説明

スライド操作式アリ溝摺動ステージ

【課題】簡易な駆動手段にすることで操作性が良くコンパクトな構造が可能となるスライド操作式アリ溝摺動ステージを提供する。
【解決手段】スライド操作式アリ溝摺動ステージ1は、摺動方向(X)と略平行な固定部品3の側面壁に設けられ、固定部品3に連結する逆三角形の突出部10をネジ6で当接して摺動部品2のアリ5に接触させ、ネジ6を締め込むことで摺動部品2の摺動を固定する摺動固定ネジ6を備え、摺動固定ネジ6は、前記突出部10に当接して摺動部品2のアリ5に接触させたネジ6の回転量を調節することで固定部品3に対する摺動部品2の摺動の程度を微調整する摺動調節ネジ、及び、操作者が摺動部品2を所望の位置にスライド操作するために把持する駆動手段、として兼用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド操作式アリ溝摺動ステージに係り、特に、台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させて固定部品に対して摺動部品を摺動させ、駆動手段により摺動部品をスライド操作することで、精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージは、駆動手段により、ラックアンドピニオン式のアリ溝摺動ステージ、又は送りネジ式のアリ溝摺動ステージが一般的に採用される。ラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージは、係合された一対の駆動手段であるラックとピニオンギアのうちの一方であるピニオンギアをハンドルにより回転させることで他方であるラックを直進させて摺動部品をスライドさせ、精密機器の位置調整を行う機構を有する。また、送りネジ式アリ溝摺動ステージは、係合された一対の駆動手段である雄ネジ棒及び雌ネジ筒のうちの一方である雄ネジ棒をハンドルにより回転させることで他方である雄ネジ棒を直進させて摺動部品をスライドさせ、精密機器の位置調整を行う機構を有する。
【0003】
特許文献1の図2を参照してラックアンドピニオン式のアリ溝摺動ステージの駆動手段を説明する。ラック及びピニオンギアによる駆動手段は、摺動部品に固定されたラック(特許文献1図2符号13)と、ハンドルと回転軸が共通するように接続されて固定部品により支持されたピニオンギア(同符号14)とが係合され、ハンドル(同符号9)を回転するとピニオンギアが連動して回転してラック上をスライドし、摺動部品が固定部品に対して摺動する駆動手段である。すなわち、ハンドルは、摺動部品の摺動方向に対して交差する方向に取り付けられる。このラックアンドピニオン式による手動ステージは、後述するアリ溝式ステージという摺動機構と組み合わされ、ハンドル1回転により約18mmスライドし、素早く大きい動きが必要な場合に適した駆動手段である。
【0004】
特許文献1の図22を参照して送りネジ式アリ溝摺動ステージの駆動手段を説明する。送りネジ式による駆動手段は、精密機器が取付けられる摺動部品の裏面に接続される雌ネジ筒(特許文献1図22符号306)と、土台に接続される固定部品に固定されたブロックを貫通する雄ネジ棒(同符号307)とが係合され、ハンドル(同符号309)の操作により雄ネジ棒を回転させて固定部品に対して摺動部品を摺動させる摺動手段である。すなわち、ハンドルは、摺動部品の摺動方向と同じ方向に取り付けられる。この送りネジ式による手動ステージは、後述するアリ溝式ステージという摺動機構と組み合わされ、ハンドル1回転により約4、2mmスライドし、耐荷重性が要求され微細な調整が必要な場合に適した駆動手段である。
【0005】
特許文献2の図1を参照してアリ溝による摺動機構を説明する。ラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージ、及び送りネジ式アリ溝摺動ステージでは、固定部品に対して摺動部品を滑らかに摺動させる摺動機構としてアリ溝式摺動ステージを用いられるのが一般的である。アリ溝式摺動ステージとは、台形状に窪んだアリ溝(特許文献1図1符号3)を有する固定部品と、台形状に突出したアリ(同符号2)を有する摺動部品が嵌合され、摺動部品が固定部品に対して滑らかに摺動するステージをいう。
【0006】
特許文献2の図3を参照してアリ溝手動ステージにおいて所望の位置で摺動部品の摺動を固定させ、取り付けられた精密機器の位置設定を行うストッパ機構を説明する。固定部品の側面には摺動固定ネジ(特許文献2図3符号10)が取付けられ、固定部品のアリ溝の側部に逆三角形の突出部(同符号31)が形成されるように溝部(同符号32)が設けられる。そして、摺動固定ネジの先端部である摺動固定ネジ先端部を溝部から突出部に突き当てて突出部を内側に傾斜させて固定部品のアリ溝と嵌合する摺動部品のアリを押さえ込ませ、固定部品に対する摺動部品の位置を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4606501号
