説明

スライド画像データ作成装置

【課題】試料の必要部分を顕微鏡により撮影したスライド画像データを高速かつ自動的に生成することができるスライド画像データ作成装置を提供すること。
【解決手段】スライド画像データ作成装置は、顕微鏡10に備え付けられたカメラ11、スライドガラス17を保持し、3次元方向に移動可能な試料搬送機構21〜27、試料をX、Y、Z軸方向に順次移動させながらカメラ11を制御して複数の高倍率画像を撮影し、複数画像の貼り合わせ情報を生成して、1つのファイルに格納するパソコン13を備える。外部のデジタルカメラ12を備えてもよい。本発明によれば、顕微鏡画像を高速に撮影することが可能であり、画像データを1つのファイルに格納することによって閲覧時に多数の画像ファイルを開いて処理する必要がなく、多量のメモリも不要で、高速に処理や表示ができる。また、試料の3次元の構造が判別可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド画像データ作成装置およびスライド画像データに関し、特に病理組織学検査や血液学検査、遺伝子検査、細胞学検査等において、試料を入れたプレパラート(スライドガラス)を顕微鏡にセッティングして高倍率で撮影し、スライド画像データを生成して管理するスライド画像データ作成装置および生成されるスライド画像データに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病理組織学、血液学、遺伝子検査学の顕微鏡検査等においては、採取した病理組織や細胞や血液等の試料を顕微鏡に装備した撮像装置によって撮影し、その画像をコンピュータに取り込んで、ディスプレイ上で観察できる画像データを作成することが行われている。例えば、下記特許文献1には、上記したような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−222801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のシステムにおいては、試料の顕微鏡による画像を撮影するのに時間がかかり、画像の撮影時や閲覧時に多数の画像ファイルを開いて処理するために多量のメモリが必要であり、かつ処理時間がかかるなどの問題点があった。また、基本的に2次元の画像情報しか撮影できないので、撮影した画像から顕微鏡の光軸と並行なZ軸方向の試料の構造を判別することはできないという問題点もあった。
本発明は、前記したような従来技術における問題点を解消し、試料の必要部分を顕微鏡により高倍率で撮影した複数の画像を含むスライド画像データを高速かつ自動的に生成することができるスライド画像データ作成装置および生成されるスライド画像データを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスライド画像データ作成装置は、顕微鏡に備え付けられ、高倍率画像を撮影するデジタル撮影手段と、試料を保持し、3次元方向に移動可能な試料搬送手段と、前記試料搬送手段を制御して、画像が他の画像と重なる部分であるのりしろ部が存在するように試料を顕微鏡の光軸と垂直方向に順次移動させながら前記デジタル撮影手段を制御して複数の高倍率画像を撮影する撮影制御手段と、複数の高倍率画像から画像処理により前記のりしろ部を認識し、複数の高倍率画像の貼り合わせ情報を生成する貼り合わせ情報生成手段と、複数の高倍率画像を前記貼り合わせ情報と共に1つのファイルに格納する画像ファイル生成手段とを備えたことを主要な特徴とする。
【0006】
また、前記したスライド画像データ作成装置において、顕微鏡の光軸と並行な方向にも微細に移動させながら、所定間隔で複数の画像を撮影する点にも特徴がある。また、前記したスライド画像データ作成装置において、顕微鏡の光軸と並行な方向において顕微鏡の焦点が合う位置を検出するフォーカス位置検出手段を備えている点にも特徴がある。
【0007】
また、前記したスライド画像データ作成装置において、更に、高倍率画像を貼り合わせた全体画像の縮小画像であるサムネイル画像を生成するサムネイル画像生成手段を備えた点にも特徴がある。また、前記したスライド画像データ作成装置において、更に、外部デジタルカメラ手段を備えた点にも特徴がある。また、前記したスライド画像データ作成装置において、前記外部デジタルカメラにより撮影された画像、前記複数の高倍率画像および前記貼り合わせ情報が1つの動画ファイルにまとめて収納されている点にも特徴がある。
【0008】
