説明

スプリンクラヘッド

【課題】グラスバルブの破裂原因を確実に判断できるようにする。
【解決手段】液体が封入されているグラスバルブ15と、該グラスバルブ15を支持するアーム7と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;前記液体は、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の感温変色液体TRであり、前記アーム7は、前記液体の飛散付着部7aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、倉庫、駐車場などに配設されるスプリンクラに関するものであり、特に、液体を封入したグラスバルブを有する、馬蹄形のスプリンクラヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドの感知部には、液体を封入したグラスバルブが設けられている。このグラスバルブは、支承部に着座し、放水口を閉鎖する放水弁を押圧している。
このヘッドでは、火災の発生によりグラスバルブが高温に晒されると、前記液体が熱膨張し、前記グラスバルブが破裂し、放水弁が落下する。そのため、前記放水口が開放され、放水が開始される。
【0003】
このグラスバルブは、前述のように、火災の熱によって破裂するのが通常であるが、棒などの衝撃による外力を受けて、又は、凍結されて破裂することもある。この場合、火災の発生に基づく破裂ではなく、誤作動した場合に該当する。従って、グラスバルブの破裂原因は、数種類あることになるので、グラスバルブの性能品質研究等をする際には、そのいずれが原因となっているかを特定する必要がある。
【0004】
そこで、従来、次のようにしてその前記破裂原因を特定している。即ち、スプリンクラヘッドのフレームの表面に、温度に応じて変色する不可逆性の感温変色体を設ける。破裂原因を調査する場合には、該感温変色体の色をチェックし、変色していれば火災、変色していなければ外力、とその原因を判断する(例えば、特許文献1、参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3458315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例の感温変色体は、アーム等の表面に張り付けられている。そのため、次のような問題がある。
(1)感温変色体が剥がれ落ちることがあり、それが剥がれ落ちると、アーム近傍の受熱を正確に検出することが困難となる。
【0007】
(2)感温変色体の表面にゴミ等の障害物が付着し、受熱を妨げたり、変色の具合の検出が困難となることがある。
(3)感温変色体及びそれの添付作業等が必要となるので、コストアップとなる。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑み、グラスバルブの破裂原因を正確に判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、液体が封入されているグラスバルブと、該グラスバルブを支持する固定部材と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;前記液体は、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の感温変色液体、設計変質温度到達時に特性が変化する不可逆性の感温変質液体、又は、グラスバルブが設計外力を受けたときに変色する不可逆性の感力変色液体、であり、前記固定部材は、前記液体の飛散付着部を備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明は、液体が封入されているグラスバルブを備えたスプリンクラヘッドにおいて;前記グラスバルブ、又は、前記固定部材には、設計発匂温度到達時に匂いを発する香料インク、又は、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の熱変色性インクが付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明のグラスバルブに封入された液体は、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の感温変色液体、設計変質温度到達時に特性が変化する不可逆性の感温変質液体、又は、グラスバルブが設計外力を受けたときに変色する不可逆性の感力変色液体、であり、前記固定部材は、前記液体の飛散付着部を備えているので、グラスバルブの破裂時には前記液体が飛散して液体の飛散付着部に付着する。そのため、付着した液体の色、又は、粘性等からグラスバルブの破裂原因を特定することができる。
【0012】
この発明のグラスバルブ、又は、前記固定部材には、設計発匂温度到達時に匂いを発する香料インク、又は、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の熱変色性インク、が付着しているので、グラスバルブの破裂時に発生する匂い、グラスバルブの破片、又は、固定部材の熱変色性インクの色、により破裂原因を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の第1実施例を図1、図2により説明する。
