スライド回転ヒンジ、及び携帯機器
【課題】丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを実現する。
【解決手段】第1の筐体(1)と第2の筐体(2)とを重ねて閉じた状態から相対的にスライドさせて開放状態となるよう一方の筐体(2)に設けられたレール91と、他方の筐体(1)に回転可能に設けられ、レール91に対し相対的にスライド自在に係合する回転部材6と、この回転部材6と一方の筐体(2)とにスライド動作及び回転動作に応じて弾性力が与えられるよう設けられたバネ7と、を備える。具体的には、回転部材6に、レール91と平行する溝62が形成されて、他方の筐体(1)に、溝62と交差する溝52が形成され、両方の溝52・62に係合する軸58・68にバネ7の一端が接続される。
【解決手段】第1の筐体(1)と第2の筐体(2)とを重ねて閉じた状態から相対的にスライドさせて開放状態となるよう一方の筐体(2)に設けられたレール91と、他方の筐体(1)に回転可能に設けられ、レール91に対し相対的にスライド自在に係合する回転部材6と、この回転部材6と一方の筐体(2)とにスライド動作及び回転動作に応じて弾性力が与えられるよう設けられたバネ7と、を備える。具体的には、回転部材6に、レール91と平行する溝62が形成されて、他方の筐体(1)に、溝62と交差する溝52が形成され、両方の溝52・62に係合する軸58・68にバネ7の一端が接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの筐体をスライド自在で且つ回転可能に組み付けるスライド回転ヒンジと、そのスライド回転ヒンジを備える携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド式携帯端末において、二つの筐体をスライド自在で且つ回転可能とするスライド回転部を備えたものが特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1のスライド回転部は、表面に上下方向に長い縦長の液晶ディスプレイを有する第1の筐体と、表面に操作部を有する第2の筐体と、第1の筐体を第2の筐体にスライド自在に支持する支持機構とを設けたスライド式携帯端末において、支持機構の第2の筐体側に第1及び第2ガイド軸を設け、第1の筐体側に、第1ガイド軸をガイドする第1ガイド孔と、第2ガイド軸をガイドする第2ガイド孔とを設けることで、第1の筐体を第2の筐体に対して表面から見て時計回りに回転自在に支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のスライド回転部は、第2の筐体側に設けた第1ガイド軸と第2ガイド軸を、第1の筐体側に設けた第1ガイド孔と第2ガイド孔に挿入してそれぞれガイドする構造であり、第1の筐体と第2の筐体とのガタ付きが多くて強度的にも弱く、また、ガイド孔が外部に見えてしまい見栄えが悪いものであった。
【0005】
本発明の課題は、丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の筐体と第2の筐体とを重ねて閉じた状態から相対的にスライドさせて開放状態となるよう一方の筐体に設けられたレールと、他方の筐体に回転可能に設けられ、前記レールに対し相対的にスライド自在に係合する回転部材と、この回転部材と前記一方の筐体とに前記スライド動作及び回転動作に応じて弾性力が与えられるよう設けられたバネと、を備えるスライド回転ヒンジを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材は、前記他方の筐体に対し互いに係合する複数の軸及び溝を介して回転可能に組み付けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材に、前記レールと平行する溝が形成されて、前記他方の筐体に、前記溝と交差する溝が形成され、両方の溝に係合する軸に前記バネの一端が接続されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記バネはねじりバネであることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記閉じた状態において、前記レールの前記回転動作を規制する回転規制部を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記開放した状態において、前記レールの前記回転動作を許容する回転許容部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記開放した状態、及び前記レールの前記回転動作時において、前記一方の筐体に対する前記バネの接続部を、前記回転部材の内側位置に規制するストッパーを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材に、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載のスライド回転ヒンジであって、前記ストッパーと一体に、筐体を回転した状態において、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項3から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記軸は中空部材により形成され、その中空部内に配線が通されることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材に、配線を通す配線通し部を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジを備える携帯機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した携帯機器の一実施形態の構成を示す斜視図で、スライドクローズ状態を示した図(a)とスライドオープン状態を示した図(b)と回転した状態を示した図(c)である。
【図2】実施形態のスライド回転ヒンジの構成を示した分解斜視図である。
【図3】図2の回転部材及び固定部材を組み付けた状態を示した図である。
【図4】図3のレール部材を反対側から見た図である。
【図5】実施形態のスライド回転ヒンジの正面図で、スライドクローズ状態を示した図(a)とスライド途中を示した図(b)とスライドオープン状態を示した図(c)である。
