説明

スライド式携帯電話機

【課題】 第1基板と第2基板の電気接続信号を、フレキシブル基板の配線を経由させると、フレキシブル基板の配線抵抗がロスとなり、性能確保が困難であった。
【解決手段】 電子部品が実装された第1基板を有する第1筐体と、電子部品が実装された第2基板を有する第2筐体と、第1筐体に設けられた摺動部材、第2筐体に設けられ、摺動部材を摺動自在に保持する保持部材を含むスライドモジュールと、保持部材に配設され、第2基板と電気的に接続された導電部材である中間接点と、第1基板と電気的に接続された導電部材であって、中間接点との接触時に第1基板と第2基板を電気的に接続するコネクタとを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライド式携帯電話機の第1筐体に実装された基板と第2筐体に実装された基板間を電気接続する接続機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スライド式携帯電話は、特開2003−110675号公報、特表2000−506323号公報、特開2001−189780号公報など多数提案されている。
例えば特開2003−110675号公報(特許文献1参照)記載のスライド式携帯電話機は、掌に載る大きさの略長方形の扁平な本体と、該本体とほぼ同じ輪郭を有し、本体に重なった位置から本体の長手方向にスライド可能に取り付けられた蓋体とによって構成され、蓋体(上側筐体)に実装された基板(駆動回路基板)と本体(下側筐体)に実装された基板(メイン回路基板)とは、駆動回路基板から延び本体内のメイン回路基板のソケットに接続された接続用フレキシブル基板により接続されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−110675号公報(図4)
【特許文献2】特表2000−506323号公報
【特許文献3】特開2001−189780号公報
【特許文献4】特開2003−110210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスライド式携帯電話機は、上記のように構成されているため、上側基板と下側基板の電気接続信号は、フレキシブル基板の配線を経由する必要があった。この時、上側基板と下側基板を接続させる信号が通常のロジック信号、すなわち一定の電圧をON/OFFに切り替える信号であれば問題ないが、携帯電話機としてのアンテナ性能及びシールド性能を確保する為、上側基板と下側基板のアース端子(GND信号)を接続させ、マッチングを図る必要がある場合、フレキシブル基板の配線抵抗がロスとなり、性能確保が困難となる問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、上側基板と下側基板におけるアース端子(GND信号)等を、フレキシブル基板などの配線抵抗を持った信号線で接続することなく、直接的に接続することにより、携帯電話機のアンテナ性能及びシールド性能を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるスライド式携帯電話機は、電子部品が実装された第1基板を有する第1筐体と、電子部品が実装された第2基板を有する第2筐体と、前記第1筐体に設けられた摺動部材、前記第2筐体に設けられ、前記摺動部材を摺動自在に保持する保持部材を含むスライドモジュールと、前記保持部材に配設され、前記第2基板と電気的に接続された導電部材である中間接点と、前記摺動部材側に設けられて、前記第1基板と電気的に接続された導電部材であって、前記中間接点との接触時に前記第1基板と前記第2基板を電気的に接続するコネクタとを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によるスライド式携帯電話機は、スライドモジュールに設けた中間接点と、この中間接点との接触時に第1基板と第2基板とを電気的に接続するコネクタとにより電気接続したので、接続用フレキシブル基板の配線抵抗によるロスが生じることなく性能が確保でき、その上、スライド開閉動作に対して両筐体基板間の耐久性(繰り返しスライド動作に耐えうる高寿命)と接触安定性(上側筐体と下側筐体のがたつきによる接触ばらつきの吸収)を確保した接続が可能となり、より高い接触信頼性が得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて、この発明の各実施の形態を説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1であるスライド式携帯電話機は、
第1筐体1に電子部品が実装された第1基板6を、また第2筐体2に電子部品が実装された第2基板7をそれぞれ設けると共に両筐体1、2は、スライド式に開閉するようなされており、この両筐体間には第1筐体1側に設けられた摺動部材すなわちスライドレール10aと、第2筐体2側に設けられ、両筐体を開閉するためスライドレール10aを摺動自在に保持する保持部材すなわち案内ベース10bとで構成されたスライドモジュール10を備え、案内ベース側10bに中間接点11を設けると共に第1基板6と第2基板7とにそれぞれコネクタ12、13を設け両筐体1、2を開いた時、中間接点11を介し両コネクタ12、13で両基板6、7を電気的に接続するようにしたものである。