馬蹄型スプリンクラヘッドの本体1は、鋳造により形成され、ねじ部3と固定部材Fとを備えている。ねじ部3は、図示しないスプリンクラ配管に連結され、その下端部には六角形のねじ頭部5を備えている。
【0014】
固定部材Fは、アーム7と支承部9とを備えている。アーム7は、前記ねじ頭5に連続して一対設けられ、その外表面は、液体の飛散付着部7aとなっている。支承部9は、該アーム7の下端部に設けられ、押しねじ11により上下方向に摺動可能である。
【0015】
放水弁3は、放水口3aを閉鎖している。この放水弁13と前記支承部9との間には、グラスバルブ15が設けられている。このグラスバルブ15は、硬質のガラス管であり、その中には、熱に晒されると体積が膨張する不可逆性の感温変色液体TRが封入されている。この感温変色液体TRは、設計変色温度に到達すると変色するものであり、例えば、赤色が緑色に変わる。
【0016】
この液体TRとして、発色剤を封入したマイクロカプセル(マイクロカプセル製剤)を含有する油性アルコール系液体が用いられる。このマイクロカプセルは、熱によって溶融し、発色剤がアルコールに接触することにより該液体TRを変色させる。
【0017】
マイクロカプセル製剤は、有効成分を高分子樹脂の薄い膜で包み込んだ製剤であり、有効成分が高分子のカプセル内に封入されているため、分解や蒸発が押さえられる。マイクロカプセル錠剤は、安定性と安全性において優れている。
【0018】
上記設計変色温度とは、火災の熱により感温変色液体TRが変色したことがわかるようにするために設定される温度で、その温度は、必要に応じて適宜選択される。例えば、設計変色温度として、60℃が採用されるが、52℃〜スプリンクラ作動開始温度未満、の範囲が好適である。なお、スプリンクラ作動開始温度として、例えば、68℃、93℃、等が用いられている。
【0019】
グラスバルブ15は、押しねじ11を所定方向に回転させることにより押し上げられ、放水弁13を強く押圧するので、放水口3aは、密閉状態となる。なお、図において、19は、デフレクタであり、放水口3aから放出される消火水を分散させる機能を有する。
【0020】
次に本実施例の作動について説明する。
火災が発生し、グラスバルブ15内の液体TRが受熱して設計変色温度になると、該液体TRは膨張するとともに、マイクロカプセルが溶融し、発色剤がアルコールに接触するので、該液体TRの色が赤色から緑色に変化する。
【0021】
更に液温が上昇すると、前記液体TRは更に膨張するので、グラスバルブ15が破裂し、その中に封入されている液体が飛散するが、飛散した該液体TRの一部はアーム7の飛散付着部7aに付着する。なお、該付着部20の表面は、鋳物製のためざらざらしているので、付着した液体(油性)TRに消火水がかかっても落ちにくい。
【0022】
消火後、グラスバルブ15の破裂原因調査時に、アーム7に付着している前記液体TRの色をチェックする。前述のように、前記液体TRの色は緑色に変わっているので、グラスバルブ15の破裂原因が火災であることがわかる。
これに対して、前記液体TRが赤色、即ち、変色していない場合には、グラスバルブ15が受熱せずに、その他の要因で破裂したものと判断される。例えば、棒などの外力(衝撃力)により破裂した場合であり、原因調査時に火災でなく破裂していることがわかる。
【0023】
この発明の第2実施例を説明する。この実施例と第1実施例との相違点は、グラスバルブ15に封入され液体が、不可逆性の感温変質液体であることである。
この感温変質液体は、設計変質温度に到達すると特性が変化するもので、例えば、該液体の粘性が変化する。又、この変質は、物理的な変化のみでなく、化学的構造的な変化であっても良く、分析装置等で確認することができればよい。
【0024】
上記設計変質温度とは、火災の熱により感温変質液体が変質したことがわかるようにするために設定される温度で、その温度は、必要に応じて適宜選択される。例えば、設計変質温度として、60℃が採用されるが、52℃〜スプリンクラ作動開始温度未満、の範囲が好適である。なお、スプリンクラ作動開始温度として、例えば、68℃、93℃、等が用いられている。
【0025】
この発明の第3実施例を説明する。この実施例と第1実施例との相違点は、グラスバルブ15に封入され液体が、不可逆性の感力変色液体であることである。
この感力変色液体は、グラスバルブ15が設計外力(衝撃力)を受けたときに変色する液体である。この感力変色液体は、アルコール系の液体と、それを取り囲む拡散剤とからなり、該グラスバルブ15が、棒などにより設計外力を受けると、拡散剤の作用により前記液体の色が変化し、例えば、赤色から緑色に変わる。
【0026】
上記設計外力とは、グラスバルブ15が棒などによる外力を受けて感力変色液体の色が変化したことがわかるようにするために設定される衝撃力で、その値は、必要に応じて適宜選択される。
【0027】
この発明の第4実施例を説明する。この実施例と第1実施例との相違点は、グラスバルブ15に封入され液体を、特殊なものにする代わりに、グラスバルブ15の表面に香料インクを塗布することである。その塗布範囲は、必要に応じて適宜選択され、例えば、グラスバルブ15の全外周面に塗布される。