【図6】図5(c)のスライドオープン状態から回転途中を示した図(a)と回転した状態を示した図(b)である。
【図7】図5(a)の矢印A部の拡大端面図である。
【図8】図5及び図6の回転部材及びバネの斜視図で、スライドオープン状態の図(a)と回転途中の図(b)と回転した状態の図(c)である。
【図9】図1(c)の回転状態の背面図である。
【図10】図9の回転状態の左右両側方から見た斜視図(a)(b)である。
【図11】配線の一例を示す正面図で、スライドクローズ状態を示した図(a)とスライドオープン状態を示した図(b)と回転した状態を示した図(c)である。
【図12】図1(a)のスライドクローズ状態の正面図である。
【図13】図12の矢印A−A線に沿った断面図である。
【図14】図12の矢印B−B線に沿った断面図である。
【図15】配線の他の例を示すもので、図3と同様の分解斜視図である。
【図16】図15の配線を反対側から見た拡大図である。
【図17】図1(a)のスライドクローズ状態の正面図で、配線も併せて示した図である。
【図18】図17の矢印C−C線に沿った断面図である。
【図19】回転部材を備える筐体側の配線を示した斜視図で、スライドクローズ状態の図である。
【図20】レール部材の斜視図で、スライドクローズ状態の図(a)とその反対側から見た図(b)である。
【図21】図19のスライドクローズ状態からスライドオープン状態を示した図である。
【図22】図20のスライドクローズ状態からスライドクローズ状態を示した図(a)とその反対側から見た図(b)である。
【図23】図21のスライドオープン状態から回転した状態の図である。
【図24】図22のスライドオープン状態から回転した状態の図(a)とその反対側から見た図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した携帯機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、図1(a)はスライドクローズ状態、図1(b)はスライドオープン状態、図1(c)は回転した状態を示しており、図中、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3は操作部、4は表示部である。
【0021】
携帯電話は、第1の筐体1に対し第2の筐体2が、図1(a)の重ねて閉じた状態から縦方向にスライド自在に組み付けられるとともに、図1(b)の縦方向へのスライド状態で図1(c)のように回転可能に組み付けられている。なお、第1の筐体1の上面に操作部3が設けられて、第2の筐体2の上面に表示部4が設けられている。
【0022】
図2及び図3は第1の筐体1と第2の筐体2との間に設けられるスライド回転ヒンジの構成を示したもので、5は固定部材、6は回転部材、7はねじりバネ、8はストッパー、9はレール部材である。
【0023】
固定部材5は、第1の筐体1の上面で操作部3に対し上側に固定される略正方形の板金で、その中央に円形穴51が形成されて、この円形穴51から離間して右下隅部と左上隅部に向かって各々延びる直線状の溝部52・53が形成されている。
【0024】
回転部材6は、固定部材5に回転軸を介して回転自在に組み付けられる略正方形の板金で、その中央に円形穴61が形成されて、左右辺部の内側に各々沿った直線状の溝部62・63が形成されている。
【0025】
さらに、回転部材6には、上辺部に沿って起立する壁部64が形成されて、左右辺部に各々沿った直線状のガイド部65が形成されている。この左右一対のガイド部65は、断面コ字状でその開放側が相対向していて、このガイド部65の内部にはPOM(ポリアセタール)による摺動部材66が嵌め込まれている。この摺動部材66の摺動溝に、レール部材9のレール91がそれぞれ係合している。
【0026】
以上の回転部材6は、その中央の円形穴61に上方から嵌め込んで固定部材5の円形穴51に嵌め込まれるリング67と、下方のリング57とを互いに嵌め合わせて結合されている。この上下のリング57・67により回転軸が構成される。そして、回転部材6の右側の溝部62に上方から係合するとともに固定部材5の右側の溝部52に係合するリング68と、下方のリング58とを互いに嵌め合わせる。これら上下のリング58・68により溝部52・62に係合する軸が形成される。
【0027】
ねじりバネ7は、その一端部が、回転部材6の右側の溝部62のリング68と、このリング68上に嵌め合わせて結合される、固定具を兼ねたリング71との間で挟み付けて接続されて、他端部が、レール部材9に固定具72で接続される。なお、嵌め合わせて一体化された3個のリング58・68・71の中空部により配線通し穴が形成される。
【0028】
ストッパー8は、略正方形で、その左辺部に沿って下方へ延びる棒状部81が形成されて、右辺部及び上辺部に各々沿った壁部82・83が形成されている。このストッパー8には、固定部材5の左側の溝部53に下方から係合する軸部を一体に有する固定具85が、回転部材6の左側の溝部63に係合する不図示のネジで組み付けられている。これら固定具85及びネジにより溝部53・63に係合する軸が形成される。
【0029】
レール部材9は、第2の筐体2の下面に固定される略長方形の板金で、その左右辺部に沿ってレール91が形成されている。このレール91は、レール部材9の下面から一段低い段差による壁部を介して形成されている。そして、レール部材9は、回転部材6の一対のガイド部65によって保持されるため、強度があって、ガタが少ない。
【0030】
以上のレール部材9の図示左側で若干下寄りにねじりバネ7の前記他端部が固定具72で接続されている。なお、レール部材9の中間部で固定部72の図示右側には配線通し穴96が形成されている。
【0031】
図4はレール部材9を反対側から見たもので、図示のように、レール部材9の一端部側には、一方のレール91の近傍に沿って平行する出っ張り部93が形成されている。この出っ張り部93は、スライドクローズ状態において、ストッパー8の棒状部81に側方から当接して、レール部材9の回転を規制する。
【0032】
次に、図5はスライド回転ヒンジの動作を正面から見たものである。
先ず、スライドクローズ状態において、第2の筐体2の下面に固定されたレール部材9は、図5(a)に示すように、その左右一対のレール91の図示上端側が、第1の筐体1の上面に固定された固定部材5上に組み付けられた回転部材6の左右辺部に沿った直線状のガイド部65に係合している。
