スポット溶接部の検査方法及び検査装置
【課題】スポット溶接部の良否を正確に検査すること。
【解決手段】超音波探触子10が、スポット溶接部4の外側の板材である上板2の複数の送波位置から上板2を伝搬する超音波信号を送波し、超音波探触子20が、上板2の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する。そして、演算装置34が、超音波探触子20によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する。
【解決手段】超音波探触子10が、スポット溶接部4の外側の板材である上板2の複数の送波位置から上板2を伝搬する超音波信号を送波し、超音波探触子20が、上板2の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する。そして、演算装置34が、超音波探触子20によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接部の良否を検査するためのスポット溶接部の検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車体は、数千点にも及ぶスポット溶接によって組み立てられる。スポット溶接部の良否は、車体の強度や耐久性に直接影響を及ぼす。このため、スポット溶接部の良否を検査することは極めて重要な作業である。そこで、従来までは、タガネ検査が行われていた。タガネ検査とは、スポット溶接された金属板間にタガネを差し込み、スポット溶接部がタガネによって剥離するか否かを確認することにより、スポット溶接部の良否を検査する検査方法である。
【0003】
しかしながら、このような検査方法によれば、タガネを差し込んだ際にスポット溶接部がタガネによって破壊され、スポット溶接部の良否を正確に検査できないことがある。また、スポット溶接部が破壊された車体は製品として利用できないために、車体の製造コストが増加する。このため、近年、特許文献1に開示されているような、超音波を利用してスポット溶接部の良否を非接触で検査する検査方法が提案されている。
【0004】
特許文献1記載の検査方法は、スポット溶接部が、溶融凝固組織であるナゲットが形成されている融着溶接部と、金属板間の界面が局所的に溶着しているだけであってナゲットが形成されていない界面溶着溶接部のどちらであるのかを判定するものである。具体的には、この検査方法では、2枚の金属板をスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部を検査する場合、始めに、一方の金属板表面上の複数の送波位置から複数方向へ向けて一方の金属板中を伝搬する超音波を送波する。次に、一方の金属板表面上の複数の受波位置において一方の金属板中を伝搬してきた超音波を受波する。そして、受波された超音波の減衰、位相の混合、及び高周波成分の減衰を検出することによって、スポット溶接部におけるナゲットの有無を検出する。
【0005】
以下、超音波の減衰、位相の混合、及び高周波成分の減衰に基づくナゲットの検出方法について説明する。
【0006】
〔超音波の減衰〕
ナゲットを形成する溶融凝固組織は、金属板の金属組織と比較して超音波を伝達しにくい。このため、超音波がナゲットを通過した場合には、超音波の強度は大きく減衰する。従って、送波した超音波に基づいて受波された超音波の強度の減衰を検出することによって、超音波の伝搬経路上にナゲットが存在するか否かを判定することができる。
【0007】
〔位相の混合〕
ナゲット内における超音波の伝搬速度は伝搬方向によって異なる。また、金属板中を伝搬する超音波は、様々な角度方向へ伝搬する超音波成分を有する。このため、超音波がナゲットを通過した場合、受波される超音波の波形は、位相が異なる超音波成分が混合されることによって、送波した超音波の波形から著しく変化する。従って、受波した超音波の波形と送波した超音波の波形との相互相関演算を行うことによって超音波波形の変化を検出することにより、超音波の伝搬経路上にナゲットがあるか否かを判定することができる。また、位相が異なる超音波成分が混合されることによる特定の周波数成分の変化を周波数解析によって検出することにより、超音波の伝搬経路上にナゲットがあるか否かを判定することもできる。
【0008】
〔高周波成分の減衰〕
ナゲットは粗い結晶粒によって形成されているので、ナゲットを通過した超音波の強度はその周波数が大きいほど大きく減衰する。そこで、周波数解析によって受波された超音波の高周波成分の強度の減衰を検出することによって、超音波の伝搬経路上にナゲットがあるか否かを判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−286792号公報
【特許文献2】特開2006−200901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の検査方法には以下に示すような問題点がある。
【0011】
第1に、特許文献1記載の検査方法では、スポット溶接時に加わる熱によって金属板の金属組織が元の金属組織から変化することによって形成される熱影響部の存在を考慮していない。一般に、熱影響部では結晶粒が粗大化するために、熱影響部を伝搬してきた超音波の強度は大きく減衰し、またその高周波成分の強度も減衰することがある。このため、特許文献1記載の検査方法によれば、熱影響部によって超音波の強度が減衰しているのにも係わらず、ナゲットが形成されていると誤判定する可能性がある。
【0012】
第2に、界面溶着溶接部では、界面を介して一方の金属板から他方の金属板に超音波が伝搬することによって受波される超音波の波形が変化する。このため、特許文献1記載の検査方法によれば、実際には界面を介して一方の金属板から他方の金属板に超音波が伝搬することによって受波される超音波の波形が変化しているのにも係わらず、ナゲットが形成されていると誤判定する可能性がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、スポット溶接部の良否を正確に検査可能なスポット溶接部の検査方法及び検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスポット溶接部の検査方法は、複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査方法であって、スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波ステップと、スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波ステップと、受波ステップによって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する判定ステップと、を含む。
【0015】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスポット溶接部の検査装置は、複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査装置であって、スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波手段と、スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波手段と、受波手段によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する判定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスポット溶接部の検査方法及び検査装置によれば、伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号のウェーブレット解析を実行することによってスポット溶接部の良否を判定するので、スポット溶接部の良否を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、超音波信号の伝搬経路を示す模式図である。
