説明

スライス機能付トースター

【課題】 食パンの鮮度及び風味の低下を防止しつつ、食感に優れる食パンを食べる直前にスライス並びにトーストして調理することが可能なスライス機能付トースターの提供。
【解決手段】 投入された食パンを所望の厚さにスライスする切断刃を有するカッティングユニット12と、カッティングユニット12に食パンを搬送する第1の搬送ユニット14と、カッティングユニット12によってスライスされた食パンをトーストして焼き上げる焼成ユニット18と、カッティングユニット12によってスライスされた食パンの先端側の外皮、又は末端側の外皮を排出口側に搬送して排出するとともに、スライスされた食パンを前記焼成ユニット側に搬送する第2の搬送ユニット16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライス機能付トースターに係わり、特にいわゆる食パンを厚切り、薄切りなどの所望の厚さにスライスした後、トーストすることが可能なスライス機能付トースターに関する。
【背景技術】
【0002】
1本物食パンは、パン工場などにおいて焼成した後、1斤あたり4枚乃至8枚程度にスライスし、袋に包装して販売されるのが一般的である。しかし、食パンは、一旦スライスすると、時間の経過によって香ばしさや、パン生地の水分が失われやすくなり、急速に鮮度及び風味が低下する。これは、いわゆる耳と呼ばれる外皮によって食パンの内部に閉じ込められている香りなどが、スライスすることで切断面から拡散し易くなることなどに起因している。
【0003】
このような鮮度低下を防止するため、食パン製造に際しては、時間的なロスが極力生じないように出荷時間に合わせて食パンの製造作業を行うなどの工夫をしているが、流通に要する時間を短縮するにはおのずと限界があり、食パンの鮮度低下をいかに防止するかは避けることのできない課題である。
そこで、特開平7-132040号公報には、スライスした食パンにバター、マーガリンなどの食用油脂類を塗布するとともに、その後、急速凍結して保存することによって長期間、パンの鮮度を維持できるとする冷凍スライスパン及びその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7-132040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特開平7-132040号公報記載の冷凍スライスパンは、消費する際には解凍するだけで済むと言う利点があるものの、食パンの保存や輸送に際しては冷凍庫が必要であり、流通上様々な制約がある。また、パンを冷凍する工程がパンの製造工程に付加され、製造工程が煩雑化するとともに、通常のパン製造設備に加えて冷凍設備が必要になるなど、パンの製造、流通の過程でコスト高が避けられない課題がある。
【0005】
本発明は、このような諸事情に対処するために提案されたものであって、食パンの鮮度及び風味の低下を防止しつつ、食感に優れる食パンを、食べる直前にスライスしてトーストすることが可能なスライス機能付トースターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、投入された食パンを所望の厚さにスライスする切断刃を有するカッティングユニットと、前記カッティングユニットに食パンを搬送する第1の搬送ユニットと、前記カッティングユニットによってスライスされた食パンをトーストして焼き上げる焼成ユニットと、前記カッティングユニットによってスライスされた食パンの先端側の外皮、又は末端側の外皮を排出口側に搬送して排出するとともに、スライスされた食パンを前記焼成ユニット側に搬送する第2の搬送ユニットとを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記カッティングユニットに、食パンのスライス時に該食パンを固定する固定手段を設け、前記第1の搬送ユニットは該固定手段と協働してスライスされる食パンが所望の厚さとなるように食パンの送り量を制御し、所望の送り量となったところで、前記固定手段によって食パンを保持しながら該食パンを切断刃によってスライスすることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2において、前記カッティングユニットの食パンをスライスする切断刃は、上下方向に移動可能な支持部材に取り付けられ、この支持部材には該支持部材を上下動させる上下動駆動手段が設けられているとともに、切断刃を横方向へ往復動させる往復