【特許文献2】特許第4505535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のアリ溝摺動ステージは、駆動手段としてハンドルを使用している。すなわち、ラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージは、ハンドルを回転するとピニオンギアが連動して回転してラック上をスライドし、摺動部品が固定部品に対して摺動する機構である。また、送りネジ式アリ溝摺動ステージは、ハンドルの操作により雄ネジ棒を回転させて雌ネジ筒内でスライドさせ、摺動部品が固定部品に対して摺動する機構である。このように、従来のアリ溝摺動ステージではハンドルは必須の構成要素であり、さらにラック及びピニオンギアによる駆動手段、或いは雄ネジ棒及び雌ネジ筒による駆動手段が組み合わされて複雑な機構となり、操作性や耐久性の上で問題があった。
【0009】
また、このハンドルは、回転操作を容易にするために他の部品に比べるとより大きな部品である。従って、アリ溝摺動ステージの高さはこのハンドルの高さによって決まり、アリ溝摺動ステージ全体が嵩張ったステージになるという問題があった。
【0010】
また、従来のアリ溝摺動ステージは、ハンドルの回転により摺動部品をスライドさせるため、摺動部品を大きく移動させる場合に時間がかかり素早くスライド操作をするのは難しいという問題がある。
【0011】
本願の目的は、かかる課題を解決し、簡易な駆動手段にすることで操作性が良くコンパクトな構造が可能となるスライド操作式アリ溝摺動ステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージは、台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させて固定部品に対して摺動部品を摺動させ、駆動手段により摺動部品をスライド操作することで、精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージにおいて、摺動方向と略平行な固定部品の側面壁に設けられ、固定部品に連結する逆三角形の突出部をネジで当接して摺動部品のアリに接触させ、ネジを締め込むことで摺動部品の摺動を固定する摺動固定ネジを備え、前記摺動固定ネジは、前記逆三角形の突出部に当接して摺動部品のアリに接触させるネジの回転量を調節することで固定部品に対する摺動部品の摺動の程度を微調整する摺動調節ネジ、及び、操作者が摺動部品を所望の位置にスライド操作するために把持する駆動手段、として兼用されることを特徴とする。これにより、操作者は、摺動部品の摺動を固定する機能と摺動部品の摺動の程度を調整する機能と、摺動部品をスライド操作する機能とを全て摺動固定ネジに集約することができる。例えば、摺動部品の固定を解除し、摺動部品の摺動の程度を微調整した後、同じ摺動固定ネジで引き続き摺動部品を素早く移動させる、或いは、摺動部品を細かく移動させるといったように操作性を向上できる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージは、台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させて固定部品に対して摺動部品を摺動させ、駆動手段により摺動部品をスライド操作することで、精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージにおいて、摺動方向と略平行な固定部品の側面壁に設けられ、固定部品に連結する逆三角形の突出部をネジで当接して摺動部品のアリに接触させ、レバーにより締め込むことで摺動部品の摺動を固定する摺動固定ネジと、摺動方向と略平行な摺動部品の側面壁に設けられ、操作者が摺動部品を所望の位置にスライド操作するために把持する駆動手段と、を備えることを特徴とする。これにより、レバー式の摺動固定ネジを用いる場合であっても、アリ溝摺動ステージを、ハンドルを省略した簡易な駆動手段により駆動させることができる。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージは、台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させ、摺動部品に固定されたラックと固定部品により支持されたピニオンギアとを係合して駆動させ、固定部品に対して摺動部品を摺動させて精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージにおいて、ピニオンギアを押さえつけてラック及びピニオンギアの与圧の程度を接触摩擦により調整する与圧調整ネジと、摺動方向と略平行な摺動部品の側面壁に設けられ、操作者が摺動部品を所望の位置にスライド操作する際に把持する駆動手段と、を備えることを特徴とする。これにより、ラックアンドピニオン式のスライド操作式アリ溝摺動ステージをハンドルを省略した簡易な駆動手段により駆動させることができる。また、ラック及びピニオンギアを備えることで、ラック及びピニオンギアの与圧を調整できる与圧調整ネジを設けることができ、アリ溝摺動ステージの操作性を向上することができる。
