチルで洗浄した。酢酸(28.9 g, 0.480 mol)を該濾液に加え、それを、温度を50℃以下に維持しながら減圧下において濃縮して、tert-ブチル アゼチジン-3-カルボキシレート酢酸塩(96 g, 92%収率)を無色の油状物として得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.47 (s, 9H), 2.02 (s, 3H), 3.52 - 3.63 (m, 1H), および 4.00 - 4.10 (m, 4H).
【0106】
Int.1-D. tert-ブチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化14】

tert-ブチル アゼチジン-3-カルボキシレート酢酸塩(92.0 g, 0.423 mol)/メタノール(1.0 L)溶液に、室温にて、4-ホルミルベンゾニトリル(50.8 g, 0.381 mol)を加えた。該反応混合液を0℃に冷却し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(28.8 g, 0.458 mol)を少しずつ加えた(注意:シアン化物が産生される可能性あり)。該反応混合液を、室温に昇温させ、終夜撹拌を続けた。該反応混合液を減圧下において濃縮した後、残渣を10%炭酸水素ナトリウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を集め、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下において濃縮した後、20%酢酸エチル/石油エーテルを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、tert-ブチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(89%)を得た(クロマトグラフィー後、Int.1-Dは少量の4-ヒドロキシメチルベンゾニトリルを含んでいたが、さらなる精製は行わずに次の工程に進めた)。 LC/MS M+1 = 273.18. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.46 (s, 9H), 3.22 - 3.31 (m, 3H), 3.48 - 3.56 (m, 2H), 3.66 (s, 2H), 7.39 (d, J=8.28 Hz, 2H), および 7.60 (d, J=8.28 Hz, 2H).
【0107】
Int.1. (Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレートの製造
【化15】

tert-ブチル-1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(89.0 g, 0.326 mol)/tert-ブタノール(1.30 L)に、炭酸水素ナトリウム(109.8 g, 1.31 mol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(45.5 g, 0.654 mol)を加えた。該反応液を、7時間還流加熱した後、室温まで冷却し、終夜撹拌した。該反応混合液を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を集め、水で洗浄し、食塩水で洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮した後、溶離液として0.2%トリエチルアミンを含有する2.5%メタノール/クロロホルムを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレートを得た(64 g, 0.210 mol, 2工程で55%収率)。該化合物は、HPLC 保持時間 = 7.03分であった - カラム: XBridge フェニル 150x4.6 mm 3.5u, SC/749. 1mL/分 溶媒A = 5%MeCN, 95%H2O, 0.05%TFA; 溶媒B = 95%MeCN, 5%H2O, 0.05%TFA. 時間/%B: 0分/0%, 15分/50%, 18分/100%, 20分/100%。 LC/MS M+1 = 306.2. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.45 (s, 9H), 3.23 - 3.30 (m, 3H), 3.49 - 3.57 (m, 2H), 3.63 (s, 2H), 4.85 (s, 2H), 7.31 (d, J=8.28 Hz, 2H), および 7.57 (d, J=8.28 Hz, 2H).
【0108】
Int.1-D: tert-ブチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレートの別の製造
【化16】

Int. 1-E. 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
【化17】

ジクロロメタン(20 mL)およびメタノール(80 mL)中の4-ホルミルベンゾニトリル(2.88 g, 22.0 mmol)、アゼチジン-3-カルボン酸(2.02 g, 20 mmol)、および酢酸(1.15 mL, 20.0 mmol)の混合液を、室温で1時間撹拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(6.78 g, 32.0 mmol)を加え、室温で18時間撹拌を続けた。揮発性物質を減圧下において除去し、残渣を水(50 mL)およびジエチルエーテル(50 mL)間に分配した。水層を集め、ジエチルエーテル(50 mL)で洗浄し、濃縮した。残渣を水(20 mL)に溶解させ、2.5 x 20 cm HP-20カラムにロードした[HP-20ゲルの調製:〜400 mlの乾燥した未使用のMCI CHP-20ゲル(75-150ミクロン)を、24時間、メタノールで膨潤させた。該ゲルを、濾過し、1リットルのメタノールですすいだ。次いでそれを、メタノール下にて保存用ボトルに移した。使用の直前に、目的の量のゲルを20容積の水で十分にすすいだ]。カラムを、240 mLの水および400 mLのメタノールで溶出した。画分を含む生成物を濃縮し、エタノールおよび酢酸エチル/ヘプタンから共エバポレートして、1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(3.25 g, 15.0 mmol, 75%収率)を白色の固形物として得た。 MS:(M+H) = 217.18. 1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 3.39 (m, 1H), 4.08 (m, 4H), 4.32 (s, 2H), 7.63 (d, J= 8.3 Hz, 2H), および 7.82 (d, J= 8.3 Hz, 2H).
【0109】
Int.1-Alt.D2. tert-ブチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化18】

ジクロロエタン(150 mL)中の1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(3.25 g, 15.0 mmol)、DMAP(1.84 g, 15.0 mmol)、およびtert-ブタノール(14.1 mL, 150 mmol)の混合液に、EDCI(4.32 g, 22.5 mmol)を加え、該反応混合液を週末にかけて撹拌した。The 揮発性物質を減圧下において除去し、残渣を、酢酸エチル(250 mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(250 mL)間に分配した。有機層を、水(250 mL)で洗浄し、食塩水(100 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下において濃縮し、薄黄色の油状物を得て、それを、5 x 15 cm シリカゲルカラム(0-40%酢酸エチル/ヘキサングラジエントで溶出)でクロマトグラフィー処理し、tert-ブチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(3.5 g, 12.9 mmol, 86%収率)を無色の液状物として得た。4分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.2%リン酸のグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 1.38分 - カラム: YMC-Combi 4.6 x 50 mm S-5 ODS カラム)。 MS:(M+H) = 273.18. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.46 (s, 9H), 3.26 (m, 3H), 3.52 (m, 2H), 3.66 (s, 2H), 7.39 (d, J= 8.3 Hz, 2H), および 7.60 (d, J= 8.3 Hz, 2H).
【0110】
中間体2(Int.2)の製造
N'-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)ベンズイミドアミド
【化19】

メタノール(250 mL)中の4-(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリル(22.43g, 0.1685g)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(18.67g, 0.2689 mol)およびNaHCO3(45.22g, 0.538 mol)の溶液を、終夜、還流加熱した。冷却後、該不均一な混合液を濾過し、固形物をさらなるメタノールで洗浄した。該濾液を乾固するまでエバポレートして、オフホワイト色の固形物を得た。該固形物を〜75 mLの温メタノール中に懸濁させた後、室温まで冷却し、濾過した。該濾液をエバポレートして、N'-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)ベンズイミドアミド(28.5g)を白色の固形物として得た。該物質を、さらなる精製は行わずに用いた。該化合物は、HPLC 保持時間 = 0.232分であった - カラム: CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4。 LC/MS M+1 = 167.3
【0111】
中間体3(Int.3)の製造
(Z)-メチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化20】

Int.3-A. メチル アゼチジン-3-カルボキシレート, HCl
【化21】

予め0℃に冷却したメタノール(5 mL)に、塩化アセチル(0.852 mL, 11.99 mmol)を加えた。0℃で5分撹拌した後、該反応混合液を室温まで昇温させた。その後、アゼチジン-3-カルボン酸(404 mg, 4.00 mmol)を加え、該反応混合液を2.5時間還流した。室温まで冷却した後、揮発性物質を減圧除去し、残渣を乾燥させて、メチル アゼチジン-3-カルボキシレート, HCl(600 mg, 3.96 mmol)を白色の固形物として得た。 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 3.77 (m, 1H) 3.81 (s, 3H) 4.22-4.33 (m, 4H).
【0112】
Int.3-B. メチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート:
【化22】

