説明

スプリンクラー用巻き出し管

【課題】配管作業の容易なスプリンクラー用巻き出し管を安価に製造する。
【解決手段】薄肉金属管2の内側に架橋ポリエチレン層3を形成するとともに、前記薄肉金属管2の外側にポリエチレン層4を形成して、スプリンクラー用巻き出し管1を構成する。また、前記薄肉金属管2の外側のポリエチレン層4は難燃性を増大するフィラーを混入したポリエチレンとすることが好ましい。さらに、前記構成の巻き出し管1の両端部にメカニカル継手7,17を介して接続管6,18S,18Lを設けることで、巻き出し管1の給水源側配管からスプリンクラーヘッド5までの接続作業を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー用巻き出し管に関し、詳しくはヘッダーからスプリンクラーヘッドまでの配管の作業性を容易にすることのできるスプリンクラー用巻き出し管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スプリンクラーの設置に際しては、設置対象とする区画まで配管された主管にヘッダーを設置し、そのヘッダーから複数のスプリンクラーヘッドまでを巻き出し管により分岐配管していた。従来、その巻き出し管には、配管を容易にするため、ステンレスや銅からなる金属製フレキシブル管が使用されていた。
その一例として、特許文献1に記載の「スプリンクラー巻き出し配管」があった。これは、スプリンクラー巻き出し配管に用いる軟質銅管の施工時の末端の微調節のしやすさの改善と応力集中を緩和することを目的として、スプリンクラー給水用の枝管6とスプリンクラーヘッド9(取付管7を含む)との間を軟質銅管11でつなぐ巻き出し配管であって、前記軟質銅管の少なくとも一方の端部に蛇腹状の波付部分12,(13)を形成したスプリンクラー巻き出し配管である。
【0003】
【特許文献1】特開平08−257159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように金属製のフレキシブル管の場合は、製造工程において、蛇腹状のフレキシブル部分を成形する工程が必要であり、コストアップとなる問題があった。また、フレキシブル管は通水時の圧力損失が大きいため、その分、送水用のポンプを大型にする必要があった。
そこで、本発明は、フレキシブル部分を有することなく配管に必要な可撓性を備えるとともに通水時の圧力損失が小さく、かつ配管時の作業性の良いスプリンクラー用巻き出し管を提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のスプリンクラー用巻き出し管は、薄肉金属管の内側に架橋ポリエチレン層を形成するとともに前記薄肉金属管の外側にポリエチレン層を形成した巻き出し管本体と、該巻き出し管本体の一端にメカニカル継手を介して接続されて他端部に雄ねじが刻設された接続管と、前記巻き出し管本体の他端にメカニカル継手を介して接続されて他端部に雌ねじが刻設された接続管とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記他端部に雌ねじが刻設された接続管の前記雌ねじにスプリンクラーヘッドを螺着することも可能である。
また、前記薄肉金属管の外側のポリエチレン層は難燃性を増大するフィラーを混入したポリエチレンとすることが好ましい。
さらに、前記薄肉金属管の外側ポリエチレン層の外表面に耐火塗料を塗布することも可能である。
【発明の効果】
【0006】
以上述べたように本発明によれば、薄肉金属管の内側に架橋ポリエチレン層を形成し、前記薄肉金属管の外側にポリエチレン層を形成した三層構造としたことで、配管の際に必要な可撓性が得られるとともに、湾曲させた際に座屈することなく配管が可能となる。また、従来のフレキシブル管に比べて、フレキシブル部分を成形する工程が不要となった分、コストダウンが可能となる。
さらに、両端部にメカニカル継手を設けたことで接続管を給水源側配管にねじ込み接続する際に、接続管のみを捩じるだけですみ、ユニオン継手が不要となり、作業性が向上する。
またさらに、フレキシブル管に比較して通水時の圧力損失が小さいため、その分、送水用のポンプの小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、スプリンクラー用巻き出し管の本体部分の構造を示す部分断面図である。
スプリンクラー用巻き出し管(以下、巻き出し管)1は、薄肉金属管2の内側に架橋ポリエチレン層3を形成し、薄肉金属管2の外側にポリエチレン層4を形成した構造をしている。これらの製造は押し出し成形により行われる。薄肉金属管2の材質はアルミニウム、銅、ステンレス、鋼およびそれらの合金を用いることが可能である。図示例の巻き出し管1は、外径20±1mm、肉厚2.25±0.5mmとした。
【0008】
巻き出し管1は、薄肉金属管2の内側に架橋ポリエチレン層3を形成し、薄肉金属管2の外側にポリエチレン層4を形成したことで、強度、耐蝕性等が増大する。特に、巻き出し管1を配管の際に湾曲させたときに、架橋ポリエチレン層3が薄肉金属管2をその内側から構造的に支えることで、薄肉金属管2が座屈することを効果的に防止する働きをする。
さらに、巻き出し管1は、従来使用されていたフレキシブル管に比較して通水時の圧力損失が小さいため、その分、送水用のポンプの小型化が可能となる。
【0009】
薄肉金属管2の外側のポリエチレン層4は、一般的なポリエチレンであってもよいが、難燃性、耐火性を向上させるため、フィラーを混入することが好ましい。フィラーとしては、難燃性、耐火性を増大するものとして、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルクその他の無機フィラー、または有機フィラーを用いることが可能である。
