説明

セメント装飾品の製造方法

【課題】子供から大人まで多くの人が簡単にセメント装飾品を作ることができるセメント装飾品の製造方法を提供する。
【解決手段】セメント5を封入したセメント袋3内に水を封入した水袋4を装入した成形材料と、成形用の型枠1とを使用してセメント装飾品を作るセメント装飾品の製造方法である。任意の形状に型枠1を形成し、セメント袋3内の水袋4を破ってセメント3袋内で水とセメントを混合する。水とセメントを混合したゲル状セメントをセメント袋3から型枠1内に流し込み、ゲル状セメントが半固化した状態で、型枠1を外し、その半固化セメントの周囲のバリを削り取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント装飾品の製造方法に関し、特に、予め用意されたキット材料からセメント装飾品を簡単に作ることができるセメント装飾品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般の人々が趣味として、陶磁器、ガラス製品、貴金属製品などの装飾品を作ることが流行しており、各地で開催されるカルチャー教室などにおいて、陶磁器、ガラス製品、貴金属製品などの各種の装飾品を作る講座が開催され、特別な技術を持たない一般の人々が、自分のデザインした装飾品を自ら楽しみながら製作することが行なわれている。このような装飾品を製作する技術として、例えば、貴金属の粘土状組成物から貴金属製品を製造する方法が、下記特許文献1などで提案されている。
【特許文献1】特開2003−299515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような陶磁器、ガラス製品、貴金属製品を作る際には、殆どの場合、成形後にそれを高い温度で焼成する工程、或は成形中にガスバーナーなどにより高温に加熱する工程など、極めて注意を要する多くの工程を必要とし、焼成のための電気炉などの高価な設備を必要としていた。このため、子供から大人まで多くの人が気軽に装飾品を作ることが難しく、また装飾品の製作のための高価な設備を個人で揃えることは難しい、という課題があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、子供から大人まで多くの人が簡単にセメント装飾品を作ることができるセメント装飾品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るセメント装飾品の製造方法は、セメントを封入したセメント袋内に水を封入した水袋を装入した成形材料と、成形用の型枠とを使用してセメント装飾品を作るセメント装飾品の製造方法であって、任意の形状に型枠を形成する工程と、セメント袋内の水袋を破ってセメント袋内で水とセメントを混合する工程と、水とセメントを混合したゲル状セメントを型枠内に流し込む工程と、ゲル状セメントが半固化した状態で、型枠を外し、半固化セメントの周囲のバリを削り取る工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
ここで、上記製造方法においては、型枠内に流し込んだゲル状セメントの上に装飾物を置いて付着させることができる。また、上記型枠は所定の形状に裁断した発泡ポリウレタン片を組み立て接着して作ることができる。
【発明の効果】
【0007】
このようなセメント装飾品の製造方法で使用される材料は、キット材料として顧客に販売される。キット材料には、セメントを封入したセメント袋内に水を封入した水袋を装入した成形材料と、成形用の型枠材料とが含まれている。なお、セメントは単独で使用し、或はセメントに砂などの骨材を混合して使用することもできる。
【0008】
顧客は、先ず、自分のデザインした形状に成形用の型枠を、例えば所定の形状に裁断した発泡ポリウレタン片などを使用して、製作する。発泡ポリウレタンは軽量で任意の形状に、カッターなどで容易に裁断することができ、使用者は希望する任意の形状に、型枠を容易に作ることができる。
【0009】
次に、成形材料であるセメント袋内の水袋を破り、セメント袋内で水とセメントを混合する。セメント袋は密閉され、内側にセメントと水(当初は水袋に入っている)を封入しているから、水袋を破ってセメント袋を良く振りそして揉めば、手を汚したり周囲にセメントを飛散させずに、セメントと水を良好に混合してゲル状セメントを作ることができる。
【0010】
