説明

スライド処理用トレイ

スライド処理用のキャリアが、生物試料を収容しているバイアルをそれぞれが保持するよう構成された複数の第1の位置と、それぞれがスライドを保持するよう構成された対応する複数の第2の位置とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物標本用スライドを自動処理する分野に関する。特に、本発明は、生物試料及びスライドを保持するために使用されるトレイの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの自動試料プロセッサが、生物試料から得る細胞を有するスライドを調整する技術において知られている。例えば、米国特許第5,143,627号、 第5,282,978号、及び第6,562,299号、及び米国特許出願公開第2003−0207455号、第2003−0207456号は、このような自動システムのいくつかを開示している。
【0003】
米国マサチューセッツ州のMarlboroughにあるCytyc Corp.から入手可能なThinPrep(登録商標)TP2000及びThinPrep(登録商標)TP3000などのある自動システムにおいて、ユーザは、生物試料を有するスライド及びバイアルをプロセッサへ手で供給する。細胞はスライド上に塗布され、試料バイアルと顕微鏡スライドの一対一の関係が確立され、これは、医療関係者がスライドを検査するまで維持される必要がある。この一対一の関係は、しばしば「CoC認証(chain of custody)」と呼ばれる。
【0004】
ユーザは、バイアルに表示される患者の名前や番号など同じ識別名をスライドにマークし、その上、常に対応するスライドの近傍に各バイアルを保持する。普通、これは、バイアルがプロセッサで処理されるように並べられている間、ブランクスライドを各バイアルの上に配置することによって達成される。スライドに塗布した後、スライドは再び、これらに対応するバイアルの上に置いて保持される。この過程によって取り違えの誤りや事故の機会が生じる。従って、バイアルとこれらに対応するスライドを互いに近傍に保持する容器に関する技術が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここでバイアルが生物試料を保持するよう構成されており、それぞれがバイアルを保持するよう構成された複数のバイアル位置と、;それぞれがスライドを保持するよう構成された複数のスライド位置と;を具え、バイアル位置とスライド位置がこれらに同数あるスライド処理用のキャリアがここに開示されている。また、自動試料プロセッサを具えるキャリアを使用する方法が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
この図は、必ずしも縮尺に比例しておらず、むしろ、本発明の実施例の様々な態様及び特性を示すために拡大されていることを理解されたい。
【図1】図1は、バイアル位置に重ねられたスライド位置を具える本発明のキャリアの一実施例を示す。
【図2】図2は、本発明のキャリアの実施例を示しており、スライド位置はバイアル位置に重ねられており、これらのそれぞれの位置にバイアル及びスライドを示す。
【図3】図3は、バイアル位置に近接したスライド位置を具える本発明のキャリアの別の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本書に開示されているキャリアは、ThinPrep(登録商標)TP2000(Cytyc Corp.)又はThinPrep(登録商標)TP3000(Cytyc Corp.)に使用するのに最も適している。しかしながら、ここに開示されているキャリアは、現在市場にあるか最近開発された様々なプロセッサに使用可能である。説明する実施例のキャリアは、そのそれぞれのバイアルからスライドが分離してしまう機会や、正確な関係に関する混同や不確かさを最小限にしつつ、試料バイアルと調整されたスライドの固有の関係を保持するために提供される。
【0008】
従って、第1の態様において、本発明は、バイアルを保持するように構成された位置と、スライドを保持するように構成された位置と、フィルタを保持するように構成された位置とを具えるスライド処理用のキャリアに関する。
【0009】
図1は、ここに開示するキャリアの一実施例を示す。キャリア102は、それぞれがバイアルを保持するよう構成されている複数のバイアル位置104を具える。非限定的な例示として、各バイアル位置104は、キャリア102内に開口104を具えることができる。開口104の基部は固定であってもよいし、この基部は開放可能であってもよい。また、キャリア102は、複数のスライド位置106を具え、それぞれ、ガラススライドやプラスチックスライドである顕微鏡スライドを保持するよう構成される。いくつかの実施例において、スライドは、調整された生物試料を顕微鏡で観察すべく保持するために使用される従来のスライドである。
