説明

スルーホール付きプリント配線板の製造方法

【課題】ホールエッジにおける感光性樹脂層やこの感光性樹脂層から形成されるレジスト層の脱落を抑制することができ、スルーホールと導体配線との間の充分な導通を維持する。
【解決手段】プリント配線板製造用パネル1に対して、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布してスルーホール4の内面と導体層3の表面に第一感光性樹脂層5aを形成する第一感光性樹脂層形成工程と、前記第一感光性樹脂層5aが形成されたプリント配線板製造用パネル1の表面に更にネガ型感光性樹脂組成物を塗布して第二感光性樹脂層5bを形成する第二感光性樹脂層形成工程とを経ることで、第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bからなる感光性樹脂層5を形成すると共にプリント配線板製造用パネル1の表面を第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bとで、スルーホール4の内面を第一感光性樹脂層5aのみで、それぞれ被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホールを有するプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スルーホールを有するプリント配線板は、絶縁基板の表裏両面に形成した配線回路導体を、その両者を貫通する孔を導通化することで電気的に接続してなる孔(スルーホール4)を備えたものである。
【0003】
従来、スルーホールを有するプリント配線板の製造方法としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に開示されるように、一般的に穴埋め法と呼ばれる工程によりスルーホールと導体パターンを形成する方法や、ドライフィルムによりスルーホールと導体パターンを形成する穴埋めドライフィルムテンティング法が用いられている。
【0004】
具体的には、まず両面銅張積層板の所望個所にスルーホール用の貫通孔を穿設し、無電解めっきあるいは無電解めっきと電解めっきの併用等により孔壁を含む両面銅張積層板の全面に銅めっき層からなる導電層を形成する。これにより表裏の配線回路導体の電気的接続をするスルーホールが形成されたプリント配線板製造用パネルが得られる。
【0005】
次に、スルーホール内に溶剤乾燥型の孔埋めインクを充填すると共にその孔埋めインクを溶剤の揮散により硬化させ、或いはスルーホール内に放射線硬化型の孔埋めインクを充填すると共にその孔埋めインクを放射線硬化させる。
【0006】
次に、孔埋めインクの硬化後の上記プリント配線板製造用パネルの表裏に、レジスト材料により所望のパターンを有するエッチングレジスト層を形成した後、銅露出部分を塩化第二銅、塩化第二鉄等の酸性エッチング液によりエッチング除去することにより導体パターンを形成する。
【0007】
次に、アルカリ水溶液により孔埋めインク硬化物とエッチングレジスト層を除去することによりスルーホールを有するプリント配線板が作製される。
【0008】
しかしながら、近年のプリント配線板の微細導体パターン化に伴い、上記のような穴埋め法などでは、配線の導体パターン幅が100μm以下の微細な導体パターンを形成するには、レジスト層の密着性や解像性の面で問題があり、十分対応できていない。
【0009】
このため、写真現像可能な液状エッチングレジストインクを用い、これにプリント配線板製造用パネルを浸漬するなどして、プリント配線板製造用パネルの表面とスルーホールの内側とを液状エッチングレジストインクで覆うことが考えられ、これを用いた方法が注目されている。このような先行技術としては、特許文献4、特許文献5等に開示されるものを挙げることができる。
【0010】
これらの先行技術では、スルーホールの周縁部(ホールエッジ)でインクのひけが生じやすくなり、この部分でレジスト層が薄くなってレジスト層の脱落が生じやすくなるという問題があった。また、レジスト層にはスルーホール内で気泡が生じやすくなり、現像工程等でレジスト層の気泡の膜が破れると、エッチング液によって導体部分が侵食されてしまうという問題があった。更に剥離工程においてスルーホール内のレジスト層が剥離が困難であるという問題もあった。
【0011】
一方、最も微細で高密度な導体パターンの要求される分野では、スルーホール、その中でも特にバイヤスルーホールを微小化しつつ、さらにその効果を高めるべく、スルーホール周りにランドを形成しない、いわゆるランドレススルーホール化の要請も強くなり、その実現のための各種方法も提案されている。
【0012】
特許文献6に開示されているようなドライフィルムを用いたランドレススルーホールの形成方法では、孔埋めインクの充填されたスルーホール部への密着不良等の問題から、エッチング時にスルーホールエッジ周りにエッチング液が回り込むため、エッジ部が容易にエッチングされて導通不良を生じ易く、ランドレス化には困難を伴っている。
【0013】
また、特許文献7或いは特許文献8に開示されるように、ドライフィルムを用いず液状エッチングレジストインクと孔埋めインクを使用する「穴埋め−液状エッチングレジスト法」も提案されている。これらの場合、プリント配線板製造用パネル表面に付着した孔埋めインクを、研磨工程等で除去する必要があり、バフ研磨の際のプリント配線板製造用パネル表面の傷の発生、プリント配線板製造用パネルの寸法精度誤差等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平04−62887号公報
【特許文献2】特開昭55−102290号公報
【特許文献3】特開平9−249718号公報
【特許文献4】特開2005−158907号公報
【特許文献5】特開平10−13017号公報
【特許文献6】特開昭62−202587号公報
【特許文献7】特開昭58−100493号公報
【特許文献8】特開昭61−139089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ホールエッジにおける感光性樹脂層やこの感光性樹脂層から形成されるレジスト層の脱落を抑制することができ、スルーホールと導体配線との間の充分な導通を維持することができるスルーホールを有するプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、微細なレジストパターンの形成が可能となって導体配線の微細化が可能になると共に、剥離工程においてスルーホールの内面においてレジスト層を容易に除去することができるようになるスルーホールを有するプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るスルーホール付きプリント配線板の製造方法では、スルーホール4を有すると共に表面に導体層3が形成されたプリント配線板製造用パネル1に対して、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布してスルーホール4の内面と導体層3の表面に第一感光性樹脂層5aを形成する第一感光性樹脂層形成工程と、前記第一感光性樹脂層5aが形成されたプリント配線板製造用パネル1の表面に更にネガ型感光性樹脂組成物を塗布して第二感光性樹脂層5bを形成する第二感光性樹脂層形成工程とを経ることで、第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bからなる感光性樹脂層5を形成すると共にプリント配線板製造用パネル1の表面を第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bとで、スルーホール4の内面を第一感光性樹脂層5aのみで、それぞれ被覆する。次いで、プリント配線板製造用パネル1の表面とスルーホール4内面の感光性樹脂層5を露光する露光工程と、現像により感光性樹脂層5の未露光部分を除去して残存する感光性樹脂層5にてレジスト層を形成する現像工程と、エッチングにより基板表面の導体層3のうちレジスト層にて被覆されていない部分を除去して導体配線を形成するエッチング工程と、レジスト層を除去する剥離工程とを経ることで、スルーホール付きプリント配線板を得る。
【0018】
このため、第一感光性樹脂層5aによってスルーホール4の内面を被覆することができると共に、第二感光性樹脂層5bはスルーホール4の内側に形成されないため、スルーホール4の周縁部(ホールエッジ)において第二感光性樹脂層5bに引けが生じることがなくなり、ホールエッジにおける感光性樹脂層5の厚みを充分に大きく保つことができるようになる。このため、ホールエッジにおける感光性樹脂層5やこの感光性樹脂層5から形成されるレジスト層の脱落を抑制することができ、スルーホール4と導体配線との間の充分な導通を維持することができるようになる。
【0019】
第一感光性樹脂層形成工程においては、プリント配線板製造用パネル1をネガ型感光性樹脂組成物中に浸漬した後引き上げることによりスルーホール付きプリント配線板表面とスルーホール4内部にネガ型感光性樹脂組成物を塗布することが好ましい。
【0020】
この場合、ネガ型感光性樹脂組成物をスルーホール4内に侵入させて、スルーホール4の内面を第一感光性樹脂層5aで容易に被覆することができるようになる。
【0021】
また、第二感光性樹脂層形成工程においては、プリント配線板製造用パネル1の表面にロール式塗布法によりネガ型感光性樹脂組成物を塗布することが好ましい。
【0022】
この場合、ネガ型感光性樹脂組成物をスルーホール4内に侵入することなくプリント配線板製造用パネル1の表面に塗布することが容易となり、第二感光性樹脂層5bをプリント配線板製造用パネル1の表面に形成すると共にスルーホール4の内側には形成されないようにすることが容易となる。
【0023】
また、このスルーホール付きプリント配線板の製造方法では、ランドレススルーホール4を形成することが好ましい。
【0024】
この場合、上記のようにスルーホール4と導体配線との間の充分な導通を維持することができるようになることから、スルーホール4がランドレススルーホール4の場合であっても、スルーホール4と導体配線との間の充分な導通を維持することができるようになる。
【0025】
