説明

セフジニル経口懸濁液

本発明は、セフジニル経口懸濁液用の新規な粉末を開示する。その懸濁液の製造方法およびその懸濁液を用いる治療方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セフジニルの新規な経口懸濁液を開示する。その懸濁液の製造方法およびその懸濁液を用いる治療方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
経口懸濁液用のオムニセフ(登録商標)は、セファロスポリンファミリーに属するスペクトラムが広い抗生物質である有効成分セフジニルを含む。化学的には、セフジニルは7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)である。セフジニルは、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、インフルエンザ菌,カタラリス菌、大腸菌、肺炎桿菌およびミラビリス変形菌などの広いスペクトラムの細菌に対して活性である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗生物質懸濁液剤を用いる小児科人口が大きいことを考慮すると、服用遵守は非常に重要な問題である。小児科患者での推奨治療用量は、代表的には患者の体重に基づくものである。1999年の試験で、患者年齢が低いほど、経口抗生物質懸濁液服用における遵守の低さと関連していることが明らかになった(Clinical Therapeutics, 1999, 21, 1193-1201)。最も低年齢の小児における服用遵守率の低さに寄与する因子で挙げられているものの一つが、懸濁液投与の技術的な困難さがあった(例えば、こぼれ)。急性中耳炎の研究で、53%の小児が処方された医薬の半量未満を服用した(J. Pediatr, 1975; 87; 137-141)。
【0004】
経口懸濁液用オムニセフ(登録商標)には、急性細菌性中耳炎および咽頭炎/扁桃炎の小児科患者治療が適応である。経口懸濁液用オムニセフ(登録商標)は、4重量%(実際は4.2%)セフジニル粉末として薬局に送られる。水で再生して、オムニセフ(登録商標)は経口投与され、現在では125mg/5mL懸濁液として製剤される。比較的低年齢の小児科では、オムニセフ(登録商標)懸濁液の代表的な用量は、懸濁液5mLずつ2つ必要とする。2つの連続5mLずつを投与すると、こぼれによってかなりの材料が失われ得る。さらに、高濃度懸濁液は、物理的安定性の問題を生じる可能性がある。
【0005】
単一量を投与可能な高濃度で安定な製剤は有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
主たる実施形態において本発明は、4.2重量%を超えるセフジニルを含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
主たる実施形態において本発明は、4.2重量%を超えるセフジニルを含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【0008】
別の実施形態において本発明は、約6%〜約10重量%のセフジニルを含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【0009】
別の実施形態において本発明は、少なくとも8.4重量%のセフジニルを含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【0010】
別の実施形態において本発明は、
(a)少なくとも8.4重量%のセフジニル;
(b)希釈剤;および
(c)緩衝剤
を含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【0011】
別の実施形態において本発明は、
(a)約8.4重量%のセフジニル;
(b)約89.2重量%の希釈剤;
(c)約0.26重量%の緩衝剤;
(d)約0.16重量%の保存剤;
(e)約0.33重量%の増粘剤;
(f)約1.31重量%の香味剤;
(g)約0.07%の流動促進剤;および
(h)約0.35%の潤滑剤
を含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【0012】
別の実施形態において本発明は、
(a)約8.36重量%のセフジニル;
(b)約89.16重量%のショ糖;
(c)約0.16重量%のクエン酸;
(d)約0.10重量%のクエン酸ナトリウム;
(e)約0.16重量%の安息香酸ナトリウム;
(f)約0.16重量%のキサンタンガム;
(g)約0.16重量%のグアーガム;
(h)約1.31重量%の香味剤;
(i)約0.06%のコロイド状二酸化ケイ素;および
(j)約0.35%のステアリン酸マグネシウム
を含むセフジニルの経口懸濁液用粉末を提供する。
【0013】
本発明は、セフジニルの経口懸濁液で急性細菌性中耳炎、咽頭炎および扁桃炎を治療する方法において、前記懸濁液を4.2重量%を超えるセフジニルを含む粉末を再生することで調製する方法を提示するものでもある。
【0014】
本発明の別の実施形態は、セフジニルの経口懸濁液で急性細菌性中耳炎、咽頭炎および扁桃炎を治療する方法において、前記懸濁液を少なくとも8.4%のセフジニルを含む粉末を再生することで調製する方法を提示するものでもある。
【0015】
本明細書で引用の全ての刊行物、発行特許および特許出願は、それらの全内容が参照によって本明細書に組み込まれるものとする。不一致がある場合、定義を含めた本発明の開示内容の方が優先する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「一つの」、「1個の」および「その」という単数形は、文脈が他の形態を明瞭に示していない限り、複数形を包含するものである。
【0017】
本発明書で使用される場合に、下記の用語はここに示した意味を有する。
【0018】
本明細書で使用される場合に「緩衝剤」という用語は、組成物の最初の酸性または塩基性を維持することができる薬剤または薬剤混合物を指す。代表的な緩衝剤には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびそれらの混合物などがあるが、それらに限定されるものではない。本発明の好ましい緩衝剤は、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物である。
