説明

スライド開閉式電子機器

【課題】筐体への傷の発生、機器サイズの大型化、見栄えの悪化を回避しつつ、スライド開閉時のがたつきを解消することのできるスライド開閉式電子機器を提供する。
【解決手段】スライド機構30を有する携帯電話機1において、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53を設けることで、第一筐体10と第二筐体20とのスライド動作を損なうことなく、基本状態P、使用状態、基本状態Pと使用状態の途中の状態のいずれにおいても第一筐体10と第二筐体20とのがたつきを抑える。これら帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、帯状突起41を除き、基本状態P、使用状態、基本状態Pと使用状態の途中の状態のいずれにおいても、携帯電話機1のユーザからは見えない位置に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機をはじめとする各種のスライド開閉式電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線送受信によって種々のデータの送受信を行う携帯型通信端末は、多機能化が図られており、電話の送受信やメールの送受信の他、テレビ電話、テレビジョン放送の受信、ウェブサイトの参照などが行えるようになっている。このような多機能の携帯型通信端末においては、受信した画像データや文字データの表示を良好に行うために、表示画面部として、より大きな画面であるものを備えることが望ましい。
【0003】
しかしながら、表示画面部や操作部を大きくすると、その一方で装置全体が大型化してしまうこととなり、携帯型通信端末として良好な携帯性を維持する点から好ましくない。
このため、携帯型通信端末や、各種の小型電子機器においては、表示画面部や操作部の大型化を図りつつ装置全体としては最小限の大きさとするべく、操作部と表示画面部とを2つの筐体上に別々に設けておき、これら各筐体を、スライド機構をもって互いにスライド可能に取り付けて構成したスライドタイプのものや、各筐体を互いに回転操作可能に取り付けて構成した回転タイプのものが提案されている。
【0004】
このうち、スライドタイプのものにおいては、2つの筐体を互いにスライドさせるレール部に、両筐体を円滑にスライド動作させるために必要な隙間を、スライド方向と直交し、かつスライド面に並行な方向(以下、これをX方向と称する)と、スライド面に直交する方向(以下、これをZ方向と称する)とに設けている。
この隙間は、2つの筐体をスムーズにスライドさせるためにある程度は必要であるが、隙間を大きくしすぎるとがたつきが発生し、隙間を詰めるとスライド時の摩擦抵抗が大きくなり、摺動不良が発生するという問題がある。
【0005】
また、隙間によるがたつきをレールの部分のみで規制すると、商品性を向上させるためスライド量を大きくしたり、実装の制約などでレールを短くした場合には、レールの無い部分のがたつきが、より大きくなってしまうという問題が生じる。
【0006】
このようながたつきをレール以外で規制する手段として、一方の筐体から突起を出し、他方の筐体に突き当てる方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−193630号公報
【特許文献2】特開2006−246353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1、2に記載されたような技術においては、スライド開閉の際に突起部がもう一方の筐体に擦れて傷が発生し易くなるという問題が生じる。また、突起を設置する空間が必要であるため、機器のサイズが大きくなってしまう一方で、空間を設けるとスライド開閉時にがたつきが発生してしまうという問題もある。そして、がたつきを抑えるための筐体に設ける突起を装置外観部に配置すると見栄えが悪くなるという問題もある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、筐体への傷の発生、機器サイズの大型化、見栄えの悪化を回避しつつ、スライド開閉時のがたつきを解消することのできるスライド開閉式電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のもとになされた本発明のスライド開閉式電子機器は、少なくとも一面に第一の平面を有した第一筐体と、第一筐体の第一の平面に対向する第二の平面を有した第二筐体と、第一筐体と第二筐体とを第一の平面に沿った方向に互いにスライド可能とするスライド機構と、を備え、第一筐体と第二