説明

セキュリティフィルム

【課題】従来より高耐性で偽造防止効果の高い、表面レリーフ型ホログラムを有するセキュリティフィルムを提供する。
【解決手段】セキュリティフィルムは、第1保護層100と第2保護層106との間に、所望の機能を有する各層を設けてなるものであり、第1保護層100から順に、絵柄印刷層または隠蔽層101、レリーフ構造層102、反射層103、絵柄印刷層または隠蔽層104、接着剤層105、第2保護層106が積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品券や紙幣として用いることが可能なセキュリティフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、複製の困難さのために偽造防止機能に優れ、各種セキュリティ用途に多く使用されている(例えば特許文献1参照)。セキュリティ用途に用いられるホログラムの形態としては、ホログラムシール、ホログラム転写箔、および、各種紙媒体に用いられるスレッドホログラムがあるが、特に商品券や紙幣に用いられる形態としては、ホログラム転写箔およびスレッドホログラムに限定される。
【特許文献1】特表平10−512818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ホログラム転写箔は、特に紙幣のように繰り返し使用される環境において十分な耐久性を有しているとは言えず、また、スレッドホログラムは漉き込み可能な幅が限定されるため、偽造防止効果において十分満足できるものとは言えない。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解消するために成されたものであり、偽造防止効果の高いホログラムを自由に配置することができ、かつ、耐久性の高い表面レリーフ型ホログラムを有するセキュリティフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、樹脂材料からなる第1保護層と第2保護層の間にレリーフ構造形成層を有し、前記第1保護層と前記レリーフ構造形成層との間、および、前記第2保護層と前記レリーフ構造形成層との間の双方または少なくとも一方に、絵柄印刷層または隠蔽層が形成され、かつ、前記第1保護層と前記レリーフ構造形成層との間、および、前記第2保護層と前記レリーフ構造形成層との間の双方または少なくとも一方に、ドライラミ用接着剤からなる接着剤層が形成されているセキュリティフィルムである。
この構成によれば、まず、レリーフ構造形成層が第1保護層および第2保護層によって挟持された構成を有することにより、レリーフ構造形成層により得られる光像が、水分、熱、異物等の外的要因により乱されることを防止できるため、耐久性に優れた表面レリーフ型ホログラムを得ることができる。
また、本発明のセキュリティフィルムにおいては、上記第1保護層および/または上記第2保護層と、レリーフ構造形成層との間にドライラミ用接着剤からなる接着剤層が形成される。このような接着剤層が形成されていることにより、第1保護層および第2保護層と、レリーフ構造形成層との密着性に優れたセキュリティフィルムを得ることができる。
また、上記レリーフ構造形成層は、ホログラム画像を全面に形成することが可能であるため、高い偽造防止効果を狙った設計が可能となる。
さらに、本発明のセキュリティフィルムにおいては、上記第1保護層と上記レリーフ構造形成層との間、および、上記第2保護層と上記レリーフ構造形成層との間の少なくとも一方に絵柄印刷層または隠蔽層として印刷を行い、ホログラムの隠蔽された部分と露出した部分を表現することで、部分的にホログラムを強調する効果が期待できる。
さらには、上記第1保護層と上記レリーフ構造形成層との間と上記第2保護層と上記レリーフ構造形成層との間の隠蔽箇所を変えることにより、ホログラム層が1層でありながら表裏で異なるホログラム画像を表現することが可能となる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記第1保護層に用いられる樹脂材料および前記第2保護層に用いられる樹脂材料が同一であることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティフィルムである。
この構成によれば、例えば、本発明のセキュリティフィルムに熱が加わったとしても、熱膨張率に起因する第1保護層および第2保護層の変形を同程度にすることができるため、セキュリティフィルムのカールを抑えるとともに、レリーフ構造形成層により得られる光像が乱されることを防止することができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記第1保護層および前記第2保護層の厚みが同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティフィルムである。