【図3】図3は、超音波信号の伝搬経路を示す模式図であり、図3(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部における超音波信号の伝搬経路を示す模式図である。
【図4】図4は、送波される超音波信号の一例を示す図である。
【図5】図5は、超音波信号を示す図であり、図5(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部が形成されている場合に図4に示す超音波信号が送波された際に受波される超音波信号を示す図である。
【図6】図6は、マザーウェーブレットの一例を示す図である。
【図7】図7は、マザーウェーブレットを示す図であり、図7(a)〜(c)は、伸縮係数の変化に伴うマザーウェーブレットの形状変化を示す図である。
【図8】図8は、ウェーブレットを示す図であり、図8(a)〜(c)は、超音波信号が通常透過波に由来する超音波信号と溶接金属透過波に由来する超音波信号とを含む場合に演算されるウェーブレットを示す図である。
【図9】図9は、ウェーブレットを示す図であり、図9(a)〜(c)は、超音波信号が通常透過波に由来する超音波信号のみを含む場合に演算されるウェーブレットを示す図である。
【図10】図10は、ウェーブレット解析の実験例を示す図である。
【図11】図11は、従来技術と本願発明との差異を説明するための図であり、図11(a),(b)はそれぞれ、従来技術及び本願発明によるスポット溶接部の検査結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置及び検査方法について説明する。
【0019】
〔検査装置の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置1は、上板2と下板3との2枚の金属板をスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部4の良否を検査するための装置である。検査装置1は、超音波探触子10と、超音波探触子20と、スイッチ回路30,31と、超音波送受信器32と、A/D変換器33と、演算装置34とを備える。超音波探触子10,超音波探触子20,及び演算装置34はそれぞれ、本発明に係る送波手段,受波手段,及び判定手段として機能する。
【0021】
超音波探触子10と超音波探触子20とは、スポット溶接部4の外側の板材である上板2の表面上に対向配置されている。超音波探触子10及び超音波探触子20と上板2との間には図示しない接触媒質が介在している。超音波探触子10は、樹脂くさび11に複数の超音波振動子121〜12Nからなる振動子アレイ12が貼り付けられた構造を有する。超音波探触子10は、超音波振動子121〜12Nから送波された超音波信号を上板2表面に対して斜め方向に入射する。
【0022】
超音波探触子20は、樹脂くさび21に複数の超音波振動子221〜22Nからなる振動子アレイ22が貼り付けられた構造を有している。超音波探触子20は、上板2中を伝搬してきた超音波信号を超音波振動子221〜22Nで受波する。なお、超音波振動子121〜12N及び超音波振動子221〜22Nの個数Nとしては、例えば4、8、16、32等の個数を用いることができる。本実施形態では、超音波振動子の個数Nは16個とする。また、本実施形態では、上板2側に超音波探触子10と超音波探触子20とを配設したが、下板3又は上板2と下板3との両方に超音波探触子10と超音波探触子20を配設してもよい。また、本実施形態では、複数の超音波振動子によって振動子アレイを構成したが、1つの超音波振動子を走査することによって超音波信号を送波/受波するようにしてもよい。
【0023】
スイッチ回路30は、超音波信号を送波する超音波振動子を超音波振動子121〜12Nの中で切り替える。スイッチ回路31は、上板2中を伝搬してきた超音波信号を受波する超音波振動子を超音波振動子221〜22Nの中で切り替える。超音波送受信器32は、超音波振動子121〜12Nに超音波信号を送信すると共に、超音波振動子221〜22Nが受波した超音波信号を増幅出力する。A/D変換器33は、超音波送受信器32によって増幅出力された超音波信号をアナログ/デジタル変換する。演算装置34は、後述する解析処理を実行することによって、スポット溶接部4が、ナゲットが形成されている融着溶接部とナゲットが形成されていない界面溶着溶接部のどちらであるのかを判定する。
【0024】
〔スポット溶接部の検査方法〕
次に、図2乃至図9を参照して、スポット溶接部4が、ナゲットが形成されている融着溶接部とナゲットが形成されていない界面溶着溶接部のどちらであるのかを判定する際の検査装置1の動作について説明する。なお、この判定動作は、超音波信号を送波/受波する超音波送受処理と受波した超音波信号を解析する解析処理との2つの処理に大別される。そこで、以下では、説明を容易にするために、検査装置1の動作を超音波送受処理と解析処理とに分けて説明する。但し、実際の動作では超音波送受処理と解析処理とを平行して実行してもよいし、超音波送受処理の完了後に解析処理を実行してもよい。
【0025】
〔超音波送受処理〕
始めに、図2を参照して、超音波送受処理について説明する。図2は、超音波振動子121〜1216から送波された超音波の伝搬経路を示す模式図である。図2に示すように、超音波振動子121〜1216から送波された超音波信号Wは平面経路を通って複数方向に伝搬し、超音波振動子221〜2216は各超音波振動子121〜1216から送波された超音波信号Wを受波する。そこで、この超音波送受処理では、始めに、スイッチ回路30が、超音波振動子121から超音波信号Wを送波し、スイッチ回路31は超音波振動子121から送波された超音波信号Wを超音波振動子221〜2216によって受波する。超音波振動子221〜2216によって受波された超音波信号は、超音波送受信機32によって増幅出力された後、A/D変換器33によってA/D変換されて演算装置34で記憶される。
【0026】
次に、スイッチ回路30は、超音波振動子122から超音波信号Wを送波し、スイッチ回路31は超音波振動子122から送波された超音波信号Wを超音波振動子221〜2216によって受波する。超音波振動子221〜2216によって受波された超音波信号は、超音波送受信機32によって増幅出力された後、A/D変換器33によってA/D変換されて演算装置34で記憶される。この過程を超音波振動子1216から送波された超音波信号が超音波振動子221〜2216によって受波されるまで、超音波信号を送波する超音波振動子を順次変更して行なう。この結果、演算装置34には、複数位置から複数方向へ伝搬する超音波信号のデータが記憶される。
【0027】
〔解析処理〕
次に、図3乃至図9を参照して、解析処理について説明する。図3(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部における超音波信号の伝搬経路を示す模式図である。図3(a)に示すように、ナゲットR1が形成されている融着溶接部では、ナゲットR1を通過しない通常透過波W1とナゲットR1中を伝搬する溶接金属透過波W2との2種類の超音波信号が超音波探触子20によって検出される。また、ナゲットR1とナゲットR1以外の金属領域とでは超音波信号の伝搬速度が異なるために、超音波探触子20における通常透過波W1の受信タイミングと溶接金属透過波W2の受信タイミングとは異なる。一方、図3(b)に示すように、界面溶着溶接部では、ナゲットが存在しないために、超音波探触子20によって受波される超音波信号は通常透過波W1のみである。なお、実際の超音波信号の伝搬経路は、金属板の底面や表面での反射やモード変換を伴う複雑なものであるが、図3では図示を省略している。
【0028】
ここで、図4,図5を参照して、融着溶接部及び界面溶着溶接部が形成されている場合に受波される超音波信号の違いについて詳しく説明する。図4は、超音波振動子121〜1216から送波される超音波信号の一例を示す図である。図5(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部が形成されている場合に図4に示す超音波信号が送波された際に受波される超音波信号を示す図である。
