スラブ構築方法およびデッキプレート構造物
【課題】骨組みの施工と平行してデッキプレート構造物を組み立てることができ、短い工期でスラブを構築することができるスラブ構築方法を提供する。
【解決手段】スラブ構築方法は、複数本の柱33を設置しつつそれら柱33の上方に主梁34を架設して建造物14の骨組み35を施工する骨組み施工工程と、骨組み施工工程と同時に、縦方向へ長い金属板と金属板の上面に設置されて縦方向へ延びる鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートを横方向へ連結しつつ、横方向へ延びる取付梁12を金属板の下面に固定してデッキプレート構造物10を組み立てるデッキプレート構造物組立工程と、構造物10を吊り上げて柱33と主梁34とに囲繞された上層階のスペース42に構造物10を配置しつつ、所定の連結手段を介して主梁34と取付梁12とを連結して構造物10をスペース42に設置するデッキプレート構造物設置工程とを有する。
【解決手段】スラブ構築方法は、複数本の柱33を設置しつつそれら柱33の上方に主梁34を架設して建造物14の骨組み35を施工する骨組み施工工程と、骨組み施工工程と同時に、縦方向へ長い金属板と金属板の上面に設置されて縦方向へ延びる鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートを横方向へ連結しつつ、横方向へ延びる取付梁12を金属板の下面に固定してデッキプレート構造物10を組み立てるデッキプレート構造物組立工程と、構造物10を吊り上げて柱33と主梁34とに囲繞された上層階のスペース42に構造物10を配置しつつ、所定の連結手段を介して主梁34と取付梁12とを連結して構造物10をスペース42に設置するデッキプレート構造物設置工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の上層階にスラブを構築するスラブ構築方法およびそのスラブの構築に使用するデッキプレート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
所定面積を有する金属板と、金属板の上面に位置して縦方向へ延びる複数の鉄筋トラスと、金属板の上面に位置して縦方向と交差する横方向へ延びる複数の横筋とを備え、鉄筋トラスが、金属板の上面から上方に位置して縦方向へ延びる上端筋と、金属板と上端筋との間に位置して縦方向へ延びる一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら縦方向へ延びる一対のラチス筋とから形成されたデッキプレートがある(特許文献1参照)。デッキプレートでは、ラチス筋がその上部から下部に向かって末広がりになり、ラチス筋の上部が上端筋に溶接され、ラチス筋の中間部が下端筋に溶接され、ラチス筋の下部が金属板の上面に溶接されている。横筋は、上端筋の上部に配置され、上端筋との交差箇所において結束線を介して上端筋に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−275740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のデッキプレートは、それを使用して建造物の上層階にスラブを構築する場合、建造物の骨組みが完成した後、複数のデッキプレートをクレーンによって順に吊り上げ、上層階における柱と梁との間のスペースに形成された型枠内にデッキプレートを順に配置しつつ、作業者がデッキプレートの上に乗ってそれの端部や側部を1つ1つ梁に溶接し、デッキプレートを横方向へ連結してデッキプレート構造物を作る。次に、デッキプレートを形成する上端筋の上部に横筋を配置し、上端筋との交差箇所において結束線を介して上端筋と横筋とを連結した後、デッキプレートの上方から型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、型枠を外してスラブが完成する。
【0005】
なお、前記手順によってスラブを構築する場合、作業者がデッキプレートの上に乗って作業を行わなければならず、作業者の安全のために上層階のスペースの下方に安全ネットを敷設するとともに、作業者がデッキプレートを1つ1つ梁に溶接しなければならず、スラブの構築に手間と時間とを要していた。また、建造物の骨組みが完成するまでの間、デッキプレートの設置作業を行うことができず、骨組みの施工と平行して複数のデッキプレート構造物を事前に組み立てることができなかった。したがって、骨組みの施工が遅延すると、それにともなってデッキプレートの設置作業が遅延し、スラブ構築の工期を短縮することができなかった。また、デッキプレートの組立業者が他の現場に移ることができず、組立業者の仕事の回転率が低下していた。
【0006】
本発明の目的は、手間と時間とを要せずに建造物の上層階にスラブを構築することができるスラブ構築方法およびそのスラブの構築に使用するデッキプレート構造物を提供することにある。本発明の他の目的は、骨組みの施工と平行してデッキプレート構造物を組み立てることができ、短い工期でスラブを構築することができるとともに、デッキプレート構造物の組立業者の仕事の回転率を向上させることができるスラブ構築方法およびそのスラブの構築に使用するデッキプレート構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、建造物の上層階にスラブを構築するスラブ構築方法である。
【0008】
前記第1の前提における本発明のスラブ構築方法の特徴は、スラブ構築方法が、上下方向へ延びる複数本の柱を設置しつつ、それら柱の上方に主梁を架設して建造物の骨組みを施工する骨組み施工工程と、骨組み施工工程と同時に、所定面積を有して第1方向へ長い金属板と金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートを第1方向と交差する第2方向へ連結しつつ、第2方向へ延びる取付梁を金属板の下面に固定して所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるデッキプレート構造物組立工程と、デッキプレート構造物を吊り上げて柱と主梁とに囲繞された上層階のスペースにデッキプレート構造物を配置しつつ、所定の連結手段を介して主梁と取付梁とを連結してデッキプレート構造物をスペースに設置するデッキプレート構造物設置工程とを有することにある。
【0009】
本発明にかかるスラブ構築方法の一例としては、スラブ構築方法が、デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、組み立てた複数のデッキプレート構造物を地上において上下方向へ積み重ねるデッキプレート構造物仮置き工程を含み、骨組み施工工程では、デッキプレート構造物設置工程によって所定の階にデッキプレート構造物が設置された後、その直上の階の骨組みを施工し、デッキプレート構造物設置工程では、デッキプレート構造物仮置き工程によって積み重ねたデッキプレート構造物を上から順に所定の階毎に設置する。
【0010】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、スラブ構築方法が、デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、金属板の上面における取付梁の直上にデッキプレート構造物の吊り上げ用フックを配置し、吊り上げ用フックを取付梁に着脱可能に取り付けるフック設置工程を含む。
【0011】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、スラブ構築方法が、デッキプレート構造物設置工程の後、第1方向へ所定寸法離間しつつ第2方向へ延びる複数の横筋をデッキプレートの鉄筋トラスに結束線を介して連結する配筋工程と、配筋工程の後、金属板の上面にセメント硬化物を打設する打設工程とを含む。
【0012】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、主梁と取付梁とを連結する連結手段が、上下方向へ並ぶ複数の第1連結孔が穿孔されて主梁の側部に固定された第1連結治具と、上下方向へ並ぶ複数の第2連結孔が穿孔されて取付梁の両端部に固定された第2連結治具とから形成され、デッキプレート構造物設置工程では、第1連結治具の第1連結孔と第2連結治具の第2連結孔とを一致させつつ、それら連結孔にボルトを挿通し、ボルトにナットを螺着して主梁と取付梁とを連結する。
【0013】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例として、スラブ構築方法では、金属板の上面から上方に位置して第1方向へ延びる上端筋と、金属板と上端筋との間に位置して第1方向へ延びる一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから鉄筋トラスを形成し、ラチス筋の上部を上端筋に溶接し、ラチス筋の中間部を下端筋に溶接するとともに、ラチス筋の下部を金属板の上面に溶接してデッキプレートを製造する。
【0014】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例として、スラブ構築方法では、金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条を上端筋の両側に位置するように金属板に形成し、ラチス筋の下部を金属板の上面と並行するように第2方向へ折り曲げて脚を形成し、脚のうちの凸条と交差する部分を金属板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接してデッキプレートを製造する。
【0015】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、取付梁がH形鋼であり、デッキプレート構造物組立工程では、H形鋼のフランジを金属板の下面に溶接する。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、建造物の上層階のスラブの構築に使用するデッキプレート構造物である。
【0017】
前記第2の前提における本発明のデッキプレート構造物の特徴は、デッキプレート構造物が、所定面積を有する金属板と金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成されて第1方向と交差する第2方向へ連結された複数のデッキプレートと、第1方向へ所定寸法離間しつつ第2方向へ延びていて金属板の下面に溶接されたH形鋼と、金属板の上面におけるH形鋼の直上に位置してH形鋼に着脱可能に取り付けられた吊り上げ用フックとから形成され、上下方向へ並ぶ複数の連結孔が穿孔された連結治具がH形鋼の両端部に形成されていることにある。
【0018】
本発明にかかるデッキプレート構造物の一例としては、鉄筋トラスが、金属板の上面から上方に位置して第1方向へ延びる上端筋と、金属板と上端筋との間に位置して第1方向へ延びる一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから形成され、ラチス筋の上部が上端筋に溶接され、ラチス筋の中間部が下端筋に溶接され、ラチス筋の下部が板材の上面に溶接されている。
【0019】
本発明にかかるデッキプレート構造物の他の一例としては、金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条が上部筋の両側に位置するように金属板に形成され、ラチス筋の下部が金属板の上面と並行するように第2方向へ屈曲して凸条と二点で交差し、ラチス筋の下部のうちの凸条と交差するそれら部分が金属板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかるスラブ構築方法によれば、デッキプレート構造物を吊り上げて柱と主梁とに囲繞された上層階のスペースにデッキプレート構造物を配置しつつ、所定の連結手段を介して主梁と取付梁とを連結してデッキプレート構造物をスペースに設置するから、従来のスラブ構築方法のように作業者がデッキプレート1つ1つの上に乗ってデッキプレートの端部や側部を主梁に溶接する必要はなく、さらに、安全ネットを敷設する必要もなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物を設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、骨組みの施工と同時に、所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるから、骨組みの施工の進捗状況にかかわらず、複数のデッキプレート構造物を組み立てることができ、骨組みの施工と平行して複数のデッキプレート構造物を事前に作っておくことができる。スラブ構築方法は、骨組みの施工が遅れたとしても、骨組みの施工完了の直後にデッキプレート構造物を上層階のスペースに速やかに設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。また、骨組みの施工の進捗状況にかかわらず、デッキプレートの組立業者が他の現場に移ることができ、組立業者の仕事の回転率を向上させることができる。
【0021】
デッキプレート構造物を組み立てた後、骨組み施工工程と並行しつつ、組み立てた複数のデッキプレート構造物を地上において上下方向へ積み重ね、所定の階にデッキプレート構造物が設置された後、その直上の階の骨組みを施工し、積み重ねたデッキプレート構造物を上から順に所定の階毎に設置するスラブ構築方法は、建造物の上層階のうちの最も低い階から順にデッキプレート構造物を設置し、そのデッキプレート構造物をその階に設置した後にその直上の階の骨組みを施工するとともに、積み重ねたデッキプレート構造物を直上の階に上から順に設置するから、デッキプレート構造物の組立業者が骨組みの施工の進捗状況に応じてデッキプレート構造物を組み立てる必要はなく、組立業者が必要な数のデッキプレート構造物を事前に組み立て、それらデッキプレート構造物を建造物の近傍における地上に積み重ねておけばよく、組立業者が組み立て作業と積み上げ作業とを行った後、すぐに次の現場の仕事に取りかかることができ、組立業者の仕事の回転率を向上させることができる。スラブ構築方法は、積み重なるそれらデッキプレート構造物を上から順に上層階のスペースに設置すればよく、作業者がデッキプレート1つ1つの上に乗ってデッキプレートの端部や側部を主梁に溶接する必要はなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物を設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。
【0022】
デッキプレート構造物を組み立てた後、骨組み施工工程と並行しつつ、金属板の上面における取付梁の直上にデッキプレート構造物の吊り上げ用フックを配置し、吊り上げ用フックを取付梁に着脱可能に取り付けるスラブ構築方法は、デッキプレート構造物を吊り上げるための吊り上げ用フックを組み立てたデッキプレート構造物の取付梁に取り付けるだけの作業によってデッキプレート構造物を吊り上げることができ、デッキプレート構造物の吊り上げに他の作業が伴うことはなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物を設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。
【0023】