本発明に係るスルーホール付きプリント配線板の製造方法は、スルーホール4を有すると共に表面に導体層3が形成されたプリント配線板製造用パネル1に対して、重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A)を含有するネガ型感光性樹脂組成物を塗布してスルーホール4の内面と導体層3の表面に感光性樹脂層5を形成する感光性樹脂層形成工程と、プリント配線板製造用パネル1の表面とスルーホール4内面の感光性樹脂層5を露光する露光工程と、現像により感光性樹脂層5の未露光部分を除去して残存する感光性樹脂層5にてレジスト層を形成する現像工程と、エッチングにより基板表面の導体層3のうちレジスト層にて被覆されていない部分を除去して導体配線を形成するエッチング工程と、レジスト層を除去する剥離工程とを経ることで、スルーホール付きプリント配線板を得てもよい。
【0026】
このため、微細なレジストパターンの形成が可能となって導体配線の微細化が可能になると共に、剥離工程においてレジスト層を剥離液に溶解させることなく膨潤させ、或いは更に砕片化させることで剥離することが可能となり、スルーホール4の内面においてレジスト層を容易に除去することができるようになる。
【0027】
また、ネガ型感光性樹脂組成物が、(A)重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂、(B)アミン化合物、(C)重合性不飽和化合物、(D)光重合開始剤及び(E)水を含有し、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量が組成物全量に対して10〜90質量%であることが好ましい。
【0028】
この場合、ネガ型感光性樹脂組成物が水系であることから、有機溶媒の揮散に起因する労働安全衛生上の問題、環境汚染の問題、火災発生の危険性の問題等の種々の問題を回避することができ、また露光操作が容易で、感度が高く、耐エッチング液性に優れ、剥離が可能な点から、工程操作や作業環境の面で有利なものである。
【0029】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A−1)を含み、前記カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a)と、カルボキシル基を有しないエチレン性不飽和化合物(b)との重合反応により生成する重合体中のカルボキシル基の一部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(c)とが反応することにより生成することが好ましい。
【0030】
この場合、親水基と疎水基とが付与されたカルボキシル基含有樹脂(A−1)が界面活性剤として機能し、ネガ型感光性樹脂組成物中の成分の乳化及び分散が更に促進されると共に、このネガ型感光性樹脂組成物に高い現像性が付与される。また、カルボキシル基含有樹脂(A−1)は高い光反応性を有することから、レジスト層に特に優れた耐現像液性及び耐エッチング液性が付与される。
【0031】
このカルボキシル基含有樹脂(A−1)の酸価(mg KOH/g)は20〜500の範囲、重量平均分子量は10000〜100000の範囲であることが好ましい。
【0032】
この場合、カルボキシル基含有樹脂(A−1)によるネガ型感光性樹脂組成物中の成分の乳化力、分散力が更に優れたものになり、ネガ型感光性樹脂組成物中で重合性不飽和化合物(C)及び光重合開始剤(D)を更に微細に分散することができるようになる。また、感光性樹脂層5を露光した後の非露光部分の現像液による除去性、並びにレジスト層の耐現像液性及び耐エッチング液性が更に向上して、微細なレジストパターンを有するレジスト層の形成が可能となると共に、このレジスト層のアルカリ剥離性が更に向上する。
【0033】
また、前記カルボキシル基含有樹脂(A)が重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A−2)を含むことも好ましい。このカルボキシル基含有樹脂(A−2)は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(d)と、エポキシ基を有さないエチレン性不飽和化合物(e)との重合反応により生成する重合体中のエポキシ基と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(f)とが反応し、この反応で生成する水酸基と酸無水物(g)とが反応することにより生成する。
【0034】
この場合、親水基と疎水基とが付与されたカルボキシル基含有樹脂(A−2)が界面活性剤として機能し、ネガ型感光性樹脂組成物中の成分の乳化及び分散が更に促進されると共に、このネガ型感光性樹脂組成物に高い現像性が付与される。また、カルボキシル基含有樹脂(A−2)は高い光反応性を有することから、レジスト層に特に優れた耐現像液性及び耐エッチング液性が付与される。
【0035】
このカルボキシル基含有樹脂(A−2)の酸価(mg KOH/g)は20〜500の範囲、重量平均分子量は1000〜50000の範囲であることが好ましい。
【0036】
この場合、カルボキシル基含有樹脂(A−2)によるネガ型感光性樹脂組成物中の成分の乳化力、分散力が更に優れたものになり、ネガ型感光性樹脂組成物中で重合性不飽和化合物(C)及び光重合開始剤(D)を更に微細に分散することができるようになる。また、感光性樹脂層5を露光した後の非露光部分の現像液による除去性、並びにレジスト層の耐現像液性及び耐エッチング液性が更に向上して、微細なレジストパターンを有するレジスト層の形成が可能となると共に、このレジスト層のアルカリ剥離性が更に向上する。
【0037】
また、前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、アミン化合物(B)で中和されていることが好ましい。
【0038】
この場合、ネガ型感光性樹脂組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A)の水分散性或いは水溶性が更に向上すると共に、このレジスト層のアルカリ剥離性が更に向上する。特にスルーホール内のレジスト層を容易に除去することができるようになる。
【0039】
このアミン化合物(B)は3級アミンを含むことが好ましい。
【0040】
この場合、ネガ型感光性樹脂組成物の粘度安定性、保存安定性、及び感光性樹脂層5の保存安定性が良好になる。
【0041】
また、このアミン化合物(B)の含有量が、カルボキシル基含有樹脂(A)中に含まれるカルボキシル基1モルに対して、0.2〜1.0当量の範囲であることが好ましい。
【0042】
この場合、ネガ型感光性樹脂組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A)の水分散性或いは水溶性が更に向上すると共に、このレジスト層に高いアルカリ剥離性が付与され、プリント配線板製造用パネル表面とスルーホール内のレジスト層を容易に除去することができるようになる。
【0043】
また、前記ネガ型感光性樹脂組成物が、前記カルボキシル基含有樹脂(A)がアミン化合物(B)で中和され、この中和されたカルボキシル基含有樹脂(A)を含む水溶液に重合性不飽和化合物(C)と光重合開始剤(D)とが加えられる工程を経て調製されたものであることが好ましい。
【0044】
この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)の水分散性或いは水溶性が向上すると共に、界面活性剤としての機能も向上し乳化力、分散力に優れたものになり、組成物中で重合性不飽和化合物(C)及び光重合開始剤(D)が更に微細に分散することができるようになる。
【0045】
また、前記ネガ型感光性樹脂組成物が、下記工程(1)から(6)を経て調製されたものであることが好ましい。
(1)有機溶媒中でカルボキシル基含有樹脂(A)を合成する工程
(2)前記工程(1)で調製された前記カルボキシル基含有樹脂(A)の有機溶媒溶液を混合し、この混合液にアミン化合物(B)を加える工程
(3)前記工程(2)で調製された溶液を攪拌しながら、この溶液中に水(E)を加える工程
(4)前記工程(3)で調製された溶液から有機溶媒を減圧蒸留により除去する工程
(5)重合性不飽和化合物(C)中に光重合開始剤(D)を溶解させる工程
(6)前記工程(4)で調製された水溶液を攪拌しながら、この水溶液中に前記工程(5)で調製された溶液を加える工程
この場合、労働安全衛生上の問題、環境汚染の問題、火災発生の危険性を低減しつつ、プリント配線板に微細な導体配線パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、ホールエッジにおける感光性樹脂層5やこの感光性樹脂層5から形成されるレジスト層の脱落を抑制することができ、スルーホール4と導体配線との間の充分な導通を維持することができるようになる。
【0047】
また、本発明によれば、微細なレジストパターンの形成が可能となって導体配線の微細化が可能になると共に、剥離工程においてスルーホール4の内面においてレジスト層を容易に除去することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0050】
[プリント配線板製造用パネル作製工程]
プリント配線板製造用パネル1は、複数の導体層3と、各導体層3間に介在する絶縁層2とが積層した構造を有する。このプリント配線板製造用パネル1は、貫通孔の内面に導体被覆6が施されることで形成されたスルーホール4を有する。プリント配線板製造用パネル1は例えば次のようにして作製することができる。
【0051】
まず、絶縁基板を用意する。絶縁基板としては、例えば紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、紙基材ポリエステル樹脂、ガラス基材エポキシ樹脂、ガラス基材テフロン(登録商標)樹脂、ガラス基材ポリイミド樹脂、コンポジット樹脂などで形成された合成樹脂基板;アルミニウム若しくは鉄などの金属をエポキシ樹脂などで覆って絶縁処理することで形成された金属系絶縁基板;アルミナセラミック、低温焼成セラミック、窒化アルミニウムセラミックなどから形成されたセラミック基板などが挙げられる。
【0052】
この絶縁基板に、レーザー加工やドリル加工等によって、上下両面に開口する貫通孔を形成する。
【0053】
次に、絶縁基板の両面に銅等からなるシート状の導体層3を全面に設けると共に、貫通孔の内面に導電被覆を施す。例えば、無電解めっきと電解めっきの併用により、貫通孔の孔壁を含む積層板の全面に銅めっき層等からなる導電層を形成する。
【0054】
[第一感光性樹脂層形成工程]
