説明

スリットノズル

【課題】噴霧分布の均等性を損なうことなく、分解することなく異物を簡便に除去できるスリットノズルを提供する。
【解決手段】スリットノズルは、一対の長尺なブロック1,2間の収容空間内に収容された混合ブロック6と、混合ブロックの混合空間12に臨む気体噴射口8及び液体噴射口11と、一対のブロックの間に形成され、かつ混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口14と、噴射口8,11に隣接する上流側に形成されたチャンバ7,9,10と、各チャンバに連なる気体供給路3及び液体供給路4と、スリット状吐出口14に連なり、かつスリット状吐出口の長手方向の両端部にスリット幅よりも大きく形成された凹部(又は切り欠き部)と、この凹部に対して装着可能な蓋部材22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体をスリットから噴射又は噴霧するスリットノズル(水又は空気を噴出する一流体スリットノズル、空気と水との二流体を混合して噴射又は噴霧する二流体スリットノズルなど)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハーや液晶基板などの被洗浄体を洗浄するため、スリットから水を噴出する一流体スリットノズル、空気と水との二流体を混合して噴射又は噴霧する二流体スリットノズルが使用されている。また、洗浄後の被洗浄体を乾燥するため、スリットから空気を噴射又は噴霧する一流体スリットノズルも使用されている。このようなノズルでは、噴霧分布の均等性を向上させるため、スリット状噴霧孔が重要な役割を果たす。
【0003】
スリットノズルに関し、二流体ノズルは、長尺のブロックに二流体の混合部を形成し、混合部で形成されたミストを吐出するためのスリット状吐出口を備えている。特開2007−319853号公報(特許文献1)には、気体噴射口からの気体と液体噴射口からの液体とを混合するための混合空間と、この混合空間からの混合ミストを吐出するための吐出口とを備えた二流体ノズルであって、前記混合空間を備えた混合ブロックと、組み合わせによりこの混合ブロックを収容可能な収容空間及び前記吐出口を形成可能であり、かつ前記気体噴射口及び液体噴射口に気体及び液体をそれぞれ供給可能な供給路を有する複数のブロックとで構成されている二流体ノズルが開示されている。
【0004】
噴霧分布の均等性を図るため、スリット幅は、例えば、0.04〜0.2mmと非常に狭い。そのため、洗浄時に被洗浄体から跳ね返った異物や液体又は気体の供給口から異物が混入して、スリット部に付着し、噴霧分布に悪影響を与えることがある。液体又は気体の一流体スリットノズルでも同様である。
【0005】
このような場合、スリット幅を通過するゲージなどの薄片状清掃部材をスリット内に入れて左右に動かし、異物の除去を試みることが考えられる。しかし、スリットの両側部に異物を除去可能な異物の出口が形成されていないため、異物をきれいに取り除くことができない。一方、上記スリットノズルを分解して洗浄すれば、異物を除去可能であるが、分解と再組立及びスリット幅の調整に長時間を要する。
【0006】
特開2006−205120号公報(特許文献2)には、横長のボディ内に、該ボディの横長方向に沿った流入路を設け、該流入路に連通する流体導入口を前記ボディ外面に設けるとともに、前記流入路に小径流路を介して連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボディの横長方向の端面に沿って設け、前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端に連続させて、該噴射孔のスリット幅より広くした溝を前記ボディに設けたスリットノズルが開示されている。この特許文献2には、前記溝の断面形状を矩形、外側が底辺となる三角形、円形とすることも記載されており、一流体を噴射することが想定されている。さらに、特許文献2に係る発明では、スリット状噴射孔から噴射される流量よりも溝から噴射される流量が大きくなることを利用して、噴射幅(液膜幅)がスリット状噴射孔の長手方向の中心部に向かって狭くなるのを抑制し、一流体をスリット状噴射孔から膜状に噴射している。
【0007】
しかし、このような構造のスリットノズルでは、異物を除去するための溝のサイズが大きいと、水量分布などの噴霧分布に悪影響を及ぼし、逆に小さければ異物を除去しにくくなる。特に、気液混合ミストを噴霧する二流体スリットノズルで上記課題が特に顕著に現れ、噴霧分布の均一化と異物の除去容易性とを両立させることが困難となる。さらに、噴霧分布を均一化するためには、スリット状噴射孔のスリット幅と、スリット状噴射孔に連なる両側部の溝の幅及び大きさを精度よく調整する必要がある。