筐体は、スライド機構により、第一筐体と第二筐体が第一の平面と第二の平面とを重なり合わせた第一の状態と、第一筐体と第二筐体とを第一の状態から第一の平面に沿った方向に所定寸法だけスライドさせた第二の状態と、第一の状態と第二の状態との間の第三の状態とに移行可能とされ、第一筐体または第二筐体の一方に形成され、第一の状態および第三の状態において、第一筐体または第二筐体の他方に突き当たることで、第一筐体と第二筐体の、第一の平面に直交するZ方向への相対変位を規制する第一の突起と、第一筐体および第二筐体の双方に形成され、第二の状態において互いに係合することで第一筐体と第二筐体のZ方向への相対変位を規制する第二の突起と、第一筐体および第二筐体の双方に形成され、第一の状態において互いに係合することで、第一筐体と第二筐体の、スライド機構におけるスライド方向に直交し、かつ第一の平面に沿ったX方向への相対変位を規制する第三の突起と、を備え、第一の突起、第二の突起、第三の突起は、第一の平面において第三の状態で第二の平面と対向する領域、または第二の平面に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第一筐体と第二筐体とのスライド動作を損なうことなく、第一の状態、第二の状態、第三の状態のいずれにおいても第一筐体と第二筐体とのがたつきを抑えることができる。
しかも、がたつきを抑えるために設けられた第一の突起、第二の突起、第三の突起を、第一の平面において第三の状態で第二の平面と対向する領域、または第二の平面に形成することで、第一の突起、第二の突起、第三の突起は、第一筐体の前記第一の平面側から見たときに視認されない位置となり、外観の見栄えへの影響を小さくすることができ、また、これら突起を形成する材料や、突起以外の箇所の加飾への制約を軽減することができる。
第一の突起、第二の突起、第三の突起は、スライド機構の厚さの範囲内で設ければよいので、機器が大型化することもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示すスライド開閉式電子機器であり、スライド式の携帯 電話機のスライドを閉じた基本状態での斜視図である。
【図2】図1に示した携帯電話機のスライドを開いた使用状態を示す斜視図である。
【図3】第一筐体の斜視図である。
【図4】基本状態における携帯電話機の断面図である。
【図5】第二筐体のスライド面側からの斜視図である。
【図6】基本状態における携帯電話機を、下端側から見た図である。
【図7】基本状態における携帯電話機を、上端側から見た図である。
【図8】使用状態における携帯電話機の断面図である。
【図9】スライド途中の状態における携帯電話機の断面図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
【図11】突起の係合面の複数の形状例を示す図である。
【図12】レールを板金で形成した場合の携帯電話機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る実施形態について、図1から図9を参照して説明する。図1、図2は本発明の実施形態を示すスライド開閉式電子機器であり、スライド式の携帯電話機の斜視図である。図1はスライドを閉じた状態、図2は開いた状態を示す。
図1、図2に示すように、この実施形態の携帯電話機(スライド開閉式電子機器)1は、互いに対向するように配置された、それぞれ扁平直方形状をなした第一筐体10および第二筐体20とを備えている。
第一筐体10は、第二筐体20と対向する長方形を呈する面を第一主面(第一の平面)11とし、長辺11aに沿う方向の一端側(以下、これを下端側と称し、反対側を上端側と称することもある)の範囲にテンキー等の各種ボタン12aを配列した操作部12が設けられている。なお、第一筐体10には、内部構成として操作部12の各種ボタン12aやマイク等と接続された基板や、電源となる電池などが内蔵されている。
第二筐体20は、第一筐体10と同様の形状の扁平直方状の薄型に形成されており、第一筐体10の第一主面11と同一の向き、すなわち第一主面11と対向するスライド面(第二の平面)22の反対側の長方形を呈する面を第二主面21としている。そして、第二主面21には、液晶などの長方形状の表示画面部23が設けられている。第二筐体20には、内部構成として表示画面部23の内部構造が内蔵されている。
【0014】
