説明

スライド式拡張ハウス

【課題】キャンピングカーなどに用いられ内部空間を十分に拡張するスライド式拡張ハウスを提供する。
【解決手段】スライド式拡張ハウス1の全体が箱状の状態から、底板3、第1固定側壁7、及び第2固定側壁11に対して、第1スライド側壁10、及び第2スライド側壁12が左右方向へスライドする。これにより、内部空間が拡張される。同時に、第1固定側壁及び第2固定側壁11に対して重なって収納されていた拡張壁15が、現われ、側壁の拡張を行なう。その後に、第1天板屋根19と第2天板屋根21の各先端を重なった状態で、上下機構23により上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャンピングカーなどに用いられ内部空間を拡張して使用される簡易家屋の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャンピングカーなどに用いられる簡易家屋は、通常は固定式のものが多い。また、屋根の一部が上方へ動いて、寝台用の空間を形成するものもある。
さらに、下記特許文献1には、全体の内部空間を拡張して使用される簡易家屋が開示される。すなわち、一方の側壁が外側と内側の二重になっており、このうち外側の側壁が天井と共に、他方の側壁の上辺を回動軸として回動して持ち上がり、三角の屋根を形成するとともに、外側の側壁が外方へせり出して、内部空間を拡張する。
【0003】
また、下記特許文献2には、キャンピングカーの簡易家屋全体の内部空間を拡張するために、天井が、左右に展開するものが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−105432
【特許文献2】実開昭49−78913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2は、簡易家屋全体の内部空間を十分に拡張することができない。特に、上記特許文献1において、拡張のために側壁が外方へせり出す量は、拡張前の家屋の縦断面における対角線の寸法により、制限され、よって十分に拡張できない。
【0006】
このような問題は、キャンピングカーに限らず、内部空間を拡張して使用される簡易家屋について、同じように存在する。
この発明は、以上の問題点を解決するために、内部空間を十分に拡張するスライド式拡張ハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、第一発明は、側壁が水平方向へスライドすることで内部空間を拡張するスライド式拡張ハウスであって、ベースとなる底板と、この底板の前端辺に固定される第1固定側壁と、前記底板の後端辺に固定される第2固定側壁と、前記底板に対して左方向へスライドする第1スライド側壁と、前記底板に対して右方向へスライドする第2スライド側壁と、前記第1スライド側壁及び前記第2スライド側壁の前後端辺に直角に設けられることで、スライド前には前記第1固定側壁及び第2固定側壁に対して重なって収納されスライド後には拡張する働きをする拡張壁と、前記第1スライド側壁の上端辺に回動可能に設けられる第1天板屋根と、前記第2スライド側壁の上端辺に回動可能に設けられる第2天板屋根と、前記第1天板屋根と前記第2天板屋根の各先端を重なった状態で上下させる上下機構と、を有することを特長とするスライド式拡張ハウスである。
第二発明は、さらに、前記スライドを行なうスライド機構は、前記底板、前記第1固定側壁、及び前記第2固定側壁の内面に設けられたガイドレール、または/及び、前記第1スライド側壁、前記第2スライド側壁、前記拡張壁に設けられたガイドレールを有して構成され、前記上下機構は、前記第1天板屋根と前記第2天板屋根の各先端の重量を支えるバネ装置、油圧装置、または電動装置を有して構成されることを特長とする請求項1に記載のスライド式拡張ハウスである。
【発明の効果】
【0008】
第一、又は第二発明のスライド式拡張ハウスによれば、両スライド側壁が左右方向へスライドすることで内部空間を十分に拡張できる。
すなわち、スライド式拡張ハウスの全体が箱状の状態から、底板、第1固定側壁、及び第2固定側壁に対して、第1スライド側壁が左方向へスライドし、第2スライド側壁が右方向へスライドする。これにより、スライド式拡張ハウス全体の内部空間が拡張される。同時に、第1固定側壁及び第2固定側壁に対して重なって収納されていた拡張壁が、現われ、側壁の拡張を行なう。その後に、第1天板屋根と第2天板屋根の各先端が重なった状態で、上下機構により上昇させる。
