説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物及び成形品

【課題】
低温溶融性および高温の使用環境下での耐変形性により優れるスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を提供する。
【解決手段】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)を主体とし、1分子内にラジカル重合性不飽和基(a)を2〜10個含有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)および1分間に分解して分子数が1/2になる温度が170℃〜200℃である有機過酸化物(B)を含有することを特徴とし、ラジカル重合性不飽和基(a)が(メタ)アクリロイル基および(メタ)アリル基からなる群より選ばれる1種以上の基であることが好ましいスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温溶融性及び高温の使用環境下での耐変形性に優れたスラッシュ成形用の樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射下および高温下での長期耐久性を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物を含有したスラッシュ成形用の樹脂組成物が知られている。(例えば、特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−103956号公報
【特許文献2】特開2001−192549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スラッシュ成形時に低温成形が可能な良溶融性樹脂からなる樹脂成形品は、熱軟化温度が低く、高温の使用環境等における変形、成形品同士の接着があることがわかってきた。
このため、高温下での耐変形性の向上を目的に、スラッシュ成形に用いるポリウレタン樹脂の熱軟化温度を高くすると、高温下での耐変形性は向上するが、成形時に溶融性が十分でなく成形品の品質が低下することがある。
本発明が解決しようとする課題は、樹脂成形品が溶融性および高温の使用環境下での耐変形性に優れるスラッシュ成形用の樹脂粉末組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)を主体とし、1分子内にラジカル重合性不飽和基(a)を2〜10個含有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)および1分間に分解して分子数が1/2になる温度が170℃〜200℃である有機過酸化物(B)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)からスラッシュ成形して得られる樹脂成形品(T)は、溶融性および高温の使用環境下での耐変形性により優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)は、1分子内にラジカル重合性不飽和基(a)を2〜10個含有する。ラジカル重合性不飽和基(a)としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基、ビニル基、プロペニル基等が挙げられるが、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基が好ましい。
本発明で用いられるラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)としては、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステル[例えばエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート];(メタ)アリルアルコールと多価カルボン酸類とのエステル[例えばジアリルフタレート、トリメリット酸トリアリルエステル等];多価アルコール類のポリ(メタ)アリルエーテル[例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル等];多価アルコール類のポリビニルエーテル[例えばエチレングリコールジビニルエーテル等];多価アルコール類のポリプロペニルエーテル[例えばエチレングリコールジプロペニルエーテル等];マレイン酸とジオールとのエステル[例えばエチレンジマレエート等];イタコン酸とジオールとのエステル[例えばエチレンジイタコネート等]が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ラジカル重合速度の点で、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステル、アリルアルコールと多価カルボン酸類とのエステルおよび多価アルコール類のポリアリルエーテルであり、特に好ましいものはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタアクリレートを示すものとする。
【0008】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)の1分子あたりの不飽和基数は、2〜10、好ましくは3〜6である。官能基数が2未満では架橋量が少なく、紫外線及び/又は電子線を照射した後の熱軟化温度の上昇が不十分であり、10を越える化合物は高分子量となるため粘度が高くなり取り扱いが困難となる。
【0009】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)の重量に対して、好ましくは2〜8重量%、さらに好ましくは3〜5重量%含有される。
【0010】
有機過酸化物(B)は、1分間に分解して分子数が1/2になる温度(以下、半減期温度と記載する。)が170℃〜200℃である化合物である。該温度が180℃〜190℃であると好ましい。
スラッシュ成形において、通常、成形温度は210〜250℃、成形時間は約1分であるので、上記のような有機過酸化物(B)が使用される。
(B)において、半減期温度が170℃未満であるとスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)が十分にメルトする前にラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)が架橋し、溶融性が悪化する可能性がある。また、200℃を超えると成形時間中に十分にラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)が架橋せず、熱軟化温度が上がらない可能性がある。
【0011】
本発明で用いられる有機過酸化物(B)としては、ジアルキルパーオキサイド[例えば、ジクミルパーオキサイド、2,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、D−t−ヘキシルパーオキサイド、D−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等];パーオキシエステル[例えば、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート等];ハイドロパーオキサイド[例えば、クメンハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等];パーオキシケタール[例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ−ブチルパーオキシヘキサン等] ;ケトンパーオキサイド;パーオキシケタール等が挙げられる。半減期温度から、これらのうち好ましいものは、ジクミルパーオキサイド(半減期温度:175.2℃)、2,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(半減期温度:179.8℃)、D−t−ヘキシルパーオキサイド(半減期温度:185.9℃)、D−t−ブチルパーオキサイド(半減期温度:194.3℃)である。