これら第一筐体10と第二筐体20とは、これらの間に設けられたスライド機構30により、第一筐体10に対して第二筐体20を相対的にスライド移動可能とされている。これにより、携帯電話機1は、図1に示すような第一主面11とスライド面22とがずれることなく第一筐体10と第二筐体20とが重なり合った基本状態(第一の状態)Pと、基本状態Pにおける長辺11aに沿う方向をスライド方向としてスライドし、図2に示すように第一筐体10と第二筐体20とが相対的にスライド移動した使用状態(第二の状態)Qとで使用できるようになっている。
また、第一筐体10の内部構成と第二筐体20の内部構成とは、スライド機構30の内部に配設された導線(図示無し)を介して電気的に接続され、これにより一方から他方に電力を供給し、あるいは、信号の入出力を行っている。
【0015】
第一筐体10の第一主面11において、操作部12の周囲には、化粧パネルの役目をなすキーカバー(カバー部材)14が設けられている。キーカバー14は弾性変形可能で、第一筐体10の外表面の他の部分を構成する部材よりも摩擦抵抗が低く、高摺動性を有する材料であるPET材等で形成されている。このキーカバー14は、第一筐体10に対し、両面テープや接着剤による接着、あるいは嵌合によって固着されている。
また、図3に示すように、キーカバー14において、第一筐体10の幅方向両側には、第一筐体10の上端側に向けて一定長延びる舌片14aが形成されている。一方、図4に示すように、第一筐体10には、キーカバー14の舌片14a、14aに対向する位置に、凹部15、15が形成されている。凹部15は、舌片14aの先端部に向けてその深さが漸次深くなる傾斜底面(傾斜面)15aを有している。
【0016】
図3に示すように、第一筐体10の第一主面11には、その幅方向両側に、スライド機構30を構成する一対のレール31、31が、長辺11aに沿う方向に延びて設けられている。各レール31は、樹脂または金属で形成された断面コ字状とされており、スライド時の摺動性をよくするために、樹脂によりレール31を形成する場合はポリアセタールなどの高摺動材料を用いるのが好ましく、また金属によりレール31を形成する場合には、表面に例えば四フッ化エチレン等の高摺動材を塗布または被膜形成するのが望ましい。
レール31の下端部には、第一筐体10の凹部15に収まり、かつ凹部15の傾斜底面15aと平行な面を有した凸部31aが形成されている。この凸部31aにより、キーカバー14の上端部の舌片14a、14aを抑えることができる。
一方、図5に示すように、第二筐体20のスライド面22には、その幅方向両側に、スライド機構30を構成する長穴32、32が、スライド方向に沿う方向に延びて形成されている。各長穴32は、レール31、31と噛み合って第一筐体10に対して第二筐体20をレール31、31が連続する方向にスライド移動に保持するとともに、一定長を有して、第一筐体10に対する第二筐体20の移動量を規制する。
【0017】
さて、本実施の形態における携帯電話機1は、第一筐体10と第二筐体20とのがたつきを抑えるために、以下に示す構成を有する。
図3に示したように、第一筐体10の第一主面11には、下端側に、第一筐体10の幅方向に延びる断面矩形の帯状突起(第三の突起)41が形成されている。また、第一主面11の上端側には、中央部に所定幅を有した凹部42が、第一筐体10の上端から下端側に向けて一定長連続して形成されている。凹部42内には、第一筐体10の幅方向に連続し、凹部42の底面42aと、両側の側面42b、42bと、第一主面11とに沿う断面矩形の帯状突起(第三の突起)43が形成されている。さらに、第一主面11の上端側には、凹部42の両側に、所定の高さを有した一対の断面半円状の突起(第一の突起)44が設けられている。
【0018】
一方、図5に示すように、第二筐体20のスライド面22の下端側には、第二筐体20の幅方向両側に、一対の断面半円状の突起51、51が設けられている。また、第二筐体20のスライド面22の下端側の幅方向中央部には、凹部52が、帯状突起41に対応した幅を有し、第一筐体10の下端から上端側に向けて一定長連続して形成されている。図6(a)に示すように、この凹部52の内方には、帯状突起41が収容可能とされており、第一筐体10と第二筐体20とが重なり合った基本状態Pにおいて、凹部52内に収容された帯状突起41と凹部52との間にはクリアランスが形成される。また、図6(b)に示すように、基本状態Pにおいては、第二筐体20の突起51、51が、第一筐体10の第一主面11と帯状突起41の側面とに突き当たるようになっており、これにより、第一筐体10と第二筐体20の下端側におけるX方向、Z方向のがたつきが抑制される。
【0019】
