説明

セメント製造装置およびセメント製造方法

【課題】セメント製造工程において、排ガスからダストを捕集する集塵機にかかる負荷を軽減するとともに、粗粒の回収効率を向上させる。
【解決手段】セメント製造装置は、セメント焼成設備10と、電気集塵機22と、再供給手段23と、分級手段21とを有する。電気集塵機22は、セメント焼成設備10から排出される排ガスに含まれるダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集する。再供給手段23は、電気集塵機22により捕集された集塵粗粒をセメント焼成設備10に再供給する。分級手段21は、セメント焼成設備10と電気集塵機22との間に設置され、電気集塵機22での捕集に先立って排ガスに含まれるダストの粗粒を捕集し、捕集した粗粒を再供給手段23に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造装置、およびセメント製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セメント工場では、多種多様な廃棄物をセメント焼成用燃料やセメント原料の一部として使用するようになってきている。それら廃棄物には水銀等の揮発性の高い重金属が含まれることがあり、そのような揮発性の高い有害物質はセメント焼成設備で揮発して排ガス中に含有されることがある。セメント製造工程内の有害物質は、系外へ排出されるまでの工程で、排ガスに含まれるセメント原料や循環ダストに吸着し、工程内を循環しており、セメント原料や循環ダストに吸着しなかった有害物質は排ガスとともに系外(大気中)へ放出される。
【0003】
そこで、系外へ放出される有害物質の量を低減するため、例えば特許文献1には、セメント焼成設備から排出された排ガス中に含まれるダストを集塵機で捕集し、捕集したダストを、そのダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱することによって、有害物質である重金属をガス化して除去することが開示されている。また、特許文献2には、セメント焼成設備から排出された排ガスを、例えば集塵機によって重金属の含有量の高いダストと重金属の含有量の低いダストに分離して回収した後、得られた重金属の含有量の低いダストをセメント焼成設備に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−355531号公報
【特許文献2】特開2006−45006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示された技術によれば、セメント焼成設備からの排ガスは集塵機に直接供給される。そのため、集塵機は様々なダストを含む排ガスを処理しなければならず、結果的に、集塵機への負荷が高くなりダストの捕集効率が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、セメント製造工程において、排ガスからダストを捕集する集塵機にかかる負荷を軽減するとともに、粗粒の回収効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセメント製造装置は、セメント焼成設備と、前記セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれるセメント原料および循環ダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集する電気集塵機と、前記電気集塵機により捕集された集塵粗粒を前記セメント焼成設備に再供給する再供給手段と、を有するセメント製造装置において、
前記セメント焼成設備と前記電気集塵機との間に設置され、前記電気集塵機での捕集に先立って前記排ガスに含まれるダストの粗粒を捕集し、捕集した粗粒を前記再供給手段に導入する分級手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のセメント製造方法は、セメント焼成設備でセメント原料を焼成し、電気集塵機によって、前記セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれるダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集し、捕集した前記集塵粗粒を前記セメント焼成設備に再供給するセメント製造方法において、
前記ダストを前記電気集塵機によって捕集するのに先立って、前記電気集塵機とは別の分級手段で前記ダストの粗粒を捕集することと、