【0009】
そして、第1固定側壁及び第2固定側壁に対して重なる拡張壁の寸法は、十分に大きくできるので、内部空間は十分に拡張できる。
第二発明のスライド式拡張ハウスによれば、さらに、前記スライドを行なうスライド機構は、前記底板、前記第1固定側壁、及び前記第2固定側壁の内面に設けられたガイドレール、または/及び、前記第1スライド側壁、前記第2スライド側壁、前記拡張壁に設けられたガイドレールを有して構成されるので、簡易な構造により、小さな人力などで容易にスライドでき、よって拡張作業が容易になる。
【0010】
また、上下機構は、前記第1天板屋根と前記第2天板屋根の各先端の重量を支えるバネ装置、油圧装置、または電動装置を有して構成されるので、この重量を人力だけで支える必要がなく、よって拡張作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明のスライド式拡張ハウスを車両に搭載して使用する一実施形態を示すもので、(A)は内部空間を縮小した状態の全体斜視図、(B)は内部空間を拡張した状態の全体斜視図、(C)は(B)の内部の要部を示す拡大図、(D)は(C)のスライドする右半分を示す拡大斜視図である。
【図2】(A)は図1(A)のスライド式拡張ハウスのみを示す全体斜視図、(B)は(A)の分解斜視図である。
【図3】(A)は図1(B)のスライド式拡張ハウスのみを示す全体斜視図、(B)は(A)の分解斜視図である。
【図4】(A)(B)(C)は、図1(A)から(B)へ内部空間を拡張する際の手順を示すための正面図。
【図5】図4(C)の細部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態に係るスライド式拡張ハウスを、図1から図5に示す。
[概略]
このスライド式拡張ハウス1は、両スライド側壁10、12が水平方向の左右へスライドすることで、内部空間を拡張する(図1(A)(B)など参照)。図2、図3に示すように、ベースとなる底板3の前端辺5には第1固定側壁7が直角に固定される。底板3の後端辺9には第2固定側壁11が直角に固定される。底板3に対して、第1スライド側壁10が左方向へスライドする。底板3に対して、第2スライド側壁12が右方向へスライドする。
【0013】
第1スライド側壁10及び第2スライド側壁12の各々の前後で縦に位置する4本の端辺13には、合計4つの拡張壁15が直角に設けられる。これらの拡張壁15は、スライド前の縮小状態では、第1固定側壁17及び第2固定側壁11に対して、内側に重なって収納される。スライド時には第1スライド側壁10及び第2スライド側壁12と一体にスライドする。このスライドにより、第1固定側壁7及び第2固定側壁11を拡張する働きをする。
【0014】
第1スライド側壁10の上端辺17に第1天板屋根19が回動可能に設けられる。第2スライド側壁12の上端辺17に第2天板屋根21が回動可能に設けられる。第1天板屋根19と第2天板屋根21の各先端は、重なった状態で上下する。この上下は、上下機構23によって行なわれる。
【0015】
[底板3]
底板3は、車両25(図1(A)(B))の荷台26に図示しないボルトなどで固定される。
[第1、第2固定側壁7,11]
図2(B)に示すように、第1、第2固定側壁7,11は、ともに底板3に固定され、コの字形状を形成し、強度の高い部材で構成され、スライド式拡張ハウス1全体の強度を受け持つ。
[第1、第2スライド側壁]
第1スライド側壁10や第2スライド側壁12には、窓27やドア29が設けられる。
[拡張壁15]
拡張壁15は、各スライド側壁10、12にそれぞれ一対が設けられ、下端の間に拡張底31が連続する。スライド側壁10または12、一対の拡張壁15、及び拡張底31により、箱形状の一部が形成され、よって軽い部材でも十分な強度を有する。拡張動作した拡張底31の下面は、車両25の荷台26から外側にせり出すので、別体の脚33(図1(B))により支えられる。
【0016】
[スライド機構35]