【特許文献1】特開2007−319853号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−205120号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、噴霧分布の均等性を損なうことなく、異物を簡便に除去できるスリットノズルを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、気液混合ミストをスリット状噴射孔から噴射又は噴霧しても、気液混合ミストの噴霧分布を均一化できるとともに、分解することなく異物を容易に除去できるスリットノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、スリット状吐出口の両端部にスリット状吐出口のスリット幅よりも大きな凹部を形成し、この凹部に蓋部材を装着(又は封止可能に装着)すると、スリットからの流体の噴霧分布の均一性を損なうことなく異物を容易に除去できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のスリットノズルは、流体の流入口を備えた長尺部材と、この長尺部材内に形成され、かつ前記流入口と通じる流路と、この流路に通じて前記長尺部材の長手方向に形成され、かつ流体を膜状に噴射又は噴霧するためのスリット状吐出口とを備えたスリットノズルであって、前記スリット状吐出口に連なり、かつスリット状吐出口の長手方向の少なくとも一方の端部に前記スリット状吐出口のスリット幅よりも大きく形成された凹部(又は切り欠き部)と、この凹部に対して装着可能な蓋部材とを備えている。
【0012】
このようなスリットノズルでは、蓋部材を取り外すことによりスリット状吐出口に通じる凹部を開放できるので、スリット状吐出口又はその内部に付着した異物を容易に除去できる。また、凹部に蓋部材を装着した状態で噴霧又は噴射することにより、噴霧分布の均等性を損なうことがない。
【0013】
このようなスリットノズルにおいて、凹部(又は切り欠き部)は、スリット状吐出口の長手方向の端部に接して形成してもよい。また、凹部(又は切り欠き部)は、長尺部材の側面のうちスリット状吐出口に対応する下端部に形成し、凹部(又は切り欠き部)の深さはスリット状吐出口の壁面(対向壁面)を越えていてもよい。このようなスリットノズルでは、スリット状吐出口又はその内部に付着した異物をさらに容易に除去でき、噴霧分布の均等性を損なうことがない。
【0014】
なお、スリットノズルは、例えば、気体噴射口からの気体と液体噴射口からの液体とを混合するための混合空間と、この混合空間からの混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口とを備えた二流体スリットノズルであって、前記混合空間を備えた混合ブロックと、この混合ブロックを収容可能な収容空間及び前記吐出口を形成可能であり、かつ前記気体噴射口及び液体噴射口に気体及び液体をそれぞれ供給可能な供給路を有する一対のブロックとで構成してもよい。より詳細には、スリットノズルは、互いに対向する一対の長尺なブロックと、この一対のブロック間に形成された収容空間と、この収容空間内に収容され、かつ混合空間が形成された混合ブロックと、この混合ブロックに形成され、かつ前記混合空間に臨む気体噴射口及び液体噴射口と、前記混合空間の下流側において一対のブロックの間に形成され、かつ前記混合空間で混合された混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口と、前記気体噴射口及び液体噴射口に隣接する上流側にそれぞれ形成されたチャンバと、前記一対のブロックのうち少なくとも一方のブロックに形成され、かつ各チャンバに連なる気体供給口及び液体供給口と、前記一対のブロックと混合ブロックとの間をシールするためのシール手段と、一対のブロックと混合ブロックとを固定するための固定手段とを備えていてもよい。このような二流体ノズルでは、チャンバを経て混合空間で気液を衝突混合できるため、スリット状吐出口の幅方向のみならず長手方向の噴霧分布をより一層均一化できる。
【0015】
なお、本明細書において、一対のブロック間に形成される空間は、少なくとも一方のブロック(例えば、一方のブロック又は双方のブロック)の対向壁の凹部で構成されていてもよい。また、「噴射口」を「噴射路」又は「噴射流路」と同義に使用する場合がある。さらに、「気密」「液密」とは、流体が侵入しない部位又は領域では複数のブロックと混合ブロックとの間には空間や隙間があってもよいことを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、スリット状吐出口の端部に凹部を形成しても、この凹部を蓋部材で閉塞可能であるため、噴霧分布の均等性(又は均一性)を損なうことなく、異物を簡便に除去できる。特に、気液混合ミストをスリット状噴射孔から噴射又は噴霧しても、気液混合ミストの噴霧分布を均一化できるとともに、分解することなく異物を容易に除去できる。さらに、スリット状吐出口の長手方向での噴霧分布の均一性を損なうことがなく、ノズルの長手方向でのミストの噴霧分布を均一化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。図1は本発明の二流体ノズルの一例を示す概略分解斜視図であり、図1(A)は混合ブロックとこの混合ブロックを収容する一方のブロックを示す概略斜視図、図1(B)は他方のブロックを水平方向に反転させた状態を示す概略斜視図である。図2は図1の二流体ノズルを示す概略断面図である。なお、以下の例では、液体として水(高圧水などの加圧水)を用い、気体として空気(加圧空気)を利用している。
【0018】
この二流体ノズルは、互いに対向する長尺の一対のブロック(第1のブロックと、対向面が平面状で第1のブロックと対向する第2のブロック)のうち、一方のブロックの対向壁に各流路を形成するための流路凹部と、混合ブロックを収容するための収容凹部と、吐出口(スリット状吐出口)を形成するための吐出凹部とが形成されている。