プリント配線板製造用パネル1に対して、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥することにより、第一感光性樹脂層5aを形成する。
【0055】
第一感光性樹脂層5aは、図1(a)に示すようにプリント配線板製造用パネル1の表面とスルーホール4の内面を覆うように形成し、あるいは更に図2(a)に示すようにスルーホール4の内側において第一感光性樹脂層5aが膜を張ることでスルーホール4を閉塞する。
【0056】
第一感光性樹脂層5aを形成するにあたっての、ネガ型感光性樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、浸漬塗布法(ディッピング法)、ロール式塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。特に浸漬塗布法の場合、スルーホール4の内側において第一感光性樹脂層5aが気泡を含むことを抑制することができ、ネガ型感光性樹脂組成物にてスルーホール4の内面を覆い、あるいは更にスルーホール4の内側において膜を張ることでスルーホール4を閉塞することが容易になる。この浸漬塗布法において、スルーホール4の内側の気泡を更に抑制するためには、プリント配線板製造用パネル1をネガ型感光性樹脂組成物の浴に浸漬した状態で揺動したり、プリント配線板製造用パネル1を傾斜させながらネガ型感光性樹脂組成物の浴に浸漬したりすることが好ましい。
【0057】
第一感光性樹脂層5aの形成に使用されるネガ型感光性樹脂組成物の組成は特に限定されず、適宜の組成のネガ型感光性樹脂組成物を使用することができる。
【0058】
[第二感光性樹脂層形成工程]
第一感光性樹脂層5aが形成されたプリント配線板製造用パネル1に、更にネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥することにより第二感光性樹脂層5bを形成することで、図1(b)或いは図2(b)に示すように第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bとからなる感光性樹脂層5を形成することが好ましい。
【0059】
第二感光性樹脂層5bは、第一感光性樹脂層5aを覆うように形成する。第二感光性樹脂層5bを形成するにあたってのネガ型感光性樹脂組成物の塗布方法は特に限定されないが、浸漬塗布法(ディッピング法)、ロール式塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。
【0060】
また、第二感光性樹脂層5bは、プリント配線板製造用パネル1の上下両面における第一感光性樹脂層5aの表面を覆うように形成し、スルーホール4の内側には第二感光性樹脂層5bを形成しないことが好ましい。
【0061】
図2に示すように第一感光性樹脂層5aの膜でスルーホール4内が閉塞されている場合には、スルーホール4の内側に第二感光性樹脂層5bを形成しないようにすることが容易となる。この場合、第二感光性樹脂層5bを形成するためにネガ型感光性樹脂組成物をプリント配線板製造用パネル1に塗布すると、スルーホール4の開口とスルーホール4を閉塞している第一感光性樹脂層5aの膜との間にある空気が、ネガ型感光性樹脂組成物のスルーホール4内への侵入を阻害し、スルーホール4の内面において第二感光性樹脂層5bが形成されないようにすることができる。特にロール式塗布法を適用して第二感光性樹脂層5bを形成すると、スルーホール4の内面における第二感光性樹脂層5bの形成を充分に阻害することができる。
【0062】
また、特にプリント配線板製造用パネル1の上下両面に同時にロールコートを施す両面ロール式塗布法を採用すれば、図1に示すように第一感光性樹脂層5aの膜でスルーホール4内が閉塞されていなくても、スルーホール4の両側のロールが配置されることでスルーホール4内に空気が閉じ込められ、この空気がネガ型感光性樹脂組成物のスルーホール4内への侵入を阻害し、スルーホール4の内面において第二感光性樹脂層5bが形成されないようにすることができる。
【0063】
このように第二感光性樹脂層5bがスルーホール4の内側に形成されないようにすると、スルーホール4の周縁部(ホールエッジ)において第二感光性樹脂層5bに引けが生じることがなくなり、このためホールエッジにおける感光性樹脂層5の厚みを充分に大きく保つことができるようになる。このため、ホールエッジにおける感光性樹脂層5やレジスト層の脱落を抑制することができ、ランドレススルーホール4を形成する場合であってもスルーホール4と導体配線との間の充分な導通を維持することができるようになる。
【0064】
第二感光性樹脂層5bの形成に使用されるネガ型感光性樹脂組成物の種類は特に限定されるものではなく、適宜のものを用いることができる。
【0065】
このように感光性樹脂層5を二段階の塗布工程を経て形成することにより、スルーホール4内とプリント配線板製造用パネル1表面において、感光性樹脂層5の膜厚を適宜調整することができる。
【0066】
[露光工程]
露光工程では、感光性樹脂層5を構成する第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bとを、パターンマスクを介して同時に露光する。
【0067】
パターンマスクとしては、配線やランド等からなる所望の導体配線のパターンが活性エネルギー線を透過させる露光部として描画されると共に他の部分が活性エネルギー線を遮蔽する非露光部として形成された、マスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。ランドレススルーホール4を有するスルーホール付きプリント配線板を製造する場合には、フォトツールにはランドを有さない導体配線のパターンを非露光部として形成する。
【0068】
このフォトツールをプリント配線板製造用パネル1の両面において感光性樹脂層5に接触させ、あるいは一定距離だけ離間させた状態(オフコンタクト)で配置し、プリント配線板製造用パネル1の両面から活性エネルギー線を照射することにより、フォトツールを介して感光性樹脂層5を露光する。
【0069】
露光に用いる光源としては、ネガ型感光性樹脂組成物の組成に応じ、この組成物を反応させることができる活性エネルギー線を照射する光源が用いられる。前記活性エネルギー線としては、ネガ型感光性樹脂組成物の組成に応じ、紫外線、可視光、近赤外線等などの適宜の活性エネルギー線が挙げられる。
【0070】
また活性エネルギー線のエネルギー量は、ネガ型感光性樹脂組成物を十分に反応させるための適宜の量とするものであり、例えばプリント配線板製造用パネル1の片面側から照射される活性エネルギー線のエネルギー量を5〜2000mJ/cmとしてプリント配線板製造用パネル1の両面から活性エネルギー線を照射する。
【0071】
尚、露光の手法は、上記のようなフォトツールを用いる方法に限られるものではなく、適宜の手法を採用することができ、例えばレーザー露光等による直接描画法等を採用することができる。
【0072】
[現像工程]
露光後のプリント配線板製造用パネル1からフォトツールを取り外し、感光性樹脂層5を現像処理することにより、感光性樹脂層5の未露光部分を除去して、残存する感光性樹脂層5の露光部分にてレジスト層を形成する。このときレジスト層は、プリント配線板製造用パネル1の表面において導体パターンの形状に形成される。またスルーホール4の内面にもレジスト層が形成される。
【0073】
現像処理では、感光性樹脂層5を形成するネガ型感光性樹脂組成物の種類に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例としては例えば炭酸ソーダ、苛性ソーダ、苛性カリ、メタケイ酸ソーダ等の無機塩基性物質や、アルキルアミン、アルカノールアミン等の有機塩基性物質の水溶液等が挙げられる。
【0074】
[エッチング工程]
次に、エッチング処理によりレジスト層にて被覆されていない部分の導体層3を除去する。これにより、プリント配線板製造用パネル1上における導体層3の残存部分にて所望のパターンを有する導体回路が形成されると共にスルーホール4が形成される。
【0075】
エッチング処理では、導体層3を構成する金属の種類に応じた適宜のエッチング液を使用することができる。エッチング液の具体例としては、例えば塩化第二鉄液、塩化第二銅液等が挙げられる。
【0076】
[剥離工程]
上記エッチング工程の後、剥離工程においてレジスト層を剥離する。剥離工程は図2に示すように、導体配線及びスルーホール4が形成されたプリント配線板製造用パネル1からレジスト層を剥離する。
【0077】
レジスト層は、剥離液で処理することにより剥離する。剥離液としては、感光性樹脂層5を形成するネガ型感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の剥離液を使用することができる。剥離液の具体例としては、例えば苛性ソーダ、苛性カリ、メタケイ酸ソーダ等の無機塩基性物質の水溶液、アルキルアミン、アルカノールアミン等の有機塩基性物質の水溶液などが挙げられる。
【0078】
この剥離工程では、レジスト層は、剥離液に溶解させるのではなく、剥離液により膨潤させることで剥離し、或いは更に膨潤により砕片化させることで剥離することが好ましい。この場合、レジスト層が残存しやすいスルーホール4の内面においても、レジスト層を容易に剥離することができるようになる。
【0079】
以上のようにして、所望の導体配線及びスルーホール4を有するプリント配線板を得ることができる。
【0080】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
プリント配線板の製造に使用されるネガ型感光性樹脂組成物は、特に限定されるものではないが、その好適な例として、下記に示す組成を有する水系ネガ型感光性樹脂組成物が挙げられる。第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bを形成するためのネガ型感光性樹脂組成物としては、少なくとも一方が下記の組成の水系ネガ型感光性樹脂組成物であることが好ましく、第一感光性樹脂層5aと第二感光性樹脂層5bを形成するためのネガ型感光性樹脂組成物が共に下記の組成の水系ネガ型感光性樹脂組成物であれば更に好ましい。
【0081】
このような水系ネガ型感光性樹脂組成物は、水系であることから、有機溶媒の揮散に起因する労働安全衛生上の問題、環境汚染の問題、火災発生の危険性の問題等の種々の問題を回避することができ、また露光操作が容易で、感度が高く、耐エッチング液性に優れ、剥離が可能な点から、工程操作や作業環境の面で有利なものである。