動駆動手段が設けられ、食パンをスライスする際は、切断刃を往復動駆動手段によって横方向に往復動させつつ、切断刃を前記上下動駆動手段によって下方に移動させることにより食パンをその上部からスライスするようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3において、前記カッティングユニットの切断刃を上下動させる上下動駆動手段は、食パンのスライス時における該切断刃の下方への移動の際、切断刃を所定時間毎に一旦停止させながら下方へと移動させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4において、前記第1の搬送ユニットによって搬送される食パンの残量を検出する残量検出センサを設け、該残量検出センサによって該食パンの残りの長さが所定値以下と検出された場合に、予備の食パンを第1の搬送ユニットに補充するバッファユニットが設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5において、前記焼成ユニットには、トースト用の加熱手段と、スライスされた食パンを載置する食パン載置手段とが設置され、該加熱手段によって前記食パン載置手段上の食パンの両面、又は、所望の一面をトーストすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、請求項1乃至6記載の発明によれば、投入された食パンをカッティングユニットによって所望の厚さにスライスした後、スライスされた食パンを焼成ユニットによってトーストして焼き上げるようにしている。つまり、トーストを行う直前に食パンをスライスするため、切った直後の鮮度低下のない状態で、トーストされた焼き立てのパンを利用客に提供することができるようになる。その結果、従来のようにスライスされた後に流通するパンに比較して、香りが飛散していない風味に富んだ状態のパンを利用客に提供することが可能となり、食感を大幅に向上させることができる。
【0013】
特に、請求項2に記載の発明によれば、第1の搬送ユニットは固定手段と協働してスライスされる食パンが所望の厚さとなるように食パンの送り量を制御し、所望の送り量となったところで、固定手段によって食パンを保持しながら食パンをスライスするようにしているため、利用客の好みに応じた切りたてで、且つ焼きたてのトーストを提供することが可能である。
【0014】
特に、請求項3及び4記載の発明によれば、食パンをスライスする際は、切断刃を往復動駆動手段によって横方向に往復動させつつ、切断刃を上下動駆動手段によって下方に移動させることにより食パンをその上部からスライスするようにしている。また、上下動駆動手段は、食パンのスライス時における切断刃の下方への移動の際、切断刃を所定時間毎に一旦停止させながら下方へと移動させるようにしている。このように、スライス時における切断刃の下降中に、一旦停止を繰り返すようにしているので、食パンを効率よくスライスすることができ、又、様々な堅さの食パンのスライスに対応することができる。
【0015】
特に、請求項5記載の発明によれば、食パンの残量を検出する残量検出センサを設け、残量検出センサによって食パンの残りの長さが所定値以下と検出された場合に、予備の食パンを第1の搬送ユニットに補充するバッファユニットが設けている。このため、スライス作業や、トースト作業を中断することなく継続して、トースターを使用することができ、稼働率の向上に寄与するとともに、利用客の待ち時間なども低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るスライス機能付トースターの好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るスライス機能付トースターの概略構成を示す斜視図である。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態のスライス機能付トースター10は、主要な構成要素として、カッティングユニット12と、第1の搬送ユニット14と、バッファユニット15と、第2の搬送ユニット16と、焼成ユニット18と、制御ユニット20とを備えている。カッティングユニット12、第1の搬送ユニット14、バッファユニット15は、下部ケーシング22の上部に設置され、第2の搬送ユニット16、焼成ユニット18は、下部ケーシング22の内部に設置されている。下部ケーシング22上には上部カバー24が取り付けられ、カッティングユニット12,第1の搬送ユニット14を覆うようになっている。