また、前記したスライド画像データ作成装置において、更に、前記外部デジタルカメラにより撮影された画像から高倍率画像を撮影する領域を自動的に決定する撮影領域自動認識手段を備えた点にも特徴がある。また、前記したスライド画像データ作成装置において、更に、複数のスライドガラスについて前記外部デジタルカメラにより撮影された画像を前記撮影領域自動認識手段により認識された撮影領域と共に一覧表示し、使用者が前記撮影領域を修正可能な撮影領域半自動認識手段を備えた点にも特徴がある。
また、前記したスライド画像データ作成装置において、更に、撮像された画像のファイルをデータベースに登録し、ネットワークを介して画像の検索および参照ができる画像公開手段を備えた点にも特徴がある。
本発明のスライド画像データは複数の高倍率画像データおよび画像の貼り合わせ情報が1つの動画ファイルにまとめて収納されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顕微鏡による撮影の必要な領域のみを高速に撮影することが可能であり、画像データを1つのファイルに格納することによって閲覧時に多数の画像ファイルを開いて処理する必要がなく、多量のメモリも不要で、高速に処理や表示ができるという効果がある。また、本発明によれば、焦点位置をZ軸方向にもスキャンして撮影することにより、試料の3次元の構造が判別可能である。例えば診断に必要な細胞の核の形状が真球か楕円球かというような判別が可能となる。更に、画像データをデータベースにより管理し、ネットワークやWebを通して、バーチャルスライド画像とその属性情報を閲覧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のスライド画像データ作成装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明において使用するスライドガラスの例を示す平面図である。
【図3】本発明のスライドガラス撮影装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明による全自動スライド作成処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】S16の高倍率画像撮影処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】S33のZ軸位置調整処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明によるビューア処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】ファイルの構造および表示される画像の例を示す説明図である。
【図9】本発明の第2実施例の半自動スライド作成処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明のスライド画像データ作成装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。本発明のスライド画像データ作成装置は、大きく分けて顕微鏡10を含むスライドガラス撮影装置とパソコン13からなる。また、パソコン13はLAN54を介してDB、Webサーバ50、DB(データベース)51、端末(PC)52と接続され、更にDB、Webサーバ50はルータ53、インターネット55を介して外部の端末(PC)56と接続されている。
【0013】
図3は、本発明のスライドガラス撮影装置の構成を示す平面図である。スライドガラス撮影装置は、基台20の上に固定された顕微鏡10およびデジタル(外部)カメラ12、スライドガラス収納マガジン30の駆動装置31、スライドガラスを保持し、移動させる3次元移動機構21〜28、モータ駆動装置16等を備えている。
【0014】
顕微鏡10は、試料を肉眼で観察する双眼の接眼レンズを有していると共に、パソコン13から制御可能なデジタル顕微鏡カメラ11を内蔵しており、顕微鏡カメラ11で撮影した試料の高倍率画像をデジタルデータとしてパソコン13に取り込み、後述するように画像データを編集してデータベース化し、所望の部分を表示装置14に表示できる。
【0015】
顕微鏡10は、基台20上に取り付けられた固定アタッチメントによって所定位置に固定されるようになっており、固定アタッチメントは、複数の製造メーカーの顕微鏡に適合できるように形状の異なる複数種類のものが用意されている。なお、この実施例においては、顕微鏡10の光軸は垂直方向である。