DCE(15 mL)中の4-ホルミルベンゾニトリル(510 mg, 3.89 mmol)、メチル アゼチジン-3-カルボキシレート(590 mg, 3.89 mmol)、酢酸(0.245 mL, 4.28 mmol)および〜1 gmの粉末状の4オングストロームのモレキュラーシーブスの混合液を、室温で1時間、活発に撹拌した。その後、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(907 mg, 4.28 mmol)を加え、該反応混合液を室温で2時間撹拌した。焼結ガラス漏斗を通して濾過した後、該濾液を濃縮して残渣を得て、それをEtOAc(50 mL)および飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50 mL)間に分配した。有機層を、食塩水(50 mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濃縮し、無色の油状物を得て、それを12 gmのIscoシリカゲルカートリッジ(0-100%EtOAc/Hexグラジエントで溶出)でクロマトグラフィー処理した。本質的に純粋な画分を濃縮して、メチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(765 mg, 3.32 mmol)を得た。2分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.1%TFAのグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 0.49分[ブロードのピーク](PHENOMENEX(登録商標) Luna 4.6 x 30 mm S-5 ODS カラム)。 MS:(M+H)= 231.23。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 3.32-3.36 (m, 3H) 3.49-3.58 (m, 2H) 3.67 (s, 2H) 3.72 (s, 3H), 7.39 (d, J= 8.6 Hz, 2H) 7.60 (d, J= 8.3 Hz, 2H).
【0113】
Int.3-C. (Z)-メチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
MeOH(4.9 mL)中のメチル 1-(4-シアノベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(760 mg, 3.30 mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(459 mg, 6.60 mmol)および炭酸水素ナトリウム(1109 mg, 13.20 mmol)の混合液を、2.5時間、還流加熱した。室温まで冷却した後、該反応混合液を濾過し、濾液を濃縮して残渣を得て、それをEtOAc(75 mL)および水(50 mL)間に分配した。水層をEtOAc(75 mL)で抽出し、有機層を合わせて乾燥させ(MgSO4)、濃縮して、(Z)-メチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(470 mg, 1.785 mmol)を無色の泡状物質として得た。 MS:(M+H)= 264.28. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 3.30-3.39 (m, 3H) 3.54 (m, 2H) 3.64 (s, 2H) 3.71 (s, 3H) 4.86 (brs, 2H) 7.31 (d, J= 8.3 Hz, 2H) 7.57 (d, J= 8.3 Hz, 2H).
【0114】
中間体4(Int.4)の製造
5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
【化23】

Int.4-A. エチル 5-アミノ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化24】

2-ヒドラジノピリジン(4.84 g, 44.3 mmol)、エチル (エトキシメチレン)シアノアセテート(5 g, 29.6 mmol)およびEt3N(12.36 mL, 89 mmol)の混合液を、80℃で30分間加熱した。該反応混合液を濃縮し、CH2Cl2/EtOAcを用いてシリカゲルカラムで精製し、エチル 5-アミノ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(5.97g, 25.7 mmol)を得た。HPLC 保持時間=2.856分. HPLC: カラム: YMC S5 COMBISCREEN(登録商標) 4.6x50 mm; グラジエント時間: 4分; 流速 = 4 mL/分; 溶媒A = 10%MeOH-90%水-0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH-10%水-0.2%H3PO4; 開始%B = 0; 最終%B = 100. LC-MS: M+1 = 233.1. 1H NMR (500 MHz, メタノール-d3) δ ppm 8.44 (1 H, ddd, J=4.95, 1.92, 0.82 Hz), 7.92 - 7.96 (1 H, m), 7.87 - 7.90 (1 H, m), 7.74 (1 H, s), 7.27 (1 H, ddd, J=7.22, 5.02, 1.24 Hz), 4.29 (2 H, q, J=7.15 Hz), 1.35 (3 H, t, J=7.15 Hz).
【0115】
Int.4-B. エチル 5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化25】

メソッド1:1,2-ジクロロエタン(8 mL)中のエチル 5-アミノ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(200 mg, 0.861 mmol)および塩化銅(II)(116 mg, 0.861 mmol)の溶液に、亜硝酸tert-ブチル(0.154 mL, 1.292 mmol)を加えた。該反応混合液を室温で16時間撹拌した。該反応混合液を、30 mLのジクロロメタンで希釈し、10 mLの2M NH4OH溶液、10 mLの食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。濾過し、濃縮して、粗生成物を得て、それをシリカゲルカラム(ヘキサン/EtOAcで溶出)で精製して、エチル 5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレートを得た。
【0116】
メソッド2:ジクロロメタン(8 mL)中のエチル 5-アミノ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(200 mg, 0.861 mmol)および1-クロロピロリジン-2,5-ジオン(172 mg, 1.292 mmol)の溶液に、亜硝酸tert-ブチル(0.154 mL, 1.292 mmol)を加えた。該反応混合液を室温で30分間撹拌した後、濃縮して粗生成物を得て、それをシリカゲルカラム(ヘキサン/EtOAcで溶出)で精製し、エチル 5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレートを得た。メソッド1およびメソッド2からの物質を合わせた(106 mg, 0.42 mmol)。HPLC 保持時間 =2.50分. HPLC: カラム: YMC S5 COMBISCREEN(登録商標) 4.6x50 mm; グラジエント時間: 4分; 流速 = 4 mL/分; 溶媒A = 10%MeOH-90%水-0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH-10%水-0.2%H3PO4; 開始%B = 0; 最終%B = 100. LC-MS: M+1 = 252.1. 1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 8.61 (1 H, dd, J=4.89, 1.13 Hz), 8.16 (1 H, s), 8.09 (1 H, td, J=7.78, 1.76 Hz), 7.74 (1 H, d, J=8.03 Hz), 7.57 (1 H, ddd, J=7.53, 4.77, 1.00 Hz), 4.36 (2 H, q, J=7.28 Hz), 1.38 (3 H, t, J=7.15 Hz).
【0117】
Int.4-C. 5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
EtOH(3.5 mL)中のエチル 5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(106 mg, 0.421 mmol)およびNaOHの1N溶液(.632 mL, 0.632 mmol)の溶液を、15分間、マイクロ波照射下において100℃まで加熱した。該反応混合液を減圧濃縮し、残渣を5 mLの水で希釈した後、1N HCl溶液を用いて約pH 3まで酸性化した。5分間撹拌した後、該固形物を5-クロロ-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(39.6mg, 0.177 mmol)として集めた。HPLC 保持時間=1.67分. HPLC: カラム: YMC S5 COMBISCREEN(登録商標) 4.6X50 mm; グラジエント時間: 4分; 流速 = 4 mL/分; 溶媒A = 10%MeOH-90%水-0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH-10%水-0.2%H3PO4; 開始%B = 0; 最終%B = 100. LC-MS: LCMS: M+1= 224.1.
【0118】
中間体5(Int.5)の製造
5-(エチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
【化26】

エチル 5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(10 g, 43 mmol)/DMF(100 mL)溶液に、0℃にて、水素化ナトリウム(60%分散, 1.9 g, 47.6 mmol)をゆっくりと加えた。気体の発生が停止した後、ブロモエタン(3.55mL, 47.6 mmol)を滴下した。該反応液を0℃で2時間撹拌した後、徐々に室温まで昇温させた。該反応液に水を加えて沈殿物の形成をもたらし、それを濾過により集めて次の工程にそのまま用いた。そのようにして得た物質を、3N NaOH(38 mL)とともにEtOH(50 mL)中に溶解させ、該溶液を終夜、還流加熱した。該反応液を0℃まで冷却し、1N HClを用いてpHを3〜4の間にゆっくりと調整した。得られた白色の沈殿物を濾過により集め、アセトニトリルから再結晶化させて、5-(エチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(6.6 g, 28.6 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 2.32分であった。 CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4. LC/MS M+1 = 232.3. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.89 (t, J=7.2 Hz, 3H), 2.77 (m, 2H), 6.14 (br. s, 1H), 7.43 (m, 1H), 7.52 (m, 4H), 7.72 (s 1H).
【0119】
中間体6(Int.6)の製造
(Z)-4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-N'-ヒドロキシベンズイミドアミド
【化27】