図2(B)に示すように、スライドを行なうスライド機構35は、ガイドレール37を有して構成される。すなわち、固定された部分である底板3、第1固定側壁7、及び第2固定側壁11の内面に各々2条ずつガイドレール37が設けられる。対応して、スライドする部分である第1スライド側壁10の拡張底31、第2スライド側壁12の拡張底31、及び4つの拡張壁15に各々2条ずつガイドレール37が設けられる。そして、前者の固定されたガイドレール37が、後者のスライドするガイドレール37を支える。これにより小さい力でスライドが行える。
【0017】
[第1、第2天板屋根19,21]
第1スライド側壁10の上端辺17に、第1天板屋根19が蝶番39により回動可能に設けられる。第2スライド側壁12の上端辺17に、第2天板屋根21が蝶番39(図5)により回動可能に設けられる。第1、または第2天板屋根19,21には、明かり取りの窓41(図3)が形成される。第1、または第2天板屋根19,21の各々の前後の端辺には、下方へ垂直延長壁43が設けられ、上下機構23(図1(C))により上昇する際には、固定側壁7、11や拡張壁15との間の隙間を覆う。第1、及び第2天板屋根19,21の下端辺45には、雨樋47(図5)が設けられる。
【0018】
「上下機構23」
図1(C)(D)に示すように、上下機構23は、第1天板屋根19と第2天板屋根21の各先端の重量を支えるバネ装置49を有して構成される。左の第1天板屋根19の先端は、右の第2天板屋根21の先端を覆って係止する延長部51を有する。両先端の接触部には、各々、ローラ53が設けられ、上下機構23による上下動において、接触したままの両先端の移動を滑らかにしている。第1天板屋根及び第2天板屋根21の下面には、バネ装置49であるエアシリンダ55が設けられる。すなわちエアシリンダ55の一端が屋根19、21の下面にヒンジ結合され、他端がスライド側壁10、12にヒンジ結合される。第2天板屋根21の下面には取付板56を介してハンドルバー57が設けられ、手で屋根を引き下げる。この引き下げた状態で屋根をロックする図示しないロック装置が設けられる。
【0019】
屋根19、21を上昇させるには、ロック装置を外す。そうすると、バネ装置49は屋根を常に上方向へ付勢しているので、全く手を触れなくても、あるいは軽く押し上げるだけでも、自動的に図1(C)の状態になる。屋根を下降させるには、ハンドルバー57を手でつかみ屋根を引き下げ、ロック装置をロックすれば、図4(B)の状態になる。
【0020】
「実施形態の作用・効果」
スライド式拡張ハウス1の全体が縮小した箱状の状態(図1(A)、図2(A)、図4(A))から、拡張した状態(図1(B)、図3(A)、図4(C)、図5)の状態にするには、以下のように拡張作業を行なう。
【0021】
まず、底板3、第1固定側壁7、及び第2固定側壁11に対して、人力により、第1スライド側壁10が左方向へスライドし、第2スライド側壁12が右方向へスライドする(図4(B))。これにより、スライド式拡張ハウス1全体の内部空間が拡張される。同時に、第1固定側壁及び第2固定側壁11に対して重なって収納されていた拡張壁15が、現われ、側壁の拡張を行なう。
【0022】
その後に、第1天板屋根19と第2天板屋根21の各先端を、ロック装置を外すことで、上下機構23により上昇させる(図4(C)、図1(C))。このとき屋根の重量を人力だけで支える必要がなく、よって拡張作業が容易になる。拡張状態では、左の第1天板屋根19の先端が、右の第2天板屋の先端を覆って係止する。
【0023】
逆の縮小作業は、拡張作業と逆の手順で行なうが、屋根を下降させるには、ハンドルバー57を手でつかみ屋根を引き下げ、ロック装置をロックする。
そして、第1固定側壁及び第2固定側壁11に対して重なる拡張壁15の寸法は、設計時に、十分に大きくできるので、内部空間は十分に拡張できる。
さらに、スライド機構35は、固定された部分である底板3、第1固定側壁7、及び第2固定側壁11の内面に各々2条ずつガイドレール37が設けられ、これに対応して、スライドする部分である第1スライド側壁10の拡張底31、第2スライド側壁12の拡張底31、及び4つの拡張壁15に各々2条ずつガイドレール37が設けられ、前者の固定されたガイドレール37が、後者のスライドするガイドレール37を支えることで、簡易な構造により、小さな人力で容易にスライドでき、よって拡張作業が容易になる。