次に、セメントと水を混合したゲル状セメントを型枠内に流し込み、製作者の好みに応じて、ゲル状セメントの上に、ガラス片、金属片、ビーズ、或は貝などの装飾物を載置して付着させる。その状態で、所定時間放置し、ゲル状セメントが半固化した状態で、型枠を外してセメント装飾品を取り出す。その際にセメント装飾品の周囲に生じていたバリなどは、ペーパーを擦り付けて除去する。その後、そのまま放置することにより、セメントが完全に固化して装飾品が完成する。
【0011】
このように、セメント装飾品は、焼成や加熱工程を必要とせずに、ゲル状セメントを型枠に流し込むだけで、簡単に作ることができ、ゲル状セメントは、セメント袋内の水袋を破ってセメント袋内で水とセメントを混合して、容易に作ることができる。よって、高価な設備を必要とせずに、子供から大人まで多くの人が、気軽に且つ容易にセメント装飾品を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本セメント装飾品の製造方法の流れ図を示し、図2はその方法に使用する型枠1の斜視図を、図3はその方法に使用するセメント袋の正面図と断面図を示している。本セメント装飾品の製造方法を実施する場合、図1のステップS1に示すように、先ず型枠1を作る。
【0013】
型枠1は、製作しようとするセメント装飾品の形状に合わせて形成される。例えば、矩形のプレート状にセメント装飾品を作る場合、図2に示すように、底の浅い矩形のトレイ状に形枠1が形成される。この型枠1は、軽量で吸湿性がなく、ある程度の形状保持性を有した材料、例えば発泡ポリウレタン片2から製作される。
【0014】
発泡ポリウレタンは所定の厚さの板状体が広く販売され、それらは軽量で、ナイフなどで容易に裁断することができるから、それらの発泡ポリウレタン板をナイフなどで適当な大きさに裁断して、型枠1の底板、側板を発泡ポリウレタン片2として容易に作ることができる。裁断した発泡ポリウレタン片2は、両面粘着テープなどを使用して相互に接着し、図2に示すような型枠1が製作される。
【0015】
発泡ポリウレタン片2は上記のように、ナイフなどで容易に任意の形状に裁断することができると共に、両面粘着テープを使用して、簡単に接着することができる。したがって、型枠1は、製作者が希望した形状に比較的容易に形成することができ、熟練した技術を持たなくとも、子供から大人まで誰でも、希望の形状の型枠1を簡単に製作することができる。
【0016】
次に、ステップS2で、セメント袋3を上下に振り、或は袋を手に持って揉むなどを繰り返すことにより、セメントと水を混合してゲル状セメントを作る。図3のように、セメント5は所定の量がセメント袋3内に封入され、水6は水袋4内に所定の量が封入され、水袋4はセメント袋3の中に密封された状態で配設されている。水とセメントの配合量は、混合した際に適度な粘度のゲル状セメントができるように予め設定されている。
【0017】
なお、セメント5は通常、単独で使用するが、セメントに砂などの骨材を混合して使用することもできる。また、セメント5には各種の着色材を混合することができ、白色或は灰色のセメント5の他、各種の色のセメントを使用することができる。
【0018】
一方、セメント袋3内の水袋4は、セメント袋3の外側から適度な押圧力でそれを押圧すると、水袋の接着部または袋素材が破壊され、水6がセメント袋3内に流出し、一方、セメント袋3は破壊されず、内部のセメントと水を保持するように形成されている。すなわち、セメント袋3の素材の強度及び接着部の強度は、水袋4の素材の強度及び接着部の強度より大きく形成され、通常の人がセメント袋3を外側から強く押えた場合、セメント袋3は破れず、水袋4のみが破れるように形成されている。
【0019】
したがって、製作者は、袋を強く押して水袋4を破壊した状態で、セメント袋3を上下に振り、或は袋を手に持って揉むなどを繰り返すことにより、セメントと水を混合してゲル状セメントが作られる。セメントと水はセメント袋3内で混合されるから、セメントや水を混合中に飛散させる不具合は生じない。また、セメントと水の混合比も、予め設定した通りに混合することができる。
【0020】
次に、ステップ3で、ゲル状セメントを図4のように型枠1内に流し込む。ゲル状セメントは、上記のように、セメント袋3内で作られるから、セメント袋3の端部を切除して一部を開口させ、その開口部から搾り出すようにすれば、ゲル状セメントは型枠1内に用意に流し込むことができる。型枠1内に流し込んだゲル状セメントは、型枠1を軽く叩くなどして振動を与えることで、型枠内に密に充填することができる。