【0016】
デジタル(外部)カメラ12は、やはり基台20の上に固定されており、パソコン13からの制御に基づき、通常のカラー静止画像データをパソコン13に出力する。スライドガラス17の試料部分の全体画像であるルーペ画像の撮影および2次元バーコード42などの読み取りに使用される。
【0017】
3次元移動機構21〜28は、ステッピングモータ22により前後方向に移動可能な第1の可動フレーム23、ステッピングモータ24により左右方向に移動可能な第2の可動フレーム25、ステッピングモータ26により上下方向に移動可能な第3の可動フレーム27、第3の可動フレーム27に固着されたスライドガラス保持ハンド28を備える。
【0018】
そして、パソコン13からの制御に基づいてモータ駆動装置16によって各ステッピングモータが駆動されることにより、スライドガラス17をスライドガラス保持ハンド28で保持し、前後、左右および上下方向の任意の位置に移動可能に構成されている。
【0019】
3次元移動機構21〜28は、スライドガラス17をスライドガラス収納マガジン30から取り出して、デジタルカメラ12の下方および顕微鏡10の対物レンズ18と下方のコンデンサレンズ(図示せず)との間に移動させ、また、元のスライドガラス収納マガジン30内に戻す動作を自動的に行う。
【0020】
高倍率画像の撮影時には1枚の試料を多数の画像に分割して撮影する必要があるので、撮影すべき前後、左右方向の位置を合わせると共に、ピントの合う位置を中心とした上下方向の所定範囲についても第3の可動フレーム27を微小な長さだけ移動させながら複数枚の画像を撮影する。上下の移動は対物レンズ18との衝突が起こらないよう、可動範囲を2ミリメートル以内とし、その範囲内でフォーカスの調整を行う。
【0021】
スライドガラス収納マガジン30の駆動装置31は、パソコン13からの制御に基づいてモータ駆動装置16によってステッピングモータ32が駆動されることにより、スライドガラス収納マガジン30を上下に移動させる。駆動装置31にはスライドガラス収納マガジン30が着脱自在に装着されている。スライドガラス収納マガジン30には、スライドガラス保持溝が複数平行に並んで設けられており、複数のスライドガラス17を棚状に並べて収容できるように構成されている。
【0022】
パソコン13は、周知の標準的ハードウェアを備えたパソコンであり、表示装置14、キーボード15、マウス、LAN54等と接続されている。また、例えばUSBインターフェイスによって、顕微鏡カメラ11、デジタルカメラ12、モータ駆動装置16等と接続されている。パソコン13は、使用者の指示に基づき、後述する処理を実行する。
【0023】
図4は、本発明による全自動スライド作成処理の内容を示すフローチャートである。この処理はパソコン13により実行される。この処理を行う場合には、まず画像を撮影すべきスライドガラスをスライドガラス収納マガジン30に下から詰めてセットしておく。S10においては、使用者によって入力されたスライドガラス枚数情報を読み込む。S11においては、3次元移動機構21〜28を制御して未処理のスライドガラスを1枚取り出し、デジタルカメラ12の下へセットする。
【0024】
図2は、本発明において使用するスライドガラスの例を示す平面図である。スライドガラス17とカバーガラス45の間には標本が挟まれており、スライドガラス17の左上には、例えばスライドガラスの識別番号が記録されたQRコードなどの2次元バーコード42が貼付されている。S12においては、デジタルカメラ12を使用して2次元バーコード42を読み取る。
【0025】
S13においては、デジタルカメラ12を使用してルーペ画像を撮影する。ルーペ画像とは図2に点線46で示す範囲の画像であり、標本の領域全てを含んでいる。図2の右側にはルーペ画像を抜き出して表示してある。
【0026】
S14においては、撮影エリアを自動認識する。高倍率の顕微鏡カメラ11は撮影領域が狭いので、標本の領域全てを1枚の画像で撮影することはできない。そこで、図2の右側に示すように、ルーペ画像を格子状に複数の領域47に分割(図2では6×6)し、分割したそれぞれの領域47より少しだけ広い領域を高倍率の顕微鏡カメラ11によって撮影する。
【0027】
そして、スライドガラス上に標本組織が点在している場合には、処理の高速化とファイル容量を低減するために、必要な部分のみを自動的に抽出したマーク領域のみの撮影を行う。例えば図2右側の図において画像処理によって左端の列の分割画像には標本がないことを認識した場合には、左端の列の撮影を行わないようにする。あるいは、ルーペ画像から標本のある領域のみを抽出し、抽出した領域をカバーする範囲のみを高倍率の顕微鏡カメラ11によって撮影するようにしてもよい。