【0015】
上記3つの実施形態の構成により、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、従来のラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージ、又は送りネジ式アリ溝摺動ステージの必須の駆動手段であったハンドルを省略することができる。また、係合された一対の駆動手段であるラック及びピニオン、或いは雌ネジ筒及び雄ネジ棒の一方をハンドルにより回転させることで他方を直進させて摺動部品をスライドさせるという複雑な機構を省略することで、簡易な機構によりアリ溝摺動ステージの摺動が可能となった。また、摺動固定ネジによる摺動部品の固定を解除し、操作者が摺動部品を指により所望の位置に瞬時にスライドできるため、操作性が向上する。さらには、ハンドルを省略したことでアリ溝摺動ステージの高さを抑えてよりコンパクトで軽量なステージとすることができる。
【0016】
また、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、駆動手段が、摺動部品に着脱可能に取り付けられ、操作者が把持することで摺動部品を所望の位置にスライド操作する加力棒であることが好ましい。これにより、操作者は、把持し易い加力棒によりアリ溝摺動ステージを直接スライド操作することができ、アリ溝摺動ステージの操作性を向上することができる。
【0017】
また、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、固定部品に着脱可能に取り付けられ、操作者が加力棒により摺動部品を所望の位置にスライド操作する際に他の指により反力を取る反力棒を更に備えることが好ましい。これにより、操作者は、加力棒と反力棒とを一対の操作用器具として用いることができ、例えば、力を加えて大きく移動させなければならない場合、微妙な力加減を加えて調整しなければならない場合などに効果が発揮される。
【0018】
また、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、摺動方向に略平行な、或いは摺動方向に略直交する側面壁の固定部品には、反力棒が着脱可能なタップ孔が複数箇所に設けられることが好ましい。これにより、操作者は、アリ溝摺動ステージの操作に応じて反力棒の位置を摺動方向に略平行な側面側の固定部品或いは摺動方向に略直交する側面側の固定部品に任意に設定することができる。また、反力棒の位置を複数箇所設定することもでき、アリ溝摺動ステージの摺動操作の操作性を向上させることができる。
【0019】
また、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、駆動手段が、摺動方向と略平行な摺動部品の側面壁に着脱可能に設けられ、操作者が把持することで摺動部品を所望の位置にスライド操作する滑り止めラバーであることが好ましい。これにより、操作者は、滑り止めラバーを挟み込んで把持することによりアリ溝摺動ステージを直接スライド操作することができ、アリ溝摺動ステージの操作性が向上する。
【0020】
また、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、滑り止めラバーが、摺動部品の左右の側面壁に一対となるように貼り付けられることが好ましい。これにより、摺動部品を滑ることなく強固に掴むことができ、アリ溝摺動ステージの操作性が向上する。
【0021】
さらに、スライド操作式アリ溝摺動ステージは、摺動方向と略平行な固定部品及び摺動部品の相互に隣接する側面壁には、一対の目盛シールが貼り付けられることが好ましい。これにより、従来、目盛板をピンにより固定していたが目盛シールを貼って固定することで簡易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージによれば、簡易な駆動手段にすることで操作性が良くコンパクトな構造が可能となるスライド操作式アリ溝摺動ステージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージの1つの実施形態を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【図2】スライド操作式アリ溝摺動ステージの他の実施形態を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【図3】スライド操作式アリ溝摺動ステージの他の実施形態を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【図4】すべり止めラバーを用いたスライド操作式アリ溝摺動ステージの実施形態を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【図5】長尺型スライド操作式アリ溝摺動ステージの実施例を示す正面図、背面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【図6】スライド操作式アリ溝摺動ステージを高さ方向(Z方向)に摺動させるZ軸摺動ステージの実施例を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、及び平面図である。