【0019】
本明細書で使用される場合の「希釈剤」という用語は、製剤に加えた時に、その製剤を薄めたり、濃度を低下させ、製造性を高めることもできる薬剤または薬剤の混合物を指す。本発明の希釈剤は、他の機能を果たすこともできる。例えば、希釈剤は甘味剤として働くこともできる。代表的な希釈剤には、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、果糖、マリトール(malitol)、糖カリウム、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウムおよびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の好ましい希釈剤はショ糖である。
【0020】
本明細書で使用される「香味剤」という用語は、混合物に香味を加える薬剤または薬剤混合物を指す。代表的な香味剤には、人工イチゴフレーバーおよび人工クリームフレーバーなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書で使用される「流動促進剤」という用語は、製造工程における粉末の流動を促進する薬剤または薬剤混合物を指す。代表的な流動促進剤には、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、トリケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、第三リン酸カルシウムおよびこれらの混合物などがあるが、それらに限定されるものではない。本発明の好ましい流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素である。
【0022】
本明細書で使用される「潤滑剤」という用語は、摩擦を低下または防止する薬剤または薬剤混合物を指す。代表的な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ラウリルステアリン酸ナトリウム、硬化植物油、コーンスターチ、コロイド状二酸化ケイ素、タルクおよびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の好ましい潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0023】
本明細書で使用される「保存剤」という用語は、組成物を抗細菌(例:酵母、カビ、細菌)活性に対して保護するのに用いられる薬剤または薬剤混合物を指す。代表的な保存剤には、安息香酸ナトリウム、安息香酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、チオメロソール(thiomerosol)、プロピオン酸ナトリウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、イミド尿素、フェノール、フェニル第二水銀塩、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコールおよびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の好ましい保存剤は、安息香酸ナトリウムである。
【0024】
本明細書で使用される「増粘剤」という用語は、液体の濃さを高めることで、それの流動を遅くする薬剤または薬剤混合物を指す。例えば、懸濁液において、増粘剤は、有効成分を懸濁状態に維持することで正確な投薬が可能となる。代表的な増粘剤には、キサンタンガム、グアーガム、アカシア、ポビドン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ゼラチン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリデキストロース、カラギーナン、メチルセルロース、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、果糖、マリトール、糖、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト、ポリビニルアルコール、セテアリルアルコール、コロイド状二酸化ケイ素およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の好ましい増粘剤は、キサンタンガムとグアーガムの混合物である。
【0025】
セフジニルは、1990年6月19日発行の米国特許第4935507号および1985年12月17日発行の米国特許第4559334号(これらはいずれも、参照によって全内容が本明細書に組み込まれる)に記載の手順に従って製造することができる。
【0026】
実施例1は、8%セフジニル経口粉末製剤の製造で用いられるパーセント量を示す。前述のように、懸濁液用に現在市販されているオムニセフ(登録商標)は、4重量%(実際は4.2%)セフジニル粉末である。8%製剤が、経口懸濁液薬剤用のオムニセフ(登録商標)と生物学的に等価であった。
【実施例1】
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2および3は、6%および10%セフジニル経口粉末製剤の製造で用いることができるパーセント量を示すものである。
【実施例2】
【0029】
【表2】

【実施例3】
【0030】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.2重量%を超えるセフジニルを含む経口懸濁液用粉末。
【請求項2】
約6%〜約10重量%のセフジニルを含む経口懸濁液用粉末。
【請求項3】
少なくとも8.4重量%のセフジニルを含む経口懸濁液用粉末。
【請求項4】
(a)少なくとも8.4重量%のセフジニル;
(b)希釈剤;および
(c)緩衝剤
を含む経口懸濁液用粉末。
【請求項5】
前記希釈剤が、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、果糖、マリトール、糖カリウム、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項4に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項6】