デッキプレート構造物を設置した後、第1方向へ所定寸法離間しつつ第2方向へ延びる複数の横筋をデッキプレートの鉄筋トラスに結束線を介して連結し、横筋を配筋した後、金属板の上面にセメント硬化物を打設するスラブ構築方法は、上層階のスペースにおけるデッキプレート構造物の設置に手間と時間とを要せず、デッキプレート構造物を短期間に設置することができ、設置したデッキプレート構造物の鉄筋トラスに横筋を配筋した後、金属板の上面にセメント硬化物を打設することでスラブを構築することができるから、短い工期でスラブを構築することができる。
【0024】
連結手段が上下方向へ並ぶ複数の第1連結孔が穿孔されて主梁の側部に固定された第1連結治具と上下方向へ並ぶ複数の第2連結孔が穿孔されて取付梁の両端部に固定された第2連結治具とから形成され、第1連結治具の第1連結孔と第2連結治具の第2連結孔とを一致させつつ、それら連結孔にボルトを挿通し、ボルトにナットを螺着して主梁と取付梁とを連結するスラブ構築方法は、第1連結治具と第2連結治具とから形成される連結手段によって主梁と取付梁とを連結するだけで、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物の設置することができるから、デッキプレート構造物を短期間に設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。
【0025】
金属板の上面から上方に位置する上端筋と、金属板と上端筋との間に位置する一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながらその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから鉄筋トラスを形成し、ラチス筋の上部を上端筋に溶接し、ラチス筋の中間部を下端筋に溶接するとともに、ラチス筋の下部を金属板の上面に溶接してデッキプレートを製造するスラブ構築方法は、デッキプレートが金属板と鉄筋トラスとから形成され、鉄筋トラスが上端筋と一対の下端筋と上下方向へ波状に曲折を繰り返す一対のラチス筋とを含み、ラチス筋が上端筋と下端筋との間を補強する補強筋としての機能を有するから、デッキプレート構造物が十分な強度を有するのみならず、それにセメント硬化物を打設した場合のそのセメント硬化物に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にセメント硬化物が耐え得るようにセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、ラチス筋の下部が金属板に当接するから、金属板が存在しない場合と比較し、デッキプレート構造物にセメント硬化物を打設したときに、ラチス筋の下部がセメント硬化物から露出することはなく、ラチス筋がセメント硬化物から露出することによるラチス筋の腐食やラチス筋の腐食によるスラブの強度低下を防ぐことができる。
【0026】
金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条を上端筋の両側に位置するように金属板に形成し、ラチス筋の下部を金属板の上面と並行するように第2方向へ折り曲げて脚を形成し、脚のうちの凸条と交差する部分を金属板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接してデッキプレートを製造するスラブ構築方法は、金属板の凸条とラチス筋の脚との溶接箇所が鉄板の上面よりも上方となるから、金属板の上面のみならず、金属板の下面に溶接による跡が生じることがないスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、凸条が金属板の可撓性を抑制するから、金属板の撓みや歪みを防ぐことができ、金属板とラチス筋との固定が解除されることはなく、デッキプレート構造物によってセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【0027】
取付梁がH形鋼であり、H形鋼のフランジを金属板の下面に溶接するスラブ構築方法は、H形鋼のフランジを金属板の下面に溶接することで、取付梁をデッキプレートに強固に設置することができ、デッキプレート構造物を上層階のスペースに設置したときにデッキプレート構造物と取付梁との固定が解除されることはなく、デッキプレート構造物によってセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【0028】
本発明にかかるデッキプレート構造物によれば、それが所定面積を有する金属板と金属板の上面に設置された鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートと、金属板の下面に固定されたH形鋼とから形成されているから、デッキプレート構造物が十分な強度を有するのみならず、それにセメント硬化物を打設した場合のそのセメント硬化物に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にセメント硬化物が耐え得るようにセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【0029】
金属板の上面から上方に位置する上端筋と、金属板と上端筋との間に位置する一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながらその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから鉄筋トラスが形成され、ラチス筋の上部が上端筋に溶接され、ラチス筋の中間部が下端筋に溶接され、ラチス筋の下部が金属板の上面に溶接されたデッキプレート構造物は、デッキプレートが金属板と鉄筋トラスとから形成され、鉄筋トラスが上端筋と一対の下端筋と上下方向へ波状に曲折を繰り返す一対のラチス筋とを含み、ラチス筋が上端筋と下端筋との間を補強する補強筋としての機能を有するから、デッキプレート構造物が十分な強度を有するのみならず、それにセメント硬化物を打設した場合のそのセメント硬化物に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にセメント硬化物が耐え得るようにセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。デッキプレート構造物は、ラチス筋の下部が金属板に当接するから、金属板が存在しない場合と比較し、デッキプレート構造物にセメント硬化物を打設したときに、ラチス筋の下部がセメント硬化物から露出することはなく、ラチス筋がセメント硬化物から露出することによるラチス筋の腐食やラチス筋の腐食によるスラブの強度低下を防ぐことができる。
【0030】
金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条が上部筋の両側に位置するように金属板に形成され、ラチス筋の下部が金属板の上面と並行するように第2方向へ屈曲して凸条と二点で交差し、ラチス筋の下部のうちの凸条と交差するそれら部分が鉄板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接されているデッキプレート構造物は、金属板の凸条とラチス筋の脚との溶接箇所が鉄板の上面よりも上方となるから、金属板の上面のみならず、金属板の下面に溶接による跡が生じることがないスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、凸条が金属板の可撓性を抑制するから、金属板の撓みや歪みを防ぐことができ、金属板とラチス筋との固定が解除されることはなく、デッキプレート構造物によってセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一例として示すデッキプレートの斜視図。
【図2】図1の2−2線端面図。
【図3】デッキプレートの部分拡大側面図。
【図4】一例として示すデッキプレート構造物の斜視図。
【図5】吊り下げ用フックを示すデッキプレート構造物の拡大斜視図。
【図6】H形鋼に形成された連結治具の拡大斜視図。
【図7】骨組み施工工程の一例を示す図。
【図8】骨組み施工工程およびデッキプレート構造物仮置き工程の一例を示す図。
【図9】主梁に作られた連結治具の斜視図。
【図10】デッキプレート構造物設置工程の一例を示す図。
【図11】主梁と取付梁との連結を説明する図。
【図12】連結後の主梁と取付梁とを示す図。
【図13】2階のスペースにデッキプレート構造物を設置した後の状態を示す図。
【図14】2階のスペースにデッキプレート構造物を設置した後の状態を金属板の下面の側から示す図。
【図15】2階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する配筋工程を説明する図。
【図16】2階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する打設工程を説明する図。
【図17】骨組み施工工程の他の一例を示す図。
【図18】デッキプレート構造物設置工程の他の一例を示す図。
【図19】3階のスペースにデッキプレート構造物を設置した後の状態を示す図。
【図20】3階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する配筋工程を説明する図。
【図21】3階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する打設工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一例として示すデッキプレート11の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係るスラブ構築方法およびデッキプレート構造物10の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の2−2線端面図であり、図3は、デッキプレート11の部分拡大側面図である。図4は、一例として示すデッキプレート構造物10の斜視図であり、図5は、吊り下げ用フック13を示すデッキプレート構造物10の拡大斜視図である。図6は、H形鋼12に形成された連結治具30の拡大斜視図である。
【0033】
図1〜4では、縦方向(第1方向)を矢印X(図2を除く)、横方向(第2方向)を矢印Yで示し(図3を除く)、上下方向を矢印Zで示す。図1,4では、デッキプレート11やデッキプレート構造物10の縦方向の図示を一部省略している。スラブ構築方法では、建造物14の上層階にスラブ15を構築する。デッキプレート構造物10は、横方向へ連結された複数のデッキプレート11と、複数のH形鋼12(取付梁)および複数の吊り上げ用フック13とから形成されている。
【0034】
デッキプレート11は、図1に示すように、所定面積を有する縦方向へ長い金属板16(鉄板)と、金属板16の上面に位置して縦方向へ延びる2つの鉄筋トラス17とから作られている。それら鉄筋トラス17は、金属板16の上面18において横方向へ略等間隔で並んでいる。各鉄筋トラス17は、金属板16を横方向へ二分した各領域のうち、一方の領域の略中央と他方の領域の略中央とに設置されている。それら鉄筋トラス17は、1本の上端筋19(鉄棒)と2本(一対)の下端筋20(鉄棒)と2本(一対)のラチス筋21(鉄棒)とから形成されている。上端筋19や下端筋20、ラチス筋21は、鉄を延伸して作られた断面円形の鉄棒である。なお、鉄筋トラス17の数に時に限定はなく、金属板16の面積やトラス17の大きさにより、金属板16に3つ以上のトラス17が設置されていてもよい。
【0035】
金属板16は、縦方向へ延びる両側部および横方向へ延びる両端部を有し、略フラットな上面18および下面22を有する。金属板16は、その上下面18,22にメッキ処理が施されている。なお、金属板16の面積に特に限定はなく、構築するスラブ15の大きさによってその面積を自由に設定することができる。金属板16の一方の側部には、図1,2に示すように、金属板16の上面18から上方へ折れ曲がる第1フック23が形成され、金属板16の他方の側部には、金属板16の下面22から下方へ折れ曲がる第2フック24が形成されている。第1フック23と第2フック24とを係合させることで、複数個のデッキプレート11を横方向へ連結することができる。
【0036】
金属板16には、その上面18から上方へ突出する複数の凸条25が形成されている。凸条25は、上端筋19を挟むように上端筋19の横方向両側に位置し、金属板16の上面18において縦方向へ延びている。各鉄筋トラス17毎では、横方向に並ぶそれぞれ2条の凸条25が形成されている。凸条25は、金属板16の一部分を横方向内方へ折り曲げて、金属板16の一部分をその上面18から上方へ向かって山折りし、山折りした部分において金属板16の下面22どうしを隙間なく圧接することで作られている。
【0037】
それら凸条25は、上下方向へ所定の高さ寸法Lを有し、図3に示すように、その側面形状が帯状を呈するとともに、上方から見た形状が略線状を呈する。凸条25の上下方向の高さ寸法Lに特に限定はないが、高さ寸法Lの好ましい範囲は5〜50mmである。凸条25には、その上端から金属板16の上面18に向かって凹む凹部26が形成されている。凹部26は、金属板16の上面18に達することなく、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間している。ゆえに、金属板16の上面18と凹部26との間には凸条25の一部分が延びている。
【0038】
上端筋19は、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間して縦方向へ直状に延びている。上端筋19は、金属板16の両端部間に配置されている。下端筋20は、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間して縦方向へ直状に延びている。それら下端筋20は、上端筋19の下方かつ上端筋19の横方向両側に位置し、金属板16の上面18と上端筋19との間であって金属板16の両端部の間に配置されている。
【0039】
ラチス筋21は、金属板16と上端筋19との間に位置して上下方向へ波状に曲折(起伏)を繰り返しながら縦方向へ延びている。それらラチス筋21は、上端筋19を挟んで横方向へ対称型に配置されている。ラチス筋21は、上部および下部と、上下部の間に延びる中間部とを有する。ラチス筋21は、図2に示すように、その上部から下部に向かって横方向へ末広がりを呈するように金属板16に対して所定角度で傾斜している。
【0040】
ラチス筋21の上部は、上方へ向かって弧を画き、上端筋19の横方向両側に当接した状態で、上端筋19にスポット溶接されている。ラチス筋21の下部は、金属板16の上面18と並行するように、横方向外方へ折り曲げられて脚27を形成している。脚27は、横方向外方へ向かって弧を画き、その一部が凸条25から横方向外方へ突出するとともに、凸条25と二点で交差している。ラチス筋の脚27のうちの凸条25と交差する部分は、凸条25に形成された凹部25に嵌入しつつ、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間した状態で凹部25にスポット溶接されている。それらラチス筋21の中間部は、それら下端筋20の内側に位置し、中間部のうちの下端筋20と交差する部分が下端筋20にスポット溶接されている。
