説明

スプリンクラヘッド

【課題】止水部材による散水分布の乱れを生じさせないスプリンクラヘッドを提供することである。
【解決手段】内部に放水口が貫設されたヘッド本体と、ヘッド本体に接続されるフレームと、常時はフレームに設けられたデフレクタと、放水口を封止し、火災時には開栓する弁体と、弁体と本体間に設けられ、弁体に圧接される止水部材と、弁体を支持する感熱部材とを備えたスプリンクラヘッドに関する。
止水部材を保持する保持手段をフレーム内又はヘッド本体に備えて、その保持手段は、感熱部材が落下して弁体が降下したときにおける弁体の頂部の位置より上側に設けられることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火災を消火するスプリンクラヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドは、給水管に接続されるねじ部を有し中心部に放水口が貫設された本体と、本体の放水口を封止する弁体と、フレーム等の円筒体内に収容され、前記弁体を放水口に圧接すると共に、火災発生時にその熱により落下する感熱分解部とを有している。
【0003】
弁体には、フッ素樹脂がコーティングされた皿バネからなる弾発体が設けられ、弁体はこの皿バネを介して放水口に圧接され止水している。皿バネの中央部には弁体頭部と連結する連結穴が形成され、皿バネの連結穴は弁体の頭部にはめ込まれる。また、皿バネの外周縁は放水口周縁と弁体の鍔部の間に設けられ、弁体の鍔部にて上方に押圧力をもって皿バネを弁座に押しつけて水密を保っているものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスプリンクラヘッドは、火災により感熱分解部がフレームから離脱して落下した後、デフレクタが降下し、次いで弁体がデフレクタ上に着座する。散水時において、皿バネは弁体の頭部と連結されて弁体上に残っているため、放水口から流出する消火水は皿バネにも当たり、散水分布を乱すことになるため、適切な散水分布の設計が難しくなるという問題があった。また、弁体上に皿バネが残るので、皿バネの形状に制限が生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に放水口が貫設されたヘッド本体と、ヘッド本体に接続されるフレームと、常時はフレームに設けられたデフレクタと、放水口を封止し、火災時には開栓する弁体と、弁体と本体間に設けられ、弁体に圧接される止水部材と、弁体を支持する感熱部材とを備えたスプリンクラヘッドにおいて、止水部材を保持する保持手段をフレーム内又はヘッド本体に備え、保持手段は、感熱部材が落下して弁体が降下したときにおける弁体の頂部の位置より上側に設けられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
スプリンクラヘッドが作動後、弁体が開栓しても、フレーム内又はヘッド本体に設けられている保持手段によって止水部材が保持されて、止水部材はヘッド本体側又はフレーム内に残るため、散水時に止水部材によって散水分布に悪影響を及ぼすことはない。また、止水部材の直径を大きくすることで、止水部材のストロークを長くすることができる。止水部材と弁体との接触面は、弁体の垂直方向の位置の変化に伴って移動するので、スプリンクラヘッド作動時において、弁体の降下するときに、その降下量に追従可能な距離が長くなるので、止水が保たれる。
【0008】
また、止水部材の外周部がヘッド本体とフレームに挟持されて、止水部材がフレームの上側で保持されるため、皿バネ外周部の止水は、皿バネによる荷重の他に、ヘッド本体にフレームを螺着させることによる押圧力によってされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のスプリンクラヘッドの縦断面図(作動前)である。
【図2】本発明のスプリンクラヘッドの縦断面図(作動後)である。
【図3】他の実施例を示したスプリンクラヘッドの縦断面図(作動後)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のスプリンクラヘッドを、図面を用いて説明する。図1において、1はヘッド本体で、ヘッド本体1の中央内部には消火水が放水される放水口2が貫設されている。ヘッド本体1の上部外周には、立ち下がり管と接続するためのねじ部が形成されている。ヘッド本体1の下部にあるフランジ部1Aの内側には雌ねじが形成され、そこに円筒状のフレーム3の上部が螺着される。フレーム3の内壁下端には内側に突出した係止段部3Aが形成されている。
【0011】
4はデフレクタで、中央に開口部を有する円板によって構成されており、その開口部には、後述する弁体5の挿入部5Cが挿入された状態で、弁体5の下面部に取り付けられている。デフレクタ4にはガイドロッド7が挿入される挿入穴があり、常時は、ガイドロッド7の下部がデフレクタ4の挿通穴から突出した状態で、フレーム3内に収容されている。また、火災時には、デフレクタ4はガイドロッド7にガイドされて降下する。そして、ガイドロッド7の上端に固定されたストッパリング8が係止段部3Aに係止することで、デフレクタ4はフレーム3の下端から露出した所定の位置で停止する。
【0012】
5は弁体で、フランジ部5Bの上部には頭部5A、下部には挿入部5Cを有する。弁体5は、常時は放水口2を封止する。10は感熱部材としての感熱分解部で、常時は弁体5を支持し、火災時には熱により分解されて落下する。感熱分解部10が分解されると、放水口2を封止していた弁体5が開栓する。