前記分級手段によって捕集された前記粗粒を前記セメント焼成設備に再供給することと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気集塵機でダストを捕集する前に、電気集塵機とは別の分級手段で粗粒を捕集するように構成することにより、粗粒の回収効率が向上するとともに、電気集塵機にかかる負荷を軽減することができる。また、分級手段により捕集された粗粒を再度セメント原料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるセメント製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるセメント製造装置が示されている。なお、図1において、固体とガスの流れを矢印で示しているが、固体の流れは実線矢印で示し、ガスの流れは破線矢印で示している。また、有害物質を多く含んでいる可能性の高い微粒成分の流れは一点鎖線で示している。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のセメント製造装置は、セメント焼成設備10および竪型ミル14を有している。石灰石、珪石、粘土、鉄源および廃棄物等からなるセメント原料は、所定の諸率に配合調合された後、コンベア15で搬送されて竪型ミル14に供給され、竪型ミル14では、セメント焼成設備10から排出される排ガスを用いてセメント原料が乾燥・粉砕され、粉砕されたセメント原料とともに排ガスが排出される。
【0013】
竪型ミル14は、セパレータ14aと、セパレータ14aの回転数を制御する、例えば制御回路として与えることができるセパレータ回転数制御手段14bと、回転するテーブル14cと、テーブル14c上に微小な隙間を介して配置されたローラ14d等と、を有している。セメント原料は、テーブル14c上に供給され、テーブル14cの回転による遠心力でテーブル14cの外周部へ移動し、テーブル14cとローラ14dとの間で圧縮およびせん断されることによって粉砕される。粉砕されたセメント原料は、セメント焼成設備10から導入された排ガスとともにセパレータ14aに送り込まれ、セパレータ14aは、回転により生じる気流を利用してセメント原料を所定の粒度に分級し、竪型ミル14から排出されるセメント原料の粒度は、セパレータ回転数制御手段14bによってセパレータ14aの回転数を制御することによって調整することができる。一般に、セパレータ14aの回転数を高くするほど、排出されるセメント原料は、粒径の小さいものの割合が多くなる。
【0014】
セメント焼成設備10から排出された排ガスは、セメント製造装置を循環する循環ダスト(以下、単にダストともいう)を含んでいる。本発明で取り扱う排ガスに含まれるダストは、セメント原料を含んでいるが、本発明における排ガス処理では、セメント原料もダストとして他の粒子と特に区別することなく処理する。よって、本明細書では、排ガスの処理に関して述べるとき、セメント原料と他の粒子とを区別せず単にダストということもある。
【0015】
前述のように、セメント原料には廃棄物が含まれているが、廃棄物には、水銀、タリウム、セレン、カドミウム、亜鉛、鉛およびヒ素など揮発性の高い重金属類等が含まれていることがある。これらの有害物質は、ダストに吸着した状態およびガスの状態で排ガス中に含まれている。
【0016】
セメント焼成設備10は、サスペンションプレヒータ11とロータリーキルン12とを有している。サスペンションプレヒータ11の上段に供給されたセメント送入原料は、サスペンションプレヒータ11で予熱・仮焼され、予熱・仮焼された最下段サイクロン原料は、ロータリーキルン12で約1450℃で焼成され、冷却後に排出され、これによってセメントクリンカが得られる。得られたセメントクリンカは、石膏等を添加された後、仕上げミル(不図示)で粉砕されてセメントになる。
【0017】
一般に、セメント焼成設備10と竪型ミル14との間には、セメント焼成設備10から排出された排ガスを冷却するための調湿塔13が設置されており、セメント焼成設備10から排出された排ガスは、調湿塔13で冷却された後、セメント原料の乾燥用に竪型ミル14に供給される。
【0018】
セメント製造装置は、セメント焼成設備10から竪型ミル14を経て排出された排ガス中のセメント原料およびダストを捕集する電気集塵機22と、電気集塵機22で捕集されたダストの粗粒をセメント製造設備10に再供給するための再供給手段23と、竪型ミル14と電気集塵機22との間に設置された分級手段21とをさらに有している。再供給手段23は、例えば、空気輸送機、スクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットエレベータ等で構成することができる。また、再供給手段23とセメント焼成設備10との間には、セメント原料とダストとを均一に混合するブレンディングサイロと、セメント焼成設備10へ送入されるセメント原料を貯蔵するストレージサイロとを有している(不図示)。
【0019】
分級手段21は、電気集塵機22とは異なる方式でダストを捕集するものであり、特に、電気集塵機22を用いるまでもなく捕集できる粗粒を捕集する。具体的には、分級手段21は、第1サイクロン21Aおよび第2サイクロン21Bを有する。サイクロンの形式としては、接線流入式、軸流案内式のいずれであってもよい。第1サイクロン21Aは、竪型ミル14から排出された排ガスから、この第1サイクロン21Aで捕集可能な粗粒である第1サイクロン粗粒を捕集して再供給手段23へ導入するとともに、第1サイクロン粗粒から排出される第1排ガスを第2サイクロン21Bへ供給する。第2サイクロン21Bは、第1サイクロン21Aから供給された第1排ガスから、この第2サイクロン21Bで捕集可能な第2サイクロン粗粒を捕集するとともに、第2サイクロンから排出される第2排ガスを電気集塵機22へ供給する。