【0019】
上部カバー24には、トースター10を操作するための操作パネル26がその前方上部に取り付けられるとともに、食パンをトースター10内に投入するための投入口28が設けられ、この投入口28には、ヒンジ30によって蓋31が開閉可能に取り付けられている。また、上部カバー24の前部には、ガラス、アクリル板などの透明な板が取り付けられた窓32が設けられ、食パンが搬送、スライスされる様子を観察することができるようになっている。
【0020】
図2は本実施形態のスライス機能付トースターの内部構成を示す透視正面図、図3及び図4は、第1の搬送ユニット14並びにバッファユニット15を示した図である。まず、図3(A)に示されるように、第1の搬送ユニット14並びにバッファユニット15は隣接して配置され、このうち、第1の搬送ユニットは1対のローラ34A,34Bと、コンベアベルト36と、駆動モータ38とを備えている。
【0021】
図3及び図4(A)に示されるように、ローラ34A,34Bは、コンベアベルトに沿って平行に配置される2本の支持レール40,40の両端部に架け渡されるようにして回転可能に軸支されている。これらのローラ34A,34B間には、コンベアベルト36が張設され、ローラ34Aと回転軸37を介して連結された駆動モータ38が回転することによってコンベアベルト36が駆動され、図示しない食パンをコンベアベルト36上に載せて後述するカッティングユニット12まで搬送するようになっている。
【0022】
一方、図3(B)に示されるように、支持レール40のカッティングユニット12と反対の部分には、ストッパ41がコンベアベルト36よりも高い位置で設けられている。トースター10の使用時に、スライスしている食パン43が残り僅かになったときは、予備の食パン39が後述するバッファユニット15からコンベアベルト36上に供給されるが、このとき、駆動モータ38が逆回転することで、コンベアベルト36がカッティングユニット12とは反対方向に移動し、コンベアベルト36上にある予備の食パン39の後端部39Bをストッパ41に当接させる。また、更にコンベアベルト36が、そのまま移動することで、今までスライスされていた食パン43は、矢印Yに示すように予備の食パン39に向かって移動し、食パン43の後端部43Bが、予備の食パン39の先端部39Aに密着した状態となるよう制御ユニット20によって駆動モータ38が自動制御される。
【0023】
図3(B)及び図4(A),(B)に示されるように、バッファユニット15には、第1の搬送ユニット14に隣接して予備の食パン39が載せられる載置台15Aが設けられている。図5に示されるように、載置台15Aは、第1の搬送ユニット14側の側端部が回転軸42によって傾斜動可能に支持されており、この回転軸42は、駆動モータ44とリンク46を介して接続され、駆動モータ44が矢印X1方向へ回転すると、載置台15Aが矢印X2方向へ回動し、載置台15Aを第1の搬送ユニット14側へ傾斜させることができるようになっている。これによって、第1の搬送ユニット14のコンベアベルト36上の食パン43がスライスされて残り僅かになったときに、載置台15Aに載せられている予備の食パン39が第1の搬送ユニット14側に移動し、コンベアベルト36上に補充されるようになっている。予備の食パンの補充方法としては、前述した載置台15Aを傾斜させて補充する方法の他、例えばコンベアベルト36の上方に予備の食パンが載置される台を移動可能に設け、この台から食パンを下方のコンベアベルト36上へを移動させる方法なども利用できる。
【0024】
なお、この予備の食パン39の補充動作の制御ユニット20による制御は以下のように行われる。図2に示されるように、第1の搬送ユニット14のカッティングユニット12側には、食パンの残量長さを検出する光検知型の残量センサ48が設けられており、この残量センサ48は発光部と受光部とが対向する位置にそれぞれ設置され、発光部から発せられた光を受光部が検出することで、食パンの残量を検出する。具体的には、コンベアベルト36上に、スライス中の食パンが所定量、例えば10cm以上残っている場合は、残量センサ48から発せられる光が遮られ、対応する箇所に設置されている受光センサに届かないため、食パンがまだ十分にあると判断し、その情報が制御ユニット20に出力されている。この場合は、制御ユニット20は、カッティングユニット12と協働しながら、食パンを搬送して食パンのカッティング動作を継続するようにカッティングユニット12及び第1の搬送ユニット14を自動制御する。
