説明

スライダ

【課題】回転体及び円弧状レールの磨耗を抑制させる。
【解決手段】スライダ32は、円弧状の内周壁311及び外周壁312と、両周壁を連結する一対の側壁313と、外周壁312に形成されたスリット314とを有し、金属性製板状部材を折り曲げて形成した円弧状レール31を、スライドするものである。スライダ32は、スリット314から円弧状レール31内に挿入される挿入部321と、外周壁312を転動する第1回転体342と、内周壁311を転動する第2回転体341とを備え、第2回転体341は、幅方向両端部に配置される一対の側方回転体411と、幅方向中央部であって側方回転体411に対しスライド方向にずらして配置される中央回転体412とを備え、側方回転体411と中央回転体412は、挿入部321にスライド方向に揺動自在に設けられた軸支部材51に軸支される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製板状部材で成形される円弧状レール内をスライドするスライダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歩行補助装置に用いられる円弧状レールが知られている(例えば、特許文献1参照)。この歩行補助装置は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材と、着座部材を下方から支える左右一対の脚リンクとを備える。各脚リンクは、曲線案内機構を介して着座部材に対し前後方向に揺動自在に連結されている。
【0003】
曲線案内機構は、着座部材の支持フレームの後端部に前後方向の支軸を介して横方向に揺動自在に連結した円弧状レールと、この円弧状レールに沿ってスライドすると共に脚リンクの上端部に固定されるスライダとで構成される。
【0004】
円弧状レールは、曲率中心に近い内周側の内周壁と、曲率中心から遠い外周側の外周壁と、内周壁と外周壁とを円弧状レールの長手方向(前後方向)及び円弧形状の曲率半径方向(上下方向)に直交する幅方向(横方向)両側で連結する一対の側壁と、外周壁の幅方向中央部に形成したスリットとからなり、断面C字状に形成されている。外周壁は、スリットにより2つに分割されている。
【0005】
スライダは、円弧状レールのスリットから円弧状レール内に挿入される挿入部を備える。この挿入部には、円弧状レールの内周壁に接触する内側回転体と、円弧状レールの外周壁に接触する外側回転体とを備える。
【0006】
外側回転体は、スリットで分割された一対の外周壁に当接するように、円弧状レールの幅方向に間隔を存して、一対設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−247605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の円弧状レールは、軽量化の観点からアルミニウムを用いて押出成形で成形していた。しかしながら、円弧状レールをアルミニウムで成形すると、軽量化を図れる反面、強度性に乏しいという問題がある。
【0009】
そこで、ハイテンション材(高張力鋼板)等の金属製板状部材をスピニング製法等で折り曲げて製造することが考えられる。
【0010】
又、スライダの回転体の数を増加させ、スライダと円弧状レールとの間で伝達される力を分散させて、回転体及び円弧状レールの対磨耗性を向上させることも考えられる。
【0011】
しかしながら、金属製板状部材を折り曲げて円弧状レールを製造すると、加工誤差等により、各壁に微小な反りが生じ易い。微小な反りが発生すると、一部の回転体が周壁に当接できず、対磨耗性が低下してしまう。
【0012】
本発明は、金属製板状部材を用いて製造された円弧状レールに、全ての回転体を適切に当接させて、回転体及び円弧状レールの磨耗を抑制させることができるスライダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]本発明は、円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する中空の円弧状レールに沿う方向であるスライド方向に移動自在なスライダであって、前記円弧状レールは、金属製板状部材を折り曲げて成形されたものであり、前記スリットを介して前記円弧状レール内に挿入される挿入部と、該挿入部に設けられ、前記スリットが形成された前記周壁であって、前記スリットにより幅方向両側に分割された一対の分割周壁部分に、夫々転動自在に当接する一対の第1回転体と、前記挿入部に設けられ、前記スリットが形成された周壁に対向する周壁に転動自在に当接する第2回転体とを備え、前記第2回転体は、前記スリットが形成された周壁に対向する周壁に対して、幅方向両端部に配置される一対の側方回転体と、幅方向中央部に配置される中央回転体と、該側方回転体と該中央回転体とを前記スライド方向にずらして配置すると共に、該各回転体を回転自在に軸支する軸支部材とを備え、該軸支部材は、前記スライド方向に揺動自在となるように前記挿入部に軸支されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第2回転体を、一対の側方回転体と中央回転体とで構成しているため、第2回転体を一対の側方回転体のみで構成した場合に比し、周壁との接触面積が増えて、スライダと円弧状レールとの間で伝達される力を分散させ、回転体及び円弧状レールの対磨耗性を向上させることができる。