【0082】
特にこの水系ネガ型感光性樹脂組成物を用いると、剥離工程において、レジスト層を剥離液に溶解させることなく膨潤させ、或いは更に砕片化させることで剥離することが可能となり、スルーホール4の内面においてもレジスト層を容易に除去することができるようになる。
【0083】
尚、以下の説明において、「(メタ)アクリ−」は「アクリ−」及び「メタクリ−」を総称したものであり、例えば「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」を総称したものである。
【0084】
この水系ネガ型感光性樹脂組成物(以下、「組成物」と略称することがある。)は、重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A)と、アミン化合物(B)と、重合性不飽和化合物(C)と、光重合開始剤(D)と、水(E)とを含有する。
【0085】
以下、各成分について詳説する。
【0086】
(カルボキシル基含有樹脂(A))
カルボキシル基含有樹脂(A)が重合性不飽和結合を有するため、水系ネガ型感光性樹脂組成物内に不飽和基が導入される。このため、水系ネガ型感光性樹脂組成物に光硬化性が付与され、この組成物から形成される感光性樹脂層5が部分的に露光された場合には、非露光部分と露光部分(レジスト層)との間で、水、希アルカリ性溶液等の現像液に対する溶解性、分散性、膨潤性等に充分な相違が生じる。このため、微細なレジストパターンの形成が可能となる。
【0087】
組成物全量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の含有量は10〜90質量%の範囲であることが好ましい。この範囲において、組成物に優れた露光現像性が付与される。
【0088】
カルボキシル基含有樹脂(A)としては適宜のものが用いられるが、下記のカルボキシル基含有樹脂(A−1)とカルボキシル基含有樹脂(A−2)のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0089】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a)と、カルボキシル基を有しないエチレン性不飽和化合物(b)との重合反応により生成する重合体中のカルボキシル基の一部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(c)とを反応させて生成する。
【0090】
エチレン性不飽和化合物(a)としては、カルボキシル基を有する適宜のモノマー又はプレポリマーが使用される。エチレン性不飽和化合物(a)の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、桂皮酸等;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等の二塩基酸無水物とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の1分子中に1個の水酸基を含むエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応させて得られるハーフエステル類;コハク酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、イタコン酸等の二塩基酸とグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等の1分子中に1個のエポキシ基を含むエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応させて得られるハーフエステル類等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0091】
エチレン性不飽和化合物(b)としては、カルボキシル基を有さず、且つ前記エチレン性不飽和化合物(a)と共重合可能な適宜のエチレン性不飽和単量体が使用される。エチレン性不飽和化合物(b)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、直鎖状、分岐状或いは脂環式のアルキル系(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は例えば2〜23)のモノ(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエチレングリコールエステル系(メタ)アクリレート類、及び同様なプロピレングリコール系(メタ)アクリレート類、ブチレングリコール系モノ(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;べンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルアルコール等のビニル芳香族化合物類;マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;2−(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート類;その他にグリセロールモノ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、(メタ)アリルアルコール、シアン化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。また、これらの化合物に加えて、必要に応じエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼン等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(b−2)も使用される。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0092】
エチレン性不飽和化合物(c)としては、エポキシ基を有する適宜のモノマー又はプレポリマーが使用される。エチレン性不飽和化合物(c)の具体例としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エポキシ化ステアリルアクリレート(新日本理化株式会社製;品番「リカレジンESA」)等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物のうち、特にグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートは、汎用され入手が容易である点で好ましい。
【0093】
エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)の反応は、適宜の重合方法により進行する。この重合方法として溶液重合法等の公知の手法が採用され得る。
【0094】
溶液重合法が採用される場合、エチレン性不飽和化合物(a)、エチレン性不飽和化合物(b)及び重合開始剤が混入された適宜の有機溶媒中を窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法や、共沸重合法等が採用される。
【0095】
上記有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0096】
重合開始剤としては、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらの重合開始剤は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。また、重合開始剤としてレドックス系の開始剤も使用され得る。
【0097】
エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との比率は適宜調整されるが、前者対後者のモル比が10:90〜90:10の範囲であることが好ましい。
【0098】
エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との重合体中のカルボキシル基の一部と、エチレン性不飽和化合物(c)との反応は、適宜の手法により進行する。この手法として、公知の方法が採用され得る。例えば、上記溶液重合法等により生成したエチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との重合体を含む有機溶媒溶液中に、熱重合禁止剤と触媒とを加え、この有機溶媒溶液を撹拌混合しながら、常法により加熱することにより、前記重合体中のカルボキシル基の一部と、エチレン性不飽和化合物(c)とを反応させることができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が使用される。触媒としては、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;トリフェニルスチビン等が使用される。反応温度は好ましくは60〜150℃、更に好ましくは80〜120℃の範囲とする。
【0099】
エチレン性不飽和化合物(c)の使用量は、エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との重合体中に存在するカルボキシル基1モルに対して、エチレン性不飽和化合物(c)中に存在するエポキシ基が、好ましくは0.1〜0.8モルの範囲、更に好ましくは0.3〜0.6モルの範囲となる量である。この範囲において、組成物から形成される感光性樹脂層5の非露光部分に現像液(水又は希アルカリ性溶液)による特に優れた現像性が付与されると共に、この被膜の露光部分(レジスト層)に特に優れた耐現像液性が付与される。
【0100】
このカルボキシル基含有樹脂(A−1)の酸価は、好ましくは20〜500の範囲、更に好ましくは50〜200の範囲である。またこのカルボキシル基含有樹脂(A−1)の重量平均分子量は好ましくは10000〜100000の範囲、更に好ましくは20000〜50000の範囲である。
【0101】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)の酸価が小さすぎる場合、カルボキシル基含有樹脂(A−1)がアミン化合物(B)で中和されてもこのカルボキシル基含有樹脂(A−1)に充分な水溶性が付与されず、感光性樹脂層5の非露光部分の現像液による除去や、レジスト層のアルカリ性溶液による剥離が困難となるおそれがある。一方、この酸価が大きすぎる場合、アミン化合物(B)で中和されたカルボキシル基含有樹脂(A−1)の水溶性が高くなりすぎて、レジスト層の耐現像液性や耐エッチング液性が充分に得られなくなり、その結果、微細なレジストパターンの形成が困難になるおそれがある。