【0025】
一方、残量センサ48によって食パンの残りが10cm未満になった場合は、発光部から発せられる光が食パンによって遮られることなく、受光部によって検出されるため、カッティング中の食パンが残り10cm未満になった旨の情報が制御ユニット20に出力される。すると、第1の搬送ユニット14を停止するとともに、図5(B)に示されるように、前述したバッファユニット15の駆動モータ44を矢印X1方向へ回転させて予備の食パン39が載せられている載置台15Aを矢印X2方向へ回動し、載置台15Aを第1の搬送ユニット14側へ傾斜させる。これによって、予備の食パン39が第1の搬送ユニット14側に滑りながら、若しくは端部を支点として回転しながら移動し、コンベアベルト36上に補充される。
【0026】
その後、図3(B)に示されるように、第1の搬送ユニット14の駆動モータ38を制御ユニット20によって逆回転するように制御し、コンベアベルト36をカッティングユニット12と反対方向に移動させ、コンベアベルト36上の予備の食パン39の後端部39Bをストッパ41に当接させる。また、更にコンベアベルト36が、そのまま移動することで、今までスライスされていた食パン43は、矢印Yに示すように予備の食パン39に向かって移動し、食パン43の後端部43Bが、予備の食パン39の先端部39Aに密着する。そして、再び駆動モータ38を正転させ、カッティングユニット12に対して、食パン43及び予備の食パン39の搬送作業を再開し、スライス作業を継続する。食パン43が短くなっても、このように搬送ユニット14並びにバッファユニット15を制御することにより、食パン43を無駄なくスライスすることができる。つまり、残量センサ48と、切断刃50との距離が分かっているため、例えば、厚切り25mmで3枚スライスした後に、外皮(いわゆる「耳」)になると言った情報を制御ユニット20に認識させることできるので、前述した自動制御による搬送作業並びにスライス作業が可能になっている。
【0027】
図6は本実施形態のスライス機能付トースター10の要部平面図であり、第1の搬送ユニット14とカッティングユニット12との配置関係を示している。図7及び図8は要部側面図であり、カッティングユニット12の配置状態を示している。
これらの図に示されるように、カッティングユニット12は、切断刃50と、固定手段52と、上下動駆動手段54と、往復動駆動手段56等とを備えて構成されている。
【0028】
切断刃50は前述した第1の搬送ユニット14によって搬送されてくる食パンをスライスするためのものであり、この切断刃50によるスライス作業は、搬送されてきた食パンを固定手段52によって把持しながら行われる。固定手段52の構成は以下の通りである。
図9は固定手段52の詳細を示した図であり、図7及び図9に示されるように、固定手段52は、食パンを両側から把持する左右一対の把持アーム58A,58Bを備えるとともに、図9(A)に示されるように、把持アーム58A,58Bは、平面視コ字状のフレーム60に、両者の間隔を変えられるように取り付けられている。このフレーム60は下部ケーシング22上に立設した状態で固定されている。
【0029】
図9に示されるように、把持アーム58A,58Bには、フレーム60に架設されている2本のガイド棒62,62が貫通されており、これらのガイド棒62,62に案内されて横方向に移動可能になっている。また、把持アーム58A,58Bには、雌ねじ部64A,64Bが設けられており、これらの雌ねじ部64A,64Bに、雄ねじ部66A,66Bが形成された可動軸66が螺合している。雄ねじ部66A,66Bは、それぞれ逆ねじとなるように形成されている。
【0030】
可動軸66は、側方に配置されている駆動モータ68の回転軸68Aと連結されており、回転軸68Aが回転することによって前述した可動軸66の雄ねじ部66A,66Bと、雌ねじ部64A,64Bとの作用によって、把持アーム58A,58B間の間隔を変化しうるようになっている。つまり、図10に示されるように、駆動モータ68を正転又は逆転させることで、把持アーム58A,58B間の間隔を変えることができ、第1の搬送ユニット14上の食パンをスライスする時は固定し、スライス後は開放して第1の搬送ユニット14上の食パンをスタンバイ状態とする。
【0031】