【0019】
すなわち、この二流体ノズルは、互いに対向する長尺の一対のブロック(一対の非腐食性金属製プレート)1,2を備えており、一対のブロック1,2のうち、一方のブロック2(流体供給ブロック)の外壁(又は側壁,非対向壁)には、複数のチャンバ(気体溜部)5,7を介して気体噴射口8と通じる気体供給路(又は供給口)3と、縦方向において、この気体供給路(又は供給口)3の下方に位置し、複数のチャンバ(液体溜部)9,10を介して液体噴射口11と通じる液体供給路(又は供給口)4とが形成されている。また、ブロック2(流体供給ブロック)の対向壁には、前記気体供給路3の下流側に長手方向に延びる気体溜め用のチャンバ5を形成するための長溝状凹部と、前記長溝状凹部の下流側に縦方向に隣接し、かつ前記液体供給路4に対応する部位の長手方向には、断面四角形状の長尺状の混合ブロック6を収容するための所定幅(所定の縦方向の長さ)の収容凹部(又は収容空間)6aとが形成されている。
【0020】
この収容凹部の下流側には、それぞれ第1乃至4の流路13a,13b,13c,13dに対応する第1乃至4の凹部(吐出凹部)が、前記収容凹部よりも深さが上流方向から下流方向に向けて段階的に小さく形成され、下流側の第4の流路13dはスリット状吐出口14に至っている。第1乃至4の流路13a〜13dは吐出流路(又は吐出空間)13を形成する。なお、チャンバ5を形成するための長溝状凹部の深さよりも混合ブロック6を収容するための収容凹部の深さの方が大きく形成されている。すなわち、図示するように、一対の長尺ブロック1,2間には、長溝状凹部で形成された気体溜め用の第1のチャンバ(気体溜部)5と、前記収容凹部6aで形成された収容空間とが、縦方向に隣接して長手方向に延びて形成され、長尺ブロック1,2の長手方向に延びる前記収容空間内に長尺の混合ブロック6が気密及び液密に収容されている。
【0021】
前記混合ブロック6は、前記第1のチャンバ(気体溜部)5と通じ、かつ前記チャンバ(気体溜部)5よりも流路径の小さな第2のチャンバ(第1の気体流路又は気体溜部)7と、この第2のチャンバ(第1の気体流路)7の下流側に位置し、第1の気体流路7よりも流路が狭まり、かつ混合空間12に臨む気体噴射口(孔状気体噴射口)8と、液体供給路(又は供給口)4と通じる液体溜め用の第1のチャンバ(第1の液体流路又は液体溜部)9と、この第1のチャンバ(第1の液体流路)9の下流側に位置し、第1の液体流路9よりも流路径が小さな液体溜め用の第2のチャンバ(第2の液体流路又は液体溜部)10と、この第2のチャンバ10の下流側で流路が狭まり、かつ混合空間12に臨む液体噴射口(孔状液体噴射口)11とを備えている。すなわち、図示するように、縦長の混合空間12の上部には気体噴射口8が臨んでおり、縦長の混合空間12の側部には液体噴射口11が臨んでおり、気体噴射口8は、スリット状吐出口14に対して液体噴射口11よりも上流側に形成されている。また、気体噴射口8及び液体噴射口11に隣接する上流側にはそれぞれチャンバ5,7,9,10が形成されている。なお、混合ブロック6の混合流路(気体溜部としての第2のチャンバ7、気体噴射口8、液体溜部としての第1のチャンバ9及び第2のチャンバ10、液体噴射口11、並びに混合空間12で構成された流路)は、混合ブロック6の長手方向に所定間隔毎にドリル加工などにより円筒状に形成されている。なお、気体溜部としての第2のチャンバ7、気体噴射口8、液体溜部としての第1のチャンバ9及び第2のチャンバ10、液体噴射口11、並びに混合空間12で1つの混合流路を構成しており、このような複数の混合流路が混合ブロック6の長手方向に所定間隔毎に円筒状に形成されている。なお、この例において、吐出口4は混合空間12の軸芯からはずれて形成されている。
【0022】
また、前記一対の長尺ブロック1,2の収容空間内に混合ユニット6を気密及び液密に装着するため、混合ユニット6の両側面の外周部には環状溝が形成され、これらの環状溝にはそれぞれ環状シール材(パッキン)15,16が配設され、一対の長尺ブロック1,2の対向面のうち吐出口14を除く外周部(周縁部)に形成された凹溝にもシール材(パッキン)17が配設され、これらのシール手段により前記一対のブロック1,2と混合ブロック6との間をシールしている。
【0023】
一対のブロック1,2と混合ブロック6とは、少なくとも混合空間12及びその下流域での流体の流れを乱すことなく、ボルト・ナット、ネジ部材などの固定手段(ネジ手段)により固定され一体化している。すなわち、環状シール材15,16の内方域であって、長手方向において混合空間12及び吐出流路13が形成されていない領域で、螺合孔18aのボルト・ナット(又はネジ部材)18により、一対のブロック1,2と混合ブロック6とが締結可能である。そのため、ボルトが流路に延出したり流路を跨いで遮蔽することがなく、混合空間12及びその下流域での流体の流れを乱すことがない。そのため、吐出口14から混合ミストを均一な分布で噴霧又は噴射できる。
【0024】
さらに、一対のブロック1,2のうち一方のブロック1の下部には、前記混合ブロック6の前記複数の螺合孔18aの間に螺合孔19aが形成されており、これらの螺合孔には、螺合により混合ブロック6の所定部19bに対して進退動可能であり、かつ先端部が平坦なネジ部材(スリット幅調整ネジ,図示せず)が螺合されている。このネジ部材は、混合ブロック6の下部側面を押圧可能である。そのため、前記ボルト・ナット18による締結度と関連づけてネジ部材による押圧度を調整することにより、スリット状吐出口14のスリット幅を調整できる。