【0020】
電気集塵機22には、第2サイクロン21Bで捕集されなかった第2サイクロン粗粒を含んだ第2排ガスが入る。電気集塵機22では、第2排ガス中のセメント原料およびダストからを集塵粗粒(集塵前段ダスト)と集塵微粒(集塵後ダスト)とを捕集し、集塵粗粒を再供給手段23へ導入する。
【0021】
セメント製造装置は、電気集塵機22で集塵粗粒および集塵微粒が捕集された後の浄化排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器24と、第2サイクロン21Bで捕集された第2サイクロン粗粒および電気集塵機22で捕集された集塵微粒を加熱する加熱手段25とをさらに有している。
【0022】
有害物質濃度検出器24は、電気集塵機22と、電気集塵機22から排出された、ダストを捕集した後の浄化排ガスを大気中に放出する煙突26との間のガス移送ラインに設置されている。有害物質濃度検出器24は、例えば、有害物質として、水銀濃度を連続的に検出したり、他の有害物質の検出器と組み合わせて複数種類の有害物質の濃度を連続的に検出したりすることもできる。有害物質濃度検出器24によって検出された有害物質濃度の検出値は、竪型ミル14のセパレータ回転数制御手段14bへ送られる。セパレータ回転数制御手段14bは、有害物質濃度検出器24からの検出値に基づいて、検出値が所定のしきい値以上になったとき(有害物質濃度が所定の濃度以上になったとき)に、セパレータ14aの回転数を増加させるようにセパレータ14aの回転数を制御する。例えば水銀濃度の場合は0.05mg/m3以下を所定のしきい値として設定させる。
【0023】
加熱手段25は、窒素ガス等の還元雰囲気中で第2サイクロン21Bで捕集された粗粒や電気集塵微粒(集塵後ダスト)に含まれる重金属や有機塩素化合物等の有害物質を加熱することによってガス化または脱塩素化する。このような加熱炉25としては、ハーゲンマイヤー法を利用した加熱脱塩素化装置を使用することができる。加熱手段25を通過したセメント原料および循環ダストは、再供給手段23に導入される。
【0024】
次に、上述した構成による排ガスの処理手順を説明する。
【0025】
調湿塔13および竪型ミル14を経てセメント焼成設備10から排出された、セメント原料および循環ダストを含む排ガスは、第1サイクロン21Aへ導入される。第1サイクロン21Aでは、第1サイクロン粗粒が捕集され、そこで捕集されなかった、第1サイクロン粗粒よりも粒径の小さいセメント原料および循環ダストを含む第1排ガスが第2サイクロン21Bへ導入される。第2サイクロン21Bでは、第2サイクロン粗粒が捕集され、そこで捕集されなかった、第2サイクロン粗粒よりも粒径の小さいセメント原料および循環ダストを含む第2排ガスが電気集塵機22へ供給される。第1サイクロン21Aで捕集された第1サイクロン粗粒は、再供給手段23に導入され、再供給手段23によって、セメント原料の一部としてセメント焼成設備10に供給される。
【0026】
電気集塵機22に供給された第2排ガスは、電気集塵機22によって集塵粗粒が捕集され、さらに集塵微粒が捕集される。集塵粗粒は、再供給手段23に導入され、再供給手段23によって、セメント原料の一部としてセメント焼成設備10に供給される。
【0027】
一般的に有害物質は、粒径が比較的小さい(比表面積が大きい)ダストに吸着しやすく、粒径が比較的大きい(比表面積が小さい)ダストには吸着しにくい。分級手段21は第1サイクロン21Aおよび第2サイクロン21Bを有しており、電気集塵機22でなくとも捕集可能な粗粒を捕集するので、電気集塵機22の負荷をより軽減することができる。
【0028】
第2サイクロン21Bで捕集された第2サイクロン粗粒は、第1サイクロン21Aで捕集された第1サイクロン粗粒よりも粒径が小さいものが多く、したがって、第1サイクロン粗粒と比べて有害物質を多く含んでいる。同様に、電気集塵機22で捕集された集塵微粒も、集塵粗粒と比べて有害物質を多く含んでいる。そこで、第2サイクロン粗粒および集塵微粒は、そのままセメント焼成設備10へは供給せず、加熱手段25へ供給され、加熱手段25で加熱処理された後、再供給手段23へ導入される。
【0029】
加熱手段25では、第2サイクロン粗粒および集塵微粒を還元雰囲気中で350℃以上で加熱することによって、第2サイクロン粗粒および集塵微粒に吸着している有害物質がガス化または脱塩素化され、第2サイクロン粗粒および集塵微粒から分離される。これによって、第2サイクロン粗粒および集塵微粒が無害化され、セメント原料の一部としてセメント焼成設備10へ供給することができる。ここで、ガス化された重金属等の有害物質は加熱手段25内で無害化される。
【0030】
