説明

セグメントリングの補強構造

【課題】上下方向及び水平方向に作用する圧縮力に耐えることができると共に、運搬や設置の作業を簡略化させた。
【解決手段】扁平セグメントリング2の内空側には、断面視で左右に二枚の床版10A、10Bが設けられ、両床版10A、10Bの接合部T1には中壁41が嵌合されている。各床版10A,10Bの内部には、トンネル軸に直交する方向にPC鋼材30が略水平方向に延在するように挿通されている。この二本のPC鋼材30A、30Bはカップラー42によって扁平セグメントリング2の内空側で水平方向に締め付けられて接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法によって構築されたセグメントリング内に床版を設置する床版の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路、鉄道などの用途で施工されるシールドトンネルは、プレキャスト床版を設置している。そして、一般的に、トンネルの断面は、円形断面で施工されている。しかし、円形断面のうち実際に利用されるスペースは、上下部分を除いた内空断面であることが多いことから略横長のトンネル空間を形成させた略楕円形状或いは馬蹄形状などの異形断面(以下、これらを「扁平トンネル」と記述する)のトンネルが施工される場合が増えている。このような扁平トンネルに構築される扁平セグメントリングには、断面円形のセグメントリングと比較して外方からの土圧やセグメントの自重によって上下方向の圧縮力が作用することになる。とくに、扁平セグメントリングに作用する曲げモーメントは、断面の斜め下方に位置するトンネル脚部近傍において応力が集中して最大曲げモーメントが発生する。
従来の扁平セグメントリングにおいては、このような曲げモーメントを減少させる方法として、扁平セグメントリングに大きな強度をもたせることが行なわれ、例えば鉄筋量を多くしてセグメントの厚さ寸法を大きくしてセグメントの強度を上げていた。ところが、セグメントの厚さ寸法を大きくすることは、セグメントが高価になるうえ、トンネルの掘削断面が大きくなるといった欠点があり、経済的ではなかった。そこで、扁平セグメントリング自体の強度を上げることなく、上述した扁平による曲げモーメントに対応した構造が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、扁平トンネルの内空側において、水平方向に引張力を受けもち略水平方向に配置された弦材をなす補強部材(第1補強部材)を設けることで、セグメントに水平方向に圧縮力を与えるものである。さらに、縦方向(上下方向)に圧縮力を受けもち縦方向に配置された棒状の補強部材(第2補強部材)を設けることで、扁平セグメントリングに作用する集中応力を減少させるものである。
【特許文献1】特許第2520034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1は、上下方向の圧縮力には強い構造となる。しかし、施工状態や地盤条件によっては水平方向の圧縮力が発生することもある。この水平方向に設けられた弦材の補強部材は、引張力に対する耐力は大きいが、水平方向から受ける圧縮力には耐えられないといった欠点があった。また、トンネルが大断面の場合、水平方向に配置させる補強部材(第一補強部材)の長さ(トンネル軸方向に対して直交する方向の長さ)が大きくなり、トンネル坑内における運搬や設置時の作業性(取り扱い)が悪くなり、作業効率が低下して工期が延びるといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、上下方向及び水平方向に作用する圧縮力に耐えることができると共に、運搬や設置の作業を簡略化させたセグメントリングの補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るセグメントリングの補強構造は、シールド工法によって構築されたセグメントリングを補強するためのセグメントリングの補強構造であって、セグメントリングの内空側で、断面視で略水平方向に延在させるように接続手段によって接続された複数の水平補強部材と、水平補強部材に接合させずに分離した状態で配置され、接続部に圧縮伝達部材を嵌合させてなる複数の床版とが設けられていることを特徴としている。