前記希釈剤がショ糖である請求項5に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項7】
前記緩衝剤が、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項4に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項8】
前記緩衝剤が、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物である請求項7に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項9】
(a)約8.4重量%のセフジニル;
(b)約89.2重量%の希釈剤;
(c)約0.26重量%の緩衝剤;
(d)約0.16重量%の保存剤;
(e)約0.33重量%の増粘剤;
(f)約1.31重量%の香味剤;
(g)約0.07%の流動促進剤;および
(h)約0.35%の潤滑剤
を含む経口懸濁液用粉末。
【請求項10】
前記希釈剤が、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、果糖、マリトール、糖カリウム、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項11】
前記希釈剤がショ糖である請求項10に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項12】
前記緩衝剤が、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項13】
前記緩衝剤が、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物である請求項12に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項14】
前記保存剤が、安息香酸ナトリウム、安息香酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、チオメロソール、プロピオン酸ナトリウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、イミド尿素、フェノール、フェニル第二水銀塩、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項15】
前記保存剤が、安息香酸ナトリウムである請求項14に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項16】
前記増粘剤が、キサンタンガム、グアーガム、アカシア、ポビドン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ゼラチン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリデキストロース、カラギーナン、メチルセルロース、ショ糖、ソルビトール、キシリトール、ブドウ糖、果糖、マリトール、糖、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト、ポリビニルアルコール、セテアリルアルコール、コロイド状二酸化ケイ素およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項17】
前記増粘剤が、キサンタンガムとグアーガムの混合物である請求項16に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項18】
前記流動促進剤が、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ヒュームドシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、トリケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、第三リン酸カルシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項19】
前記増粘剤が、コロイド状二酸化ケイ素である請求項18に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項20】
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ラウリルステアリン酸ナトリウム、硬化植物油、コーンスターチ、コロイド状二酸化ケイ素、タルクおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項21】
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムである請求項20に記載の経口懸濁液用粉末。
【請求項22】
(a)約8.36重量%のセフジニル;
(b)約89.16重量%のショ糖;
(c)約0.16重量%のクエン酸;
(d)約0.10重量%のクエン酸ナトリウム;
(e)約0.16重量%の安息香酸ナトリウム;
(f)約0.16重量%のキサンタンガム;
(g)約0.16重量%のグアーガム;
(h)約1.31重量%の香味剤;
(i)約0.06%のコロイド状二酸化ケイ素;および
(j)約0.35%のステアリン酸マグネシウム
を含む経口懸濁液用粉末。
【請求項23】
セフジニルの経口懸濁液で急性細菌性中耳炎、咽頭炎および扁桃炎を治療する方法において、前記懸濁液を4.2重量%を超えるセフジニルを含む粉末を再生することで調製する方法。
【請求項24】
セフジニルの経口懸濁液で急性細菌性中耳炎、咽頭炎および扁桃炎を治療する方法において、前記懸濁液を少なくとも8.4%のセフジニルを含む粉末を再生することで調製する方法。

【公表番号】特表2007−513946(P2007−513946A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543839(P2006−543839)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038747
【国際公開番号】WO2005/060936
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】