第2サイクロン21Bへは、有害物質を吸着する吸着剤を投入することが好ましい。第2サイクロン21Bに吸着剤を投入することで、第2サイクロン21B内での旋回流によって、第2サイクロン粗粒への有害物質の吸着が促進される。その結果、吸着剤とともに有害物質を第2サイクロン粗粒の一部として排ガスから除去することができる。また、有害物質を第2サイクロン粗粒で捕集できない場合であっても、吸着剤に吸着された有害物質は電気集塵機22で容易に捕集できるので、系全体として効率的に排ガスから有害物質を除去することができる。吸着剤としては、例えば、活性炭、キレート剤を担持させた活性炭、活性白土、および未燃カーボンを多く含む石炭灰や高炉灰等を1種以上用いることができる。
【0031】
電気集塵機22で集塵粗粒および集塵微粒が捕集された後の浄化排ガスは、煙突26へ導入され、煙突26から大気中へ放出される。また、浄化排ガスは、電気集塵機22から煙突26までの移送ラインの工程で、有害物質濃度検出器24により有害物質濃度が検出される。有害物質濃度の検出値は、竪型ミル14のセパレータ回転数制御手段14bへ送られる。
【0032】
有害物質濃度の検出値が所定のしきい値未満であれば、セパレータ回転数制御手段14bは通常の回転数でセパレータ14aを回転させ、竪型ミル14はそのままセメント調合原料の乾燥・破砕を続ける。
【0033】
一方、有害物質濃度の検出値が所定のしきい値以上であれば、セパレータ回転数制御手段14bは、セパレータ14aの回転数を増加させ、通常よりも高い回転数でセパレータ14aを回転させる。セパレータ14aの回転数を増加させることにより、竪型ミル14から排出されるセメント原料および循環ダストは粒径が小さくなり、有害物質がより吸着しやすい。よって、セパレータ14aの回転数を増加させ、セメント原料および循環ダストの粒径をより小さくすることで、ダストへの有害物質の吸着が促進される。有害物質が吸着したセメント原料および循環ダストは分級手段21および電気集塵機22で効率的に捕集することができ、浄化排ガスの有害物質濃度を低下させることができる。また、セメント原料および循環ダストの小径化による有害物質の吸着促進がセパレータ12aの回転数制御によって行なわれ、これは排ガスからのダストの捕集に直ちに反映されるので、有害物質の除去に即効性を持たせることができる。
【0034】
以上説明した排ガスの処理手順において、有害物質をより効率よく吸着させることができるようにするために、竪型ミル14で乾燥・粉砕されたセメント原料のBET比表面積は、2〜4m2/gであることが好ましい。この値が2m2/g未満であると、セメントクリンカ中のf.CaOが増大しやすく、また、水銀等の有害物質の吸着量が減少するので、好ましくない。一方、この値が4m2/gよりも大きいと、分級手段21および電気集塵機22で捕集できるダストの量が減少するため、セメント原料としての供給量が減少してしまうため、好ましくない。
【0035】
以上説明したように、本発明の一形態によれば、以下の(1)〜(5)に記載するセメント製造装置、および(6)に記載するセメント製造方法が提供される。
【0036】
(1) セメント焼成設備10と、前記セメント焼成設備10から排出される排ガスに含まれるセメント原料および循環ダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集する電気集塵機22と、前記電気集塵機22により捕集された集塵粗粒を前記セメント焼成設備10に再供給する再供給手段23と、を有するセメント製造装置において、
前記セメント焼成設備10と前記電気集塵機22との間に設置され、前記電気集塵機22での捕集に先立って前記排ガスに含まれるダストの粗粒を捕集し、捕集した粗粒を前記再供給手段23に導入する分級手段21を有すること
を特徴とするセメント製造装置。
【0037】
上記のセメント製造装置では、電気集塵機22にダストを導入する前に、分級手段21によって予め粗粒を捕集する。このことにより粗粒の回収効率が向上するとともに、電気集塵機22の負荷を軽減させることができる。また、電気集塵機22でなくとも捕集可能な粗粒を予め分級手段21により捕集することで、電気集塵機22にかかる負荷をさらに軽減することができる。水銀等の重金属といった有害物質が排ガスに含まれている場合であっても、有害物質は比較的小さい粒子に吸着しやすく、比較的大きな粒子には吸着しにくいため、分級手段21により捕集された粗粒を再度セメント原料として使用することができる。
【0038】
(2) 上記(1)に記載のセメント製造装置において、
前記分級手段21は第1サイクロン21Aおよび第2サイクロン21Bを有し、
前記第1サイクロン21Aは、前記セメント焼成設備10から排出された排ガスから、この第1サイクロン21Aによって捕集可能な粗粒である第1サイクロン粗粒を捕集して前記再供給手段23へ導入するとともに、前記第1サイクロン21Aから排出される第1排ガスを前記第2サイクロン21Bへ供給し、
前記第2サイクロン21Bは、前記排ガスに含まれる有害物質を吸着する吸着剤が投入されて、前記第1排ガスから、この第2サイクロン21Bによって捕集可能な粗粒である第2サイクロン粗粒を捕集し、前記第2サイクロン21Bから排出される第2排ガスを前記電気集塵機22へ供給し、