この構成によれば、例えば、本発明のセキュリティフィルムに外的張力が加わった際に、第1保護層と第2保護層とに生じる変形を同程度にすることができるため、上記外的張力によりレリーフ構造形成層により得られる光像が乱されることを防止できるという利点を有する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、厚みが50μmから150μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。
この構成によれば、紙媒体の商品券や紙幣と同様の使用形態を想定した商品設計が可能となる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、厚みが150μmから1mmの範囲内であり、かつ短辺寸法が58mm、長辺寸法が86mmの長方形の中に収めることが可能な大きさであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。
この構成によれば、従来のプラスチックカードに近い使用形態を想定した商品設計が可能となる。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記レリーフ構造形成層の反射層として、前記レリーフ構造形成層の全面または一部に金属薄膜層が積層されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。
この構成によれば、反射層として例えばアルミニウム等の金属薄膜層をレリーフ構造形成層上に積層することにより、ホログラム画像を高輝度で表現できるだけでなく、隠蔽層としての機能も持たせることができる。これにより、例えば、第1保護層とレリーフ構造形成層の間に絵柄印刷層があった場合に、第2保護層側から見たときにこの絵柄印刷層を隠蔽することができる。
【0011】
請求項7に記載の発明は、前記レリーフ構造形成層の反射層として、前記レリーフ構造形成層の全面または一部に透明薄膜層が積層されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のセキュリティフィルムである。
この構成によれば、反射層として硫化亜鉛等の透明薄膜層をレリーフ構造形成層上に積層することで、高輝度なホログラム画像を第1保護層側および第2保護層側の両方から観察することが可能となる。また、例えば、透明薄膜層と第2保護層の間に絵柄印刷層を設けることで、第1保護層側から見たときに、絵柄印刷層の上にホログラムが浮かび上がっているような視覚効果を持たせることが可能となる。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルムを有する印刷物である。
本発明のセキュリティフィルムは、単独の製品の形態をとることができるだけでなく、例えば有価証券、カード類、純正品の証明が必要なパッケージ等に貼付や漉き込みを行うことも可能である。この場合においては、本発明のセキュリティフィルムはステッカー、スレッドの形態をとる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、樹脂材料からなる第1保護層と、上記第1保護層上に形成されたレリーフ構造形成層と、上記レリーフ構造形成層上に形成され、樹脂材料からなる第2保護層と、ドライラミ用接着剤からなる接着剤層と、レリーフ構造形成層を隠蔽する絵柄印刷層または隠蔽層と、を有することで、偽造防止効果の高いホログラムを自由に配置でき、かつ、耐久性の高い表面レリーフ型ホログラムを有するセキュリティフィルムの提供が可能となる。
とくに本発明では、保護層の内側に絵柄印刷を行うことで、デザイン上、印刷・窓部の大きさ・形状・位置を自由に選択することにより、種々のデザインに対応することが可能となる。また、印刷を行うことで、ホログラム画像のみに頼っていた偽造防止効果に、デザイン上の複雑性、さらに印刷自体による偽造防止効果が加わるので、より一層偽造が困難となる。
【0014】
なお、本発明のセキュリティフィルムの用途としては、例えば、商品券、鉄道乗車券、定期乗車券、株券、紙幣、証券、ギフトカード、チケット、ラベル、および、スレッド等を挙げることができるが、限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに説明する。図3は、本発明のセキュリティフィルムの一実施形態の構造を説明するための断面図である。図3において、セキュリティフィルムは、第1保護層100と第2保護層106との間に、所望の機能を有する各層を設けてなるものであり、第1保護層100から順に、絵柄印刷層または隠蔽層101、レリーフ構造層102、反射層103、絵柄印刷層または隠蔽層104、接着剤層105、第2保護層106が積層されている。