【0028】
S15においては、3次元移動機構21〜28を制御して、スライドガラス17を顕微鏡10の対物レンズ18の下に移動する。S16においては、後述する高倍率画像撮影処理を行う。この際に、高倍率画像を貼り合わせた全体画像の縮小画像であるサムネイル画像も生成される。
S17においては、ルーペ画像+サムネイル画像+高倍率画像を1つの動画像ファイルにまとめ、スライドガラスの識別番号と共にDB、Webサーバ50に備えられているDB50に登録、保存する。なお、DB50にはスライドガラスの識別番号と対応して対応する患者名などのその他の情報がすでに登録されているものとする。
【0029】
図8は、ファイルの構造および表示される画像の例を示す説明図である。動画像ファイル60は複数のフレームデータからなり、第1フレームには情報フレーム61が格納されている。情報フレーム61には、システム情報、マシン名、バージョン情報、撮影倍率、システム構成、カメラ名などの情報が格納されている。第2フレームにはルーペ画像63が格納されており、このフレームにはフレーム間の撮影位置情報も格納されている。最終フレームにはサムネイル画像70が格納されており、第3フレームから最終フレームの1つ前のフレームまでに高倍率画像が格納されている。
【0030】
図4に戻って、S18においては、3次元移動機構21〜28を制御してスライドガラスを元の位置に収納する。S19においては、未処理のスライドが有るか否かが判定され、判定結果が肯定の場合にはS11に移行するが、否定の場合には処理を終了する。
【0031】
図5は、S16の高倍率画像撮影処理の内容を示すフローチャートである。S30においては、顕微鏡カメラ11に露光時間、シャッタースピード、カラーバランス等について所望のパラメータを設定する。S31においては、Y軸(左右方向)の初期位置に移動させる。例えばルーペ画像の全ての領域を撮影する場合にはルーペ画像の最上段の分割画像が顕微鏡カメラ11の撮影領域に入る位置にスライドガラス17を移動させる。
【0032】
S32においては、X軸の初期位置に移動させる。例えばルーペ画像の全ての領域を撮影する場合にはルーペ画像の最左列の分割画像が顕微鏡カメラ11の撮影領域に入る位置にスライドガラス17を移動させる。S33においては、後述するZ軸位置調整処理を行い、焦点のZ軸位置を検出する。
【0033】
S34においては、Z軸の初期位置に移動させる。本発明においては、Z軸方向にも焦点の位置を中心とした所定の範囲について等間隔に位置を変えながら高倍率画像を撮影する。従って、S34においては、焦点位置から所定の長さだけ下方にスライドガラス17を移動させる。
【0034】
S35においては、顕微鏡カメラ11によって高倍率のカラー画像を撮影し、画像データを読み込む。S36においては、上下左右(XY軸方向)に他の高倍率画像がある場合には、それらの画像との重なり情報を生成する。重なり情報とは例えば他の画像と何画素分重なっているか、即ちどのピクセルを貼り合わせるのかを示す情報である。重なり情報は例えば重なる画素数を変えながら端部の画像の相関を取ることにより得られる。
【0035】
得られた重なり情報は画像データに付加して保存される。保存するファイルの形式は例えばJPEG2000に準拠した動画ファイル形式であってもよい。なお、重なり情報は高倍率画像自体に組み込む形をとっている。組み込まれている情報としては、重なり情報の他、AF(オートフォーカス)情報、ハードウェアの識別情報や撮影ソフトウェアのバージョン情報、X,Y,Zの位置情報などのシステム情報が格納されている。1枚の高倍率画像の画素数は例えば1280×1024であってもよい。更に、この際に高画質画像をつなぎ合わせたマーク領域全体の縮小画像であるサムネイル画像も生成する。
【0036】
S37においては、Z軸を1ステップ移動させる。1ステップの幅は例えば0.5ミクロンであってもよい。S38においては、Z軸が最終位置に達したか否かによりZ軸の処理が完了したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS35に移行するが、肯定の場合にはS39に移行する。
【0037】
