説明

スライド錠

【課題】バイク荷台ボックス用のスライド錠の出っ張りを少なくして安全性を高めるとともに、施錠操作と開錠操作を簡単化して施錠と開錠の手間と時間を少なくする。
【解決手段】シリンダー錠20が、スライド錠のカバー1に斜めに取り付けられている。カバー1と閂8を、ベースバネ14で上方に付勢し、カバーバネ13でベース側に弱く付勢する。開放状態において、シリンダー錠20の鍵穴面を指で押下すると、カバー1がフック5に被さる。押下力を弱めるとカバー1の先端部がフック5に係合する。シリンダー錠を鍵で回すと、施錠棒3がフック5に係合して施錠状態になる。開錠状態において、シリンダー錠20の最上部面をベース側寄りに押下すると、カバー1とフック5との係合が解除されて、カバー1が手前側に飛び出す。押下力を弱めると、カバー1が開放状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド錠に関し、特に、バイクの荷台ボックス用のスライド錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車や三輪車等の小型車両の車体後部に取り付けた荷台ボックスに配送品を収納して配達している。配送品を守るために、荷台ボックスの蓋を閉鎖する錠前を設けてある。錠前に鍵を差し込んで回転することにより施錠や開錠が行われる。以下に、これに関連する従来技術の例をいくつかあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「小型車両の収納ボックス」は、自動二輪車や三輪車等の小型車両の後部荷台に設けたものである。図9(a)、(b)に示すように、車体後部の荷台に有底の下箱を取り付ける。下箱の後部を荷台から後方へ張り出す。下箱に有底の上箱を重ねる。下箱と上箱との前部同士を蝶番で連結する。荷台に載せた下面と下箱の後面とを傾斜面で結ぶ。フレームとフレームとの間にはオープンステーを配設する。オープンステーにより、蓋体を常に開方向に付勢する。蓋体の後面下部には係止部材を設ける。下箱の後面の上部には被係止部材を設ける。係止部材と被係止部材でロック機構を構成する。
【0004】
特許文献2に開示された「配送用ボックスの錠機構」は、錠を管理する必要をなくし、他者に錠が壊されないようにしたものである。図9(c)、(d)、(e)に示すように、錠に、発信器型鍵の信号電波を受信する受信機が備える。発信器型鍵はボタン電池等で作動する。開ボタンを押すと開信号電波を出す。閉ボタンを押すと閉信号電波を出す。錠はこの信号電波を受信して、錠のレバーを動作させ、蓋体の掛け金に掛かってロックし、掛け金から外れてアンロックする。配送用ボックス本体と蓋体とは、電波を通し外部からは見えない不透明な強化プラスチックで製作する。
【0005】
特許文献3に開示された「集配用キャリーボックス」は、施錠や開錠作業が自動的に行えるものである。図9(f)、(g)に示すように、蓋体に蓋開閉用レバーを装着する。ボックス本体にタグ読取装置を装着する。タグ読取装置はロック機構に連繋しており、ICタグ付リストバンドのデーターを非接触状態で読み取る。蓋開閉用レバーを手で操作すると、ICタグのデーターを読み取る。ロック機構が作動してロック状態を解除されて開蓋状態になる。蓋を閉めるとロック機構が作動して、ロック状態を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-020276号公報
【特許文献2】特開2008-008087号公報