【0025】
なお、一対のブロック1,2の両側部(流路が形成されていない領域)には、縦方向の複数箇所において、複数の螺合孔20が形成され、これらの貫通孔を利用してネジ部材(図示せず)により締結されている。
【0026】
このような構造のスリットノズルにおいて、スリット部、特に異物がスリット状吐出口内部や吐出流路内に異物が付着すると、流量分布が不均一化し、洗浄又は乾燥効率を低下させる。そこで、この例では、一対のブロック1,2のうち一方のブロック1の側壁のうち、スリット状吐出口14の長手方向の両側部に対応する部位には、スリット状吐出口14と接して、かつスリット状吐出口14のスリット幅よりも大きな凹部(又は切り欠き部)21が形成され、この凹部には、この凹部21に適合した蓋部材22がネジ部材23により緊密に封止状態で着脱可能に装着される。そのため、蓋部材22を凹部21から取り外すと、スリット状吐出口14が面積の大きな凹部21とが連通する。なお、前記凹部(又は切り欠き部)21は、一方のブロック1の側壁の下端部に形成され、凹部(又は切り欠き部)21の深さは、前記スリット状吐出部14を超えて他方のブロック2の内壁内(対向壁内)に侵入している。なお、蓋部材22には、凹部21内への過度の侵入を規制するため、先端部から離れた所定の部位から立設され、凹部21内の下降壁部と係止可能な係止部22aが形成されている。
【0027】
このような構造の二流体ノズルでは、前記スリット状吐出口14又はその内部に異物が付着したとしても、蓋部材22を凹部(又は切り欠き部)21から取り外して凹部21を開放し、スリット状吐出部14にスリット幅よりも小さな清掃部材(スリット幅よりも薄い薄片状物(ゲージなど)、スリット幅よりも小さな繊維状物など)を挿入することにより、スリット状吐出部を容易に清掃でき、異物を除去できる。なお、スリット状吐出部の清掃においては、水などの流体を流しながら、前記薄片状物(ゲージなど)などの清掃部材により異物を掻き出してもよい。また、スリット状吐出部を清掃した後、凹部21を蓋部材22で塞ぎ、気体及び液体を供給することにより、当初の噴霧特性に復元できる。特に、前記チャンバ(流体溜部)5,7,9,10を備えているとともに、吐出流路(又は吐出空間)13が吐出口14に向かって段階的に狭まる第1乃至4の流路13a〜13dで構成されているため、スリット状吐出口14の両側部の凹部21を蓋部材22で閉塞しても、噴霧流(又は噴射流)をスリット状吐出口14の長手方向に対して直交する方向に均一な流量分布で噴霧又は噴射でき、噴霧流がスリット状吐出口14の長手方向の中心部に向かって狭くなることもない。
【0028】
より具体的には、凹部(又は切り欠き部)21に蓋部材22を装着して凹部21を閉塞又は封止した状態で、気体及び液体を供給すると、気体供給路3から供給された気体は、第1及び第2のチャンバ(気体溜部)5,7を介して孔状気体噴射口8から混合空間12に噴射され、液体供給路4から供給された液体は、第1及び第2のチャンバ(液体溜部)9,10を経て、孔状噴射口11から混合空間12に噴射される。孔状噴射口8からの気体と孔状噴射口11からの液体とが交差する方向(直交)に噴射しているため、混合空間12を形成する一対のブロック1,2の内壁との衝突も含めて、混合空間12では気体と液体との衝突混合効率を向上でき、液滴を微細化しつつ均一化できる。特に、チャンバ(気体溜部)5,7を介して気体噴射口8から気体を噴射し、チャンバ(液体溜部)9,10を経て液体噴射口11から液体を噴射するため、気体噴射口8及び液体噴射口11に隣接する上流側にそれぞれ形成された各チャンバ(流体溜部)5,7,9,10のクッション作用により気体及び液体の圧力及び流量を均等化して噴射できる。そのため、混合空間12での気液の圧力及び流量変動を抑制でき、気液混合効率を高めることができる。さらに、液体噴射口11よりも気体噴射口8が縦方向の上部(上流側)に位置するため、混合空間12での気体と液体との混合効率を大きく向上できる。
【0029】
さらに、混合空間12で衝突混合された混合ミストは、前記一対のブロック1,2の間に沿って長手方向に直線状に形成された吐出流路13を経てスリット状吐出口14から吐出される。特に、前記のように圧力及び流量の変動を抑制しつつ均質化した混合ミストを吐出口14から吐出できるため、スリット状吐出口14からの噴霧角度が広がるのを抑制しつつ、シャープな噴霧パターンで液滴が微細で均質化された混合ミストを噴射でき、衝突力及び洗浄力を向上できるとともに、ミストの噴霧分布の均等性又は均一性を向上できる。すなわち、高い衝突力及び洗浄力を付与しつつ、ノズルの厚み方向および長手方向でのミストの噴霧分布を均一化できる。しかも、前記スリット状吐出口14の領域を残して、一対のブロック1,2と混合ブロック6とが互いに対向する外周域(外周部)は、シール材15,16,17でシールされ、かつ一対のブロック1,2と混合ユニット6とは、流体の流動性に関与しない部位でネジなどの固定手段により緊密に固定又は締結されているので、固定手段により混合ミストの噴霧特性を損なうことがない。なお、一対のブロック1,2及び混合ブロック6の流路は溝加工や孔加工で形成でき、一対のブロック1,2と混合ブロック6との組み合わせにより二流体ノズルを形成できるため、構造を簡素化でき、部品点数を低減できるため、コストを大幅に低減できるとともに、分解、洗浄などによるメインテナンスも容易である。