【0029】
図4に示す超音波信号SINを送波した際、融着溶接部が形成されている場合には、図5(a)に示すように、受信タイミングが異なる通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1と溶接金属透過波W2に由来する超音波信号Sout2とが受波される。一方、界面溶着溶接部が形成されている場合には、図5(b)に示すように、通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1のみが受波される。従って、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号を解析することによって受波した超音波信号が1つ又は複数の超音波信号によって形成されているか否かを判定することによって、受波した超音波の伝搬経路上には融着溶接部と界面溶着溶接部のどちらが形成されているか否かを判定することができる。
【0030】
本実施形態では、演算装置34は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波に対応する超音波信号に対してウェーブレット解析を行うことによって、受波した超音波信号が1つ又は複数の超音波信号によって形成されているか否かを判定する。ここで、ウェーブレット解析とは、原信号をx(t)、マザーウェーブレットをΨ(t)と表したとき、以下の数式1で得られるウェーブレットW(a,b)を算出する一種の連続ウェーブレット変換処理のことを意味する。
【数1】
【0031】
この数式(1)は以下の数式(2)のように変形することができる。
【数2】
【0032】
このため、パラメータ(以下、伸縮係数と表記)aを一定値としてみた場合、ウェーブレット解析は、Ψ(t/a)、すなわちマザーウェーブレットΨ(t)を時間方向にa倍に伸縮した波形と原信号x(t)との相互相関演算とみなすことができる。そこで、演算装置34は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号を原信号x(t)、位相が異なる超音波成分が混合していない通常透過波に類似する超音波信号(以下、基本信号と表記)をマザーウェーブレットΨ(t)としてウェーブレット解析を実行する。これにより、演算装置34は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号の中に基本信号の成分がどれだけ含まれているかを算出することができる。なお基本信号としては、伝搬経路にスポット溶接部を含まない上板2の表面沿いを伝搬してきた超音波信号、より具体的には、超音波振動子121送波され、超音波振動子221〜2216によって受波された超音波信号を例示することができる。
【0033】
ここで、ウェーブレット解析に対する理解を容易にするために、図6乃至図9を参照して、ウェーブレット解析について模式的に説明する。ウェーブレット解析では、図6に示すようなマザーウェーブレットΨ(t)を規定し、始めに、演算装置34が、図7(a)〜(c)に示すようにパラメータτの値を固定した状態で伸縮係数aの値を変化させることによってマザーウェーブレットΨ(t)を伸縮させる。図7(a)〜(c)に示す例では、伸縮係数aの値はa1,a2,a3の順で増加し、マザーウェーブレットΨ(t/a)は伸縮係数aの値に応じて伸縮する。次に、演算装置34は、伸縮係数aの値が異なる複数のマザーウェーブレットΨ(t/a)について、パラメータτの値を変化させて原信号x(t)との相互相関演算処理を行う。
【0034】
この相互相関演算処理によれば、受波された超音波信号が通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1と溶接金属透過波W2に由来する超音波信号Sout2とを含む場合には、図8(a)〜(c)に示すような超音波信号Sout1と超音波信号Sout2とに対応する2つのピークを含むウェーブレットW(a,τ)が演算される。一方、受波された超音波信号が通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1のみを含む場合には、図9(a)〜(c)に示すような超音波信号Sout1に対応する1つのピークを含むウェーブレットW(a,τ)が演算される。
【0035】
なお、図8(a)〜(c)及び図9(a)〜(c)に示すウェーブレットW(a,τ)はそれぞれ、図7(a)〜(c)に示すマザーウェーブレットΨ(t/a)を用いて算出されたウェーブレットW(a,τ)を示す。本実施形態では、伸縮係数aの値が異なる複数のマザーウェーブレットΨ(t/a)について相互相関演算処理を行ったが、伸縮係数aの値は予め決めておいてもよいし、測定毎に複数の伸縮係数aを計算して最適値を選択してもよい。
【0036】
このように、融着溶接部が形成されている場合に演算されるウェーブレットW(a,τ)では、通常透過波と溶接金属透過波とのそれぞれに対応するピークが隣接して観測される。一方、界面溶着溶接部が形成されている場合に演算されるウェーブレットW(a,τ)では、通常透過波に対応するピークのみが観測される。従って、ウェーブレット解析によって得られた最も相関が高いウェーブレットW(a,τ)について、隣接するピークの間隔、又は着目するピークとその近傍にあるピークとの強度比を演算することによって、ウェーブレット解析によって得られたウェーブレットW(a,τ)が融着溶接部と界面溶着溶接部とのどちらに由来するものであるのかを判定することができる。すなわち、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号の伝搬経路上に融着溶接部と界面溶着溶接部のどちらが形成されているか否かを判定することができる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査方法及び検査装置では、超音波探触子10が、スポット溶接部4の外側の板材である上板2の複数の送波位置から複数方向へ向けて、上板2を伝搬する超音波信号を送波し、超音波探触子20が、上板2の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する。そして、演算装置34が、超音波探触子20によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する。このような構成によれば、伝搬経路にスポット溶接部4を含む超音波信号のウェーブレット解析を実行することによってスポット溶接部4の良否を判定するので、スポット溶接部4の良否を正確に検査することができる。
【0038】
なお、超音波信号を計測するに際してウェーブレット変換を適用する技術は例えば特許文献2に開示されている。しかしながら、従来まではウェーブレット解析は超音波信号の時間毎の周波数成分を算出するために使用されていた。これに対して、本実施形態におけるウェーブレット解析は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号の中に基本信号の成分がどれだけ含まれているかを算出するためのものであり、従来までのウェーブレット解析とはその使用方法が大きく異なる。
【0039】
〔実験例〕
最後に、ウェーブレット解析の実験例を示す。
【0040】
図10(a),(b)はウェーブレット解析の実験例を示す図である。本実験では、超音波送受処理は、樹脂くさび11,21をポリスチロール、超音波振動子の配列方向における幅を0.8mm、超音波信号の上板2表面に対する入射角を25.4°として行った。また、解析処理は、超音波振動子121から送波され、超音波振動子221によって受波された超音波信号をマザーウェーブレットΨ(t)、伸縮係数aの値を1.075として行った。
【0041】