以下、図3の構造を有するセキュリティフィルムを例として説明する。なお、本発明は図3の構造に限定されず、例えば絵柄印刷層または隠蔽層は、第1保護層100側または第2保護層106側のいずれか一方であってもよい。また、接着剤層は、第1保護層100側および第2保護層106側の両方に設けてもよい。また、絵柄印刷層または隠蔽層、反射層は、レリーフ構造層102に対し、部分的に形成してもよい。
【0016】
1.第1保護層および第2保護層
まず、本発明に用いられる第1保護層100および第2保護層106について説明する。本発明に用いられる第1保護層100および第2保護層106は、レリーフ構造形成層102を挟持するように配置されることにより、上記レリーフ構造形成層102により得られる光像が、外的要因により乱されることを防止する保護機能を有するものである。本発明の第1保護層100および第2保護層106の適切な材料の実例としては、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、または酢酸セルロースフィルムが挙げられる。
【0017】
また、本発明のセキュリティフィルムを製造する際に、第1保護層100または第2保護層106上に、溶剤を含むレリーフ構造形成層形成用組成物を塗工することにより、レリーフ構造形成層102を形成する方法が用いられる場合においては、上記樹脂材料は、上記溶剤に侵食されない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。
【0018】
本発明においては上記樹脂材料のなかでも、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、さらに上記ポリエステル系樹脂のなかでもポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0019】
本発明に用いられる第1保護層100および第2保護層106は両方が透明でなくても良く、少なくとも一方がレリーフ構造形成層102を視認できる程度の透明性を有すれば良い。したがって、上記第1保護層100および第2保護層106は、少なくとも一方が上記透明性を有するものであれば、他方が不透明なものであっても良い。また、上記第1保護層100および第2保護層106の少なくとも一方が、レリーフ構造形成層102を視認できる程度に着色されていても良い。
【0020】
本発明に用いられる第1保護層100および第2保護層106は任意の厚さで良いが、12μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、上記第1保護層100および第2保護層106の厚みは同一であっても良く、または、異なっていても良いものであるが、本発明においては両者の厚みが同一であることが好ましい。上記第1保護層100および第2保護層106の厚みが同一であることにより、例えば、本発明のスレッド用表面レリーフ型ホログラムに外的張力が加わった際に、第1保護層100および第2保護層106に生じる変形を同程度にすることができるため、上記外的張力によりレリーフ構造形成層102により得られる光像が乱されることを防止できるという利点を有するからである。
また、第1保護層100および第2保護層106に用いられる樹脂材料は同一であることが好ましく、例えば、本発明のセキュリティフィルムに熱が加わったとしても、熱膨張率に起因する第1保護層100および第2保護層106の変形を同程度にすることができるため、セキュリティフィルムのカールを抑えるとともに、レリーフ構造形成層102により得られる光像が乱されることを防止することができる。
【0022】
2.レリーフ構造形成層
本発明に用いられるレリーフ構造形成層102は、熱エンボス成形により表面レリーフを記録することが可能であり、かつ、本発明の表面レリーフ型ホログラムの使用環境において、光像が消失しない程度の耐熱性等を有するものであれば特に限定されない。レリーフ構造形成層102の少なくとも一方の面上には、回折格子領域もしくはホログラム領域が形成されている。複数の微細な凸部又は凹部が周期的に配置された領域が形成されていてもよい。これらの領域は複数形成されていてもよく、上記領域を有していない平滑な領域を含んでいてもよい。
【0023】
図3の例では、熱と圧力を受けると容易に変形する変形可能材料によって第1保護層100がコーティングされ、レリーフ構造形成層102が形成される。成形のための適切な材料の例は、第1保護層100に容易に接着する樹脂である。第1保護層100がポリエステルの場合、いくつかの好ましい成形樹脂材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、またはニトロセルロース等が挙げられる。レリーフ構造形成層102への成形は熱と圧力を用いて行うことが好ましいが、さらに別の例では成形中に紫外線を用い、ポリアクリレートまたはポリウレタン等の成形樹脂を硬化させることが含まれる。
【0024】
本発明に用いられるレリーフ構造形成層102の厚みは、成形可能な厚みであれば特に限定されないが、0.3μmから〜3μmが適当である。