S39においては、X軸を1ステップ移動させる。1ステップの幅は倍率によって変化し、例えば40倍では0.18ミリメートル程度となる。S40においては、X軸が最終位置に達したか否かによりX軸の処理が完了したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS35に移行するが、肯定の場合にはS39に移行する。
【0038】
S41においては、Y軸を1ステップ移動させる。S42においては、Y軸が最終位置に達したか否かによりY軸の処理が完了したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS35に移行するが、肯定の場合には処理を終了する。
【0039】
図6は、S33のZ軸位置調整処理の内容を示すフローチャートである。S50においては、Z軸位置調整処理の実行が初回か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS51に移行するが、肯定の場合にはS55に移行する。S51においては、前回のZ軸中心位置において高倍率画像を読み込む。S52においては、FFT(高速フーリエ変換)処理が行われ、画像の周波数スペトラムが算出される。
【0040】
S53においては、周波数スペトラムのピークパワー値を記憶値と比較する。S54においては、ピークパワー値が記憶値の例えば90%未満か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはZ軸位置は変更せず前回の焦点位置をそのまま使用するので、処理を終了するが、肯定の場合にはS55に移行して焦点位置を再検出する。
【0041】
S55においては、Z軸方向の所定の範囲をスキャンしながら高倍率画像を順次読み込む。S56においては、全ての画像についてFFT(高速フーリエ変換)処理が行われ、画像の周波数スペトラムが算出される。S57においては、ピークパワー値が最大のZ位置を検出する。S58においては、ピークパワー値を記憶し、このZ位置をZ軸中心位置とする。S59においては、中心および任意に指定した上下位置の3枚の画像を取得する。
【0042】
図7は、本発明によるビューア処理の内容を示すフローチャートである。この処理は例えばパソコン13あるいは端末(PC)52において実行される。S70においては、使用者が入力操作した表示すべきスライド選択情報を入力する。使用者は患者名等のキーワードに基づきDB51を検索してもよい。S71においては、DBから要求に該当する動画像ファイルおよび診断情報保存用テキストファイル、マーキング情報およびコメント情報保存用テキストファイル等の付加情報テキストファイルを読み出す。S72においては、スライドの全体画像であるルーペ画像を表示する。
【0043】
図8は、ファイルの構造および表示される画像の例を示す説明図である。ルーペ画像63はスライドガラスの試料の全体を含んでおり、ルーペ画像63には自動または手動で設定され、高倍率画像が撮影されているマーク領域64、65が表示されている。使用者はここで例えばマーク領域64内をクリックする。
【0044】
S73においては、マーク領域部分全体の縮小画像であるサムネイル画像70を表示する。図8中段のサムネイル画像70は例えば4×4=16枚の高倍率画像を貼り合わせて縮小したものであり、点線71、72は表示はされない高倍率画像の境界である。使用者はここで例えばサムネイル画像70の見たい部分(領域73の中心)をクリックする。
【0045】
S74においては、指定位置を使用者が指定した任意の倍率で表示するために必要な複数の高倍率画像を決定し、その画像を読み出す。例えば領域73を表示するためには4枚の高倍率画像が必要である。S75においては、読み出した高倍率画像を埋め込まれている重なり情報に基づき貼り合わせる。
【0046】
S76においては、貼り合わせた高倍率画像75およびマーキング情報、コメント、診断情報を画面サイズに合わせて整形して表示する。なお、高倍率画像75が表示された状態で表示領域を上下左右に移動させることができる。また、Z軸方向の移動は上(画面手前側)または下(画面奥側)への移動指示に基づき、移動後の画像が貼り合わされて表示される。
【0047】
S77においては、マーキングの要求があるか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS79に移行するが、肯定の場合にはS78に移行する。S78においては、マーキング情報記録処理が行われる。マーキングとは画像上へのマーキング(色、形などは自由)を可能とする機能である。マーキング情報の内容は例えばマーキング番号、X軸位置、Y軸位置、Z軸位置、マーキングの形、色、線の太さ等からなる。マーキング情報は原画像には手を加えず、レイヤー情報として保存する。