【0102】
また、カルボキシル基含有樹脂(A−1)の重量平均分子量が小さすぎる場合、感光性樹脂層5にタック性が生じ、感光性樹脂層5が形成された基板の、露光時等における取扱性が悪くなるおそれがあり、またレジスト層の耐現像液性、耐エッチング液性が充分に得られなくなるおそれがある。一方、この重量平均分子量が大きすぎる場合、組成物の粘度が過剰に高くなり、この組成物中にカルボキシル基含有樹脂(A−1)が微分散することが困難となり、その結果、レジスト層による微細なレジストパターンの形成が困難になるおそれがある。
【0103】
カルボキシル基含有樹脂(A−1)の酸価は、カルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成に使用される原料の種類に応じて、エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との使用量の割合、並びにエチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との重合体に対するエチレン性不飽和化合物(c)の使用量を調整することで、適宜調整される。
【0104】
また、カルボキシル基含有樹脂(A−1)の重量平均分子量は、カルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成に使用される原料の種類や反応条件等に応じ、エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との重合反応に使用される重合開始剤の使用量等を調製することで、適宜調整される。
【0105】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(d)と、エポキシ基を有さないエチレン性不飽和化合物(e)との重合反応により生成する重合体中のエポキシ基と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(f)とが反応し、この反応で生成する水酸基と酸無水物(g)とが反応して生成する。
【0106】
エチレン性不飽和化合物(d)としては、エポキシ基を有する適宜のモノマー又はプレポリマーが使用される。エチレン性不飽和化合物(d)の具体例としては、例えばカルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成に使用されるエチレン性不飽和化合物(c)についての上記具体例と同一の化合物が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物のうち、特にグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートは、汎用され入手が容易である点で好ましい。
【0107】
エチレン性不飽和化合物(e)としては、エポキシ基を有さず、且つ前記エチレン性不飽和化合物(d)と共重合可能な適宜のエチレン性不飽和単量体が使用される。エチレン性不飽和化合物(e)の具体例としては、例えばカルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成に使用されるエチレン性不飽和化合物(b)についての上記具体例と同一の化合物が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0108】
エチレン性不飽和化合物(f)としては、カルボキシル基を有する適宜のモノマー又はプレポリマーが使用される。エチレン性不飽和化合物(f)の具体例としては、例えばカルボキシル基含有樹脂(A−1)の合成に使用されるエチレン性不飽和化合物(a)についての上記具体例と同一の化合物が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0109】
酸無水物(g)としては、適宜の化合物が使用される。酸無水物(g)の具体例としては、例えば無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等の三塩基酸以上の酸無水物が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
【0110】
エチレン性不飽和化合物(d)とエチレン性不飽和化合物(e)の反応は、適宜の重合方法により進行する。この重合方法として溶液重合法等の公知の手法が採用され得る。例えば上記エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)の反応の場合と同一の手法が採用され得る。
【0111】
エチレン性不飽和化合物(d)とエチレン性不飽和化合物(e)との比率は適宜調整されるが、エチレン性不飽和化合物(d)とエチレン性不飽和化合物(e)の全量に対するエチレン性不飽和化合物(e)の割合が0モル%を超えると共に90モル%以下であることが好ましい。
【0112】
エチレン性不飽和化合物(d)とエチレン性不飽和化合物(e)との重合体中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(f)との反応は、適宜の手法により進行する。この手法として、公知の方法が採用され得る。例えば、上記エチレン性不飽和化合物(a)とエチレン性不飽和化合物(b)との重合体とエチレン性不飽和化合物(c)との反応の場合と同一の手法が採用され得る。
【0113】
エチレン性不飽和化合物(f)の使用量は、エチレン性不飽和化合物(d)とエチレン性不飽和化合物(e)との重合体中に存在するエポキシ基1モルに対して、エチレン性不飽和化合物(f)中に存在するカルボキシル基が、好ましくは0.7〜1.2モルの範囲、更に好ましくは0.9〜1.1モルの範囲となる量である。この範囲において、カルボキシル基含有樹脂(A−2)中におけるエポキシ基の残存量が特に低減される。このため、弱い熱乾燥条件下(例えば予備乾燥工程における熱乾燥条件下)で組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A−2)の熱硬化反応が抑制される。このため、感光性樹脂層5の熱硬化が抑制され、この感光性樹脂層5の現像性の低下が抑制される。また、組成物中の未反応のエチレン性不飽和化合物(f)の残存も抑制される。
【0114】
酸無水物(g)の使用量は、エチレン性不飽和化合物(d)とエチレン性不飽和化合物(e)との重合体中のエポキシ基とエチレン性不飽和化合物(f)との反応により生成する水酸基1モルに対して、好ましくは0.1〜0.8モルの範囲、更に好ましくは0.3〜0.6モルの範囲となる量である。この範囲において、カルボキシル基含有樹脂(A−2)により、感光性樹脂層5の非露光部分に特に優れた現像性が付与されると共にレジスト層に特に優れた耐現像液性が付与される。
【0115】
このカルボキシル基含有樹脂(A−2)の酸価は、好ましくは20〜500の範囲、更に好ましくは50〜200の範囲である。またこのカルボキシル基含有樹脂(A−2)の重量平均分子量は好ましくは1000〜50000の範囲、更に好ましくは5000〜20000の範囲である。
【0116】
カルボキシル基含有樹脂(A−2)の酸価が小さすぎる場合、カルボキシル基含有樹脂(A−2)がアミン化合物(B)で中和されてもこのカルボキシル基含有樹脂(A−2)に充分な水溶性が付与されず、感光性樹脂層5の非露光部分の現像液による除去や、レジスト層のアルカリ性溶液による剥離が困難となるおそれがある。一方、この酸価が大きすぎる場合、アミン化合物(B)で中和されたカルボキシル基含有樹脂(A−2)の水溶性が高くなりすぎて、レジスト層の耐現像液性や耐エッチング液性が充分に得られなくなり、その結果、微細なレジストパターンの形成が困難になるおそれがある。
【0117】
また、カルボキシル基含有樹脂(A−2)の重量平均分子量が小さすぎる場合、感光性樹脂層のタック性が大きくなり、感光性樹脂層5が形成された基板の、露光時等における取扱性が悪くなるおそれがあり、またレジスト層の耐現像液性、耐エッチング液性が充分に得られなくなるおそれがある。一方、この重量平均分子量が大きすぎる場合、組成物の粘度が過剰に高くなり、この組成物中にカルボキシル基含有樹脂(A−2)が微分散することが困難となり、その結果、微細なレジストパターンの形成が困難になるおそれがある。
【0118】
カルボキシル基含有樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A−1)とカルボキシル基含有樹脂(A−2)のうちの少なくとも一方を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A)中のカルボキシル基含有樹脂(A−1)の含有量は50〜100質量%の範囲が好ましく、またカルボキシル基含有樹脂(A)中のカルボキシル基含有樹脂(A−2)の含有量は50〜100質量%の範囲が好ましい。また、カルボキシル基含有樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A−1)とカルボキシル基含有樹脂(A−2)を共に含有する場合には、カルボキシル基含有樹脂(A)中のカルボキシル基含有樹脂(A−1)とカルボキシル基含有樹脂(A−2)の含有量の合計は、50〜100質量%の範囲が好ましい。このようにカルボキシル基含有樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A−1)とカルボキシル基含有樹脂(A−2)のうちの少なくとも一方を含有すると、カルボキシル基含有樹脂(A−1)及びカルボキシル基含有樹脂(A−2)は高い光反応性を有することから、レジスト層に特に優れた耐現像液性が付与され、また親水基と疎水基とが付与されたカルボキシル基含有樹脂(A−1)及びカルボキシル基含有樹脂(A−2)が界面活性剤として機能し、組成物中の成分の乳化及び分散が更に促進され、組成物中で重合性不飽和化合物(C)及び光重合開始剤(D)を微細に分散することになる。このとき重合性不飽和化合物(C)及び光重合開始剤(D)は組成物中で微粒子状となって分散するようになる。
【0119】
(アミン化合物(B))