Int.6-A. 4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンゾニトリル
【化28】

トルエン(100 mL)中の4-ホルミルベンゾニトリル(10g, 76.3 mmol)、エチレングリコール(18.95g, 305 mmol)およびp-トルエンスルホン酸(7 mg, 0.003 mmol)の溶液を、9時間、還流加熱した。この間中、該反応の間に生じた水を、ディーン・スタークトラップを用いて除去した。該反応液に、Na2CO3水溶液(150 mL)を加えた。有機層を水(100 mL)で2回洗浄した後、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンゾニトリル(12 g, 68 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 4.24分であった - カラム: HYPERSIL(登録商標) BDS C18 (4.6 x 50 mm) 流速 = 0.8 mL/分 溶媒A =, 0.1%TFA/水; 溶媒B = アセトニトリル. 5%-100%B(0-6分), 100%B(6-9分), 100%-5%B(9-11分)。
【0120】
Int.6-B. (Z)-4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-N'-ヒドロキシベンズイミドアミド
MeOH(100 mL)中の4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンゾニトリル(16.4 g, 93.6 mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(9.76 g, 140 mmol)および炭酸水素ナトリウム(15.7 g, 187 mmol)の混合液を、4時間、還流加熱した。室温まで冷却した後、該反応混合液を濾過し、濾液を濃縮して固形物を得て、それを濾過により集め、冷メタノールで洗浄して、(Z)-4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-N'-ヒドロキシベンズイミドアミド(16g, 76.8 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 0.38分であった - CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 30 mm。 流速 = 5mL/分(2分グラジエント); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA. LC/MS M+1 = 209.2
【0121】
実施例1
1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)イソオキサゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
【化29】

1-A. エチル 1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
【化30】

窒素下の2-ヒドラジノピリジン(5 g, 45.8 mmol)THF(200 mL)溶液を、ドライアイス/イソプロパノール浴中で、-34℃まで冷却した。(Z)-エチル 2-(エトキシメチレン)-4,4,4-トリフルオロ-3-オキソブタノエート(11 g, 45.8 mmol)/THF(73 mL)溶液を、窒素フラッシュしながら、25分かけてゆっくりとした流れで加えた。添加の間、該内部反応温度は平均すると-34℃であり、決して-31℃を上回らなかった。添加の完了後、-33.5℃で〜40分間撹拌を続けた。さらなる(Z)-エチル 2-(エトキシメチレン)-4,4,4-トリフルオロ-3-オキソブタノエート(0.89 mL, 0.10当量)を加え、11分間、-30℃で撹拌を続けた。EtOAc(270 mL)を、飽和NaHCO3水溶液(250 mL)および食塩水(20 mL)とともに加えた。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3水溶液、食塩水で洗浄した後、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮して、オレンジ色で粘稠性の油状物を得た。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、エチル 1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(10.62 g)を黄色の固形物として得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 2.5分であった - カラム: YMC COMBISCREEN(登録商標) ODS-A 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA。 LC/MS M+1 = 286.1.
【0122】
1-B. 1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
【化31】

エチル 1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(8.7g, 30.5 mmol)/エタノール(2 mL)溶液に、3 N NaOH(30.5 mL, 92 mmol)を加えた。該反応液を室温で1時間撹拌した後、溶媒をエバポレートし、3N HCl水溶液を加えた。得られた固形物を濾過により集め、1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(5.58g, 21.7 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 2.0分であった - カラム: PHENOMENEX(登録商標) Luna 5u C18 4.6 x 30 mm (2分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA。 LC/MS M+1 = 258.1.
【0123】
1-C. (4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール
【化32】

1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(2.57g, 9.99 mmol)/DMF(30mL)溶液に、EDC(2.395 g, 12.49 mmol)、HOBt(1.913 g, 12.49 mmol)およびヒューニッヒ塩基(5.24 mL, 30.0 mmol)を加えた。該反応液を室温で40分間撹拌した後、N-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)ベンズイミドアミド, Int.2, (2.076 g, 12.49 mmol)を加えた。該反応混合液を室温で7時間撹拌した後、さらなるEDC(2.395 g, 12.49 mmol)、HOBt(1.913 g, 12.49 mmol)およびヒューニッヒ塩基(5.24 mL, 30.0 mmol)を加えた。該反応液を、60℃で2時間、次いで110℃で10分間加熱した。1N HCl水溶液を加えてpHを1に調整した後、30 mLの水を加えた。得られた沈殿生成物を濾過により集め、水で洗浄して、(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール(2.28g, 5.83 mmol, 58%)を薄黄色の固形物として得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 3.37分であった - カラム: CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4。 LC/MS M+1 = 388.0 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 4.61 (d, J = 6 Hz, 2H), 5.39 (t, J = 6 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H,), 7.70 (ddd, J = 0.9 Hz, 4.8 Hz, 7.5 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.20 (dt, J = 2.2 Hz, 7.5 Hz, 1H), 8.67 (dd, J = 1.3 Hz, 4.8 Hz, 1 H), 8.73 (s, 1H).
【0124】
1-D. 4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド
【化33】

300 mLのDCMを-78℃まで冷却した後、オキサリルクロリド(0.475 mL, 5.42 mmol)を加え、該混合液を-78℃で10分間撹拌した。DMSO(0.586 mL, 8.26 mmol)を加え、該混合液を-78℃で15分間撹拌した。60 mLのDCM中の(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール(1 g, 2.58 mmol)の溶液を該反応混合液に10分かけて滴下し、該SMフラスコを別の10 mLのDCMですすぎ、それもまた該反応液に滴下した。該反応液を40分間-78℃で維持した後、ヒューニッヒ塩基(3.61 mL, 20.66 mmol)を10分かけて加えた。-78℃で10分間撹拌を続けた後、ドライアイス浴を外し、該反応フラスコを徐々に室温に昇温させた。0.5N KHSO4溶液(70 mL)を加え、該混合液をDCM(50mL)で2回抽出した。有機物を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。ジエチルエーテル(100mL)を該生成物に加え、該混合液を終夜撹拌し、次いで濾過し、該固形物をジエチルエーテルで洗浄して、4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(700 mg, 1.74 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 3.69分であった - カラム: CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4。 LC/MS M+1 = 386.01. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.69 (ddd, J = 0.8 Hz, 5.0 Hz, 7.4 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.15 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 8.20 (dt, J = 1.9 Hz, 7.7 Hz, 1H), 8.32 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 8.67 (dd, J = 1.9 Hz, 4.7 Hz, 1 H), 8.76 (s, 1H), 10.13 (s, 1H)
【0125】
1-E. 1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸の製造
4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(1.0 g, 2.60 mmol)/DCM(10 mL)溶液に、酢酸(15 mL)およびアゼチジン-3-カルボン酸(1.5当量, 3.90 mmol)を加えた。該混合液を室温で40分間撹拌した後、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1当量, 2.60 mmol)/DCM(30 mL)懸濁液を1.5時間かけて滴下した。揮発性物質を減圧除去し、水(200mL)を加えて、得られた固形物を濾過により集めた。該粗生成物に酢酸エチル(40 mL)を加え、30分間超音波処理した後、該固形物を濾過により集め、さらなる酢酸エチルで洗浄して、1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(777 mg, 1.65 mmol)を白色の固形物として得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 2.55分であった。カラム: CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4. LC/MS M+1 = 471.05. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.21-3.25 (m, 3H), 3.40-3.44 (m, 2H), 3.64 (s, 2H), 7.51 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.69 (ddd, J = 0.8 Hz, 4.7 Hz, 8.3 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 8.20 (dt, J = 1.9 Hz, 7.7 Hz, 1H), 8.66 (dd, J = 1.1 Hz, 4.1 Hz, 1 H) 8.73 (s, 1H).
【0126】
実施例1(Alt.1)の別の製造
Alt.1-A. 3-(4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール
【化34】

1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(31.46 g, 122 mmol)/DMF(200 mL)溶液に、EDCI(23.34 g, 134 mmol)およびHOBt(16.53 g, 122 mmol)を加えた。該反応液を室温で30分間撹拌した後、4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ベンゾニトリル, Int.6-A, (16.53 g, 122 mmol)を加えた。該反応混合液を140℃で4時間撹拌した。該反応混合液を減圧下において濃縮し、揮発性物質を除去した。残渣を水および酢酸エチル間に分配し、有機層をHCl水溶液、NaHCO3溶液、水、および食塩水で洗浄し、その後、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、3-(4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(25 g, 58 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 6.15分であった - カラム: HYPERSIL(登録商標) BDS C18 (4.6 x 50 mm) 流速 = 0.8 mL/分 溶媒A =, 0.1%TFA/水; 溶媒B = アセトニトリル. 5%-100%B(0-6分), 100%B(6-9分), 100%-5%B(9-11分). LC/MS M+1 = 430.0.
【0127】
1-D. 4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒドの別の製造
【化35】