【0033】
以上のスライドクローズ状態においては、図7にも示すように、第2の筐体2に固定のレール部材9の図示左側のレール91の内壁と出っ張り部93との間には、第1の筐体1に固定の固定部材5の左側の溝部53に係合し、且つ回転部材6の左側の溝部63に係合するストッパー8の棒状部81が位置して、この棒状部81が出っ張り部93に当接する。なお、出っ張り部93は、棒状部81と壁部83との隙間を通る。
【0034】
このように、棒状部81が出っ張り部93に当接することで、レール部材9、すなわち、第2の筐体2は回転動作ができない。従って、ストッパー8の棒状部81と出っ張り部93が回転規制部として機能する。
【0035】
また、このとき、ねじりバネ7は、固定具72を介してレール部材9に対し、矢印で示したように、図示下方に押し付けるように弾性力を発生させている。従って、スライドクローズ状態が保持される。
【0036】
そして、第1の筐体1と第2の筐体2を相対的にスライド操作すると、レール部材9に対するねじりバネ7の固定具72がスライドし、そのスライド途中において、図5(b)に矢印で示したように、ねじりバネ7の弾性力の方向も変化し、一定のスライド量を超えると、スライドオープンのアシスト力となる。
【0037】
さらに、スライドオープン状態では、図5(c)及び図8(a)に示すように、回転部材6のガイド部65に対しレール部材9のレール91の図示下端側が係合してスライドしきった位置に達する。
【0038】
このとき、レール部材9の出っ張り部93からストッパー8の棒状部81が外れて回転動作を抑制する接触がなくなるので、レール部材9は、回転部材6と一体に回転軸を構成するリング67(57)を中心に回転動作が可能になる。従って、ストッパー8が回転許容部としても機能する。
【0039】
また、レール部材9に対するねじりバネ7の固定具72は、ストッパー8の棒状部81により図示左側を囲まれ、ストッパー8の壁部82・83により図示右側及び上側を囲まれているので、図示下方にスライドするしかできない。
【0040】
次に、図6及び図8は回転動作を示したものである。
図6(a)及び図8(b)は図5(c)のスライドオープン状態から回転途中を示したもので、第1の筐体1に対し第2の筐体2を回転操作する際は、リング67を中心にレール部材9が回転する。
【0041】
レール部材9がリング67を中心に回転すると、ねじりバネ7の一方の端部を固定するリング71が、回転部材6の縦の溝部62と固定部材5の斜めの溝部52に沿って回転中心のリング67に一旦近付くように移動すると同時に、ねじりバネ7の他方の端部の固定具72を囲むストッパー8が、回転部材6の縦の溝部63と固定部材5の斜めの溝部53に沿って回転中心のリング67に一旦近付くように移動する。
【0042】
このとき、ねじりバネ7の固定具72を囲むストッパー8は回転しないので、そのストッパー8の棒状部81及び壁部82・83が、ねじりバネ7の固定具72のスライド方向に立ちふさがるようになる。すなわち、ねじりバネ7の固定具72はスライドの両方向をストッパー8で囲まれた状態なので、ストッパー8に付随して動く。
【0043】
また、回転途中でねじりバネ7が圧縮されて、ねじりバネ7は元に戻ろうと外方向に力を発生させるので、レール部材9が押されて、それが回転アシスト力になる。
【0044】
そして、図6(b)及び図8(c)は回転した状態を示したもので、レール部材91が90度回転したときに、ねじりバネ7の一方のリング71が、回転部材6の横になる溝部62に沿って固定部材5の斜めの溝部52の端部の元の位置に戻ると同時に、ねじりバネ7の他方の固定具72を囲むストッパー8が、回転部材6の横になる溝部63に沿って固定部材5の斜めの溝部53の端部の元の位置に戻る。
【0045】
このとき、ねじりバネ7の固定具72はストッパー8で囲まれてスライドが規制される。また、左右は、回転部材6の壁部64とストッパー8の棒状部81があるため、レール部材9のレール91間の隙間が塞がれる。
【0046】
このような動作を行うスライド回転ヒンジによって、携帯電話は、図1(a)に示したスライドクローズ状態から、図1(b)に示したスライドオープン状態を経て、図1(c)に示した90度回転した状態で止めて使用することができる。
【0047】
なお、図9は回転した状態を背面から見たもので、第2の筐体2の背面には、第1の筐体1の左右にレール部材9が見えるだけで、従来のようなガイド孔等が露出しないため、見栄えが良い。
【0048】
また、図10(a)及び(b)は回転した状態で背面を左右両側方から見たもので、第2の筐体2の背面のレール部材9と第1の筐体1との左右両側間には、回転部材6の壁部64と、ストッパー8の棒状部81が壁状に位置していて、内部構造が露出しないため、この点でも見栄えが良い。
【0049】
次に、図11は固定部材5及び回転部材6を備える第1の筐体1側の配線10の一例を示すもので、図11(a)はレール91とともにスライドクローズ状態、図11(b)は同じくスライドオープン状態、図11(c)は同じく回転した状態を示している。
【0050】
図示のように、第1の筐体1の上面に固定された固定部材5の斜めの溝部52に係合するリング58内、その上の回転部材6の溝部62に係合するリング68内、その上のバネ固定用のリング71内の配線通し穴から、同軸線による配線10が外部に導出されている。なお、この配線10は、スライドクローズ状態と回転した状態において、ねじりバネ7より外側に配置されている。
【0051】
そして、図12から図14は第1の筐体1及び第2の筐体2も含めて配線10を示したもので、図示のように、前記配線10は、第2の筐体2の背面に固定されたレール部材9の配線通し穴96から外部に導出されている。
【0052】
このように、図11(a)に示したスライドクローズ状態から、図11(b)に示したスライドオープン状態、及び図11(c)に示した回転した状態まで配線10を良好に取り廻しすることができる。
【0053】
以上、実施形態のスライド回転式携帯電話によれば、そのスライド回転ヒンジとして、第2の筐体2に設けたレール91に対し相対的にスライド自在に係合する回転部材6を第1の筐体1に対し回転可能に設けて、その回転部材6と第2の筐体2とにスライド動作及び回転動作に応じてアシスト力を発生するねじりバネ7を設けたので、丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを提供できる。