【0048】
S79においては、コメントの要求があるか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS81に移行するが、肯定の場合にはS80に移行する。S80においては、コメント情報記録処理が行われる。使用者は別画面上に表示されるコメントボックスにコメントを記載する。コメント情報もレイヤー情報として保存する。
【0049】
S81においては、全体画像の表示に戻るか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS82に移行するが、肯定の場合にはS73あるいはS72に移行する。S82においては、処理を終了するか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS77に移行するが、肯定の場合には処理を終了する。
【0050】
インターネットを介して外部の端末56からアクセスする場合には、端末56に上記したビューアプログラムをインストールし、DB51から必要なファイルをダウンロードしてもよいが、ビューアプログラムと同じ機能をWebサーバ50において実行し、端末56においては周知のWebブラウザを起動してWebサーバにアクセスするようにしてもよい。Webサーバ50においてはブラウザからの操作情報に基づき、表示すべき画面データを生成して端末56に送信する。このようにすれば、専用のプログラムをインストールする必要がなく、インターネットに接続された任意の端末から画像の閲覧が可能である。
【実施例2】
【0051】
図9は、本発明の第2実施例の半自動スライド作成処理の内容を示すフローチャートである。第1実施例においては、高倍率画像を撮影するマーク領域を自動的に認識する例を開示したが、試料の全ての領域を高倍率で撮影すると非常に時間がかかり、データ量も非常に多くなってしまう。そこで、まず全てのスライドガラスについてルーペ画像のみを撮影して一覧表示し、それぞれのルーペ画像について高倍率画像が必要な部分のみを使用者がマークすることができるようにすることにより、撮影時間が短縮でき、データ量も削減できる。
【0052】
S100においては、使用者によって入力されたスライドガラス枚数情報を読み込む。S101においては、3次元移動機構21〜28を制御して未処理のスライドガラス17を1枚取り出し、デジタルカメラ12の下へセットする。S102においては、デジタルカメラ12を使用して2次元バーコードを読み取る。
【0053】
S103においては、デジタルカメラ12を使用してルーペ画像を撮影し、スライドガラスを元の収納位置に格納する。S104においては、撮影エリアを自動認識する。S105においては、未処理のスライドが有るか否かが判定され、判定結果が肯定の場合にはS101に移行するが、否定の場合にはS106に移行する。
【0054】
S106においては、全てのスライドガラスのルーペ画像と自動認識エリアを表示する。使用者はここで自動認識エリアを変更したいルーペ画像について、高倍率画像の撮影が必要な部分のみをマークする。S107においては、使用者による変更操作が有ったか否かが判定され、判定結果が肯定の場合にはS108に移行するが、否定(変更操作完了)の場合にはS109に移行する。S108においては、入力された撮影エリア情報を読み込み、撮影エリア情報を更新してS106に移行する。
【0055】
S109においては、3次元移動機構21〜28を制御して、未処理のスライドガラス17を1枚取り出し、デジタルカメラ12の下へセットする。S110においては、デジタルカメラ12を使用して2次元バーコードを読み取る。S111においては、デジタルカメラ12を使用してルーペ画像を撮影する。
【0056】
S112においては、読み取った2次元バーコードをチェックしてスライドガラスを確認すると共に、S103において撮影したルーペ画像とS111において撮影したルーペ画像の位置のずれを検出し、検出値に基づき3次元移動機構21〜28による移動位置を補正する。
【0057】
S113においては、スライドガラスを顕微鏡10の対物レンズ18の下に移動する。S114においては、前述した高倍率画像撮影処理を行う。この際に、高倍率画像を貼り合わせた全体画像の縮小画像であるサムネイル画像も生成される。S115においては、ルーペ画像+サムネイル画像+高倍率画像を1つの動画像ファイルにまとめてDB50に登録、保存する。
