説明

スライド支持機構

【課題】 車両のシートをフロア上で前後にスライド可能に支持するためのスライド支持構造において、従来スライド溝をシールゴムやファスナーで覆うことにより異物の侵入を防止していたが、シールゴムでは隙間が空いて異物が侵入するおそれがあり、ファスナーは露出された車室内における見栄えが損なわれる問題があった。本発明では見栄えのよいスライド支持構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 スライド溝12aを覆うファスナー20をカーペット30の端縁部30b,30bで覆って露出されないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両の室内に搭載されるシートを例えば車両前後方向にスライドさせてシートポジションを調整可能とするスライド支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用シートは、そのシートポジションを調整可能とするためシートトラックと称されるスライド支持機構を介して車両前後方向にスライド可能な状態で車両フロア上に支持されている。
従来、このスライド支持機構40は、例えば図4及び図5に示すようにシート本体41を支持するシートフレーム42側に取り付けたスライドブラケット43を、車両フロアF側に設けたスライドレール44に沿って移動可能に支持したもので、このスライドレール44にはその内部にゴミ等の異物が侵入しないようシールゴム片45,45が取り付けられていた。
図示するようにシールゴム片45,45は、スライドブラケット43を両側から挟む状態で取り付けられている。両シールゴム片45,45は、スライドレール44の左右側部に沿って取り付けたモール46の一方の張り出し縁46aに沿って固定されている。
モール46のもう一方の張り出し縁46bによってフロアFに敷かれたカーペット47の端縁部47aがフロアFから浮き上がらないように固定されている。
このように左右対向して取り付けられたシールゴム片45,45は、スライドブラケット43のスムーズな移動を阻害しないよう相互に開きやすい状態(口を開けやすい状態)に取り付けられていた。このため、左右のシールゴム片45,45間の隙間からゴミや埃等の異物がスライドレール44内に侵入し、あるいは堆積しやすく、このため当該スライド支持機構40の動作不良を招くおそれがあった。
【0003】
従来、この問題を解消するため、例えば実開平7−35162号公報に開示されているように上記シールゴム片45,45に代えてファスナー(ジッパー)を用いる技術が提供されている。この場合、相互に対向する二つのスライダを有するファスナーが用いられる。このファスナーシール式のスライド支持機構によれば、当該ファスナーを構成する一対のテープをスライドレールの上面左右端部に沿って固定し、両テープ間にスライドブラケットを位置させ、このスライドブラケットの前部及び後部にそれぞれスライダーを固定した構成となっている。
この構成によれば、スライドブラケットの移動に伴って当該ファスナーが開閉され、かつスライドブラケットの前方及び後方(スライドブラケットの位置する範囲を除いて)が常時左右のテープによって閉じられるので、スライドブラケットのスムーズな移動を確保しつつ、スライドレール内への異物の落下を防止することができる。
【特許文献1】実開平7−35162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のファスナーを用いたスライド支持機構では、前記シールゴム片45,45を用いる場合と同様、単にモール46の張り出し縁46aで左右のテープをスライドレール44の上面との間に挟み込んで固定する構成であったので、両テープの噛み合い歯(接合部)が露出されて見栄えが悪く、また乗員の靴に付着した泥等によって汚れやすく、この点でも見栄えがよくないという問題があった。
そこで、本発明は、前記シールゴム片を用いた場合における異物の侵入をより確実に防止するためにファスナーを用いてスライドレールの上面を開閉するスライド支持機構であって、従来よりも見栄えよく、かつファスナーが汚れにくいスライド支持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、特許請求の範囲に記載した構成のスライド支持機構とした。
請求項1記載のスライド支持機構によれば、ファスナーは、スライド溝に挿入されたスライドブラケットが位置する範囲を除いて常時閉じられた状態に保持され、これによりスライド溝が閉じられてゴミ等の異物の侵入が防止される。
しかも、ファスナーの両テープがスライド溝の両側に沿って固定されるとともに、カーペットの端縁で覆われている。このため、従来のようにファスナーが露出されてその見栄えが損なわれることがなく、また車両乗員等の靴に付着した泥等によって当該ファスナーが汚れることが防止され、この点でも当該スライド機構の見栄えをよくすることができる。