アミン化合物(B)としては適宜の化合物が使用される。アミン化合物(B)の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジイソブチルアミン等のアルキルアミン類;ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルキルアルカノールアミン類;シクロヘキシルアミン等の脂環族アミン類;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アミンなどが挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。これらの化合物のうち、特にトリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等の3級アミンが使用されることが好ましい。
【0120】
このアミン化合物(B)の組成物中の含有量は、この組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A)中に含まれるカルボキシル基1モルに対するアミン化合物(B)の当量が0.2〜1.0の範囲となる量であることが好ましい。前記アミン化合物(B)の当量が0.2に満たないと組成物の水溶性が低下すると共に保存安定性が低下するおそれがあり、更にアルカリ剥離性が低下し、プリント配線板製造用パネル表面とスルーホール内のレジスト層が除去できなくなるおそれがある。またこの当量が1.0を超えるとレジスト層に耐現像液性が充分に付与されず微細パターンの形成が困難にあるおそれがある。また組成物全量に対するアミン化合物の含有量は1〜20質量%の範囲が好ましい。この含有量が1質量%に満たないと組成物の水溶性が低下すると共に保存安定性が低下するおそれがあり、更にアルカリ剥離性が低下し、プリント配線板製造用パネル表面とスルーホール内のレジスト層が除去できなくなるおそれがある。またこの含有量が20質量%を超えるとレジスト層の耐現像液性が低下して微細パターンの形成が困難となるおそれがある。
【0121】
(重合性不飽和化合物(C))
重合性不飽和化合物(C)としては適宜の化合物が使用される。この重合性不飽和化合物(C)の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼン等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(D−1)が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0122】
組成物全量に対する重合性不飽和化合物(C)の含有量は、1〜20質量%の範囲であることが好ましい。この含有量が1質量%に満たないと組成物の光重合性が低下し、レジストパターンの形成が困難となるおそれがある。またこの含有量が20質量%を超えると感光性樹脂層5にタック性が生じ、感光性樹脂層5が形成された基板の、露光時等における取扱性が悪くなるおそれがある。
【0123】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)としては適宜の化合物が使用される。この光重合開始剤(D)の具体例としては、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含むもの;及び(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド等の、紫外線硬化用の光重合開始剤が挙げられる。また、可視光又は近赤外線露光用等の光重合開始剤(D)が使用されることにより組成物に可視光硬化性や近赤外線硬化性が付与されても良い。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0124】
また、組成物中には、光重合開始剤(D)に加えて、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤や増感剤が含有されても良い。また、組成物中に例えばレーザ露光法用増感剤として7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン誘導体が含有されても良い。
【0125】
組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は適宜調整されるが、組成物に付与される光硬化性と、レジスト層に付与される物性とがバランス良く向上するためには、組成物全量に対する光重合開始剤(D)の含有量が0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0126】
(水(E))
水(E)は組成物中の必須の成分である。組成物中の水(E)の含有量は適宜調整されるが、組成物全量に対する水(E)の含有量が30〜70質量%の範囲であることが好ましい。この範囲において、組成物の水系化による利点、すなわち組成物が基材に塗布された後、感光性樹脂層5が形成される過程における有機溶媒の揮発に起因する労働安全衛生、環境汚染、火災防止等の問題の低減を、充分に達成することができる。
【0127】
(他の成分)
組成物は、本発明の目的に反しない範囲で他の成分を含有しても良い。
【0128】
例えば組成物中には、水以外の有機溶媒等の溶媒を含有させても良い。この溶媒の含有量は、組成物全量に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0129】
この溶媒としては、水に易溶性の溶媒だけでなく、水に難溶性或いは非溶性の有機溶媒も使用され得る。使用可能な有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ダイアセトンアルコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート等の酢酸エステル類;乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル等のアジピン酸エステル類;フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のフタルエステル類;ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0130】
また、組成物中には、上記必須成分以外の光反応可能な基が導入された高分子化合物が含有されても良い。この高分子化合物の具体例としては、エチレン性不飽和基が導入された(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂等の重合体;(メタ)アクリル酸が付加されたビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等;前記樹脂等に更に飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物が付加された樹脂;前記樹脂等のエマルション等が挙げられる。
【0131】
また、組成物中には、塗布性の調整やその他の目的のため、必要に応じてシリコーン、(メタ)アクリレート共重合体、フッ素系界面活性剤等のレベリング剤;アエロジル等のチクソトロピー剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等の重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;耐めっき性向上剤;消泡剤;酸化防止剤;顔料湿潤剤;有機もしくは無機の顔料及び染料;天然もしくは合成ゴムの粉末等の各種添加剤が含有されても良い。また組成物中には、分散安定性の向上のため、界面活性剤や高分子分散剤等が含有されても良い。
【0132】
また、組成物中には不活性固体粉末が含有されても良い。不活性固体粉末の具体例としては、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、フタロシアニン等の体質顔料又は着色顔料;ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等の有機重合体微粒子;アエロジル等の揺変剤などが挙げられる。特に組成物に体質顔料が含有されていると、レジスト層がアルカリ性溶液で剥離される際の剥離性が向上する点で好ましい。
【0133】
[水系ネガ型感光性樹脂組成物の製造]
水系ネガ型感光性樹脂組成物は、上記各成分を配合し、混合することで製造される。この組成物の製造時には、カルボキシル基含有樹脂(A)がアミン化合物(B)で中和された後、この中和されたカルボキシル基含有樹脂(A)を含む水溶液に重合性不飽和化合物(C)と光重合開始剤(D)が加えられることが好ましい。
【0134】
更に具体的には、水系ネガ型感光性樹脂組成物が次の工程(1)〜(6)を経ることで製造されることが好ましい。
【0135】
工程(1);まず、既述のような溶液重合法等の手法により、カルボキシル基含有樹脂(A)を合成する。
【0136】
工程(2);工程(1)で調製されたカルボキシル基含有樹脂(A)の有機溶媒溶液を混合して混合液を調製し、この混合液に所定量のアミン化合物(B)を加える。
【0137】
工程(3);工程(2)で調製された溶液を攪拌しながら、この溶液中に水(E)を加える。
【0138】
工程(4);工程(3)で調製された溶液から有機溶媒を蒸留により除去し、アミン化合物(B)で中和されたカルボキシル基含有樹脂(A)を含有する水溶液を調製する。減圧蒸留の条件は有機溶媒が充分に除去されると共に水溶液中に所定量の水(E)が含有されるように適宜調整されるが、例えば油回転式真空ポンプを用い、1kPaの減圧雰囲気下で減圧蒸留がなされるようにすることができる。
【0139】
工程(5);工程(1)〜(4)における水溶液の調製とは別に、重合性不飽和化合物(C)中に光重合開始剤(D)を溶解させた溶液を調製する。
【0140】
工程(6);工程(4)で調製された水溶液を高速で攪拌しながら、この水溶液中に工程(5)で調製された溶液を加えることで、水系ネガ型感光性樹脂組成物が製造される。
【実施例】
【0141】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、下記に示される「部」及び「%」は、全て質量基準である。
【0142】
また、重量平均分子量は、昭和電工株式会社製のGPC測定装置(SHODEX SYSTEM 11)を用い、次の条件で測定した。
【0143】
・カラム:SHODEX KF−800P、KF−805、KF−803、KF−801の、4本直列