【0058】
S116においては、3次元移動機構21〜28を制御してスライドガラスを元の位置に収納する。S117においては、未処理のスライドガラスが有るか否かが判定され、判定結果が否定の場合には処理を終了するが、肯定の場合にはS109に移行する。
【0059】
以上実施例を説明したが、本発明には以下のような変形例も考えられる。実施例においては、画像の傾き、回転が考慮されていないが、ルーペ画像と高倍率画像の間、あるいは隣接する高倍率画像の間において画像の相対的な傾き(回転)を検出し、補正するようにしてもよい。また、レンズ収差補正や色補正等を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のスライド画像データ作成装置は、医学(病理学・血液学・寄生虫学等)・農学・薬学・理学・教育など顕微鏡を利用する全分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 顕微鏡
11 顕微鏡カメラ
12 デジタルカメラ
13 パソコン
16 モータ駆動装置
17 スライドガラス
18 対物レンズ
20 基台
21〜28 3次元移動機構
30 スライドガラス収納マガジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡に備え付けられ、高倍率画像を撮影するデジタル撮影手段と、
試料を保持し、3次元方向に移動可能な試料搬送手段と、
前記試料搬送手段を制御して、画像が他の画像と重なる部分であるのりしろ部が存在するように、試料を前記顕微鏡の光軸と垂直なXY方向に順次移動させながら、それぞれのXY方向位置において前記試料を前記顕微鏡の光軸と平行なZ方向に等間隔に位置を変えながら前記デジタル撮影手段を制御して高倍率画像を撮影する撮影動作を実行させることにより、XYZの3次元方向の複数の高倍率画像の撮影を制御する撮影制御手段と、
前記複数の高倍率画像の貼り合わせ情報を生成する貼り合わせ情報生成手段と、
前記複数の高倍率画像を貼り合わせた全体画像の縮小画像であるサムネイル画像を生成するサムネイル画像生成手段と、
前記複数の高倍率画像、前記貼り合わせ情報および前記サムネイル画像を1つのファイルに格納する画像ファイル生成手段と
を備えたことを特徴とするスライド画像データ作成装置。
【請求項2】
更に、前記顕微鏡の光軸と平行なZ方向において顕微鏡の焦点が合う位置を検出するフォーカス位置検出手段を備え、前記撮影制御手段は、前記Z方向において前記フォーカス位置検出手段によって検出した焦点の位置を中心とした所定の範囲について等間隔にZ方向の位置を変えながら高倍率画像を撮影することを特徴とする請求項1記載のスライド画像データ作成装置。
【請求項3】
更に、外部デジタルカメラ手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のスライド画像データ作成装置。
【請求項4】
更に、前記外部デジタルカメラにより撮影された画像から高倍率画像を撮影する領域を自動的に決定する撮影領域自動認識手段を備えたことを特徴とする請求項3記載のスライド画像データ作成装置。
【請求項5】
更に、複数のスライドガラスについて前記外部デジタルカメラにより撮影された画像を前記撮影領域自動認識手段により認識された撮影領域と共に一覧表示し、使用者が前記撮影領域を修正可能な撮影領域半自動認識手段を備えたことを特徴とする請求項4記載のスライド画像データ作成装置。
【請求項6】
更に、撮像された画像のファイルをデータベースに登録し、ネットワークを介して画像の検索および参照ができる画像公開手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のスライド画像データ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−20329(P2010−20329A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187922(P2009−187922)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2005−113354(P2005−113354)の分割
【原出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(504135114)株式会社クラーロ (4)
【Fターム(参考)】