本発明によれば、複数の水平補強部材は接続手段によってセグメントリングの内空側で水平方向に接続されるため、接続された水平補強部材に水平方向の引張力を受けもたせることができる。そして、複数の床版は、それらの接続部の隙間に圧縮伝達部材が嵌合され、水平方向にて隙間なく設置されているため、水平方向に作用する圧縮力を受けもつことができる。
【0006】
また、本発明に係るセグメントリングの補強構造では、接続手段は内側に雌ネジが形成された円筒形状の締付部材であり、接続される水平補強部材同士を締付部材の内側に同軸となるように螺合されていることが好ましい。
本発明によれば、水平補強部材同士を同軸となるように締付部材に螺合させて締め付けると、互いの水平補強部材を均一に締め付けて接続することができ、水平補強部材に水平方向の引張力を受けもたせることができる。
【0007】
また、本発明に係るセグメントリングの補強構造では、接続手段は、水平補強部材同士の間に固定された係止板と、係止板に挿通させた水平補強部材の端部に螺合させて締め付けてなる締付ナットとであることが好ましい。
本発明によれば、互いに接続する水平補強部材を係止板に挿通させ、ナットで螺合させて締め付けることで、水平補強部材に水平方向の引張力を受けもたせることができる。
【0008】
また、本発明に係るセグメントリングの補強構造では、床版の内部に、水平補強部材が挿通されていることが好ましい。
本発明によれば、水平補強部材が床版内に内蔵されることになり、トンネル内空を有効に使用することができる。
【0009】
また、本発明に係るセグメントリングの補強構造では、セグメントリングと床版の側面との間に、セグメントリングに作用する水平方向の圧縮力を水平方向に伝達する第二圧縮伝達部材が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、セグメントリングに略水平方向の圧縮力が作用するとき、この圧縮力を第二圧縮伝達部材を介して床版に伝達させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセグメントリングの補強構造によれば、セグメントリングの上下方向に作用する圧縮力を水平補強部材が受けもつ引張力によって耐えることができ、水平方向に作用する圧縮力を床版で耐えることができる。これにより、トンネル脚部で発生する曲げモーメントを減少させることができ、これによりセグメントリングの厚さ寸法を小さくできる効果を奏する。
また、複数の水平補強部材を接続手段によって簡易に接続でき、複数の床版を圧縮伝達部材を介して水平方向に容易に密着させて圧縮力を伝達させることができる。このため、水平補強部材及び床版をトンネル断面の大きさに合わせた寸法に分割することができ、これらの運搬や設置が簡略化され、作業効率が向上されて工期を短縮させる利点があり、とくに大断面トンネルや運搬時の大きさに制限が有る場合に優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施の形態によるセグメントリングの補強構造について、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による扁平セグメントリングの補強構造を示す断面図、図2はPC鋼材及び床版の接続部の構造を示す断面図、図3は同じく水平断面図、図4は図3に示す接続部の拡大図、図5はトンネル脚部の接続部の構造を示す断面図、図6は扁平セグメントリングの曲げモーメントの分布図であって、(a)は実施例を示す図、(b)は比較例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本第一の実施の形態による扁平セグメントリングの補強構造1は、道路、鉄道、共同溝などに採用されるトンネルであって、シールド工法によって地山内に延設された断面馬蹄形状(以下、この形状を「扁平」と記述する)をなす扁平セグメントリング2を補強するものである。
【0013】
先ず、扁平セグメントリング2について説明する。
図1に示すように、扁平セグメントリング2は、湾曲した複数のセグメント20・・・が環状に組み合わされて構築されたものである。なお、扁平セグメントリング2の断面視斜め下方に位置して所定の円弧長を有する円弧領域を、「トンネル脚部K1、K2」として以下説明する。さらに、各トンネル脚部K1、K2に配置されるセグメントを脚部セグメント21、21とし、断面視で底部中央部に配置されていて両脚部セグメント21、21の間に挟まれてなるセグメントを底盤セグメント22(以下、必要に応じてトンネル底盤部K3と記す)とする。
【0014】