THF/水(500 mL/500 mL)中の3-(4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)フェニル)-5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(25 g, 58.2 mmol)および濃HCl(500 mL)の溶液を、室温で3時間撹拌した。該反応の完了後(TLCによる測定として)、該反応混合液を、水で希釈し酢酸エチルで抽出した。有機層を水および食塩水で洗浄した後、乾燥させて減圧下において濃縮し、4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(19 g, 49 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 1.90分であった - CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 30 mm. 流速 = 5mL/分(2分 グラジエント); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA。 LC/MS M+1 = 386.2.
【0128】
実施例1. 1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸の別の製造
エタノール(750 mL)および酢酸(20 mL)中の4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(21 g, 54.5 mmol)およびアゼチジン-3-カルボン酸(6.61 g, 65.4 mmol)の溶液を、室温で30分間撹拌した。該反応液を0℃まで冷却し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(注:潜在的なシアン化物生成源)(1.17 g, 27.3 mmol)/エタノール溶液をゆっくりと加えた。該反応液を室温まで昇温させ、終夜撹拌した。該反応混合液を減圧下において濃縮し、残渣を水で希釈した。該固形物を濾過により集め、水で洗浄した。該生成物を、DCM:メタノール(98:2)、DCM:メタノール(96:4)および酢酸エチルで、各々一回、トリチュレートすることによって精製し、1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(16g, 34 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 8.48分であった - カラム: XbridgeA 4.6 x 150 mm 流速 = 1.0 mL/分。 バッファー = 0.05%TFA/水 pH2.5. 溶媒A = バッファー:アセトニトリル(95:5), 溶媒B = アセトニトリル:バッファー(95:5). 12分にわたる0-100%B. LC/MS M+1 = 471.2.
【0129】
実施例2
1-(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
【化36】

2-A. (4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール
【化37】

1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(2g, 7.81 mmol)、HOBT(1.315 g, 8.59 mmol)およびEDC(1.646 g, 8.59 mmol)を、室温にて、窒素下において、DMF(18 mL)中に溶解させた。得られた澄明で淡黄色の溶液を20分間撹拌した後、N-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)ベンズイミドアミド, Int.2, (1.297 g, 7.81 mmol)を数回に分けて加えた。該反応液を、予め140℃に加熱した油浴中に10時間置いた。該反応液を室温まで冷却し、水(150 mL)に注ぎ入れ、激しく撹拌し、超音波処理槽の中に1時間置いた。該固形物を濾過により集め、水で洗浄し、風乾させた後、減圧下に置いて、(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール(2.5g, 6.47 mmol)を、非常に薄い黄色の固形物として得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 3.76分であった - カラム: CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4。 LC/MS M+1 = 387.1 1H NMR (500 MHz, MeOD) δ ppm 4.70 (s, 2H), 7.53-7.57 (m, 4 H), 7.57-7.62 (m, 1H), 7.61 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.12 (d, J =8.2 Hz, 2H), 8.48 (s, 1H).
【0130】
2-B. 4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド
【化38】

50 mL 丸底フラスコを、炎で乾燥させ、乾燥窒素気流下において冷却した。DCM(25 mL)、続いてオキサリルクロリド(6.79 mL, 13.59 mmol)(2M/DCM)を該フラスコに加え、それをアセトン/ドライアイス浴中で冷却した。ジメチルスルホキシド(1.47 mL, 20.71 mmol)を滴下した。10分後、(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール(2.5 g, 6.47 mmol)を、5-10分かけて少しずつ加え、淡黄色のスラリーを得た。5分間撹拌した後、DIPEA(9.27 mL, 53.1 mmol)を滴下した。濁った混合液は澄明になり始めたが、その後、添加の過程において、色が淡黄色からオフホワイト色に薄くなるとともに、再び濁った。5分後、冷却浴を取り外し、該反応液をゆっくりと室温に昇温させた。室温で3時間撹拌した後、溶媒をエバポレートし、残渣をEtOAc(100 mL)および0.5N KHSO4(70 mL)間に分配した。EtOAc相を、各50 mLの1N HCl、水、飽和NaHCO3水溶液、水、および食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥させ、濾過し、エバポレートした。該固形物を、超音波処理および加熱によって、ヘキサン(〜5%EtOAc含有)中においてスラリーにした後、室温まで冷却し、濾過した。該固形物をヘキサンで洗浄し、風乾させ、減圧下に置いて、4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(1.55g)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 2.04分であった - カラム: PHENOMENEX(登録商標) Luna 5u C18 4.6 x 30 mm (2分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.1%TFA; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.1%TFA. LC/MS M+1 = 385.17.
【0131】
2-C. 1-(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸の製造
MeOH(12 mL)および1,2-ジクロロエタン(3 mL)中の4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(700 mg, 1.821 mmol)の溶液に、0.1mLの酢酸およびアゼチジン-3-カルボン酸(203 mg, 2.0 mmol)を加えた。該混合液を室温で40分間撹拌した後、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(618 mg, 2.91 mmol)を加えた。該混合液を、室温で5時間撹拌した後、濾過し、白色の固形物を得て、それを水(1mL)およびMeOH(3 x 1mL)で洗浄した。該固形物を減圧下において乾燥させ、1-(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(480mg, 1.02 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 6.91分であった - カラム: Low pH Col-1: Sunfire C18 3.5um, 4.6x150mm; 開始%B = 10; 12分. 100%; 15分. 100%; 流速 = 2 mL/分; 波長1 = 220; 波長2 = 254; 溶媒ペアー = TFA - MeCN/H2O; 溶媒A = 0.05%TFA/H2O:MeCN(95:5); 溶媒B = 0.05%TFA/H2O:MeCN(5:95); カラム1 = LOW pH - Parallel HPLC; 220nmにて LC/MS M+1 = 470.1 1H NMR (500 MHz, MeOD) δ ppm 3.41 (dt, J= 8.8 Hz, 7.7 Hz, 1H), 4.12-4.18 (m, 4H), 4.38 (s, 2H), 7.57-7.66 (m, 7H), 8.23 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 8.50 (s, 1H).
【0132】
表1
表1中の化合物は、上記実施例と同様の方法で、対応するピラゾールカルボン酸とInt.2を反応させ、1-Cについて記載されたとおり合成することにより、製造された。必要なピラゾールカルボン酸は、市販されている(実施例5、実施例6、および実施例11の場合のように)か、あるいは1-Aの製造についての記載と同様の縮合により、対応するヒドラジン(全て市販されている)と、必要なβケトエステルとDMFジメチルアセタールの縮合生成物(実施例7の場合はtert-ブチル 3-シクロペンチル-3-オキソプロパノエート、実施例9の場合はエチル 2-アセトアセテート、実施例10の場合はエチル 3-オキソ-3-フェニルプロパノエート)とから、製造された。実施例3についてのピラゾールカルボキシレートは、Int.5について記載された方法と同様の方法において、エチルアミンの代わりにイソプロピルアミンを用いて、製造された。実施例8についてのピラゾールカルボキシレートは、2-フルオロ-6-ヒドラジニルピリジンと(Z)-エチル 2-(エトキシメチレン)-4,4,4-トリフルオロ-3-オキソブタノエートとの縮合により製造された。
【化39】

【表1】


【表2】

【0133】
実施例12
1-(4-(5-(5-(イソブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
【化40】