図10(a)と図10(b)の比較から明らかなように、図10(a)に示すウェーブレットW(a,τ)から観測されるピークの間隔は、図10(b)に示すウェーブレットW(a,τ)から観測されるピークの間隔より狭い。従って、図10(a)に示すウェーブレットW(a,τ)が演算された超音波信号の伝搬経路には融着溶接部が形成され、図10(b)に示すウェーブレットW(a,τ)が演算された超音波信号の伝搬経路には界面溶着溶接部が形成されていることがわかる。なお、界面溶着溶接部に由来するウェーブレットW(a,τ)中に複数のピークが観測される理由は、表面や裏面での反射やモード変換によって複数の経路を伝搬してきた超音波信号が受波されるためである。
【0042】
図11(a),(b)はそれぞれ、従来技術(相互相関演算)及び本願発明によるスポット溶接部の検査結果を示す図である。本実験では、超音波送受処理は、樹脂くさび11,21をポリスチロール、超音波振動子の配列方向における幅を0.8mm、超音波信号の上板2表面に対する入射角を25.4°として行った。また、検査対象として、上板2の板厚が0.55mm、下板3の板厚が1.2mmの2枚の鋼板を重ねてスポット溶接して作製された12個のサンプルを用いた。12個のサンプルのうち、4個は融着溶接部のサンプル、8個は界面溶着溶接部のサンプルである。
【0043】
従来技術を用いた検査では、各サンプルについて、超音波振動子121〜128が送波する超音波信号については、基準信号と超音波振動子121から送波され、超音波振動子221により受波された超音波信号との相関相互演算値が128になるように規格化し、超音波振動子129〜1216が送波する超音波信号については、基準信号と超音波振動子1216から送波され、超音波振動子2216により受波された超音波信号との相関相互演算値が128になるように規格化した。そして、(1)超音波振動子12n(n=1〜16)から送波され、超音波振動子22n(n=1〜16)によって受波された超音波信号の伝搬経路、(2)超音波振動子12n(n=1〜7)から送波され、超音波振動子22n+1(n=1〜7)によって受波された超音波信号の伝搬経路、及び(3)超音波振動子12n(n=9〜16)から送波され、超音波振動子22n−1(n=9〜16)によって受波された超音波信号の伝搬経路それぞれについての相互相関演算値と128との差の絶対値(但し、128より大きい場合は差を0とする)を足し合わせたものを相関演算評価指標とした。
【0044】
本願発明を用いた検査では、超音波振動子128から送波され、超音波振動子228によって受波された超音波信号を原信号x(t)、超音波振動子121から送波され、超音波振動子221によって受波された超音波信号の一部をマザーウェーブレットΨ(t)、伸縮係数aの値を1.075としてウェーブレット解析を行った。そして、得られたウェーブレットW(a,τ)について、指定した範囲内で最大値となる第1ピークと、第1ピークの強度の0.5倍以上となるピークの中で最も第1ピークに近い第2ピークとを検出し、第1ピークと第2ピークとの間隔を評価指標として算出した。
【0045】
図11(a)に示すように、従来技術を用いた検査では、熱影響部の大きさが大きい界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとでは相関演算評価指標の値が近似していた。このため、従来技術を用いた検査では、界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとを区別することはできなかった。これに対して、本願発明を用いた検査では、界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとでピーク間間隔が大きく異なっていた。従って、本願発明を用いた検査によれば、界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとを正確に区別することができた。
【0046】
なお、本実験では、超音波振動子128から送波され、超音波振動子228によって受波された超音波信号を原信号x(t)としたが、融着溶接部と界面溶着溶接部との間で差異が観察される伝搬経路であれば、その他の伝搬経路であってもよいし、また複数の超音波信号の伝搬経路についてウェーブレット解析を行ってもよい。また、第1ピークと第2ピークとの間隔を算出する方法の他に、第1ピークと第2ピークとの強度比や第1ピークの最大値を算出することによって判別してもよい。
【0047】
ピークの強度比によって判別する場合、界面溶着溶接部に由来するピークが含まれないように第2ピークを検出する範囲を設定することによって、界面溶着溶接部では(第2ピークの強度/第1ピークの強度)の値は小さくなる。また、ウェーブレット解析によって複数の評価指標を算出し、複数の評価指標を組み合わせることによって判定を行ってもよいし、従来技術によって算出された評価指標と本願発明によって算出された評価指標とを組み合わせて判定を行ってもよい。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態は、2枚の金属板(鋼板)をスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するものであるが、検査対象となる板材は鋼板に限定されることはなく、アルミニウム製,無機材料、有機材料等のその他の板材に対しても適用することができる。また、スポット溶接をする板の枚数は2枚に限定されることはない。また、スポット溶接部の良否の判断も、融着溶接部と界面溶着溶接部との識別のみに限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 検査装置
2 上板
3 下板
4 スポット溶接部
10,20 超音波探触子
11,21 樹脂くさび
12,22 振動子アレイ
121〜12N,221〜22N 超音波振動子
30,31 スイッチ回路
32 超音波送受信器
33 A/D変換器
34 演算装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接部の良否を検査するためのスポット溶接部の検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車体は、数千点にも及ぶスポット溶接によって組み立てられる。スポット溶接部の良否は、車体の強度や耐久性に直接影響を及ぼす。このため、スポット溶接部の良否を検査することは極めて重要な作業である。そこで、従来までは、タガネ検査が行われていた。タガネ検査とは、スポット溶接された金属板間にタガネを差し込み、スポット溶接部がタガネによって剥離するか否かを確認することにより、スポット溶接部の良否を検査する検査方法である。
【0003】
しかしながら、このような検査方法によれば、タガネを差し込んだ際にスポット溶接部がタガネによって破壊され、スポット溶接部の良否を正確に検査できないことがある。また、スポット溶接部が破壊された車体は製品として利用できないために、車体の製造コストが増加する。このため、近年、特許文献1に開示されているような、超音波を利用してスポット溶接部の良否を非接触で検査する検査方法が提案されている。
【0004】
特許文献1記載の検査方法は、スポット溶接部が、溶融凝固組織であるナゲットが形成されている融着溶接部と、金属板間の界面が局所的に溶着しているだけであってナゲットが形成されていない界面溶着溶接部のどちらであるのかを判定するものである。具体的には、この検査方法では、2枚の金属板をスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部を検査する場合、始めに、一方の金属板表面上の複数の送波位置から複数方向へ向けて一方の金属板中を伝搬する超音波を送波する。次に、一方の金属板表面上の複数の受波位置において一方の金属板中を伝搬してきた超音波を受波する。そして、受波された超音波の減衰、位相の混合、及び高周波成分の減衰を検出することによって、スポット溶接部におけるナゲットの有無を検出する。
【0005】
以下、超音波の減衰、位相の混合、及び高周波成分の減衰に基づくナゲットの検出方法について説明する。
