説明

スプレー用ノズルおよびこれを備えるスプレー装置

【課題】除塵用スプレー装置に用いた場合には塵埃の付着対象が硬質であるか軟質であるかを問わずに好適な除塵能力を発揮し、また塗装用スプレー装置に用いた場合にはきめ細かな塗装が可能であって塗料の液垂れを防止することのできるスプレー用ノズルを提供する。
【解決手段】充填された内容物を気体またはエアロゾル含有気体として噴射するスプレー容器に対して着脱可能に取り付けられる導出管12と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズル14と、を有するスプレー用ノズル10であって、前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸20から径方向にオフセットした位置に、前記内容物を噴射する吹出口16が、前記回転軸方向および径方向に対してともに交差する方向に向けて形成されていることを特徴とするスプレー用ノズル10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵用スプレーや塗装用スプレーなどのスプレー装置、およびこれに着脱可能に装着されて用いられるスプレー用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンなどの精密機器や切削機などの産業用機械、OA機器、家庭用電化製品、家具等に付着した塵埃を吹き払うための除塵用スプレー装置(ダストスプレー)が広く用いられている(下記特許文献1を参照)。ダストスプレーは、一般に金属缶などの耐圧性の容器に、代替フロンやDME(ジメチルエーテル)、炭酸ガスなどを適宜混合した高圧ガスを充填し、弁体と一体化したボタンの押下によってこれを勢いよくノズルから噴射することで塵埃を吹き飛ばすものである(下記特許文献2を参照)。
【0003】
一方、塗装用スプレー装置(塗装用スプレー)は、金属缶などの耐圧性の容器に充填された液化ガスや圧縮ガスなどの高圧の噴射剤とともに、液体または粉体の塗料を勢いよく噴き出すことで、これをエアロゾルに変えて被塗装物に吹き付けるものである。
【0004】
スプレー容器にはロングノズルと呼ばれる管体が着脱可能に、または固定的に取り付けられ、内容物である高圧ガスや塗料を、所望の対象物に狙いを定めて噴射することができるよう構成されることが一般的である。またロングノズル先端の吹出口を細径にすることで、噴射される内容物を急激に膨張させ、高圧ガスを瞬時に気化させたり、塗料をエアロゾルに微細化させたりすることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−52676号公報
【特許文献2】特開2004−237149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来の除塵用スプレー装置にあっては、高圧ガスの噴射力が必ずしも十分とはいえず、特に布などの柔軟体に付着した塵埃については、噴射力を受けた柔軟体が変形してしまうことにより、目的の塵埃を除去する力が減殺されてしまい、除塵能力を十分に発揮することができないという問題があった。
【0007】
また塗装用スプレー装置にあっては、ノズルの吹出口を細径にするのみではエアロゾルの微細化が不十分であるため、きめ細かい塗装ができず、また塗料の塗布厚が厚くなって液垂れが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち除塵用スプレー装置に用いた場合には塵埃の付着対象が硬質であるか軟質であるかを問わずに好適な除塵能力を発揮し、また塗装用スプレー装置に用いた場合にはきめ細かな塗装が可能であって塗料の液垂れを防止することのできるスプレー用ノズルを提供することを目的とする。また本発明は、かかるスプレー用ノズルを備えるスプレー装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスプレー用ノズルは、容器に充填された高圧ガスや塗料などの内容物を、回転軸まわりに所定径で回転する吹出口から連続的に噴射することにより、塵埃の付着物に対して当該塵埃を取り囲むように吹き付け力を与えることでこれを浮き立たせて除去することができ、また塗料をきめ細かいエアロゾルに微細化することができるという技術思想に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち本発明のスプレー用ノズルは、