前記電気集塵機22は、前記第2排ガス中のダストからさらに、前記集塵粗粒と前記集塵微粒とを捕集し、前記集塵粗粒を前記再供給手段23へ導入すること
を特徴とするセメント製造装置。
【0039】
上記のように、吸着剤を第2サイクロン21Bに投入することで、第2サイクロン21B内での旋回流によって有害物質の吸着が促進され、吸着剤とともに有害物質を第2サイクロン粗粒の一部として排ガスから除去することができる。また、有害物質を第2サイクロン21Bで捕集できない場合であっても、吸着剤に吸着された有害物質は電気集塵機22で捕集が容易となるため、系全体として効率的に有害物質を除去することができる。
【0040】
(3) 上記(2)に記載のセメント製造装置において、
前記第2サイクロン粗粒および前記集塵微粒に含まれる有害物質を還元雰囲気中でガス化または脱塩素化するために、前記第2サイクロン粗粒および前記集塵微粒を加熱処理する加熱手段25をさらに備え、
前記加熱手段25によって加熱処理された前記第2サイクロン粗粒および前記集塵微粒が前記再供給手段23に導入されること
を特徴とするセメント製造装置。
【0041】
上記のセメント製造装置によれば、有害物質のガス化または脱塩素化により、第2サイクロン粗粒および集塵微粒を無害化でき、無害化されたこれらのダストをセメント原料の一部として使用することができる。
【0042】
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1項に記載のセメント製造装置において、
前記分級手段21と前記セメント焼成設備10との間に設置され、セメント原料を乾燥・粉砕する竪型ミル14と、
前記竪型ミル14に備えられ、前記排ガスのダストとともに前記竪型ミル14から排出される前記セメント原料および循環ダストの粒度を調整するために回転されるセパレータ14aと、
前記セパレータ14aの回転数を制御するセパレータ回転数制御手段14bと、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器24をさらに有し、
前記セパレータ回転数制御手段14bは、前記有害物質濃度検出器24の検出値に基づいて前記セパレータ14aの回転数を制御すること
を特徴とするセメント製造装置。
【0043】
前述したように、ダストへの有害物質の吸着のしやすさは、排ガス中のダストの大小と関係がある。そこで、上記のように、竪型ミルによって乾燥・粉砕されるセメント原料および循環ダストの粒度を調整するセパレータの回転数を有害物質濃度に応じて制御することで、分級手段21および電気集塵機22による効率的な有害物質の捕集のために、セメント原料および循環ダストに対する有害物質の吸着の度合いを調整することができる。
【0044】
(5) 上記(4)に記載のセメント製造装置において、
前記セパレータ回転数制御手段14bは、前記有害物質濃度検出器25の検出値が所定のしきい値以上になったときに前記セパレータ14cの回転数を増加させること
を特徴とするセメント製造装置。
【0045】
このように、排ガス中の有害物質濃度が高い場合にセパレータ14aの回転数を増加させてセメント原料および循環ダストをより小径化することにより、セメント原料および循環ダストに対する有害物質の吸着を促進させ、分級手段21および電気集塵機22にて効率的に捕集することができる。しかも、セメント原料および循環ダストの小径化による有害物質の吸着促進をセパレータ14aの回転数制御により行なうため、有害物質の除去に即効性をもたせることができる。
【0046】
(6) 上記(4)または(5)に記載のセメント製造装置において、
前記前記竪型ミル14は、前記セメント原料をBET比表面積が2〜4m2/gとなるように粉砕することを特徴とするセメント製造装置。
【0047】
BET比表面積を上記の範囲とすることにより、有害物質を効率よく吸着させることができる。
【0048】
(7) セメント焼成設備10でセメント原料を焼成し、電気集塵機によって、前記セメント焼成設備10から排出される排ガスに含まれるダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集し、捕集された前記集塵粗粒を前記セメント焼成設備10に再供給するセメント製造方法において、
前記ダストを前記電気集塵機22によって捕集するのに先立って、前記電気集塵機22とは別の分級手段21で前記ダストの粗粒を捕集することと、
前記分級手段21によって捕集された前記粗粒を前記セメント焼成設備10に再供給することと、
を含むことを特徴とするセメント製造方法。
【0049】
上記のセメント製造方法によれば、電気集塵機22での捕集に先立って、電気集塵機22とは別の分級手段21により粗粒を捕集することにより、電気集塵機22にかかる負荷が軽減され、また、分級手段21で捕集した粗粒は再度セメント原料として使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 セメント焼成設備