【特許文献3】特開2009-046869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の荷台ボックスの錠前では次のような問題がある。錠前を単純に取り付けたものでは、錠前の金属部分が荷台ボックスの縁の延長上に出っ張っていて、危険である。施錠操作や開錠操作が煩雑で、施錠と開錠の手間と時間がかかる。電子錠などを用いるものでは、構成が複雑になってコストがかかる。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、バイクの荷台ボックスの錠前の出っ張りを少なくして安全性を高めるとともに、施錠操作と開錠操作を簡単化して施錠と開錠の手間と時間を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では、バイク用の荷台ボックスの蓋を施錠するためのスライド錠に、蓋の開閉操作側の縁に取り付けるベースと、荷台ボックスの本体側の縁であってベースに対向する部分に取り付けたフックと、ベースに対してスライドするように取り付けられた閂と、閂に取り付けられて先端部がフックに係合するカバーと、カバーに斜めに取り付けられたシリンダー錠と、シリンダー錠のカムに押されてベースに対して上下にスライドしてフックに係合する施錠棒と、開放状態においてシリンダー錠の鍵穴面を押下することによりカバーが下がってフックに被さり、押下力を弱めることにより先端部がフックに係合するように、カバーをベースから上方に付勢するベースバネと、開錠状態においてシリンダー錠の最上部面をベース側寄りに押下することによりカバーとフックとの係合が解除されてカバーがバネ力に抗して手前側に飛び出し、下向きの力を弱めることによりカバーが開放状態になるように、カバーをベース側に弱く付勢するカバーバネとを具備する構成とした。さらに、施錠状態と開錠状態を区別して示す状態表示手段を備える。ベースを荷台ボックスの蓋の開閉操作側の縁の中央部に取り付けた。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したことにより、バイクの荷台ボックスの錠前の危険な出っ張りが少なくなり、荷台ボックスの開いた蓋が風で急に閉まる時などの安全性が高まる。さらに、施錠操作と開錠操作が簡単になり、施錠と開錠の手間と時間を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例におけるスライド錠を取り付けた荷台ボックスの概念図である。
【図2】本発明の実施例におけるスライド錠の概念図である。
【図3】本発明の実施例におけるスライド錠の動作状態図である。
【図4】本発明の実施例におけるスライド錠の開放状態図である。
【図5】本発明の実施例におけるスライド錠の開放状態図である。
【図6】本発明の実施例におけるスライド錠の閉鎖状態図である。
【図7】本発明の実施例におけるスライド錠の閉鎖状態図である。
【図8】本発明の実施例におけるスライド錠の途中状態図である。
【図9】従来のバイク荷台ボックス用の錠前の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図8を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例は、開放状態においてシリンダー錠の鍵穴面を押下することによりカバーがフックに被さり、押下力を弱めることにより先端部がフックに係合し、開錠状態においてシリンダー錠の最上部面をベース側寄りに押下することによりカバーとフックとの係合が解除されてカバーが手前側に飛び出し、押下力を弱めることによりカバーが開放状態になるスライド錠である。
【0014】
図1に、スライド錠を取り付けた荷台ボックスの概念図を示す。図1(a)に、スライド錠を取り付けた荷台ボックスの蓋が開いた状態の側面を示す。図1(b)に、蓋を閉めた様子を示す。図1(c)に、蓋を閉めてスライド錠を閉鎖した様子を示す。図1(d)に、蓋の開閉操作の様子を示す。図2に、スライド錠の構成の概要を示す。図2(a)に、スライド錠の平面図を示す。図2(b)に、スライド錠の左側面図を示す。図2(c)に、スライド錠の裏面図を示す。図2(d)に、開放状態のスライド錠の左側面図を示す。図2(e)に、開放状態のスライド錠の断面図を示す。図2(f)に、スライド錠の上面図を示す。図2(g)に、開放状態のスライド錠の斜視図を示す。図3に、スライド錠の状態遷移を示す。