【図7】2台のスライド操作式アリ溝摺動ステージを交差する方向(X方向及びY方向)に連結させたXY軸ステージの実施例を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を用いて本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ1の実施形態につき、詳細に説明する。従来のアリ溝摺動ステージは、駆動手段としてラック及びピニオンギアを用いたラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージ、及び駆動手段として雄ネジ棒及び雌ネジ筒を用いた送りネジ式アリ溝摺動ステージが一般的であった。そして、ラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージでは、ピニオンギアをハンドルにより回転させることでラックを直進させて摺動部品をスライドさせ、精密機器の位置調整が行われる。また、送りネジ式アリ溝摺動ステージでは、雄ネジ棒をハンドルにより回転させることで雌ネジ筒を直進させて摺動部品をスライドさせ、精密機器の位置調整が行われる。従って、ラックアンドピニオン式アリ溝摺動ステージ及び送りネジ式アリ溝摺動ステージにおいては、ハンドルは駆動手段として必須の構成要素であった。
【0025】
しかし、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ1では、ハンドルを構成要素から除外し、台形状に窪んだアリ溝4と、台形状に突出したアリ5とを嵌合させ、後述するように、加力棒、反力棒、滑り止めラバーといった駆動手段を用いて手動によるスライド操作で固定部品3に対して摺動部品2を摺動させる。つまり、従来のアリ溝摺動ステージでは、ハンドルの回転運動を固定部品3に対する摺動部品2の直進運動に変換していたが、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ1では、手動によるスライド操作で直接固定部品3に対する摺動部品2の直進運動を発生させる。以下、この駆動手段について具体的な実施形態、及び実施例を用いて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1に、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ1の第1実施形態を平面図(図1(a))、底面図(図1(b))、左側面図(図1(c))、右側面図(図1(d))、正面図(図1(e))及び背面図(図1(f))で示す。スライド操作式アリ溝摺動ステージ1は、摺動部品2と固定部品3とから構成され、台形状に窪んだアリ溝4と、台形状に突出したアリ5とを嵌合させて固定部品3に対して摺動部品2を摺動させる。このように、アリ溝4とアリ5とを精度よく嵌合させることで、摺動部品2は固定部品3に対して直線的に滑らかに摺動する。
【0027】
そして、摺動部品2の側面壁(図1(c))に取り付けられた目盛シール17a及び固定部品3の側面壁(図1(c))に取り付けられた目盛シール17bにより固定部品3に対する摺動部品2の移動量が読み取られる。この目盛シール17a,17bは、目盛が印字されたシールを摺動部品2及び固定部品3の側面壁(図1(c))に貼り付けたものである。従来、摺動部品2及び固定部品3の側面壁(図1(c))には、目盛が印字された目盛板をビスにより固定していたが、このように目盛シール17a,17bを貼って固定することで簡易な構成とすることができる。
【0028】
図1(a)に示すように、摺動部品2の平面には精密機器取付け孔18が設けられ、精密機器(図示せず)が取り付けられる。また、図1(b)に示すように、固定部品3の底面には土台固定用締結孔19aが設けられ、スライド操作式アリ溝摺動ステージ1は土台(図示せず)に締結される。このように、精密機器が取り付けられた摺動部品2を土台に固定された固定部品3に対してスライド操作させることで、精密機器の位置調整を行うことができる。
【0029】