【0041】
なお、ラチス筋21の下部を折り曲げることなく、ラチス筋21の下部に脚27を作らなくてもよい。この場合は、ラチス筋21の下部が凸条25にスポット溶接される。また、金属板16に凸条25を形成しなくてもよい。この場合は、ラチス筋21の脚27が金属板16の上面にスポット溶接される。または、ラチス筋21の下部が金属板16の上面にスポット溶接される。
【0042】
H形鋼12(取付梁)は、金属板16の下面22に固定されて横方向へ延びている。H形鋼12は、一方のフランジ28が金属板16の下面22に溶接されている。H形鋼12の横方向両端部には、図5に示すように、上下方向へ並ぶ複数の連結孔29(第2連結孔)が穿孔された連結治具30(第2連結治具)が作られている。吊り上げ用フック13は、図4に示すように、金属板16の上面18におけるH形鋼12の直上に位置し、H形鋼12のフランジ28に着脱可能に取り付けられている。吊り上げ用フック13は、金属板16を貫通するとともに、H形鋼12のフランジ28を貫通するアンカー31と、アンカー31につながって金属板16の上面18に位置するフック本体32とから形成されている。アンカー31とフック本体32とは、定常状態においてH形鋼12や金属板16から抜け落ちることはない。
【0043】
デッキプレート構造物10では、鉄筋トラス17の上端筋19や下端筋20、ラチス筋21の太さについて特に限定はなく、構築するスラブ15の大きさやスラブ15に必要な強度に合わせてそれら上端筋19や下端筋20、ラチス筋21の太さを自由に設定することができる。上端筋19や下端筋20、ラチス筋21は鉄から作られているが、鉄以外の金属から作ることもできる。また、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21に鉄を用いる場合は、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21にメッキ等の防食処理が施されていてもよい。単位長さ(m)当たりのラチス筋21の曲折を繰り返す回数や金属板16に対するラチス筋21の傾斜角度について特に限定はなく、曲折回数や傾斜角度を自由に設定することができる。取付梁としてH形鋼12を利用しているが、取付梁として他の形状の鋼材(I形鋼やT形鋼、山形鋼等)を使用することもできる。
【0044】
図7は、骨組み施工工程の一例を示す図であり、図8は、骨組み施工工程およびデッキプレート構造物仮置き工程の一例を示す図である。図9は、主梁34に作られた連結治具39の斜視図である。スラブ構築方法では、骨組み施工工程、デッキプレート構造物組立工程、フック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程、デッキプレート構造物設置工程、配筋工程、打設工程を実施する。なお、デッキプレート構造物組立工程やフック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程は、骨組み施工工程と同時(並行)に実施される。
【0045】
骨組み施工工程では、図7,8に示すように、建造物14の建造予定場所に上下方向へ延びる複数本の柱33を設置するとともに、それら柱33の上方に主梁34を架設して建造物14の骨組み35を施工する。主梁34には、H形鋼が使用されている。主梁34のうちの互いに対向するH形鋼のフランジ36とウェブ37とには、図9に示すように、上下方向へ並ぶ複数の連結孔38(第1連結孔)が穿孔された連結治具39(第1連結治具)が溶接によって固定されている。主梁34には、H形鋼の他に、他の形状の鋼材(I形鋼やT形鋼、山形鋼等)を使用することもでき、鉄筋コンクリートや鉄筋鉄骨コンクリートを使用することができる。
【0046】
デッキプレート構造物組立工程におけるデッキプレート構造物10の組立手順の一例を説明すると、以下のとおりである。所定面積の金属板16と、直状に延びる1本の上端筋19と、直状に延びる2本の下端筋20と、波状に起伏を繰り返す2本のラチス筋21とを用意する。金属板16の一方の側部をその上面18に向かって折り曲げて第1フック23を作り、金属板16の他方の側部をその下面22に向かって折り曲げて第2フック24を作る。
【0047】
ラチス筋21の下部を横方向外方へ折り曲げて脚27を形成する。次に、上端筋19とそれらラチス筋21の上部とをスポット溶接し、それら下端筋20とそれらラチス筋21の中間部とをスポット溶接して鉄筋トラス17を作る。鉄筋トラス17では、ラチス筋21がその上部から下部に向かって横方向へ末広がりに傾斜している。
【0048】
次に、金属板16の上面18から上方へ突出して縦方向へ延びる一対の凸条25を金属板16に形成する。鉄筋トラス17の上端筋19が凸条25と平行するとともに、ラチス筋21の脚27が凸条25の上に位置するように、鉄筋トラス17を金属板16の上面18に乗せる。ラチス筋21の脚27を凸条25の上に乗せると、脚27が凸条25に2箇所で交差するとともに、凸条25が上端筋19の両側に位置する。ラチス筋21の脚27のうちの凸条25と交差する2箇所の部分を金属板16の上面18から上方へ離間した状態で凸条25にスポット溶接してデッキプレート11を作る。
【0049】
ラチス筋21の下部を折り曲げることなく、ラチス筋21の下部に脚27を作らない場合は、ラチス筋21の下部を凸条25にスポット溶接する。また、金属板16に凸条25を形成しない場合は、ラチス筋21の脚27を金属板16の上面にスポット溶接する。または、ラチス筋21の下部を金属板16の上面にスポット溶接する。
【0050】
スポット溶接では、図示はしていないが、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21を電極で挟み、電極に高電圧を印加してそれら上端筋19や下端筋20、ラチス筋21を加熱溶融した後、それら上端筋19や下端筋20、ラチス筋21を自然冷却し、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21どうしを溶接箇所において互いに溶着させる。また、ラチス筋21の脚27のうちの凸条25に交差する部分と凸条25とを溶接するには、部分を凸条25の上に乗せた後、凸条25が延びる金属板16の下面22に電極を配置するとともに、部分の上方に電極を配置する。次に、それら電極で金属板16と脚27の部分とを挟み、電極に高電圧を印加して金属板16に形成された凸条25と部分とを加熱溶融した後、金属板16と部分とを自然冷却し、部分と凸条25とを溶接箇所において互いに溶着させる。ここで、凸条25を電極で加熱すると、凸条25がその上端から金属板16の上面18に向かって溶け、凸条25に凹部26が形成されるとともに、凹部26と脚27の部分とが互いに溶着する。
【0051】
前記手順によって複数個のデッキプレート11を作った後、一方のデッキプレート11の第1フック23と他方のデッキプレート11の第2フック24とを係合させ、複数個のデッキプレート11を横方向へ連結する。複数個のデッキプレート11を連結した後、金属板16や鉄筋トラス17の延びる方向と交差する横方向へ延びる2本のH形鋼12(取付梁)を金属板16の下面22に配置する。H形鋼12は、縦方向へ平行して並び、一方のフランジ28が金属板16の下面22に当接する。H形鋼12を金属板16の下面22に配置した後、金属板16とH形鋼12のフランジ28とを溶接し、金属板16とH形鋼12とを溶着してデッキプレート構造物10を作る。なお、図8では金属板16の下面22に2本のH形鋼12が固定されているが、H形鋼12の数を図示に本数に限定するものではなく、デッキプレート構造物10の面積によって3本以上のH形鋼12が金属板16の下面22に溶着されていてもよい。
【0052】
デッキプレート構造物10を作った後、フック設置工程を実施する。フック設置工程における吊り上げ用フック13の設置手順の一例を説明すると、以下のとおりである。金属板16の上面18におけるH形鋼12の直上に4個の吊り上げ用フック13を配置する。吊り上げ用フック13は、デッキプレート構造物10の重量や重心を考慮してそれらの取付位置が決定され、それらの縦方向および横方向の離間距離が略同一となるように、H形鋼12のフランジ28の直上に配置される。吊り上げ用フック13を配置した後、フック13のアンカー31を挿通する貫通孔を作る箇所にマーキングをし、マーキングをした箇所にドリルで貫通孔を穿孔する。貫通孔は、金属板16とH形鋼12のフランジ28とを貫通する。貫通孔を穿孔した後、吊り上げ用フック13のアンカー31を貫通孔に挿通し、アンカー31をH形鋼12のフランジ28に取り付け、フック本体32が金属板16の上面18に位置するように、アンカー31にフック本体32を連結する。なお、吊り上げ用フック13では、アンカー31とフック本体32とを分離することで、アンカー31をH形鋼12や金属板16の貫通孔から抜き取ることができ、フック13をデッキプレート構造物10から取り外すことができる。
【0053】
デッキプレート構造物組立工程およびフック設置工程を実施した後、デッキプレート構造物仮置き工程を実施する。デッキプレート構造物仮置き工程におけるデッキプレート構造物10の仮置き手順の一例を説明すると、以下のとおりである。それら吊り上げ用フック13のフック本体32にワイヤーロープ40を掛け、クレーン車の玉掛具41にワイヤーロープ40を掛けた後、クレーン車のクレーンによってデッキプレート構造物10を吊し上げ(図10参照)、構造物10を建造物14の建造予定地近傍における地上の仮置き場所に降ろす。さらに、次のデッキプレート構造物10をクレーンによって吊し上げ、その構造物10を先に仮起きした構造物10の上に積み重ねる(図8参照)。上下に積む重なるデッキプレート構造物10では、下方に位置する構造物10の上端筋19の上に上方に位置する構造物10のH形鋼12のフランジが当接する。なお、デッキプレート構造物仮置き工程では、建造する建造物14の上層階の数だけデッキプレート構造物10を作り、それら構造物10を仮置き場所に積み重ねる。
【0054】
図10は、デッキプレート構造物設置工程の一例を示す図であり、図11は、主梁34(H形鋼)と取付梁12(H形鋼)との連結を説明する図である。図12は、連結後の主梁34と取付梁12とを示す図であり、図13は、2階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置した後の状態を示す図である。図14は、2階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置した後の状態を金属板16の下面22の側から示す図である。
【0055】
骨組み施工工程やデッキプレート構造物組立工程、フック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程が完了した後、デッキプレート構造物設置工程を実施する。デッキプレート構造物設置工程におけるデッキプレート構造物10の設置手順の一例を説明すると、以下のとおりである。骨組み施工工程によって上層階のうちの最も低い階(2階)の骨組み35を施工した後、図10,13に示すように、デッキプレート構造物仮置き工程によって仮置き場所に積み重ねたデッキプレート構造物10のうちの最も上に位置する構造物10を柱33と主梁34とに囲繞された上層階(2階)のスペース42に配置する。具体的には、デッキプレート構造物10に取り付けられた吊り上げ用フック13のフック本体32にワイヤーロープ40を掛け、クレーン車の玉掛具41にワイヤーロープ40を掛けた後、クレーン車のクレーンによってデッキプレート構造物10を吊し上げ、構造物10をスペース42に移動させ、構造物10を2階のスペース42に配置する。
【0056】
デッキプレート構造物設置工程では、図11に矢印で示すように、デッキプレート構造物10をスペース42の上方から次第に下降させ、主梁34に固定された連結治具39(第1連結治具)と取付梁12に形成された連結治具30(第2連結治具)とを当接させ、連結治具39に穿孔された連結孔38(第1連結孔)と連結治具30に穿孔された連結孔29(第2連結孔)とを一致させる。連結孔29,38どうしを一致させた後、図12に示すように、それら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナット(図示せず)を螺着してそれら連結治具29,38どうしを強固に連結する。
【0057】
連結治具29,38どうしを連結させる場合、図示はしていないが、作業者が地上からリフトに乗り、作業者がリフトによってデッキプレート構造物10の下面(金属板16の下面22)に向かって持ち上げられた後、作業者がそれら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナットを螺着する。このようにデッキプレート構造物設置工程では、作業者がデッキプレート構造物10の下方において連結作業を行い、作業者がデッキプレート構造物10の上に乗って連結作業をすることはない。
【0058】
連結治具29,38どうしを連結させると、図13,14に示すように、デッキプレート構造物10が2階のスペース42に設置される。デッキプレート構造物10を2階のスペース42に設置した後、吊り上げ用フック13のアンカー31とフック本体32とを分離し、アンカー31をH形鋼12や金属板16の貫通孔から引き抜き、フック13を構造物10から取り外す。アンカー31を貫通孔から引き抜いた後、貫通孔が所定の孔埋め手段によって塞がれる。
【0059】
図15は、2階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する配筋工程を説明する図であり、図16は、2階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する打設工程を説明する図である。デッキプレート構造物設置工程が完了した後、配筋工程および打設工程を実施する。配筋工程および打設工程を説明すると、以下のとおりである。配筋工程では、上端筋19の上部であって上端筋19とラチス筋21の上部との交差箇所またはその近傍に横筋44を配置し、上端筋19の上部とのすべての交差箇所において上端筋19に横筋44を連結する。上端筋19と横筋44との連結には、結束線(図示せず)が使用されている。各横筋44は横方向の長さ寸法が同一であり、縦方向に隣接する横筋44どうしの離間寸法が等しく、それら横筋44が互いに平行して縦方向へ等間隔で並んでいる。
【0060】
配筋工程では、上端筋19の上部の他に、上端筋19の下部であって上端筋19とラチス筋21の上部との交差箇所またはその近傍に横筋44を配置し、上端筋19の下部との交差箇所において結束線を使用して上端筋19に横筋44を連結してもよい。また、上端筋19の上部または下部であって縦方向に隣接するラチス筋21の上部の間に配置され、上端筋19の上部または下部との交差箇所において結束線を使用して上端筋19に横筋44を連結してもよい。横筋44の数に時に限定はなく、構築するスラブ15の大きさや必要な強度に応じて横筋44の数や太さを決定することができる。横筋44に鉄を用いる場合は、それら横筋44にメッキ等の防錆処理が施されていてもよい。
【0061】
配筋工程によって横筋44を配筋した後、打設工程を実施する。打設工程では、図15に示すように、デッキプレート構造物10の上方から金属板16の上面18にコンクリート45(セメント硬化物)を打設する。打設したコンクリート45を所定期間養生すると、2階のスペース42においてスラブ15が完成する。
【0062】