(1)充填された内容物を気体またはエアロゾル含有気体として噴射するスプレー容器に対して着脱可能に取り付けられる導出管と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズルと、を有するスプレー用ノズルであって、
前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸から径方向にオフセットした位置に、前記内容物を噴射する吹出口が、前記回転軸方向および径方向に対してともに交差する方向に向けて形成されていることを特徴とするスプレー用ノズル;
(2)前記内容物が除塵用の高圧ガスである上記(1)に記載のスプレー用ノズル;
(3)回転ノズルが、前記導出管とそれぞれ連通した複数の吹出口を前記回転軸に対して回転対称位置に有し、かつ、前記複数の吹出口が、前記回転軸まわりに同一の回転方向に向けて形成されている上記(1)または(2)に記載のスプレー用ノズル;
(4)回転ノズルが、当該回転ノズルの回転により前記回転軸方向に軸流を発生させるファンを備えることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載のスプレー用ノズル;
(5)回転ノズルが、その先端より突出するブラシを有する上記(1)から(4)のいずれかに記載のスプレー用ノズル;
を要旨とする。
【0011】
また本発明のスプレー装置は、
(6)(A)除塵用の高圧ガスが充填されたスプレー容器と、(B)前記スプレー容器に対して着脱可能に取り付けられた導出管と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズルとを有し、前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸から径方向にオフセットした位置に、前記高圧ガスを噴射する吹出口が前記回転軸と交差する方向に向けて形成されているスプレー用ノズルと、(C)前記スプレー容器から導出管への前記高圧ガスの流通を閉止または開放する弁体と、を備え、前記弁体の操作により、前記回転ノズルを高圧ガスの噴射力によって回転させながら吹出口より当該高圧ガスを噴射する除塵用のスプレー装置;
(7)(A)液体または粉体の塗料、および圧縮された噴射剤が充填されたスプレー容器と、(B)前記スプレー容器に対して着脱可能に取り付けられた導出管と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズルとを有し、前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸から径方向にオフセットした位置に、前記塗料を微細化したエアロゾルと前記噴射剤の気化ガスとの混合ガスを噴射する吹出口が、前記回転軸と交差する方向に向けて形成されているスプレー用ノズルと、(C)前記スプレー容器から導出管への前記混合ガスの流通を閉止または開放する弁体と、を備え、前記弁体の操作により、前記回転ノズルを混合ガスの噴射力によって回転させながら吹出口より当該混合ガスを噴射する塗装用のスプレー装置;
を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスプレー用ノズルおよびスプレー装置によれば、回転ノズル先端の吹出口を、回転軸から径方向にオフセットした位置で、かつ回転軸方向と径方向に対してともに交差する方向、すなわち所定の回転方向成分をもつよう開口形成することにより、スプレー容器に充填された内容物を噴射した際の反力によって回転ノズルが軸回転する。このため気体またはエアロゾル含有気体として噴射される内容物は、回転軸を中心とする円形(または略円形)に回転拡散されるため、ロングノズル先端から集中的に噴射される従来のスプレー用ノズルやスプレー装置と比較して以下の二つの点で異なる作用効果を奏することとなる。
【0013】
第一に、本発明のスプレー用ノズルをダストスプレーに用いた場合には、回転軸である導出管の延長線上に塵埃を捕捉することにより、その周囲に連続的に高圧ガスの吹き付け力を与えることができる。またスプレー用ノズルを旋回させることにより、噴射される高圧ガスの圧力波が増幅され、吹き付け力を増大させることができる。このため、塵埃が布などの柔軟体に付着していた場合や、塵埃が付着対象に強固に付着していた場合も、布団たたきで布団を叩いて埃を浮き上がらせるごとく、目的の塵埃の周囲に連続的に打力を与えることでこれを容易に除去することができる。
これに対し従来のロングノズルやスプレー装置では、高圧ガスが一点に固定的に集中して噴射されるため、吹き付け力がむしろ塵埃に対する押し付け力として働いてしまい、これを本発明のように付着対象から浮き上がらせて除去する効果が得られるものではなかった。