【0054】
しかも、スライドアシストと回転アシストの両方を行うねじりバネ7が1本だけなので、スライド回転ヒンジを薄く構成できる。
【0055】
そして、固定部材5に対し回転部材6を、中央のリング57・67による回転軸と、溝52・62に係合するリング58・68による軸と、溝53・63に係合するストッパー8の軸部とによる一直線上に位置する三点支持構造としたことにより、回転前及び回転後の第2の筐体2の保持がしっかりできる。
【0056】
また、回転部材6の一対のガイド部65でレール部材9を保持しているので、スライド式でありながら第2の筐体2の良好な回転動作を実現できて、回転前及び回転後の第2の筐体2の保持がしっかりできる。
【0057】
しかも、回転部材6には、レール91を係合保持する一対のガイド部65及びその間の一端側に壁部64が形成されて、ストッパー8にガイド部65間の他端側に位置する壁状の棒状部81が形成されているので、四方を壁で囲む形になり、内部構造が露出しなくて見栄えが良い。
【0058】
次に、図15は配線の他の例を示すもので、図示のように、回転部材6の中央のリング67より下側に形成したスリット69からFPC(フレキシブルプリント基板)による配線20が導出されている。このFPCによる配線20の端部には、図16に示すように、基板21を介して同軸線による配線22が接続されている。
【0059】
そして、図17及び図18は第1の筐体1及び第2の筐体2も含めて配線20・22を示したもので、図示のように、FPCによる配線20は、レール部材9の配線通し穴96から第2の筐体2内に導入されて、回転基板6の裏面側(第1の筐体1側)に取り付けられる基板21から延びる同軸線による配線22は、第1の筐体1内に導入される。
【0060】
以上のFPCによる配線20及び同軸線による配線22は、図19及び図20に示したスライドクローズ状態から、図21及び図22に示したスライドオープン状態まで、FPCによる配線20がスライド動作に追従して折り畳まれる。このとき、同軸線による配線22に動きはない。
【0061】
そして、図23及び図24に示した回転した状態までは、回転する回転部材6に取り付けられた基板21も一緒に回転し、同軸線による配線22も基板21の回転に追従する。この回転と同時にスライドもするので、FPCによる配線20もその動きに追従して変化する。
【0062】
以上、スライドクローズ状態からスライドオープン状態、及び回転した状態まで良好に取り廻しすることができる。
【0063】
ところで、この例の場合、図20(a)、図22(a)及び図22(a)に示したように、固定部材5には、回転部材6の90度回転に対応して基板21及び同軸線による配線22の動きを許容するための切り欠き部59が形成されている。
【0064】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などで、スライド回転部を備えた機器全てに用いることができる。
また、実施形態ではねじりバネを用いたが、コイルバネを用いてもよい。
さらに、回転部材の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1の筐体
2 第2の筐体
3 操作部
4 表示部
5 固定部材
52 溝部
53 溝部
57 リング(回転軸)
58 リング(軸、配線通し部)
59 切り欠き部
6 回転部材
62 溝部
63 溝部
64 壁部
65 ガイド部
66 摺動部材
67 リング(回転軸)
68 リング(軸、配線通し部)
69 スリット(配線通し部)
7 ねじりバネ
71 リング(固定具、配線通し部)
72 固定具
8 ストッパー
81 棒状部(壁部)
82 壁部
83 壁部
85 固定具
9 レール部材
91 レール
96 配線通し部
10 配線
20 配線
21 基板
22 配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの筐体をスライド自在で且つ回転可能に組み付けるスライド回転ヒンジと、そのスライド回転ヒンジを備える携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド式携帯端末において、二つの筐体をスライド自在で且つ回転可能とするスライド回転部を備えたものが特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1のスライド回転部は、表面に上下方向に長い縦長の液晶ディスプレイを有する第1の筐体と、表面に操作部を有する第2の筐体と、第1の筐体を第2の筐体にスライド自在に支持する支持機構とを設けたスライド式携帯端末において、支持機構の第2の筐体側に第1及び第2ガイド軸を設け、第1の筐体側に、第1ガイド軸をガイドする第1ガイド孔と、第2ガイド軸をガイドする第2ガイド孔とを設けることで、第1の筐体を第2の筐体に対して表面から見て時計回りに回転自在に支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のスライド回転部は、第2の筐体側に設けた第1ガイド軸と第2ガイド軸を、第1の筐体側に設けた第1ガイド孔と第2ガイド孔に挿入してそれぞれガイドする構造であり、第1の筐体と第2の筐体とのガタ付きが多くて強度的にも弱く、また、ガイド孔が外部に見えてしまい見栄えが悪いものであった。
【0005】