請求項2記載のスライド支持機構によれば、スライド基台に対してカーペットを覆う際の作業性及びその取り扱い性をよくすることができる。スライド基台には、車両等その他の床面、壁面等であって、スライド体をスライド支持する部位を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。以下説明する実施形態では、車両用のシート本体1を車両前後方向に移動させてそのシートポジションを調整するためのスライド支持機構10を例にして説明する。図1に示すようにシート本体1は、シートクッション2とこれを下面側から受けるシートフレーム3とシートクッション2の後部から上方へ立ち上がる状態に支持されたシートバック4を備えている。図1において、右側が車両前方であり、左側が車両後方となる。
シートフレーム3の車幅方向(図1において紙面に直交する方向)の左右側部が以下説明する左右一対のスライド支持機構10,10によって車両フロアFに支持されている。このことから、本実施形態におけるシート本体1が特許請求の範囲に記載したスライド体の一例に相当し、車両フロアFがスライド基台の一例に相当する。
車両フロアFにはカーペット30が敷かれている。左右のスライド支持機構10,10は左右対称に構成されているので、以下図1及び図2に示すように代表として右側のスライド機構10について説明する。
シートフレーム3の前部及び後部の下面側にスライドブラケット11,11が取り付けられている。図1では、後部側のスライドブラケット11のみが示されている。前部側のスライドブラケット11も同様に構成されている。
このスライドブラケット11は、その下部側がカーペット30の切り欠き部30aを経て車両フロアFのスライド溝12a内に挿入されている。本例では、車両フロアF上に固定したスライドレール12の内側が上記スライド溝12aとされている。図2に示すようにスライドレール12は、断面C字形をなすもので、車両前後方向に沿って固定されている。スライドレール12の上面側に開口部12bが設けられている。この開口部12bの左右両側には平坦な側部上面12c,12cが設けられている。
スライドブラケット11の下部には、二つの支持ローラ13,13がそれぞれその軸回りに回転自在に支持されている。この支持ローラ13,13は、スライドレール12の底部12d上を転動する。二つの支持ローラ13,13を備えたスライドブラケット11がシートフレーム3の四隅に配置されることにより当該シート本体1が車両前後方向に一定の範囲でスライド可能に設けられている。
【0007】
スライドレール12の開口部12bは、ファスナー20によって閉じられる。このファスナー20は、スライダ21によって相互に噛み合わされ、又は離脱される噛み合い歯(務歯)22a〜22aを多数備えた左右一対のテープ22,22を備えており、その構成自体は通常用いられるファスナー(ジッパー)と同様である。
このファスナー20の左右のテープ22,22は、スライドレール12の上面であって開口部12bの左右に位置する側部上面12c,12cに沿って取り付けられている。図2に示すようにこのテープ22,22は、カーペット30の切り欠き部30aの両端縁部30b,30bの裏面側に沿って縫合されている。このため、図2に示すように両テープ22,22は、カーペット30の端縁部30b,30bによってほぼ完全に覆われた状態となっている。それぞれテープ22が縫合された切り欠き部30aの端縁部30b,30bは、それぞれクリップ31〜31によって、スライドレール12の側部上面12cに固定されている。このため、両テープ22,22は、カーペット30の端縁部30bとスライドレール12の側部上面12cとの間に挟み込まれた状態で固定されている。
カーペット30の切り欠き部30aは、スライドレール12の開口部12bに沿って設けられている。この切り欠き部30a、両テープ22,22間を経てスライドブラケット11の下部側がスライド溝12a内に進入している。このことから、スライドブラケット11は、カーペット30の両端縁部30b,30b及びファスナー20の両テープ22,22間に挟まれている。
【0008】
次に、図1に示すようにファスナー20は二つのスライダ21,21を有している。二つのスライダ21,21は相互に向かい合わされている。このため、ファスナー20は、二つのスライダ21,21が相互に離間するとその間が開かれ、接近して当接すると全範囲が閉じられる。
二つのスライダ21,21のうち、一方のスライダ21はスライドブラケット11の前端に固定され、他方のスライダ21は同じくスライドブラケット11の後端に固定されている。両スライダ21,21は、それぞれの引き手部21aを、スライドブラケット11の前端部及び後端部に設けたフック部11a,11aに引き掛けることにより固定されている。なお、両引き手部21a,21aをスライドブラケット11に固定するための手段については、その他ビスあるいはクリップ等のその他の固定手段を用いることができる。
二つのスライダ21,21のそれぞれの引き手部21a,21aがスライドブラケット11の前端部及び後端部に固定されていることから、両スライダ21,21間においてファスナー20は常時開かれており、この常時開かれた範囲を経てスライドブラケット11がスライドレール12内に進入している。また、両スライダ21,21間を除く範囲では、当該ファスナー20は常時閉じられた状態となる。