図5に示したように、第二筐体20のスライド面22の上端側の幅方向中央部には、箱状突起(第三の突起)53が形成されている。図7(a)、(b)に示すように、箱状突起53は、第一筐体10と第二筐体20とが重なり合った基本状態Pにおいて、第一筐体10の凹部42内に収容される。この状態で、凹部42内の箱状突起53は、両側の側面53a、53aが帯状突起43に突き当たり、これにより、第一筐体10と第二筐体20の上端側におけるX方向のがたつきが抑制される。
さらに、基本状態Pにおいて、第一筐体10の突起44、44が、第二筐体20のスライド面22に対し、箱状突起53の側方の位置で突き当たる。これにより、第一筐体10と第二筐体20の上端側におけるZ方向のがたつきが抑制される。
【0020】
また、図2に示すように第一筐体10と第二筐体20とが相対的にスライド移動した使用状態Qにおいて、第一筐体10と第二筐体20とのがたつきを抑えるために、図3に示したように、第一筐体10には、上端側と下端側との中間部において、その幅方向両側に一対の突起(第二の突起)45が形成されている。なお、この突起45は、図3においては、幅方向両側に一対を設けているが、幅方向中央部に一箇所のみ設けても良い。
一方、図5に示したように、第二筐体20には、スライド面22の下端側に、突起(第二の突起)55が形成されている。この突起55は、第一筐体10と第二筐体20とが相対的にスライド移動した使用状態Qにおいて、第一筐体10の突起45と互いに突き当たる位置、高さに形成されている。
これにより、図8に示すように、使用状態Qにおいては、これら突起45、55が互いに突き当たる。さらに、使用状態Qにおいて、第一筐体10の上端側に設けられた一対の突起44が、第二筐体20のスライド面22において上端側と下端側との中間部に突き当たる。これにより、第一筐体10と第二筐体20とのZ方向へのがたつきを抑えることができる。
【0021】
また、使用状態Qにおいては、第二筐体20のスライド面22の下端に形成された突起51、51は、第一筐体10の凹部15に対向した位置となり、突起51、51は、第一筐体10の第一主面11(キーカバー14)から離れた状態となり、突起51、51による第一筐体10と第二筐体20とのZ方向へのがたつきを抑える機能は解除されている。
そして、使用状態Qから基本状態Pに戻すときには、第一筐体10と第二筐体20とのスライド動作に伴い、突起51、51が凹部15の傾斜底面15aに当たり、そのまま傾斜底面15aに沿って第一主面11へと摺動していくので、第一筐体10と第二筐体20とをスムーズにスライドさせることができる。
【0022】
また、図9に示すように、図1に示した基本状態Pから図2に示した使用状態Qに移行させるため、または使用状態Qから基本状態Pに移行させるため、第一筐体10と第二筐体20とをスライドさせている途中の状態(第三の状態)Rにおいては、第一筐体10の上端側に設けられた一対の突起44、44が第二筐体20のスライド面22に突き当たり、第二筐体20の下端側に設けられた一対の突起51、51が第一筐体10の第一主面11に突き当たる。これにより、第一筐体10と第二筐体20とをスライドさせている途中の状態Rにおいて、第一筐体10と第二筐体20とのZ方向へのがたつきを抑えることできる。
【0023】
ところで、上記した第二筐体20の突起51、55は、操作部12の両側において、キーカバー14の表面に突き当たるように形成するのが好ましい。これは、操作部12が、操作性を考慮して第一筐体10の表面より突出して設けられることが多いために、突起51、55と操作部12との干渉を避けるためである。また、キーカバー14を前記したような、摩擦抵抗が低く高摺動性を有する材料であるPET材等で形成することで、突起51がキーカバー14に押し付けられたままスライド動作が行われても、キーカバー14に傷等が付くのを抑えることができる。
【0024】
また、上記帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、互いに対向する少なくとも一方をポリアセタールなどの摺動性のよい材料で形成したり、摺動性のよい材料で塗装等の表面処理を施すことで、突起同士あるいは第一筐体10、第二筐体20との接触を、よりスムーズにすることができる。
【0025】
上述したように、スライド機構30を有する携帯電話機1において、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53を設けることで、第一筐体10と第二筐体20とのスライド動作を損なうことなく、基本状態P、使用状態Q、基本状態Pと使用状態Qの途中の状態Rのいずれにおいても第一筐体10と第二筐体20とのがたつきを抑えることができる。