本発明の課題は、丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の筐体と第2の筐体とを重ねて閉じた状態から相対的にスライドさせて開放状態となるよう一方の筐体に設けられたレールと、他方の筐体に回転可能に設けられ、前記レールに対し相対的にスライド自在に係合する回転部材と、この回転部材と前記一方の筐体とに前記スライド動作及び回転動作に応じて弾性力が与えられるよう設けられたバネと、を備えるスライド回転ヒンジを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材は、前記他方の筐体に対し互いに係合する複数の軸及び溝を介して回転可能に組み付けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材に、前記レールと平行する溝が形成されて、前記他方の筐体に、前記溝と交差する溝が形成され、両方の溝に係合する軸に前記バネの一端が接続されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記バネはねじりバネであることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記閉じた状態において、前記レールの前記回転動作を規制する回転規制部を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記開放した状態において、前記レールの前記回転動作を許容する回転許容部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記開放した状態、及び前記レールの前記回転動作時において、前記一方の筐体に対する前記バネの接続部を、前記回転部材の内側位置に規制するストッパーを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材に、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載のスライド回転ヒンジであって、前記ストッパーと一体に、筐体を回転した状態において、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項3から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記軸は中空部材により形成され、その中空部内に配線が通されることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジであって、前記回転部材に、配線を通す配線通し部を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジを備える携帯機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した携帯機器の一実施形態の構成を示す斜視図で、スライドクローズ状態を示した図(a)とスライドオープン状態を示した図(b)と回転した状態を示した図(c)である。
【図2】実施形態のスライド回転ヒンジの構成を示した分解斜視図である。
【図3】図2の回転部材及び固定部材を組み付けた状態を示した図である。
【図4】図3のレール部材を反対側から見た図である。
【図5】実施形態のスライド回転ヒンジの正面図で、スライドクローズ状態を示した図(a)とスライド途中を示した図(b)とスライドオープン状態を示した図(c)である。
【図6】図5(c)のスライドオープン状態から回転途中を示した図(a)と回転した状態を示した図(b)である。
【図7】図5(a)の矢印A部の拡大端面図である。
【図8】図5及び図6の回転部材及びバネの斜視図で、スライドオープン状態の図(a)と回転途中の図(b)と回転した状態の図(c)である。
【図9】図1(c)の回転状態の背面図である。
【図10】図9の回転状態の左右両側方から見た斜視図(a)(b)である。
【図11】配線の一例を示す正面図で、スライドクローズ状態を示した図(a)とスライドオープン状態を示した図(b)と回転した状態を示した図(c)である。
【図12】図1(a)のスライドクローズ状態の正面図である。
【図13】図12の矢印A−A線に沿った断面図である。
【図14】図12の矢印B−B線に沿った断面図である。
【図15】配線の他の例を示すもので、図3と同様の分解斜視図である。
【図16】図15の配線を反対側から見た拡大図である。
【図17】図1(a)のスライドクローズ状態の正面図で、配線も併せて示した図である。
【図18】図17の矢印C−C線に沿った断面図である。
【図19】回転部材を備える筐体側の配線を示した斜視図で、スライドクローズ状態の図である。
【図20】レール部材の斜視図で、スライドクローズ状態の図(a)とその反対側から見た図(b)である。
【図21】図19のスライドクローズ状態からスライドオープン状態を示した図である。
【図22】図20のスライドクローズ状態からスライドクローズ状態を示した図(a)とその反対側から見た図(b)である。
【図23】図21のスライドオープン状態から回転した状態の図である。
【図24】図22のスライドオープン状態から回転した状態の図(a)とその反対側から見た図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した携帯機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、図1(a)はスライドクローズ状態、図1(b)はスライドオープン状態、図1(c)は回転した状態を示しており、図中、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3は操作部、4は表示部である。
【0021】
携帯電話は、第1の筐体1に対し第2の筐体2が、図1(a)の重ねて閉じた状態から縦方向にスライド自在に組み付けられるとともに、図1(b)の縦方向へのスライド状態で図1(c)のように回転可能に組み付けられている。なお、第1の筐体1の上面に操作部3が設けられて、第2の筐体2の上面に表示部4が設けられている。
【0022】
図2及び図3は第1の筐体1と第2の筐体2との間に設けられるスライド回転ヒンジの構成を示したもので、5は固定部材、6は回転部材、7はねじりバネ、8はストッパー、9はレール部材である。
【0023】
固定部材5は、第1の筐体1の上面で操作部3に対し上側に固定される略正方形の板金で、その中央に円形穴51が形成されて、この円形穴51から離間して右下隅部と左上隅部に向かって各々延びる直線状の溝部52・53が形成されている。
【0024】
回転部材6は、固定部材5に回転軸を介して回転自在に組み付けられる略正方形の板金で、その中央に円形穴61が形成されて、左右辺部の内側に各々沿った直線状の溝部62・63が形成されている。
【0025】
さらに、回転部材6には、上辺部に沿って起立する壁部64が形成されて、左右辺部に各々沿った直線状のガイド部65が形成されている。この左右一対のガイド部65は、断面コ字状でその開放側が相対向していて、このガイド部65の内部にはPOM(ポリアセタール)による摺動部材66が嵌め込まれている。この摺動部材66の摺動溝に、レール部材9のレール91がそれぞれ係合している。
