説明

スプレー塗布のためにエポキシ・コーティングを予熱するための方法およびシステム

エポキシ材料のスプレー塗布のための方法およびシステムが提供される。システム(10)は、混合およびスプレー塗布に備えてエポキシ材料(36、50)を収容し予熱するためのリザーバとして二重壁面のタンク構造(12)を含む。エポキシ材料(36、50)の各成分は、それらの成分が混合される前に予熱される。予熱後には、次にそれらの成分が一緒に混合されスプレーで塗布される。本発明の方法およびシステムは、装置の動作不能時間およびクリーニングを短縮しながらも高品質の、スプレーで塗布するエポキシ・コーティングを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エポキシ材料のスプレー塗布のためのシステムに関する。より詳細には、本発明は、粘度を低下させ、それにより、スプレー塗布を容易にするために、エポキシ材料の様々な成分をそれらが混合される前に予熱するための方法およびシステムを対象としている。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エポキシ・コーティングは、当技術分野でよく知られており、その例外的な耐久性および構造上の特徴から、エポキシベースの保護コーティングは、多種多様の材料に使用するための保護および装飾用のコーティングとして商業上受け入れられてきた。例えば、エポキシベースの保護コーティングは、最も広く使用される腐蝕防止方法の一つである。それらは、大気への露出から腐蝕性の高い環境への完全な浸漬に至る広範囲の腐蝕状況の下で、金属、コンクリート、アルミニウムおよび他の構造に長期間の保護を提供するために使用される。さらに、エポキシ・コーティングは、簡単に利用でき、スプレー、ローラーおよびブラシを含む様々な方法で簡単に塗布することができる。それらは、金属、コンクリートおよび他の下地(substrate)によく付着し、水蒸気透過率が低く、水、塩化物および硫酸塩イオンの侵入に対するバリアとして働き、様々な周囲露出状況の下で優秀な腐蝕保護を提供し、多くの化学物質および溶媒に強い抵抗力を有する。その結果、メンテナンス、船舶、建設、建築、飛行機および製品の仕上げを含む多数の産業が、エポキシ・コーティング材の幅広い使用を採用してきた。
【0003】
現在のエポキシ・コーティング産業に利用される最も一般的な材料は、複数成分系または多液系(multi−part)のエポキシ材料である。一般的に、エポキシは、第1のベース樹脂母材および少なくとも第2の触媒または硬化剤を含むが、着色剤や骨材成分などの他の成分を追加することもできる。2成分または2部(two parts)が分離して別々のままの間は、それらは液状のままである。それらの2成分が一緒に混合された後、典型的には熱、湿気または紫外線の光源に曝露することによって誘発される硬化プロセスが始まり、それにより、混合された材料が急速に固体化し始める。樹脂のベースおよび触媒は、典型的には粘稠性において高粘度であり、混合されるときに、一般的にペースト様の粘稠性を有する。
【0004】
従来技術では、エポキシが仕上げコーティングとして非常に望ましい特徴を有するが、塗布の好ましい方法がスプレー塗布であることが難しい点である。エポキシをスプレー塗布しようとするときには、2つの欠点に出合う。第1に、材料のポット・ライフが短いので、塗布する前に大量の材料を混合することができない。したがって、スプレー塗布の直前に必要性に基づいて混合しなければならない。第2に、混合されたエポキシ材料の元々の粘度の粘稠性は、スプレー塗布にあまり適さない。典型的な従来技術のスプレー塗布に必要な粘稠性までエポキシを薄めるためには、エポキシは、非常に高い割合の体積で溶媒を添加しなければならない。このような溶媒は、典型的には、粘度を下げることがその主な機能である揮発性有機化合物(VOC)を多く含有し、それにより、従来のエア、エアレスおよび静電スプレー装置によるスプレー塗布に適した粘稠性をもたらす。エポキシ・コーティング材料に溶媒を加えることにより、エポキシ・コーティング材料のVOCの含有量が大幅に増大し、完成し硬化したコーティングの構造厚さが減少する。
【0005】