【0013】
感熱分解部10は、感熱体11、ボール12、バランサ13、スライダ14及び弁体5を支えるセットスクリュー15を備えている。感熱体11は半田等であり、バランサ13から圧縮するように力がかかっている。ボール12は、バランサ13とスライダ14とフレーム3の下端の係止段部3Aの3点で係止された状態を維持している。ボール12は、内側へ向かう力がはたらいているが、バランサ13とスライダ14に挟持されているため係止段部3Aに係止された状態で保持されている。
【0014】
6は止水部材で、例えば皿バネである。止水部材6は、弁体5と、弁体5に圧接される放水口2との間に介設される。止水部材6は、断面ほぼハ字状で円形であり、止水部材6の外径はフレーム3の内径より大きく、ヘッド本体1のフランジ部1Aの内径より小さく形成され、止水部材6の外周部6Aはヘッド本体1とフレーム3の上端で挟持される。
【0015】
止水部材6はドーナツ状に形成され、中央には連結穴6Bが設けられている。連結穴6Bの内径は、弁体5の頭部5Aの外径よりも大きく、弁体5のフランジ部5Bの外径よりも小さく形成される。その範囲内でも特に、連結穴6Bの内径は、放水口2の内径とほぼ同じか、それよりも大きく形成されることが望ましい。弁体5の頭部5Aは、止水部材6の連結穴6Bに通されて、常時は放水口2を圧接するように取り付けられる。止水部材6と弁体5との接触面は、弁体5の垂直方向の位置の変化に伴って移動し、火災時は止水部材6が弁体5から離されるように設けられる。つまり、弁体5のスプリンクラヘッド軸心方向の動きにあわせて、止水部材6がスプリンクラヘッド軸心方向に移動可能となっている。
【0016】
これにより、止水部材6の外周側には上方に作用する所定の復元力が生じ、止水部材6の内周側には下方に作用する所定の復元力が生じるので、止水部材6の内周縁が弁体5の上面と圧接し、放水口2と弁体5の水密を保っている。また、止水部材6の耐腐食性を向上させるために、例えば、止水部材6の表層にフッ素樹脂をコーティングしている。
【0017】
以下、本発明におけるスプリンクラヘッドの火災時の動作を図1及び図2を用いて説明する。火災時には、火災の熱により感熱体11が融解して外部に流出する。その感熱体11の流出量に応じて、感熱体11に圧縮するように力をかけているバランサ13が降下する。バランサ13が降下すると、スライダ14との間隙が広がり、内側に付勢されているボール12が内側に移動し、ボール12とフレーム3の係止段部3Aとの係止が解かれる。そして、バランサ13、スライダ14と落下していき、感熱分解部10が全て落下することとなる。
【0018】
感熱分解部10がフレーム3から離脱して落下すると、続いて、デフレクタ4がデフレクタ4に取り付けられているガイドロッド7にガイドされて降下し、ストッパリング8がフレーム3の内面を沿って、ガイドロッド7と共に降下する。ストッパリング8はフレーム3の係止段部3Aに係止され、図2に示すように、デフレクタ4はガイドロッド7によりフレーム3から吊り下げられた状態となる。そして、弁体5が降下してデフレクタ4の上に位置し、放水口2から消火水が放水される。
【0019】
止水部材6の連結穴6B内に設けられる弁体5の頭部5Aは、自重及び消火水の水圧により連結穴6Bから抜けて落下し、デフレクタ4上に着座する。止水部材6は、外周部6Aがヘッド本体1とフレーム3に挟持されているため、弁体5が落下した後もフレーム3内に残っている。
【0020】
本発明は、以上のように、止水部材6の外周部6Aがヘッド本体1とフレーム3とに挟持され、火災時においても止水部材6がフレーム3内に残る様な構成にしたため、弁体の頭部に皿バネが残った状態で散水していた従来のスプリンクラヘッドと比べて、散水時に止水部材6によって散水分布に悪影響を及ぼすことはない。また、弁体上に止水部材が残っていた場合と比べて、止水部材の形状に制限が生じづらくなる。
【0021】
さらに、止水部材6の連結穴6Bの内径は、放水口2の内径とほぼ同じか、それより大きいため、止水部材6は放水口2から放水される消火水に触れないため、散水に影響を及ぼさない。また、止水部材6の直径を大きくすることで、止水部材6のストロークを長くすることができるので、スプリンクラヘッド作動時に弁体5が降下し始めた際に、弁体5の降下量に追従可能な距離が長くなる。この止水部材6のストロークが長くなった分だけ、止水が保たれる距離が長くなる。
【0022】
また、止水部材の外周部がヘッド本体とフレームに挟持されて、止水部材がフレームの上側で保持されるため、皿バネ外周部の止水は、皿バネによる荷重の他に、ヘッド本体にフレームを螺着させることによる押圧力によってされる。
【0023】
フレーム3内にある止水部材6を保持する保持手段は、ヘッド本体1とフレーム3で挟持するものだけに限られない。止水部材6の保持手段は、スプリンクラ作動時における弁体5の頂部の位置より上側に設けられればよく、図3(a)〜(c)に示すような変形例が考えられる。以下、図3を用いて、他の実施例について説明する。図3において、図1と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0024】