【0028】
この香料インクは、設計発匂温度に到達すると匂いを発するインクである。この香料インクとして、マイクロカプセル香料が使用され、カプセルが破壊されると香りを放つ。この香料をグラスバルブ15の表面に塗布することにより、火災時には、香りを放つことになるので、視覚障害者などにも火災を伝えることができる。
【0029】
上記設計発匂温度は、火災の熱により香料インクが発匂したことがわかるようにするために設定される温度で、その温度は、必要に応じて適宜選択される。例えば、設計変色温度として、60℃が採用されるが、52℃〜スプリンクラ作動開始温度未満、の範囲が好適である。このスプリンクラ作動開始温度として、例えば、68℃、93℃が採用されている。又、ここでグラスバルブの表面に香料インクを塗布することを説明したが、それに限らず、例えば、固定部材であるアーム7に塗布しても良い。
【0030】
この発明の第5実施例を説明する。この実施例と第4実施例との相違点は、(1)グラスバルブ15に香料インクを塗布する代わりに、不可逆性の熱変色性インクを塗布すること、(2)破裂したグラスバルブ15の破片の色から破裂原因を判断すること、である。この熱変色性インクは、設計変色温度に到達すると変色する不可逆性のインクである。
【0031】
この熱変色性インクは、三つの成分、即ち、A・無色の色素、B・これを発色させる呈色剤、C・発色している色素を消色させる消色剤、からなるが、前記色素Aは、電子を奪ったり与えたりすると、発色したり消色したりする。電子の授受をある一定の温度のもとで行うように前記A、B、Cの条件を設定すると、その温度を境にして色が付いたり(発色)、消えたり(消色)する。
【0032】
上記設計変色温度とは、火災の熱を受けて感熱変色性インクが変色、又は、発色したことがわかるようにするために設定される温度で、その温度は、必要に応じて適宜選択される。 又、ここでグラスバルブ15に熱変色性インクを塗布することを説明したが、それに限らず、例えば、固定部材であるアーム7に塗布しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例を示す正面図である。
【図2】図1の他の状態を示す図で、グラスバルブがはじけた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
3 ねじ部
7 アーム
7a 液体の飛散付着部
9 支承部
13 放水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が封入されているグラスバルブと、該グラスバルブを支持する固定部材と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;
前記液体は、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の感温変色液体であり、
前記固定部材は、前記液体の飛散付着部を備えていることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
液体が封入されているグラスバルブと、該グラスバルブを支持する固定部材と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;
前記液体は、設計変質温度到達時に特性が変化する不可逆性の感温変質液体であり、
前記固定部材は、前記液体の飛散付着部を備えていることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項3】
液体が封入されているグラスバルブと、該グラスバルブを支持する固定部材と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;
前記液体は、前記グラスバルブが設計外力を受けたときに変色する不可逆性の感力変色液体であり、
前記固定部材は、前記液体の飛散付着部を備えていることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項4】
液体が封入されているグラスバルブと、該グラスバルブを支持する固定部材と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;
前記グラスバルブ、又は、前記固定部材には、設計発匂温度到達時に匂いを発する香料インクが塗布されていることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項5】
液体が封入されているグラスバルブと、該グラスバルブを支持する固定部材と、を備えたスプリンクラヘッドにおいて;
前記グラスバルブ、又は、前記固定部材には、設計変色温度到達時に変色する不可逆性の熱変色性インキが塗布されていることを特徴とするスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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