【0010】
これらの実施例のいくつかにおいて、キャリア102は複数の凹部108を具えており、それぞれが壁110によって相互に分離されている。従って、各凹部108の上面は、各壁110の上面より下にある。いくつかの実施例において、すべての凹部108は同じ高さである。さらなる実施例において、すべての壁110は同じ高さである。バイアル位置104は、凹部108内に配置される。スライド位置106は、スライドが位置106内に配置されるとき、スライドが一方の壁110から他方の壁110へ凹部108に架かるように壁110に形成される。
【0011】
図1に示す実施例などのいくつかの実施例において、各スライド位置106は、一のバイアル位置104に重ねられている。従って、バイアルがバイアル位置104内に配置されるとき、顕微鏡スライドがバイアルの真上に配置されるように顕微鏡スライドはスライド位置106に配置される。顕微鏡スライドとバイアルの並置により、顕微鏡スライドとバイアルの一対一の関係が提供され、混同や取り違いの可能性が最小限となる。
【0012】
いくつかの実施例において、キャリア102は、偶数のバイアルを対応する偶数のスライドと共に保持するよう構成される。他の実施例において、キャリア102は、奇数のバイアルを対応する奇数のスライドと共に保持するよう構成される。いくつかの実施例において、キャリア102は、少なくとも5個のバイアルを保持するよう構成される。他の実施例において、キャリア102は、少なくとも10個のバイアルを保持するよう構成される。さらに他の実施例において、キャリア102は、少なくとも15個のバイアルを保持するよう構成される。他の実施例において、キャリア102は、少なくとも20個のバイアルを保持するよう構成される。図1及び2に示す実施例などのいくつかの実施例において、キャリア102は20個のバイアルを保持する。いくつかの実施例において、キャリア102は、バイアル位置と同数のスライド位置を具えるように構成される。
【0013】
図2は、ここに開示しているキャリアの一実施例を示しており、顕微鏡スライド206及びそれぞれの位置に配置されたバイアル204を示している。各スライド206は、ラベル用の位置208を具える。ラベルは、バイアルのラベルの識別名と同じである少なくとも一つの識別名を有することが好ましい。識別名は、患者の名前、患者に関連する識別医療用記録番号、同種のものなどにしうる。
【0014】
図1及び2は、キャリア102内のそれぞれのバイアル及びスライド位置104及び106の一構成を示しているが、これらの位置の他の構成も可能である。本発明の実施例は、図1及び2に示した構成に限定されず、キャリア102のこれらの位置の全ての手段を含む。
【0015】
例えば、図3は、キャリア102のそれぞれのバイアル及びスライド位置の別の構成を示す。本実施例において、スライド位置106は、バイアル位置104に近接して配置される。これらの実施例のいくつかにおいて、キャリア102は、図1及び2に示した実施例における特徴である壁及び凹部を特徴としていない。
【0016】
図示されていないいくつかの実施例において、各スライド位置106は、ユーザによってスライド206を取り外しやすいように指がアクセスする少なくとも一の側部に少なくとも一の陥凹部を特徴とする。キャリア102の他の実施例はこの「簡単な指(easy finger)」アクセスを特徴としない。
【0017】
いくつかの実施例において、バイアル204は、生物試料を保持するように構成される。従って、バイアル204は、容器部と、蓋部とを具え、ここに医療関係者が、生物試料を得てバイアル204に入れて、それに蓋をし、さらに処理するために試験所にそれを送る。生物試料は、頸部、尿、血液、唾液、大便、又は他の組織検査中に得られる試料にすることができる。
【0018】
図1及び2に示した実施例などのいくつかの実施例において、バイアル204は、バイアル204のキャップが凹部108の上面の上にあるようにバイアル位置104内に置かれる。図3に示した実施例などのいくつかの実施例において、バイアル204は、バイアル204のキャップがキャリア102の上面の上にあるようにバイアル位置104内に置かれる。他の実施例において、蓋を具えるバイアル204は、バイアル204においてキャリア102又は凹部108の上面を越える部分が無いようにキャリア102内で沈んでいる。これらの実施例のいくつかにおいて、キャリア102は、機械アーム、又は同種の物がバイアルキャップに達してバイアル204をそれぞれの位置104から引っ張ることができるように、キャリア102又は凹部108の上面にあるくぼみなどバイアル204を取り外す手段を具えるか、位置104が、機械アーム、又は同種の物がバイアル204を押し上げて位置104から出すことができるように開放基部を具える。さらなる実施例において、各バイアル位置104は、ユーザがバイアル204を取り外しやすいように指でアクセスするための少なくとも一の陥凹部を特徴とすることが好ましい。