・移動層:THF(テトラヒドロフラン)
・流量:1ml
・カラム温度:45℃
・検出器:RI
・換算:ポリスチレン
〔合成例1〕
(共重合反応)
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸25部、メチルメタクリレート105部、n−ブチルメタクリレート50部、スチレン20部、ラウリルメルカプタン0.5部、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4部、エタノール200部を加え、窒素気流下に加熱し、65℃において5時間重合を行い共重合溶液を得た。
【0144】
(付加反応)
上記共重合溶液に、ハイドロキノン0.05部、グリシジルメタクリレート29部、ジメチルベンジルアミン0.2部を加え、75℃で24時間付加反応を行い、重量平均分子量15000、酸価が20である、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0145】
(水分散液の調製)
上記溶液に、ジエチルエタノールアミン6部を加え攪拌し、イオン交換水360部を加えさらに30分攪拌し均一な溶液を得た。この溶液を、エバポレータを用いて40℃、3時間の条件で減圧蒸留することにより有機溶剤であるエタノールを除去し、カルボキシル基含有樹脂の水分散液(A−1−1)を得た。ジエチルエタノールアミンによるカルボキシル基含有樹脂の中和率は60%であり、またこの水分散液(A−1−1)の樹脂固形分量は60質量%である。また、この水分散液(A−1−1)についてガスクロマトグラフィーにて測定したところ有機溶媒(エタノール)の含有率は1.1質量%であった。
【0146】
〔合成例2〜6〕
合成例1において、原料成分及びその使用量を表1に示すように変更し、それ以外は合成例1と同様にして、表1に示す重量平均分子量及び酸価を有するカルボキシル基含有樹脂の水分散液(A−1−2)〜(A−1−6)を調製した。これらの水分散液(A−1−2)〜(A−1−6)の樹脂固形分量、カルボキシル基含有樹脂の中和率、並びに有機溶媒含有量は表1に示す通りである。
【0147】
〔合成例7〕
(共重合反応)
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコに、メチルメタクリレート10部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート180部、ラウリルメルカプタン1.5部、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5部、メチルエチルケトン200部を加え、窒素気流下に加熱し、65℃において5時間重合を行い共重合溶液を得た。
【0148】
(付加反応)
この共重合溶液に、ハイドロキノン0.05部、アクリル酸91部、ジメチルベンジルアミン0.2部を加え、75℃で24時間付加反応を行い、続いて無水トリメリット酸102部を加えて、75℃で8時間反応させて、重量平均分子量3000、酸価が150である、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0149】
(水分散液の調製)
このカルボキシル基含有樹脂溶液に、トリエチルアミン54部を加え攪拌し、イオン交換水301部を加えてさらに30分攪拌して均一な溶液を得た。この溶液を、エバポレータを用いて40℃、3時間の条件で減圧蒸留することにより有機溶剤であるメチルエチルケトンを除去し、カルボキシル基含有樹脂の水分散液(A−2−1)を得た。トリエチルアミンによるカルボキシル基含有樹脂の中和率は50%であり、またこの水分散液(A−2−1)の樹脂固形分量は60質量%である。また、この水分散液(A−2−1)についてガスクロマトグラフィーにて測定したところ有機溶媒(メチルエチルケトン)の含有率は0.01質量%であった。
【0150】
〔合成例8〜12〕
合成例7において、原料成分及びその使用量を表1に示すように変更し、それ以外は合成例1と同様にして、表1に示す重量平均分子量及び酸価を有するカルボキシル基含有樹脂の水分散液(A−2−2)〜(A−2−6)を調製した。これらの水分散液(A−2−2)〜(A−2−6)の樹脂固形分量、カルボキシル基含有樹脂の中和率、並びに有機溶媒含有量は表1に示す通りである。
【0151】
【表1】

【0152】
表1中の各成分の詳細は次の通りである。
【0153】
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド
EGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
ABN−V:2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(株式会社日本ファインケム製の重合開始剤、商品名ABN−V)
MEK:メチルエチルケトン
HQ:ハイドロキノン
DMBA:ジメチルベンジルアミン
SA:無水コハク酸。
【0154】
〔感光性樹脂組成物の調製〕
上記各合成例で得られたカルボキシル基含有樹脂の水分散液を60℃に保持すると共にホモミキサーにて攪拌しながら、このカルボキシル基含有樹脂の水分散液に表2に示す重合性不飽和化合物、光重合開始剤、染料及び添加剤を加えた後、30分間攪拌することにより、水性ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0155】
【表2】

【0156】
表2中の各成分の詳細は次の通りである。
【0157】
重合性不飽和化合物A:トリメチロールプロパンEO変性(3モル)トリアクリレート
重合性不飽和化合物B:ペンタエリスリトールEO変性(4モル)テトラアクリレート
光重合開始剤A:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン
光重合開始剤B:2,4−ジエチルチオキサントン
光重合開始剤C:(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド
染料:大日本インキ化学工業株式会社製の着色剤(商品名ディスパースブルーユニ614)
添加剤A:ビックケミー社製の表面調整剤(商品名BYK−348)。
【0158】
〔実施例1〜14,比較例1〜4〕
ガラスエポキシ両面銅張積層板(パナソニック電工株式会社製「R1705」;板厚1.6mm;銅厚18μm;基板サイズ330mm×330mm)にドリル直径0.9mmの孔を1000個、ドリル直径0.4mmの孔を2000個穿設し、無電解銅及び電解銅めっきにより孔壁を含む両面銅張積層板の全面に20μmの銅めっき層を形成してプリント配線板製造用パネル1を作製した。
【0159】
各実施例及び比較例につき、第一感光性樹脂層5a及び第二感光性樹脂層5bを形成するための感光性樹脂組成物として、それぞれ表3に示される第1感光被膜用組成物と第2感光被膜用組成物の組み合わせを選択し、プリント配線板製造用パネル1に感光性樹脂層5を設けた。このとき、比較例3,4を除き、まずプリント配線板製造用パネル1を第1感光被膜用組成物中に浸漬した後に引き上げ、乾燥機にて100℃20分乾燥することで第一感光性樹脂層5aを形成した。続いて比較例1,2を除き、第2感光被膜用組成物を、傾斜式両面ロールコーター(サツマ通信工業株式会社製「NR−5000」)によりプリント配線板製造用パネル1に塗布し、乾燥機にて100℃10分乾燥することで第二感光性樹脂層5bを形成した。
【0160】
この感光性樹脂層5が設けられたプリント配線板製造用パネル1に、各スルーホール4に対応するパターンを描いたマスクフィルムを当てがい、オーク製作所製の減圧密着型両面露光機「ORC HMW680GW」にて、表3に示す光量の紫外線を照射して露光を行った(露光工程)。このとき、二種類のマスクフィルムを用いることで、ランドを有するスルーホール付きプリント配線板と、ランドレススルーホール付きプリント配線板とを作製した。
【0161】
ランドを有するスルーホール付きプリント配線板の作製には、ドリル直径0.9mmの孔にランド直径1.35mmを有するパターン、ドリル直径0.4mmの孔にはランド直径0.85mmを有するパターンがそれぞれ描かれた、パターン幅100μmのマスクフィルムを使用した。また、ランドレススルーホール付きプリント配線板の作製には、ランドを有しない、パターン幅100μmのストライプ形状であるパターンのマスクフィルムを使用した。
【0162】
尚、表3に示す紫外線の露光量は、日立化成工業社製の露光用テストマスク「ステップタブレットPHOTEC21段」を前記と同じ条件で形成された感光性樹脂層5に直接当てがうと共に減圧密着させた状態で紫外線を照射し、続いて現像液として1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像した場合に、残存ステップ段が7段となるような紫外線の露光量である。この露光量は、予備試験により各ネガ型感光性樹脂組成物ごとに導出された値である。
【0163】
露光後の感光性樹脂層5を、30℃の1%炭酸ソーダ水溶液にて現像してレジスト層(エッチングレジスト層)を形成した(現像工程)。
【0164】
続いて、50℃の塩化第二銅エッチング液を用いてエッチング処理を施し、レジスト層から露出する銅箔を除去した(エッチング工程)。
【0165】
このプリント配線板製造用パネル1を水洗した後、40℃の3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付けることで、レジスト層を除去した(剥離工程)。
【0166】
これにより、スルーホール付きプリント配線板を作製した。
【0167】
(鉛筆硬度)
露光前の感光性樹脂層5(乾燥被膜)の鉛筆硬度を、三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて、JIS K―5600−5−4−1999に準拠して測定した。
【0168】
(密着性)
JIS D 0202の試験方法に準拠し、露光前の感光性樹脂層5(乾燥被膜)に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリング試験後の剥がれの状態を目視により観察し、次の基準に従って評価した。
◎:クロスカット部分に剥離が生じなかった。
○:テープ剥離時にクロスカット部分に一部剥離が生じた。
×:クロスカット試験をするまでもなく、感光性樹脂層5に膨れ又は剥離が生じた。
【0169】
(タック性)