12-A. (4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール
【化41】

5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(1.8 g, 8.86 mmol)、HOBt(1.357 g, 8.86 mmol)およびEDCI(1.698 g, 8.86 mmol)を、窒素下において室温で、DMF(12 mL)に溶解させた。得られた澄明で淡黄色の溶液を30分間撹拌した後、N-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)ベンズイミドアミド(1.472 g, 8.86 mmol)を数回に分けて加えた。該反応液を、130℃に設定した油浴中に置いた。4時間後、該溶液を室温に冷却し、次いで急速撹拌中の水(50mL)に加えた。初期の沈殿物を撹拌し、超音波処理して、黄色の固形物を得て、それを濾過により集め、水で洗浄し、風乾させた後、減圧下で乾燥させて、(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール(1.5g 4.05 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 3.19分であった。 カラム: CHROMOLITH(登録商標) SpeedROD 4.6 x 50 mm (4分); 溶媒A = 10%MeOH, 90%H2O, 0.2%H3PO4; 溶媒B = 90%MeOH, 10%H2O, 0.2%H3PO4. LC/MS M+1 = 334.2 1H NMR (500 MHz, MeOD) δ ppm 3.34 (s, 2H), 7.53-7.57 (m, 4 H), 7.57-7.62 (m, 1H), 7.61 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.12 (d, J =8.2 Hz, 2H), 8.48 (s, 1H).
【0134】
12-B. 4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド
【化42】

50 mLのRBフラスコを炎で乾燥させ、乾燥窒素気流下において冷却した。DCM(10 mL)、続いてオキサリルクロリド(2M/DCM, 0.882 mL, 1.764 mmol)を該フラスコに加え、それをアセトン/ドライアイス浴中で冷却した。DMSO(0.191 mL, 2.69 mmol)を滴下した。10分後、(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル)メタノール(280 mg, 0.840 mmol)を1-2分かけて少しずつ加え、淡黄色のスラリーを得た。2-3分間撹拌した後、DIPEA(1.203 mL, 6.89 mmol)を滴下した。該濁った混合液は澄明になり始め、その後、添加の過程において、色が淡黄色からオフホワイト色に薄くなるとともに、再び濁った。5分後、冷却浴を取り外し、該反応液をゆっくりと室温に昇温させた。室温で2時間撹拌した後、溶媒をエバポレートし、残渣をEtOAc(60 mL)および0.5N KHSO4(25 mL)間に分配した。EtOAc相を、各25 mLの、1N HCl、水、飽和NaHCO3水溶液、水、および食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥させ、濾過し、エバポレートした。該固形物を、超音波処理および加熱によってヘキサン(〜10%EtOAc含有)中においてスラリーにした後、室温に冷却し、濾過した。該固形物をヘキサンで洗浄し、風乾させ、その後、減圧下に置いて4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(250 mg, 0.664 mmol)を得て、それをさらなる精製は行わずに用いた。該化合物は、2分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.1%TFAのグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 1.77分であった - カラム: (PHENOMENEX(登録商標) Luna 4.6 x 30 mm S-5 ODS カラム)。 LC/MS M+1 = 334.2
【0135】
12-C. 1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
【化43】

MeOH(6 mL)および1,2-ジクロロエタン(2 mL)中の4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンズアルデヒド(100 mg, 0.302 mmol)の溶液に、0.1mLの酢酸およびアゼチジン-3-カルボン酸(45.8 mg, 0.453 mmol)を加え、該混合液を室温で40分間撹拌した後、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(64.0 mg, 0.302 mmol)を数回に分けて加えた。該反応液を室温で終夜撹拌した後、溶媒を減圧除去し、残渣をプレパラティブHPLCにより精製して、1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, トリフルオロ酢酸塩(95mg 0.18 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 5.73分であった - カラム: Low pH Col-1: Sunfire C18 3.5um, 4.6x150mm; 開始%B = 10; 12分. 100%; 15分. 100%; 流速 = 2 mL/分; 波長1 = 220; 波長2 = 254; 溶媒ペアー = TFA-MeCN/H2O; 溶媒A = 0.05%TFA/H2O:MeCN(95:5); 溶媒B = 0.05%TFA/H2O:MeCN(5:95); カラム1 = LOW pH - Parallel HPLC; 220nmにて LC/MS M+1 = 417.2。 1H NMR (500 MHz, MeOD) δ ppm 3.63 (m,1H), 4.26 (m, 4H), 4.40 (s, 2H), 7.40 (m, 1H), 7.46 (m, 4H), 7.51 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.92 (s, 1H), 8.05 (d, J=8.3Hz, 2H).
【0136】
12. 1-(4-(5-(5-(イソブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩の製造
1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(20 mg, 0.048 mmol)/アセトニトリル(1.5 mL)溶液に、イソブチルアルデヒド(10.39 mg, 0.144 mmol)、TFA(0.011 mL, 0.144 mmol)およびトリエチルシラン(0.023 mL, 0.144 mmol)を加えた。該反応液を55℃で終夜撹拌した。プレパラティブHPLCにより精製して、1-(4-(5-(5-(イソブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩(9 mg, 0.015 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 7.17分であった - カラム: Low pH Col-1: Sunfire C18 3.5um, 4.6x150mm; 開始%B = 10; 12分. 100%; 15分. 100%; 流速 = 2 mL/分; 波長1 = 220; 波長2 = 254; 溶媒ペアー = TFA-MeCN/H2O; 溶媒A = 0.05%TFA/H2O:MeCN(95:5); 溶媒B = 0.05%TFA/H2O:MeCN(5:95); カラム1 = LOW pH - Parallel HPLC; 220nmにて LC/MS M+1 = 473.3。 1H NMR (500 MHz, MeOD) δ ppm 0.71 (dt, 6H, J=6.6 Hz), 1.49-1.61 (m, 1H), 2.67 (d, 2H, J=6.6Hz), 3.63-3.69 (m, 1H), 4.25-4.31 (m, 4H), 4.42 (s, 2 H),7.34-7.41 (m, 1H), 7.44-7.49 (m, 4H), 7.51 (d, 2H, J=8.3Hz), 7.88 (s, 1H), 8.10 (d, 2H, J=8.3Hz).
【0137】
表2
表2中の化合物は、上記実施例と同様の方法で製造された。
【化44】

【表3】

【0138】
実施例14
1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩
【化45】

アセトニトリル(2 mL)中の1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸(30 mg, 0.072 mmol)および臭化銅(II)(24.14 mg, 0.108 mmol)の溶液に、0℃にて、亜硝酸tert-ブチル(0.013 mL, 0.108 mmol)を滴下した。該混合液を室温までゆっくりと昇温させた後、室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣をプレパラティブHPLCにより精製して、1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩(9.9 mg, 0.017 mmol)を得た。該化合物は、HPLC 保持時間 = 6.52分であった - カラム: Low pH Col-1: Sunfire C18 3.5um, 4.6x150mm; 開始%B = 10; 12分. 100%; 15分. 100%; 流速 = 2 mL/分; 波長1 = 220; 波長2 = 254; 溶媒ペアー = TFA-MeCN/H2O; 溶媒A = 0.05%TFA/H2O:MeCN(95:5); 溶媒B = 0.05%TFA/H2O:MeCN(5:95); カラム1 = LOW pH - Parallel HPLC; 220nmにて LC/MS M+1 = 480.1, 482.1。 1H NMR (500 MHz, MeOD) δ ppm 3.68-3.75 (m, 1H), 4.34-4.40 (m, 4H), 4.61 (s, 2H), 7.57-7.63 (m, 5H), 7.66 (d, 2H, J=8.3Hz), 8.25 (d, 2H, J=8.3Hz), 8.45 (s, 1H)
【0139】
実施例15
1-(4-(5-(1-フェニル-5-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩
【化46】

15-A. (Z)-メチル 1-(4-(N'-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボニルオキシ)カルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化47】

DMF(1 mL)中の5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(90 mg, 0.441 mmol)、(Z)-メチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(116 mg, 0.441 mmol)、EDC(84 mg, 0.441 mmol)およびHOBT(67.5 mg, 0.441 mmol)の混合液を、室温で1時間撹拌した。そこで、Et3N(0.061 mL, 0.441 mmol)を加え、室温で3日間撹拌を続けた。その後、該混合液を50℃まで10分間加熱した。該反応混合液をEtOAc(30 mL)および飽和炭酸水素ナトリウム溶液(30 mL)間に分配した。有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(30 mL)、水(30 mL)および食塩水(30 mL)で洗浄した。乾燥させ(MgSO4)て濾過した後、有機層を濃縮して、(Z)-メチル 1-(4-(N'-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボニルオキシ)カルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(103 mg, 0.230 mmol)を白色の固形物として得た。2分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.1%TFAのグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 1.05分(PHENOMENEX(登録商標) Luna 4.6 x 30 mm S-5 ODS カラム)。 MS:(M+H)= 449.3.
【0140】
15-B. メチル 1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化48】