図1(e),(f)に摺動固定ネジ6を示す。摺動固定ネジ6は、摺動方向と略平行な摺動部品2の側面壁(図1(d))に設けられる。そして、固定部品3に連結する逆三角形の突出部10を摺動固定ネジ6の先端で当接して摺動部品2のアリ5に接触させる。そして、この摺動固定ネジ6を締め込むことで摺動部品2の摺動を固定する。なお、この突出部10は、固定部品3との間に溝部11が切られることで容易に撓む逆三角形となる。摺動固定ネジ6には、その構成により、例えば、つまみネジ式とレバー式などがあるが、本実施形態では図1(e),(f)に示すつまみネジ式の摺動固定ネジ6が用いられる。このつまみネジ式の摺動固定ネジ6は、逆三角形の突出部10に当接して摺動部品2のアリ5に接触させる摺動固定ネジ6の回転量を調節することで固定部品3に対する摺動部品2の摺動の程度を微調整する摺動調節ネジ7として兼用できる。これにより、操作者は、摺動部品2の摺動を固定する機能と摺動部品2の摺動の程度を調整する機能とを摺動固定ネジ6に一元的に集約することができる。例えば、摺動部品2の固定を解除した後、同じ摺動固定ネジ6について連続的に摺動部品2の摺動の程度を微調整することができる。但し、摺動方向と略平行な摺動部品2の側面壁(図1(d))には、摺動調整用ネジ孔20が設けられても良い。この摺動調整用ネジ孔20に摺動調節ネジ7(図示せず)が取り付けられ、摺動固定ネジ6と機能を分担しても良い。
【0030】
さらに、操作者はこの摺動固定ネジ6を、摺動部品2を所望の位置にスライド操作するために把持する駆動手段である加力棒8として兼用することができる。これにより、操作者は、摺動部品2の摺動を固定する機能と摺動部品2の摺動の程度を調整する機能と、摺動部品2を把持してスライド操作する機能を摺動固定ネジ6に一元的に集約することができる。例えば、摺動部品2の固定を解除し、摺動部品2の摺動の程度を微調整した後、同じ摺動固定ネジ6で引き続き摺動部品2を素早く移動させる、或いは、摺動部品2を細かく移動させるといったスライド操作をすることができる。なお、この加力棒8は、着脱可能であり、不要な場合には外しておくこともできる。
【0031】
更に、固定部品3に取り付けられ、操作者が摺動固定ネジ6を加力棒8として用いて摺動部品2を所望の位置にスライド操作させる際に他の指により反力を取る反力棒9を備える。これにより、操作者は、加力棒8として用いる摺動固定ネジ6と反力棒9とを一対の操作用器具として用いることができ、例えば、力を加えて大きく移動させなければならない場合、微妙な力加減を加えて調整しなければならない場合などに効果が発揮される。また、摺動方向と略平行な固定部品3の側面壁(図1(d))には、反力棒9が取り付け可能な反力棒用タップ孔12が設けられる。このように、反力棒9の取り付け位置が選択でき、反力棒9を複数箇所に取り付けることも可能である。なお、この反力棒9は、加力棒8と同様に着脱可能であり、不要な場合には外しておくこともできる。
【0032】
(第2実施形態)
図2に、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ100の第2実施形態を平面図(図2(a))、底面図(図2(b))、左側面図(図2(c))、右側面図(図2(d))、正面図(図2(e))及び背面図(図2(f))で示す。図2(e),(f)に摺動固定ネジ106を示す。この摺動固定ネジ106は、摺動方向と略平行な固定部品103の側面壁(図2(d))に設けられる。そして、固定部品103に連結する逆三角形の突出部10を摺動固定ネジ106で当接して摺動部品102のアリ5に接触させる。この摺動固定ネジ106を締め込むことで摺動部品102の摺動を固定する。なお、この突出部10は、固定部品103との間に溝部11が切られることで容易に撓み易い逆三角形となる。摺動固定ネジ106には、その構成により、例えば、つまみネジ式とレバー式などがあるが、本実施形態では図2(e),(f)に示すレバー式の摺動固定ネジ106が用いられる。また、図2(a)に示すように、摺動部品102の平面には精密機器取付け孔18が設けられ、精密機器(図示せず)が取り付けられる。また、図2(b)に示すように、固定部品103の底面には土台固定用締結孔19aが設けられる。また、固定部品103の側面壁(図2(c))に取り付けられた目盛シール17a及び摺動部品102の側面壁(図2(c))に取り付けられた目盛シール17bにより固定部品103に対する摺動部品102の移動量が読み取られる。
【0033】