図1、図2及び図3に示すように、扁平セグメントリング2の内空側には、断面視で左右に二枚の床版10A、10B(必要に応じて、これら床版10A、10Bを総称して「床版10」と記す)設けられ、互いの床版10A、10B同士の接続面10a、10bを所定の隙間Rをもって対向させて配置させてトンネル軸方向に平行に並べて設置されている。そして、床版10A、10Bは夫々の接続面10a、10bで接続され、この接続箇所を接続部T1とする。
床版10A、10Bの各々は、予め工場などで製造されるプレキャスト製であり、略長方形状をなしている。そして、床版10A、10Bは、扁平セグメントリング2における水平方向略中央部で底盤セグメント22に立設された中柱3上に所定の高さとなるように載置させている。この中柱3上に、床版10A、10Bの接続部T1が配置される。
【0015】
図4に示すように、各床版10の内部には、トンネル軸に直交する方向に貫通した挿通孔11が形成され、その挿通孔11に円筒形状のシース管12が挿入され、そのシース管12内にPC鋼材30(水平補強部材)が略水平に延在するように挿通されている。本実施の形態では、1枚の床版10に対して4本のPC鋼材30・・・がトンネル軸方向に所定間隔をもって配置されている(図3参照)。なお、PC鋼材30は、床版10に接合させずに分離した状態で配置されている。そして、PC鋼材30は、雄ネジを形成させた両端部30a、30aを床版10の側面より外方に所定の長さ寸法で突出させている。このようにPC鋼材30を床版10に内蔵させた構成とすることで、トンネル空間を有効に使うことができる。
ここで、床版10A内のPC鋼材を符号30Aとし、床版10B内のPC鋼材を符合30Bとして以下説明する。
【0016】
次に、床版10A、10B同士を接続する接続部Tについて図面に基づいて説明する。
図2及び図3に示すように、接続部T1は、床版10A、10B同士の間の隙間Rに設けられているコンクリートなどからなる中壁41(圧縮伝達部材)と、床版10A、10Bに挿通されているPC鋼材30A、30Bの端部30a、30a同士を連結させる円筒形状のカップラー42(本発明の接続手段、或いは締付部材に相当する)が設けられている。図4に示すように、この中壁41には、PC鋼材30の軸線上の位置に切欠部41aが形成されている。そして、中壁41は、床版10側の端面41b、41bが床版10A、10Bの接続面10a、10bに密接しているため、水平方向の圧縮力を、中壁41を介して両床版10に伝達させる作用をなしている。
そして、カップラー42は、内面に雌ネジを形成させ、その内面の両端に両PC鋼材30A,30Bの端部30a、30aを螺合させている。このように、接合部T1において、両PC鋼材30A、30B同士を同軸となるように螺合させた状態でカップラー42を締め付けると、両PC鋼材30A,30Bを均一に締め付けて一体化させて接続することができる。したがって、PC鋼材30に水平方向の引張力を受けもたせることができる。
【0017】
次に、各床版10と扁平セグメントリング2(脚部セグメント21)とを接続する第二接合部T2について説明する。
図1及び図5に示すように、脚部セグメント21の内周面21aと床版10の側面10c、10c(すなわち、脚部セグメント21、21側の面)との間には、鋼材などからなる嵌合部材50(第二圧縮伝達部材)が設けられている。図5に示すように、扁平セグメントリング2に略水平方向の圧縮力が作用するとき、この圧縮力が嵌合部材50を介して床版10に伝達される作用をなしている。すなわち床版10は、上述した中壁41及び嵌合部材50が設けられることで水平方向の圧縮力を受けもつことができる。
さらに、嵌合部材50は、床版10の側方下端部10dを下方より支持するように、横方向中心に向けて張り出して形成されている。
【0018】
また、図5に示すように、脚部セグメント21には、床版10を所定の位置に設置した状態で、PC鋼材30と同軸となるように棒状の異形鋼棒61が埋設されている。この異形鋼棒61は、雄ネジが形成された端部61aを、脚部セグメント21の内周面21aを切り欠いて形成させた切欠部(図示省略)において露出させている。そして、異形鋼棒61とPC鋼材30とを連結させる手段として、円筒形状の第二カップラー62が設けられている。この第二カップラー62は、内面に雌ネジを形成させ、一方62aの内面に異形鋼棒61の端部61aを螺合させ、他方62bの内面にPC鋼材30の端部30aを螺合させている。