【0019】
いくつかの態様において、ここに開示されているキャリアは、生物試料と調整されたスライドの間に一対一の関係を提供するために用いられる。ここに開示されているキャリアは、これらが、一のバイアルの近傍に一のスライドを保持して、それぞれがキャリアに規定された位置を有するというさらなる利点を有する。キャリア上に近接して配置することにより、スライドを対応するバイアルに対して誤って配置してしまう機会が最小限となる。
【0020】
従って、別の態様において、ここに開示されている複数の生物試料を自動プロセッサで処理する方法は;
それぞれがバイアルを保持するよう構成された複数の位置と、それぞれがスライドを保持するよう構成された複数の位置と、バイアル位置がスライド位置と同数あり;
それぞれが生物試料を収容する複数のバイアルであって、各バイアルが複数のバイアル位置の一つに配置されるバイアルと;
各スライドが、複数のスライド位置の一つに配置される複数のスライドと;
を具えるキャリアを得るステップを具える。
【0021】
方法は、さらに:
キャリアのある位置からバイアルのうちの一つを取り出すステップと;
取り出されたバイアルを自動プロセッサ内に配置するステップと;
キャリアのある位置からスライドのうちの一つを取り出すステップと;
取り出されたスライドを自動プロセッサ内に配置するステップと;
自動プロセッサ内のアスピレータにフィルタを取り付けるステップであって、フィルタが膜を具えるステップと;
取り出されたバイアルの生物試料の複数の細胞をフィルタの膜に付着させるステップと;
複数の細胞を取り出されたスライドに移すステップと;
取り出されたバイアル及び取り出されたスライドをキャリア内に再配置するステップと;
を具える。
【0022】
いくつかの実施例において、上記方法がさらに、少なくとも一の固有の識別名をそれぞれのバイアルに付けるステップを具える。
【0023】
いくつかの実施例において、上記方法におけるスライド位置はそれぞれ、バイアル位置のうちの一つに近接している。これらの実施例のいくつかにおいて、取り出されたスライドの位置は、取り出されたバイアルの位置に近接している。さらに、さらなる実施例において、ここに開示される方法は、バイアルに近接しているスライドに、バイアルの固有の識別名と一致する固有の識別名を付けるステップを具える。
【0024】
他の実施例において、各スライド位置は、一のバイアル位置に重ねられる。これらの実施例のいくつかにおいて、取り出されるスライドの位置は、取り出されるバイアルの位置に重ねられる。さらに、これらの実施例のいくつかは、バイアルのうちの一つを取り出す前に、スライドのうちの一つを取り出すステップを具える。さらにこれらの実施例のいくつかにおいて、ここに開示される方法は、、バイアルに重ねられる位置内のスライドにバイアルの固有の識別名と一致する固有の識別名を付けるステップを具える。
【0025】
上記方法は、様々の異なる順番で実施することが可能であり、すべてのステップを行う必要はない。上記順番に並べられているステップは例示であり、この方法のステップは、順番を変えて行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料のバイアル及びスライドを処理するために保持するキャリアにおいて、当該キャリアが、
それぞれがバイアルを保持するよう構成された複数の第1の位置と;
それぞれがスライドを保持するよう構成された対応する複数の第2の位置と;
を具えることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリアにおいて、各第2の位置がそれぞれの第1の位置に近接していることを特徴とするキャリア。
【請求項3】