【0015】
図4に、スライド錠の開放状態を示す。図4(a)に、開放状態のスライド錠の左側面図を示す。図4(b)に、開放状態のスライド錠を押下した状態の左側面図を示す。図4(c)に、開放状態のスライド錠を押下した状態の左側面図を示す。図4(d)〜(f)に、開放状態のスライド錠の断面斜視図を示す。図4(g)に、閉鎖状態のスライド錠の断面斜視図を示す。図5に、開放状態のスライド錠の分解図を示す。図5(a)〜(f)に、開放状態のスライド錠の分解平面図を示す。図5(g)〜(l)に、開放状態のスライド錠の分解斜視図を示す。
【0016】
図6に、スライド錠の閉鎖状態を示す。図6(a)に、閉鎖状態のスライド錠の平面図を示す。図6(b)に、閉鎖状態のスライド錠の左側面図を示す。図6(c)に、施錠状態のスライド錠の左側面図(部分断面図)を示す。図6(d)に、施錠状態のスライド錠の右半分の分解平面図を示す。図6(e)に、開錠状態のスライド錠の右半分の分解平面図を示す。図7に、閉鎖状態のスライド錠の分解図を示す。図7(a)〜(f)に、施錠状態のスライド錠の分解平面図を示す。図7(g)〜(l)に、開錠状態のスライド錠の分解斜視図を示す。図8に、スライド錠の途中状態を示す。図8(a)〜(f)に、押下状態のスライド錠の分解平面図を示す。図8(g)〜(l)に、開錠途中状態のスライド錠の分解斜視図を示す。
【0017】
図1〜図8において、カバー1は、スライドして下端がフックに係合する部材である。カバー蓋2は、カバーの表面に被せる部材であり、状態表示部の施錠状態を示す色が見える穴がある。施錠棒3は、施錠時にシリンダー錠のカムに押されて下方に動き、先端がフックに係合する部材であり、施錠状態と開錠状態を表示する状態表示部がある。押しカム4は、カバーを開いた状態で保持するための部材である。フック5は、荷台ボックスの本体部に取り付けられて、カバーの下部先端と係合する部材である。また、施錠棒と係合して施錠状態になる。ベース6は、荷台ボックスの蓋部に取り付けられて、スライド錠を保持する部材である。アンカー7は、閂に固定されてベース蓋に対してスライドするようになっており、カバーが必要以上に開かないように制限する部材である。
【0018】
閂8は、カバーの動きに応じて動き、押下時にフックに係合する部材である。ベース蓋9は、ベースに固定されて、閂とアンカーをスライド可能に保持する部材である。アンカー軸10は、閂とアンカーをベース蓋に係合する部材である。ベース軸11は、カバーを回転可能に閂に保持する部材である。施錠棒バネ12は、施錠棒を付勢するバネである。カバーバネ13は、カバーをベース側に弱く付勢するバネである。ベースバネ14は、閂をベースの上方向に付勢するバネである。シリンダーカム17は、シリンダー錠の回転を施錠棒に伝えるカムである。表示シール18は、施錠開錠状態を表示する色シールである。シリンダー錠20は、スライド錠を施錠するための錠である。鍵21は、シリンダー錠を施錠開錠する鍵である。
【0019】
上記のように構成された本発明の実施例におけるスライド錠の機能と動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、スライド錠の機能の概要を説明する。荷台ボックスが、バイクの後部に取り付けられている。原動機付き自転車や小型の自動二輪車に限らず、自転車や原動機付き三輪車などを含めて、バイクということにする。荷台ボックスの蓋は、蓋の縁を片手または両手で手前に引いて、上方に跳ね上げて開けるものである。この蓋の操作側の縁の中央部に、取っ手兼用のスライド錠を取り付ける。荷台本体側の対応部分に、スライド錠と係合するフック5を取り付ける。大きな荷台ボックスでは蓋が歪みやすいため、錠前と取っ手の両方が中央部にあるのが理想的である。そこで、取っ手兼用のスライド錠を蓋の縁の中央部に設けた。そのため、蓋の開閉操作が楽にできる。