【0015】
又、第2回転体を構成する一対の側方回転体と中央回転体とがスライド方向にずれて軸支部材に軸支され、この軸支部材がスライド方向に揺動自在となるようにスライダの挿入部に軸支されている。このため、例えば、第2回転体が転動する周壁の幅方向中央部分が、内側に向って膨らむような微小な反りを発生していても、軸支部材が揺動して、一対の側方回転体と中央回転体とが適切に周壁に当接する状態とすることができる。このため、第2回転体を構成する回転体のうちの一部の回転体のみが周壁に当接することを防止し、第2回転体を構成する全ての回転体が周壁に適切に当接して、磨耗を抑制することができる。
【0016】
[2]本発明のスライダにおいて、挿入部に、中央部分で円弧状レールの径方向に揺動自在となるように設けられた、円弧状レールの幅方向に延びる揺動部材を備え、この揺動部材の両端部に、一対の第1回転体を夫々回転自在に軸支させることが好ましい。
【0017】
円弧状レールを金属製板状部材を折り曲げて形成した場合、各分割周壁部分の折り曲げ角度に微小なずれが生じることがある。この場合、従来のスライダでは、一対の第1回転体の一方のみが分割周壁部分に当接し、他方が分割周壁部分から浮いた状態となってしまい、一方の第1回転体及びこの第1回転体が転動する一方の分割周壁部分の磨耗が著しくなる。
【0018】
そこで、上述したように、揺動部材の端部に第1回転体を軸支させれば、各分割周壁部分の折り曲げ角度に微小なずれが生じていても、揺動部材の揺動により、両第1回転体が対応する分割周壁部分に適切に当接することができる。これにより、スライダ及び円弧状レールの磨耗を抑制させることができる。
【0019】
[3]本発明のスライダにおいて、軸支部材に、中央部分で円弧状レールの径方向に揺動自在となるように、円弧状レールの幅方向に延びる回転軸を設け、この回転軸の両端部に、一対の側方回転体を夫々回転自在に軸支させることが好ましい。
【0020】
円弧状レールを金属製板状部材を折り曲げて形成した場合、一対の側方回転体が転動する周壁の幅方向中央部分が、内側に向かって膨らむような微小な反りが発生する場合がある。このとき、一対の側方回転体が転動する周壁の幅方向両端部分で、内側に向かって傾斜した傾斜角度に微小な差が生じる場合もある。
【0021】
上述したように、一対の側方回転体を径方向に揺動自在な回転軸の両端部に軸支させれば、傾斜角度に微小な差が生じている場合であっても、両側方回転体が周壁に適切に当接することができ、スライダ及び円弧状レールの摩耗を抑制させることができる。
【0022】
[4]揺動部材を用いて、第1回転体を揺動させる場合には、第1回転体の周面を断面円弧状に形成することが好ましい。第1回転体の周面を従来のように平滑な面とすると、揺動部材が揺動した際に、第1回転体の外周面の縁で部分周壁部分に当接することとなり、磨耗が激しくなる。上述したように、第1回転体の周面を断面円弧状に形成すれば、揺動部材が揺動しても常に一定の接触面積を維持させることができ、磨耗の抑制を図ることができる。
【0023】
[5]本発明のスライダがスライドする円弧状レールは、内面の寸法を基準として形成することが好ましい。本発明のスライダは、円弧状レール内に配置された回転体が転動することによりスライドする。このため、円弧状レールを外面の寸法を基準として形成した場合に比し、円弧状レールの内面の寸法精度が向上され、スライダが円弧状レールに沿ってスムーズにスライドすることができる。
【0024】
[6]本発明のスライダがスライドする円弧状レールは、スピニング製法を用いて金属製板状部材を折り曲げて形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態のスライダが用いられた歩行補助装置を示す側面図。
【図2】実施形態の曲線案内機構を示す斜視図。
【図3】実施形態のスライダを示す斜視図。
【図4】実施形態のスライダを示す断面図。
【図5】実施形態の回転体が揺動する状態を示す説明図。
【図6】参考例のスライダの回転体と円弧状レールを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から図5を参照して、本発明の実施形態のスライダを説明する。実施形態のスライダは、図1に示す歩行補助装置に用いられるものである。歩行補助装置は、図1に示す如く、利用者Pが跨ぐようにして着座する着座部材1と、着座部材1を下方から支える左右一対の脚リンク2,2とを備えている。
【0027】
各脚リンク2は、着座部材1に後述する曲線案内機構3を介して前後方向に揺動自在に連結されている。脚リンク2の下端には、利用者Pの左右の各足に装着される靴部8が連結されている。