【0006】
〔超音波の減衰〕
ナゲットを形成する溶融凝固組織は、金属板の金属組織と比較して超音波を伝達しにくい。このため、超音波がナゲットを通過した場合には、超音波の強度は大きく減衰する。従って、送波した超音波に基づいて受波された超音波の強度の減衰を検出することによって、超音波の伝搬経路上にナゲットが存在するか否かを判定することができる。
【0007】
〔位相の混合〕
ナゲット内における超音波の伝搬速度は伝搬方向によって異なる。また、金属板中を伝搬する超音波は、様々な角度方向へ伝搬する超音波成分を有する。このため、超音波がナゲットを通過した場合、受波される超音波の波形は、位相が異なる超音波成分が混合されることによって、送波した超音波の波形から著しく変化する。従って、受波した超音波の波形と送波した超音波の波形との相互相関演算を行うことによって超音波波形の変化を検出することにより、超音波の伝搬経路上にナゲットがあるか否かを判定することができる。また、位相が異なる超音波成分が混合されることによる特定の周波数成分の変化を周波数解析によって検出することにより、超音波の伝搬経路上にナゲットがあるか否かを判定することもできる。
【0008】
〔高周波成分の減衰〕
ナゲットは粗い結晶粒によって形成されているので、ナゲットを通過した超音波の強度はその周波数が大きいほど大きく減衰する。そこで、周波数解析によって受波された超音波の高周波成分の強度の減衰を検出することによって、超音波の伝搬経路上にナゲットがあるか否かを判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−286792号公報
【特許文献2】特開2006−200901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の検査方法には以下に示すような問題点がある。
【0011】
第1に、特許文献1記載の検査方法では、スポット溶接時に加わる熱によって金属板の金属組織が元の金属組織から変化することによって形成される熱影響部の存在を考慮していない。一般に、熱影響部では結晶粒が粗大化するために、熱影響部を伝搬してきた超音波の強度は大きく減衰し、またその高周波成分の強度も減衰することがある。このため、特許文献1記載の検査方法によれば、熱影響部によって超音波の強度が減衰しているのにも係わらず、ナゲットが形成されていると誤判定する可能性がある。
【0012】
第2に、界面溶着溶接部では、界面を介して一方の金属板から他方の金属板に超音波が伝搬することによって受波される超音波の波形が変化する。このため、特許文献1記載の検査方法によれば、実際には界面を介して一方の金属板から他方の金属板に超音波が伝搬することによって受波される超音波の波形が変化しているのにも係わらず、ナゲットが形成されていると誤判定する可能性がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、スポット溶接部の良否を正確に検査可能なスポット溶接部の検査方法及び検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスポット溶接部の検査方法は、複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査方法であって、スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波ステップと、スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波ステップと、受波ステップによって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する判定ステップと、を含む。
【0015】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスポット溶接部の検査装置は、複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査装置であって、スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波手段と、スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波手段と、受波手段によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する判定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスポット溶接部の検査方法及び検査装置によれば、伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号のウェーブレット解析を実行することによってスポット溶接部の良否を判定するので、スポット溶接部の良否を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、超音波信号の伝搬経路を示す模式図である。
【図3】図3は、超音波信号の伝搬経路を示す模式図であり、図3(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部における超音波信号の伝搬経路を示す模式図である。
【図4】図4は、送波される超音波信号の一例を示す図である。
【図5】図5は、超音波信号を示す図であり、図5(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部が形成されている場合に図4に示す超音波信号が送波された際に受波される超音波信号を示す図である。
【図6】図6は、マザーウェーブレットの一例を示す図である。
【図7】図7は、マザーウェーブレットを示す図であり、図7(a)〜(c)は、伸縮係数の変化に伴うマザーウェーブレットの形状変化を示す図である。
【図8】図8は、ウェーブレットを示す図であり、図8(a)〜(c)は、超音波信号が通常透過波に由来する超音波信号と溶接金属透過波に由来する超音波信号とを含む場合に演算されるウェーブレットを示す図である。
【図9】図9は、ウェーブレットを示す図であり、図9(a)〜(c)は、超音波信号が通常透過波に由来する超音波信号のみを含む場合に演算されるウェーブレットを示す図である。
【図10】図10は、ウェーブレット解析の実験例を示す図である。
【図11】図11は、従来技術と本願発明との差異を説明するための図であり、図11(a),(b)はそれぞれ、従来技術及び本願発明によるスポット溶接部の検査結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置及び検査方法について説明する。
【0019】
〔検査装置の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査装置1は、上板2と下板3との2枚の金属板をスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部4の良否を検査するための装置である。検査装置1は、超音波探触子10と、超音波探触子20と、スイッチ回路30,31と、超音波送受信器32と、A/D変換器33と、演算装置34とを備える。超音波探触子10,超音波探触子20,及び演算装置34はそれぞれ、本発明に係る送波手段,受波手段,及び判定手段として機能する。
【0021】
超音波探触子10と超音波探触子20とは、スポット溶接部4の外側の板材である上板2の表面上に対向配置されている。超音波探触子10及び超音波探触子20と上板2との間には図示しない接触媒質が介在している。超音波探触子10は、樹脂くさび11に複数の超音波振動子121〜12Nからなる振動子アレイ12が貼り付けられた構造を有する。超音波探触子10は、超音波振動子121〜12Nから送波された超音波信号を上板2表面に対して斜め方向に入射する。
【0022】