上記の点を考えると、エポキシ・コーティング材のスプレー塗布の問題点は2つに分けられる。まず、政府の環境および健康被害に関する規制の順守の強化が高まっており、それらの規制により、コーティング材料の製造業者およびエンド・ユーザが新しいコーティング技術を評価するように促されてきた。大気清浄法では、コーティング材料で検出されるVOC含有のタイプおよび量の両方に規制を設けており、より固い、無溶媒および水性の保護コーティング・システムを対象とする調査が行われている。こうした調査の結果、より新しいエポキシ材料は、粘性が高く、そのためスプレーで塗布したときに仕上がりの質が劣るか、または薄過ぎて、スプレーで塗布されるエポキシ・コーティングから通常予期されるタイプの高い構造のコーティングを製造できない。
【0006】
エポキシ・コーティング材を下地にスプレー塗布するための従来技術において、多くのプロセスおよび技術が提案されてきており、従来技術のスプレー・プロセスは、溶媒の使用により材料粘度の低下を対象としている。ほとんどの場合、このようなスプレー動作は、100ポイズ程度の低粘度の材料で動作し、約6.90×10Pa(100psi)以下の程度の比較的低い塗布圧力を利用する。
【0007】
したがって、高分子量の高粘度ポリマーの熱硬化性材料を高温でスプレー塗布するシステムおよび方法が必要である。スプレー塗布に適した粘稠性を有する混合されたエポキシ製品を提供しながらも、溶媒添加の必要性を無くすかまたは減らすエポキシ・コーティング材を塗布するシステムおよび方法がさらに必要である。装置の長い動作不能時間または動作の初期状態に戻る時間なしに低粘度のエポキシをスプレーで塗布することができる連続した動作が可能である、エポキシ材料をスプレー塗布するためのシステムがやはりさらに必要である。簡単に言うと、当技術分野には、こうした特徴をもつ高分子量のエポキシ・コーティング材をスプレーするための実証済みの技術は全くない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
このようにして、本発明は、VOC溶媒の追加によって薄める必要なしにスプレー塗布に備えてエポキシ材料の粘度を低下させることができる方法およびシステムを提供する。本発明の方法およびシステムでは、エポキシ材料の成分部分(component parts)が、混合される前に予熱され、それにより、材料を薄めるかまたは溶媒の追加の必要なしに材料粘度を大きく低下させることを実現する。
【0009】
本発明は、混合およびスプレー塗布に備えてエポキシ材料を収容し予熱するためのリザーバとして二重壁面のタンク構造を準備し用意する。タンクの内壁は、ベース樹脂が保管される保管リザーバを形成する。二重壁構造の内壁と外壁の間の空隙に、内側タンクを取り囲むウォーター・ジャケットを提供する。ウォーター・ジャケット内で要素が加熱され、ウォーター・ジャケット内の水を加熱するように働き、内側タンクおよびその中に保管される樹脂を加熱する。好ましくは、ウォーター・ジャケットは、約150°Fと160°Fの間の吐出温度まで樹脂を加熱する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、樹脂の加熱は2つの工程で行われることを留意することが重要である。第1の加熱工程では、タンクの樹脂は、最初に、樹脂が流れることが可能であるが、樹脂中の様々な各種成分の蒸発温度より十分低い温度まで加熱される。これは、ベース樹脂中の各種化学成分が、フラッシュ・オフすなわち蒸発分離(flashing off)することを防ぎ、そのフラッシュ・オフによって樹脂の化学組成および特徴が変わるのを防止する。第2の加熱工程では、樹脂が保管タンクの外へポンプ輸送されているときに、樹脂を所望の塗布温度まで加熱しながら樹脂を密閉された環境に収容するように働く、一連の加熱コイルに入る。このようにして、たとえ蒸発が起きても、完全に収容され、全ての樹脂成分が混合ノズルに完全なまま運ばれる。同様に、開放した容器中で同じ方法を使用して触媒を目標温度範囲まで加熱した場合、触媒中のアンモニアなどそれらの成分のうちいくつかが蒸発し完成品に問題を生じることになる。触媒を解放されたチャンバで加熱することができないので、ウォーター・ジャケット内に属する他の組のコイルが設けられる。以下に詳細に考察するように、触媒も所望の温度範囲まで予熱するために、触媒は混合する前にそれらのコイル中を通る。
【0011】
機械が動作している間に樹脂タンクを充填するのを容易にするために、さらに他の組のコイルを設けることができる。そのコイルは、タンクの外側から樹脂タンク内に延び、樹脂を樹脂保管タンク内に入れる前に予熱するのを可能にする。それにより、樹脂保管タンク中に新たに加えられる材料が予熱されるのを待つ間に材料の追加を止める必要なしに樹脂タンクを定期的に充填することが可能になる。