上記露光前の基板同士を重ねることにより感光性樹脂層5(乾燥被膜)同士を接触させ、この基板の積層方向に98kPa(1kg/cm)の荷重をかけた状態で、この基板を25℃、55%RHの雰囲気下で1週間放置した。前記処理後、基板同士を分離し、この基板の感光性樹脂層5の外観を100倍の顕微鏡で観察し、感光性樹脂層5の剥がれや表面状態の異常を確認した。その結果に基づき、次の基準により感光性樹脂層5のタック性を評価した。
◎:感光性樹脂層5に剥離がなく、接触跡も認められない。
○:感光性樹脂層5の表面に接触跡が認められる。
×:感光性樹脂層5に剥離が生じる。
【0170】
(解像性)
上記プリント配線板に形成された導体配線の外観を観察し、次の基準により解像性を評価した。
◎:導体配線が明確なパターン形状を有する。
○:導体配線がパターン形状を有するが、導体配線の一部が欠落している。
×:導体配線がパターン形状を有しない。
【0171】
(ランドを有するスルーホール付きプリント配線板における耐エッチング液性)
エッチング工程後のレジスト層を観察し、次の基準により耐エッチング液性(耐酸性)を評価した。
◎:導体配線、スルーホール4に侵食が認めらない。
○:導体配線には侵食が認められないが、スルーホール4に僅かな侵食が認められる。
×:導体配線、スルーホール4に侵食が認められる。
【0172】
(ランドレススルーホール付きプリント配線板における耐エッチング液性)
エッチング工程後のレジスト層を観察し、次の基準により耐エッチング液性(耐酸性)を評価した。
◎:スルーホール4エッジに侵食が認められず、ランドレスが形成できている。
○:スルーホール4エッジに僅かな侵食が認められる。
×:スルーホール4エッジに侵食が認められ、導体配線に断線がある。
【0173】
(アルカリ剥離性)
剥離工程後の基板表面及びスルーホール4を観察し、次の基準によりレジスト層のアルカリ剥離性を評価した。
◎:基板上、スルーホール4内にレジスト層の残存が認められない。
○:基板上にレジスト層の残存が認められないが、スルーホール4内に僅かな残存が認められる。
×:基板上、スルーホール4内にレジスト層が除去されず残存している。
【0174】
以上の各評価試験の結果を表3に示す。
【0175】
【表3】

【符号の説明】
【0176】
1 プリント配線板製造用パネル
3 導体層
4 スルーホール
5 感光性樹脂層
5a 第一感光性樹脂層
5b 第二感光性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを有すると共に表面に導体層が形成されたプリント配線板製造用パネルに対して、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布してスルーホールの内面と導体層の表面に第一感光性樹脂層を形成する第一感光性樹脂層形成工程と、前記第一感光性樹脂層が形成されたプリント配線板製造用パネルの表面に更にネガ型感光性樹脂組成物を塗布して第二感光性樹脂層を形成する第二感光性樹脂層形成工程とを経ることで、第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層からなる感光性樹脂層を形成すると共にプリント配線板製造用パネルの表面を第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層とで、スルーホールの内面を第一感光性樹脂層のみで、それぞれ被覆し、
次いで、プリント配線板製造用パネルの表面とスルーホール内面の感光性樹脂層を露光する露光工程と、現像により感光性樹脂層の未露光部分を除去して残存する感光性樹脂層にてレジスト層を形成する現像工程と、エッチングにより基板表面の導体層のうちレジスト層にて被覆されていない部分を除去して導体配線を形成するエッチング工程と、レジスト層を除去する剥離工程とを経ることを特徴とするスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
第一感光性樹脂層形成工程において、プリント配線板製造用パネルをネガ型感光性樹脂組成物中に浸漬した後引き上げることによりスルーホール付きプリント配線板表面とスルーホール内部にネガ型感光性樹脂組成物を塗布することを特徴とする請求項1に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
第二感光性樹脂層形成工程において、プリント配線板製造用パネルの表面にロール式塗布法によりネガ型感光性樹脂組成物を塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
ランドレススルーホールを形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
スルーホールを有すると共に表面に導体層が形成されたプリント配線板製造用パネルに対して、重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A)を含有するネガ型感光性樹脂組成物を塗布してスルーホールの内面と導体層の表面に感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、プリント配線板製造用パネルの表面とスルーホール内面の感光性樹脂層を露光する露光工程と、現像により感光性樹脂層の未露光部分を除去して残存する感光性樹脂層にてレジスト層を形成する現像工程と、エッチングにより基板表面の導体層のうちレジスト層にて被覆されていない部分を除去して導体配線を形成するエッチング工程と、レジスト層を除去する剥離工程とを経ることを特徴とするスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
上記、ネガ型感光性樹脂組成物が、
(A)重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂、
(B)アミン化合物、
(C)重合性不飽和化合物、
(D)光重合開始剤及び
(E)水を含有し、
前記カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量が組成物全量に対して10〜90質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A−1)を含み、
前記カルボキシル基含有樹脂(A−1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a)と、カルボキシル基を有しないエチレン性不飽和化合物(b)との重合反応により生成する重合体中のカルボキシル基の一部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(c)とが反応することにより生成することを特徴とする請求項5又は6に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記カルボキシル基含有樹脂(A−1)の酸価が20〜500の範囲、重量平均分子量が10000〜100000の範囲であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂(A−2)を含み、
前記カルボキシル基含有樹脂(A−2)は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(d)と、エポキシ基を有さないエチレン性不飽和化合物(e)との重合反応により生成する重合体中のエポキシ基と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(f)とが反応し、この反応で生成する水酸基と酸無水物(g)とが反応することにより生成することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記カルボキシル基含有樹脂(A−2)の酸価が20〜500の範囲、重量平均分子量が1000〜50000の範囲であることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、アミン化合物(B)で中和されていることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記アミン化合物(B)が3級アミンを含むことを特徴とする請求項5乃至11のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
前記アミン化合物(B)の含有量が、カルボキシル基含有樹脂(A)中に含まれるカルボキシル基1モルに対して、0.2〜1.0当量の範囲であることを特徴とする請求項5乃至12のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、前記カルボキシル基含有樹脂(A)がアミン化合物(B)で中和され、この中和されたカルボキシル基含有樹脂(A)を含む水溶液に重合性不飽和化合物(C)と光重合開始剤(D)とが加えられる工程を経て調製されたものであることを特徴とする請求項5乃至13のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
【請求項15】
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、下記工程(1)から(6)を経て調製されたものであることを特徴とする請求項5乃至14のいずれか一項に記載のスルーホール付きプリント配線板の製造方法。
(1)有機溶媒中でカルボキシル基含有樹脂(A)を合成する工程
(2)前記工程(1)で調製された前記カルボキシル基含有樹脂(A)の有機溶媒溶液を混合し、この混合液にアミン化合物(B)を加える工程
(3)前記工程(2)で調製された溶液を攪拌しながら、この溶液中に水(E)を加える工程
(4)前記工程(3)で調製された溶液から有機溶媒を減圧蒸留により除去する工程
(5)重合性不飽和化合物(C)中に光重合開始剤(D)を溶解させる工程
(6)前記工程(4)で調製された水溶液を攪拌しながら、この水溶液中に前記工程(5)で調製された溶液を加える工程

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−14636(P2011−14636A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155811(P2009−155811)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】