図17は、骨組み施工工程の他の一例を示す図であり、図18は、デッキプレート構造物設置工程の他の一例を示す図である。図19は、3階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置した後の状態を示す図であり、図20は、3階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する配筋工程を説明する図である。図21は、3階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する打設工程を説明する図である。
【0063】
建造物14の上層階のうちの最も低い階(2階)のスペース42にスラブ15を構築した後、その直上の階(3階)のスペース42にスラブ15を構築する。この場合、すでにフック13を取り付けた複数個のデッキプレート構造物10が仮置き場所に積み重ねられていることから、骨組み施工工程、デッキプレート構造物設置工程、配筋工程、打設工程のみを実施し、デッキプレート構造物組立工程やフック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程は実施しない。
【0064】
骨組み施工工程では、図17に示すように、すでに構築された2階のスラブ15の直上に柱33を設置(継ぎ足し)するとともに、それら柱33に3階の主梁34(H形鋼)を架設して3階の骨組み35を施工する。3階の主梁34のうちの互いに対向するH形鋼のフランジ36とウェブ37とには、上下方向へ並ぶ複数の連結孔38(第1連結孔)が穿孔された連結治具39(第1連結治具)が溶接によって固定されている(図9参照)。
【0065】
骨組み施工工程が完了した後、デッキプレート構造物設置工程を実施する。骨組み施工工程によって上層階のうちの3階の骨組み35を施工した後、図18に示すように、デッキプレート構造物仮置き工程によって仮置き場所に積み重ねたデッキプレート構造物10のうちの上から2番目に位置する構造物10を柱33と主梁34とに囲繞された3階のスペース42に配置する。なお、1番上に位置するデッキプレート構造物10は2階のスペース42にすでに設置されており、仮置き場所には存在しない。デッキプレート構造物10に取り付けられた吊り上げ用フック13のフック本体32にワイヤーロープ40を掛け、クレーン車の玉掛具41にワイヤーロープ40を掛けた後、クレーン車のクレーンによってデッキプレート構造物10を吊し上げ、構造物10を3階のスペース42に移動させ、構造物10を3階のスペース42に配置する。
【0066】
デッキプレート構造物設置工程では、デッキプレート構造物10をスペース42の上方から次第に下降させ(図11参照)、主梁34に固定された連結治具39(第1連結治具)と取付梁12に形成された連結治具30(第2連結治具)とを当接させ、連結治具39に穿孔された連結孔38(第1連結孔)と連結治具30に穿孔された連結孔29(第2連結孔)とを一致させる。
【0067】
連結孔29,38どうしを一致させた後、それら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナットを螺着してそれら連結治具29,38どうしを強固に連結する(図12参照)。連結治具29,38どうしを連結させる場合、既述のように、作業者が地上からリフトに乗り、作業者がリフトによってデッキプレート構造物10の下面(金属板16の下面22)に向かって持ち上げられた後、作業者がそれら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナットを螺着する。
【0068】
連結治具29,38どうしを連結させると、図19に示すように、デッキプレート構造物10が3階のスペース42に設置される。デッキプレート構造物10を3階のスペース42に設置した後、吊り上げ用フック13のアンカー31とフック本体32とを分離し、アンカー31をH形鋼12や金属板16の貫通孔から引き抜き、フック13を構造物10から取り外す。アンカー31を貫通孔から引き抜いた後、貫通孔が所定の孔埋め手段によって塞がれる。
【0069】
デッキプレート構造物設置工程が完了した後、再び配筋工程および打設工程を実施する。配筋工程では、図20に示すように、上端筋19の上部であって上端筋19とラチス筋21の上部との交差箇所またはその近傍に横筋44を配置し、上端筋19の上部とのすべての交差箇所において結束線(図示せず)を使用して上端筋19に横筋44を連結する。配筋工程によって横筋44を配筋した後、打設工程を実施する。打設工程では、図21に示すように、デッキプレート構造物10の上方から金属板16の上面18にコンクリート45(セメント硬化物)を打設する。打設したコンクリート45を所定期間養生すると、3階のスペース42においてスラブ15が完成する。3階のスラブ15が完成した後、2階や3階のスラブ15の構築と同一の手順によってその直上の階(4階)のスペース42にスラブ15を構築する。
【0070】
スラブ構築方法は、デッキプレート構造物10を地上の仮置き場所から吊り上げて柱33と主梁34とに囲繞された上層階のスペース42に構造物10を配置しつつ、主梁34の連結治具39(第1連結治具)と取付梁12の連結治具30(第2連結治具)とを連結してデッキプレート構造物10をスペース42に設置するから、従来のスラブ構築方法のように作業者がデッキプレート1つ1つの上に乗ってデッキプレートの端部や側部を主梁に溶接する必要はなく、さらに、安全ネットを敷設する必要もなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置することができる。
【0071】
スラブ構築方法は、骨組み35の施工と同時に、デッキプレート構造物組立工程やフック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程を実施することができるから、骨組み35の施工の進捗状況にかかわらず、複数のデッキプレート構造物10を組み立てることができ、骨組み35の施工と平行して複数の構造物10を事前に作っておくことができる。
【0072】
スラブ構築方法は、骨組み35の施工が遅れたとしても、骨組み35の施工完了の直後にデッキプレート構造物10を上層階のスペース42に速やかに設置することができ、短い工期でスラブ15を構築することができる。スラブ構築方法は、建造物14の上層階のうちの最も低い階(2階)のスペース42から順にデッキプレート構造物10を設置し、その構造物10をその階に設置した後にその直上の階(3階)の骨組み35を施工するとともに、積み重ねた構造物10を直上の階に上から順に設置するから、構造物10の組立業者が骨組み35の施工の進捗状況に応じて構造物10を組み立てる必要はなく、組立業者が必要な数の構造物10を事前に組み立て、それら構造物10を建造物14の近傍における地上に積み重ねておけばよく、組立業者が組み立て作業や吊り上げ用フック取付作業、積み上げ作業を行った後、すぐに次の現場の仕事に取りかかることができ、組立業者の仕事の回転率を向上させることができる。
【0073】
スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、デッキプレート11が金属板16と鉄筋トラス17とから形成され、鉄筋トラス17が上端筋19と一対の下端筋20と上下方向へ波状に曲折を繰り返す一対のラチス筋21とを含み、ラチス筋21が上端筋19と下端筋20との間を補強する補強筋としての機能を有するから、デッキプレート構造物10が十分な強度を有するのみならず、構造物10にコンクリート45を打設した場合のそのコンクリート45に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にコンクリート45が耐え得るようにコンクリート45を十分に補強することができ、強固なスラブ15を構築することができる。
【0074】
スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、ラチス筋21の脚27が金属板16の凸条25に溶接され、金属板16が存在しない場合と比較し、構造物10にコンクリート45を打設した場合に、ラチス筋21の下部がコンクリート45から露出することはなく、ラチス筋21がコンクリート45から露出することによるラチス筋21の腐食やラチス筋21の腐食によるスラブ15の強度低下を防ぐことができる。
【0075】
スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、金属板16の凸条25とラチス筋21の脚27との溶接箇所が金属板16の上面18よりも上方となるから、金属板16の上面18のみならず、金属板16の下面22に溶接による跡が生じることがないスラブ15を構築することができる。スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、凸条25が金属板16の可撓性を抑制するから、金属板16の撓みや歪みを防ぐことができ、金属板16とラチス筋21との固定が解除されることはなく、構造物10によってコンクリート45を十分に補強することができ、強固なスラブ15を構築することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 デッキプレート構造物
11 デッキプレート
12 H形鋼(取付梁)
13 吊り下げ用フック
14 建造物
15 スラブ
16 金属板
17 鉄筋トラス
18 上面
19 上端筋
20 下端筋
21 ラチス筋
22 下面
25 凸条
26 凹部
27 脚
29 連結孔(第2連結孔)
30 連結治具(第2連結治具)
33 柱
34 主梁
35 骨組み
38 連結孔(第1連結孔)
39 連結治具(第1連結治具)
42 スペース
44 横筋
45 コンクリート(セメント硬化物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の上層階にスラブを構築するスラブ構築方法およびそのスラブの構築に使用するデッキプレート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
所定面積を有する金属板と、金属板の上面に位置して縦方向へ延びる複数の鉄筋トラスと、金属板の上面に位置して縦方向と交差する横方向へ延びる複数の横筋とを備え、鉄筋トラスが、金属板の上面から上方に位置して縦方向へ延びる上端筋と、金属板と上端筋との間に位置して縦方向へ延びる一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら縦方向へ延びる一対のラチス筋とから形成されたデッキプレートがある(特許文献1参照)。デッキプレートでは、ラチス筋がその上部から下部に向かって末広がりになり、ラチス筋の上部が上端筋に溶接され、ラチス筋の中間部が下端筋に溶接され、ラチス筋の下部が金属板の上面に溶接されている。横筋は、上端筋の上部に配置され、上端筋との交差箇所において結束線を介して上端筋に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−275740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のデッキプレートは、それを使用して建造物の上層階にスラブを構築する場合、建造物の骨組みが完成した後、複数のデッキプレートをクレーンによって順に吊り上げ、上層階における柱と梁との間のスペースに形成された型枠内にデッキプレートを順に配置しつつ、作業者がデッキプレートの上に乗ってそれの端部や側部を1つ1つ梁に溶接し、デッキプレートを横方向へ連結してデッキプレート構造物を作る。次に、デッキプレートを形成する上端筋の上部に横筋を配置し、上端筋との交差箇所において結束線を介して上端筋と横筋とを連結した後、デッキプレートの上方から型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、型枠を外してスラブが完成する。
【0005】
なお、前記手順によってスラブを構築する場合、作業者がデッキプレートの上に乗って作業を行わなければならず、作業者の安全のために上層階のスペースの下方に安全ネットを敷設するとともに、作業者がデッキプレートを1つ1つ梁に溶接しなければならず、スラブの構築に手間と時間とを要していた。また、建造物の骨組みが完成するまでの間、デッキプレートの設置作業を行うことができず、骨組みの施工と平行して複数のデッキプレート構造物を事前に組み立てることができなかった。したがって、骨組みの施工が遅延すると、それにともなってデッキプレートの設置作業が遅延し、スラブ構築の工期を短縮することができなかった。また、デッキプレートの組立業者が他の現場に移ることができず、組立業者の仕事の回転率が低下していた。
【0006】
本発明の目的は、手間と時間とを要せずに建造物の上層階にスラブを構築することができるスラブ構築方法およびそのスラブの構築に使用するデッキプレート構造物を提供することにある。本発明の他の目的は、骨組みの施工と平行してデッキプレート構造物を組み立てることができ、短い工期でスラブを構築することができるとともに、デッキプレート構造物の組立業者の仕事の回転率を向上させることができるスラブ構築方法およびそのスラブの構築に使用するデッキプレート構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、建造物の上層階にスラブを構築するスラブ構築方法である。
【0008】
前記第1の前提における本発明のスラブ構築方法の特徴は、スラブ構築方法が、上下方向へ延びる複数本の柱を設置しつつ、それら柱の上方に主梁を架設して建造物の骨組みを施工する骨組み施工工程と、骨組み施工工程と同時に、所定面積を有して第1方向へ長い金属板と金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートを第1方向と交差する第2方向へ連結しつつ、第2方向へ延びる取付梁を金属板の下面に固定して所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるデッキプレート構造物組立工程と、デッキプレート構造物を吊り上げて柱と主梁とに囲繞された上層階のスペースにデッキプレート構造物を配置しつつ、所定の連結手段を介して主梁と取付梁とを連結してデッキプレート構造物をスペースに設置するデッキプレート構造物設置工程とを有することにある。
【0009】
本発明にかかるスラブ構築方法の一例としては、スラブ構築方法が、デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、組み立てた複数のデッキプレート構造物を地上において上下方向へ積み重ねるデッキプレート構造物仮置き工程を含み、骨組み施工工程では、デッキプレート構造物設置工程によって所定の階にデッキプレート構造物が設置された後、その直上の階の骨組みを施工し、デッキプレート構造物設置工程では、デッキプレート構造物仮置き工程によって積み重ねたデッキプレート構造物を上から順に所定の階毎に設置する。
【0010】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、スラブ構築方法が、デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、金属板の上面における取付梁の直上にデッキプレート構造物の吊り上げ用フックを配置し、吊り上げ用フックを取付梁に着脱可能に取り付けるフック設置工程を含む。