このように、両トンネル脚部K1、K2において、PC鋼材30と異形鋼棒61とを同軸に接続させた状態で第二カップラー62を締め付けると、異形鋼棒61とPC鋼材30とを均一に締め付けることができ、PC鋼材30に水平方向の引張力を受けもたせることができる。
【0019】
次に、このように構成されるPC鋼材30及び床版10の作用について図面に基づいて説明する。なお、作用の説明では、PC鋼材30及び床版10は上述した接続部T1、第二接続部T2で接続されて一体化した状態であるとする。
先ず、PC鋼材30の作用から説明する。図6(a)及び(b)に示す扁平セグメントリング2には、その断面外方から受ける土圧やセグメント自重により上下方向にトンネル断面が潰れるようにして圧縮力が作用し、略水平方向(或いは、トンネル脚部K1、K2付近)にトンネルの外側に向けた応力が集中して最大曲げモーメントが発生する。
ここで、曲げモーメントについて、扁平セグメントリング2の外周側に張り出してたわむ場合(扁平セグメントリング2を外向きに作用させる曲げ)を「負の曲げモーメント」とし、その反対に内周面を内空側に押し出す場合(扁平セグメントリング2を内向きに作用させる曲げ)を「正の曲げモーメント」とする。
図6(b)はPC鋼材30や床版10(図1参照)を設けない扁平セグメントリングに作用する比較例の曲げモーメントを示し、各トンネル脚部K1、K2の略中間部で最大値をなすに負の曲げモーメントM1、M2が発生し、トンネル脚部K1、K2間に挟まれたトンネル底盤部K3の略中央部で最大値をなす正の曲げモーメントM3が発生していることがわかる。
【0020】
次に、図6(a)に示すように、トンネル脚部K1、K2の所定位置において、PC鋼材30を設け、このPC鋼材30に、扁平セグメントリング2を内空側に引っ張る方向(水平方向に圧縮力を作用させる方向)に引張力を受けもたせる。これにより、トンネル脚部K1、K2付近に作用する負の曲げモーメントM4、M5およびトンネル底盤部K3に作用する正の曲げモーメントM6の最大値を小さくさせることができる。
【0021】
そして、扁平セグメントリング2に水平方向の圧縮力が発生した場合には、この圧縮力を床版10によって受けもたせることができる。このように床版10は、PC鋼材30を補強する効果を有し、PC鋼材30に与える圧縮力を抑制することができる。
また、水平方向の引張力を受けもつPC鋼材30と、水平方向の圧縮力を受けもつ床版10とが接合しない状態で分離されているため、扁平セグメントリング2に作用する力をPC鋼材30と床版10とが別々に受けもつことができ、効率的な扁平セグメントリング2の補強構造1を実現できる。
【0022】
図1に示す上述した床版10及びPC鋼材30は、トンネルの施工中において図示しないシールド掘削機の後方で設置し、所定の引張力をPC鋼材30に受けもたせる。そして、トンネルの施工後においても、適宜、この引張力を調整させることができる。つまり、トンネルの施工中に扁平セグメントリング2作用する荷重、即ち裏込め材の注入時や土圧の変化が大きい掘削直後などの短期荷重や、トンネルの施工後に作用する荷重、即ち土圧や車の共用時などの長期荷重(永久荷重)に合わせて任意に引張力を調整することが好ましい。
【0023】
上述したように第一の実施の形態によるセグメントリングの補強構造では、扁平セグメントリング2の上下方向に作用する圧縮力をPC鋼材30が受けもつ引張力によって耐えることができ、水平方向に作用する圧縮力を床版10で耐えることができる。これにより、トンネル脚部K1、K2で発生する曲げモーメントを減少させることができ、これにより扁平セグメントリング2の厚さ寸法を小さくできる効果を奏する。
また、複数のPC鋼材30・・・をカップラー42によって簡易に接続でき、複数の床版10・・・を中壁41を介して水平方向に容易に密着させて圧縮力を伝達させることができる。このため、PC鋼材30及び床版10をトンネル断面の大きさに合わせた寸法に分割することができ、これらの運搬や設置が簡略化され、作業効率が向上されて工期を短縮させる利点があり、とくに大断面トンネルや運搬時の大きさに制限が有る場合に優れた効果が得られる。
【0024】
次に、本発明の第二及び第三の実施の形態について、図7及び図8に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図7は第二の実施の形態によるPC鋼材同士の接続部の構造を示す図であって、(a)は図2に対応する断面図、(b)は図3に対応する水平断面図である。