このとき、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、基本状態Pにおいては、帯状突起41、43、突起44、51、箱状突起53によりX方向、Z方向への拘束力を発揮し、使用状態Qにおいては、突起44、45、55によりZ方向への拘束力を発揮し、スライド途中の状態Rにおいては、突起44、51によってZ方向への拘束力を発揮するようにした。したがって、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53の高さを、基本状態P、使用状態Q、スライド途中の状態Rのそれぞれに適したX方向、Z方向への拘束力を発揮できるように適宜設定することが可能である。
【0026】
しかも、がたつきを抑えるために設けられた帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、帯状突起41を除き、第一筐体10の第一主面11において、基本状態P、使用状態Q、基本状態Pと使用状態Qの途中の状態Rのいずれにおいてもスライド面22に対向する領域、または第二筐体20のスライド面22に形成されている。したがって、帯状突起43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、基本状態P、使用状態Q、基本状態Pと使用状態Qの途中の状態Rのいずれにおいても、携帯電話機1を第一主面11および第二主面21に対向した状態で使用するユーザからは見えない位置に形成されていることになる。したがって、外観の見栄えへの影響を小さくすることができ、また、これら突起を形成する材料や、突起以外の箇所の加飾への制約を軽減することができる。
【0027】
さらに、帯状突起41、箱状突起53は、その内部を電子部品等の内蔵部品の実装空間として利用することが可能となり、内蔵部品の実装効率を高められるという効果もある。
【0028】
なお上記実施の形態において示した構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、適宜変更することが可能である。
以下においては、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53についての変形例を複数示す。
例えば、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、第一筐体10、第二筐体20と一体に形成してもよいし、第一筐体10、第二筐体20とは別体とし、第一筐体10、第二筐体20に、接着あるいは嵌合させる構造としても良い。
さらに、突起44、45、51、55は、第一筐体10、第二筐体20の幅方向両側に一対を設けたが、これらを、帯状突起41、43や箱状突起53のように、第一筐体10、第二筐体20の幅方向に連続する形状とすることも可能である。また逆に、帯状突起41、43や箱状突起53を、第一筐体10、第二筐体20の幅方向両側に一対を設ける構成とすることも可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、基本状態P、使用状態Q、途中の状態Rのいずれにおいても、第一筐体10の上端部に設けられた突起44、44を第二筐体20のスライド面22に常に突き当てていたが、これを、図10に示すように、第二筐体20のスライド面22において上端側と下端側との中間部に一対の突起(第二の突起)56、56を設けるとともに、突起(第二の突起)44’、 44’を、使用状態Qとしたときに突起56、56と突き当たるように設けても良い。
このような構成とすると、基本状態Pと使用状態Qの中間の状態Rにおいては、第一筐体10の上端側で突起44’、 44’が突起56、56と突き当たらないために、第一筐体10と第二筐体20とのスライド動作時のスライド力の強弱を調整することが可能となり、スムーズなスライド開閉が可能となる。また、途中の状態Rから使用状態Qに移行するとき、あるいは使用状態Qから基本状態Pに戻すために使用状態Qから途中の状態Rに移行するときには、突起56、56が突起44’、 44’に乗り上げるため、ユーザにクリック感を与えることもできる。
【0030】
また、上記実施形態においては、互いに突き当たる突起45、55を、それぞれ断面半円形としたが、これを図11(a)に示すように、突起45、55の係合面45a、55aを、第一筐体10と第二筐体20のスライド方向と平行な平面としても良い。
【0031】
また、図11(b)に示すように、突起45、55の係合面45b、55bを、互いに噛み合う傾斜面とすることもできる。