【0024】
「他の実施形態」
以上の実施形態のスライド式拡張ハウス1はキャンピングカーに用いられるものであったが、他の実施形態では、キャンピングカーに限らず、内部空間を拡張して使用される簡易家屋について、同じように用いられる。例えば、災害時の簡易住居、工事現場の事務所兼休息所、物置小屋、別荘小屋、簡易店舗、車載用移動店舗などである。
【0025】
以上の実施形態では、スライド機構35は、固定されたガイドレール37が、スライドするガイドレール37を支えるものであったが、他の実施形態では、ガイドレール37の支え接する部分に、ローラ53を追加して設けることで、より小さい力でスライドが可能になる。
あるいは、固定されたガイドレール37、またはスライドするガイドレール37のいずれか一方のみを設け、他方をローラーに置き換えてもよい。
以上の実施形態では、図2(B)に示すように、スライド機構35のガイドレール37は、各部分に各々2条ずつ設けるものであったが、他の実施形態では、3条、あるいは4条以上ずつ設けることもできる。
【0026】
以上の実施形態では、上下機構23は、バネ装置49として空気バネであるエアシリンダ55が設けられたが、他の実施形態では、コイルバネなどの他のバネを使用することができる。また、バネ装置49ではなく、油圧装置、または電動装置を用いて、自動的に上下させることもできる。これにより、人力はほとんど無用になり、全くの自動にすることもできる。
【0027】
以上の実施形態では、拡張壁15は、第1固定側壁7及び第2固定側壁11に対して、内側に重なって収納されるものであったが、他の実施形態では、外側に重なるものでもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…スライド式拡張ハウス、3…底板、5…前端辺、7…第1固定側壁、9…後端辺、10・・第1スライド側壁、11…第2固定側壁、12・・第2スライド側壁、13…4本端辺、15…拡張壁、17…上端辺、19…第1天板屋根、21…第2天板屋根、23…上下機構、25…車両、27…窓、29…ドア、31…拡張底、33…脚、35…スライド機構、37…ガイドレール、39…蝶番、41…明かり取りの窓、43…垂直延長壁、45…下端辺、47…雨樋、49…バネ装置、51…延長部、53…ローラ、55…エアシリンダ、57…ハンドルバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁が水平方向へスライドすることで内部空間を拡張するスライド式拡張ハウスであって、ベースとなる底板と、この底板の前端辺に固定される第1固定側壁と、前記底板の後端辺に固定される第2固定側壁と、前記底板に対して左方向へスライドする第1スライド側壁と、前記底板に対して右方向へスライドする第2スライド側壁と、前記第1スライド側壁及び前記第2スライド側壁の前後端辺に直角に設けられることで、スライド前には前記第1固定側壁及び第2固定側壁に対して重なって収納されスライド後には拡張する働きをする拡張壁と、前記第1スライド側壁の上端辺に回動可能に設けられる第1天板屋根と、前記第2スライド側壁の上端辺に回動可能に設けられる第2天板屋根と、前記第1天板屋根と前記第2天板屋根の各先端を重なった状態で上下させる上下機構と、を有することを特長とするスライド式拡張ハウス。
【請求項2】
前記スライドを行なうスライド機構は、前記底板、前記第1固定側壁、及び前記第2固定側壁の内面に設けられたガイドレール、または/及び、前記第1スライド側壁、前記第2スライド側壁、前記拡張壁に設けられたガイドレールを有して構成され、前記上下機構は、前記第1天板屋根と前記第2天板屋根の各先端の重量を支えるバネ装置、油圧装置、または電動装置を有して構成されることを特長とする請求項1に記載のスライド式拡張ハウス。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121335(P2012−121335A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270971(P2010−270971)
【出願日】平成22年12月4日(2010.12.4)
【出願人】(592250034)
【Fターム(参考)】