【0011】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、スラブ構築方法が、デッキプレート構造物設置工程の後、第1方向へ所定寸法離間しつつ第2方向へ延びる複数の横筋をデッキプレートの鉄筋トラスに結束線を介して連結する配筋工程と、配筋工程の後、金属板の上面にセメント硬化物を打設する打設工程とを含む。
【0012】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、主梁と取付梁とを連結する連結手段が、上下方向へ並ぶ複数の第1連結孔が穿孔されて主梁の側部に固定された第1連結治具と、上下方向へ並ぶ複数の第2連結孔が穿孔されて取付梁の両端部に固定された第2連結治具とから形成され、デッキプレート構造物設置工程では、第1連結治具の第1連結孔と第2連結治具の第2連結孔とを一致させつつ、それら連結孔にボルトを挿通し、ボルトにナットを螺着して主梁と取付梁とを連結する。
【0013】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例として、スラブ構築方法では、金属板の上面から上方に位置して第1方向へ延びる上端筋と、金属板と上端筋との間に位置して第1方向へ延びる一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから鉄筋トラスを形成し、ラチス筋の上部を上端筋に溶接し、ラチス筋の中間部を下端筋に溶接するとともに、ラチス筋の下部を金属板の上面に溶接してデッキプレートを製造する。
【0014】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例として、スラブ構築方法では、金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条を上端筋の両側に位置するように金属板に形成し、ラチス筋の下部を金属板の上面と並行するように第2方向へ折り曲げて脚を形成し、脚のうちの凸条と交差する部分を金属板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接してデッキプレートを製造する。
【0015】
本発明にかかるスラブ構築方法の他の一例としては、取付梁がH形鋼であり、デッキプレート構造物組立工程では、H形鋼のフランジを金属板の下面に溶接する。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、建造物の上層階のスラブの構築に使用するデッキプレート構造物である。
【0017】
前記第2の前提における本発明のデッキプレート構造物の特徴は、デッキプレート構造物が、所定面積を有する金属板と金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成されて第1方向と交差する第2方向へ連結された複数のデッキプレートと、第1方向へ所定寸法離間しつつ第2方向へ延びていて金属板の下面に溶接されたH形鋼と、金属板の上面におけるH形鋼の直上に位置してH形鋼に着脱可能に取り付けられた吊り上げ用フックとから形成され、上下方向へ並ぶ複数の連結孔が穿孔された連結治具がH形鋼の両端部に形成されていることにある。
【0018】
本発明にかかるデッキプレート構造物の一例としては、鉄筋トラスが、金属板の上面から上方に位置して第1方向へ延びる上端筋と、金属板と上端筋との間に位置して第1方向へ延びる一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから形成され、ラチス筋の上部が上端筋に溶接され、ラチス筋の中間部が下端筋に溶接され、ラチス筋の下部が板材の上面に溶接されている。
【0019】
本発明にかかるデッキプレート構造物の他の一例としては、金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条が上部筋の両側に位置するように金属板に形成され、ラチス筋の下部が金属板の上面と並行するように第2方向へ屈曲して凸条と二点で交差し、ラチス筋の下部のうちの凸条と交差するそれら部分が金属板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかるスラブ構築方法によれば、デッキプレート構造物を吊り上げて柱と主梁とに囲繞された上層階のスペースにデッキプレート構造物を配置しつつ、所定の連結手段を介して主梁と取付梁とを連結してデッキプレート構造物をスペースに設置するから、従来のスラブ構築方法のように作業者がデッキプレート1つ1つの上に乗ってデッキプレートの端部や側部を主梁に溶接する必要はなく、さらに、安全ネットを敷設する必要もなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物を設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、骨組みの施工と同時に、所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるから、骨組みの施工の進捗状況にかかわらず、複数のデッキプレート構造物を組み立てることができ、骨組みの施工と平行して複数のデッキプレート構造物を事前に作っておくことができる。スラブ構築方法は、骨組みの施工が遅れたとしても、骨組みの施工完了の直後にデッキプレート構造物を上層階のスペースに速やかに設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。また、骨組みの施工の進捗状況にかかわらず、デッキプレートの組立業者が他の現場に移ることができ、組立業者の仕事の回転率を向上させることができる。
【0021】
デッキプレート構造物を組み立てた後、骨組み施工工程と並行しつつ、組み立てた複数のデッキプレート構造物を地上において上下方向へ積み重ね、所定の階にデッキプレート構造物が設置された後、その直上の階の骨組みを施工し、積み重ねたデッキプレート構造物を上から順に所定の階毎に設置するスラブ構築方法は、建造物の上層階のうちの最も低い階から順にデッキプレート構造物を設置し、そのデッキプレート構造物をその階に設置した後にその直上の階の骨組みを施工するとともに、積み重ねたデッキプレート構造物を直上の階に上から順に設置するから、デッキプレート構造物の組立業者が骨組みの施工の進捗状況に応じてデッキプレート構造物を組み立てる必要はなく、組立業者が必要な数のデッキプレート構造物を事前に組み立て、それらデッキプレート構造物を建造物の近傍における地上に積み重ねておけばよく、組立業者が組み立て作業と積み上げ作業とを行った後、すぐに次の現場の仕事に取りかかることができ、組立業者の仕事の回転率を向上させることができる。スラブ構築方法は、積み重なるそれらデッキプレート構造物を上から順に上層階のスペースに設置すればよく、作業者がデッキプレート1つ1つの上に乗ってデッキプレートの端部や側部を主梁に溶接する必要はなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物を設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。
【0022】
デッキプレート構造物を組み立てた後、骨組み施工工程と並行しつつ、金属板の上面における取付梁の直上にデッキプレート構造物の吊り上げ用フックを配置し、吊り上げ用フックを取付梁に着脱可能に取り付けるスラブ構築方法は、デッキプレート構造物を吊り上げるための吊り上げ用フックを組み立てたデッキプレート構造物の取付梁に取り付けるだけの作業によってデッキプレート構造物を吊り上げることができ、デッキプレート構造物の吊り上げに他の作業が伴うことはなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物を設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。
【0023】
デッキプレート構造物を設置した後、第1方向へ所定寸法離間しつつ第2方向へ延びる複数の横筋をデッキプレートの鉄筋トラスに結束線を介して連結し、横筋を配筋した後、金属板の上面にセメント硬化物を打設するスラブ構築方法は、上層階のスペースにおけるデッキプレート構造物の設置に手間と時間とを要せず、デッキプレート構造物を短期間に設置することができ、設置したデッキプレート構造物の鉄筋トラスに横筋を配筋した後、金属板の上面にセメント硬化物を打設することでスラブを構築することができるから、短い工期でスラブを構築することができる。
【0024】
連結手段が上下方向へ並ぶ複数の第1連結孔が穿孔されて主梁の側部に固定された第1連結治具と上下方向へ並ぶ複数の第2連結孔が穿孔されて取付梁の両端部に固定された第2連結治具とから形成され、第1連結治具の第1連結孔と第2連結治具の第2連結孔とを一致させつつ、それら連結孔にボルトを挿通し、ボルトにナットを螺着して主梁と取付梁とを連結するスラブ構築方法は、第1連結治具と第2連結治具とから形成される連結手段によって主梁と取付梁とを連結するだけで、手間と時間とを要せずに上層階のスペースにデッキプレート構造物の設置することができるから、デッキプレート構造物を短期間に設置することができ、短い工期でスラブを構築することができる。
【0025】
金属板の上面から上方に位置する上端筋と、金属板と上端筋との間に位置する一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながらその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから鉄筋トラスを形成し、ラチス筋の上部を上端筋に溶接し、ラチス筋の中間部を下端筋に溶接するとともに、ラチス筋の下部を金属板の上面に溶接してデッキプレートを製造するスラブ構築方法は、デッキプレートが金属板と鉄筋トラスとから形成され、鉄筋トラスが上端筋と一対の下端筋と上下方向へ波状に曲折を繰り返す一対のラチス筋とを含み、ラチス筋が上端筋と下端筋との間を補強する補強筋としての機能を有するから、デッキプレート構造物が十分な強度を有するのみならず、それにセメント硬化物を打設した場合のそのセメント硬化物に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にセメント硬化物が耐え得るようにセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、ラチス筋の下部が金属板に当接するから、金属板が存在しない場合と比較し、デッキプレート構造物にセメント硬化物を打設したときに、ラチス筋の下部がセメント硬化物から露出することはなく、ラチス筋がセメント硬化物から露出することによるラチス筋の腐食やラチス筋の腐食によるスラブの強度低下を防ぐことができる。
【0026】
金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条を上端筋の両側に位置するように金属板に形成し、ラチス筋の下部を金属板の上面と並行するように第2方向へ折り曲げて脚を形成し、脚のうちの凸条と交差する部分を金属板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接してデッキプレートを製造するスラブ構築方法は、金属板の凸条とラチス筋の脚との溶接箇所が鉄板の上面よりも上方となるから、金属板の上面のみならず、金属板の下面に溶接による跡が生じることがないスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、凸条が金属板の可撓性を抑制するから、金属板の撓みや歪みを防ぐことができ、金属板とラチス筋との固定が解除されることはなく、デッキプレート構造物によってセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【0027】
取付梁がH形鋼であり、H形鋼のフランジを金属板の下面に溶接するスラブ構築方法は、H形鋼のフランジを金属板の下面に溶接することで、取付梁をデッキプレートに強固に設置することができ、デッキプレート構造物を上層階のスペースに設置したときにデッキプレート構造物と取付梁との固定が解除されることはなく、デッキプレート構造物によってセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【0028】
本発明にかかるデッキプレート構造物によれば、それが所定面積を有する金属板と金属板の上面に設置された鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートと、金属板の下面に固定されたH形鋼とから形成されているから、デッキプレート構造物が十分な強度を有するのみならず、それにセメント硬化物を打設した場合のそのセメント硬化物に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にセメント硬化物が耐え得るようにセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【0029】
金属板の上面から上方に位置する上端筋と、金属板と上端筋との間に位置する一対の下端筋と、金属板と上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながらその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから鉄筋トラスが形成され、ラチス筋の上部が上端筋に溶接され、ラチス筋の中間部が下端筋に溶接され、ラチス筋の下部が金属板の上面に溶接されたデッキプレート構造物は、デッキプレートが金属板と鉄筋トラスとから形成され、鉄筋トラスが上端筋と一対の下端筋と上下方向へ波状に曲折を繰り返す一対のラチス筋とを含み、ラチス筋が上端筋と下端筋との間を補強する補強筋としての機能を有するから、デッキプレート構造物が十分な強度を有するのみならず、それにセメント硬化物を打設した場合のそのセメント硬化物に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にセメント硬化物が耐え得るようにセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。デッキプレート構造物は、ラチス筋の下部が金属板に当接するから、金属板が存在しない場合と比較し、デッキプレート構造物にセメント硬化物を打設したときに、ラチス筋の下部がセメント硬化物から露出することはなく、ラチス筋がセメント硬化物から露出することによるラチス筋の腐食やラチス筋の腐食によるスラブの強度低下を防ぐことができる。
【0030】
金属板の上面から上方へ突出して第1方向へ延びる一対の凸条が上部筋の両側に位置するように金属板に形成され、ラチス筋の下部が金属板の上面と並行するように第2方向へ屈曲して凸条と二点で交差し、ラチス筋の下部のうちの凸条と交差するそれら部分が鉄板の上面から上方へ離間した状態で凸条に溶接されているデッキプレート構造物は、金属板の凸条とラチス筋の脚との溶接箇所が鉄板の上面よりも上方となるから、金属板の上面のみならず、金属板の下面に溶接による跡が生じることがないスラブを構築することができる。スラブ構築方法は、凸条が金属板の可撓性を抑制するから、金属板の撓みや歪みを防ぐことができ、金属板とラチス筋との固定が解除されることはなく、デッキプレート構造物によってセメント硬化物を十分に補強することができ、強固なスラブを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一例として示すデッキプレートの斜視図。