携帯電話機1をはじめとして、一般にスライド式の機器においては、内部に設けたバネ機構等を用い、開いた状態(上記実施形態においては使用状態Q)を維持できるよう、第一筐体10と第二筐体20とに、互いにスライドして開く方向の力をかけている。そこで、この力を利用して、突起45、55の係合面45b、55bを互いに突き当てることで、使用状態Qにおけるがたつきをより小さくすることが可能となる。
【0032】
図11(c)に示すように、突起45、55の係合面45c、55cの一方を凸形状とし、他方を凹形状とし、突起45、55が互いに嵌合する構成とすることもできる。
このような構成とすることで、上記したバネ等を用いなくとも、第一筐体10と第二筐体20とを、使用状態Qに維持することが可能となる。また、途中の状態Rから使用状態Qに移行するとき、あるいは使用状態Qから基本状態Pに戻すために使用状態Qから途中の状態Rに移行するときには、突起45、55の凹凸が互いに嵌合して、ユーザにクリック感を与えることもできる。さらには、突起45、55の凹凸を球表面状とすれば、Z方向だけではなくX方向へのがたつき抑制効果も発揮できる。
【0033】
図11(d)に示すように、突起45、55の係合面を、図11(a)に示したような第一筐体10および第二筐体20のスライド方向と平行な平面45e、55eと、図11(b)に示したような傾斜面45d、55dとの複合形状とすることもできる。
この場合、図11(b)に示した構成と同様の効果が得られるほか、スライド方向に平行な平面45e、55eを備えているため、Z方向やX方向から負荷が掛かった場合のズレを抑制できる。
【0034】
また、他の部分の突起についても同様である。例えば、第二筐体20の下端側に形成した突起(第一の突起)51、51は、断面半円形状ではなく、図12に示すように、突起(第一の突起)51’、51’の先端部の断面を台形形状にすることもできる。これにより、第一筐体10と第二筐体20のスライド開閉時に、さらに良好な摺動性が得られる。
【0035】
また、上記実施形態で示した帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、適宜組み合わせて一体に形成することができる。例えば、X方向に対する拘束力を発揮するものと、Z方向に対する拘束力を発揮するものを一体にしても良いし、逆に、X方向、Z方向に対する拘束力を有しているものを、別個に設けるようにしても良い。
例えば、突起44、45、帯状突起43は、レール31と一体に形成することもできる。また、帯状突起43と突起44は一体化することも可能である。
【0036】
上記実施形態では、レール31を樹脂または金属で形成することとしたが、レール31を、金属板を折り曲げ形成する、いわゆる板金にて形成することもできる。この場合、図8に示したレール31の凸部31aに代わるものとして、図10に示すように、レール31の下端部には、第一筐体10の凹部15に収まり、かつ凹部15内でキーカバー14の上端部の舌片14a、14aを抑えるための爪31bを形成する。
このように、レール31を板金により形成すると、レール31、すなわちスライド機構30を薄型化して、携帯電話機1の薄型化を可能とすることができる。この場合、帯状突起41、43、突起44、45、51、55、箱状突起53は、は、板金製のレール31に合わせて設定すればよい。
【0037】
この他、上述した各実施形態では、携帯電話機1について説明したが、第一筐体10、第二筐体20の構成は上記した構成以外であっても良い。
また、本発明は、携帯電話機1に限定されるものではなく、例えばノートブック型のパーソナルコンピュータ、PDA、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の各種スライド開閉式電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 携帯電話機(スライド開閉式電子機器)
10第一筐体
11第一主面(第一の平面)
12操作部
14キーカバー(カバー部材)
14a 舌片
15凹部
15a 傾斜底面(傾斜面)
20第二筐体
21第二主面
22スライド面(第二の平面)
23表示画面部
30スライド機構
31レール
31a 凸部
31b 爪
32長穴
41帯状突起(第三の突起)
43帯状突起(第三の突起)
44突起(第一の突起)
44’ 突起(第二の突起)
45突起(第二の突起)
45a 係合面
45b 係合面
45c 係合面
45d 傾斜面
45e 平面
51、51’ 突起(第一の突起)
52凹部
53箱状突起(第三の突起)
55突起(第二の突起)
56突起(第二の突起
P 基本状態(第一の状態)
Q 使用状態(第二の状態)
R 途中の状態(第三の状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に第一の平面を有した第一筐体と、