【0010】
また、図示しないが、ポリエチレン層4の外表面に耐火塗料を塗布することが好ましい。具体的には、例えば、主成分としてポリ燐酸アンモニウムを含む塗料を塗布することが可能である。ポリ燐酸アンモニウムを含む塗料を塗布した場合、火災発生の際、雰囲気温度が200〜300度になると発泡を開始し、最終的には25〜50倍程度に発泡し、良好な断熱効果を発揮する。
【0011】
次に、上述した巻き出し管1の使用形態について説明する。図2は給水源側配管からスプリンクラーヘッドまでの配管を示す断面図であり、図3は図2を分解した状態を示す断面図である。
なお、図中の右上部分には、給水源側配管のサイズが異なる場合の2通りを示している。図2および図3において、スプリンクラーヘッド5は、ヘッド側の接続管6の下端に螺着されている。接続管6の上端は、メカニカル継手7により、巻き出し管1に接続されている。メカニカル継手7は、巻き出し管1が外側に嵌合されるインナーコア8、その外側の外筒部9、外筒部9の外周部に刻設された雄ねじ部11、Oリング12,13、固定リング14、ナット15とから構成されている。これらを順番に組み立てて、ナット15を雄ねじ部11に締め込むことで、巻き出し管1がヘッド接続管6に接続される。
【0012】
次に、巻き出し管1は、図示しないが、天井下の空間を任意に湾曲させて、給水源側配管であるソケット16S,16L近傍まで配管される。巻き出し管1の他端は、メカニカル継手17により、給水源側の接続管18S,18Lに接続されている。メカニカル継手17は、巻き出し管1が外側に嵌合されるインナーコア19、その外側の外筒部21、外筒部21の外周部に刻設された雄ねじ部22、Oリング23,24、固定リング25、ナット26とから構成されている。
これらを順番に組み立てて、ナット26を雄ねじ部22に締め込むことで、巻き出し管1が接続18S,18Lに接続される。接続管18S,18Lの他端は、雄ねじ部27S,27Lが刻設されていて、ソケット16S,16Lに螺着されている。
【0013】
現場での配管作業に際しては、予め、巻き出し管1に、スプリンクラーヘッド5を螺着した接続管6、および接続管18Sと接続管18Lのいずれかを仮組みしておき、スプリンクラーヘッド5側からまたはソケット16S,16L側から組み込み、それぞれの反対側まで、巻き出し管1を適宜湾曲させながら配管する。接続管6、および接続管18S,18Lの組み付けが終了したら、それぞれ両端のメカニカル継手7,17のナット15,26を本締めして、メカニカル継手7,17を完全にシールして、作業終了となる。
これらの作業において、接続管6、および接続管18S,18Lを接続する際に、最初はメカニカル継手7,17が完全に締め込まれていないため、接続管6、および接続管18S,18Lは、巻き出し管1に拘束されることなく、ねじ込み作業が可能である。すなわち、通常の配管で必要であったユニオン継手が不要となる。その結果、部品点数が減った分、天井位置つまり高所、狭所における作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るスプリンクラー用巻き出し管の本体部分の構造を示す部分断面図である。
【図2】給水源側配管からスプリンクラーヘッドまでの配管を示す断面図である。
【図3】図2を分解した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 スプリンクラー用巻き出し管
2 薄肉金属管
3 架橋ポリエチレン層
4 ポリエチレン層
5 スプリンクラーヘッド
6 接続管
7 メカニカル継手
8 インナーコア
9 外筒部
11 雄ねじ部
12,13 Oリング
14 固定リング
15 ナット
16S,16L ソケット
17 メカニカル継手
18S,18L 接続管
19 インナーコア
21 外筒部
22 雄ねじ部
23,24 Oリング
25 固定リング
26 ナット
27S,27L 雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉金属管の内側に架橋ポリエチレン層を形成するとともに前記薄肉金属管の外側にポリエチレン層を形成した巻き出し管本体と、
該巻き出し管本体の一端にメカニカル継手を介して接続されて他端部に雄ねじが刻設された接続管と、
前記巻き出し管本体の他端にメカニカル継手を介して接続されて他端部に雌ねじが刻設された接続管と、
を備えたことを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリンクラー用巻き出し管において、
前記他端部に雌ねじが刻設された接続管の前記雌ねじにスプリンクラーヘッドを螺着したことを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスプリンクラー用巻き出し管において、
前記薄肉金属管の外側のポリエチレン層は難燃性を増大するフィラーを混入したポリエチレンよりなることを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のスプリンクラー用巻き出し管において、
前記薄肉金属管の外側のポリエチレン層の外表面に耐火塗料を塗布したことを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−264(P2010−264A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162699(P2008−162699)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(592049863)株式会社防災企画 (4)
【Fターム(参考)】