【0030】
なお、前記凹部(又は切り欠き部)は、スリット状吐出口の長手方向の少なくとも一方の端部に形成すればよいが、異物を効率よく除去するため、通常、スリット状吐出口の長手方向の両端部に形成する場合が多い。前記凹部は、スリット状吐出口に連なっていればよいが、異物を効率よく除去するため、通常、スリット状吐出口の長手方向の端部に接して形成される。
【0031】
さらに、前記凹部(又は切り欠き部)は、異物を効率よく除去するため、前記スリット状吐出口のスリット幅よりも大きく形成すればよく、凹部の平面形状は、円形状、楕円形状、多角形状(三角形、長方形状などの四角形、五角形、六角形状など)であってもよい。凹部の平面形状において、スリット状吐出口と接する凹部の辺は直線状又は平坦状である場合が多い。
【0032】
前記凹部は、長尺部材のうちスリット状吐出口が臨む吐出面(図2の例では下端面)に形成してもよく、長尺部材の側面(又は側壁)に形成してもよい。また、スリット状吐出口の長手方向の一方の端部では吐出面(又は下端面)に形成し、他方の端部では側面(又は側壁)に形成してもよい。前記凹部は、蓋部材の着脱操作を容易にするため、通常、長尺部材の側面(側壁)のうち少なくともスリット状吐出口に対応する下端部に形成する場合が多い。凹部(又は切り欠き部)の深さは、前記スリット状吐出口に至っていればよく、前記スリット状吐出口の途中部であってもよいが、スリット状吐出口の端部での吐出流体の流れに悪影響を及ぼすのを避けるため、少なくとも前記スリット状吐出口の壁部(対向壁)、特にスリット状吐出口の対向壁面を越えてスリット状吐出口の対向壁の内部にまで至っているのが好ましい。
【0033】
蓋部材(又は装着部材)は、前記凹部(切り欠き部)に装着可能であればよく、凹部を封止又は充填して吐出流体の流れに悪影響を及ぼすのを避けるため、前記凹部(切り欠き部)に適合した形状の部位(三角柱状、四角柱状などの柱状部など)を有しているのが好ましい。蓋部材は前記凹部(切り欠き部)に緊密に装着してもよい。蓋部材は、金属、セラミックスなどで形成してもよく、プラスチックスやエラストマーなどで形成してもよい。後者の材料で蓋部材を形成すると、前記凹部に緊密に装着でき、流体に対する封止性及びシール性も向上できる。なお、流体に対する封止性及びシール性を向上させるため、金属、セラミックスなどで形成された硬質の蓋部材の表面には、プラスチックスやエラストマーなどの軟質被覆層を形成してもよい。
【0034】
図3は本発明のスリットノズルの他の例を示す一部概略斜視図である。なお、前記図1〜図2に示すのと同一又は共通する部材又は要素には同一符合を付して説明する。
【0035】
この例では、一対の長尺ブロックのうち一方のブロック1の下部側壁のうち、スリット状吐出口の長手方向の一方の端部に対応する部位には、断面円形状の凹部(又は貫通凹部)31が形成され、この凹部(又は貫通凹部)は他方のブロックの対向壁内に侵入している。この凹部(又は貫通凹部)31には、円筒状の蓋部材32が気密に装着され、ネジ部材33でブロック1に固定されている。
【0036】
図4は本発明のスリットノズルのさらに他の例を示す一部概略斜視図である。この例では、一対の長尺ブロックのうち一方のブロック1の下部吐出面(下端面)のうち、スリット状吐出口の長手方向の一方の端部に対応する部位には、断面四角形状の凹部)41が形成され、この凹部は他方のブロックの対向壁内に侵入している。この凹部41には、平面形状が四角形状の蓋部材42が気密に装着され、ネジ部材43でブロック1に固定されている。
【0037】
このような構造であっても、前記と同様に、蓋部材32,42を凹部(又は切り欠き部)31,41から取り外して凹部31,41を開放し、清掃部材を用いて前記スリット状吐出口に付着した異物を容易に除去でき、清掃できる。また、スリット状吐出部を清掃した後、凹部31,41を蓋部材32,42で塞ぎ、気体及び液体を供給することにより、当初の噴霧特性に復元できる。
【0038】
なお、前記の例では、一対の長尺ブロックのうち一方のブロックに凹部(切り欠き部)を形成しているが、他方のブロックに凹部(切り欠き部)を形成してもよい。
【0039】
スリットノズルは、流体の流入口を備えた長尺部材と、この長尺部材内に形成され、かつ前前記流入口と通じる流路と、この流路に通じて前記長尺部材の長手方向に形成され、かつ流体を膜状に噴射又は噴霧するためのスリット状吐出口とを備えていればよい。例えば、スリットノズル(噴射ノズル又は噴霧ノズル)は、気体噴射口からの気体(空気など)と液体噴射口からの液体(水など)とを混合するための混合空間と、この混合空間からの混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口とを備えた二流体スリットノズルであってもよい。この二流体スリットノズルにおいて、前記混合空間を備えた混合ブロックと、この混合ブロックを収容可能な収容空間及び前記吐出口を形成可能であり、かつ前記気体噴射口及び液体噴射口に気体及び液体をそれぞれ供給可能な供給路(流入口)を有する複数の(特に一対の)ブロックとで構成してもよい。この二流体ノズルでは、複数のブロックの組み合わせ(又は突き合わせ)により、前記混合空間を備えた混合ブロックを収容可能な収容空間及び吐出口(スリット状吐出口など)が形成可能である。複数のブロックは、前記気体噴射口及び液体噴射口に気体及び液体をそれぞれ供給可能な供給路を有していてもよい。このような二流体スリットノズルの詳細は前記特許文献1に記載されている。