前記第一筐体の前記第一の平面に対向する第二の平面を有した第二筐体と、
前記第一筐体と前記第二筐体とを前記第一の平面に沿った方向に互いにスライド可能とするスライド機構と、を備え、
前記第一筐体と前記第二筐体は、
前記スライド機構により、前記第一筐体と前記第二筐体が前記第一の平面と前記第二の平面とを重なり合わせた第一の状態と、
前記第一筐体と前記第二筐体とを前記第一の状態から前記第一の平面に沿った方向に所定寸法だけスライドさせた第二の状態と、
前記第一の状態と前記第二の状態との間の第三の状態とに移行可能とされ、
前記第一筐体または前記第二筐体の一方に形成され、前記第一の状態および前記第三の状態において、前記第一筐体または前記第二筐体の他方に突き当たることで、前記第一筐体と前記第二筐体の、前記第一の平面に直交するZ方向への相対変位を規制する第一の突起と、
前記第一筐体および前記第二筐体の双方に形成され、前記第二の状態において互いに係合することで前記第一筐体と前記第二筐体の前記Z方向への相対変位を規制する第二の突起と、
前記第一筐体および前記第二筐体の双方に形成され、前記第一の状態において互いに係合することで、前記第一筐体と前記第二筐体の、前記スライド機構におけるスライド方向に直交し、かつ前記第一の平面に沿ったX方向への相対変位を規制する第三の突起と、を備え、
前記第一の突起、前記第二の突起、前記第三の突起は、前記第一の平面において前記第二の状態で前記第二の平面と対向する領域、または前記第二の平面に形成されていることを特徴とするスライド開閉式電子機器。
【請求項2】
前記第一の突起、前記第二の突起、前記第三の突起が、前記第一の状態、前記第二の状態、前記第三の状態のいずれにおいても、前記第一筐体の前記第一の平面側から見たときに視認されない位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項3】
前記第一の突起、前記第二の突起、前記第三の突起は、前記第一の筐体または前記第二の筐体とは別体の部材からなり、前記第一の平面または前記第二の平面に固着されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項4】
前記第一の平面に、前記スライド開閉式電子機器への入力操作を行うための操作部が設けられるとともに、前記操作部の周囲に、他の部分よりも低い摩擦係数を有した材料からなるカバー部材が設けられ、
前記第一の突起は、前記第三の状態において前記カバー部材に突き当たった状態で摺動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項5】
前記第一の筐体には、前記第二の状態で前記第二の平面と対向する領域に、傾斜面を有した凹部が設けられ、
前記カバー部材は、前記凹部の前記傾斜面に沿って位置する舌片が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項6】
前記第一の突起は、前記第二の状態において、前記凹部に対向した位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項7】
前記第一の突起、前記第二の突起、前記第三の突起の少なくとも一つが、一方向に連続する帯状または箱状であり、内部に電子部品が実装されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項8】
互いに対向する前記第三の突起は、前記第一筐体と前記第二筐体のスライド方向と平行な係合面を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のスライド開閉式電子機器。
【請求項9】
互いに対向する前記第三の突起は、前記第一筐体と前記第二筐体のスライド方向に対して傾斜した係合面を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のスライド開閉式電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−59104(P2013−59104A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253623(P2012−253623)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2008−327365(P2008−327365)の分割
【原出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】