超音波探触子20は、樹脂くさび21に複数の超音波振動子221〜22Nからなる振動子アレイ22が貼り付けられた構造を有している。超音波探触子20は、上板2中を伝搬してきた超音波信号を超音波振動子221〜22Nで受波する。なお、超音波振動子121〜12N及び超音波振動子221〜22Nの個数Nとしては、例えば4、8、16、32等の個数を用いることができる。本実施形態では、超音波振動子の個数Nは16個とする。また、本実施形態では、上板2側に超音波探触子10と超音波探触子20とを配設したが、下板3又は上板2と下板3との両方に超音波探触子10と超音波探触子20を配設してもよい。また、本実施形態では、複数の超音波振動子によって振動子アレイを構成したが、1つの超音波振動子を走査することによって超音波信号を送波/受波するようにしてもよい。
【0023】
スイッチ回路30は、超音波信号を送波する超音波振動子を超音波振動子121〜12Nの中で切り替える。スイッチ回路31は、上板2中を伝搬してきた超音波信号を受波する超音波振動子を超音波振動子221〜22Nの中で切り替える。超音波送受信器32は、超音波振動子121〜12Nに超音波信号を送信すると共に、超音波振動子221〜22Nが受波した超音波信号を増幅出力する。A/D変換器33は、超音波送受信器32によって増幅出力された超音波信号をアナログ/デジタル変換する。演算装置34は、後述する解析処理を実行することによって、スポット溶接部4が、ナゲットが形成されている融着溶接部とナゲットが形成されていない界面溶着溶接部のどちらであるのかを判定する。
【0024】
〔スポット溶接部の検査方法〕
次に、図2乃至図9を参照して、スポット溶接部4が、ナゲットが形成されている融着溶接部とナゲットが形成されていない界面溶着溶接部のどちらであるのかを判定する際の検査装置1の動作について説明する。なお、この判定動作は、超音波信号を送波/受波する超音波送受処理と受波した超音波信号を解析する解析処理との2つの処理に大別される。そこで、以下では、説明を容易にするために、検査装置1の動作を超音波送受処理と解析処理とに分けて説明する。但し、実際の動作では超音波送受処理と解析処理とを平行して実行してもよいし、超音波送受処理の完了後に解析処理を実行してもよい。
【0025】
〔超音波送受処理〕
始めに、図2を参照して、超音波送受処理について説明する。図2は、超音波振動子121〜1216から送波された超音波の伝搬経路を示す模式図である。図2に示すように、超音波振動子121〜1216から送波された超音波信号Wは平面経路を通って複数方向に伝搬し、超音波振動子221〜2216は各超音波振動子121〜1216から送波された超音波信号Wを受波する。そこで、この超音波送受処理では、始めに、スイッチ回路30が、超音波振動子121から超音波信号Wを送波し、スイッチ回路31は超音波振動子121から送波された超音波信号Wを超音波振動子221〜2216によって受波する。超音波振動子221〜2216によって受波された超音波信号は、超音波送受信機32によって増幅出力された後、A/D変換器33によってA/D変換されて演算装置34で記憶される。
【0026】
次に、スイッチ回路30は、超音波振動子122から超音波信号Wを送波し、スイッチ回路31は超音波振動子122から送波された超音波信号Wを超音波振動子221〜2216によって受波する。超音波振動子221〜2216によって受波された超音波信号は、超音波送受信機32によって増幅出力された後、A/D変換器33によってA/D変換されて演算装置34で記憶される。この過程を超音波振動子1216から送波された超音波信号が超音波振動子221〜2216によって受波されるまで、超音波信号を送波する超音波振動子を順次変更して行なう。この結果、演算装置34には、複数位置から複数方向へ伝搬する超音波信号のデータが記憶される。
【0027】
〔解析処理〕
次に、図3乃至図9を参照して、解析処理について説明する。図3(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部における超音波信号の伝搬経路を示す模式図である。図3(a)に示すように、ナゲットR1が形成されている融着溶接部では、ナゲットR1を通過しない通常透過波W1とナゲットR1中を伝搬する溶接金属透過波W2との2種類の超音波信号が超音波探触子20によって検出される。また、ナゲットR1とナゲットR1以外の金属領域とでは超音波信号の伝搬速度が異なるために、超音波探触子20における通常透過波W1の受信タイミングと溶接金属透過波W2の受信タイミングとは異なる。一方、図3(b)に示すように、界面溶着溶接部では、ナゲットが存在しないために、超音波探触子20によって受波される超音波信号は通常透過波W1のみである。なお、実際の超音波信号の伝搬経路は、金属板の底面や表面での反射やモード変換を伴う複雑なものであるが、図3では図示を省略している。
【0028】
ここで、図4,図5を参照して、融着溶接部及び界面溶着溶接部が形成されている場合に受波される超音波信号の違いについて詳しく説明する。図4は、超音波振動子121〜1216から送波される超音波信号の一例を示す図である。図5(a),(b)はそれぞれ、融着溶接部及び界面溶着溶接部が形成されている場合に図4に示す超音波信号が送波された際に受波される超音波信号を示す図である。
【0029】
図4に示す超音波信号SINを送波した際、融着溶接部が形成されている場合には、図5(a)に示すように、受信タイミングが異なる通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1と溶接金属透過波W2に由来する超音波信号Sout2とが受波される。一方、界面溶着溶接部が形成されている場合には、図5(b)に示すように、通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1のみが受波される。従って、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号を解析することによって受波した超音波信号が1つ又は複数の超音波信号によって形成されているか否かを判定することによって、受波した超音波の伝搬経路上には融着溶接部と界面溶着溶接部のどちらが形成されているか否かを判定することができる。
【0030】
本実施形態では、演算装置34は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波に対応する超音波信号に対してウェーブレット解析を行うことによって、受波した超音波信号が1つ又は複数の超音波信号によって形成されているか否かを判定する。ここで、ウェーブレット解析とは、原信号をx(t)、マザーウェーブレットをΨ(t)と表したとき、以下の数式1で得られるウェーブレットW(a,b)を算出する一種の連続ウェーブレット変換処理のことを意味する。
【数1】
【0031】
この数式(1)は以下の数式(2)のように変形することができる。
【数2】
【0032】
このため、パラメータ(以下、伸縮係数と表記)aを一定値としてみた場合、ウェーブレット解析は、Ψ(t/a)、すなわちマザーウェーブレットΨ(t)を時間方向にa倍に伸縮した波形と原信号x(t)との相互相関演算とみなすことができる。そこで、演算装置34は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号を原信号x(t)、位相が異なる超音波成分が混合していない通常透過波に類似する超音波信号(以下、基本信号と表記)をマザーウェーブレットΨ(t)としてウェーブレット解析を実行する。これにより、演算装置34は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号の中に基本信号の成分がどれだけ含まれているかを算出することができる。なお基本信号としては、伝搬経路にスポット溶接部を含まない上板2の表面沿いを伝搬してきた超音波信号、より具体的には、超音波振動子121送波され、超音波振動子221〜2216によって受波された超音波信号を例示することができる。
【0033】