【0040】
複数のブロックは、気体供給口と液体供給口とを個別に有する複数のブロックで構成してもよく、少なくとも1つのブロックが気体供給口及び液体供給口の双方を有する複数のブロックで構成してもよい。例えば、複数のブロックは、収容空間(又は収容凹部)及び吐出口(又は吐出凹部)を形成する一対のブロックで構成できる。これらの一対のブロックのうち一方のブロックには、気体噴射口及び液体噴射口にそれぞれ連通した気体供給路及び液体供給路を形成してもよく、一方のブロックに気体噴射口に連通した気体供給路を形成し、他方のブロックに液体噴射口に連通した液体供給路を形成してもよい。より具体的には、組み合わせブロック(又は複数のブロック)は、(1)気体噴射口(例えば、混合空間に臨む気体噴射口又は混合空間に気体を噴射可能な噴射口)に連通した気体供給路(又は供給口)を有する第1のブロック(気体供給ブロック)、及び液体噴射口(例えば、混合空間に臨む液体噴射口又は混合空間に液体を噴射可能な噴射口)に連通した液体供給路(又は供給口)を有する第2のブロック(液体供給ブロック)で構成してもよく、(2)気体噴射口及び液体噴射口にそれぞれ連通した気体供給路及び液体供給路を有する第1のブロック(流体供給ブロック)、及びこの第1のブロックと対向(又は対峙)する第2のブロック(対向又は対峙ブロック)で構成してもよい。また、気体噴射口は混合ブロック及び気体供給ブロックのうちいずれか一方のブロックに形成でき、液体噴射口は混合ブロック及び液体供給ブロックのうちいずれか一方のブロックに形成できる。さらに、第1のブロック(気体供給ブロック又は流体供給ブロック)と第2のブロック(液体供給ブロック又は対向ブロック)との間には、混合ブロックを収容するための収容空間と、混合空間で混合された混合ミストを吐出するための吐出口(スリット状吐出口など)とを形成できる。本発明には、前記複数のブロックが、気体噴射口及び液体噴射口にそれぞれ連通した気体供給路及び液体供給路と、前記混合ブロックを収容可能な収容空間、及び前記吐出口を形成可能な吐出空間を有する第1のブロック(流体供給ブロック)と、この第1のブロックに対向して配設される平板状の第2のブロック(対向ブロック)とで構成されている二流体ノズルも含まれる。このような場合、第1のブロック(流体供給ブロック)の最大厚みと、第2のブロック(対向ブロック)の厚みとの割合が、前者/後者=20/1〜2/1程度であってもよい。
【0041】
前記混合ブロックは、一対のブロックのうち少なくとも一方のブロックの気体供給路と通じ、かつ混合空間に臨む気体噴射口(又は気体噴射路)と、一対のブロックのうち少なくとも一方のブロックの液体供給路と通じる第1の液体流路(液体溜部又は液体チャンバ)と、この第1の液体流路の下流側で流路が狭まり、かつ混合空間に臨む液体噴射口(又は液体噴射路)とを備えていてもよい。
【0042】
本発明では、気体噴射口からの気体と液体噴射口からの液体とをノズル内の混合空間に噴射し、混合空間で両者を効率よく衝突混合できるので、吐出口からの混合ミストを小さな噴射厚みでしかも均一な分布で噴霧又は噴射できる。そのため、衝突力又は洗浄力を向上できるとともに、噴霧ミストの均一性又は均等性(衝突力分布、水量分布など)を向上できる。しかも、複数のブロック(例えば、一対のブロック)と混合ブロックとの組み合わせにより二流体ノズルを構築できるので、各ブロックの流路を形成するための加工処理が容易であるだけでなく、部品点数を大きく低減できるとともに構造を簡素化できる。さらに、二流体ノズルが長尺状であっても、簡単な構造で、ノズルの長手方向でのミストの噴霧分布(流量分布)を均一化できる。
【0043】
流体を均一に混合空間に噴射させるため、前記気体噴射口及び/又は液体噴射口に隣接する上流側にはチャンバ(流体溜部)を形成してもよく、このチャンバは気体噴射口及び液体噴射口のうち少なくとも一方の噴射口に連なって形成すればよく、例えば、少なくとも液体噴射口の上流側に、連通部(例えば、孔状連通部)を介してチャンバ(1又は複数のチャンバ)が連通していてもよい。噴射口から流体を高い均等性で混合空間に噴射するため、チャンバは、複数のチャンバ、例えば、第1のチャンバと第2のチャンバとで構成してもよい。
【0044】
吐出口(スリット状吐出口など)に対する気体噴射口と液体噴射口との位置関係は特に制限されず、気体噴射口は、スリット状吐出口に対して液体噴射口と対向する位置や液体噴射口の下流側に形成してもよいが、液体噴射口よりも上流側に形成する場合が多い。さらに、長手方向での混合ミストの均一性を向上させるため、混合空間の下流端から吐出口に至る吐出流路には、混合空間からの混合ミストを拡散させるための拡散室(例えば、前記吐出流路よりも単位体積当たりの容積が大きな拡散室など)を形成してもよい。混合空間の下流端から吐出口に至る流路は連続的又は段階的に狭くなっていてもよい。拡散室が、断面形状において、上流側から下流方向に向かって、同じ幅の空間、先太状又は先細状(連続的又は段階的に狭まる先細状)の空間又はこれらを組み合わせた空間であってもよい。また、スリット状吐出口は混合空間と同軸芯に形成してもよい。また、前記吐出口を、混合空間の軸芯からはずれて形成し、前記吐出流路に、混合空間からの混合ミストが衝突する段部又は傾斜部を形成してもよい。このような場合、ミストの噴霧量(特に長手方向の噴霧量)の均一性又は均等性をさらに向上できる。