【0020】
荷台ボックスの蓋の開閉時にスライド錠を取っ手として利用して、蓋を開け閉めできる。蓋を閉めて施錠する場合は、鍵穴部を指1本で下に押すだけで、スライド錠が下方向にスライドして、フック5と係合するので、簡単に仮止め状態(閉鎖状態の開錠状態)にできる。その後、鍵を挿してシリンダー錠を回せばロックされて施錠状態になる。シリンダー錠の鍵穴の面が手前側に斜めになっているため、鍵挿入操作がしやすい。シリンダー錠の施錠状態では、状態表示部に赤が表示され、開錠状態(仮止め状態)では青が表示されるので、シリンダー錠の施錠状態が一目で確認できる。開錠する場合は、シリンダー錠に鍵を挿して回せば開錠状態(仮止め状態)になる。さらに、スライド錠の最上部を指1本でベース側寄りに下に押すと、フック5からカバーが外れて、カバーが手前に出て、開放状態になる。開閉時には、指1本でスライド錠の最上部を押すか、シリンダー錠の鍵穴部を押すか、いずれかの操作をするだけであるので、施錠開錠操作が簡単である。
【0021】
荷台ボックスの蓋を開ける場合は、図1(d)に示すような状態になる。蓋を約180度まで開いて、荷台ボックス本体側の天井に蓋を乗せた状態で手を離して、積下しなどの作業をする。バイクの荷台の高さは約60cmであり、荷台ボックス自体の高さも60cm前後であるので、荷台ボックスの全高さは120cm程度となる。荷台ボックスの蓋を開けた時の錠前の高さは、160cmくらいになる。この状態で強い風が吹くと蓋が倒れてくる恐れがある。普通の開け閉め操作でも、顔の前を錠前付きの蓋が通ることになる。このとき、蓋の縁の延長上への錠前の出っ張りが大きいと危険である。本実施例の錠前ではこの方向の出っ張りが小さいので、蓋の開閉操作時にスライド錠が邪魔にならず、安全性が高い。
【0022】
次に、図2を参照しながら、スライド錠の機構の概要を説明する。図2(a)に、閉鎖状態のスライド錠の平面図を示す。図2(b)に、閉鎖状態のスライド錠の左側面図を示す。図2(c)に、閉鎖状態のスライド錠の裏面図を示す。カバー1の上方にシリンダー錠20が斜めに設けてある。シリンダー錠20の鍵穴は、斜め手前に傾いている。スライド錠の最上面は、スライド錠を開放する際に押す部分である。シリンダー錠の鍵穴の面は、スライド錠を閉鎖する際に押す部分である。
【0023】
図2(d)に、開放状態のスライド錠の左側面図を示す。図2(e)に、開放状態のスライド錠の左側面の断面を示す。図2(f)に、スライド錠の上面図を示す。図2(g)に、開放状態のスライド錠の斜視図を示す。開放状態とは、カバー1が開いていて、フック5に係合せずに対向している状態である。閉鎖状態とは、カバー1の下部先端がフック5に係合してスライド錠が閉じている状態である。
【0024】
次に、図3を参照しながら、スライド錠の状態遷移を説明する。図3(a)に、施錠状態のスライド錠の正面図を示す。図3(b)に、施錠状態で鍵21を挿したときのスライド錠の主要部を示す。施錠状態で鍵21を回すと開錠状態になる。図3(c)に、開錠状態のスライド錠の主要部を示す。図3(d)に、鍵21を抜いたときの開錠状態のスライド錠の正面図を示す。スライド錠の最上部をベース側寄りに押下すると、押下状態になる。図3(e)に、カバー1が下がって閉じている押下状態(閉)の正面図と左側面の断面図を示す。図3(f)に、スライド錠のカバーが開いた押下状態(開)の正面図と左側面の断面図を示す。この状態で押下力を緩めると開放状態になる。施錠する場合は、ほぼ逆の操作になる。
【0025】
次に、図4を参照しながら、開放状態から閉鎖状態に至る変化について説明する。開放状態のスライド錠は、カバー1が手前側に開いており、すべての部材が上に上がっていて、フック5から外れている。スライド錠を閉鎖する場合は、図4(a)に示すように、スライド錠のシリンダー錠20の鍵穴面を押して、スライド錠のカバー1を下げる。鍵穴面を押すと、下方と荷台ボックス側に力が働く。下方に働く力で、カバー1が下方に下がる。この状態を、図4(b)、(c)、(d)に示す。このとき、閂8がフック5に係合する。フック5は分離して示してある。カバー1が十分に下がると、荷台ボックス側に働く力により、カバー1がフック5に被さる。