ここで、ウェーブレット解析に対する理解を容易にするために、図6乃至図9を参照して、ウェーブレット解析について模式的に説明する。ウェーブレット解析では、図6に示すようなマザーウェーブレットΨ(t)を規定し、始めに、演算装置34が、図7(a)〜(c)に示すようにパラメータτの値を固定した状態で伸縮係数aの値を変化させることによってマザーウェーブレットΨ(t)を伸縮させる。図7(a)〜(c)に示す例では、伸縮係数aの値はa1,a2,a3の順で増加し、マザーウェーブレットΨ(t/a)は伸縮係数aの値に応じて伸縮する。次に、演算装置34は、伸縮係数aの値が異なる複数のマザーウェーブレットΨ(t/a)について、パラメータτの値を変化させて原信号x(t)との相互相関演算処理を行う。
【0034】
この相互相関演算処理によれば、受波された超音波信号が通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1と溶接金属透過波W2に由来する超音波信号Sout2とを含む場合には、図8(a)〜(c)に示すような超音波信号Sout1と超音波信号Sout2とに対応する2つのピークを含むウェーブレットW(a,τ)が演算される。一方、受波された超音波信号が通常透過波W1に由来する超音波信号Sout1のみを含む場合には、図9(a)〜(c)に示すような超音波信号Sout1に対応する1つのピークを含むウェーブレットW(a,τ)が演算される。
【0035】
なお、図8(a)〜(c)及び図9(a)〜(c)に示すウェーブレットW(a,τ)はそれぞれ、図7(a)〜(c)に示すマザーウェーブレットΨ(t/a)を用いて算出されたウェーブレットW(a,τ)を示す。本実施形態では、伸縮係数aの値が異なる複数のマザーウェーブレットΨ(t/a)について相互相関演算処理を行ったが、伸縮係数aの値は予め決めておいてもよいし、測定毎に複数の伸縮係数aを計算して最適値を選択してもよい。
【0036】
このように、融着溶接部が形成されている場合に演算されるウェーブレットW(a,τ)では、通常透過波と溶接金属透過波とのそれぞれに対応するピークが隣接して観測される。一方、界面溶着溶接部が形成されている場合に演算されるウェーブレットW(a,τ)では、通常透過波に対応するピークのみが観測される。従って、ウェーブレット解析によって得られた最も相関が高いウェーブレットW(a,τ)について、隣接するピークの間隔、又は着目するピークとその近傍にあるピークとの強度比を演算することによって、ウェーブレット解析によって得られたウェーブレットW(a,τ)が融着溶接部と界面溶着溶接部とのどちらに由来するものであるのかを判定することができる。すなわち、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号の伝搬経路上に融着溶接部と界面溶着溶接部のどちらが形成されているか否かを判定することができる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるスポット溶接部の検査方法及び検査装置では、超音波探触子10が、スポット溶接部4の外側の板材である上板2の複数の送波位置から複数方向へ向けて、上板2を伝搬する超音波信号を送波し、超音波探触子20が、上板2の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する。そして、演算装置34が、超音波探触子20によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいてスポット溶接部の良否を判定する。このような構成によれば、伝搬経路にスポット溶接部4を含む超音波信号のウェーブレット解析を実行することによってスポット溶接部4の良否を判定するので、スポット溶接部4の良否を正確に検査することができる。
【0038】
なお、超音波信号を計測するに際してウェーブレット変換を適用する技術は例えば特許文献2に開示されている。しかしながら、従来まではウェーブレット解析は超音波信号の時間毎の周波数成分を算出するために使用されていた。これに対して、本実施形態におけるウェーブレット解析は、超音波振動子221〜2216のそれぞれが受波した超音波信号の中に基本信号の成分がどれだけ含まれているかを算出するためのものであり、従来までのウェーブレット解析とはその使用方法が大きく異なる。
【0039】
〔実験例〕
最後に、ウェーブレット解析の実験例を示す。
【0040】
図10(a),(b)はウェーブレット解析の実験例を示す図である。本実験では、超音波送受処理は、樹脂くさび11,21をポリスチロール、超音波振動子の配列方向における幅を0.8mm、超音波信号の上板2表面に対する入射角を25.4°として行った。また、解析処理は、超音波振動子121から送波され、超音波振動子221によって受波された超音波信号をマザーウェーブレットΨ(t)、伸縮係数aの値を1.075として行った。
【0041】
図10(a)と図10(b)の比較から明らかなように、図10(a)に示すウェーブレットW(a,τ)から観測されるピークの間隔は、図10(b)に示すウェーブレットW(a,τ)から観測されるピークの間隔より狭い。従って、図10(a)に示すウェーブレットW(a,τ)が演算された超音波信号の伝搬経路には融着溶接部が形成され、図10(b)に示すウェーブレットW(a,τ)が演算された超音波信号の伝搬経路には界面溶着溶接部が形成されていることがわかる。なお、界面溶着溶接部に由来するウェーブレットW(a,τ)中に複数のピークが観測される理由は、表面や裏面での反射やモード変換によって複数の経路を伝搬してきた超音波信号が受波されるためである。
【0042】
図11(a),(b)はそれぞれ、従来技術(相互相関演算)及び本願発明によるスポット溶接部の検査結果を示す図である。本実験では、超音波送受処理は、樹脂くさび11,21をポリスチロール、超音波振動子の配列方向における幅を0.8mm、超音波信号の上板2表面に対する入射角を25.4°として行った。また、検査対象として、上板2の板厚が0.55mm、下板3の板厚が1.2mmの2枚の鋼板を重ねてスポット溶接して作製された12個のサンプルを用いた。12個のサンプルのうち、4個は融着溶接部のサンプル、8個は界面溶着溶接部のサンプルである。
【0043】
従来技術を用いた検査では、各サンプルについて、超音波振動子121〜128が送波する超音波信号については、基準信号と超音波振動子121から送波され、超音波振動子221により受波された超音波信号との相関相互演算値が128になるように規格化し、超音波振動子129〜1216が送波する超音波信号については、基準信号と超音波振動子1216から送波され、超音波振動子2216により受波された超音波信号との相関相互演算値が128になるように規格化した。そして、(1)超音波振動子12n(n=1〜16)から送波され、超音波振動子22n(n=1〜16)によって受波された超音波信号の伝搬経路、(2)超音波振動子12n(n=1〜7)から送波され、超音波振動子22n+1(n=1〜7)によって受波された超音波信号の伝搬経路、及び(3)超音波振動子12n(n=9〜16)から送波され、超音波振動子22n−1(n=9〜16)によって受波された超音波信号の伝搬経路それぞれについての相互相関演算値と128との差の絶対値(但し、128より大きい場合は差を0とする)を足し合わせたものを相関演算評価指標とした。
【0044】
本願発明を用いた検査では、超音波振動子128から送波され、超音波振動子228によって受波された超音波信号を原信号x(t)、超音波振動子121から送波され、超音波振動子221によって受波された超音波信号の一部をマザーウェーブレットΨ(t)、伸縮係数aの値を1.075としてウェーブレット解析を行った。そして、得られたウェーブレットW(a,τ)について、指定した範囲内で最大値となる第1ピークと、第1ピークの強度の0.5倍以上となるピークの中で最も第1ピークに近い第2ピークとを検出し、第1ピークと第2ピークとの間隔を評価指標として算出した。
【0045】