【0010】
図1から図5は、この発明の実施の形態1であるスライド式携帯電話機を示し、図5は、実施の形態1における携帯電話機の外観図を示し、図5(a)は第1筐体が閉じた状態(以下、閉状態という)、図5(b)は、第1筐体が開いた状態(以下、開状態という)の斜視図である。
図1は、実施の形態1におけるスライド式携帯電話機の内部実装構造を示し、図1(a)は閉状態、図1(b)は開状態を示す。
【0011】
図1、図5に示すように、実施の形態1における携帯電話機は、第1筐体(例えば蓋体部、以下「上側筐体1」という)と第2筐体(例えば本体部、以下「下側筐体2」という)とによって構成され、上側筐体1は、下側筐体2とほぼ同じ輪郭を有し、開閉のためスライドモジュール10により、下側筐体2に重なった位置から下側筐体2の長手方向にスライド可能に取り付けられている。
上側筐体1には、第1基板(電子部品が実装された駆動回路基板、以下「上側基板6」という)が実装され、下側筐体2には第2基板(電子部品が実装されたメイン回路基板、以下「下側基板7」という)が実装されている。これら両基板6、7は、上側基板6の駆動回路基板から延び下側筐体内のメイン回路基板のソケットに接続された接続用フレキシブル基板9により接続され、ロジック系の信号が電気的に接続される。
上側筐体1は、表示部3を備え、この表示部3は、ホルダー5によって実装保持されている。更に、ホルダー5は、上側筐体1の内部に実装されている上側基板6と嵌合保持されている。
下側筐体2は、キー操作部4を備え、下側筐体2の内部に実装されている下側基板7には、キー操作部4からの押し下げ位置に合わせスイッチシート8が貼り付けられている。
上側筐体1をスライド可能とするスライドモジュール10は、スライドレール10aと案内ベース10bとで構成され、案内ベース10bに嵌め込まれたスライドレール10aは、上側筐体1に固定されて上側筐体1及び上側基板6と共動して案内ベース10b内をスライド動作する。
又、案内ベース10bは、下側筐体2に固定されて下側筐体2及び下側基板7と連動して動作する。
なお、スライドモジュールを構成する際、案内ベース10bとスライドレール10aとは、第1、第2筐体に対し逆関係にしても実施可能である。
【0012】
次に、図2、図3、図4によって、上側基板6と下側基板7との接続機構を説明する。
なお、図2は、この接続機構の概略と開閉動作を示す側面図で、図2(a)は閉状態、図2(b)は開状態を示す。
図3は、この発明の実施の形態1における接続機構の動作説明図で、図3(a)は両筐体の閉状態すなわち接続機構のOFF状態の拡大斜視図である。図3(b)は両筐体の開状態すなわち接続機構のON状態の拡大斜視図で、後述するように上側基板6と下側基板7を直接的に電気接続させた状態を示す。
図4は、接続機構の各部品を示し、図4(a1)(a2)は中間接点11の斜視図、図4(b1)(b2)は下側接続コネクタ12の斜視図、図4(c1)(c2)は上側接続コネクタ13の斜視図である。
【0013】
上側基板6と下側基板7間に位置する中間接点11は、図4に示すようにプレス加工された接点部11aを有し、図2、図3に示すように、スライドモジュール10の案内ベース10bの側面に固定され後述するように下側基板7と電気的に接続されている。なお、中間接点11は、金属板などの導電部材から形成された接点金具として機能する。
この中間接点11と常時接触する下側接続コネクタ(固定型)12は、図4に示すようにバネ性を有する金属板材からなり、図2、図3に示すように下側基板7に半田接続によって固定され中間接点11と下側基板7を常に電気的に接続している。
上側接続コネクタ(可動型)13は、図4に示すようにバネ性を有する金属板材からなり、図4に示すようにプレス加工された接点部13aを有し、図2、図3に示すように上側基板6に半田接続によって固定されて上側筐体1と連動して動作する。
すなわち、この上側接続コネクタは、上側基板6と電気的に接続された導電部材であって、中間接点11との接触時に上側基板6と下側基板7とを電気的に接続するコネクタとして機能する。
【0014】
上記の構成において、上側筐体1と下側筐体2が閉状態の時は、図2(a)に示すとおり、中間接点11と上側接続コネクタ13は接続されず、OFF状態である。
又、上側筐体1と下側筐体2が開状態の時は、図2(b)に示すとおり、中間接点11と上側接続コネクタ13が接続されON状態となり、上側基板6と下側基板7の電気信号を、フレキシブル基板9を経由することなく、上側筐体1と下側筐体2の開閉動作に連動して、直接的に電気接続することが可能となる。
上側接続コネクタ13の接点部13aと中間接点11の接点部11aとは、上側筐体1と下側筐体2の開閉動作の都度、ON/OFFを繰り返すこととなるが、上側接続コネクタの13aは十分な撓み量を持たせて接触する構造とすることで、接触耐久性の向上及び圧縮ばらつきの吸収を図っている。