さらに、両スライダ21,21のそれぞれの引き手部21aがスライドブラケット11の前端部及び後端部に固定されていることから、シート本体1の移動(シートポジションの調整)に伴ってスライドブラケット11が車両前方(図1において右方)あるいは車両後方(図1において左方)へ移動すると、両スライダ21,21が一体で同じ方向へ移動する。二つのスライダ21,21が同じ方向へ移動するので、一方のスライダ21によりファスナー20が開かれ、他方のスライダ21によりファスナー20が閉じられ、これにより当該スライドブラケット11の移動を許容しつつ、当該ファスナー20の当該スライドブラケット11の前方及び後方が常時閉じられた状態に維持される。
【0009】
以上のように構成した本実施形態のスライド支持機構10によれば、シート本体1側のスライドブラケット11をスライド支持するスライド溝12aがファスナー20によって常時閉じられた状態に保持される。このため、スライド溝12a内への異物の侵入が防止される。また、ファスナー20の二つのスライダ21,21がスライドブラケット11の全端部及び後端部に固定されていることから、スライドブラケット11の移動(シート本体1のシートポジションの調整)に伴って両スライダ21,21が一体で自動的に移動し、これによりシートブラケット11の前方及び後方においてスライド溝12aがファスナー20によって常時塞がれた状態に維持される。
さらに、本実施形態のスライド支持機構10によれば、ファスナー20の両テープ22,22及び噛み合い歯22a〜22aの全体がそれぞれカーペット30の端縁部30bによって覆われていることから、従来これらが露出された構成に比して当該スライド支持機構10の見栄えをよくすることができる。また、当該テープ22,22及び噛み合い歯22a〜22aが車室内において露出されず、カーペット30の端縁部30bによって覆われているので、乗員の靴等に付着した泥等が付着することを防止することができ、この点でもその見栄えをよくすることができるとともに、当該ファスナー20ひいてはスライド支持機構10の作動不良を未然に防止することができる。
また、本実施形態のスライド支持機構10によれば、ファスナー20の両テープ22,22がそれぞれカーペット30の端縁部30bの裏面に予め縫合されているので、当該スライド支持機構10の組み付け時におけるその取り扱い性をよくすることができる。
【0010】
以上説明した実施形態に種々変更を加えることができる。例えば、カーペット30の端縁部30bの裏面にファスナー20のテープ22を縫い付ける構成を例示したが、接着剤で接着する構成としてもよい。
また、クリップ31を用いて、カーペット30の端縁部30bをスライドレール12の側部上面12cに固定する構成を例示したが、これに代えてビスあるいは接着剤を用いてカーペット30の端縁部30b及びファスナー20をスライドレール12の側部上面12cに固定する構成としてもよい。
さらに、シート本体1を車両前後方向に移動させるスライド支持機構10を例示したが、車幅方向に移動させる場合にも同様に適用することができる。
また、スライド体としての車両用シート本体1をスライド基台としての車両フロアF上にスライド支持するためのスライド支持機構を例示したが、スライド体あるいはスライド基台は、シート本体1あるいは車両フロアF上に限らず、物品トレーや物品収納ボックスを壁部あるいはルーフ部にスライド支持するためのスライド支持機構あるいはその他のスライド体のスライド支持構造等に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るスライド支持構造の側面図である。
【図2】図1の(2)-(2)線断面矢視図であって、スライド支持構造の縦断面図である。
【図3】スライド支持構造の後部の斜視図である。本図では、シート本体及びカーペットの図示が省略されている。
【図4】従来のシールゴム式のスライド支持構造の斜視図である。
【図5】図4の(5)-(5)線断面矢視図であって、従来のシールゴム式のスライド支持構造の縦断面図である。
【符号の説明】
【0012】
F…車両フロア
1…シート本体
2…シートクッション
3…シートフレーム
4…シートバック
10…スライド支持機構
11…スライドブラケット、11a…フック部
12…スライドレール
12a…スライド溝、12b…開口部、12c…側部上面、12d…底部
13…支持ローラ
20…ファスナー
21…スライダ、21a…引き手部
22…テープ、22a…噛み合い歯
30…カーペット
30a…切り欠き部、30b…端縁部
31…クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットで覆われたスライド基台にスライド溝が設けられ、該スライド溝内に挿入したスライドブラケットを介してスライド体が前記スライド溝に沿ってスライド可能に支持され、前記スライド溝の両側に沿ってファスナのテープを取り付け、該両テープを開閉する二つのスライダの一方を前記スライドブラケットの前部に固定し、他方を該スライドブラケットの後部に固定して、該スライドブラケットの移動に伴う前記スライダの移動により前記両テープを相互に開閉して前記スライド溝を開閉するスライド支持機構において、
前記ファスナの両テープが、それぞれ前記カーペットの端縁で覆われたスライド支持機構。
【請求項2】
請求項1記載のスライド支持機構であって、前記両テープをカーペットの端縁裏面に縫合して取り付けたスライド支持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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