【0026】
図4(e)に示すように、カバー1が開いている状態では、カバー1のL字状部がアンカー7に制限されて、一定以上に開かないようになっている。図4(f)に示すように、カバー1が開いた開放状態で、閂8がフック5に刺さってない状態(押下状態になる前の状態)では、押しカム4はバネの力で下方向へ出ている。このとき、押しカム4の上にカバー1の足が乗り、足が閂8の穴に落ちないようになっている。カバー1を下方にスライドさせて押下状態にすると、押しカム4がフック5に当たり、さらにカバー1を下げると、図4(g)に示すように、カバー1の足が押しカム4から外れ、閂8の穴へ落ちて、カバー1が閉鎖方向に回転して閉まる。
【0027】
次に、図5を参照しながら、開放状態のスライド錠の内部状態を説明する。図5(a)に、開放状態のスライド錠の正面図を示す。図5(g)に、開放状態のスライド錠の斜視図を示す。同じ状態を別の角度から見た図である。カバー1は開いており、最も上方にある。カバー1とカバー蓋2を外すと、図5(b)、(h)に示すようになる。シリンダー錠20も開錠状態であるので、施錠棒3は上方にあり、フック5から外れている。閂8も上方にあり、フック5から外れている。シリンダー錠20とフック5と施錠棒3を外すと、図5(c)、(i)に示すようになる。アンカー7も上方にある。閂8とアンカー7を外すと、図5(d)、(j)に示すようになる。ベース蓋9と押しカム4を外すと、図5(e)、(k)に示すようになる。ベース軸11を外すと、図5(f)、(l)に示すように、ベース6のみとなる。
【0028】
次に、図6を参照しながら、スライド錠の閉鎖状態を説明する。閉鎖状態は、フック5にカバー1の先端が係合した状態である。閉鎖状態には、シリンダー錠の開錠状態と施錠状態がある。図6(a)に、閉鎖状態のスライド錠の平面図を示す。カバー1は最上位置と最下位置の中間にある。図6(b)に、閉鎖状態のスライド錠の左側面図を示す。閉鎖状態から開放状態にするには、スライド錠の最上部を下方に押してカバー1を下げてフック5から外し、さらに最上部をベース側寄りに押してカバー1を少し回転させて、カバー1の下側を手前側に開く。図6(c)に、施錠状態のスライド錠の左側面図(分解図と断面図)を示す。図6(d)に、施錠状態のスライド錠の右半分の分解平面図を示す。施錠状態では、施錠棒3がシリンダーカム17に押されて下がり、フック5に係合している。図6(e)に、開錠状態のスライド錠の右半分の分解平面図を示す。開錠状態では、施錠棒3が上がり、フック5から離れている。
【0029】
図7を参照しながら、施錠状態と開錠状態のスライド錠の内部状態を説明する。図7(a)に、施錠状態のスライド錠の正面図を示す。図7(g)に、開錠状態のスライド錠の正面図を示す。異なる状態を対比して示したものである。鍵21とカバー1とカバー蓋2を外すと、図7(b)、(h)に示すようになる。施錠状態では、施錠棒3がフック5に係合している。開錠状態では、施錠棒3がフック5から離れている。閂8は下がってフック5と係合している。シリンダー錠20とフック5と施錠棒3を外すと、図7(c)、(i)に示すようになる。施錠状態と開錠状態の差は、シリンダー錠20と施錠棒3の状態の差のみであり、他の部分は同じである。閂8とアンカー7を外すと、図7(d)、(j)に示すようになる。ベース蓋9と押しカム4を外すと、図7(e)、(k)に示すようになる。ベース軸11を外すと、図7(f)、(l)に示すように、ベース6のみとなる。
【0030】