【0015】
なお、この実施の形態1では、下側接続コネクタ12を固定型とし、上側接続コネクタ13を可動型として接続機構を構成したが、これとは逆に、下側接続コネクタ12を可動型とし、上側接続コネクタ13を固定型としても同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2における上側筐体の開状態すなわち接続機構がON状態における拡大斜視図で、実施の形態1の図3(b)に相当するものである。
【0017】
実施の形態1の下側接続コネクタ12は、バネ性を有する金属板材としたが、実施の形態2における下側接続コネクタ12は、図6に示すように導電性のクッション材で構成されている。この場合、導電性クッションによる圧縮接続構造とすることで、接触面積が拡大し、塵埃などによる接触不良を抑制させ、下側接続コネクタ12と中間接点11の接触信頼性を向上することができる。
【0018】
実施の形態3.
上記の実施の形態1では、上側基板6と下側基板7の電気信号を接続することとしたが、上側基板6のアース端子(GND信号)と下側基板7のアース端子(GND信号)を直接的に電気接続する構成としても良い。すなわち、上側基板6に設けた上側接続コネクタ13を上側基板のアース端子と電気的に接続し、下側基板7に設けた下側接続コネクタ12を下側基板のアース端子に接続、あるいは中間接点11を第2基板のアース端子と電気的に直接接続することにより、上側基板6と下側基板7のアース電位をマッチングさせることが可能となり、携帯電話機としてのアンテナ性能及びシールド性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の活用例として、携帯電話等の端末機器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1におけるスライド式携帯電話機の内部実装構造を示し、図1(a)は閉状態の斜視図、図1(b)は開状態の斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1による接続機構の概略と開閉動作を示し、図2(a)は両基板の閉状態、図2(b)は開状態の側面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における接続機構の動作説明図を示し、図3(a)は両筐体の閉状態すなわち接続機構のOFF状態の拡大斜視図、図3(b)は両筐体の開状態すなわち接続機構のON状態の拡大斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1における接続機構の各部品を示し、図4(a)は中間接点の斜視図、図4(b)は下側接続コネクタの斜視図、図4(c)は上側接続コネクタの斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるスライド式携帯電話機の外観図を示し、図5(a)は閉状態、図5(b)は開状態の斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態2による接続機構を示し、図6(a)は接続機構がON状態の拡大斜視図、図6(b)は下側接続コネクタ12のみを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 上側筐体 2 下側筐体
3 表示部 4 キー操作部
5 ホルダー 6 上側基板
7 下側基板 8 スイッチシート
9 フレキシブル基板 10 スライドモジュール
10a スライドレール 10b 案内ベース
11 中間接点 11a 接点部
12 下側接続コネクタ 13 上側接続コネクタ
13a 接点部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された第1基板を有する第1筐体と、
電子部品が実装された第2基板を有する第2筐体と、
前記第1筐体に設けられた摺動部材、前記第2筐体に設けられ、前記摺動部材を摺動自在に保持する保持部材を含むスライドモジュールと、
前記保持部材に配設され、前記第2基板と電気的に接続された導電部材である中間接点と、
前記摺動部材に設けられて、前記第1基板と電気的に接続された導電部材であって、前記中間接点との接触時に前記第1基板と前記第2基板を電気的に接続するコネクタとを備えたことを特徴とするスライド式携帯電話機。
【請求項2】
前記中間接点は前記第2基板のアース端子と電気的に接続され、前記コネクタは前記第1基板のアース端子と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式携帯電話機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−128808(P2006−128808A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311229(P2004−311229)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】