【0026】
以上の回転部材6は、その中央の円形穴61に上方から嵌め込んで固定部材5の円形穴51に嵌め込まれるリング67と、下方のリング57とを互いに嵌め合わせて結合されている。この上下のリング57・67により回転軸が構成される。そして、回転部材6の右側の溝部62に上方から係合するとともに固定部材5の右側の溝部52に係合するリング68と、下方のリング58とを互いに嵌め合わせる。これら上下のリング58・68により溝部52・62に係合する軸が形成される。
【0027】
ねじりバネ7は、その一端部が、回転部材6の右側の溝部62のリング68と、このリング68上に嵌め合わせて結合される、固定具を兼ねたリング71との間で挟み付けて接続されて、他端部が、レール部材9に固定具72で接続される。なお、嵌め合わせて一体化された3個のリング58・68・71の中空部により配線通し穴が形成される。
【0028】
ストッパー8は、略正方形で、その左辺部に沿って下方へ延びる棒状部81が形成されて、右辺部及び上辺部に各々沿った壁部82・83が形成されている。このストッパー8には、固定部材5の左側の溝部53に下方から係合する軸部を一体に有する固定具85が、回転部材6の左側の溝部63に係合する不図示のネジで組み付けられている。これら固定具85及びネジにより溝部53・63に係合する軸が形成される。
【0029】
レール部材9は、第2の筐体2の下面に固定される略長方形の板金で、その左右辺部に沿ってレール91が形成されている。このレール91は、レール部材9の下面から一段低い段差による壁部を介して形成されている。そして、レール部材9は、回転部材6の一対のガイド部65によって保持されるため、強度があって、ガタが少ない。
【0030】
以上のレール部材9の図示左側で若干下寄りにねじりバネ7の前記他端部が固定具72で接続されている。なお、レール部材9の中間部で固定部72の図示右側には配線通し穴96が形成されている。
【0031】
図4はレール部材9を反対側から見たもので、図示のように、レール部材9の一端部側には、一方のレール91の近傍に沿って平行する出っ張り部93が形成されている。この出っ張り部93は、スライドクローズ状態において、ストッパー8の棒状部81に側方から当接して、レール部材9の回転を規制する。
【0032】
次に、図5はスライド回転ヒンジの動作を正面から見たものである。
先ず、スライドクローズ状態において、第2の筐体2の下面に固定されたレール部材9は、図5(a)に示すように、その左右一対のレール91の図示上端側が、第1の筐体1の上面に固定された固定部材5上に組み付けられた回転部材6の左右辺部に沿った直線状のガイド部65に係合している。
【0033】
以上のスライドクローズ状態においては、図7にも示すように、第2の筐体2に固定のレール部材9の図示左側のレール91の内壁と出っ張り部93との間には、第1の筐体1に固定の固定部材5の左側の溝部53に係合し、且つ回転部材6の左側の溝部63に係合するストッパー8の棒状部81が位置して、この棒状部81が出っ張り部93に当接する。なお、出っ張り部93は、棒状部81と壁部83との隙間を通る。
【0034】
このように、棒状部81が出っ張り部93に当接することで、レール部材9、すなわち、第2の筐体2は回転動作ができない。従って、ストッパー8の棒状部81と出っ張り部93が回転規制部として機能する。
【0035】
また、このとき、ねじりバネ7は、固定具72を介してレール部材9に対し、矢印で示したように、図示下方に押し付けるように弾性力を発生させている。従って、スライドクローズ状態が保持される。
【0036】
そして、第1の筐体1と第2の筐体2を相対的にスライド操作すると、レール部材9に対するねじりバネ7の固定具72がスライドし、そのスライド途中において、図5(b)に矢印で示したように、ねじりバネ7の弾性力の方向も変化し、一定のスライド量を超えると、スライドオープンのアシスト力となる。
【0037】
さらに、スライドオープン状態では、図5(c)及び図8(a)に示すように、回転部材6のガイド部65に対しレール部材9のレール91の図示下端側が係合してスライドしきった位置に達する。
【0038】
このとき、レール部材9の出っ張り部93からストッパー8の棒状部81が外れて回転動作を抑制する接触がなくなるので、レール部材9は、回転部材6と一体に回転軸を構成するリング67(57)を中心に回転動作が可能になる。従って、ストッパー8が回転許容部としても機能する。
【0039】
また、レール部材9に対するねじりバネ7の固定具72は、ストッパー8の棒状部81により図示左側を囲まれ、ストッパー8の壁部82・83により図示右側及び上側を囲まれているので、図示下方にスライドするしかできない。
【0040】
次に、図6及び図8は回転動作を示したものである。
図6(a)及び図8(b)は図5(c)のスライドオープン状態から回転途中を示したもので、第1の筐体1に対し第2の筐体2を回転操作する際は、リング67を中心にレール部材9が回転する。
【0041】
レール部材9がリング67を中心に回転すると、ねじりバネ7の一方の端部を固定するリング71が、回転部材6の縦の溝部62と固定部材5の斜めの溝部52に沿って回転中心のリング67に一旦近付くように移動すると同時に、ねじりバネ7の他方の端部の固定具72を囲むストッパー8が、回転部材6の縦の溝部63と固定部材5の斜めの溝部53に沿って回転中心のリング67に一旦近付くように移動する。
【0042】
このとき、ねじりバネ7の固定具72を囲むストッパー8は回転しないので、そのストッパー8の棒状部81及び壁部82・83が、ねじりバネ7の固定具72のスライド方向に立ちふさがるようになる。すなわち、ねじりバネ7の固定具72はスライドの両方向をストッパー8で囲まれた状態なので、ストッパー8に付随して動く。
【0043】
また、回転途中でねじりバネ7が圧縮されて、ねじりバネ7は元に戻ろうと外方向に力を発生させるので、レール部材9が押されて、それが回転アシスト力になる。
【0044】
そして、図6(b)及び図8(c)は回転した状態を示したもので、レール部材91が90度回転したときに、ねじりバネ7の一方のリング71が、回転部材6の横になる溝部62に沿って固定部材5の斜めの溝部52の端部の元の位置に戻ると同時に、ねじりバネ7の他方の固定具72を囲むストッパー8が、回転部材6の横になる溝部63に沿って固定部材5の斜めの溝部53の端部の元の位置に戻る。