次に、図8を参照しながら、途中状態のスライド錠の内部状態を説明する。途中状態には、スライド錠のカバーがベースに平行な押下状態(閉)と、スライド錠のカバーがベースから飛び出している押下状態(開)がある。図8(a)に、押下状態(閉)のスライド錠の正面図を示す。図8(g)に、押下状態(開)のスライド錠の正面図を示す。これも、異なる状態を対比して示したものである。カバー1とカバー蓋2を外すと、図8(b)、(h)に示すようになる。カバー1が最下位置に下がっているので、閂8が最下位置に下がってフック5に係合している。シリンダー錠20とフック5と施錠棒3を外すと、図8(c)、(i)に示すようになる。アンカー7も最下位置に下がっている。閂8とアンカー7を外すと、図8(d)、(j)に示すようになる。押しカム4も最下位置に下がっている。ベース蓋9と押しカム4を外すと、図8(e)、(k)に示すようになる。ベース軸11を外すと、図8(f)、(l)に示すように、ベース6のみとなる。
【0031】
上記のように、本発明の実施例では、スライド錠を、開放状態においてシリンダー錠の鍵穴面を押下することによりカバーがフックに被さり、押下力を弱めることにより先端部がフックに係合し、開錠状態においてシリンダー錠の最上部面をベース寄りに押下することによりカバーとフックとの係合が解除されてカバーが手前側に飛び出し、押下力を弱めることによりカバーが開放状態になるように構成したので、バイクの荷台ボックスの錠前の出っ張りが少なくなり安全性が高まるとともに、施錠操作と開錠操作が簡単になり施錠と開錠の手間と時間を少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスライド錠は、バイクの荷台ボックス用のスライド錠として最適である。
【符号の説明】
【0033】
1 カバー
2 カバー蓋
3 施錠棒
4 押しカム
5 フック
6 ベース
7 アンカー
8 閂
9 ベース蓋
10 アンカー軸
11 ベース軸
12 施錠棒バネ
13 カバーバネ
14 ベースバネ
17 シリンダーカム
18 表示シール
20 シリンダー錠
21 鍵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイク用の荷台ボックスの蓋を施錠するためのスライド錠において、前記蓋の開閉操作側の縁に取り付けるベースと、前記荷台ボックスの本体側の縁であって前記ベースに対向する部分に取り付けたフックと、前記ベースに対してスライドするように取り付けられた閂と、前記閂に取り付けられて先端部が前記フックに係合するカバーと、前記カバーに斜めに取り付けられたシリンダー錠と、前記シリンダー錠のカムに押されて前記ベースに対して上下にスライドして前記フックに係合する施錠棒と、開放状態において前記シリンダー錠の鍵穴面を押下することにより前記カバーが下がって前記フックに被さり、押下力を弱めることにより前記先端部が前記フックに係合するように、前記カバーをベースから上方に付勢するベースバネと、開錠状態において前記シリンダー錠の最上部面をベース側寄りに押下することにより前記カバーと前記フックとの係合が解除されて前記カバーがバネ力に抗して手前側に飛び出し、下向きの力を弱めることにより前記カバーが開放状態になるように、前記カバーをベース側に弱く付勢するカバーバネとを具備することを特徴とするスライド錠。
【請求項2】
施錠状態と開錠状態を区別して示す状態表示手段を備えることを特徴とする請求項1記載のスライド錠。
【請求項3】
ベース板を荷台ボックスの蓋の開閉操作側の縁の中央部に取り付けたことを特徴とする請求項1記載のスライド錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−144541(P2011−144541A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5438(P2010−5438)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000152664)株式会社日乃本錠前 (24)
【Fターム(参考)】