【0012】
樹脂は、加熱された後で樹脂保管タンクから樹脂用ポンプによって引き出される。触媒は、第2のポンプによって触媒加熱コイルを通してポンプで押し出される。次いで、樹脂および触媒の流れは、第3の混合ポンプで合流し、その混合ポンプが、それら2成分を一緒に混合し、加圧されたエポキシを、所望の表面に塗布するためのスプレー塗布器に供給する。したがって、本発明の方法およびシステムは、予熱されその粘度が溶媒を加える必要なくスプレー塗布するために十分低い二液系(two−part)のエポキシ混合物を提供する。結果として得られたコーティングは、従来技術のシステムおよび方法を使用して塗布されたエポキシと比べて、構造が改善され構造上の値が高い。
【0013】
したがって、本発明の目的は、エポキシ・コーティング材料のスプレー塗布のための方法およびシステムを提供することである。本発明の他の目的は、VOC溶媒で材料を薄める必要を無くしながら、エポキシ・コーティング材料のスプレー塗布のための方法およびシステムを提供することである。本発明の他の目的は、成分部分を一緒にして混合する前に密閉された環境で材料の成分部分を予熱し、それにより、VOC溶媒を加える必要なしにエポキシ材料の粘度の低下を実現することによるエポキシ・コーティング材料のスプレー塗布のための方法およびシステムを提供することである。本発明の他の目的は、やはり連続に近い動作(operational duty)を可能にしながら材料粘度を大幅に低下させるようにして材料を予熱することができる、エポキシ材料のスプレー塗布のための方法およびシステムを提供することである。
【0014】
それらは、本発明の他の目的と共に、本発明を特徴付ける新規性の様々な特徴と併せて、特に本明細書に添付の特許請求の範囲で指摘され、本開示の一部をなす。本発明と、その動作の利点と、その使用によって達成される特定の目的をよりよく理解するためには、添付の図面および本発明の好ましい実施形態が示される説明的な事項を参照すべきである。
本発明を実行するために現在考えられる最良の形態を図面に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照すると、エポキシ・コーティング材のスプレー塗布のためのシステムの好ましい実施形態が示されており、図に10で全体的に示される。この好ましい実施形態が例示のために示されるが、本発明のシステムおよび方法は、やはり本発明の範囲内に包含されることが意図される多くの異なる構造的な変形形態を使用して実現可能であることを理解することが重要である。さらに、本出願の目的では、「spray application(スプレー塗布)」という用語は、材料が分散して小さい微粒子または小滴になり、それらが下地上に扇、シートまたは円錐型などの模様に広げられ、その模様は下地上の付着点においてスプレー・ノズルの開口の直径の何倍もの幅を有することを意味する。したがって、スプレー塗布は、付着点において材料の寸法が開口部の寸法とほぼ同じ寸法である「flowing(流れる)」または「extruding(押し出す)」とは区別するようにして定義される。したがって、上記で考察したように、本発明は、粘度を低下させるために溶媒などを必要としない塗布温度および圧力で材料を扱う、構造用のエポキシなど、高分子量のポリマーの熱硬化性エポキシ材料のスプレー塗布のための方法およびシステムを対象とする。
【0016】
次に図1および2に移ると、本発明のシステム10は、概して、加熱タンク12と、エポキシ樹脂14の加熱タンク12を通る流れを確立する手段と、触媒16の加熱タンク12を通る流れを確立する手段と、複数成分系のエポキシ混合物を形成するように樹脂および触媒の流れを混合する手段18と、そのエポキシ混合物を下地面上にスプレー塗布するための吐出ノズル20とを含むことが分かる。
【0017】