【0014】
第二に、本発明のスプレー用ノズルを塗装用スプレーに用いた場合には、噴射剤の拡散によって塗料を分散させてエアロゾルとするにあたり、旋回する回転ノズル先端の吹出口からこれを連続的に噴射することにより、従来のロングノズルやスプレー装置を用いた場合に比べてより微細な粒径のエアロゾルとすることができる。
したがって本発明の塗装用スプレーを用いて壁面などの被塗装面に塗料を噴射した場合には、きめ細かな塗布が可能であり、被塗装面への塗料の浸透性がよく、また液垂れが生じないため垂直な被塗装面にも好適な塗布が可能となる。
【0015】
また本発明の更に具体的な態様として、回転ノズルに形成された吹出口を複数個とし、各吹出口を回転軸に対して回転対称位置に設けることにより、気体の噴射に伴う径方向の反力がバランスし、回転ノズルは偏心することなく導出管まわりに滑らかに回転する。このとき各吹出口を同一の回転方向に向けることにより、各吹出口が受ける気体噴射の反力は回転方向に相殺されることがなく、当該同一方向と反対の方向に向かって回転ノズルを良好に回転させることができる。
【0016】
また本発明の更に具体的な態様として、回転ノズルの軸方向に軸流を発生させる軸流ファンを設けてもよい。これにより、回転する吹出口から噴射される気体の回転成分が抑制され、軸方向成分が増大する。したがって高圧ガスやエアロゾル含有気体の回転拡散を抑制し、逆に塵埃に対する噴射力や被塗装面に対する吹き付け力を高めることができる。
【0017】
また本発明の更に具体的な態様として、回転ノズルの先端より突出するブラシをこれに設けてもよい。これにより、スプレー容器の内容物が除塵用の高圧ガスである除塵用スプレー装置にあっては、高圧ガスの噴射力とともにブラシによる直接的な払拭の効果を得ることができるため、塵埃の除去性能を更に高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明にかかるスプレー用ノズルおよびこれを備えるスプレー装置について、図面を用いて更に具体的に説明する。
図1は本発明の第一の実施形態にかかるスプレー用ノズル10、およびこれを備えるスプレー装置30の部分模式図である。耐圧缶32の下方は図示を省略している。
【0019】
<スプレー装置および内容物について>
本実施形態のスプレー装置30はダストスプレーであり、除塵用の高圧ガスが内容物として充填された耐圧缶32と押下ボタン34を備えるスプレー容器38に対して、スプレー用ノズル10を着脱可能に装着してなるものである。
押下ボタン34には、ノズル装着口36および図示しない弁体が一体に形成されており、スプレー装置30の不使用時には弁体によって高圧ガスとノズル装着口36とが遮断されている。そして使用者が押下ボタン34を押し下げることで弁体が耐圧缶32の内部にシフトし、ノズル装着口36に至る高圧ガスの流路が開放される。
【0020】
ノズル装着口36には本発明のスプレー用ノズル10の導出管12が着脱可能に取り付けられる。したがって上記効果を奏する本発明のスプレー用ノズル10と、通常のロングノズルとを除塵対象や被塗装対象に応じて適宜選択することができる。
すなわち、例えばスプレー用ノズル10をダストスプレーに用いる場合にあっては、パーソナルコンピュータ(PC)のキーボードや家具の凹溝などの狭い隙間に溜まった塵埃を除去する場合には通常のロングノズルをノズル装着口36に取り付けて使用し、布などの柔軟体や平板などに強固に付着した塵埃を除去する場合にはこれを本発明のスプレー用ノズル10に付け替えて用いることができる。
【0021】
耐圧缶32に充填される除塵用の高圧ガスとしては、HFC−134aやHFC−152aなどのいわゆる代替フロン、ジメチルエーテル(DME)、炭酸ガス、窒素ガスまたは空気などの液化ガスまたは圧縮性ガスより一種または複数種を混合して用いることができる。
これらのガスは大気圧以上、1.0MPa以下程度の高圧に加圧されて高圧気体または液体の状態で耐圧缶32に充填されており、大気圧に開放されると瞬時に減圧膨張して気化する。したがって後記に詳述する回転ノズル14先端の吹出口16から勢いよく吹き出される高圧ガスは気体であって、被噴射物や塵埃を濡らすことはない。
【0022】
なお、本実施形態のスプレー装置30を塗装用スプレーとして用いる場合は、内容物として塗料と噴射剤との混合物を耐圧缶32に充填すればよい。
塗料としては着色塗料、さび止め塗料、防水塗料、艶出し塗料、剥離防止塗料、下塗り塗料などを広く用いることができ、水性、油性、ラッカー系などの性質を問わない。また塗料は液体または粉体の態様で耐圧缶32に充填される。