【0028】
各脚リンク2には、駆動源9が搭載されている。そして、駆動源9の回転駆動で各脚リンク2に伸び方向の力を加え、利用者Pの体重の少なくとも一部を支持する支持力(以下、体重免荷アシスト力という)を発生させようにしている。各脚リンク2で発生された体重免荷アシスト力は着座部材1を介して利用者Pの胴体に伝達され、利用者Pの脚に作用する荷重が軽減される。
【0029】
曲線案内機構3は、着座部材1の支持フレーム1bの後端の立上り部に前後方向の支軸3bを介して横方向に揺動自在に連結した円弧状レール31と、脚リンク2の上端部に固定したスライダ32とで構成されている。円弧状レール31の円弧形状の曲率中心3aは着座部材1のシート部1aの上面より上方に位置する。
【0030】
以下、図2を参照して、曲線案内機構3について詳述する。円弧状レール31は、曲率中心3aに近い内周側の内周壁311と、曲率中心3aから遠い外周側の外周壁312と、内周壁311と外周壁312とを円弧状レール31の長手方向(前後方向)及び円弧形状の曲率半径方向(上下方向)に直交する溝幅方向(横方向)両側で連結する一対の側壁313,313と、外周壁312の幅方向中央部に形成したスリット314とからなり、断面C字状に形成されている。このスリット314により、外周壁312は2つに分割され、この分割された両外周壁312が本発明における分割周壁部分に相当する。
【0031】
スライダ32は、スリット314を通して円弧状レール31の内部に挿入される挿入部321と、脚リンク2に接続される接続部322とを有している。挿入部321には、円弧状レール31の内周壁311に内部から転動自在に当接する8つの内側回転体(第2回転体)341と、外周壁312に内部から転動自在に当接する4つの外側回転体(第1回転体)342と、円弧状レール31の側壁に内部から転動自在に当接する6つの横回転体343とが設けられており、これらの回転体341,342,343の転動で、スライダ32が円弧状レール31に沿って摺動自在となっている。
【0032】
8つの内側回転体341のうちの4つは、挿入部321の前方に配置されており、説明の便宜上、この4つの内側回転体341をまとめて前方回転体群41と定義する。残りの4つの内側回転体341は、挿入部321の後方に配置されており、説明の便宜上、この4つの内側回転体341をまとめて後方回転体群42と定義する。
【0033】
前方回転体群41を構成する4つの内側回転体341のうち、2つは前方であって内周壁311の幅方向両端部に当接するように配置されており、これが実施形態における一対の側方回転体411となる。前方回転体群41の残りの2つの内側回転体341は、後方であって内周壁311の幅方向中央部に当接するように横に並んで配置されており、これが実施形態における中央回転体412となる。
【0034】
挿入部321の前方部には、揺動軸51aを介してスライド方向(スライダ32が円弧状レール31に沿ってスライドする方向。前後方向。)に揺動自在な略三角形状の前方側の軸支部材51が設けられている。この軸支部材51に、一対の側方回転体411の回転軸411a及び一対の中央回転体412の回転軸412aが取り付けられている。これにより、軸支部材51を介して前方回転体群41がスライド方向に揺動自在となる。
【0035】
後方回転体群42は、前方回転体群41と前後対称に構成され、後方回転体群42を構成する4つの内側回転体341のうち、2つは後方であって内周壁311の幅方向両端部に当接するように配置されており、これも実施形態における一対の側方回転体421となる。後方回転体群42の残りの2つの内側回転体341は、前方であって内周壁311の幅方向中央部に当接するように横に並んで配置されており、これも実施形態における中央回転体422となる。
【0036】
挿入部321の後方部には、揺動軸52aを介してスライド方向に揺動自在な略三角形状の軸支部材52が設けられている。この軸支部材52に、一対の側方回転体421の回転軸421a及び一対の中央回転体422の回転軸422aが取り付けられている。これにより、軸支部材52を介して後方回転体群42がスライド方向に揺動自在となる。
【0037】
このように、前方回転体群41及び後方回転体群42が一対の側方回転体411,421のみならず、一対の中央回転体412,422を備えるため、内側回転体341と内周壁311との間で伝達される力が分散し易くなり、内側回転体341及び内周壁311の対磨耗性を向上させることができる。
【0038】
又、前方回転体群41及び後方回転体群42がスライド方向に揺動自在に構成されているため、内周壁311の幅方向中央部分が内側に向って膨らむような微小な反りを発生していても、図5(a)及び図5(b)に示すように、全ての内側回転体341を内周壁311に適切に当接させることができ、内側回転体341及び内周壁311の対磨耗性を確実に向上させることができる。
【0039】