【0012】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)中に含有されるラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)、有機過酸化物(B)の重量比は、好ましくは1:(0.01〜0.17)、更に好ましくは1:(0.05〜0.1)である。ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)、有機過酸化物(B)の重量比を上記範囲内にすることで、スラッシュ成形時に、有機過酸化物(B)の分解生成物で溶融性を悪化させることなく、ラジカル重合性不飽和基(a)の架橋反応を進めることができる。ラジカル重合性不飽和基(a)の架橋反応により、熱軟化温度が上昇し、高温の使用環境下での耐変形性を向上させることができる。
【0013】
本発明の成形前のポリウレタン樹脂にラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)と有機過酸化物(B)を添加・混合する方法としては、特に限定されるものではないが、例えばポリウレタン樹脂を製造後に、必要に応じてポリウレタン樹脂に添加される可塑剤、顔料、安定剤等と混合させる工程で添加・混合させる方法が挙げられる。ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)と有機過酸化物(B)の混合温度として、好ましくは70〜85℃、更に好ましくは74〜82℃である。
【0014】
上記、混合に使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置[ヘンシエルミキサー(登録商標)等]、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機[ナウターミキサー(登録商標)等]を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機[ナウターミキサー(登録商標、以下省略)]等を使用するのが好ましい。
【0015】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)は熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる。該熱可塑性ポリウレタン樹脂は、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等からなる樹脂である。高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリイソシアネートとしては、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、両者の混合物が好ましい。
【0016】
本発明において、成形に使用される熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末としては、例えば以下の製造方法で得られるものが挙げられる。(1)ウレタン結合およびウレア結合を有し、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平8−120041号公報等に記載されたものを使用することができる。(2)ウレタン結合およびウレア結合を有するウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはジオール)と反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。(3)ジイソシアネートと高分子ジオールと必要に応じて鎖伸長剤(低分子ジオール、低分子ジアミン)とを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
【0017】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmの範囲にある。
【0018】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末は、スラッシュ成形法により樹脂成形体に成形することができる。
スラッシュ成形法としては、たとえば、本発明の樹脂粉末が入ったボックスと加熱した金型とを共に振動回転させ、樹脂粉末を型内で溶融流動させた後、溶融した樹脂を冷却・固化させ、樹脂成形体(表皮等)を製造する方法が含まれる。
【0019】
ポリウレタン表皮(T)の熱軟化温度は、高温の使用環境下での長期耐久性の観点から、好ましくは135〜170℃、更に好ましくは140〜170℃、特に好ましくは145〜170℃である。
【0020】
本発明の樹脂成形品は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等に好適に使用される。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0022】
製造例1
プレポリマー溶液の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(497.9部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(124.5部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](1.12部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(90.7部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.7部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(145.0部)テトラヒドロフラン(125部)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](2.22部)を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液(D)を得た。(D)のNCO含量は、1.35%であった。テトラメチルキシリレンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミド[Mn15,000、末端基:メトキシ基、性状:70%メチルエチルケトン(以下、MEK)溶液、日清紡績(株)社製;Carbodilite V−09B](2.15部)を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液を得た。プレポリマー溶液のNCO含量は、1.30%であった。
【0023】
製造例2
ジアミンのMEK(メチルエチルケトン)ケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミンと過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0024】
製造例3
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末の製造
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(C1)(100部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(3.6部)を投入し、そこにジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8)(1.3重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D1)を製造した。(D1)のMnは2.5万、体積平均粒径は146μm、ガラス転移温度は−35℃であった。
【0025】
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の製造
実施例1
100Lのナウターミキサー内に、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D1)(100部)、芳香族縮合リン酸エステル(トリクロロ燐酸とビスフェノールAとフェノールの反応生成物)[大八化学(株)社製;CR−741](6.0部)、ラジカル重合性不飽和基含有化合物ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(A1) [三洋化成工業(株)社製;ネオマーDA600](3.9部)、有機過酸化物D−t−ブチルパーオキサイド(B1)(半減期温度:185.9℃)[日本油脂(株)社製; パーブチルD](0.4部)、耐光安定剤ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN 765、チバ社製](0.27部)を投入し70℃で2時間含浸し樹脂粉末(E1)を得た。含浸2時間後、2種類の内添離型剤であるジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;ケイL45−1000](0.1部)、カルボキシル変性シリコン[信越化学工業(株)製;X−22−3710](0.1部)、を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。最後に、ブロッキング防止剤架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S](0.3部)を投入混合することでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S1)を得た。(S1)の体積平均粒径は150μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0026】
実施例2
実施例1において、(A1)3.9部の代わりに、(A1)3.1部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S2)を得た。(S2)の体積平均粒径は149μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.13、(D)に対する(A)の含有量は3.1重量%であった。
【0027】
実施例3
実施例1において、(A1)3.9部の代わりに、トリメチロールプロパントリアクリレート[三洋化成工業(株)社製;ネオマーTA300](A2)3.9部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S3)を得た。(S3)の体積平均粒径は149μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0028】
実施例4
実施例1において、(A1)3.9部の代わりに、トリペンタエリスリトールペンタアクリレート(A3)3.9部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S4)を得た。(S4)の体積平均粒径は150μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0029】
実施例5
実施例1において、(A1)3.9部の代わりに、(A1)4.9部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S5)を得た。(S5)の体積平均粒径は151μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.08、(D)に対する(A)の含有量は4.9重量%であった。
【0030】
実施例6
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、(B1)0.2部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S6)を得た。(S6)の体積平均粒径は150μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.05、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0031】
実施例7
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、(B1)0.7部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S7)を得た。(S7)の体積平均粒径は150μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.18、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0032】
実施例8
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、ジクミルパーオキサイド(B2)(半減期温度:175.2℃)[日本油脂(株)社製; パークミルD](0.4部)とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S8)を得た。(S8)の体積平均粒径は151μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0033】
実施例9
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(B3)(半減期温度:194.3℃)[日本油脂(株)社製; パーヘキシル25B−40](0.4部)とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S9)を得た。(S9)の体積平均粒径は150μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0034】
比較例1
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、(B1)0部とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S10)を得た。(S10)の体積平均粒径は151μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0035】
比較例2
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、t−ブチルオキシラウレート(B4)(半減期温度:159.4℃)[日本油脂(株)社製; パーブチルL](0.4部)とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S11)を得た。(S11)の体積平均粒径は149μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0036】
比較例3
実施例1において、(B1)0.4部の代わりに、クメンハイドロパーオキサイド(B5)(半減期温度:232.5℃)[日本油脂(株)社製; パークミルH](0.4部)とする以外は実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S12)を得た。(S12)の体積平均粒径は152μmであった。
(A):(B)の重量比は1:0.10、(D)に対する(A)の含有量は3.9重量%であった。
【0037】
実施例1〜8のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S1)〜(S9)、及び比較例1〜3のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S10)〜(S12)を使用して、下記に示す方法で表皮を成形し、裏面溶融性の確認、熱軟化温度の測定、耐熱変形試験および熱接着試験を行った。
結果を表1に示した。
【表1】