【図2】図1の2−2線端面図。
【図3】デッキプレートの部分拡大側面図。
【図4】一例として示すデッキプレート構造物の斜視図。
【図5】吊り下げ用フックを示すデッキプレート構造物の拡大斜視図。
【図6】H形鋼に形成された連結治具の拡大斜視図。
【図7】骨組み施工工程の一例を示す図。
【図8】骨組み施工工程およびデッキプレート構造物仮置き工程の一例を示す図。
【図9】主梁に作られた連結治具の斜視図。
【図10】デッキプレート構造物設置工程の一例を示す図。
【図11】主梁と取付梁との連結を説明する図。
【図12】連結後の主梁と取付梁とを示す図。
【図13】2階のスペースにデッキプレート構造物を設置した後の状態を示す図。
【図14】2階のスペースにデッキプレート構造物を設置した後の状態を金属板の下面の側から示す図。
【図15】2階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する配筋工程を説明する図。
【図16】2階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する打設工程を説明する図。
【図17】骨組み施工工程の他の一例を示す図。
【図18】デッキプレート構造物設置工程の他の一例を示す図。
【図19】3階のスペースにデッキプレート構造物を設置した後の状態を示す図。
【図20】3階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する配筋工程を説明する図。
【図21】3階のスペースに設置したデッキプレート構造物に対する打設工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一例として示すデッキプレート11の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係るスラブ構築方法およびデッキプレート構造物10の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の2−2線端面図であり、図3は、デッキプレート11の部分拡大側面図である。図4は、一例として示すデッキプレート構造物10の斜視図であり、図5は、吊り下げ用フック13を示すデッキプレート構造物10の拡大斜視図である。図6は、H形鋼12に形成された連結治具30の拡大斜視図である。
【0033】
図1〜4では、縦方向(第1方向)を矢印X(図2を除く)、横方向(第2方向)を矢印Yで示し(図3を除く)、上下方向を矢印Zで示す。図1,4では、デッキプレート11やデッキプレート構造物10の縦方向の図示を一部省略している。スラブ構築方法では、建造物14の上層階にスラブ15を構築する。デッキプレート構造物10は、横方向へ連結された複数のデッキプレート11と、複数のH形鋼12(取付梁)および複数の吊り上げ用フック13とから形成されている。
【0034】
デッキプレート11は、図1に示すように、所定面積を有する縦方向へ長い金属板16(鉄板)と、金属板16の上面に位置して縦方向へ延びる2つの鉄筋トラス17とから作られている。それら鉄筋トラス17は、金属板16の上面18において横方向へ略等間隔で並んでいる。各鉄筋トラス17は、金属板16を横方向へ二分した各領域のうち、一方の領域の略中央と他方の領域の略中央とに設置されている。それら鉄筋トラス17は、1本の上端筋19(鉄棒)と2本(一対)の下端筋20(鉄棒)と2本(一対)のラチス筋21(鉄棒)とから形成されている。上端筋19や下端筋20、ラチス筋21は、鉄を延伸して作られた断面円形の鉄棒である。なお、鉄筋トラス17の数に時に限定はなく、金属板16の面積やトラス17の大きさにより、金属板16に3つ以上のトラス17が設置されていてもよい。
【0035】
金属板16は、縦方向へ延びる両側部および横方向へ延びる両端部を有し、略フラットな上面18および下面22を有する。金属板16は、その上下面18,22にメッキ処理が施されている。なお、金属板16の面積に特に限定はなく、構築するスラブ15の大きさによってその面積を自由に設定することができる。金属板16の一方の側部には、図1,2に示すように、金属板16の上面18から上方へ折れ曲がる第1フック23が形成され、金属板16の他方の側部には、金属板16の下面22から下方へ折れ曲がる第2フック24が形成されている。第1フック23と第2フック24とを係合させることで、複数個のデッキプレート11を横方向へ連結することができる。
【0036】
金属板16には、その上面18から上方へ突出する複数の凸条25が形成されている。凸条25は、上端筋19を挟むように上端筋19の横方向両側に位置し、金属板16の上面18において縦方向へ延びている。各鉄筋トラス17毎では、横方向に並ぶそれぞれ2条の凸条25が形成されている。凸条25は、金属板16の一部分を横方向内方へ折り曲げて、金属板16の一部分をその上面18から上方へ向かって山折りし、山折りした部分において金属板16の下面22どうしを隙間なく圧接することで作られている。
【0037】
それら凸条25は、上下方向へ所定の高さ寸法Lを有し、図3に示すように、その側面形状が帯状を呈するとともに、上方から見た形状が略線状を呈する。凸条25の上下方向の高さ寸法Lに特に限定はないが、高さ寸法Lの好ましい範囲は5〜50mmである。凸条25には、その上端から金属板16の上面18に向かって凹む凹部26が形成されている。凹部26は、金属板16の上面18に達することなく、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間している。ゆえに、金属板16の上面18と凹部26との間には凸条25の一部分が延びている。
【0038】
上端筋19は、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間して縦方向へ直状に延びている。上端筋19は、金属板16の両端部間に配置されている。下端筋20は、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間して縦方向へ直状に延びている。それら下端筋20は、上端筋19の下方かつ上端筋19の横方向両側に位置し、金属板16の上面18と上端筋19との間であって金属板16の両端部の間に配置されている。
【0039】
ラチス筋21は、金属板16と上端筋19との間に位置して上下方向へ波状に曲折(起伏)を繰り返しながら縦方向へ延びている。それらラチス筋21は、上端筋19を挟んで横方向へ対称型に配置されている。ラチス筋21は、上部および下部と、上下部の間に延びる中間部とを有する。ラチス筋21は、図2に示すように、その上部から下部に向かって横方向へ末広がりを呈するように金属板16に対して所定角度で傾斜している。
【0040】
ラチス筋21の上部は、上方へ向かって弧を画き、上端筋19の横方向両側に当接した状態で、上端筋19にスポット溶接されている。ラチス筋21の下部は、金属板16の上面18と並行するように、横方向外方へ折り曲げられて脚27を形成している。脚27は、横方向外方へ向かって弧を画き、その一部が凸条25から横方向外方へ突出するとともに、凸条25と二点で交差している。ラチス筋の脚27のうちの凸条25と交差する部分は、凸条25に形成された凹部25に嵌入しつつ、金属板16の上面18から上方へ所定寸法離間した状態で凹部25にスポット溶接されている。それらラチス筋21の中間部は、それら下端筋20の内側に位置し、中間部のうちの下端筋20と交差する部分が下端筋20にスポット溶接されている。
【0041】
なお、ラチス筋21の下部を折り曲げることなく、ラチス筋21の下部に脚27を作らなくてもよい。この場合は、ラチス筋21の下部が凸条25にスポット溶接される。また、金属板16に凸条25を形成しなくてもよい。この場合は、ラチス筋21の脚27が金属板16の上面にスポット溶接される。または、ラチス筋21の下部が金属板16の上面にスポット溶接される。
【0042】
H形鋼12(取付梁)は、金属板16の下面22に固定されて横方向へ延びている。H形鋼12は、一方のフランジ28が金属板16の下面22に溶接されている。H形鋼12の横方向両端部には、図5に示すように、上下方向へ並ぶ複数の連結孔29(第2連結孔)が穿孔された連結治具30(第2連結治具)が作られている。吊り上げ用フック13は、図4に示すように、金属板16の上面18におけるH形鋼12の直上に位置し、H形鋼12のフランジ28に着脱可能に取り付けられている。吊り上げ用フック13は、金属板16を貫通するとともに、H形鋼12のフランジ28を貫通するアンカー31と、アンカー31につながって金属板16の上面18に位置するフック本体32とから形成されている。アンカー31とフック本体32とは、定常状態においてH形鋼12や金属板16から抜け落ちることはない。
【0043】
デッキプレート構造物10では、鉄筋トラス17の上端筋19や下端筋20、ラチス筋21の太さについて特に限定はなく、構築するスラブ15の大きさやスラブ15に必要な強度に合わせてそれら上端筋19や下端筋20、ラチス筋21の太さを自由に設定することができる。上端筋19や下端筋20、ラチス筋21は鉄から作られているが、鉄以外の金属から作ることもできる。また、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21に鉄を用いる場合は、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21にメッキ等の防食処理が施されていてもよい。単位長さ(m)当たりのラチス筋21の曲折を繰り返す回数や金属板16に対するラチス筋21の傾斜角度について特に限定はなく、曲折回数や傾斜角度を自由に設定することができる。取付梁としてH形鋼12を利用しているが、取付梁として他の形状の鋼材(I形鋼やT形鋼、山形鋼等)を使用することもできる。
【0044】
図7は、骨組み施工工程の一例を示す図であり、図8は、骨組み施工工程およびデッキプレート構造物仮置き工程の一例を示す図である。図9は、主梁34に作られた連結治具39の斜視図である。スラブ構築方法では、骨組み施工工程、デッキプレート構造物組立工程、フック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程、デッキプレート構造物設置工程、配筋工程、打設工程を実施する。なお、デッキプレート構造物組立工程やフック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程は、骨組み施工工程と同時(並行)に実施される。
【0045】
骨組み施工工程では、図7,8に示すように、建造物14の建造予定場所に上下方向へ延びる複数本の柱33を設置するとともに、それら柱33の上方に主梁34を架設して建造物14の骨組み35を施工する。主梁34には、H形鋼が使用されている。主梁34のうちの互いに対向するH形鋼のフランジ36とウェブ37とには、図9に示すように、上下方向へ並ぶ複数の連結孔38(第1連結孔)が穿孔された連結治具39(第1連結治具)が溶接によって固定されている。主梁34には、H形鋼の他に、他の形状の鋼材(I形鋼やT形鋼、山形鋼等)を使用することもでき、鉄筋コンクリートや鉄筋鉄骨コンクリートを使用することができる。
【0046】
デッキプレート構造物組立工程におけるデッキプレート構造物10の組立手順の一例を説明すると、以下のとおりである。所定面積の金属板16と、直状に延びる1本の上端筋19と、直状に延びる2本の下端筋20と、波状に起伏を繰り返す2本のラチス筋21とを用意する。金属板16の一方の側部をその上面18に向かって折り曲げて第1フック23を作り、金属板16の他方の側部をその下面22に向かって折り曲げて第2フック24を作る。
【0047】
ラチス筋21の下部を横方向外方へ折り曲げて脚27を形成する。次に、上端筋19とそれらラチス筋21の上部とをスポット溶接し、それら下端筋20とそれらラチス筋21の中間部とをスポット溶接して鉄筋トラス17を作る。鉄筋トラス17では、ラチス筋21がその上部から下部に向かって横方向へ末広がりに傾斜している。
【0048】
次に、金属板16の上面18から上方へ突出して縦方向へ延びる一対の凸条25を金属板16に形成する。鉄筋トラス17の上端筋19が凸条25と平行するとともに、ラチス筋21の脚27が凸条25の上に位置するように、鉄筋トラス17を金属板16の上面18に乗せる。ラチス筋21の脚27を凸条25の上に乗せると、脚27が凸条25に2箇所で交差するとともに、凸条25が上端筋19の両側に位置する。ラチス筋21の脚27のうちの凸条25と交差する2箇所の部分を金属板16の上面18から上方へ離間した状態で凸条25にスポット溶接してデッキプレート11を作る。
【0049】
ラチス筋21の下部を折り曲げることなく、ラチス筋21の下部に脚27を作らない場合は、ラチス筋21の下部を凸条25にスポット溶接する。また、金属板16に凸条25を形成しない場合は、ラチス筋21の脚27を金属板16の上面にスポット溶接する。または、ラチス筋21の下部を金属板16の上面にスポット溶接する。
【0050】
スポット溶接では、図示はしていないが、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21を電極で挟み、電極に高電圧を印加してそれら上端筋19や下端筋20、ラチス筋21を加熱溶融した後、それら上端筋19や下端筋20、ラチス筋21を自然冷却し、上端筋19や下端筋20、ラチス筋21どうしを溶接箇所において互いに溶着させる。また、ラチス筋21の脚27のうちの凸条25に交差する部分と凸条25とを溶接するには、部分を凸条25の上に乗せた後、凸条25が延びる金属板16の下面22に電極を配置するとともに、部分の上方に電極を配置する。次に、それら電極で金属板16と脚27の部分とを挟み、電極に高電圧を印加して金属板16に形成された凸条25と部分とを加熱溶融した後、金属板16と部分とを自然冷却し、部分と凸条25とを溶接箇所において互いに溶着させる。ここで、凸条25を電極で加熱すると、凸条25がその上端から金属板16の上面18に向かって溶け、凸条25に凹部26が形成されるとともに、凹部26と脚27の部分とが互いに溶着する。
【0051】
前記手順によって複数個のデッキプレート11を作った後、一方のデッキプレート11の第1フック23と他方のデッキプレート11の第2フック24とを係合させ、複数個のデッキプレート11を横方向へ連結する。複数個のデッキプレート11を連結した後、金属板16や鉄筋トラス17の延びる方向と交差する横方向へ延びる2本のH形鋼12(取付梁)を金属板16の下面22に配置する。H形鋼12は、縦方向へ平行して並び、一方のフランジ28が金属板16の下面22に当接する。H形鋼12を金属板16の下面22に配置した後、金属板16とH形鋼12のフランジ28とを溶接し、金属板16とH形鋼12とを溶着してデッキプレート構造物10を作る。なお、図8では金属板16の下面22に2本のH形鋼12が固定されているが、H形鋼12の数を図示に本数に限定するものではなく、デッキプレート構造物10の面積によって3本以上のH形鋼12が金属板16の下面22に溶着されていてもよい。
【0052】