また、摺動方向と略平行な摺動部品102の側面壁(図2(c))には、操作者が摺動部品102を所望の位置にスライドさせるために把持する駆動手段である加力棒108が取り付けられる。さらに、摺動方向に略平行な側面側(図2(c))の固定部品103には、操作者が加力棒108により摺動部品102を所望の位置にスライド操作する際に他の指により反力を取る反力棒109が取り付けられる。この加力棒108及び反力棒109により、操作者は、摺動部品102を容易に所望の位置にスライド操作することができる。また、摺動方向と略平行な摺動部品102の側面壁(図2(d))には、加力棒108が取り付け可能な加力棒用タップ孔21が設けられ、摺動方向と略直交する摺動部品102の側面壁(図2(e),(f))には、加力棒108が取り付け可能な加力棒用タップ孔21が設けられる。同様に、摺動方向と略平行な固定部品103の側面壁(図2(d))には、反力棒109が取り付け可能な反力棒用タップ孔22が設けられ、摺動方向と略直交する固定部品103の側面壁(図2(e),(f))には、反力棒109が取り付け可能な反力棒用タップ孔22が設けられる。このように、加力棒108及び反力棒109は、それぞれ摺動部品102及び固定部品103の側面壁に複数箇所取り付けることができる。なお、これらの加力棒108は加力棒用タップ孔21に着脱自在に取り付けられる。また、これらの反力棒109は、反力棒用タップ孔22に着脱自在に取り付けられる。従って、不要な場合には、外しておくことも可能である。さらに、摺動方向と略平行な摺動部品102の側面壁(図2(d))には、摺動調整用ネジ孔20が設けられ、摺動調整ネジが取り付けられても良い。
【0034】
(第3実施形態)
図3に、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ200の第3実施形態を平面図(図3(a))、底面図(図3(b))、左側面図(図3(c))、右側面図(図3(d))、正面図(図3(e))及び背面図(図3(f))で示す。本実施形態では、摺動部品202に固定されたラックと固定部品203により支持されたピニオンギアとを係合させて駆動し、固定部品203に対して摺動部品202を摺動させて精密機器の位置調整を行う。そして、ピニオンギアを押さえつけてラック及びピニオンギアの与圧の程度を接触摩擦により調整する与圧調整ネジ23を備える。この与圧調整ネジ23により、摺動調整ネジとは異なる機構によりスライド操作の程度が調整できる。
【0035】
図3(e),(f)に摺動固定ネジ206を示す。この摺動固定ネジ206は、摺動方向と略平行な摺動部品202の側面壁(図3(c))に設けられる。摺動固定ネジ206には、その構成により、例えば、つまみネジ式とレバー式などがあるが、本実施形態では図3(e),(f)に示すレバー式の摺動固定ネジ206が用いられる。本実施形態では、摺動固定ネジ206は、固定部品203に止められた押さえ板27(図3(c))と共に用いて固定部品203に対する摺動部品202の移動を固定する。すなわち、摺動固定ネジ206は、押さえ板27に明けられた開口28に挿入される。そして、摺動固定ネジ206を締め込むと押さえ板27が摺動部品202に押し付けられ、摩擦力により固定部品203に対して摺動部品202をその位置に固定する。従って、本実施形態では、固定部品103に連結する逆三角形の突出部は設けられない。
【0036】
図3(a)に示すように、摺動部品202の平面には精密機器取付け孔18が設けられ、精密機器(図示せず)が取り付けられる。また、図3(b)に示すように、固定部品203の底面には土台固定用締結孔19aが設けられる。また、固定部品203の側面壁(図3(d))に取り付けられた目盛シール17a及び摺動部品202の側面壁(図3(d))に取り付けられた目盛シール17bにより固定部品203に対する摺動部品202の移動量が読み取られる。
【0037】
摺動方向と略平行な摺動部品202の側面壁(図2(c))には、操作者が摺動部品202を所望の位置にスライドさせるために把持する駆動手段である加力棒208が取り付けられる。さらに、摺動方向に略平行な側面側(図2(d))の固定部品203には、操作者が加力棒208により摺動部品202を所望の位置にスライド操作する際に他の指により反力を取る反力棒209が取り付けられる。この加力棒208及び反力棒209により、操作者は、摺動部品202を容易に所望の位置にスライド操作することができる。また、摺動方向と略直交する摺動部品202の側面壁(図3(e),(f))には、加力棒208が取り付け可能な加力棒用タップ孔21が設けられる。同様に、摺動方向と略直交する固定部品203の側面壁(図3(e),(f))には、反力棒209が取り付け可能な反力棒用タップ孔22が設けられる。このように、加力棒208及び反力棒209は、それぞれ摺動部品202及び固定部品203の側面壁に複数箇所取り付けることができる。なお、これらの加力棒208は加力棒用タップ孔21に着脱自在に取り付けられる。また、これらの反力棒209は、反力棒用タップ孔22に着脱自在に取り付けられる。従って、不要な場合には、外しておくことも可能である。
【0038】
(第4実施形態)