(Z)-メチル 1-(4-(N'-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボニルオキシ)カルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(102 mg, 0.227 mmol)/EtOH(3 mL)懸濁液に、酢酸ナトリウム(37.3 mg, 0.455 mmol)を水溶液(1 mL)として加えた。該混合液を、90℃まで3時間加熱した。該反応混合液をマイクロ波バイアルに移した後、120℃まで30分間加熱した。該反応混合液をEtOAc(30 mL)および水(30 mL)間に分配した。水層をEtOAc(15 mL)で抽出し、有機層を合わせて乾燥させ(MgSO4)、濃縮し、油状物を得て、それを12 gmのIscoシリカゲルカートリッジ(0-100% EtOAc/ヘキサンのグラジエントで溶出)でクロマトグラフィー処理した。純粋な画分を濃縮して、メチル 1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(70 mg, 0.163 mmol)を無色の油状物として得た。2分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.1%TFAのグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 1.35(エチルエステル-1.42)分 (PHENOMENEX(登録商標) Luna 4.6 x 30 mm S-5 ODS カラム)。 MS:(M+H)= 431.23 (エチルエステル- 445.25). (該生成物は、該反応の間における部分的エステル交換による、メチルエステルとエチルエステルの混合物である。該混合物を、そのままで用いた。)
【0141】
15-C. メチル 1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート:
【化49】

の製造
アセトニトリル(3 mL)中のメチル 1-(4-(5-(5-アミノ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(69 mg, 0.160 mmol)および臭化銅(II)(53.7 mg, 0.240 mmol)の溶液に、0℃にて、亜硝酸tert-ブチル(0.029 mL, 0.240 mmol)を加えた。該反応混合液を室温まで昇温させ、1時間撹拌した。次いで、該反応混合液を、EtOAc(30 mL)、および飽和NH4Cl溶液:濃NH4OH, 1:1(30 mL)間に分配した。有機層を、飽和NH4Cl溶液:濃NH4OH, 1:1(30 mL)、および飽和NH4Cl溶液(30 mL)で洗浄した。乾燥させ(MgSO4)て濾過した後、有機層を濃縮して、メチル 1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(48 mg, 0.097 mmol)をオレンジ色の油状物として得た。2分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.1%TFAのグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 1.53(エチルエステル-1.58)分 (PHENOMENEX(登録商標) Luna 4.6 x 30 mm S-5 ODS カラム)。 MS:(M+H)= 494/496.11 (エチルエステル- 508/510.11). (注:この生成物は、メチルエステルとエチルエステルの混合物であった)。
【0142】
15. 1-(4-(5-(1-フェニル-5-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩の製造
ジオキサン(1 mL)中のメチル 1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(47 mg, 0.095 mmol)、ピリジン-3-イルボロン酸(12.86 mg, 0.105 mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(2.67 mg, 9.51 μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(3.48 mg, 3.80 μmol)およびリン酸三カリウム, 2.0M(0.081 mL, 0.162 mmol)の混合液を、8時間、窒素下において、100℃まで加熱した。室温まで冷却した後、該反応混合液を、EtOAc(30 mL)および水(20 mL)間に分配した。有機層を乾燥させ、濃縮して、黄色の油状物を得た。この油状物を、MeOH(1 mL)中に溶解させ、1N NaOH(0.2 mL)を加えた。室温で1時間撹拌した後、0.2 mLの1N HClを加え、該反応混合液を乾固するまで濃縮した。残渣を水に懸濁させ、pHを〜4に調整し、懸濁液を得た。該懸濁液を濾過し、該濾液は目的の生成物を含むと断定された。該濾液を濃縮した後、残渣をMeOH中に溶解させ、プレパラティブHPLC(YMC 20 x 100 mm S-10 ODS カラム; 10-90%メタノール水溶液 + 0.1%TFAの10分にわたるグラジエント)で処理した。純粋な画分を濃縮し、終夜乾燥させて、1-(4-(5-(1-フェニル-5-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸, 2,2,2-トリフルオロ酢酸塩(5.3 mg, 8.94 μmol)を白色の固形物として得た。4分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.2%リン酸のグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 2.31分 (YMC-Combi 4.6 x 50 mm S-5 ODS カラム)。 MS:(M+H)= 479.30. 1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 3.73 (m, 1H) 4.38 (m, 4H) 4.51 (s, 2H) 7.40 (m, 2H) 7.46 (m, 2H) 7.56 (m, 2H) 7.62 (d, J= 8.0 Hz, 2H) 7.96 (m, 1H) 8.12 (d, J= 8.1 Hz, 2H) 8.56 (s, 1H), 8.68 (m, 1H) 8.74 (s, 1H).
【0143】
比較化合物A(Comp. A)
Comp A-1. 1-(4-(5-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸
評価のために比較化合物(Comp. A)を製造した。この化合物はWO 2003/062252からの実施例54であり、Hale et al., J. Med. Chem., 6662 (2004)にも記載されている。
【化50】

【0144】
Comp. A-1. (Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボニルオキシ)-カルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化51】

N,N-ジメチルホルムアミド(7.5 mL)中の4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボン酸(408 mg, 1.50 mmol)、(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(Int.1, 458 mg, 1.50 mmol)、HOBT(345 mg, 2.250 mmol)、ヒューニッヒ塩基(1.05 mL, 6.00 mmol)、およびEDC(431 mg, 2.25 mmol)の混合液を、室温で18時間撹拌した。該反応混合液を酢酸エチル(120 mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(60 mL)間に分配した。有機層を、水(2 x 120 mL)で洗浄し、食塩水(120 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下において濃縮して、(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボニルオキシ)カルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(744 mg, 1.33 mmol, 89%収率)を薄い桃色の固形物として得て、それをさらなる精製は行わずに次の工程に用いた。4分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.2%リン酸のグラジエントで溶出して、HPLC: 保持時間 = 3.26分 (YMC Combi S-5 4.6 x 50 mm ODS カラム)。 MS: (M+H) = 560.25.
【0145】
Comp. A-2. tert-ブチル 1-(4-(5-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート
【化52】