【0023】
塗料を勢いよく噴射するとともにこれをエアロゾルに分散させるための噴射剤としては、上記除塵用の高圧ガスに用いられる各種液化ガスや圧縮性ガスのほかLPガスを用いることができる。噴射剤もまた大気圧以上かつ1.0MPa以下程度の高圧に加圧されて耐圧缶32に充填され、押下ボタン34の押し下げによって大気圧に開放されることで塗料とともに吹出口16から噴射される。また吹出口16を通過する際に噴射剤は急激に膨張するため、塗料は微細径にエアロゾル化して被塗装物に吹き付けられる。
以下の説明において特に断りなき場合、除塵用の高圧ガスを噴射剤と読み替えることで本発明のスプレー装置30を塗装用スプレーとして用いた場合の動作原理が同様に説明される。
【0024】
<スプレー用ノズルについて>
本発明のスプレー用ノズル10は、ノズル装着口36に基端が取り付けられる導出管12と、その先端に対して回転自在に取り付けられた回転ノズル14とを備えている。導出管12および回転ノズル14はともに内部に通孔を備え、両者を互いに連通することで導出管12の基端から回転ノズル14の先端までが高圧ガスの流路を構成する。
【0025】
導出管12には、高圧ガスの噴射方向を所定の向きに安定して定めることができるよう、噴射時に有意な変形を生じないリジッドチューブを用いるとよい。その材質、長さ、肉厚などは特に限定されず、金属やプラスチックからなる従来のロングノズルに対し、その先端に後述する回転軸20を形成して用いることもできる。
導出管12の中心線形状は図示のように直線状とするほか、湾曲または分岐していてもよい。一方、導出管12の中心線に対する断面形状(横断面形状)についても特に限定されないが、これを円形とすることで高圧ガスの流れが安定する。また特に後述する第三の実施形態のスプレー用ノズル10(図4を参照)のように、導出管12の先端部自体を回転ノズル14の回転軸とする場合は、導出管12の横断面形状を円形にすることで、回転ノズル14の滑らかな回転が可能になる。
【0026】
回転ノズル14は、基端側が導出管12の先端に装着され、先端側に高圧ガスの吹出口16が開口形成されている。本実施形態のスプレー用ノズル10では、湾曲した短尺の管体を回転ノズル14として用いている。また軸固定部22で導出管12に固定された回転軸20を回転ノズル14に挿通し、回転ノズル14の抜け止めとしてストッパー24を回転軸20に設けることで、回転ノズル14は導出管12に対して回転自在に取り付けられている。
【0027】
回転軸20は導出管12の中心線上であって、導出管12の先端の伸びる方向と一致して存在している。ただし回転ノズル14が回転軸20まわりに回転可能であって、かつ噴射される高圧ガスが導出管12と回転ノズル14との隙間から有意に漏れ出すことのないかぎり、回転軸20が導出管12の中心に対して偏心した位置に取り付けられても、導出管12の先端の伸びる方向と回転軸方向とが不一致であってもよい。
具体的な回転軸20としては、本実施形態のように導出管12の内部に針金などの細線を挿通する態様のほか、回転ノズル14より先端側に向けて回転軸20を突出させ、これを固定具によって導出管12と連結する態様でもよい。また本実施形態のように導出管12と回転軸20とを別部材から構成するほか、両者を一部材にて一体成形してもよい。後者については、例えば後記第三の実施形態のように導出管12の先端部自体を回転軸20とすることもできる。
【0028】
回転ノズル14の先端に開口形成された吹出口16は、回転軸20から径方向にオフセットした位置に、回転軸方向(AX)および径方向(R)に対してともに交差する方向に向けて形成されている。換言すると、吹出口16の開口面の法線方向である噴射方向は、回転軸20まわりに回転する回転ノズル14の回転方向成分をもっている。これにより、吹出口16から高圧ガスを噴射すると、その反力によって回転ノズル14は上記回転方向と反対方向に回転軸20のまわりを回転することとなる。
【0029】
具体的には、図1に示すスプレー用ノズル10では、吹出口16が回転軸方向(AX)と回転方向(紙面手前側)との中間方向を向いているため、押下ボタン34の押し下げによって高圧ガスが吹出口16から噴射されると、回転ノズル14は回転軸方向(AX)から見て反時計回りに回転する。したがってスプレー用ノズル10は、回転軸20を中心として前記オフセット幅を半径とする円周上を吹出口16が移動することとなり、高圧ガスを径方向(R)に拡散させながらこれを回転軸方向(AX)に噴射することができる。
【0030】