図4に、本発明に係るスライド操作式アリ溝摺動ステージ300の第4実施形態を平面図(図4(a))、底面図(図4(b))、左側面図(図4(c))、右側面図(図4(d))、正面図(図4(e))及び背面図(図4(f))で示す。本実施形態では、上述した第2実施形態と比較して駆動手段が異なるが、それ以外の構成要素は同様であるため説明を省略する。本実施形態の駆動手段は、摺動方向と略平行な摺動部品302の側面壁に設けられ、操作者が把持することで摺動部品302を所望の位置に摺動させる滑り止めラバー14である。これにより、摺動部品302を滑ることなく強固に掴むことができ、アリ溝摺動ステージの操作性が向上する。また、この滑り止めラバー14は、摺動部品302の側面壁の左右に一対となるように貼り付けられる。これにより、一対の滑り止めラバー14を挟み込んで把持することで摺動部品302を強固に掴むことができる。なお、この滑り止めラバー14は、上述した第1実施形態においても駆動手段として用いることが可能である。さらに、摺動方向と略平行な摺動部品302の側面壁(図4(d))には、摺動調整用ネジ孔20が設けられ、摺動調整ネジが取り付けられても良い。

【0039】
(実施例1)
図5に、長尺型スライド操作式アリ溝摺動ステージ400の実施例を平面図(図5(a))、底面図(図5(b))、右側面図(図5(c))、正面図(図5(d))及び背面図(図5(e))で示す。本実施例は、上述した第1実施形態のバリエーションである。すなわち、固定部品403が長尺であり、それにより摺動部品402の移動距離が長いアリ溝摺動ステージの場合である。操作者は、摺動部品402の摺動を固定する機能と摺動部品402の摺動の程度を調整する機能と、摺動部品402を把持してスライド操作する機能を摺動固定ネジ406に一元的に集約することができる。また、操作者は、加力棒として用いる摺動固定ネジ406と反力棒409とを一対の操作用器具として用い、スライド操作をすることができる。
【0040】
(実施例2)
図6に、スライド操作式アリ溝摺動ステージ500を高さ方向(Z方向)に摺動させるZ軸摺動ステージの実施例を平面図(図6(a))、左側面図(図6(b))、右側面図(図6(c))、正面図(図6(d))及び背面図(図6(e))で示す。本実施例は、第1実施形態のバリエーションであり、固定部品503が長尺であり、摺動部品502の移動距離が長いアリ溝摺動ステージの場合である。操作者は、摺動部品502の摺動を固定する機能と摺動部品502の摺動の程度を調整する機能と、摺動部品502を把持してスライド操作する機能を摺動固定ネジ506に一元的に集約することができる。また、操作者は、加力棒として用いる摺動固定ネジ506と反力棒509とを一対の操作用器具として用い、スライド操作をすることができる。
【0041】
(実施例3)
図7に、2台のスライド操作式アリ溝摺動ステージ600を交差する方向(X方向及びY方向)に連結させたXY軸ステージの実施例を平面図(図7(a))、底面図(図7(b))、左側面図(図7(c))、右側面図(図7(d))、正面図(図7(e))及び背面図(図7(f))で示す。本実施例は、上述した第1実施形態のバリエーションである。すなわち、第1実施形態のスライド操作式アリ溝摺動ステージ1を2台用意し、交差するX軸方向及びY軸方向に向けて上下方向に連結した場合である。操作者は、摺動部品602の摺動を固定する機能と摺動部品602軸の摺動の程度を調整する機能と、摺動部品602を把持してスライド操作する機能を摺動固定ネジ606に一元的に集約することができる。また、操作者は、加力棒として用いる摺動固定ネジ606と反力棒609とを一対の操作用器具として用い、スライド操作をすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1,100,200,300,400,500,600 スライド操作式アリ溝摺動ステージ、2,102,202,302,402,502,602a,602b 摺動部品、3,103,203,303,403,503,603 固定部品、4 アリ溝、5 アリ、6,106,206,306,406,506,606a (つまみネジ式)摺動固定ネジ、606b (レバー式)摺動固定ネジ、7 摺動調整ネジ、8,108,208,308,408,508,608 加力棒、9,109,209,309,409,509,609a,609b 反力棒、10 突出部、11 溝部、12 タップ孔、14 滑り止めラバー、15 つまみ部、17a,17b 目盛シール、18 精密機器取付け孔、19a,19b 土台固定用締結孔、20 摺動調整用ネジ孔、21 加力棒用タップ孔、22 反力棒用タップ孔、23 与圧調整ネジ、24 摺動調整用ネジ孔、25 支持柱、26 支持ベース、27 押さえ板、28 開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させて固定部品に対して摺動部品を摺動させ、駆動手段により摺動部品をスライド操作することで、精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージにおいて、
摺動方向と略平行な固定部品の側面壁に設けられ、固定部品に連結する逆三角形の突出部をネジで当接して摺動部品のアリに接触させ、ネジを締め込むことで摺動部品の摺動を固定する摺動固定ネジを備え、