【0038】
<表皮の作成>
低温成形を目的に、予め230℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型にスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を充填し、10秒後余分な粉末樹脂粉末組成物を排出する。210℃で更に90秒加熱後、水冷して表皮(厚さ1mm)を作成した。この成形表皮の裏面溶融性の評価、熱軟化温度の測定および耐熱試験を行った。
【0039】
<裏面溶融性>
成形表皮裏面中央部を、以下の判定基準で溶融性を評価する。
5:均一で光沢がある。
4:一部未溶融のパウダーが有るが、光沢がある。
3:裏面全面に凹凸があり、光沢はない。表面に貫通するピンホールはない。
2:裏面全面にパウダーの形状の凹凸があり、かつ表面に貫通するピンホールはない。
1:パウダーが溶融せず、成形品にならない。
【0040】
<熱軟化温度測定方法>
機器:熱機械分析装置TMA/SS6100
データ処理装置EXSTAR6000[エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製]
測定条件:測定温度範囲25〜250℃、昇温速度5℃/min、荷重5g、針直径0.
5mm。
解析方法:TMAチャートにおいて、「JIS K7121−1987、P.5、図3階段状変化」の方法に準じて、TMA曲線の接線の交点を求め、熱軟化温度とする。
【0041】
<耐変形性試験>
成形表皮を、循環乾燥機中に、130℃で400時間処理した。試験後、表皮の色褪せおよびグロスを確認した。
【0042】
評価基準
色褪せ
表皮サンプルを直接目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:変色無し
△:変色あり
×:著しく変色
グロス
光沢計(ポータブルグロスメーターGMX−202:ムラカミカラーリサーチラボラトリー製)を用いて、グロス測定を実施した。グロス値が高いほど、艶がある。耐熱試験前のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S1)〜(S11)の成形表皮グロスは全て1.0であった。
【0043】
<熱接着試験>
成形表皮を、二枚重ね合わせ、循環乾燥機中に、130℃で100時間処理した。試験後、表皮が接着しているか否か確認した。
【0044】
評価基準
熱接着
二枚重ね合わせた表皮サンプルを直接目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:接着なし
×:接着あり
【0045】
本発明の実施例1〜9は、裏面溶融性も問題なく、熱軟化温度が高いことで、耐変形性および熱接着性も向上していることがわかる。
比較例1は有機過酸化物(B)を含有しないことで、裏面溶融性は問題ないが、熱軟化温度が低く、耐変形性および熱接着性に乏しいことがわかる。
比較例2は有機過酸化物(B)の半減期温度が170℃以下であることから、裏面溶融性は悪いが、熱軟化温度が高いことで、耐変形性および熱接着性も向上していることがわかる。
比較例3は有機過酸化物(B)の半減期温度が200℃以上であることから、裏面溶融性は問題ないが、熱軟化温度が低く、耐変形性および熱接着性に乏しいことがわかる。

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリムの表皮として好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)を主体とし、1分子内にラジカル重合性不飽和基(a)を2〜10個含有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)および1分間に分解して分子数が1/2になる温度が170℃〜200℃である有機過酸化物(B)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項2】
ラジカル重合性不飽和基(a)が、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アリル基からなる群より選ばれる1種以上の基である請求項1に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項3】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)、有機過酸化物(B)の重量比が1:(0.01〜0.17)である請求項1又は2に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項4】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)が、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(D)の重量に対して、2〜8重量%含有される請求項1〜3のいずれかに記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)をスラッシュ成形して得られる樹脂成形品(T)。



【公開番号】特開2010−222477(P2010−222477A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71581(P2009−71581)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】