【0025】
また、第1保護層100にレリーフ構造形成層102を積層するに先立って、第1保護層100にアンカーコート処理、コロナ放電処理等の表面活性化処理を施しても良い。
【0026】
3.接着剤層
本発明のセキュリティフィルムにおいては、上記第1保護層および/または上記第2保護層と、レリーフ構造形成層との間にドライラミ用接着剤からなる接着剤層が形成される。図3の例では、第2保護層106上に接着剤層105が形成されている。この接着剤層105が形成されていることにより、第2保護層106を形成する樹脂材料の種類に関わらず、第2保護層106と、レリーフ構造形成層102との密着性に優れたセキュリティフィルムを得ることができる。なお、第1保護層100側にも接着剤層を設ければ、セキュリティフィルム全体の密着性が優れる。
【0027】
また、この接着剤層105を用いて貼り合わせを行う層の表面の少なくとも一方に接着アンカー層を設けることで、密着性をより向上させることも可能である。
【0028】
本発明に用いられる接着剤層105を構成するドライラミ用接着剤としては、上記レリーフ構造形成層102と、第2保護層106に対して、所望の接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステルウレタンやポリエーテルウレタン又はアクリルウレタンなどのポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤等の使用が可能である。
【0029】
本発明に用いられる接着剤層105の厚みは、レリーフ構造形成層102や、第2保護層106に対して所望の接着性を発現できる範囲内であれば特に限定されない。本発明においては、1μm〜10μmの範囲内が好ましく、グラビアコート、スクリーンコート等の方法で設けることができる。
【0030】
4.反射層
反射層103は成形の前または後に、レリーフ構造形成層102上にコーティングされる。反射層103をレリーフ構造形成層102上にコーティングすることで、ホログラムの鮮明度を低下させることなく接着剤を塗布することができる。
本発明における反射層103としては、例えば、アルミニウム、銀、金、錫、硫化亜鉛、二酸化チタンなどからなる金属層を使用することができる。或いは、反射層103として、レリーフ構造形成層102とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよい。或いは、反射層103として、隣り合うもの同士の屈折率が異なる誘電体層の積層体、即ち、誘電体多層膜を使用してもよい。なお、誘電体多層膜が含む誘電体層のうちレリーフ構造形成層102と接触しているものの屈折率は、レリーフ構造形成層102の屈折率とは異なっていることが望ましい。反射層103は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
また、反射層103は、レリーフ構造形成層102の一部又は全部に被覆させてもよく、この反射層103の分布を用いて、例えば、この反射層103の存在する領域の輪郭を用いて、図柄を表現することもできる。
【0031】
5.絵柄印刷層または隠蔽層
絵柄印刷層または隠蔽層は第1保護層とレリーフ構造形成層の間、および/または、反射層と接着剤層の間に形成される。絵柄印刷層と隠蔽層とは、別々に設けてもよい。図3の例では第1保護層100とレリーフ構造形成層102の間、および、反射層103と接着剤層105の間に絵柄印刷層または隠蔽層が形成されている。印刷方式としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等、一般的な印刷方法を用いることが可能である。なお、絵柄印刷層とレリーフ構造形成層または反射層との間に隠蔽層を印刷することで、反射層からの光の反射や反対面からの透過光を遮蔽することができる。隠蔽層としては、絵柄印刷層同様、一般的な印刷方法を用いたベタ柄の印刷を行うことで成形できる。
【0032】
反射層103として、例えば蒸着により透明薄膜を用いた場合、第1保護層100とレリーフ構造形成層102の間に絵柄印刷を行い、反射層103と接着剤層105の間には絵柄印刷および隠蔽層印刷を行わないことで、第2保護層側から見たときに、ホログラム画像が絵柄印刷の上に浮かび上がっているような視覚効果を作り出すことができる。また同様に、反射層103として透明薄膜を用い、反射層103と接着剤層105の間に絵柄印刷を行い、第1保護層100とレリーフ構造形成層102の間には絵柄印刷および隠蔽層印刷を行わないことで、第1保護層100側から見たときに、ホログラム画像が絵柄印刷の上に浮かび上がっているような視覚効果を作り出すことができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0034】
実施例1