請求項1に記載のキャリアにおいて、前記第2の位置のそれぞれが、それぞれの第1の位置に重ねられていることを特徴とするキャリア。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のキャリアがさらに、各第2の位置に少なくとも一の指アクセス用の陥凹部を具えることを特徴とするキャリア。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のキャリアがさらに、各第1の位置に少なくとも一の指アクセス用の陥凹部を具えることを特徴とするキャリア。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のキャリアにおいて、前記バイアルがキャップを具え、前記第1の位置のそれぞれが、バイアルが中に配置されるとき前記バイアルのキャップが前記キャリアの面より上側に位置する深さを有することを特徴とするキャリア。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のキャリアにおいて、前記バイアルがキャップを具え、前記第1の位置のそれぞれが、バイアルが中に配置されるとき前記バイアルのキャップが前記キャリアの面より下側に位置する深さを有することを特徴とするキャリア。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のキャリアがさらに凹部を具え、前記第1の位置のそれぞれが、前記凹部内に位置することを特徴とするキャリア。
【請求項9】
請求項8に記載のキャリアにおいて、前記バイアルがキャップを具え、前記第1の位置が、バイアルが中に配置されるとき前記バイアルが前記凹部の面より上側に位置する深さを有することを特徴とするキャリア。
【請求項10】
請求項8に記載のキャリアにおいて、前記バイアルがキャップを具え、前記第1の位置が、バイアルが中に配置されるとき前記バイアルのキャップが前記凹部の面より下側に位置する深さを有することを特徴とするキャリア。
【請求項11】
自動プロセッサ及びキャリアを用いて生物試料を処理する方法であって、前記キャリアが、生物試験片を収容するバイアルをそれぞれが保持するよう構成された複数の第1の位置と、スライドをそれぞれが保持するよう構成された対応する複数の第2の位置とを具える方法において:
複数のバイアルを前記第1の位置のそれぞれ一つに配置するステップと;
複数のスライドを前記キャリアの前記第2の位置のそれぞれ一つに配置するステップであって、各スライドがそれぞれのバイアルに対応するステップと;
前記キャリアから前記バイアルのうちの一つを取り出すステップと;
前記キャリアから前記スライドのうちの一つを取り出すステップと;
前記自動プロセッサ内のアスピレータにフィルタを取り付けるステップであって、当該フィルタが膜を具えるステップと;
それぞれの取り出された前記バイアル内に収容された前記生物試料の複数の細胞を前記フィルタの膜に付着させるステップと;
前記フィルタの膜から前記複数の細胞をそれぞれの取り出された前記スライドに移すステップと;
それぞれ取り出された前記バイアル及びスライドを前記キャリアの第1及び第2の位置それぞれに戻すステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法がさらに、各バイアルにそれぞれ固有の識別名を付すステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法において、各第2の位置がそれぞれの第1の位置に近接していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記取り出されるスライドのそれぞれの第2の位置が、前記取り出されるバイアルのそれぞれの第1の位置に近接していることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法がさらに、対応するバイアルの前記固有の識別名と一致する固有の識別名を各スライドに記すステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法において、各第2の位置が、それぞれの第1の位置に重ねられていることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記取り出されたスライドの位置が、前記取り出されたバイアルの位置に重ねられていることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11乃至17のいずれか1項に記載の方法において、前記バイアルのそれぞれ一つを取り出す前に、前記スライドのそれぞれ一つが取り出されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−544942(P2009−544942A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520899(P2009−520899)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/073260
【国際公開番号】WO2008/011312
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】