図7(a)、(b)に示すように、第二の実施の形態では、第一の実施の形態のカップラー42(図4参照)による接続構造に代えて、引張接続冶具70を用いて床版10を設置させた状態でPC鋼材30A、30B同士を略同軸となるように接続する構造である。なお、PC鋼材30は、実施の形態と同じく床版10(図1参照)の内側を挿通させて設けられている。
ここで、引張接続冶具70は、本発明の接続手段に相当するが、正確には後述する第一及び第二締付ナット73、74を含んだ構成となる。
引張接続冶具70は、接続部T1の隙間Rに嵌合するように配置され、中柱3の上部に固定されている。この引張接続冶具70は、鋼材などにより上方に開口を有する断面視略コの字形状に形成され、互いに所定間隔をもって対向するように床版10A,10Bの接合面10a、10b側に配してなる平板形状の二枚の係止板71、71と、係止板71、71同士をその下端部で連結する底板72とから形成されている。
各係止板71、71には、PC鋼材30と同軸となる位置に円孔71aが形成されている。そして、一方の円孔71aに雄ネジが形成されたPC鋼材31の端部30aを挿通させて第一締付ナット73を螺合させ、他方の円孔71aにPC鋼材32の端部30aを挿通させて第二締付ナット74を螺合させている。第一及び第二ナット73、74を締め付けることで、PC鋼材30は、第一の実施の形態と同様に水平方向に引張力を受けもたせることができる。なお、引張接続冶具70には、略コの字形状に囲われた内側に空間Sを有することから、PC鋼材30を締め付けたときにその端部30aが空間Sの中心側に突出することができる。
また、引張接続冶具70は、床版10A、10B同士の隙間Rに嵌合されて、水平方向の圧縮力を伝達する作用を有している。したがって、引張接続冶具70は、本発明の接続手段であると共に、圧縮伝達部材に相当している。
さらに、床版10と扁平セグメントリング2との接続部T2については、詳細な説明は省略するが、図5に示す第一の実施の形態と同様に第二カップラー62を使用した接続構造とすることができるが、第二の実施の形態の接続部T1と同様に係止板に相当する部材を設けて扁平セグメントリング2側のPC鋼材30の端部30aをナットによって締め付ける接続構造としてもかまわない。
本第二の実施の形態ではPC鋼材30、30は、水平方向に分割されているが接合部T1で接続させることで第一の実施の形態と同様に水平方向の引張力を受けもたせることができ、また床版10で水平方向に作用する圧縮力を受けもたせることができることから、第一の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0025】
次に、図8は第三の実施の形態によるPC鋼材同士の接続部の構造を示す図であって、(a)は図2に対応する断面図、(b)は図3に対応する水平断面図である。
図8(a)、(b)に示すように、第三の実施の形態では、第二の実施の形態の接続部T1における引張接続冶具70(図7参照)に代えて第二引張接続冶具80を用いたものである。そして、床版10A,10Bの設置状態で、一方の床版10Aの内部に挿通されているPC鋼材30A・・・は、他方の床版10BのPC鋼材30B・・・に対して、トンネル軸方向にずれて交互に配列されている。その他の構成は第一及び第二の実施の形態と同様である。
第二引張接続冶具80は、中柱3上の接続部T1の隙間Rの幅方向略中央において、平板状の第二係止板81をトンネル軸方向に延設させてなる。この第二係止板81には、両床版10A、10BのPC鋼材30・・・と同軸となる位置に示すように円孔81aが形成されている。そして、この円孔81aにPC鋼材30の端部30aを挿通させてナット82で締め付けて接続することで、PC鋼材30に第一及び第二の実施と同様に水平方向の引張力を受けもたせることができる。なお、本第三の実施の形態では、第二係止板81と床版10の接合面10a、10bとの間の空間S2に、ナット82の取り付け箇所を除いて例えばコンクリートなどの固結材84(第二圧縮伝達部材)を充填することにより水平方向に作用する圧縮力を床版10で受けもたせることができる。
このように第三の実施の形態についても、PC鋼材30及び床版10の作用は第一及び第二の実施の形態と同様であることから、同じ効果が得られる。
【0026】
以上、本発明によるセグメントリングの補強構造の第一乃至第三の実施の形態について説明したが、本発明は上記の第一乃至第三の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第一乃至第三の実施の形態では床版10の内側にPC鋼材30を挿通させて内蔵した構成としているが、床版10とPC鋼材30とを別々の位置に設けるようにしてもかまわない。