デッキプレート構造物10を作った後、フック設置工程を実施する。フック設置工程における吊り上げ用フック13の設置手順の一例を説明すると、以下のとおりである。金属板16の上面18におけるH形鋼12の直上に4個の吊り上げ用フック13を配置する。吊り上げ用フック13は、デッキプレート構造物10の重量や重心を考慮してそれらの取付位置が決定され、それらの縦方向および横方向の離間距離が略同一となるように、H形鋼12のフランジ28の直上に配置される。吊り上げ用フック13を配置した後、フック13のアンカー31を挿通する貫通孔を作る箇所にマーキングをし、マーキングをした箇所にドリルで貫通孔を穿孔する。貫通孔は、金属板16とH形鋼12のフランジ28とを貫通する。貫通孔を穿孔した後、吊り上げ用フック13のアンカー31を貫通孔に挿通し、アンカー31をH形鋼12のフランジ28に取り付け、フック本体32が金属板16の上面18に位置するように、アンカー31にフック本体32を連結する。なお、吊り上げ用フック13では、アンカー31とフック本体32とを分離することで、アンカー31をH形鋼12や金属板16の貫通孔から抜き取ることができ、フック13をデッキプレート構造物10から取り外すことができる。
【0053】
デッキプレート構造物組立工程およびフック設置工程を実施した後、デッキプレート構造物仮置き工程を実施する。デッキプレート構造物仮置き工程におけるデッキプレート構造物10の仮置き手順の一例を説明すると、以下のとおりである。それら吊り上げ用フック13のフック本体32にワイヤーロープ40を掛け、クレーン車の玉掛具41にワイヤーロープ40を掛けた後、クレーン車のクレーンによってデッキプレート構造物10を吊し上げ(図10参照)、構造物10を建造物14の建造予定地近傍における地上の仮置き場所に降ろす。さらに、次のデッキプレート構造物10をクレーンによって吊し上げ、その構造物10を先に仮起きした構造物10の上に積み重ねる(図8参照)。上下に積む重なるデッキプレート構造物10では、下方に位置する構造物10の上端筋19の上に上方に位置する構造物10のH形鋼12のフランジが当接する。なお、デッキプレート構造物仮置き工程では、建造する建造物14の上層階の数だけデッキプレート構造物10を作り、それら構造物10を仮置き場所に積み重ねる。
【0054】
図10は、デッキプレート構造物設置工程の一例を示す図であり、図11は、主梁34(H形鋼)と取付梁12(H形鋼)との連結を説明する図である。図12は、連結後の主梁34と取付梁12とを示す図であり、図13は、2階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置した後の状態を示す図である。図14は、2階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置した後の状態を金属板16の下面22の側から示す図である。
【0055】
骨組み施工工程やデッキプレート構造物組立工程、フック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程が完了した後、デッキプレート構造物設置工程を実施する。デッキプレート構造物設置工程におけるデッキプレート構造物10の設置手順の一例を説明すると、以下のとおりである。骨組み施工工程によって上層階のうちの最も低い階(2階)の骨組み35を施工した後、図10,13に示すように、デッキプレート構造物仮置き工程によって仮置き場所に積み重ねたデッキプレート構造物10のうちの最も上に位置する構造物10を柱33と主梁34とに囲繞された上層階(2階)のスペース42に配置する。具体的には、デッキプレート構造物10に取り付けられた吊り上げ用フック13のフック本体32にワイヤーロープ40を掛け、クレーン車の玉掛具41にワイヤーロープ40を掛けた後、クレーン車のクレーンによってデッキプレート構造物10を吊し上げ、構造物10をスペース42に移動させ、構造物10を2階のスペース42に配置する。
【0056】
デッキプレート構造物設置工程では、図11に矢印で示すように、デッキプレート構造物10をスペース42の上方から次第に下降させ、主梁34に固定された連結治具39(第1連結治具)と取付梁12に形成された連結治具30(第2連結治具)とを当接させ、連結治具39に穿孔された連結孔38(第1連結孔)と連結治具30に穿孔された連結孔29(第2連結孔)とを一致させる。連結孔29,38どうしを一致させた後、図12に示すように、それら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナット(図示せず)を螺着してそれら連結治具29,38どうしを強固に連結する。
【0057】
連結治具29,38どうしを連結させる場合、図示はしていないが、作業者が地上からリフトに乗り、作業者がリフトによってデッキプレート構造物10の下面(金属板16の下面22)に向かって持ち上げられた後、作業者がそれら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナットを螺着する。このようにデッキプレート構造物設置工程では、作業者がデッキプレート構造物10の下方において連結作業を行い、作業者がデッキプレート構造物10の上に乗って連結作業をすることはない。
【0058】
連結治具29,38どうしを連結させると、図13,14に示すように、デッキプレート構造物10が2階のスペース42に設置される。デッキプレート構造物10を2階のスペース42に設置した後、吊り上げ用フック13のアンカー31とフック本体32とを分離し、アンカー31をH形鋼12や金属板16の貫通孔から引き抜き、フック13を構造物10から取り外す。アンカー31を貫通孔から引き抜いた後、貫通孔が所定の孔埋め手段によって塞がれる。
【0059】
図15は、2階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する配筋工程を説明する図であり、図16は、2階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する打設工程を説明する図である。デッキプレート構造物設置工程が完了した後、配筋工程および打設工程を実施する。配筋工程および打設工程を説明すると、以下のとおりである。配筋工程では、上端筋19の上部であって上端筋19とラチス筋21の上部との交差箇所またはその近傍に横筋44を配置し、上端筋19の上部とのすべての交差箇所において上端筋19に横筋44を連結する。上端筋19と横筋44との連結には、結束線(図示せず)が使用されている。各横筋44は横方向の長さ寸法が同一であり、縦方向に隣接する横筋44どうしの離間寸法が等しく、それら横筋44が互いに平行して縦方向へ等間隔で並んでいる。
【0060】
配筋工程では、上端筋19の上部の他に、上端筋19の下部であって上端筋19とラチス筋21の上部との交差箇所またはその近傍に横筋44を配置し、上端筋19の下部との交差箇所において結束線を使用して上端筋19に横筋44を連結してもよい。また、上端筋19の上部または下部であって縦方向に隣接するラチス筋21の上部の間に配置され、上端筋19の上部または下部との交差箇所において結束線を使用して上端筋19に横筋44を連結してもよい。横筋44の数に時に限定はなく、構築するスラブ15の大きさや必要な強度に応じて横筋44の数や太さを決定することができる。横筋44に鉄を用いる場合は、それら横筋44にメッキ等の防錆処理が施されていてもよい。
【0061】
配筋工程によって横筋44を配筋した後、打設工程を実施する。打設工程では、図15に示すように、デッキプレート構造物10の上方から金属板16の上面18にコンクリート45(セメント硬化物)を打設する。打設したコンクリート45を所定期間養生すると、2階のスペース42においてスラブ15が完成する。
【0062】
図17は、骨組み施工工程の他の一例を示す図であり、図18は、デッキプレート構造物設置工程の他の一例を示す図である。図19は、3階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置した後の状態を示す図であり、図20は、3階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する配筋工程を説明する図である。図21は、3階のスペース42に設置したデッキプレート構造物10に対する打設工程を説明する図である。
【0063】
建造物14の上層階のうちの最も低い階(2階)のスペース42にスラブ15を構築した後、その直上の階(3階)のスペース42にスラブ15を構築する。この場合、すでにフック13を取り付けた複数個のデッキプレート構造物10が仮置き場所に積み重ねられていることから、骨組み施工工程、デッキプレート構造物設置工程、配筋工程、打設工程のみを実施し、デッキプレート構造物組立工程やフック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程は実施しない。
【0064】
骨組み施工工程では、図17に示すように、すでに構築された2階のスラブ15の直上に柱33を設置(継ぎ足し)するとともに、それら柱33に3階の主梁34(H形鋼)を架設して3階の骨組み35を施工する。3階の主梁34のうちの互いに対向するH形鋼のフランジ36とウェブ37とには、上下方向へ並ぶ複数の連結孔38(第1連結孔)が穿孔された連結治具39(第1連結治具)が溶接によって固定されている(図9参照)。
【0065】
骨組み施工工程が完了した後、デッキプレート構造物設置工程を実施する。骨組み施工工程によって上層階のうちの3階の骨組み35を施工した後、図18に示すように、デッキプレート構造物仮置き工程によって仮置き場所に積み重ねたデッキプレート構造物10のうちの上から2番目に位置する構造物10を柱33と主梁34とに囲繞された3階のスペース42に配置する。なお、1番上に位置するデッキプレート構造物10は2階のスペース42にすでに設置されており、仮置き場所には存在しない。デッキプレート構造物10に取り付けられた吊り上げ用フック13のフック本体32にワイヤーロープ40を掛け、クレーン車の玉掛具41にワイヤーロープ40を掛けた後、クレーン車のクレーンによってデッキプレート構造物10を吊し上げ、構造物10を3階のスペース42に移動させ、構造物10を3階のスペース42に配置する。
【0066】
デッキプレート構造物設置工程では、デッキプレート構造物10をスペース42の上方から次第に下降させ(図11参照)、主梁34に固定された連結治具39(第1連結治具)と取付梁12に形成された連結治具30(第2連結治具)とを当接させ、連結治具39に穿孔された連結孔38(第1連結孔)と連結治具30に穿孔された連結孔29(第2連結孔)とを一致させる。
【0067】
連結孔29,38どうしを一致させた後、それら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナットを螺着してそれら連結治具29,38どうしを強固に連結する(図12参照)。連結治具29,38どうしを連結させる場合、既述のように、作業者が地上からリフトに乗り、作業者がリフトによってデッキプレート構造物10の下面(金属板16の下面22)に向かって持ち上げられた後、作業者がそれら連結孔29,38にボルト43を挿通し、ボルト43にナットを螺着する。
【0068】
連結治具29,38どうしを連結させると、図19に示すように、デッキプレート構造物10が3階のスペース42に設置される。デッキプレート構造物10を3階のスペース42に設置した後、吊り上げ用フック13のアンカー31とフック本体32とを分離し、アンカー31をH形鋼12や金属板16の貫通孔から引き抜き、フック13を構造物10から取り外す。アンカー31を貫通孔から引き抜いた後、貫通孔が所定の孔埋め手段によって塞がれる。
【0069】
デッキプレート構造物設置工程が完了した後、再び配筋工程および打設工程を実施する。配筋工程では、図20に示すように、上端筋19の上部であって上端筋19とラチス筋21の上部との交差箇所またはその近傍に横筋44を配置し、上端筋19の上部とのすべての交差箇所において結束線(図示せず)を使用して上端筋19に横筋44を連結する。配筋工程によって横筋44を配筋した後、打設工程を実施する。打設工程では、図21に示すように、デッキプレート構造物10の上方から金属板16の上面18にコンクリート45(セメント硬化物)を打設する。打設したコンクリート45を所定期間養生すると、3階のスペース42においてスラブ15が完成する。3階のスラブ15が完成した後、2階や3階のスラブ15の構築と同一の手順によってその直上の階(4階)のスペース42にスラブ15を構築する。
【0070】
スラブ構築方法は、デッキプレート構造物10を地上の仮置き場所から吊り上げて柱33と主梁34とに囲繞された上層階のスペース42に構造物10を配置しつつ、主梁34の連結治具39(第1連結治具)と取付梁12の連結治具30(第2連結治具)とを連結してデッキプレート構造物10をスペース42に設置するから、従来のスラブ構築方法のように作業者がデッキプレート1つ1つの上に乗ってデッキプレートの端部や側部を主梁に溶接する必要はなく、さらに、安全ネットを敷設する必要もなく、手間と時間とを要せずに上層階のスペース42にデッキプレート構造物10を設置することができる。
【0071】
スラブ構築方法は、骨組み35の施工と同時に、デッキプレート構造物組立工程やフック設置工程、デッキプレート構造物仮置き工程を実施することができるから、骨組み35の施工の進捗状況にかかわらず、複数のデッキプレート構造物10を組み立てることができ、骨組み35の施工と平行して複数の構造物10を事前に作っておくことができる。
【0072】
スラブ構築方法は、骨組み35の施工が遅れたとしても、骨組み35の施工完了の直後にデッキプレート構造物10を上層階のスペース42に速やかに設置することができ、短い工期でスラブ15を構築することができる。スラブ構築方法は、建造物14の上層階のうちの最も低い階(2階)のスペース42から順にデッキプレート構造物10を設置し、その構造物10をその階に設置した後にその直上の階(3階)の骨組み35を施工するとともに、積み重ねた構造物10を直上の階に上から順に設置するから、構造物10の組立業者が骨組み35の施工の進捗状況に応じて構造物10を組み立てる必要はなく、組立業者が必要な数の構造物10を事前に組み立て、それら構造物10を建造物14の近傍における地上に積み重ねておけばよく、組立業者が組み立て作業や吊り上げ用フック取付作業、積み上げ作業を行った後、すぐに次の現場の仕事に取りかかることができ、組立業者の仕事の回転率を向上させることができる。
【0073】
スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、デッキプレート11が金属板16と鉄筋トラス17とから形成され、鉄筋トラス17が上端筋19と一対の下端筋20と上下方向へ波状に曲折を繰り返す一対のラチス筋21とを含み、ラチス筋21が上端筋19と下端筋20との間を補強する補強筋としての機能を有するから、デッキプレート構造物10が十分な強度を有するのみならず、構造物10にコンクリート45を打設した場合のそのコンクリート45に作用する曲げ引張力や曲げ圧縮力、せん断力にコンクリート45が耐え得るようにコンクリート45を十分に補強することができ、強固なスラブ15を構築することができる。
【0074】
スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、ラチス筋21の脚27が金属板16の凸条25に溶接され、金属板16が存在しない場合と比較し、構造物10にコンクリート45を打設した場合に、ラチス筋21の下部がコンクリート45から露出することはなく、ラチス筋21がコンクリート45から露出することによるラチス筋21の腐食やラチス筋21の腐食によるスラブ15の強度低下を防ぐことができる。