4つの外側回転体(第1回転体)342は、前方回転体群41と後方回転体群42の間である挿入部321の中央部に配置されている。4つの外側回転体342のうちの2つは、前方側であって円弧状レール31の幅方向に間隔を存し両外周壁312(分割周壁部分)に内側から当接するように配置されており、説明の便宜上、この2つの外側回転体342をまとめて前方列43と定義する。
【0040】
残りの2つの外側回転体342は、後方側であって円弧状レール31の幅方向に間隔を存し両外周壁312に内側から当接するように配置されており、説明の便宜上、この2つの外側回転体342をまとめて後方列44と定義する。
【0041】
挿入部321の前方回転体群41と後方回転体群42の間である中央部には、前後方向に延びる揺動軸6(図4参照)が設けられている。図4に示すように、この揺動軸6には、前方列43の外側回転体342が回転自在に両端部で軸支される揺動部材53が円弧状レール31の径方向に揺動自在に軸支されている。又、後方列44の外側回転体342が回転自在に軸支される揺動部材54も、円弧状レール31の径方向に揺動自在となるように揺動軸6の両端部で軸支されている。
【0042】
このように、前方列43及び後方列44を円弧状レール31の径方向に揺動自在とすることにより、図5(c)に示すように、各外周壁312の折り曲げ角度に微小なずれが生じていても、各揺動部材53,54が揺動して傾くことにより、各外側回転体342を対応する外周壁312に適切に当接させることができ、外側回転体342及び外周壁312の磨耗を抑制させることができる。
【0043】
又、各外側回転体342の周面は、断面円弧状に形成されている。これにより、揺動部材53,54が揺動しても、外側回転体342と外周壁312との接触面積を、常に一定に維持させることができ、磨耗を抑制させることができる。
【0044】
又、各内側回転体341の周面も、断面円弧状に形成されている。従来の内側回転体のように周面が平滑な面に形成されていると、反りが生じている内周壁311に、内側回転体の周面の側縁のエッジ部分が当接することとなり、磨耗が激しくなる。実施形態の内側回転体341のように、周面を断面円弧状に形成すれば、エッジ部分がなくなるため、内側回転体341及び内周壁311の磨耗を抑制させることができる。
【0045】
又、6つの横回転体343が、挿入部321の前方、中央、後方の3箇所に夫々2つずつ配置されるため、スライダ32が円弧状レール31内をスムーズにスライドすることができる。
【0046】
又、円弧状レール31を断面C字状に形成することにより、ズボン等の異物が円弧状レール31に侵入することを確実に防止できる。そのため、回転体341、342の当接部への異物の噛み込みを生じず、脚リンク2の揺動の円滑性が確実に確保される。
【0047】
実施形態の円弧状レール31は、スピニング製法により、リング状の金属製板状部材を折り曲げて、所定の長さに切断することにより形成される。このとき、周方向に分割可能なリング状の中子を用い、この中子を包み込むように金属製板状部材を折り曲げて形成すれば、内面の寸法を基準とした円弧状レール31を製造することができる。金属製板状部材は、例えば、ハイテンション材(高張力鋼板)を用いることができる。
【0048】
外面の寸法を基準として円弧状レールを形成すると円弧状レールの肉厚まで精度よく形成しなければ、適切な内面の寸法が得られず、スライダ32がスムーズに円弧状レール内をスライドできない虞がある。上述したように、中子を用いて内面の寸法を基準として形成すれば、肉厚を考慮する必要がなく、スライダ32が当接する内面の寸法精度が向上され、スライダ32が円弧状レール31に沿ってスムーズにスライドできるようになる。
【0049】
図6に参考例を示す。尚、図6に示す両外周壁312は、その折り曲げ角度の差を大きくして示している。
【0050】
図6(a)は、スライド方向に揺動自在な軸支部材を用いることなく、一対の側方回転体411’及び中央回転体412’を挿入部に取り付けたスライダを示している。図6(a)から明らかなように、円弧状レール31の内周壁311は、その中央部が内方に向って膨らんだ反りを生じているため、中央回転体412’のみが内周壁311に当接し、一対の側方回転体411’が内周壁311に当接していないことが分かる。
【0051】
図6(b)は、径方向に揺動自在な揺動部材を用いることなく、一対の内側回転体342’を挿入部に取り付けたスライダを示している。図6(b)から明らかなように、各外周壁312(分割周壁部分)の折り曲げ角度に差が生じている場合には、片側の内側回転体342’しか、外周壁312に当接できない。
【0052】
図6(c)は、実施形態の前方列43の外側回転体を、その周面が平滑な面に形成された外側回転体342’’としたものである。図6(c)から明らかなように、外側回転体342’’の周面の側縁であるエッジ部分が、外周壁312に当接することとなる。
【0053】