図11〜図13は、切断刃50と、上下動駆動手段54と、往復動駆動手段56との配置関係を示した図である。図11に示されるように、切断刃50は、摺動片72に取り付けられ、更にこの摺動片72は、支持部材70に対して横方向に摺動自在に設置されている。これにより、切断刃50は往復動駆動手段52によって横方向に往復運動することが可能になっている。往復動駆動手段52は、駆動モータ74と、リンク76とを備え、駆動モータ74は支持部材70に、その回転軸78が概ね水平となる位置に設置され、回転軸78には円盤状の回転片80が取り付けられている。回転片80には、その外周の近傍にリンク76が揺動可能に取り付けられており、駆動モータ74を回転させることにより、回転片80が回転して回転力をリンク76による往復運動に変換し、その結果、切断刃50を摺動片72とともに横方向へ往復運動させるようになっている。
【0032】
図11(B)及び図13に示されるように、支持部材70は、正面視四角形状のフレーム82に沿って上下動駆動手段54により上下動可能となっており、支持フレーム82の上下方向に設けられたガイド棒84,84が支持部材70の水平な支持片70Aの両端部付近を貫通する形で取り付けられ、支持部材70の上下方向への移動を案内している。また、支持フレーム82には、その下方位置に設置された駆動モータ86の回転軸88と連結された螺子棒90が、回転可能に上下方向に亘って配設され、図12(C)に示されるように、螺子棒90の外周面に沿って連続的に形成されている雄ねじ部が、支持片70Aの中央部付近に設けられたコ字状の雌ねじ片70Bと螺合している。螺子棒90は、駆動モータ86によって回転駆動されると、図13に示されるように、切断刃50を支持部材70とともに上下動させる。
【0033】
なお、上記のように構成したカッティングユニット12、第1の搬送ユニット14による搬送作業並びに食パンのスライス作業は、以下のように制御ユニット20によって自動制御される。まず、食パンの先端側の皮の部分の切断作業について説明する。
投入口28から、通常、3斤の食パンが投入されてコンベアベルト36上に載置されるが、まず、食パンの先端側の外皮を切断する場合は、第1の搬送ユニット14のコンベアベルト36によって、食パンを固定手段52の把持アーム58A,58から、外皮(耳)の厚さ分、例えば15mmだけ突出させて停止する。そして、この状態で駆動モータ68を正転させて把持アーム58A,58B間の距離を縮めて把持アーム58A,58Bによって食パンを把持して固定する。このとき、食パンを15mmだけ突出させ、搬送ユニット14を停止させる動作は、図2に示されるように、切断刃50よりも15mmほど搬送方向側に設けられた検出センサ49によって食パンの先端側を検出し、その時点で第1の搬送ユニット14を停止させる動作を制御ユニット20によって自動的に行わせる。その状態で、カッティングユニット12の切断刃50を横方向に往復動させながら、支持部材70を切断刃50とともに下方へと徐々に移動させ、スライス作業を実施する。
【0034】
1枚のパンにおける切り始め、並びに最後の切り終わりの際、食パンの外皮(クラスト)の部分をスライスする動作は、切断刃50の下降速度を遅くして、皮の切り残しや、皮のちぎれが生じないように制御する。この場合における支持部材70の下降スピードの制御は、予め制御ユニット20に、食パンの上下寸法、皮の厚みを記憶させておいて制御する方法、或いはタイマーによって支持部材70の下降時間をカウントし、カウントされた下降時間に基づいて制御する方法など、各種の制御方法が含まれる。
【0035】
皮以外の部分を切断する際は、上下動駆動手段54による下降スピードは、パンの切り始め、切り終わりよりも早くなるようにしているが、切断刃50が所定時間毎に一旦停止しながら下方へと移動するように、制御ユニット20によって上下動駆動手段54を制御する。このように、一旦停止を繰り返すのは、一定の降下スピードでスライスを行うよりも一旦停止を繰り返しながらスライスした方が食パンの切れがよく、又、様々な堅さの食パンのスライスにも対応することができることが、経験上知見として得られているからである。
【0036】
食パンの先端の皮の部分を切断した後は、通常のスライス作業に移行し、固定手段52の把持アーム58A,58B間の間隔をあけて食パンの把持動作を開放した後、食パンを厚切りの場合は25mm、通常の厚さの場合は20mmだけ搬送して停止し、その状態で把持アーム58A,58Bによって食パンを固定する。その状態で、同様に切断刃50を降下させることによって食パンのスライス作業を行う。このような食パンの固定、スライス、搬送と言った一連の動作を繰り返す。なお、スライス中の食パンが一定の長さ以下になった場合は、前述したバッファユニット15から、予備の食パンが補充される。なお、スライスする食パンの厚さについて、ここでは、厚切りの場合は25mm、通常の厚さの場合は20mmと設定しているが、任意の厚さに設定することができる。