【0075】
スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、金属板16の凸条25とラチス筋21の脚27との溶接箇所が金属板16の上面18よりも上方となるから、金属板16の上面18のみならず、金属板16の下面22に溶接による跡が生じることがないスラブ15を構築することができる。スラブ構築方法およびこの方法に使用するデッキプレート構造物10は、凸条25が金属板16の可撓性を抑制するから、金属板16の撓みや歪みを防ぐことができ、金属板16とラチス筋21との固定が解除されることはなく、構造物10によってコンクリート45を十分に補強することができ、強固なスラブ15を構築することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 デッキプレート構造物
11 デッキプレート
12 H形鋼(取付梁)
13 吊り下げ用フック
14 建造物
15 スラブ
16 金属板
17 鉄筋トラス
18 上面
19 上端筋
20 下端筋
21 ラチス筋
22 下面
25 凸条
26 凹部
27 脚
29 連結孔(第2連結孔)
30 連結治具(第2連結治具)
33 柱
34 主梁
35 骨組み
38 連結孔(第1連結孔)
39 連結治具(第1連結治具)
42 スペース
44 横筋
45 コンクリート(セメント硬化物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の上層階にスラブを構築するスラブ構築方法において、
前記スラブ構築方法が、上下方向へ延びる複数本の柱を設置しつつ、それら柱の上方に主梁を架設して前記建造物の骨組みを施工する骨組み施工工程と、骨組み施工工程と同時に、所定面積を有して第1方向へ長い金属板と前記金属板の上面に設置されて前記第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートを前記第1方向と交差する第2方向へ連結しつつ、前記第2方向へ延びる取付梁を前記金属板の下面に固定して所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるデッキプレート構造物組立工程と、前記デッキプレート構造物を吊り上げて前記柱と前記主梁とに囲繞された前記上層階のスペースに該デッキプレート構造物を配置しつつ、所定の連結手段を介して前記主梁と前記取付梁とを連結して該デッキプレート構造物を前記スペースに設置するデッキプレート構造物設置工程とを有することを特徴とするスラブ構築方法。
【請求項2】
前記スラブ構築方法が、前記デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、組み立てた複数の前記デッキプレート構造物を地上において前記上下方向へ積み重ねるデッキプレート構造物仮置き工程を含み、前記骨組み施工工程では、前記デッキプレート構造物設置工程によって所定の階に前記デッキプレート構造物が設置された後、その直上の階の骨組みを施工し、前記デッキプレート構造物設置工程では、デッキプレート構造物仮置き工程によって積み重ねたデッキプレート構造物を上から順に所定の階毎に設置する請求項1に記載のスラブ構築方法。
【請求項3】
前記スラブ構築方法が、前記デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、前記金属板の上面における前記取付梁の直上に前記デッキプレート構造物の吊り上げ用フックを配置し、前記吊り上げ用フックを前記取付梁に着脱可能に取り付けるフック設置工程を含む請求項1または請求項2に記載のスラブ構築方法。
【請求項4】
前記スラブ構築方法が、前記デッキプレート構造物設置工程の後、前記第1方向へ所定寸法離間しつつ前記第2方向へ延びる複数の横筋を前記デッキプレートの鉄筋トラスに結束線を介して連結する配筋工程と、前記配筋工程の後、前記金属板の上面にセメント硬化物を打設する打設工程とを含む請求項1ないし請求項3いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項5】
前記主梁と前記取付梁とを連結する連結手段が、前記上下方向へ並ぶ複数の第1連結孔が穿孔されて前記主梁の側部に固定された第1連結治具と、前記上下方向へ並ぶ複数の第2連結孔が穿孔されて前記取付梁の両端部に固定された第2連結治具とから形成され、前記デッキプレート構造物設置工程では、前記第1連結治具の第1連結孔と前記第2連結治具の第2連結孔とを一致させつつ、それら連結孔にボルトを挿通し、前記ボルトにナットを螺着して前記主梁と前記取付梁とを連結する請求項1ないし請求項4いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項6】
前記スラブ構築方法では、前記金属板の上面から上方に位置して前記第1方向へ延びる上端筋と、前記金属板と前記上端筋との間に位置して前記第1方向へ延びる一対の下端筋と、前記金属板と前記上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら前記第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから前記鉄筋トラスを形成し、前記ラチス筋の上部を前記上端筋に溶接し、前記ラチス筋の中間部を前記下端筋に溶接するとともに、前記ラチス筋の下部を前記金属板の上面に溶接して前記デッキプレートを製造する請求項1ないし請求項5いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項7】
前記スラブ構築方法では、前記金属板の上面から上方へ突出して前記第1方向へ延びる一対の凸条を前記上端筋の両側に位置するように該金属板に形成し、前記ラチス筋の下部を前記金属板の上面と並行するように前記第2方向へ折り曲げて脚を形成し、前記脚のうちの前記凸条と交差する部分を前記金属板の上面から上方へ離間した状態で該凸条に溶接して前記デッキプレートを製造する請求項6に記載のスラブ構築方法。
【請求項8】
前記取付梁が、H形鋼であり、前記デッキプレート構造物組立工程では、前記H形鋼のフランジを前記金属板の下面に溶接する請求項1ないし請求項7いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項9】
建造物の上層階のスラブの構築に使用するデッキプレート構造物において、
前記デッキプレート構造物が、所定面積を有する金属板と前記金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成されて前記第1方向と交差する第2方向へ連結された複数のデッキプレートと、前記第1方向へ所定寸法離間しつつ前記第2方向へ延びていて前記金属板の下面に溶接されたH形鋼と、前記金属板の上面における前記H形鋼の直上に位置して該H形鋼に着脱可能に取り付けられた吊り上げ用フックとから形成され、上下方向へ並ぶ複数の連結孔が穿孔された連結治具が、前記H形鋼の両端部に形成されていることを特徴とするデッキプレート構造物。
【請求項10】
前記鉄筋トラスが、金属板の上面から上方に位置して前記第1方向へ延びる上端筋と、前記金属板と前記上端筋との間に位置して前記第1方向へ延びる一対の下端筋と、前記金属板と前記上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら前記第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから形成され、前記ラチス筋の上部が、前記上端筋に溶接され、前記ラチス筋の中間部が、前記下端筋に溶接され、前記ラチス筋の下部が、前記板材の上面に溶接されている請求項9に記載のデッキプレート構造物。
【請求項11】
前記金属板の上面から上方へ突出して前記第1方向へ延びる一対の凸条が、前記上部筋の両側に位置するように前記金属板に形成され、前記ラチス筋の下部が、前記金属板の上面と並行するように前記第2方向へ屈曲して前記凸条と二点で交差し、前記ラチス筋の下部のうちの前記凸条と交差するそれら部分が、前記金属板の上面から上方へ離間した状態で該凸条に溶接されている請求項10に記載のデッキプレート構造物。
【請求項1】
建造物の上層階にスラブを構築するスラブ構築方法において、
前記スラブ構築方法が、上下方向へ延びる複数本の柱を設置しつつ、それら柱の上方に主梁を架設して前記建造物の骨組みを施工する骨組み施工工程と、骨組み施工工程と同時に、所定面積を有して第1方向へ長い金属板と前記金属板の上面に設置されて前記第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成された複数のデッキプレートを前記第1方向と交差する第2方向へ連結しつつ、前記第2方向へ延びる取付梁を前記金属板の下面に固定して所定面積のデッキプレート構造物を組み立てるデッキプレート構造物組立工程と、前記デッキプレート構造物を吊り上げて前記柱と前記主梁とに囲繞された前記上層階のスペースに該デッキプレート構造物を配置しつつ、所定の連結手段を介して前記主梁と前記取付梁とを連結して該デッキプレート構造物を前記スペースに設置するデッキプレート構造物設置工程とを有することを特徴とするスラブ構築方法。
【請求項2】
前記スラブ構築方法が、前記デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、組み立てた複数の前記デッキプレート構造物を地上において前記上下方向へ積み重ねるデッキプレート構造物仮置き工程を含み、前記骨組み施工工程では、前記デッキプレート構造物設置工程によって所定の階に前記デッキプレート構造物が設置された後、その直上の階の骨組みを施工し、前記デッキプレート構造物設置工程では、デッキプレート構造物仮置き工程によって積み重ねたデッキプレート構造物を上から順に所定の階毎に設置する請求項1に記載のスラブ構築方法。
【請求項3】
前記スラブ構築方法が、前記デッキプレート構造物組立工程の後、骨組み施工工程と並行しつつ、前記金属板の上面における前記取付梁の直上に前記デッキプレート構造物の吊り上げ用フックを配置し、前記吊り上げ用フックを前記取付梁に着脱可能に取り付けるフック設置工程を含む請求項1または請求項2に記載のスラブ構築方法。
【請求項4】
前記スラブ構築方法が、前記デッキプレート構造物設置工程の後、前記第1方向へ所定寸法離間しつつ前記第2方向へ延びる複数の横筋を前記デッキプレートの鉄筋トラスに結束線を介して連結する配筋工程と、前記配筋工程の後、前記金属板の上面にセメント硬化物を打設する打設工程とを含む請求項1ないし請求項3いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項5】
前記主梁と前記取付梁とを連結する連結手段が、前記上下方向へ並ぶ複数の第1連結孔が穿孔されて前記主梁の側部に固定された第1連結治具と、前記上下方向へ並ぶ複数の第2連結孔が穿孔されて前記取付梁の両端部に固定された第2連結治具とから形成され、前記デッキプレート構造物設置工程では、前記第1連結治具の第1連結孔と前記第2連結治具の第2連結孔とを一致させつつ、それら連結孔にボルトを挿通し、前記ボルトにナットを螺着して前記主梁と前記取付梁とを連結する請求項1ないし請求項4いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項6】
前記スラブ構築方法では、前記金属板の上面から上方に位置して前記第1方向へ延びる上端筋と、前記金属板と前記上端筋との間に位置して前記第1方向へ延びる一対の下端筋と、前記金属板と前記上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら前記第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから前記鉄筋トラスを形成し、前記ラチス筋の上部を前記上端筋に溶接し、前記ラチス筋の中間部を前記下端筋に溶接するとともに、前記ラチス筋の下部を前記金属板の上面に溶接して前記デッキプレートを製造する請求項1ないし請求項5いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項7】
前記スラブ構築方法では、前記金属板の上面から上方へ突出して前記第1方向へ延びる一対の凸条を前記上端筋の両側に位置するように該金属板に形成し、前記ラチス筋の下部を前記金属板の上面と並行するように前記第2方向へ折り曲げて脚を形成し、前記脚のうちの前記凸条と交差する部分を前記金属板の上面から上方へ離間した状態で該凸条に溶接して前記デッキプレートを製造する請求項6に記載のスラブ構築方法。
【請求項8】
前記取付梁が、H形鋼であり、前記デッキプレート構造物組立工程では、前記H形鋼のフランジを前記金属板の下面に溶接する請求項1ないし請求項7いずれかに記載のスラブ構築方法。
【請求項9】
建造物の上層階のスラブの構築に使用するデッキプレート構造物において、
前記デッキプレート構造物が、所定面積を有する金属板と前記金属板の上面に設置されて第1方向へ延びる鉄筋トラスとから形成されて前記第1方向と交差する第2方向へ連結された複数のデッキプレートと、前記第1方向へ所定寸法離間しつつ前記第2方向へ延びていて前記金属板の下面に溶接されたH形鋼と、前記金属板の上面における前記H形鋼の直上に位置して該H形鋼に着脱可能に取り付けられた吊り上げ用フックとから形成され、上下方向へ並ぶ複数の連結孔が穿孔された連結治具が、前記H形鋼の両端部に形成されていることを特徴とするデッキプレート構造物。
【請求項10】
前記鉄筋トラスが、金属板の上面から上方に位置して前記第1方向へ延びる上端筋と、前記金属板と前記上端筋との間に位置して前記第1方向へ延びる一対の下端筋と、前記金属板と前記上端筋との間で上下方向へ波状に曲折を繰り返しながら前記第1方向へ延びていてその上部から下部に向かって末広がりの一対のラチス筋とから形成され、前記ラチス筋の上部が、前記上端筋に溶接され、前記ラチス筋の中間部が、前記下端筋に溶接され、前記ラチス筋の下部が、前記板材の上面に溶接されている請求項9に記載のデッキプレート構造物。
【請求項11】
前記金属板の上面から上方へ突出して前記第1方向へ延びる一対の凸条が、前記上部筋の両側に位置するように前記金属板に形成され、前記ラチス筋の下部が、前記金属板の上面と並行するように前記第2方向へ屈曲して前記凸条と二点で交差し、前記ラチス筋の下部のうちの前記凸条と交差するそれら部分が、前記金属板の上面から上方へ離間した状態で該凸条に溶接されている請求項10に記載のデッキプレート構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
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【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−7229(P2013−7229A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141560(P2011−141560)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(500506574)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(500506574)
【Fターム(参考)】
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