加熱タンク12は、本発明のシステム10の主要な要素である。加熱タンク12は、二重壁構造を使用して構成される。加熱タンク12は、構造上の外壁22を含み、その外壁22は、アセンブリ全体を囲み、本発明のシステム10の必要な加熱要素を閉じ込め収容するように働く。タンクの外壁22は、金属製でもよく、補強された繊維ガラスなどの構造用ポリマーから形成してもよい。さらに、外壁22の外面は、システム10全体の性能およびエネルギー効率を向上させるために断熱してもよい。外壁22に関して全体的に間隔をあけて配置された内壁24が、加熱タンク12の内側に配置される。内壁24は、内面26および外面28を有し、前記外壁22および前記内壁24の前記外面28は、それらの間に加熱ジャケット30を形成するように協働する。具体的には、内壁24および外壁24が、伝熱媒体32を受け取り貯留するのに適したチャンバを形成するように協働し、それにより、加熱ジャケット30を作り出す。好ましい実施形態では、伝熱媒体32は水であるが、物体間の熱の効果的かつ効率的な伝達のために適していることが当技術分野で知られているどんな流体媒体も使用することができ、やはり本発明の範囲内に包含される。
【0018】
内壁24の内面26が、内側チャンバ34を作るようにして形成され、加熱ジャケット30によって少なくともその周囲を取り囲まれる。内側チャンバ34は、加熱ジャケット30から隔離されベース樹脂材料36をその中に受け貯留するように形成される。以下にさらに詳細に説明するように、周囲の加熱ジャケット30に含まれる伝熱媒体32から内側樹脂用チャンバ34への伝熱の結果、内側樹脂用チャンバ34内の樹脂36が予熱される。
【0019】
伝熱媒体32を加熱する手段38が、加熱ジャケット30内に配置され、伝熱媒体32と接触している。伝熱媒体32を加熱する手段38は、当技術分野で周知の任意の適切な加熱手段を含むことができる。例えば、加熱手段38は、電気抵抗式の加熱コイルあるいは天然ガス、プロパンまたは油を燃料とするバーナなど、直接燃焼式の燃料バーナなど、任意の直接加熱手段でよい。同様に、加熱手段38は、間接加熱手段の任意の周知の手段でよい。概して、本発明のために、伝熱媒体32を加熱する手段38は、伝熱媒体32に熱を分け与えるための任意の知られた装置を取り囲む。
【0020】
したがって上記に述べたように、加熱ジャケット30は、伝熱媒体32が樹脂用チャンバ34に含まれる樹脂36を予熱するために一様かつ不変の熱供給をそれにより容易にすることができる手段を提供する。加熱ジャケット30内に加熱手段38を有するのに加えて、本発明では、少なくとも樹脂伝熱管40および触媒伝熱管42を用意し、それら両方が前記加熱ジャケット30内に配置される。樹脂伝熱管40は、連続した配管として形成され、その配管は、前記樹脂用チャンバ34と流体連絡した入口端部44と、加熱タンク12の外壁22の外側に配置された出口端部46とを有する。同様に、触媒伝熱管42は、連続した配管として形成され、その配管は、触媒リザーバ50と流体連絡した入口端部48と、加熱タンク12の外壁22の外側に配置された出口端部52とを有する。触媒および樹脂伝熱管42、40の両方の入口端部と出口端部の間を延びるその配管は、加熱ジャケット30を通って延在する。さらに、樹脂および触媒伝熱管40、42の両方の配管は、加熱ジャケット30から伝熱管40、42の内部への伝熱を促進するために拡大した表面積を与える態様で形成される。これを実現するには、樹脂および触媒伝熱管40、42はそれぞれ、全て加熱ジャケット30中を通る、いくつかのループ状の配管を有するコイルとして形成することができる。さらに、配管の外面は、リブやフィンなど他の表面積の拡大要素(enhancement)を含むことができる。
【0021】
本発明のシステムの動作部分は、樹脂14の流れを確立する手段と、触媒16の流れを確立する手段と、エポキシ・コーティングの吐出に備えて樹脂および触媒の流れを混合する手段18とを含む。いずれの場合にも、好ましい実施形態では、流れを確立する手段は、好ましくはポンプである。そのポンプは、流体材料を伝達するのに適したどんなタイプのポンプでもよい。樹脂の流れを確立する際には、樹脂用ポンプ14は、好ましくは樹脂用伝熱コイル40の出口端部に連結され、それにより、樹脂用チャンバ34から樹脂伝熱コイル40を通して樹脂36を引き出す。触媒の流れは、触媒ポンプ16によって確立し、その触媒ポンプ16は、触媒リザーバ50から触媒を引き出しその触媒を触媒伝熱管42の入口端部に吐出し、それにより、触媒を、触媒伝熱管42中を通して押し出す。次いで、樹脂54の流れおよび触媒56の流れの両方が混合ポンプ18に吐出され、そこでは、触媒および樹脂が混合され、その混合された複数成分系のエポキシのスプレー塗布のためのスプレー・ノズル20に高圧で吐出される。