尚、実施形態においては、円弧状レール31として、歩行補助装置に用いられる外周壁312にスリット314が形成されたものを説明したが、これに限らず、内周壁311にスリット314を形成した円弧状レールであっても、本発明のスライダ32を適用することができる。この場合、例えば、スライダ32を上下反転させた構造とすればよい。
【0054】
又、一対の側方回転体411,421を、円弧状レール31の径方向に揺動自在となるように構成してもよい。この場合、第1回転体たる外側回転体342を軸支する揺動部材53,54と同様に、例えば、各軸支部材51,52に、スライド方向(前後方向)に延びる揺動軸を夫々設け、この揺動軸に、一対の側方回転体411,421を軸支する回転軸411a,421aを、幅方向中央部分で円弧状レール31の径方向に揺動自在となるように軸支させればよい。
【0055】
これにより、一対の側方回転体411,421が転動する内周壁311の幅方向中央部分が、内側に向かって膨らむような微小な反りが発生し、且つ、内周壁311の幅方向両端部分の傾斜角度に微小な差が生じている場合であっても、各側方回転体411,421を内周壁311に適切に当接させて、スライダ32及び円弧状レール31の摩耗を抑制させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…着座部材、2…脚リンク、3…曲線案内機構、3a…曲率中心、31…円弧状レール、311…内周壁、312…外周壁(分割周壁部分)、313…側壁、314…スリット、32…スライダ、321…挿入部、322…接続部、341…内側回転体(第2回転体)、342…外側回転体(第1回転体)、343…横回転体、41…前方回転体群、411…側方回転体、411a…回転軸、412…中央回転体、412a…回転軸、42…後方回転体群、421…側方回転体、421a…回転軸、422…中央回転体、422a…回転軸、43…前方列、44…後方列、51…前方側の軸支部材、51a…揺動軸、52…後方側の軸支部材、52a…揺動軸、53…前方列の揺動部材、54…後方列の揺動部材、6…揺動軸、8…靴部、9…駆動源、P…利用者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の内周壁及び外周壁と、該両周壁をその側縁で連結する一対の側壁と、該内周壁又は該外周壁の中央部に長手方向に沿って形成されたスリットとを有する中空の円弧状レールに沿う方向であるスライド方向に移動自在なスライダであって、
前記円弧状レールは、金属製板状部材を折り曲げて成形されたものであり、
前記スリットを介して前記円弧状レール内に挿入される挿入部と、
該挿入部に設けられ、前記スリットが形成された前記周壁であって、前記スリットにより幅方向両側に分割された一対の分割周壁部分に、夫々転動自在に当接する一対の第1回転体と、
前記挿入部に設けられ、前記スリットが形成された周壁に対向する周壁に転動自在に当接する第2回転体とを備え、
前記第2回転体は、前記スリットが形成された周壁に対向する周壁に対して、幅方向両端部に配置される一対の側方回転体と、幅方向中央部に配置される中央回転体と、
該側方回転体と該中央回転体とを前記スライド方向にずらして配置すると共に、該各回転体を回転自在に軸支する軸支部材とを備え、
該軸支部材は、前記スライド方向に揺動自在となるように前記挿入部に軸支されることを特徴とするスライダ。
【請求項2】
請求項1記載のスライダにおいて、
前記挿入部に、中央部分で前記円弧状レールの径方向に揺動自在となるように設けられた、前記円弧状レールの幅方向に延びる揺動部材を備え、
該揺動部材の両端部に、前記一対の第1回転体が夫々回転自在に軸支されることを特徴とするスライダ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のスライダにおいて、
前記軸支部材は、中央部分で前記円弧状レールの径方向に揺動自在となるように設けられた、前記円弧状レールの幅方向に延びる回転軸を備え、
該回転軸の両端部に、前記一対の側方回転体が夫々回転自在に軸支されることを特徴とするスライダ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のスライダにおいて、
前記第1回転体の周面が、断面円弧状に形成されることを特徴とするスライダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のスライダがスライドする前記円弧状レールであって、
内面の寸法を基準として形成されることを特徴とする円弧状レール。
【請求項6】
請求項5記載の円弧状レールであって、
金属製板状部材をスピニング製法で折り曲げて形成することを特徴とする円弧状レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−214654(P2011−214654A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82944(P2010−82944)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】