【0045】
より具体的には、二流体ノズルは、互いに対向(又は少なくとも吐出口を除く周縁部で面接触)する一対の長尺なブロック(ブロック)と、この一対のブロック(ブロック)間に形成された収容空間と、この収容空間内に収容され、かつ混合空間が形成された混合ブロック(ブロック)と、この混合ブロック(ブロック)に形成され、かつ前記混合空間に臨み気体を噴射するための気体噴射口及び前記混合空間に液体を噴射するための液体噴射口と、前記混合空間の下流側において一対のブロック(ブロック)の間に形成され、かつ前記混合空間で混合された混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口と、気体噴射口及び液体噴射口に隣接する上流側にそれぞれ形成されたチャンバと、一対のブロックのうち少なくとも一方のブロックに形成され、かつ各チャンバに連なる気体供給口及び液体供給口と、前記一対のブロックと混合ブロックとの間をシールするためのシール手段と、一対のブロックと混合ブロックとを固定するための固定手段とを備えていてもよい。このようなノズルにおいて、一方のブロックに、気体供給口及び液体供給口と、チャンバと、収容空間と、吐出空間とで構成される流路形成凹部が形成され、他方のブロックの対向面が平面状であってもよい。また、混合ブロックは長尺なブロック(例えば、一対のブロック)の長手方向に延びる収容空間に収容してもよい。さらに、混合空間の形状は特に制限されず縦長の空間であってもよく、この縦長の混合空間の上部に気体噴射口が臨み、縦長の混合空間の側部に液体噴射口が臨んでいてもよい。また、気体噴射口、液体噴射口、及び混合空間で構成された混合流路は、混合ブロック(長尺な混合ブロック)の長手方向に所定間隔毎に形成してもよい。
【0046】
複数のブロックと混合ブロックとは、少なくとも混合空間及びその下流域での流体の流路に対して少なくとも交差することなく、固定手段又は締結手段(ネジ手段など)により固定又は締結してもよい。通常、複数のブロックの各ブロックと混合ブロックとが、それぞれ締結手段又は固定手段により締結又は固定されている。この固定手段又は締結手段は、スリット状吐出口のスリット幅を調整するためのスリット幅調整手段を構成してもよい。このような構造では、固定又は締結手段が流路内に延出又は突出したり、跨いで流路を遮蔽することがなく、少なくとも混合空間及びその下流域での流体の流れを乱すことがない。そのため、吐出口からの混合ミストの均一性を向上できる。
【0047】
さらに、本発明のスリットノズルは前記二流体ノズルに限らず一流体ノズル、例えば、液体(水など)又は気体(空気など)を噴射又は噴霧する一流体スリットノズルであってもよい。この一流体スリットノズルの構造は特に制限されず、例えば、前記構造の二流体スリットノズルにおいて、液体流路又は気体流路のいずれか一方の流路が形成されていないノズルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のスリットノズルは、種々の用途、例えば、被処理体の洗浄(半導体ウエハーや液晶基板など精密機器部品の洗浄)、被冷却体の冷却、被乾燥体の乾燥などに利用できる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0050】
実施例1
図1〜図2に示す二流体ノズルを用いて水の噴霧試験を行った。なお、二流体ノズルにおいて、長尺な第1のブロックと長尺な第2のブロックとでスリット状吐出口の長さ(スリット長)1300mm,スリット厚み(スリット間隔)0.06mmを有する一対のブロックを形成した。また、一対のブロックの間に形成された収容空間には、混合ブロック(長さ1320mm,高さ30mm,厚み20mm)を収容した。混合ブロックには、長手方向に沿って10mm間隔で混合流路を形成した。すなわち、気体溜め用チャンバ(内径4mmφ,長さ5mm)と気体噴射流路(内径1.0mmφ,長さ1.5mm)及び混合空間(内径4mmφ,長さ16mm)の流路を混合ブロックの縦方向に形成するとともに、第1の液体溜め用チャンバ(内径10mmφ,深さ6mm)及び液体噴射流路(内径1.0mmφ,長さ1.0mm)が混合ブロックの厚み方向に形成されている。さらに、一対のブロックの下流域の吐出流路には、断面四角形状の第1の拡散室(幅3mm、高さ1.5mm)と、この第1の拡散室の下流域に断面四角形状の第2の拡散室(幅2mm、高さ2mm)とを形成した。
【0051】
そして、空気の流量150m/h、水の流量1m/h、気水体積比150、噴射距離10mmの条件で衝突力分布を測定したところ、図5に示す結果を得た。なお、長手方向の衝突力分布は、感圧幅20mmの衝突力測定用センサを用いて長手方向に沿って測定し、厚み方向の衝突力分布は、感圧径3mmφの衝突力測定用センサを用いて測定した。
【0052】
図5から明らかなように、長手方向の衝突力が均等であるとともに、厚み方向には噴霧厚みが小さくシャープな分布を示し、高い衝突力が得られた。
【0053】
そして、30日間に亘り連続運転したところ、図6に示すように、噴霧分布の一部に衝突力の低下部が生じた。
【0054】