図1は本発明によるセキュリティフィルム11の構成例を示す断面図である。図1に例示するように、第1保護層1と、上記第1保護層1上に部分的に形成された絵柄印刷層5および隠蔽層6と、上記隠蔽層6、上記絵柄印刷層5および上記第1保護層1上の全面に形成されたレリーフ構造形成層2と、上記レリーフ構造形成層2上に形成された金属薄膜層7と、上記金属薄膜層7上に形成された隠蔽層9および絵柄印刷層10と、上記絵柄印刷層10、上記隠蔽層9および上記金属薄膜層7上の全面に形成された接着剤層4と、上記接着剤層4上に形成された第2保護層3とからなるものである。この例において、上記第1保護層1と上記第2保護層3とは、同一の樹脂材料からなり、かつ、同一の厚みを有するものである。
【0035】
以下、実施例1のセキュリティフィルムの作成方法の具体例を示す。
【0036】
第1保護層として厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名 E5102,東洋紡績社製)を用い、コロナ処理が施された面上に絵柄印刷層・隠蔽層・レリーフ構造形成層の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、レリーフ構造形成層の膜厚は2μmであった。
【0037】
次に、このフィルムをロールエンボス装置にて熱プレスを行い、レリーフ構造形成層にホログラム画像を成形した。
【0038】
次に、レリーフ構造形成層のエンボス面にアルミ蒸着を行い、反射層を設けた。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。
【0039】
次に、アルミ蒸着層に隠蔽層・絵柄印刷層・接着剤層の順にグラビアコーターで印刷を行い、オーブン乾燥後、第2保護層として25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名 E5102,東洋紡績社製)のコロナ処理が施された面と接するように向かい合わせた後、130℃の熱ローラー間に通して熱ラミネートを行った。接着剤層の乾燥後の膜厚は4μmであった。以上により、第1保護層/絵柄印刷層/隠蔽層/レリーフ構造形成層/反射層/隠蔽層/絵柄印刷層/接着剤層/第2保護層の構成を有する本発明のセキュリティフィルム11を得た。
【0040】
以上のように構成した本実施例のセキュリティフィルムにおいては、第1保護層1上の一部に絵柄印刷層5および隠蔽層6を設けることにより、ホログラムの画像を、窓部13を通して第1保護層側から見ることができる。窓部13は、第2保護層3側から見た場合においても、第1保護層側から見た場合と同様、絵柄印刷層10および隠蔽層9の窓部として作成されており、これにより表裏から同じホログラム画像を見ることが可能となる。
【0041】
一方、窓部14では、窓部13同様、第1保護層1上の一部に絵柄印刷層5および隠蔽層6を設けることにより、ホログラムの画像を、窓部14を通して第1保護層側から見ることができる。しかし、窓部14は、第2保護層3側から見た場合においては、絵柄印刷層10および隠蔽層9が印刷されているため、第2保護層側からはホログラム画像を見ることはできない。
【0042】
逆に、窓部15では、第1保護層1側には絵柄印刷層5および隠蔽層6が設けられているためホログラム画像を見ることができないが、第2保護層3側から見た場合においては、絵柄印刷層10および隠蔽層9の窓部として作成されており、ホログラム画像を見ることが可能となる。
【0043】
本実施例では、第1保護層1上の一部に絵柄印刷層5および隠蔽層6を設ける場合について説明したが、これに限らず、第1保護層1上の全面に絵柄印刷層5および隠蔽層6を設ける場合についても、本発明を同様に適用することが可能である。また、同様に、金属薄膜層7上の全面に絵柄印刷層10および隠蔽層9を設ける場合についても、本発明を適用することが可能である。
【0044】
実施例2
図2は、本発明のセキュリティフィルムの他の例を示す概略断面図である。図2に例示するように、本発明のセキュリティフィルム12は、上記レリーフ構造形成層2上に、透明薄膜層8が形成されている。
【0045】
本実施例のセキュリティフィルムにおいては、第1保護層1上の一部に絵柄印刷層5および隠蔽層6を設けることにより、ホログラムの画像を、窓部16を通して第1保護層側から見ることができる。窓部16は、第2保護層3側から見た場合においても、第1保護層側から見た場合と同様、絵柄印刷層10および隠蔽層9の窓部として作成されており、これにより表裏から透明媒体上のホログラム画像を見ることが可能となる。
【0046】
次に、窓部17では、窓部16同様、第1保護層1上の一部に絵柄印刷層5および隠蔽層6を設けることにより、ホログラムの画像を、窓部17を通して第1保護層側から見ることができる。窓部17は、透明薄膜層8上に絵柄印刷層19が形成されているため、ホログラムの画像は絵柄印刷層19の絵柄の上に浮かび上がって見える。一方、第2保護層3側から見た場合においては、絵柄印刷層10および隠蔽層9が印刷されているため、第2保護層側からはホログラム画像を見ることはできない。