このため本実施形態のスプレー装置30によれば、回転軸方向(AX)の延長線上に目的の塵埃を捉えた状態で押下ボタン34を押下して高圧ガスを噴射することで、当該塵埃の周囲に連続的に高圧ガスの打力を与え、これを付着対象から浮き立たせて除去することができる。すなわち、塵埃を中心とする円周上に高圧ガスの吹き付け力を連続的に与えると、当該円周の径方向に塵埃がずれようとする力は相殺され、また付着対象に対して押し付けられる向きの力は作用せず、逆に付着対象を布団たたきで叩くかのように塵埃を浮き上げようとする力のみが作用するため、当該塵埃を容易に除去することができる。
【0031】
なお、噴射された高圧ガスの流れのうち、径方向(R)への拡散成分と、回転軸方向(AX)への直進成分との比率は、吹出口16の開口面の向きや形状によって調整可能である。すなわち吹出口16をより回転軸方向(AX)に向けることで当該方向への内容物の噴射速度を高めることができ、逆に吹出口16をより回転方向に向けることで内容物をより拡散させることができる。
【0032】
このほか本発明においては、内部に通孔を穿設した中実の回転体を樹脂材料などにより成形し、回転軸20を導出管12と同軸に設けることで上記回転体を導出管12の先端に回転自在に装着して回転ノズル14としてもよい。
なお、上記回転体に穿設する通孔は、基端側を導出管12の先端と連通させ、先端側については上述のように回転軸20から径方向にオフセットした位置にて回転方向成分をもたせて吹出口16とする。
【0033】
図2は、図1に示す本実施形態のスプレー用ノズル10の先端側を、導出管12の中心線に沿って切った部分縦断面模式図である。導出管12の基端側(図中左方)は図示を省略している。
【0034】
針金などの線材からなる回転軸20は、基端側が軸固定部22によって導出管12に固定され、先端側が回転ノズル14の挿通孔18を貫通してスプレー用ノズル10の先端噴射方向側に突出している。
軸固定部22もまた針金などの線材からなり、導出管12の径方向に掛け渡されている。軸固定部22と回転軸20とは一本の線材から構成してもよい。軸固定部22、回転軸20とも導出管12内部の流路を極力閉塞させないよう、細径の線材から構成するとよく、したがって強度の観点から上記のように金属材料が好適に用いられる。
ストッパー24は、回転ノズル14が回転軸20から離脱しないよう、回転軸20の先端に挿通孔18よりも大径に形成する。ストッパー24は回転軸20の先端を折り曲げて作製するほか、回転軸20の先端にて球状などに硬化させた樹脂材料によって作製してもよい。
【0035】
回転ノズル14の備える通孔の内径は、導出管12の外径よりもわずかに大きく形成され、基端側(図中左方)が導出管12の先端を覆い、かつ互いに回転自在となるよう嵌合装着されている。
また図中下方に湾曲して流路が形成された回転ノズル14は、吹出口16からの高圧ガスの噴射方向が回転軸20まわりの回転方向成分をもつよう、先端側(図中右方)が更に紙面手前側に折曲している。
【0036】
回転ノズル14は、回転軸20まわりの回転が良好となるよう、軽量かつ高剛性が好ましく、したがって硬質プラスチック材料が好適に用いられる。
軽量であることで慣性モーメントが小さくなり、高剛性であることで高圧ガスの噴射の反力によっては回転ノズル14自身が変形しないためエネルギーロスが小さくなる。
【0037】
本実施形態のスプレー用ノズル10においては、導出管12と回転ノズル14はともに噴射される高圧ガスによってはそれ自身が有意に変形しない。
これに対し、スプレー用ノズル全体を、仮に可撓性に優れるフレキシブルチューブによって作製した場合も、高圧ガスの噴射の反力によってノズル全体を旋回させ、吹出口を円周上で回転させながらの高圧ガスを噴射することはできる。しかしかかる場合、ノズル全体がフレキシブルチューブゆえ目的の塵埃や被塗装物に狙いを定めることが困難であり、また吹き出しの当初に高圧ガスの流れが安定せずにチューブが蛇行して暴れるため内容物の無駄が多くなり、さらに所望の径にコントロールして吹出口を旋回させることが困難である点で本発明に劣る。
したがって本発明においては、少なくとも導出管12を硬質材料で作製することが好ましく、導出管12と回転ノズル14をともに硬質材料で作製することが更に好ましいといえる。
【0038】
<他の実施形態について>
図3は本発明の第二の実施形態のスプレー用ノズル10の先端部に関する部分縦断面模式図である。本実施形態は、回転ノズル14が基端側(図中左方)から先端側(図中右方)にかけて回転軸20と斜交する直線状であり、また回転ノズル14の基端部内側と導出管12の先端部外側との間に所定幅の空隙26が存在している点で第一の実施形態にかかるスプレー用ノズル(図2を参照)と相違する。