特定のポンプの配置を説明するが、触媒および樹脂の流路の異なる位置にそれらを配置することによる様々なポンプの位置変更は、本発明の範囲内に包含される装置をやはり作製することを当業者は理解できる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、樹脂36および触媒は両方とも、それらが混合される前に別々に加熱されることに留意することが重要である。従来技術では、それら2つの部分(two parts)が加熱前に混合された場合、塗布器は、硬化前のポット・ライフが比較的短い活性化した材料で満たされたタンクに直面していた。さらに、塗布の最後には、タンク内に残っている混合された材料は破棄されていた。本発明は、別々に加熱されその後混合される2つの成分を提供し、それにより、エポキシ材料の必要な分しか混合する必要がなくなる。
【0023】
本発明の他の重要な特徴は、樹脂36の加熱が2つの工程で行われることである。第1の加熱工程では、樹脂タンク34の樹脂36は、最初に、樹脂36が低粘度に達し、それにより流れることが可能になるが、樹脂36内の各種成分の蒸発温度より十分低い温度まで加熱される。このことは、ベース樹脂36内の各種化学成分が、フラッシュ・オフすることを防ぎ、そのフラッシュ・オフによって樹脂36の化学組成および特徴が変化するのを防ぐ。第2の加熱工程では、樹脂36は、樹脂タンク34の外へポンプ輸送されているときに樹脂伝熱管44に入り、そこでは、約150°Fと160°Fの間の所望の塗布温度まで樹脂36を加熱する間は、配管の壁面が、樹脂36を密閉された環境に収容するように働く。このようにして、たとえ蒸発が起きても、完全に収容され、全ての樹脂36成分が混合ポンプ18に完全なまま運ばれる。同様に、解放した容器内で同じ方法を使用して約150°Fと160°Fの間の目標温度範囲まで触媒が加熱される場合は、触媒中のアンモニアなどそれらの成分のうちいくつかが蒸発し完成品に問題を生じることになる。触媒を解放されたチャンバで加熱することができないので、加熱ジャケット30内に備わっている触媒伝熱管42が設けられる。触媒は、混合の前に触媒伝熱管42中を通って、やはり触媒を所望の温度範囲まで予熱する。
【0024】
本発明のシステム10の効率を向上させ動作可能時間を最大限にするためには、システム10の動作中に樹脂タンク34を補充することを容易にするように、樹脂予熱コイル58を設けることもできる。樹脂予熱コイル58は、タンク12の外側から樹脂用チャンバ34内に延び、樹脂36を樹脂用チャンバ34に入れる前に予熱することを可能にする。これは、樹脂用チャンバ34に新たに追加された樹脂36が予熱されるのを待つ間に、材料の塗布を中止する必要なしに周期的に樹脂用チャンバ34を補充することを可能にする。
【0025】
次に図3に移ると、本発明の動作方法を最良に例示する概略図が提供される。概括的に言えば、本発明は、複数成分系または多液系(multi−part)のエポキシ材料のスプレー塗布の方法を提供する。最初に、ベース樹脂36の扱いに関する工程は、樹脂用チャンバ34をその中に有する加熱タンク12を用意する工程と、樹脂用チャンバ34をエポキシ樹脂36で満たす工程と、樹脂用チャンバ34内の樹脂36を第1の温度まで予熱する工程と、前記予熱された樹脂36を前記樹脂用チャンバ34から引き出し樹脂の流れ54を作り出す工程とを含む。触媒の扱いに関する工程は、触媒を用意する工程と、触媒の流れ56を作り出す工程と、前記触媒の流れ56を第2の温度まで予熱する工程とを含む。樹脂54および触媒56の流れが一度予熱されると、触媒の流れ56および前記樹脂の流れ54は、混合され、スプレー塗布のためのスプレー・ノズル20に高圧で吐出される。
【0026】
任意に、本発明の方法は、2つの工程で樹脂36の材料を加熱する工程を備えてもよい。上述のように、第1の工程では、樹脂タンク34の樹脂36は、最初に、樹脂36が流れることを可能にするが、樹脂36内の各種成分の蒸発温度より十分に低い温度まで加熱される。このことは、ベース樹脂36内の各種化学成分が、フラッシュ・オフすることを防ぎ、そのフラッシュ・オフによって樹脂36の化学組成および特徴が変化するのを防ぐ。第2の加熱工程では、樹脂36は、保管タンク34の外へポンプ輸送されているときに樹脂伝熱管40に入り、そこでは、約150°Fと160°Fの間の所望の塗布温度まで樹脂36を加熱する間は、配管の壁面が、樹脂36を密閉された環境に収容するように働く。
【0027】
明らかに、本発明の記載は、システム10に関して上記に記載した加熱タンク12の構造は、様々な加熱工程それぞれの場合の樹脂36および触媒を加熱するための本発明の方法で採用されるものと同じ装置であると規定している。