【0045】
このとき、ねじりバネ7の固定具72はストッパー8で囲まれてスライドが規制される。また、左右は、回転部材6の壁部64とストッパー8の棒状部81があるため、レール部材9のレール91間の隙間が塞がれる。
【0046】
このような動作を行うスライド回転ヒンジによって、携帯電話は、図1(a)に示したスライドクローズ状態から、図1(b)に示したスライドオープン状態を経て、図1(c)に示した90度回転した状態で止めて使用することができる。
【0047】
なお、図9は回転した状態を背面から見たもので、第2の筐体2の背面には、第1の筐体1の左右にレール部材9が見えるだけで、従来のようなガイド孔等が露出しないため、見栄えが良い。
【0048】
また、図10(a)及び(b)は回転した状態で背面を左右両側方から見たもので、第2の筐体2の背面のレール部材9と第1の筐体1との左右両側間には、回転部材6の壁部64と、ストッパー8の棒状部81が壁状に位置していて、内部構造が露出しないため、この点でも見栄えが良い。
【0049】
次に、図11は固定部材5及び回転部材6を備える第1の筐体1側の配線10の一例を示すもので、図11(a)はレール91とともにスライドクローズ状態、図11(b)は同じくスライドオープン状態、図11(c)は同じく回転した状態を示している。
【0050】
図示のように、第1の筐体1の上面に固定された固定部材5の斜めの溝部52に係合するリング58内、その上の回転部材6の溝部62に係合するリング68内、その上のバネ固定用のリング71内の配線通し穴から、同軸線による配線10が外部に導出されている。なお、この配線10は、スライドクローズ状態と回転した状態において、ねじりバネ7より外側に配置されている。
【0051】
そして、図12から図14は第1の筐体1及び第2の筐体2も含めて配線10を示したもので、図示のように、前記配線10は、第2の筐体2の背面に固定されたレール部材9の配線通し穴96から外部に導出されている。
【0052】
このように、図11(a)に示したスライドクローズ状態から、図11(b)に示したスライドオープン状態、及び図11(c)に示した回転した状態まで配線10を良好に取り廻しすることができる。
【0053】
以上、実施形態のスライド回転式携帯電話によれば、そのスライド回転ヒンジとして、第2の筐体2に設けたレール91に対し相対的にスライド自在に係合する回転部材6を第1の筐体1に対し回転可能に設けて、その回転部材6と第2の筐体2とにスライド動作及び回転動作に応じてアシスト力を発生するねじりバネ7を設けたので、丈夫で見栄えが良いスライド回転ヒンジを提供できる。
【0054】
しかも、スライドアシストと回転アシストの両方を行うねじりバネ7が1本だけなので、スライド回転ヒンジを薄く構成できる。
【0055】
そして、固定部材5に対し回転部材6を、中央のリング57・67による回転軸と、溝52・62に係合するリング58・68による軸と、溝53・63に係合するストッパー8の軸部とによる一直線上に位置する三点支持構造としたことにより、回転前及び回転後の第2の筐体2の保持がしっかりできる。
【0056】
また、回転部材6の一対のガイド部65でレール部材9を保持しているので、スライド式でありながら第2の筐体2の良好な回転動作を実現できて、回転前及び回転後の第2の筐体2の保持がしっかりできる。
【0057】
しかも、回転部材6には、レール91を係合保持する一対のガイド部65及びその間の一端側に壁部64が形成されて、ストッパー8にガイド部65間の他端側に位置する壁状の棒状部81が形成されているので、四方を壁で囲む形になり、内部構造が露出しなくて見栄えが良い。
【0058】
次に、図15は配線の他の例を示すもので、図示のように、回転部材6の中央のリング67より下側に形成したスリット69からFPC(フレキシブルプリント基板)による配線20が導出されている。このFPCによる配線20の端部には、図16に示すように、基板21を介して同軸線による配線22が接続されている。
【0059】
そして、図17及び図18は第1の筐体1及び第2の筐体2も含めて配線20・22を示したもので、図示のように、FPCによる配線20は、レール部材9の配線通し穴96から第2の筐体2内に導入されて、回転基板6の裏面側(第1の筐体1側)に取り付けられる基板21から延びる同軸線による配線22は、第1の筐体1内に導入される。
【0060】
以上のFPCによる配線20及び同軸線による配線22は、図19及び図20に示したスライドクローズ状態から、図21及び図22に示したスライドオープン状態まで、FPCによる配線20がスライド動作に追従して折り畳まれる。このとき、同軸線による配線22に動きはない。
【0061】
そして、図23及び図24に示した回転した状態までは、回転する回転部材6に取り付けられた基板21も一緒に回転し、同軸線による配線22も基板21の回転に追従する。この回転と同時にスライドもするので、FPCによる配線20もその動きに追従して変化する。
【0062】
以上、スライドクローズ状態からスライドオープン状態、及び回転した状態まで良好に取り廻しすることができる。
【0063】
ところで、この例の場合、図20(a)、図22(a)及び図22(a)に示したように、固定部材5には、回転部材6の90度回転に対応して基板21及び同軸線による配線22の動きを許容するための切り欠き部59が形成されている。
【0064】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などで、スライド回転部を備えた機器全てに用いることができる。
また、実施形態ではねじりバネを用いたが、コイルバネを用いてもよい。
さらに、回転部材の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1の筐体
2 第2の筐体
3 操作部
4 表示部
5 固定部材
52 溝部
53 溝部
57 リング(回転軸)
58 リング(軸、配線通し部)
59 切り欠き部
6 回転部材
62 溝部
63 溝部
64 壁部
65 ガイド部
66 摺動部材
67 リング(回転軸)
68 リング(軸、配線通し部)
69 スリット(配線通し部)
7 ねじりバネ
71 リング(固定具、配線通し部)
72 固定具
8 ストッパー
81 棒状部(壁部)
82 壁部
83 壁部
85 固定具