【0039】
このように、吹出口16が回転軸20から径方向に所定幅だけオフセットして設けられるかぎり、回転ノズル14の形状は本実施形態のように直線状であっても、第一実施形態のように湾曲状であってもよい。
【0040】
また導出管12と回転ノズル14とを互いに回転自在に取り付けるに際しては、第一実施形態のように互いに一部オーバーラップさせて嵌合装着しても、本実施形態のように導出管12よりも大径に形成された回転ノズル14の基端部を、導出管12の先端に対してクリアランスをもって遊嵌してもよい。吹出口16の近傍では噴射される高圧ガスによって負圧が形成され、回転ノズル14の内部には空隙26から雰囲気の吸込が生じるため、高圧ガスが26から漏れ出すことが防止されている。
一方、導出管12の先端と回転ノズル14の基端とを本実施形態のように遊嵌させることで、回転する回転ノズル14に作用する動摩擦力が低減され、内容物の少量の吹き出しによっても回転ノズル14の滑らかな回転を得ることができる。
【0041】
図4は本発明の第三の実施形態のスプレー用ノズル10の先端部に関する部分縦断面模式図である。本実施形態は、導出管12の先端と回転ノズル14の基端とが互いに回転自在に凹凸嵌合することで、導出管12自体が回転ノズル14の回転軸としての機能をもち、回転軸20や軸固定部22、ストッパー24(図3を参照)を不要としている点で第二の実施形態と相違する。
【0042】
具体的には、回転ノズル14の基端側の内周面上に、リング状の突起28a,28bが所定間隔で導出管12に沿って二本形成され、一方、導出管12の先端側の外周面上にもまたリング状の突起29が形成されている。また導出管12は円管であり、回転ノズル14は少なくともその基端部において内周面が円形をなしている。
突起28a,28bの上記所定間隔は、突起29自身の軸方向幅よりも大きい。また図示のように導出管12の外周面と突起28a,28bとのクリアランスは、突起29の突出高さよりも小さく構成されている。
【0043】
かかる構成とすることにより、突起29が突起28aと突起28bとの間に収まる深さ位置まで導出管12の先端を回転ノズル14に圧入することで、突起29が突起28a,28bに挟まれた状態で、導出管12が回転ノズル14の内周面に沿って回転可能となる。換言すると本実施形態によれば、導出管12の管壁を回転軸として回転ノズル14をこれに回転自在に取り付けることができる。なお、回転ノズル14に対して導出管12が圧入容易、かつ引抜困難となるよう、突起28aおよび29をラッチ形状としてもよい。
【0044】
本実施形態によれば、上述のように回転軸20等の部品が不要となるほか、回転ノズル14が着脱可能となるため、通常のロングノズルとして狭い噴射領域に高圧ガスを噴射する場合は回転ノズル14を取り外し、本発明のように回転する吹出口16から拡散させながら内容物を噴射する場合は回転ノズル14を装着して用いることができる。
また本実施形態によれば、回転軸20を挿通するための挿通孔18を回転ノズル14に設ける必要がないため、挿通孔18と回転軸20との隙間から高圧ガスが漏れることがない。
なお、突起28a,28bに替えて、回転ノズル14の内周面上には突起29と嵌合する凹溝を設けてもよい。
【0045】
図5は本発明の第四の実施形態のスプレー用ノズル10の先端部に関する部分縦断面模式図である。本実施形態は、回転ノズル14が先端(図中右方)に向かって二又に分岐し、それぞれの先端に吹出口16a,16bが開口形成されている点で第二の実施形態(図3を参照)と相違している。
【0046】
図中、回転ノズル14の下半分と上半分とは回転軸20を中心に回転対称形状をなしている。したがって二つの吹出口16a,16bは、回転軸20を中心に回転対称位置に配置されている。吹出口16aは、回転軸方向(AX)および紙面手前方向の中間方向に向かって開口し、吹出口16bは、回転軸方向(AX)および紙面奥行方向の中間方向に向かって開口している。換言すると、二つの吹出口16a,16bは、回転軸20まわりに同一の回転方向成分をもって回転ノズル14の先端に開口形成されている。
これにより、導出管12を通じて供給された高圧ガスが吹出口16a,16bからともに噴射されるに際して回転ノズル14が受ける反力は、共通の回転方向、具体的には回転軸方向(AX)から見て反時計回りとなる。
【0047】