【0037】
図14〜図16は第2の搬送ユニット16及び焼成ユニット18の配置状態を示した図である。これらの図に示されるように、第2の搬送ユニット16及び焼成ユニット18は、下部ケーシング22内に並列した状態で設置され、このうち、第2の搬送ユニット16はカッティングユニット12の下方に位置し、焼成ユニット18は第1の搬送ユニット14の下方に位置している。
【0038】
第2の搬送ユニット16は、ローラ軸92A,92Bと、ワイヤコンベア94と、駆動モータ96とを備えている。ローラ軸92A,92Bは、下部ケーシング22内に立ち上がるように形成されたフレーム97に回転可能に支持されており、ローラ軸92A,92Bには、スプロケット98A,98Bが両端に設けられている。このスプロケット98A,98Bに、前後一対のチェーン99,99がかけられ、図14に示されるように、両側に張設されたチェーン99,99間に複数のワイヤ100を所定間隔を隔てて取り付け、これらのワイヤ100によって、スライスされた食パン、外皮が載置されるワイヤコンベア94が形成される。ローラ軸92Bは、駆動モータ96と、回転軸96Aを介して連結され、駆動モータ96によってローラ軸92Bが回転し、ワイヤコンベア94が移動するようになっている。
【0039】
第2の搬送ユニット16は、前述したカッティングユニット12によってスライスされた食パンの皮を外部へ排出する機能と、スライスされた食パンを焼成ユニット18側に搬送する機能と有している。食パンの皮がスライスされてワイヤコンベア94上に落下すると、ワイヤコンベア94が排出側に駆動され、図8に示されるように、下部ケーシング22の側面に設けられている排出口101から取り出される。一方、スライスされた食用の食パンの場合は、ワイヤコンベア94が焼成ユニット18側へ駆動されて、焼成ユニット18側へ搬送され、焼成ユニット18によるトースト作業に移行する。
【0040】
焼成ユニット18は、ローラ軸102A,102B、ワイヤコンベア104、駆動モータ106等を備えた送り手段107と、加熱手段109とから構成されている。
送り手段107のローラ軸102A,102Bはフレーム97に回転可能に支持されており、ローラ軸102A,102Bにはスプロケット108A,108Bが、その両端付近に固着され、これらのスプロケット108A,108Bによってローラ軸102A,102B間に一対のチェーン110,110がかけられている。
張設されたチェーン110,110間には図示しない複数のワイヤが所定間隔を隔てて取り付けられ、これらのワイヤによって、第2の搬送ユニット16のワイヤコンベア94と同様にメッシュ状のワイヤコンベア104が、横方向に移動可能に構成されている。このワイヤコンベア104は、食パンのトーストを行いつつ搬送する食パン載置手段である。ローラ軸102Aは、駆動モータ106と、回転軸106Aを介して連結され、駆動モータ106によってローラ軸102Aが回転し、ワイヤコンベア104が移動するようになっている。
【0041】
加熱手段109は、上下にそれぞれ配置されたヒータ112がフレーム97に反射板とともに取り付けられ、上下のヒータ112は、ワイヤコンベア104上に載置されるパンに対して対称位置となるように載置されている。ヒータ112は、遠赤外線を放射する遠赤ヒータであり、スライスされた食パンの切断面を上側及び下側から、ワイヤコンベア104による搬送中にトーストする。ヒータ112を通過する時間はトーストの焼け具合を左右するため、所望の時間に設定することが可能である。ワイヤコンベア104によって搬送された食パンは、トーストされた後、図7に示される出口114から送りだされて取り出すことができるようになっている。なお、ここでは、食パンの両側をトーストするようにしているが、所望の一面をトーストすることも可能である。
【0042】
図17は、トースター10を操作するための操作パネルの詳細を示した図であり、図17(A)に示される操作パネル26は、前述したように上部カバー24の前面側に設けられ、図17(B)に示される操作パネル116は上部カバー24の背面側に設けられる。