図11(a)に示すように、従来技術を用いた検査では、熱影響部の大きさが大きい界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとでは相関演算評価指標の値が近似していた。このため、従来技術を用いた検査では、界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとを区別することはできなかった。これに対して、本願発明を用いた検査では、界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとでピーク間間隔が大きく異なっていた。従って、本願発明を用いた検査によれば、界面溶着溶接部のサンプルと融着溶接部のサンプルとを正確に区別することができた。
【0046】
なお、本実験では、超音波振動子128から送波され、超音波振動子228によって受波された超音波信号を原信号x(t)としたが、融着溶接部と界面溶着溶接部との間で差異が観察される伝搬経路であれば、その他の伝搬経路であってもよいし、また複数の超音波信号の伝搬経路についてウェーブレット解析を行ってもよい。また、第1ピークと第2ピークとの間隔を算出する方法の他に、第1ピークと第2ピークとの強度比や第1ピークの最大値を算出することによって判別してもよい。
【0047】
ピークの強度比によって判別する場合、界面溶着溶接部に由来するピークが含まれないように第2ピークを検出する範囲を設定することによって、界面溶着溶接部では(第2ピークの強度/第1ピークの強度)の値は小さくなる。また、ウェーブレット解析によって複数の評価指標を算出し、複数の評価指標を組み合わせることによって判定を行ってもよいし、従来技術によって算出された評価指標と本願発明によって算出された評価指標とを組み合わせて判定を行ってもよい。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態は、2枚の金属板(鋼板)をスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するものであるが、検査対象となる板材は鋼板に限定されることはなく、アルミニウム製,無機材料、有機材料等のその他の板材に対しても適用することができる。また、スポット溶接をする板の枚数は2枚に限定されることはない。また、スポット溶接部の良否の判断も、融着溶接部と界面溶着溶接部との識別のみに限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 検査装置
2 上板
3 下板
4 スポット溶接部
10,20 超音波探触子
11,21 樹脂くさび
12,22 振動子アレイ
121〜12N,221〜22N 超音波振動子
30,31 スイッチ回路
32 超音波送受信器
33 A/D変換器
34 演算装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査方法であって、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波ステップと、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波ステップと、
前記受波ステップによって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいて前記スポット溶接部の良否を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とするスポット溶接部の検査方法。
【請求項2】
前記受波ステップは、伝搬経路にスポット溶接部を含まない超音波信号を受波するステップを含み、前記ウェーブレット解析に用いるマザーウェーブレットとして、前記受波ステップにおいて受波された伝搬経路にスポット溶接部を含まない超音波信号の一部又は全部を用いることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接部の検査方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記ウェーブレット解析によって演算されたウェーブレットに含まれるピークの位置及び強度のうちの少なくとも一方を用いて、前記スポット溶接部が融着溶接部と界面溶着溶接部のどちらであるかを判定するステップを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスポット溶接部の検査方法。
【請求項4】
複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査装置であって、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波手段と、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波手段と、
前記受波手段によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいて前記スポット溶接部の良否を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするスポット溶接部の検査装置。
【請求項1】
複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査方法であって、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波ステップと、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波ステップと、
前記受波ステップによって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいて前記スポット溶接部の良否を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とするスポット溶接部の検査方法。
【請求項2】
前記受波ステップは、伝搬経路にスポット溶接部を含まない超音波信号を受波するステップを含み、前記ウェーブレット解析に用いるマザーウェーブレットとして、前記受波ステップにおいて受波された伝搬経路にスポット溶接部を含まない超音波信号の一部又は全部を用いることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接部の検査方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記ウェーブレット解析によって演算されたウェーブレットに含まれるピークの位置及び強度のうちの少なくとも一方を用いて、前記スポット溶接部が融着溶接部と界面溶着溶接部のどちらであるかを判定するステップを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスポット溶接部の検査方法。
【請求項4】
複数の板材を重ね合わせてスポット溶接することによって形成されたスポット溶接部の良否を検査するスポット溶接部の検査装置であって、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の送波位置から板材を伝搬する超音波信号を送波する送波手段と、
前記スポット溶接部の外側の板材の複数の受波位置において、少なくとも伝搬経路にスポット溶接部を含む超音波信号を受波する受波手段と、
前記受波手段によって受波された超音波信号のウェーブレット解析を実行し、ウェーブレット解析の解析結果に基づいて前記スポット溶接部の良否を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするスポット溶接部の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−196862(P2011−196862A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64851(P2010−64851)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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