【0021】
次に、ステップ4で、図5に示すように、型枠1内のゲル状セメント7の上に、ビーズ、ガラス片、針金などを曲げて作った文字片などの装飾物8,9を、載置する。このとき、装飾物8,9はその略下半分がゲル状セメント7内に埋まり、その略上半分が上面に露出するように載置する。このような装飾物としては、貝殻などの自然物を利用することもできる。
【0022】
なお、装飾品の一部に吊下げ用の孔或はフックを付ける場合、ゲル状セメント7の上部にストローを差し込んでおいて、約30分後に半固化したときそれを外し、或はフックを差し込むように取り付けておく。
【0023】
この状態で、ゲル状セメントを約1時間放置すると、ゲル状セメント7が半固化し、その状態で、型枠1を外す。型枠1は発泡ポリウレタン片2を接着して形成した場合、容易に分解して成形品から外すことができる。
【0024】
そして、ステップ6で、セメント装飾品10の縁部のバリを除去する。型枠を外したとき、ゲル状セメント7は半固化状態であり、完全に固化していない状態である。また、型枠を外したゲル状セメント7つまりセメント装飾品10の縁部にバリが発生し、或は気泡による凹凸ができているので、ペーパーなどで縁部を擦れば、容易にバリや凹凸などを除去することができる。そして、その半固化状態のセメント装飾品10を2〜3日放置すれば、完全に乾燥状態となって、図6のように、セメント装飾品10が完成する。
【0025】
このように、上記セメント装飾品10は、焼成や加熱工程を必要とせずに、ゲル状セメント7を型枠1に流し込むだけで、簡単に作ることができ、ゲル状セメント7は、セメント袋3内の水袋4を破ってセメント袋3内で水とセメントを混合して、容易に作ることができる。したがって、電気炉、ガスバーナーなどの高価な設備を必要とせずに、また、危険を伴う加熱工程などを必要としないから、子供から大人まで多くの人が、気軽に且つ容易にセメント装飾品を作ることができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、プレート状のセメント装飾品を製作したが、矩形の箱状にセメント装飾品を作り、ペン立て、植木鉢、香材立てなどとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示すセメント装飾品の製造方法の流れ図である。
【図2】型枠1の斜視図である。
【図3】(a)はセメント袋の正面図、(b)はセメント袋の断面図である。
【図4】セメント袋からゲル状セメントを型枠に流し込む際の斜視図である。
【図5】型枠内で成形状態にある装飾品の斜視図である。
【図6】完成したセメント装飾品の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1−型枠
2−発泡ポリウレタン
3−セメント袋
4−水袋
5−セメント
6−水
7−ゲル状セメント
8、9−装飾物
10−セメント装飾品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを封入したセメント袋内に水を封入した水袋を装入した成形材料と、成形用の型枠とを使用してセメント装飾品を作るセメント装飾品の製造方法であって、
任意の形状に型枠を形成する工程と、
該セメント袋内の該水袋を破って該セメント袋内で水とセメントを混合する工程と、
該水とセメントを混合したゲル状セメントを該型枠内に流し込む工程と、
該ゲル状セメントが半固化した状態で、該型枠を外し、半固化セメントの周囲のバリを削り取る工程と、
を含むことを特徴とするセメント装飾品の製造方法。
【請求項2】
前記型枠内に流し込んだ前記ゲル状セメントの上に装飾物を置いて付着させることを特徴とする請求項1記載のセメント装飾品の製造方法。
【請求項3】
前記型枠は所定の形状に裁断した発泡ポリウレタン片を組み立て接着して作ることを特徴とする請求項1記載のセメント装飾品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−76204(P2006−76204A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264192(P2004−264192)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504345894)
【Fターム(参考)】