図17(A)に示される操作パネル26は、トースター10が設置されているコンビニエンスストアなどに来た利用客が操作するパネルであり、スライスされる食パンの厚さを選択する選択ボタン118A,118Bと、決定ボタン120とが設けられている。利用客が、選択ボタン118A或いは118Bのいずれかを押すと、決定ボタン120が5秒間点滅し、点滅中に決定ボタン120を押すことによって所望の厚さの食パンを選ぶことが出来る。すると、前述した作用により、食パンの搬送作業、スライス作業、トースト作業がトースター10の庫内において実施される。
【0043】
利用客が決定ボタン120を押した後は、左側の表示部122に受付番号が表示されるとともに、右側の表示部124には、トーストされて庫外に出てくる食パンの受付番号が表示され、利用客に焼きあがった旨を知らせることができるようになっている。図17(B)に示される操作パネル116には、起動ボタン130、停止・リセットボタン132が設けられ、これらのボタンは、コンビニエンスストアでは店のスタッフが操作する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、例えばスライス前の3斤の食パンを、カッティングユニットによってスライスした後、焼成ユニットに搬送してトーストを行うようにしている。即ち、食べる寸前に食パンをスライスするようにしているので、食パンの鮮度を高い状態で保持したまま、焼き立てのトーストを利用客に提供できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係るスライス機能付トースターの概略構成を示す斜視図である。
【図2】同じく、本実施形態のスライス機能付トースターの内部構成を示す透視正面図である。
【図3】第1の搬送ユニット並びにバッファユニットの詳細を示した図であり、図3(A)は平面図、図3(B)は図3(A)のIIIB線から視た図である。
【図4】同じく、第1の搬送ユニット並びにバッファユニットの詳細を示した図であり、図4(A)は図3(A)のIVA線から視た側面図、図4(B)は図3(A)のIVB線から視た側面図、図4(C)は図3(A)のIVC線から視た側断面図である。
【図5】バッファユニットの動作の様子を示しした図である。
【図6】本実施形態のスライス機能付トースターの要部平面図である。
【図7】図6のVII線から視た要部側面図である。
【図8】図6のVIII線から視た要部側面図である。
【図9】固定手段の詳細を示した図であり、図9(A)は平面図、図9(B)は図9(A)のIXB線から視た側面図、図9(C)は図9(A)のIXC線から視た正面図である。
【図10】固定手段の動作状況を示す正面図である。
【図11】切断刃と、上下動駆動手段と、往復動駆動手段との配置関係を示した図で、図11(A)は平面図、図11(B)は図11(A)のXIB線から視た正面図ある。
【図12】切断刃と、上下動駆動手段と、往復動駆動手段との配置関係を示した図で、図12(A)は図11(B)のXIIA線から視た平断面図、図12(B)は図11(B)のXIIB線から視た側面図、図12(C)は図11(B)のXIIC線から視た側断面図である。
【図13】切断刃と、上下動駆動手段と、往復動駆動手段の動作を示した側面図である。
【図14】第2の搬送ユニット及び焼成ユニットの配置状態を示した平面図である。
【図15】第2の搬送ユニット及び焼成ユニットの配置状態を示した図であり、図15(A)は図14のXVA線から視た側断面図、図15(B)は図14のXVB線から視た側断面図、図15(C)は図14のXVC線から視た側面図である。
【図16】第2の搬送ユニット及び焼成ユニットの配置状態を示した図であり、図16(A)は図15(C)のXVIA線から視た側断面図、図16(B)は図15(C)のXVIB線から視た側断面図である。
【図17】操作パネルの各スイッチの配置状況を示した図である。
【符号の説明】
【0046】
10 スライス機能付トースター
12 カッティングユニット
14 第1の搬送ユニット
15 バッファユニット
15A 載置台
16 第2の搬送ユニット
18 焼成ユニット
20 制御ユニット
22 下部ケーシング
24 上部カバー
26 操作パネル(前面側)
28 投入口
30 ヒンジ
31 蓋
32 窓
34A 34B ローラ
36 コンベアベルト
37 回転軸
38 駆動モータ
39 食パン(予備)
39A 先端部
39B 後端部
40 支持レール
41 ストッパ
42 回転軸
43 食パン
43B 後端部
44 駆動モータ
46 リンク
48 残量センサ
49 検出センサ
50 切断刃
52 固定手段