また、PC鋼材30の設置本数は地盤の条件に合わせて適宜設定することができる。例えば悪い地盤の場合にはPC鋼材30を適宜増加し、良好な地盤の場合にはPC鋼材30を適宜減らして設置すればよい。
また、本第一乃至第三の実施の形態では床版10及びPC鋼材30を二分割にした構成としているが、二分割であることに限定されることはない。要はトンネル断面の大きさや床版の運搬のし易さなどよって適宜床版10及びPC鋼材30の設置数を設定すればよく、夫々が接続部T1によって接続されていればよいのである。
また、本第一乃至第三の実施の形態では扁平セグメントリング2が構築された扁平断面のトンネルに採用したものであるが、円形断面のトンネルに採用することも可能である。
さらに、本第一乃至第三の実施の形態ではPC鋼材30及び床版10を掘進と同時にシールド掘削機のテール内で設置しているが、この設置のタイミングに限定されることはなく、トンネルの掘進が完了した後にPC鋼材30及び床版10を設置し、PC鋼材30に引張力を導入するようにしてもかまわない。また、先に床版10とPC鋼材30を同時に取り付けておき、トンネルの施工後にPC鋼材30に引張力を負担させるようにしてもよい。また、PC鋼材30及び床版10を設置した後に新たなPC鋼材を追加するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施の形態による扁平セグメントリングの補強構造を示す断面図である。
【図2】PC鋼材及び床版の接続部の構造を示す断面図である。
【図3】PC鋼材及び床版の接続部の構造を示す水平断面図である。
【図4】図3に示す接続部の拡大図である。
【図5】トンネル脚部の接続部の構造を示す断面図である。
【図6】扁平セグメントリングの曲げモーメントの分布図であって、(a)は実施例を示す図、(b)は比較例を示す図である。
【図7】第二の実施の形態によるPC鋼材同士の接続部の構造を示す図であって、(a)は図2に対応する断面図、(b)は図3に対応する水平断面図である。
【図8】第三の実施の形態によるPC鋼材同士の接続部の構造を示す図であって、(a)は図2に対応する断面図、(b)は図3に対応する水平断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 補強構造
2 扁平セグメントリング
21 脚部セグメント
30 PC鋼材(水平補強部材)
10 床版
41 中壁(圧縮伝達部材)
42 カップラー(締付部材)
50 嵌合部材(第二圧縮伝達部材)
71 係止板
73 第一締付ナット
74 第二締付ナット
81 第二係止板
84 固結材(第二圧縮伝達部材)
K1、K2 トンネル脚部
T1 接続部
T2 第二接続部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法によって構築されたセグメントリングを補強するためのセグメントリングの補強構造であって、
前記セグメントリングの内空側で、断面視で略水平方向に延在させるように接続手段によって接続された複数の水平補強部材と、
前記水平補強部材に接合させずに分離した状態で配置され、接続部に圧縮伝達部材を嵌合させてなる複数の床版と、
が設けられていることを特徴とするセグメントリングの補強構造。
【請求項2】
前記接続手段は内側に雌ネジが形成された円筒形状の締付部材であり、
接続される前記水平補強部材同士を前記締付部材の内側に同軸となるように螺合されていることを特徴とする請求項1に記載のセグメントリングの補強構造。
【請求項3】
前記接続手段は、前記水平補強部材同士の間に固定された係止板と、前記係止板に挿通させた前記水平補強部材の端部に螺合させて締め付けてなる締付ナットとであることを特徴とする請求項1に記載のセグメントリングの補強構造。
【請求項4】
前記床版の内部に、前記水平補強部材が挿通されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセグメントリングの補強構造。
【請求項5】
前記セグメントリングと前記床版の側面との間に、前記セグメントリングに作用する前記水平方向の圧縮力を前記水平方向に伝達する第二圧縮伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセグメントリングの補強構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate