説明

セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた燃料電池

【課題】強度に優れた薄型の耐腐蝕性を有する燃料電池用セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた燃料電池を提供すること。
【解決手段】Niが35.5〜36.5%(mass%)含有され残部がFeおよび不可避の不純物よりなるFe−Ni基合金からなる燃料電池用のセパレータのガス流路の表面に、Feからなる耐腐蝕層を設けること。
電解質膜の表裏面に触媒層を設け、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材を設け、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に前記セパレータを設けること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐腐蝕性を有する薄型金属セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の一方の面にアノード(燃料極)、他方の面にカソード(酸化剤極)を設けた電解質膜電極接合体(以下MEAと記述する)の両側に、セパレータを配した単電池セルを複数積層した構造になっている。
アノードに対向するセパレータ表面には、燃料ガスを流通させるための凹溝状の燃料ガス流路が設けられている。
また、カソードに対向するガスセパレータ表面には、酸化剤ガスを流通させるための凹溝状の酸化剤ガス流路が設けられている。
そして、燃料ガス流路に水素を主体とした改質ガス(又は水素ガス)を供給すると共に、酸化剤ガス流路に酸化剤ガス(通常は空気)を供給し、電解質膜を介して燃料ガスの水素と酸化剤ガスの酸素とにより下記の電気化学反応を生じさせて起電力を得るようにしたものである。
【0003】
燃料極;H→2H+2e− (1)
酸化剤極;4H+4e−+O→2HO (2)
【0004】
セパレータは、隣り合う単電池セルの燃料ガス流路と酸化剤ガス流路を仕切り、燃料ガスと酸化剤ガスの相互流入を防止するものである。
また、セパレータは、MEAにおいて触媒反応により発生した電子を、外部回路へ供給するための供給路としての役割を有する。
【0005】
従来、セパレータの材料としては、カーボンが汎用されてきた。
【0006】
しかし、カーボン製のセパレータは、脆いため機械的な衝撃、振動に弱い。
このため、セパレータには数mm程度の厚さが必要となり、燃料電池の薄型化の障害となっている。(特許文献1参照)
【0007】
また、カーボン粉末に熱可塑性樹脂などの高分子材料からなるバインダーを配合し、射出成形などでセパレータを作製する試みがなされている。(特許文献2参照)
【0008】
しかし、このようにして得られるセパレータも強度に乏しく、強度維持のために、最低でも1〜2mm程度の厚さが必要となり、燃料電池の薄型化の障害となっている。
【0009】
そこで、近年、燃料電池の薄型化を実現するために、セパレータの母材として、SUS製の金属基薄板を用いる試みがなされている。(特許文献3参照)
【0010】
【特許文献1】特開2001−6703号公報
【特許文献2】特開2005−100933号公報
【特許文献3】特開2002−190305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、SUS製の金属基薄板を母材として用いたセパレータは、燃料電池の発電に伴い、ガス流路表面が腐蝕されていくという問題を抱えている。
【0012】
本発明の課題は、強度に優れた薄型の耐腐蝕性を有する燃料電池用セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、ガス流路が設けられた、Niが35.5〜36.5%(mass%)含有され残部がFeおよび不可避の不純物よりなるFe−Ni基合金からなる燃料電池用のセパレータであって、
前記ガス流路の表面にFeからなる耐腐蝕層が設けられていることを特徴とするセパレータである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記Fe−Ni基合金をHO、CO、CO、Hおよび不活性ガスからなる混合ガス雰囲気中において450〜610℃の温度で加熱することにより、前記Fe−Ni基合金の表面に前記耐腐蝕層を形成する耐腐蝕層形成工程と、
前記ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去する耐腐蝕層除去工程を有する請求項1に記載のセパレータの製造方法であって、
前記耐腐蝕層形成工程で用いる前記混合ガス雰囲気中の、H分圧とHO分圧の比が0.01〜1.00、かつ、CO分圧とCO分圧の比が0.01〜1.00であることを特徴とするセパレータの製造方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記不活性ガスが、N、Ar、或いは、NとArの複合ガスであることを特徴とする請求項2に記載のセパレータの製造方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記耐腐蝕層除去工程が、表面に砥粒を有するベルトサンダーを用いて前記ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去する研磨工程と、耐腐蝕層が除去されたFe−Ni基合金表面を、酸を用いて酸洗する酸洗工程を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のセパレータの製造方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記砥粒が、アルミナまたはシリコンカーバイドであることを特徴とする請求項4に記載のセパレータの製造方法である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記酸が、硝酸、硫酸、または、硝酸と硫酸の混酸であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のセパレータの製造方法である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、電解質膜の表裏面に触媒層が設けられ、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材が設けられ、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に請求項1に記載のセパレータが設けられたことを特徴とする燃料電池である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記電解質膜が、スルホン基含有パーフルオロカーボン、または、カルボキシル基含有パーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池である。
【0021】
請求項9に記載の発明は、前記ガス拡散材が、導電性多孔性基材であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の燃料電池である。
【0022】
請求項10に記載の発明は、前記導電性多孔性基材が、カーボンペーパー、または、カーボンクロスであることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池である。
【0023】
請求項11に記載の発明は、前記触媒層が、触媒を担持した電子伝導性物質、および、プロトン伝導性物質からなることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0024】
請求項12に記載の発明は、前記電子伝導性物質が、二酸化珪素、または、炭素であることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池である。
【0025】
請求項13に記載の発明は、前記プロトン伝導性物質が、スルホン酸基含有パーフルオロカーボン、ポリエーテルスルフォン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、または、スルホン化ポリイミドであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の燃料電池である。
【0026】
請求項14に記載の発明は、前記触媒が、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の金属からなることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0027】
請求項15に記載の発明は、前記触媒の平均粒径(体積平均粒径(Dv))が1nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【0028】
請求項16に記載の発明は、前記電子伝導性物質の前記触媒の担持率が30〜70重量%であることを特徴とする請求項11乃至請求項15のいずれか1項に記載の燃料電池である。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明は、ガス流路が設けられた、Niが35.5〜36.5%(mass%)含有され残部がFeおよび不可避の不純物よりなるFe−Ni基合金からなる燃料電池用のセパレータであって、
前記ガス流路の表面にFeからなる耐腐蝕層を設けることによって、強度に優れた薄型の耐腐蝕性を有するセパレータを得ることができるものである。
【0030】
請求項2の発明は、前記Fe−Ni基合金をHO、CO、CO、Hおよび不活性ガスからなる混合ガス雰囲気中において450〜610℃の温度で加熱することにより、前記Fe−Ni基合金の表面に前記耐腐蝕層を形成する耐腐蝕層形成工程と、
前記ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去する耐腐蝕層除去工程を有する請求項1に記載のセパレータの製造方法であって、
前記耐腐蝕層形成工程で用いる前記混合ガス雰囲気中の、H分圧とHO分圧の比を0.01〜1.00、かつ、CO分圧とCO分圧の比を0.01〜1.00とすることによって、セパレータから脱落して燃料電池の運転に支障を与える懸念があるα−Feを発生させることなく、密着性の良好な耐腐蝕性を有するFeのみをガス流路表面に形成することができるものである。
【0031】
請求項4の発明は、前記耐腐蝕層除去工程が、表面に砥粒を有するベルトサンダーを用いて前記ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去する研磨工程と、耐腐蝕層が除去されたFe−Ni基合金表面を、酸を用いて酸洗する酸洗工程を有することによって、電気伝導の障害となる耐腐蝕層を効率良く除去できるものである。
【0032】
請求項7の発明は、電解質膜の表裏面に触媒層を設け、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材を設け、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に請求項1に記載のセパレータを設けることにより、強度に優れた薄型の耐腐蝕性を有する燃料電池を得ることができるものである。
【0033】
請求項9の発明は、前記ガス拡散材として導電性多孔性基材を用いることにより、MEAで発生した電子を外部回路に伝導することができるものである。
【0034】
請求項14の発明は、触媒が、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の貴金属からなるが、これら1B族または8族の貴金属は酸素還元能力、水素酸化能力が高いので、触媒効率の良い燃料電池を作製することができるものである。
【0035】
請求項15の発明は、触媒の平均粒径(体積平均粒径(Dv))が1nm以上5nm以下であるので、触媒の単位重量当たりの表面積が非常に大きい、触媒効率の良い出力特性に優れた燃料電池を作製することができるものである。
【0036】
請求項16の発明は、前記電子伝導性物質に対する前記触媒の担持率を30〜70重量%にすることにより、触媒効率および出力特性に優れた燃料電池を作製することができるものである。(図5参照)
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明のセパレータの作製方法を、図1を基に説明する。
【0038】
まず、金属薄板1に付着している異物等を洗浄し、その後、金属薄板1とフォトレジスト膜10との密着性を上げるために、酸性溶液を用いて金属薄板1を整面する。(図1(a)参照)
【0039】
金属薄板1の材料としては、Niが35.5〜36.5%(mass%)含有され、残部がFeおよび不可避の不純物よりなるFeNi基合金を用いることができ、その厚さは0.09mm〜0.26mmが好ましい。
【0040】
Niが35.5〜36.5%(mass%)含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなるFeNi基合金の熱膨張率係数は低い(熱膨張率係数=0.9〜1.0×10−6/℃)(0℃〜200℃の範囲)(図4参照)ので、燃料電池作動温度(固体高分子型燃料電池、アルカリ型燃料電池、硫酸型燃料電池は70℃〜120℃、リン酸型燃料電池は170℃〜200℃)による熱膨張起因の反りが生じ難い、薄型で高強度で耐腐食性を有するセパレータを作製することができる。
【0041】
特開2002−151097号公報によると、通常、燃料電池用のセパレータは200〜300μm程度の板厚のSUS等の薄金属板で構成され、薄金属板には、多数の微小高さ(約0.5〜1.0mm)の突条又は突起が略全面に亙って形成されている、との記載がある。
本発明のセパレータは、通常のセパレータの半分以下の厚さに薄型化することができる。
【0042】
洗浄法としては、65〜75℃に加温したアルカリ脱脂液に金属薄板1を浸漬する方法を用いることができる。
【0043】
酸性溶液としては、希硫酸、希硝酸または希塩酸などを用いることができる。
【0044】
整面の方法としては、55〜65℃に加温した酸性溶液に、アルカリ脱脂液で洗浄した金属薄板1を浸漬し、その後、水洗し、その後、乾燥する方法を用いることができる。
【0045】
次に、金属薄板1の表裏両面にフォトレジスト膜10を形成する。(図1(b)参照)
【0046】
フォトレジスト膜10の材料としては、カゼインと重クロム酸アンモニウムからなる水溶性感光性樹脂を用いることができる。
【0047】
水溶性感光性樹脂の粘度は、10〜900cpsが好ましく、20〜600cpsであれば更に好ましい。
粘度10cps未満の水溶性感光性樹脂を用いると、加工中に金属薄板1が振動した場合に、水溶性感光性樹脂の塗布ムラが発生し易い。
また、粘度900cpsを超える水溶性感光性樹脂は、固形分が高過ぎ、フォトレジスト膜10の膜厚コントロールが困難となる。
【0048】
フォトレジスト膜10の形成方法としては、金属薄板1の巾方向が鉛直方向になるように搬送しながら上方部からフォトレジスト材料を金属薄板1の表裏両面に掛け流し、その後、乾燥するフロー法、または、金属薄板1をフォトレジスト材料に浸漬し、その後、乾燥する浸漬法などを用いることができる。
【0049】
フォトレジスト膜10の厚さは、6μm〜30μmを用いることができ、好ましくは、7〜8μmを用いることができる。
【0050】
次に、セパレータのガス流路および外形輪郭線形成用の遮光部21を有するパターン形成用マスク20を、金属薄板1のガス流路および外形輪郭線パターンを形成する面上に存在するフォトレジスト膜10上に密着させる。(図1(c)参照)
【0051】
次に、フォトレジスト膜10を露光硬化させて、水性溶媒に対して不溶化である水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´を形成する。(図1(d)参照)
【0052】
金属薄板1のガス流路および外形輪郭線パターンを形成する面上に存在するフォトレジスト膜10の露光硬化方法としては、出力2.5〜3.5kWの超高圧水銀灯を用いて、パターン形成用マスク20を介して、フォトレジスト膜10に1500〜1700mJ/cmの紫外線を照射する方法を用いることができる。
【0053】
金属薄板1のガス流路および外形輪郭線パターンを形成しない面上に存在するフォトレジスト膜10の露光硬化方法としては、パターン形成用マスクを介さないで、出力2.5〜3.5kWの超高圧水銀灯を用いて、フォトレジスト膜10に1500〜1700mJ/cmの紫外線を照射する方法を用いることができる。
【0054】
次に、パターン形成用マスク20を外す。(図1(e)参照)
【0055】
次に、露光されていない未硬化のフォトレジスト膜10を現像して除去する。(図1(f)参照)
【0056】
現像する方法としては、未硬化のフォトレジスト膜10を水性溶媒等にて0.05〜0.35MPaの圧力でスプレー現像して除去する方法を用いることができる。
スプレーの圧力が0.05MPaより小さいと、未硬化のフォトレジスト膜10が完全に除去しきれないことが懸念される。
また、スプレーの圧力が0.35MPaより大きいと、金属薄板1が変形することが懸念される。
【0057】
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の硬膜処理を行う。
【0058】
硬膜処理方法としては、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)に対して、30℃〜40℃下で、濃度30〜40g/リットルの無水クロム酸溶液を0.05〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、145〜155℃の雰囲気中において1.5〜2.5分間乾燥し、その後、180〜220℃の雰囲気中において1〜2分間ベーキングする方法を用いることができる。
【0059】
硬膜処理が不十分であった場合、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の耐エッチング性および金属薄板1への密着性が悪くなり、次工程のエッチング処理において、形状不良が生じることが懸念される。
【0060】
水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の耐エッチング性が悪くなることで、エッチング中にエッチング液が水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)中に浸透して金属薄板1に接触することにより、金属薄板1に不要なエッチングが入り、形状不良が発生する場合がある。
【0061】
また、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の金属薄板1への密着性が悪くなることで、エッチング中に水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)が金属薄板1から剥がれ、剥がれた水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)が金属薄板1の他の部位に付着し、その部分のエッチングを阻害することが懸念される。
【0062】
次に、セパレータのガス流路および外形輪郭線をエッチングにより形成する。(図1(g)参照)
【0063】
エッチングの方法としては、金属薄板1に、70℃〜80℃下において、比重1.510〜1.515の塩化第二鉄を0.25〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、水洗する方法を用いることができる。
【0064】
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)を剥膜して、その後、セパレータの外形輪郭線を切欠として金属薄板1からセパレータの外形輪郭線以内の部分(ハーフエッチング板1´)を抜き出す。(図1(h)参照)
【0065】
剥膜の方法としては、液温70℃〜90℃、25〜35重量%のNaOH水溶液を0.05〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、水洗し、その後、乾燥する方法を用いることができる。
【0066】
次に、ハーフエッチング板1´表面に耐腐蝕層2を形成する。(図1(i)参照)
【0067】
耐腐蝕層2の形成方法としては、ハーフエッチング板1´をHO、CO、CO、Hおよび不活性ガスからなる混合ガス雰囲気中において450〜610℃の温度で加熱する方法を用いることができる。
混合ガス雰囲気中のH分圧とHO分圧の比を0.01〜1.00、かつ、CO分圧とCO分圧の比を0.01〜1.00とすることにより、セパレータから脱落して燃料電池の運転に支障を及ぼす懸念があるα−Feを発生させることなく、密着性の良好な耐腐蝕性を有するFeのみをガス流路表面に形成することができる。
【0068】
分圧とHO分圧の比が0.01未満であると、ハーフエッチング板1´表面で急激な酸化が起こり、α−Feが発生してしまう。
また、H分圧とHO分圧の比が1を超えると、ハーフエッチング板1´表面へのFeの生成速度が遅く、経済上の観点から好ましくない。
【0069】
また、CO分圧とCO分圧の比が0.01未満であると、ハーフエッチング板1´表面で急激な酸化が起こり、α−Feが発生してしまう。
また、CO分圧とCO分圧の比が1を超えると、ハーフエッチング板1´表面へのFeの生成速度が遅く、経済上の観点から好ましくない。
【0070】
不活性ガスとしては、N、Ar、或いは、NとArの複合ガスを用いることが、経済上の観点から好ましい。
【0071】
最後に、ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去し、その後、酸洗することにより、セパレータを得る。(図1(j)参照)
【0072】
除去する方法としては、表面にアルミナまたはシリコンカーバイド砥粒を装着したベルトサンダーを用いて研磨する方法を用いることができる。
また、酸洗する方法としては、55〜65℃に加温した硝酸、硫酸、または、硝酸と硫酸の混酸に浸漬し、その後、水洗し、その後、乾燥する方法を用いることができる。
【0073】
表面にアルミナまたはシリコンカーバイド砥粒を装着したベルトサンダーを用いて研磨することにより、ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を短時間で除去することができる。
研磨中に、ベルトサンダーに装着されていた砥粒が、ハーフエッチング板1´表面付近に埋没する。
セパレータ中に砥粒が存在すると、セパレータの電気抵抗が大きくなり、燃料電池の出力を低下させてしまう。
酸洗することにより、砥粒を除去する。
【0074】
本発明の燃料電池の製造方法の一例を、図2を基に説明する。
【0075】
まず、ガス拡散材101上に触媒層102を形成することにより、電極100を形成する。(図2(a)参照)
【0076】
ガス拡散材101の材料としては、カーボンペーパー、カーボンクロスを用いることができる。
【0077】
触媒層102の材料としては、プロトン伝導性物質であるスルホン基含有パーフルオロカーボン、ポリエーテルスルフォン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリイミド等、および、電子伝導性物質である二酸化珪素、炭素等、および、触媒である金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミニウムおよびイリジウムを用いることができる。
【0078】
触媒層102の製造方法としては、触媒を担持した電子伝導性物質とプロトン伝導性物質を、IPAやNPA等のアルコール、および、水に溶解して触媒インクを生成した後、触媒インクをガス拡散材101上に、バーコート、スプレー、または、スクリーン印刷する方法を用いることができる。
【0079】
電子伝導性物質の触媒の担持率は、30〜70重量%の範囲にすることが好ましい。
【0080】
次に、2組の電極100の触媒層102どうしを向かい合わせにして、電解質膜200を挟み込み熱圧着して、MEA300を形成する。(図2(c)参照)
【0081】
電解質膜200の材料としては、スルホン基含有パーフルオロカーボン、または、カルボキシル基含有パーフルオロカーボンを用いることができる。
【0082】
熱圧着に際する加熱温度としては、触媒層102および電解質膜200の樹脂の軟化温度やガラス転位温度を超える温度を用いることができる。
触媒層102および電解質膜200の樹脂がスルホン酸基含有パーフルオロカーボンの場合は、温度100℃〜300℃、圧力1MPa〜15MPa、時間5秒〜400秒の熱圧着条件を用いることができる。
【0083】
最後に、セパレータ3を介してMEA300を複数積層し、その後、ロッドで締結して燃料電池を得る。(図2(d)参照)
【0084】
ロッドで締結する際の圧力は、MEA300の厚さ方向に対して、面圧1〜2kg/cmとすることが好ましい。
【実施例1】
【0085】
<セパレータの作製>
まず、Niが36.0%(mass%)含有され、残部がFeおよび不可避の不純物よりなる厚さが0.13±0.004mmのFeNi基合金板を、70℃に加温したアルカリ脱脂液(ヘンケルジャパン社製、ペルシーLK)7%水溶液に2分間浸漬し、FeNi基合金板表面の防錆油およびその他異物を除去した。
【0086】
次に、FeNi基合金板を60℃に加温した0.1Nの希硫酸に1分間浸漬し、その後、水洗し、その後、乾燥してFeNi基合金板を整面した。
【0087】
次に、水100重量部、カゼイン12.6重量部、重クロム酸アンモニウム0.5重量部から成る、粘度500cpsのフォトレジストを調整した。
【0088】
次に、50℃下において、フォトレジストにFeNi基合金板を浸漬し、その後、乾燥して、厚さ7.6〜8.4μmのフォトレジスト膜を形成した。
【0089】
次に、長さ10.006cm×巾60μmの長方形パターンを4本組み合わせてなる正方矩形状の外形輪郭線を形成するのに用いるパターンと、このパターンの内側に形成された、長さ9.994cm×巾60μmの長方形が500μmピッチで平行に並んでいるガス流路を形成するのに用いるパターンが遮光部となっているパターン形成用マスク(図3参照)を、FeNi基合金板のガス流路および外形輪郭線パターンを形成する面上に存在するフォトレジスト膜に真空密着させ、FeNi基合金板の表裏面上のフォトレジスト膜から1mの距離に配置した出力3kWの超高圧水銀ランプを用いて、フォトレジスト膜に対して1600mJ/cmの紫外線を照射し、フォトレジスト膜を露光した。
【0090】
次に、液温35℃の純水を0.1MPaの圧力で90秒間スプレーして、現像を行った。
【0091】
次に、液温25℃、濃度32g/リットルの無水クロム酸溶液を0.05〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、150℃下で2分間乾燥し、その後、200℃下で1.5分間バーニングし、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)を硬膜処理した。
【0092】
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)から300mm離れた位置に配置したノズルより、液温75℃、比重1.512の塩化第二鉄を0.3MPaの圧力で噴射し、その後、水洗することにより、FeNi基合金板のエッチングを行った。
【0093】
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)に対して、液温80℃、30重量%のNaOH水溶液を0.2MPaの圧力で3分間スプレーすることにより、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)を剥膜し、その後、水洗し、その後、乾燥し、その後、セパレータの外形輪郭線を切欠としてFeNi基合金板からハーフエッチング板を抜き出した。
【0094】
次に、ハーフエッチング板を加熱炉内に収容し、炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.01、かつ、H:HO=0.01になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;1.200リットル/分、COガス;0.012リットル/分、Hガス;0.012リットル/分、および、Nガス;7.776リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流しつつ、炉内温度を600±5℃で管理し15分間ハーフエッチング板を加熱することにより、ハーフエッチング板表面に耐腐蝕層を形成した。
【0095】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークが存在していることが確認できた。
【0096】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0097】
次に、アルミナ砥粒を装着したベルトサンダーを用いてガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去し、その後、ガス流路の表面に存在する耐腐蝕層以外の部分を60℃に加温した0.1Nの希硫酸に1分間接触させることにより酸洗して、セパレータを得た。
【0098】
<燃料電池の作製>
まず、厚さ110μmのカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−030)を110mm×110mmのサイズにカットした。
【0099】
次に、カットしたカーボンペーパーに付着したゴミを、エアーガンを用いて除去した後、スクリーン印刷機にセットした。
【0100】
次に、カーボン(米国Cabot社製、Vulcan XC−72)に平均粒径が3nmの白金が50wt%担持された白金担持カーボン(田中貴金属社製)7.1wt%、スルホン基含有パーフルオロカーボン(デュポン社製)3.5wt%、溶媒(1−プロパノ−ル:2−プロパノール=1:1)89.4wt%を混合し、その後、周波数40kHzで15分間超音波撹拌することにより、触媒インクを調整した。
触媒インクの粘度は、25℃下において300mPaSであった。
【0101】
次に、調整した触媒インクを250メッシュ×線径0.05mmのスクリーン上に載せた。
次に、スキージ圧5kgf/cm、スキージ速度100mm/秒、スクリーンとカット済みのカーボンペーパーのクリアランスが2.5mmの条件にて、触媒インクをカット済みのカーボンペーパー上に押し出し(スクリーン印刷)、その後、窒素雰囲気中において120℃下で1時間の熱処理を施した後、30分間放冷し、電極(燃料極)および電極(空気極)を作製した。
【0102】
次に、電極(燃料極)および電極(空気極)の触媒層どうしを向かい合わせにして、厚さ50μmのスルホン基含有パーフルオロカーボンを挟んで、温度130℃、圧力3MPaの条件の基、200秒間熱圧着してMEAを作製した。
【0103】
最後に、セパレータを介して、MEAを3体積層し、その後、MEAの厚さ方向に対して、面圧1.5kg/cmにてロッドで締結して燃料電池を得た。
【0104】
次に、燃料電池の出力を、エレクトロケミカルインターフェース(ソーラトロン社製SI−1287)、周波数応答アナライザー(ソーラトロン社製SI−1260)、電子負荷器(スクリブナー社製890CL)が用いられている燃料電池測定システムGFT−SG1(東陽テクニカ社製)を用いて、以下のように測定した。
【0105】
まず、上記の燃料電池をグラファイト製の発電セルに装着後、40℃、相対湿度100%の条件にて10時間保管した。
この間、厚さ50μmのスルホン基含有パーフルオロカーボン膜を十分に湿潤させる目的で、燃料電池には1A/cmの直流電流を発電モードで流し続けた。
【0106】
次に、セル温度を80℃、アノード加湿器温度を80℃、カソード加湿器温度を80℃、配管温度を120℃、アノードの改質ガス(燃料ガス)(H:CO:HO=72:18:10)流量を0.3リットル/分、カソードの酸素ガス流量を1.0リットル/分の条件において1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0107】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0108】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例2】
【0109】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.50、かつ、H:HO=0.01になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.808リットル/分、COガス;0.404リットル/分、Hガス;0.012リットル/分、および、Nガス;7.776リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0110】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0111】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0112】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0113】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0114】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例3】
【0115】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=1.00、かつ、H:HO=0.01になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.606リットル/分、COガス;0.606リットル/分、Hガス;0.012リットル/分、および、Nガス;7.776リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0116】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0117】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0118】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0119】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0120】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例4】
【0121】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.01、かつ、H:HO=0.50になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;1.200リットル/分、COガス;0.012リットル/分、Hガス;0.600リットル/分、および、Nガス;7.188リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0122】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0123】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0124】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0125】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0126】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例5】
【0127】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.50、かつ、H:HO=0.50になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.808リットル/分、COガス;0.404リットル/分、Hガス;0.600リットル/分、および、Nガス;7.188リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0128】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0129】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0130】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0131】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0132】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例6】
【0133】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=1.00、かつ、H:HO=0.50になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.606リットル/分、COガス;0.606リットル/分、Hガス;0.600リットル/分、および、Nガス;7.188リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0134】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0135】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0136】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0137】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0138】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例7】
【0139】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.01、かつ、H:HO=1.00になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;1.200リットル/分、COガス;0.012リットル/分、Hガス;1.200リットル/分、および、Nガス;6.588リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0140】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0141】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0142】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0143】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0144】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例8】
【0145】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.50、かつ、H:HO=1.00になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.808リットル/分、COガス;0.404リットル/分、Hガス;1.200リットル/分、および、Nガス;6.588リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0146】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0147】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0148】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0149】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0150】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【実施例9】
【0151】
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=1.00、かつ、H:HO=1.00になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.606リットル/分、COガス;0.606リットル/分、Hガス;1.200リットル/分、および、Nガス;6.588リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0152】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0153】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0154】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.91W/cmであり、良好な出力が得られたことを確認した。
【0155】
次に、X線回折法を用いて、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが無く、Feの(311)面(2θ=35.421°)のピーク、Feの(440)面(2θ=62.512°)のピーク、および、Feの(220)面(2θ=30.093°)のピークのみが存在していることが確認できた。
【0156】
次に、燃料電池を1000時間運転した後の耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着は見られなかった。
耐腐蝕層が脱落しにくいことが確認された。
【0157】
<比較例1>
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.001、かつ、H:HO=0.01になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;1.211リットル/分、COガス;0.001リットル/分、Hガス;0.012リットル/分、および、Nガス;7.776リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0158】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが存在していることが確認できた。
【0159】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着が見られた。
【0160】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.79W/cmであった。
【0161】
<比較例2>
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.001、かつ、H:HO=1.00になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;1.211リットル/分、COガス;0.001リットル/分、Hガス;1.200リットル/分、および、Nガス;6.588リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0162】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが存在していることが確認できた。
【0163】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着が見られた。
【0164】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.80W/cmであった。
【0165】
<比較例3>
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=0.01、かつ、H:HO=0.001になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;1.200リットル/分、COガス;0.012リットル/分、Hガス;0.001リットル/分、および、Nガス;7.787リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0166】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが存在していることが確認できた。
【0167】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着が見られた。
【0168】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.79W/cmであった。
【0169】
<比較例4>
炉内雰囲気の組成比がCO:CO=1.00、かつ、H:HO=0.001になるように、炉内に、ガス流量をCOガス;0.606リットル/分、COガス;0.606リットル/分、Hガス;0.001リットル/分、および、Nガス;7.787リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガスを流した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。
【0170】
次に、X線回折法を用いて、耐腐蝕層の構造解析を行った。
耐腐蝕層には、α−Feの(104)面(2θ=33.151°)のピークが存在していることが確認できた。
【0171】
次に、耐腐蝕層に粘着テープを圧着し、その後、耐腐蝕層から粘着テープを剥離した。
耐腐蝕層の粘着テープへの付着が見られた。
【0172】
次に、実施例1と同様に燃料電池を作製し、1000時間発電させた後の燃料電池の出力を測定した。
燃料電池の出力は0.79W/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の、セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた燃料電池は、電気自動車用電源、家庭用発電システム、携帯電話などのモバイル機器用電源等に用いる固体高分子型燃料電池、アルカリ型燃料電池、硫酸型燃料電池、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明のセパレータの製造工程を説明するための工程フロー図である。
【図2】本発明の燃料電池の製造工程を説明するための工程フロー図である。
【図3】本発明に用いる、パターン形成用マスクを説明するための図である。
【図4】本発明のセパレータに用いるFe−Ni基合金のNi含有率と、平均熱膨張係数(0℃〜200℃)の関係を説明するための図である。
【図5】本発明の燃料電池の触媒層における電子伝導性物質の触媒担持率と、燃料電池の出力の関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0175】
1・・・・・・金属薄板
1´・・・・・ハーフエッチング板
2、2´・・・耐腐蝕層
3・・・・・・セパレータ
10・・・・・フォトレジスト膜
10´・・・・水性溶媒不溶化フォトレジスト層
20・・・・・パターン形成用マスク
21・・・・・セパレータのガス流路および外形輪郭線形成用の遮光部
100・・・・電極
101・・・・ガス拡散材
102・・・・触媒層
200・・・・電解質膜
300・・・・電解質膜電極接合体(MEA)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路が設けられた、Niが35.5〜36.5%(mass%)含有され残部がFeおよび不可避の不純物よりなるFe−Ni基合金からなる燃料電池用のセパレータであって、
前記ガス流路の表面にFeからなる耐腐蝕層が設けられていることを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記Fe−Ni基合金をHO、CO、CO、Hおよび不活性ガスからなる混合ガス雰囲気中において450〜610℃の温度で加熱することにより、前記Fe−Ni基合金の表面に前記耐腐蝕層を形成する耐腐蝕層形成工程と、
前記ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去する耐腐蝕層除去工程を有する請求項1に記載のセパレータの製造方法であって、
前記耐腐蝕層形成工程で用いる前記混合ガス雰囲気中の、H分圧とHO分圧の比が0.01〜1.00、かつ、CO分圧とCO分圧の比が0.01〜1.00であることを特徴とするセパレータの製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスが、N、Ar、或いは、NとArの複合ガスであることを特徴とする請求項2に記載のセパレータの製造方法。
【請求項4】
前記耐腐蝕層除去工程が、表面に砥粒を有するベルトサンダーを用いて前記ガス流路の表面以外に存在する耐腐蝕層を除去する研磨工程と、耐腐蝕層が除去されたFe−Ni基合金表面を、酸を用いて酸洗する酸洗工程を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のセパレータの製造方法。
【請求項5】
前記砥粒が、アルミナまたはシリコンカーバイドであることを特徴とする請求項4に記載のセパレータの製造方法。
【請求項6】
前記酸が、硝酸、硫酸、または、硝酸と硫酸の混酸であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のセパレータの製造方法。
【請求項7】
電解質膜の表裏面に触媒層が設けられ、該触媒層の前記電解質膜と反対側の面にガス拡散材が設けられ、該ガス拡散材の前記触媒層と反対側の面に請求項1に記載のセパレータが設けられたことを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
前記電解質膜が、スルホン基含有パーフルオロカーボン、または、カルボキシル基含有パーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記ガス拡散材が、導電性多孔性基材であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記導電性多孔性基材が、カーボンペーパー、または、カーボンクロスであることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記触媒層が、触媒を担持した電子伝導性物質、および、プロトン伝導性物質からなることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記電子伝導性物質が、二酸化珪素、または、炭素であることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記プロトン伝導性物質が、スルホン酸基含有パーフルオロカーボン、ポリエーテルスルフォン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、または、スルホン化ポリイミドであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記触媒が、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrから選ばれた1種または2種以上の金属からなることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記触媒の平均粒径(体積平均粒径(Dv))が1nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記電子伝導性物質の前記触媒の担持率が30〜70重量%であることを特徴とする請求項11乃至請求項15のいずれか1項に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242257(P2007−242257A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58970(P2006−58970)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】