【0047】
また、窓部18では、第1保護層1側には絵柄印刷層5および隠蔽層6が設けられているためホログラム画像を見ることができないが、第2保護層3側から見た場合においては、絵柄印刷層10および隠蔽層9の窓部として作成されており、ホログラム画像を見ることが可能となる。このとき、ホログラムの画像は絵柄印刷層20の絵柄の上に浮かび上がって見えることになる。ホログラムの成形に影響を与えないために、絵柄印刷層20の印刷は、第1保護層1に絵柄印刷層5および隠蔽層6を印刷した後、レリーフ構造形成層を印刷する前に行う。
【0048】
本実施例では、全面に透明薄膜層8を形成する場合について説明したが、透明薄膜層8を部分的に形成することも可能である。また、金属薄膜層7においても同様に部分的に形成することが可能であり、さらには反射層として金属薄膜層と透明薄膜層を部分的に組み合わせて形成することも可能である。
【0049】
本発明のセキュリティフィルムでは、デザイン上、印刷、窓部の大きさ、形状、位置が自由に任意に選択できるので、種々のデザインに対応することが可能となる。また、ホログラム画像のみに頼っていた偽造防止効果に、デザイン上の複雑性、さらに印刷による偽造防止効果が加わるので、より一層偽造が困難となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のセキュリティフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のセキュリティフィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のセキュリティフィルムの一実施形態の構造を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 … 第1保護層
2 … レリーフ構造形成層
3 … 第2保護層
4 … 接着剤層
5、10、19、20 … 絵柄印刷層
6、9 … 隠蔽層
7 … 金属薄膜層
8 … 透明薄膜層
11、12 … セキュリティフィルム
13〜18 … 窓部
100 … 第1保護層
101、104 … 絵柄印刷層または隠蔽層101
102 … レリーフ構造層
103 … 反射層
105 … 接着剤層
106 … 第2保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料からなる第1保護層と第2保護層の間にレリーフ構造形成層を有し、前記第1保護層と前記レリーフ構造形成層との間、および、前記第2保護層と前記レリーフ構造形成層との間の双方または少なくとも一方に、絵柄印刷層または隠蔽層が形成され、かつ、前記第1保護層と前記レリーフ構造形成層との間、および、前記第2保護層と前記レリーフ構造形成層との間の双方または少なくとも一方に、ドライラミ用接着剤からなる接着剤層が形成されているセキュリティフィルム。
【請求項2】
前記第1保護層に用いられる樹脂材料および前記第2保護層に用いられる樹脂材料が同一であることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティフィルム。
【請求項3】
前記第1保護層および前記第2保護層の厚みが同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティフィルム。
【請求項4】
厚みが50μmから150μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項5】
厚みが150μmから1mmの範囲内であり、かつ短辺寸法が58mm、長辺寸法が86mmの長方形の中に収めることが可能な大きさであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項6】
前記レリーフ構造形成層の反射層として、前記レリーフ構造形成層の全面または一部に金属薄膜層が積層されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項7】
前記レリーフ構造形成層の反射層として、前記レリーフ構造形成層の全面または一部に透明薄膜層が積層されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のセキュリティフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のセキュリティフィルムを有する印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262384(P2009−262384A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113404(P2008−113404)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】