(Z)-tert-ブチル 1-(4-(N'-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボニルオキシ)カルバムイミドイル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(744 mg, 1.33 mmol)/アセトニトリル(30 mL)溶液に、1M TBAF/テトラヒドロフラン溶液(3.99 mL, 3.99 mmol)を加え、該反応混合液を室温で3日間撹拌した。揮発性物質を減圧下において除去し、残渣を、5 x 12 cm シリカゲルカラム(0-50% EtOAc/Hexグラジエントで溶出)でクロマトグラフィー処理した。生成物を含有する本質的に純粋な画分を濃縮して、tert-ブチル 1-(4-(5-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(521 mg, 0.962 mmol, 72.4%収率)を無色の固形物として得た。4分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.2%リン酸のグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 3.63分 (YMC Combi S-5 4.6 x 50 mm ODS カラム)。 MS: (M+H)= 542.22. 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 1.46 (s, 9H), 3.25 - 3.31 (m, 3H), 3.52 - 3.58 (m, 2H), 3.69 (s, 2H), 7.43 (d, J=8.25 Hz, 2H), 7.47 (m, 5H), 7.91 (s, d, J=1.65 Hz, 1H), および 8.09 (d, J=8.25 Hz, 2 H).
【0146】
Comp. A. 1-(4-(5-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)-アゼチジン-3-カルボン酸の製造
tert-ブチル 1-(4-(5-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボキシレート(518 mg, 0.956 mmol)/トリフルオロ酢酸(15 mL)溶液を、室温で1.5時間静置した。揮発性物質を減圧下において除去し、残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(2 x 10 mL)から共エバポレートした。残渣を水(10 mL)に懸濁させ、1N 水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを〜11に調整した。この溶液に、十分な1N 塩酸水溶液を加えて、pHを〜4.5に調整した。得られた懸濁液を室温で終夜撹拌した。該白色の懸濁液を中空孔率焼結ガラスフィルター(medium porosity sintered glass filter)を通して濾過し、該濾過ケーキを水で十分に洗浄した。該固形物を乾燥させ、該白色の粉末をメタノール中に懸濁させ、該懸濁液を均一になるまで超音波処理した。メタノールを減圧下において除去し、該手順をさらに2回繰り返して、白色の固形物を得て、それをメタノール(〜30 mL)中の懸濁液として終夜撹拌した。減圧濾過し、乾燥させて、1-(4-(5-(4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)-アゼチジン-3-カルボン酸(345 mg, 0.707 mmol, 74%収率)を白色の粉末として得た。4分にわたる10-90%メタノール水溶液 + 0.2%リン酸のグラジエントで溶出して、HPLC 保持時間 = 3.45分 (YMC Combi S-5 4.6 x 50 mm ODS カラム)。 MS: (M+H) = 486.12. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.23 (s, 3H), 3.39 - 3.45 (m, 2H), 3.64 (s, 2H), 7.50 (d, J=8.28 Hz, 2H), 7.58 (m, 5H), 8.02 (d, J=8.28 Hz, 2H), および 8.26 (d, J=1.25 Hz, 1H). 元素分析: C24H18N3O3SF3・0.1H2Oとして計算;計算値:: C 59.22, H 3.76, N 8.63, S 6.59, F 11.71; 実測値: C24H18N3O3SF3・0.1H2O: C 59.06, H 3.45, N 8.60, S 6.61, F 11.42; KF (実測値)= 0.25%水.
【0147】
(生物学的アッセイ)
S1P1結合アッセイ
ヒトS1P1を発現しているCHO細胞から、膜を調製した。細胞を、20 mM HEPES、pH 7.5、50 mM NaCl、2 mM EDTAおよびプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を含むバッファー中で分離し、氷上でポリトロンホモジナイザーを用いて破壊した。該ホモジネートを20,000 rpm(48,000g)で遠心分離して、上清を捨てた。該膜ペレットを、50 mM HEPES、pH 7.5、100 mM NaCl、1 mM MgCl2、2 mM EDTAを含むバッファー中に再懸濁させ、タンパク質濃度を測定した後、アリコートで、-80℃にて保存した。
【0148】
膜(2 μg/ウェル)および0.03 nM 最終濃度の33P-S1Pリガンド(1 mCi/ml, American Radiolabeled Chemicals)を、化合物プレートに加えた。結合を室温で60分間行い、GF/Bフィルタープレート上に該膜を集めることによって終了させ、そして、TOPCOUNT(登録商標)によって放射活性を測定した。様々な濃度にわたる試験化合物の競合データを、放射性リガンド特異的結合のパーセント阻害としてプロットした。IC50は、特異的結合を50%まで低下させるのに必要な競合リガンドの濃度と定義される。
【0149】
本発明の化合物および比較化合物Aを上記のS1P1結合アッセイにおいて試験し、表Aに示される2桁に四捨五入した結果を得た。いくつかの場合において、値は複数の実験の平均であり、ここでNは良好な用量反応曲線が得られた実験の実施数である。1つの実施例のうちの1つ以上のバッチを試験した場合、提示される値は、メソッドAにおいてGTPγS S1P1とGTPγS S1P3との比較が可能であったバッチからのものである(データは表Bに示される)。データは、実施例化合物の異なるバッチにわたる平均化はしなかった。
表A
【表4】

【0150】
メソッドA:受容体[35S] GTPγS結合アッセイ
化合物を、384 FALCON(登録商標) v-底プレート(3倍希釈において0.5 μl/ウェル)にロードした。S1P1/CHO細胞もしくはEDG3-Ga15-bla HEK293T細胞から調製した膜を、MULTIDROP(登録商標)とともに、該化合物プレートに加えた(40 μl/ウェル、最終的にタンパク質 3 μg/ウェル)。[35S]GTP(1250 Ci/mmol, Perkin Elmer)を、アッセイバッファー: 20 mM HEPES、pH7.5、10 mM MgCl2、150 mM NaCl、1 mM EGTA、1 mM DTT、10 μM GDP、0.1%脂肪酸フリーBSA、および10 μg/ml サポニンにおいて0.4 nMまで希釈した。40 μlの該[35S]GTP溶液を、化合物プレートに、最終濃度 0.2 nMで加えた。該反応液を室温で45分間維持した。インキュベーションの終わりに、化合物プレート中の全ての混合液を、GPCRロボットシステムによって384ウェルのFBフィルタープレートに移した。該フィルタープレートを、改良したマニフォールドEmblaプレートウォッシャーを用いて水で4回洗浄し、60℃で45分間乾燥させた。Packard TOPCOUNT(登録商標)で測定するために、30 μlのMicroScint 20 シンチレーション流体(scintillation fluid)を各ウェルに加えた。EC50は、試験した各個々の化合物について得られたYmax(最大反応)の50%に相当するアゴニスト濃度と定義される。
【0151】
メソッドB:受容体[35S]GTPγS SPA結合アッセイ
S1P1もしくはS1P3トラスフェクトCHO細胞(2 μg タンパク質)から調製した膜を、96-ウェル白色プレート(CORNING(登録商標)3693)中で、7.5 μl WGA-PVTビーズ(20 mg/ml)、ならびに5 μM GDP、20 mM HEPES pH 7.4、100 mM NaCl、1 mM EDTA、5 mM MgCl2、10 μg /ml サポニン、0.1%BSA、および1 μM ロイペプチンを含有する50μlの反応混合液中において、DMSOに希釈した試験化合物とともにインキュベートした。25 μlの0.2 nM [35S]-GTPγS(1250 Ci/mmol; NEN)/アッセイバッファーを加えることによって、該アッセイを開始した。室温で90分インキュベートした後、該プレートを1000rpmで5分間遠心処理した。結合した放射性核種をTOPCOUNT(登録商標)にて測定し、S1P(1 μM)活性化と比較した%反応で表した。データは、エクセルにおいて、4つのパラメーターのロジスティック方程式を用いて分析した。該方程式 Y=A+((B-A)/(1+((EC50/X)^D)))中の4つのパラメーターは以下のように説明される:Aは底面プラトー(bottom plateau)でのY値(アゴニスト活性)であり;Bは上面プラトー(top plateau)でのY値であり;EC50は反応が底面と上面の中間である時のX値(アゴニスト濃度)であり;DはHill係数である。Ymax値が50%以下である化合物については曲線が得られなかった。
【0152】
本発明の化合物および比較化合物Aを、上記の受容体[35S]GTPγS結合アッセイ(メソッドA)および受容体[35S]GTPγS SPA結合アッセイ(メソッドB)において試験し、表Bに示される、2桁に四捨五入した結果を得た。ある場合には、値は複数の実験の平均であり、ここでNは良好な用量反応曲線が得られた実験の実施数である。1つの実施例のうちの1つ以上のバッチを試験した場合、提示された値は、メソッドAにおいてGTPγS S1P1とGTPγS S1P3との比較が可能であったバッチ(その中でほとんどの数の実験が実施された)からのものである。好ましくは、メソッドAおよびメソッドBにおいて同一のバッチを試験した。データは、実施例化合物の異なるバッチにわたる平均化はしなかった。
表B
【表5】

ND = 測定せず。
NC = 良好な用量反応曲線が得られなかった。
【0153】
GTPγS S1P1 EC50値に対するGTPγS S1P3 EC50値の比を、表B中のデータから算出し、表Cに示す。
表C
【表6】