【0028】
したがって、本発明が、VOC溶媒を加える必要なしに材料の粘度に大幅な低下をもたらすエポキシ材料のスプレー塗布のための新しい方法およびシステムを提供することが分かる。さらに、本発明は、材料の扱い方に関する劇的な効率の向上ならびに当技術分野で知られている方法およびシステムと比べて動作可能時間が劇的に増加したエポキシ材料のスプレー塗布のためのシステムを提供する。このような理由で、本発明は、相当な商業上の利点を有する、当技術分野における大幅な進歩を意味すると考えられる。
【0029】
本発明を具現化するある特定の構造が本明細書に示され説明されているが、基礎となる本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正形態および部品の再編成を行うことができ、本発明の添付の特許請求の範囲の範囲によって規定される場合を除き、示され説明された本明細書の特定の形態に限定されないことが当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の記載によるエポキシ材料のスプレー塗布のための好ましい実施形態システムの斜視図である。
【図2】図1の線2−2に沿ったシステムの断面図である。
【図3】本発明の方法およびシステムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂および触媒を含む複数成分系エポキシ材料をスプレー塗布するためのシステムにおいて、
外壁および内壁を含む加熱タンクであって、前記内壁が内面および外面を有し、前記外壁および前記内壁の前記外面がそれらの間に加熱ジャケットを形成するように協働し、前記内壁の前記内面が樹脂用チャンバを形成し、前記加熱ジャケットには伝熱媒体が収容されており、また前記樹脂が前記樹脂用チャンバ内に収容されている加熱タンクと、
前記加熱ジャケット内に配置された前記伝熱媒体を加熱する手段と、
前記加熱ジャケット内に配置されており、前記樹脂用チャンバと流体連絡された入口端部と、前記加熱タンクの外側に配置された出口端部とを有する樹脂伝熱管と、
前記加熱ジャケット内に配置されており、触媒リザーバに流体連絡された入口端部と、前記加熱タンクの外側に配置された出口端部とを有し、前記触媒リザーバと前記出口端部の間の密閉系である触媒伝熱管と、
前記樹脂伝熱管を通る樹脂の流れを確立する手段と、
前記触媒伝熱管を通る触媒の流れを確立する手段と、
前記樹脂の流れおよび前記触媒の流れを受け取り混合し、前記混合物を高圧で吐出するように構成された混合ポンプと、
前記吐出された混合物を塗布するためのスプレー塗布器とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記加熱手段が、電気加熱コイルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加熱手段が、燃料燃焼式のバーナである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記加熱ジャケット内に配置された樹脂予熱管をさらに備え、前記樹脂加熱管が、前記加熱タンクの外側の入口端部と、前記樹脂用チャンバと流体連絡して配置された出口端部とを有し、樹脂が前記入口端部に導入され、前記樹脂用チャンバ内に入る前に予熱される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記樹脂用チャンバ内の前記樹脂が、前記樹脂中の各種化学成分の蒸発温度より低い温度まで予熱される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記樹脂が、前記樹脂伝熱管中を通って流れるときに約150°Fと160°Fの間の温度まで加熱される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記触媒が、前記触媒伝熱管中を流れるときに約150°Fと160°Fの間の温度まで加熱される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記樹脂伝熱管が、前記加熱ジャケット内に配置されたコイル状の配管である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記触媒伝熱管が、前記加熱ジャケット内に配置されたコイル状の配管である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも樹脂および触媒を含む複数成分系エポキシ材料をスプレー塗布する方法において、
樹脂用チャンバをその中に有する加熱タンクを用意する工程と、
前記樹脂用チャンバをエポキシ樹脂で満たす工程と、
前記樹脂用チャンバ内の前記樹脂を第1の温度まで予熱する工程と、
前記予熱された樹脂を前記樹脂用チャンバから引き出し樹脂の流れを作り出す工程と、
触媒を用意する工程と、
触媒の流れを作り出す工程と、
前記触媒の流れを密閉された流れの管の中で第2の温度まで予熱する工程と、
前記触媒の流れおよび前記樹脂の流れを混合する工程と、
前記混合された樹脂および触媒の流れを高圧で吐出する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1および第2の温度が、約150°Fと160°Fの間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂の流れを第2の温度まで加熱する工程をさらに含み、前記第2の温度が前記第1の温度より高い、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の温度が、樹脂中の各種化学成分の蒸発温度より低く、前記第2の温度が、約150°Fと160°Fの間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱タンクが、
外壁と、
内面および外面を有する内壁と、
前記外壁と前記内壁の前記外面の間に配置され、伝熱媒体を収容する加熱ジャケットと、
前記内壁の前記内面によって形成され、前記樹脂がその中に収容される樹脂用チャンバと、
前記加熱ジャケット内に配置された前記伝熱媒体を加熱する手段とを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂の流れが、前記加熱ジャケット内に配置された樹脂伝熱管中を通って向けられ、前記樹脂伝熱管が、前記樹脂用チャンバと流体連絡する入口端部と、前記加熱タンクの外側に配置された出口端部とを有し、前記触媒の流れが、前記加熱ジャケット内に配置された触媒伝熱管中を通って向けられ、前記触媒伝熱管が、触媒リザーバと流体連絡する入口端部と、前記加熱タンクの外側に配置された出口端部とを有し、前記触媒伝熱管が、前記触媒リザーバと前記出口端部の間の密閉系である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂用チャンバ内の前記樹脂が、前記樹脂中の各種化学成分の蒸発温度より低い前記第1の温度まで予熱される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記樹脂が、前記樹脂伝熱管中を流れるときに約150°Fと160°Fの間の第2の温度まで加熱される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、前記触媒伝熱管の中を流れるときに約150°Fと160°Fの間の温度まで加熱される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂伝熱管が、前記加熱ジャケット内に配置されたコイル状の配管である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒伝熱管が、前記加熱ジャケット内に配置されたコイル状の配管である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−536681(P2008−536681A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507652(P2008−507652)
【出願日】平成18年2月11日(2006.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/005030
【国際公開番号】WO2006/112922
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507342858)ウォレン エンヴァイロメンタル,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】