このように吹出口16a,16bを回転軸20まわりの回転対称位置に複数個設け、各開口を同一の回転方向に向けることにより、高圧ガスの噴射の反力のうち回転方向の成分が合算され、径方向の成分が相殺されるため、回転ノズル14が径方向に偏心したり首振り振動をしたりすることなく回転軸20まわりに良好に回転する。
【0048】
なお本発明で、複数の吹出口が同一の回転方向を向いているとは、いずれかの吹出口から噴射される高圧ガスが他の吹出口から噴射される高圧ガスと互いに干渉して回転ノズル14に作用する反力を相殺することの無い状態をいうものであり、開口方向の厳密な一致を要するものではない。
複数の吹出口が配置される回転軸まわりの回転対称位置についても同様であり、当該複数の吹出口が回転軸20を中心に、その周囲にバランスして配置されていれば足りる。
【0049】
なお、本実施形態においては一つの回転ノズル14が分岐して複数個の吹出口16a,16bがその先端に形成された態様を例示しているが、本発明においてはこのほか、各1個の吹出口を備える複数本の回転ノズル14が、一本または複数本の導出管12の先端に対して直接に、または他の接続部材を介して間接に、それぞれ回転自在に取り付けられていてもよい。
【0050】
図6は本発明の第五の実施形態のスプレー用ノズル10の先端部に関する部分縦断面模式図である。本実施形態の回転ノズル14はその周囲に軸流ファン(ファン)40が設けられており、高圧ガスの噴射によって回転ノズル14が回転すると、ファン40が回転軸方向(AX)に向かって気流を発生させる点で第四の実施形態(図5を参照)と相違する。
【0051】
これにより、第四の実施形態にかかるスプレー用ノズル10では吹出口16a,16bから噴射される高圧ガスの径方向(R)成分が過大であって回転軸方向(AX)成分が不十分となる虞がある場合にも、本実施形態のように、回転ノズル14にファン40を設けることで軸流が生じ、その反力によって回転ノズル14の回転が抑制され、前記軸流とあいまって回転軸方向(AX)への噴射力を十分に得ることができる。
すなわち、ファン40によって回転ノズル14の過剰回転を抑制することで高圧ガスの拡散が抑えられ、回転軸方向(AX)の延長線上にある塵埃や被塗装物に向かう噴射力が向上する。したがってかかる観点からは回転ノズル14の回転を抑制する回転抵抗を設けるだけでも回転軸方向への噴射力の調整が可能になる。これに対し本実施形態においては軸流ファンを回転ノズル14に設けることで、発生する回転抵抗を単なるエネルギーロスとするのではなく、抑制した回転ノズル14の回転力を回転軸方向への気流に変換して塵埃の噴射力を補助している。
【0052】
本実施形態のスプレー用ノズル10のさらなる変形態様として、ファン40は回転ノズル14に対して着脱可能としてもよい。これにより、塵埃の付着強度や付着場所、または塗料の塗布範囲や塗布厚さとの兼ね合いで、回転ノズル14の回転軸方向の噴射力を任意で増減調整可能となる。
また同様の観点から、ファン40の捩れ角度や、回転ノズル14に対する取付角度を可変調整可能としてもよい。
【0053】
図7は本発明の第六の実施形態のスプレー用ノズル10の先端部に関する部分縦断面模式図である。本実施形態は、回転ノズル14が、その先端より突出するブラシ42を備えている。したがって高圧ガスの噴射によって回転ノズル14が回転すると、ブラシ42もまた回転軸20を中心に回転するため、当該ブラシ42を用いて被噴射面を回転方向に物理的に払拭することができる。また回転する吹出口16から噴射される高圧ガスの膨張および回転拡散によりブラシ42は径方向にも曲げられるため、当該ブラシ42による被噴射面の払拭は、回転方向と径方向があわさったものとなる。
したがってスプレー装置30をダストスプレーとして用いた場合、本実施形態のスプレー用ノズル10によれば強固に付着した塵埃をブラシ42によって縦横から物理的に払拭して除去することができ好適である。
【0054】
ブラシ42は、図示のように回転ノズル14の先端に植え付けられる態様のほか、回転ノズル14の周面上に取り付けられブラシ42の先端を吹出口16より突出させてもよい。またブラシ42は図示のように回転ノズル14のうち吹出口16の内側にのみ設けてもよく、逆に吹出口16の外側にのみ設けても、または吹出口16の周囲を取り囲むように設けてもよい。
このうち、吹出口16の内側に設けることにより、吹出口16から噴射される高圧ガスが回転中心方向に流れることを妨げ、回転軸方向(AX)の延長線上に捉えた塵埃を付着対象に上から押し付ける方向に高圧ガスが直接噴射されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるスプレー用ノズル10、およびこれを備えるスプレー装置30の部分模式図である。