【0154】
表Cにおいて、GTPγS S1P1 EC50値に対するGTPγS S1P3 EC50値の比が大きな値であるほど、S1P3活性よりもS1P1活性の選択性が高いことを示す。
【0155】
比較化合物Aと比較した場合、本発明の化合物は、実施例1〜8により例示されるように、S1P1のアゴニストとして驚くべき利点を示し、S1P3以上に選択的である。メソッドAによる測定で、表Cに記載される本発明の例示化合物は50〜2,300の範囲の選択性比を有していたが、対照的に、比較化合物Aは1.2の選択性比を有していた。メソッドBによる測定で、表Cに記載される本発明の例示化合物は300〜35,000の範囲の選択性比を有していたが、対照的に、比較化合物Aは78の選択性比を有していた。
【0156】
本発明の化合物は、S1P1のアゴニストとしての活性を有し、S1P3以上の選択性であり、従って、S1P3活性に起因する副作用を減少もしくは最小化するとともに、様々なS1P1受容体関連症状の処置、予防、もしくは治療に用いられうる。本発明の化合物の驚くべき選択性は、それらを、あり得る心血管系の副作用(例えば徐脈および高血圧)を減少もしくは最小化するとともに、自己免疫性および炎症性疾患(例えば多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または乾癬)の処置、予防、もしくは治療において用いることができる可能性を示唆する。本発明のその他の利用可能性には、S1P3活性に起因する副作用を減少もしくは最小化するとともに、移植器官の拒絶反応を最小化もしくは減少させることが含まれる。
【0157】
げっ歯類における血中リンパ球減少アッセイ(Blood Lymphocyte Reduction Assay)(BLR)
LewisラットもしくはBALB/cマウスに、試験物質(ビヒクル中の溶液もしくは懸濁液として)またはビヒクルのみ(ポリエチレングリコール300、「PEG300」)を経口で投与した。4時間および24時間にて、後眼窩採血(retro-orbital bleeding)により血液を採取した。血中リンパ球数を、ADVIA 120 血液学検査装置(Siemens Healthcare Diagnostics)で測定した。結果は、4時間および24時間での測定にて、ビヒクル処置群と比べた場合の循環リンパ球の割合の減少として評価した。結果は、各処置群内の全動物の平均結果を示す(n = 3-4)。
【0158】
本発明の化合物を、上記の血中リンパ球減少アッセイ(BLR)において試験し、結果を、ラットについては表Dに、マウスについては表Eに示す。
表D
【表7】


表E
【表8】

【0159】
ラットアジュバント誘発関節炎アッセイ(AA)
オスLewisラット(150-175 g; Harlan, n=8 処置群)を、10 mg/mlの直前に粉末にしたマイコバクテリウムブチリカム(Difco Laboratories)/不完全フロイントアジュバント(sigma)を100 μl用いて、尾の付け根にて、免疫処置した。動物に、試験物質(ビヒクル中の溶液もしくは懸濁液として)またはビヒクルのみ(ポリエチレングリコール300、「PEG300」)を、免疫処置の日から開始して、1日1回投与した。それらの後足の容積を、水置換(water displacement)plethysmometer(Ugo Basile, Italy)で測定した。ベースラインの足測定値を疾患の発症前(7日目から10日目の間)に採取した。次いで、20〜21日目の研究終了まで、1週間に3回、足測定値を採取した。動物を用いる全ての方法は、動物実験委員会により審査され、承認された。
【0160】
本発明の化合物を、上記のラットアジュバント誘発関節炎アッセイにおいて試験し、結果を表Fおよび表Gに示す。
表F
【表9】


表G
【表10】

【0161】
関節リウマチについての動物モデルであるラットアジュバント誘発関節炎モデルにおいて、実施例1および実施例2は、予防的経口投与レジメン(regiment)を用いたLewisラットにおける足の腫脹による測定で、疾患の進行を抑制する。
【0162】
マウス実験的自己免疫性脳脊髄炎アッセイ(EAE)
マウス(C57BL/6メス, 6-8週齢, Charles River, n=10-12 処置群)を、150 μgの結核菌H37RA(Difco Laboratories)を添加した不完全フロイントアジュバント(sigma)を用いて1:1で乳化された150 μgのMOG35-55を用いて、皮下に免疫処置した。400 ngの百日咳毒素(CalBiochem)を、免疫処置の日および2日後に、腹腔内に注入した。動物に、試験物質(ビヒクル中の溶液もしくは懸濁液として)またはビヒクルのみ(ポリエチレングリコール300、「PEG300」)を、免疫処置の1日後から開始して、1日1回投与した。24日目の研究終了まで、1週間に3回、臨床的スコアリングを行い、体重を測定した。臨床的スコアリングシステム: 0.5:部分的な尾の脱力; 1:尾の脱力、または尾の緊張を伴う動揺性歩行; 1.5: 部分的な尾の脱力を伴う動揺性歩行; 2:尾の脱力を伴う動揺性歩行(運動失調); 2.5: 部分的な四肢麻痺を伴う運動失調; 3: 1つの肢の完全な麻痺; 3.5: 第2の肢の部分的な麻痺を伴う1つの肢の完全な麻痺; 4: 2つの肢の完全な麻痺; 4.5: 瀕死; 5: 死亡.
本発明の化合物を、上記のマウス実験的自己免疫性脳脊髄炎アッセイにおいて試験し、結果を表Hに示す。
表H
【表11】

【0163】
多発性硬化症についての動物モデルであるマウス実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおいて、実施例1は、予防的経口投与レジメンを用いたC57Bl/6 マウスにおける臨床的スコアーによる測定で、疾患の進行を抑制する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
nは、0か、または1〜4から選択される整数であり;
R1は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよく;
各R2は、独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから選択され;
R3は、水素、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-NRaRb、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで該シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてもよく;
各R4は、独立して、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、および/またはベンジルから選択され;そして、
RaおよびRbは、各々、独立して、水素、アルキル、および/またはベンジルである]
の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよいアリールである、請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項3】
nが、0であり;
R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよいフェニルであり;
R3が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ハロゲン、-NRaRb、C3〜C6シクロアルキル、フェニル、またはピリジルであり;
R4が、C1〜C4アルキルであり;そして、
RaおよびRbが、独立して、水素および/またはC1〜C6アルキルである、
請求項2に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項4】
R3が、メチル、エチル、1-プロピル、シクロペンチル、トリフルオロメチル、ブロモ、クロロ、フェニル、2-ピリジル、または-NHRaであり;そして、
Raが、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、またはイソブチルである、
請求項3に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項5】
R1が、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい、
請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項6】
nが、0であり;
R3が、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-NRaRb、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、ここで該シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、各々、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてもよく;
各R4が、独立して、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、および/またはベンジルから選択され;そして、
RaおよびRbが、各々、独立して、水素、アルキル、および/またはベンジルである、
請求項5に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項7】
R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1から5個の置換基で適宜置換されていてよい、ピリジルまたはシクロヘキシルである、
請求項6に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項8】
R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよいC3〜C6シクロアルキルであり;そして、
R4が、C1〜C6アルキルである、
請求項5に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項9】
R1が、C1〜C6アルキル、C1〜C4ハロアルキル、ベンジル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよいヘテロアリールである、請求項5に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項10】
R1が式:
【化2】

から選択され;
mが、0、1、2、または3であり;
XおよびYが、各々、独立して、Nおよび/またはCR5であり;
Zが、O、S、またはN-R6であり;
各R5が、独立して、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから選択され;
R6が、C1〜C4アルキルまたはベンジルであり;そして、
各R4が、独立して、C1〜C4アルキルから選択される、
請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項11】
R1が、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、-OR4、および/またはハロゲンから独立して選択される1、2、もしくは3個の置換基で適宜置換されていてよい2-ピリジルであり;
R3が、C1〜C4アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C4ハロアルキル、ハロゲン、フェニル、ピリジル、または-NRaRbであり;
R4が、C1〜C4アルキルであり;そして、
RaおよびRbが、各々、独立して、水素および/またはC1〜C4アルキルである、
請求項10に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項12】
1-(4-(5-(1-(ピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(1-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸 (2);
1-(4-(5-(5-(イソプロピルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(エチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-n-プロピル-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-シクロペンチル-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(1-(6-エトキシピリジン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(1-シクロヘキシル-5-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-フェニル-1-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-クロロ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(イソブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-(n-ブチルアミノ)-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;
1-(4-(5-(5-ブロモ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸;および、
1-(4-(5-(1-フェニル-5-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ベンジル)アゼチジン-3-カルボン酸、
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩;および医薬的に許容される担体を含有する組成物。
【請求項14】
自己免疫疾患または慢性炎症性疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩の使用。
【請求項15】
自己免疫疾患または慢性炎症性疾患の処置における療法での使用のための、請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。

【公表番号】特表2012−515789(P2012−515789A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548110(P2011−548110)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/021696
【国際公開番号】WO2010/085584
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】