前記摺動固定ネジは、前記逆三角形の突出部に当接して摺動部品のアリに接触させるネジの回転量を調節することで固定部品に対する摺動部品の摺動の程度を微調整する摺動調節ネジ、及び、操作者が摺動部品を所望の位置にスライド操作するために把持する駆動手段、として兼用されることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項2】
台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させて固定部品に対して摺動部品を摺動させ、駆動手段により摺動部品をスライド操作することで、精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージにおいて、
摺動方向と略平行な固定部品の側面壁に設けられ、固定部品に連結する逆三角形の突出部をネジで当接して摺動部品のアリに接触させ、レバーにより締め込むことで摺動部品の摺動を固定する摺動固定ネジと、
摺動方向と略平行な摺動部品の側面壁に設けられ、操作者が摺動部品を所望の位置にスライド操作するために把持する駆動手段と、
を備えることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項3】
台形状に窪んだアリ溝と、台形状に突出したアリとを嵌合させ、摺動部品に固定されたラックと固定部品により支持されたピニオンギアとを係合して駆動させ、固定部品に対して摺動部品を摺動させて精密機器の位置調整を行うアリ溝摺動ステージにおいて、
ピニオンギアを押さえつけてラック及びピニオンギアの与圧の程度を接触摩擦により調整する与圧調整ネジと、
摺動方向と略平行な摺動部品の側面壁に設けられ、操作者が摺動部品を所望の位置にスライド操作する際に把持する駆動手段と、
を備えることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、前記駆動手段は、摺動部品に着脱可能に取り付けられ、操作者が把持することで摺動部品を所望の位置にスライド操作する加力棒であることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項5】
請求項4に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、固定部品に着脱可能に取り付けられ、操作者が加力棒により摺動部品を所望の位置にスライド操作する際に他の指により反力を取る反力棒を更に備えることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項6】
請求項5に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、摺動方向に略平行な側面側の固定部品には、加力棒又は反力棒が着脱可能なタップ孔が複数箇所に設けられることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項7】
請求項5に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、摺動方向に略直交する側面壁の固定部品には、加力棒又は反力棒が着脱可能なタップ孔が複数箇所に設けられることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項8】
請求項2又は3に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、前記駆動手段は、摺動方向と略平行な摺動部品の側面壁に着脱可能に設けられ、操作者が把持することで摺動部品を所望の位置にスライド操作する滑り止めラバーであることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項9】
請求項8に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、前記滑り止めラバーは、摺動部品の左右の側面壁に一対となるように貼り付けられることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスライド操作式アリ溝摺動ステージであって、摺動方向と略平行な固定部品及び摺動部品の相互に隣接する側面壁には、一対の目盛シールが貼り付けられることを特徴とするスライド操作式アリ溝摺動ステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233808(P2012−233808A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103275(P2011−103275)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【特許番号】特許第4830053号(P4830053)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(506177268)株式会社ミラック光学 (14)
【Fターム(参考)】