9 レール部材
91 レール
96 配線通し部
10 配線
20 配線
21 基板
22 配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体とを重ねて閉じた状態から相対的にスライドさせて開放状態となるよう一方の筐体に設けられたレールと、
他方の筐体に回転可能に設けられ、前記レールに対し相対的にスライド自在に係合する回転部材と、
この回転部材と前記一方の筐体とに前記スライド動作及び回転動作に応じて弾性力が与えられるよう設けられたバネと、を備えることを特徴とするスライド回転ヒンジ。
【請求項2】
前記回転部材は、前記他方の筐体に対し互いに係合する複数の軸及び溝を介して回転可能に組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項3】
前記回転部材に、前記レールと平行する溝が形成されて、
前記他方の筐体に、前記溝と交差する溝が形成され、
両方の溝に係合する軸に前記バネの一端が接続されることを特徴とする請求項2に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項4】
前記バネはねじりバネであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項5】
前記閉じた状態において、前記レールの前記回転動作を規制する回転規制部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項6】
前記開放した状態において、前記レールの前記回転動作を許容する回転許容部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項7】
前記開放した状態、及び前記レールの前記回転動作時において、前記一方の筐体に対する前記バネの接続部を、前記回転部材の内側位置に規制するストッパーを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項8】
前記回転部材に、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項9】
前記ストッパーと一体に、筐体を回転した状態において、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする請求項7または8に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項10】
前記軸は中空部材により形成され、その中空部内に配線が通されることを特徴とする請求項3から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項11】
前記回転部材に、配線を通す配線通し部を形成したことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジを備えることを特徴とする携帯機器。
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体とを重ねて閉じた状態から相対的にスライドさせて開放状態となるよう一方の筐体に設けられたレールと、
他方の筐体に回転可能に設けられ、前記レールに対し相対的にスライド自在に係合する回転部材と、
この回転部材と前記一方の筐体とに前記スライド動作及び回転動作に応じて弾性力が与えられるよう設けられたバネと、を備えることを特徴とするスライド回転ヒンジ。
【請求項2】
前記回転部材は、前記他方の筐体に対し互いに係合する複数の軸及び溝を介して回転可能に組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項3】
前記回転部材に、前記レールと平行する溝が形成されて、
前記他方の筐体に、前記溝と交差する溝が形成され、
両方の溝に係合する軸に前記バネの一端が接続されることを特徴とする請求項2に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項4】
前記バネはねじりバネであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項5】
前記閉じた状態において、前記レールの前記回転動作を規制する回転規制部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項6】
前記開放した状態において、前記レールの前記回転動作を許容する回転許容部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項7】
前記開放した状態、及び前記レールの前記回転動作時において、前記一方の筐体に対する前記バネの接続部を、前記回転部材の内側位置に規制するストッパーを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項8】
前記回転部材に、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項9】
前記ストッパーと一体に、筐体を回転した状態において、前記レール間の隙間を塞ぐ壁部を備えることを特徴とする請求項7または8に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項10】
前記軸は中空部材により形成され、その中空部内に配線が通されることを特徴とする請求項3から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項11】
前記回転部材に、配線を通す配線通し部を形成したことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のスライド回転ヒンジを備えることを特徴とする携帯機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−4233(P2011−4233A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146364(P2009−146364)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
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