【図2】第一の実施形態のスプレー用ノズル10の部分縦断面模式図である。
【図3】第二の実施形態のスプレー用ノズル10の部分縦断面模式図である。
【図4】第三の実施形態のスプレー用ノズル10の部分縦断面模式図である。
【図5】第四の実施形態のスプレー用ノズル10の部分縦断面模式図である。
【図6】第五の実施形態のスプレー用ノズル10の部分縦断面模式図である。
【図7】第六の実施形態のスプレー用ノズル10の部分縦断面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
10 スプレー用ノズル
12 導出管
14 回転ノズル
16a,16b 吹出口
18 挿通孔
20 回転軸
22 軸固定部
24 ストッパー
26 空隙
28a,28b,29 突起
30 スプレー装置
32 耐圧缶
34 押下ボタン
36 ノズル装着口
40 ファン
42 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された内容物を気体またはエアロゾル含有気体として噴射するスプレー容器に対して着脱可能に取り付けられる導出管と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズルと、を有するスプレー用ノズルであって、
前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸から径方向にオフセットした位置に、前記内容物を噴射する吹出口が、前記回転軸方向および径方向に対してともに交差する方向に向けて形成されていることを特徴とするスプレー用ノズル。
【請求項2】
前記内容物が除塵用の高圧ガスである請求項1に記載のスプレー用ノズル。
【請求項3】
回転ノズルが、前記導出管とそれぞれ連通した複数の吹出口を前記回転軸に対して回転対称位置に有し、かつ、前記複数の吹出口が、前記回転軸まわりに同一の回転方向に向けて形成されている請求項1または2に記載のスプレー用ノズル。
【請求項4】
回転ノズルが、当該回転ノズルの回転により前記回転軸方向に軸流を発生させるファンを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスプレー用ノズル。
【請求項5】
回転ノズルが、その先端より突出するブラシを有する請求項1から4のいずれかに記載のスプレー用ノズル。
【請求項6】
(A)除塵用の高圧ガスが充填されたスプレー容器と、
(B)前記スプレー容器に対して着脱可能に取り付けられた導出管と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズルとを有し、前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸から径方向にオフセットした位置に、前記高圧ガスを噴射する吹出口が前記回転軸と交差する方向に向けて形成されているスプレー用ノズルと、
(C)前記スプレー容器から導出管への前記高圧ガスの流通を閉止または開放する弁体と、を備え、
前記弁体の操作により、前記回転ノズルを高圧ガスの噴射力によって回転させながら吹出口より当該高圧ガスを噴射する除塵用のスプレー装置。
【請求項7】
(A)液体または粉体の塗料、および圧縮された噴射剤が充填されたスプレー容器と、
(B)前記スプレー容器に対して着脱可能に取り付けられた導出管と、前記導出管と連通する通孔を内部に備えるとともに前記導出管に対して回転自在に取り付けられた回転ノズルとを有し、前記回転ノズルの先端には、該回転ノズルの回転軸から径方向にオフセットした位置に、前記塗料を微細化したエアロゾルと前記噴射剤の気化ガスとの混合ガスを噴射する吹出口が、前記回転軸と交差する方向に向けて形成されているスプレー用ノズルと、
(C)前記スプレー容器から導出管への前記混合ガスの流通を閉止または開放する弁体と、を備え、
前記弁体の操作により、前記回転ノズルを混合ガスの噴射力によって回転させながら吹出口より当該混合ガスを噴射する塗装用のスプレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−307499(P2008−307499A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159931(P2007−159931)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(595069860)
【Fターム(参考)】