そこで、スリット状吐出口にスリットよりも薄いゲージを入れ、スリット状吐出口の両端部の掃除用蓋部材を開けて、水を流しながら異物を掻き出した。そして、再度、衝突力分布を測定したところ、図5と同じ衝突力分布が得られ、復元できた。なお、異物の除去操作は約30分で完了した。
【0055】
比較例1
スリット状吐出孔の両端部の凹部及びこの凹部を塞ぐ蓋部材を備えていない点を除き、図1〜図2と同様の二流体ノズルを用い、実施例1と同様にして、30時間に亘り連続的に運転したところ、スリット状吐出孔内に異物が付着した。付着した異物の除去を試みたが、依然として異物がスリット状吐出孔の両端に付着しており、衝突力分布を測定したところ、図7に示すように、衝突力分布の両端部が不均一となった。
【0056】
比較例2
一対の長尺ブロックのうち一方のブロックの下部吐出面(下端面)のうち、スリット状吐出口の長手方向の両端部に対応する部位に、スリット状吐出口と連なり、かつ平面四角形状の溝部(0.5mm×2mm)を形成する以外、実施例1と同様にして、衝突力分布を測定したところ、図8に示すように、衝突力分布の両端部で流量が増加し、不均一な衝突力分布となった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は本発明の二流体ノズルの一例を示す概略分解斜視図であり、図1(A)は混合ブロックとこの混合ブロックとを収容する一方のブロックを示す概略斜視図、図1(B)は他方のブロックを水平方向に反転させた状態を示す概略斜視図である。
【図2】図2は図1の二流体ノズルを示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明のスリットノズルの他の例を示す一部概略斜視図である。
【図4】図4は本発明のスリットノズルのさらに他の例を示す一部概略斜視図である。
【図5】図5は実施例1での噴霧分布を示すグラフである。
【図6】図6は実施例1において異物が付着した状態での噴霧分布を示すグラフである。
【図7】図7は比較例1での噴霧分布を示すグラフである。
【図8】図8は比較例2での噴霧分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1,2…一対のブロック
3…気体供給路
4…液体供給路
5,7…チャンバ(気体溜部)
6…混合ブロック
8…気体噴射口
9,10…チャンバ(液体溜部)
11…液体噴射口
12…混合空間
13…吐出流路
14…吐出口
21,31,41…凹部(切り欠き部)
22,32,42…蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口を備えた長尺部材と、この長尺部材内に形成され、かつ前記流入口と通じる流路と、この流路に通じて前記長尺部材の長手方向に形成され、かつ流体を膜状に噴射又は噴霧するためのスリット状吐出口とを備えたスリットノズルであって、前記スリット状吐出口に連なり、かつスリット状吐出口の長手方向の少なくとも一方の端部に前記スリット状吐出口のスリット幅よりも大きく形成された凹部と、この凹部に対して装着可能な蓋部材とを備えているスリットノズル。
【請求項2】
スリット状吐出口の長手方向の端部に接して凹部が形成されている請求項1記載のスリットノズル。
【請求項3】
凹部が長尺部材の側面のうちスリット状吐出口に対応する下端部に形成され、凹部の深さがスリット状吐出口の壁面を越えている請求項1又は2記載のスリットノズル。
【請求項4】
気体噴射口からの気体と液体噴射口からの液体とを混合するための混合空間と、この混合空間からの混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口とを備えた二流体スリットノズルであって、前記混合空間を備えた混合ブロックと、この混合ブロックを収容可能な収容空間及び前記吐出口を形成可能であり、かつ前記気体噴射口及び液体噴射口に気体及び液体をそれぞれ供給可能な供給路を有する一対のブロックとで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載のスリットノズル。
【請求項5】
互いに対向する一対の長尺なブロックと、この一対のブロック間に形成された収容空間と、この収容空間内に収容され、かつ混合空間が形成された混合ブロックと、この混合ブロックに形成され、かつ前記混合空間に臨む気体噴射口及び液体噴射口と、前記混合空間の下流側において一対のブロックの間に形成され、かつ前記混合空間で混合された混合ミストを吐出するためのスリット状吐出口と、前記気体噴射口及び液体噴射口に隣接する上流側にそれぞれ形成されたチャンバと、前記一対のブロックのうち少なくとも一方のブロックに形成され、かつ各チャンバに連なる気体供給口及び液体供給口と、前記一対のブロックと混合ブロックとの間をシールするためのシール手段と、一対のブロックと混合ブロックとを固定するための固定手段とを備えている請求項1〜4のいずれかに記載のスリットノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−247937(P2009−247937A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96114(P2008−96114)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000142023)株式会社共立合金製作所 (24)
【Fターム(参考)】