図3(a)のスプリンクラヘッドは、ヘッド本体1にあるフランジ部1Aの放水口2側の基部に、内壁から中央寄りに突出するように、止水部材6を係止する段部1Bを設けたものである。段部1Bの内径は、止水部材6の外周部6Aの外径とほぼ同径であり、止水部材6を段部1Bに圧入する。これにより、スプリンクラヘッドが作動して弁体5が降下しても、止水手段6はヘッド本体1内の段部1Bに係止されたまま保持される。また止水部材6の圧入ではなく、止水部材6と段部1Bとをかしめてもよい。
【0025】
図3(b)のスプリンクラヘッドは、ストッパリング8上であって、ヘッド本体1のフランジ部1A内に、ストッパリング8を降下させる方向に付勢するコイルバネ9が設けられており、止水部材6はヘッド本体1の下面側にコイルバネ9によって押圧されているものである。つまり、止水部材6は、コイルバネ9とヘッド本体1に挟まれている。コイルバネ9の径は、止水部材6の外径より短く、連結穴6Bの内径より長くしているので、スプリンクラヘッドが作動して弁体5が降下しても、フレーム3内に残るコイルバネ9の上に止水部材6が乗ったままとなり保持される。
【0026】
図3(c)のスプリンクラヘッドは、荷重がかかっていないときの外径がフレーム3内の内径よりも小さく、ストッパリング8の外径とほぼ同径である止水部材6を設けたものである。これにより、スプリンクラヘッドが作動したときには、ストッパリング8の降下に伴って、止水部材6も降下する。弁体5が降下しても、止水部材6はスプリンクラヘッドのフレーム3内から落下することなく、ストッパリング8上に残ることになるので、ストッパリング8が係止段部3Aに係止されたときに、止水部材6はストッパリング8上で保持される。
【0027】
図3(a)〜(c)以外にも、止水部材6とヘッド本体1とを接着剤で接着する、又は止水部材6をフレーム3又はヘッド本体1のいずれかに保持手段を設けることで、止水部材6の保持手段が、スプリンクラ作動時における弁体5の位置より上位に設けられる。
【0028】
また、上記実施例はデフレクタが降下するフラッシュ型スプリンクラヘッドで説明したが、ノズルに散水穴を有するマルチ型スプリンクラヘッドや、デフレクタがフレーム(アーム)の下端部に固定されているフレーム型スプリンクラヘッドに、本発明の止水部材6の保持手段を設けるようにしてもよい。
【0029】
また、感熱部材としては、ボール、バランサ等から構成される感熱分解部を使用したが、火災時に破裂するグラスバルブを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ヘッド本体、1A フランジ部、1B 段部、2 放水口、3 フレーム、3A 係止段部、 4 デフレクタ、5 弁体、5A 頭部、5B フランジ部、5C 挿入部、6 止水部材、6A 外周部、6B 連結穴、7 ガイドロッド、8 ストッパリング、9 コイルバネ、10 感熱分解部、11 感熱体、12 ボール、13 バランサ、14 スライダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放水口が貫設されたヘッド本体と、該ヘッド本体に接続されるフレームと、常時は該フレームに設けられたデフレクタと、前記放水口を封止し、火災時には開栓する弁体と、該弁体と前記本体間に設けられ、前記弁体に圧接される止水部材と、前記弁体を支持する感熱部材とを備えたスプリンクラヘッドにおいて、
前記止水部材を保持する保持手段を前記フレーム内又は前記ヘッド本体に備え、
前記保持手段は、前記感熱部材が落下して前記弁体が降下したときにおける前記弁体の頂部の位置より上側に設けられることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
内部に放水口が貫設されたヘッド本体と、該ヘッド本体の下部に接続されるフレームと、常時は該フレーム内に収容され、火災時には前記フレームの下方に降下するデフレクタと、前記放水口を封止し、火災時には前記デフレクタと共に降下して前記デフレクタの上に位置する弁体と、該弁体上部に設けられ、前記弁体に圧接される止水部材と、前記弁体を支持する感熱分解部とを備えたスプリンクラヘッドにおいて、
前記止水部材を保持する保持手段を前記フレーム内又は前記ヘッド本体に備え、
前記保持手段は、前記感熱分解部が落下して前記弁体が降下したときにおける前記弁体の頂部の位置より上側に設けられることを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記保持手段は前記ヘッド本体と前記フレームとから構成され、
前記止水部材の外径は前記フレームの内径より大きく、前記ヘッド本体のフランジ部の内径より小さく形成され、
前記止水部材の外周部は前記ヘッド本体と前記フレームに挟持されることを特徴とする請求項1又は2記載のスプリンクラヘッド。
【請求項4】
前記止水部材は中央に連結穴を有し、該連結穴の内径は、前記放水口の内径より大きいことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のスプリンクラヘッド。
【請求項5】
前記止水部材と前記弁体との接触面は、前記弁体の垂直方向の位置の変化に伴って移動することを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−183250(P2012−183250A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49830(P2011−49830)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】