11 サスペンションプレヒータ
12 ロータリーキルン
13 調湿塔
14 竪型ミル
14a セパレータ
14b セパレータ回転数制御手段
14c テーブル
14d ローラ
15 コンベア
21 分級手段
21A 第1サイクロン
21B 第2サイクロン
22 電気集塵機
23 再供給手段
24 有害物質濃度検出器
25 加熱手段
26 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント焼成設備と、前記セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれるセメント原料および循環ダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集する電気集塵機と、前記電気集塵機により捕集された集塵粗粒を前記セメント焼成設備に再供給する再供給手段と、を有するセメント製造装置において、
前記セメント焼成設備と前記電気集塵機との間に設置され、前記電気集塵機での捕集に先立って前記排ガスに含まれるダストの粗粒を捕集し、捕集した粗粒を前記再供給手段に導入する分級手段を有すること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセメント製造装置において、
前記分級手段は第1サイクロンおよび第2サイクロンを有し、
前記第1サイクロンは、前記セメント焼成設備から排出された排ガスから、この第1サイクロンによって捕集可能な粗粒である第1サイクロン粗粒を捕集して前記再供給手段へ導入するとともに、前記第1サイクロンから排出される第1排ガスを前記第2サイクロンへ供給し、
前記第2サイクロンは、前記排ガスに含まれる有害物質を吸着する吸着剤が投入されて、前記第1排ガスから、この第2サイクロンによって捕集可能な粗粒である第2サイクロン粗粒を捕集し、前記第2サイクロンから排出される第2排ガスを前記電気集塵機へ供給し、
前記電気集塵機は、前記第2排ガス中のダストからさらに、前記集塵粗粒と前記集塵微粒とを捕集し、前記集塵粗粒を前記再供給手段へ導入すること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセメント製造装置において、
前記第2サイクロン粗粒および前記集塵微粒に含まれる有害物質を還元雰囲気中でガス化または脱塩素化するために、前記第2サイクロン粗粒および前記集塵微粒を加熱処理する加熱手段をさらに備え、
前記加熱手段によって加熱処理された前記第2サイクロン粗粒および前記集塵微粒が前記再供給手段に導入されること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のセメント製造装置において、
前記分級手段と前記セメント焼成設備との間に設置され、セメント原料を乾燥・粉砕する竪型ミルと、
前記竪型ミルに備えられ、前記排ガスのダストとともに前記竪型ミルから排出される前記セメント原料および循環ダストの粒度を調整するために回転されるセパレータと、
前記セパレータの回転数を制御するセパレータ回転数制御手段と、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器をさらに有し、
前記セパレータ回転数制御手段は、前記有害物質濃度検出器の検出値に基づいて前記セパレータの回転数を制御すること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のセメント製造装置において、
前記セパレータ回転数制御手段は、前記有害物質濃度検出器の検出値が所定のしきい値以上になったときに前記セパレータの回転数を増加させること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のセメント製造装置において、
前記前記竪型ミルは、前記セメント原料をBET比表面積が2〜4m2/gとなるように粉砕することを特徴とするセメント製造装置。
【請求項7】
セメント焼成設備でセメント原料を焼成し、電気集塵機によって、前記セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれるダストから集塵粗粒と集塵微粒とを捕集し、捕集された前記集塵粗粒を前記セメント焼成設備に再供給するセメント製造方法において、
前記ダストを前記電気集塵機によって捕集するのに先立って、前記電気集塵機とは別の分級手段で前記ダストの粗粒を捕集することと、
前記分級手段によって捕集された前記粗粒を前記セメント焼成設備に再供給することと、
を含むことを特徴とするセメント製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207678(P2011−207678A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77252(P2010−77252)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】