54 上下動駆動手段
56 往復動駆動手段
58A 58B 把持アーム
60 フレーム
62 ガイド棒
64A 64B 雌ねじ部
66A 66B 雄ねじ部
68 駆動モータ
68A 回転軸
70 支持部材
70A 支持片
70B 雌ねじ片
72 摺動片
74 駆動モータ
76 リンク
78 回転軸
80 回転片
82 支持フレーム
84 ガイド棒
86 駆動モータ
88 回転軸
90 螺子棒
92A 92B ローラ軸
94 ワイヤコンベア
96 駆動モータ
96A 回転軸
97 フレーム
98A 98B スプロケット
100 ワイヤ
101 排出口
102A 102B ローラ軸
104 ワイヤコンベア
106 駆動モータ
107 送り手段
108A 108B スプロケット
109 加熱手段
110 チェーン
112 ヒータ
114 出口
116 操作パネル(背面側)
118A 118B 選択ボタン
120 決定ボタン
122 124 表示部
130 起動ボタン
132 リセットボタン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された食パンを所望の厚さにスライスする切断刃を有するカッティングユニットと、
前記カッティングユニットに食パンを搬送する第1の搬送ユニットと、
前記カッティングユニットによってスライスされた食パンをトーストして焼き上げる焼成ユニットと、
前記カッティングユニットによってスライスされた食パンの先端側の外皮、又は末端側の外皮を排出口側に搬送して排出するとともに、スライスされた食パンを前記焼成ユニット側に搬送する第2の搬送ユニットとを備えることを特徴とするスライス機能付トースター。
【請求項2】
前記カッティングユニットに、食パンのスライス時に該食パンを固定する固定手段を設け、前記第1の搬送ユニットは該固定手段と協働してスライスされる食パンが所望の厚さとなるように食パンの送り量を制御し、所望の送り量となったところで、前記固定手段によって食パンを保持しながら該食パンを切断刃によってスライスすることを特徴とする請求項1に記載のスライス機能付トースター。
【請求項3】
前記カッティングユニットの食パンをスライスする切断刃は、上下方向に移動可能な支持部材に取り付けられ、この支持部材には該支持部材を上下動させる上下動駆動手段が設けられているとともに、切断刃を横方向へ往復動させる往復動駆動手段が設けられ、食パンをスライスする際は、切断刃を往復動駆動手段によって横方向に往復動させつつ、切断刃を前記上下動駆動手段によって下方に移動させることにより食パンをその上部からスライスするようにしたことを特徴とする請求項2に記載のスライス機能付トースター。
【請求項4】
前記カッティングユニットの切断刃を上下動させる上下動駆動手段は、食パンのスライス時における該切断刃の下方への移動の際、切断刃を所定時間毎に一旦停止させながら下方へと移動させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のスライス機能付トースター。
【請求項5】
前記第1の搬送ユニットによって搬送される食パンの残量を検出する残量検出センサを設け、該残量検出センサによって該食パンの残りの長さが所定値以下と検出された場合に、予備の食パンを第1の搬送ユニットに補充するバッファユニットが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4に記載のスライス機能付トースター。
【請求項6】
前記焼成ユニットには、トースト用の加熱手段と、スライスされた食パンを載置する食パン載置手段とが設置され、該加熱手段によって前記食パン載置手段上の食パンの両面、又は、所望の一面をトーストすることを特徴とする請求項1乃至5に記載のスライス機能付トースター。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−110174(P2006−110174A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301885(P2004−301885)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【特許番号】特許第3681176号(P3681176)
【特許公報発行日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(504385971)株式会社クイックサイト (1)
【Fターム(参考)】