説明

セラミックスの緻密化方法およびそのための装置

【課題】セラミック体を加熱する際に、工程時間を短縮し、加熱速度を高め、従来より低い温度で焼結できる装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】単一モードマイクロ波加熱室を画定する照射装置12と;前記室内に配置される断熱構造体16と;セラミック体よりも低いマイクロ波結合温度を有する断熱構造体内に配置されたサセプタ20と;前記サセプタに隣接して配置されたセラミック体22と;マグネトロン24と;および温度測定装置28とから構成されるセラミック体の焼結装置である、さらにセラッミク体を焼結する際に、該装置を用いて、加熱温度、加熱時間、加熱速度、冷却速度を所定条件とした方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料のマイクロ波焼結などのマイクロ波焼結方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論では、一定の構造および/または方法について言及する。しかしながら、以下の言及から、これら構造および/または方法が従来技術を構成することを認めていると解釈するべきではない。出願人は、これら構造および/または方法が従来技術とみなさないことを示す権利を明示的に留保している。
【0003】
セラミック製品の特性、そしてひいては製造費用は、焼成または焼結温度および時間などの熱処理パラメータにかなりの影響を受ける。不十分な焼結は、不十分な緻密化をもたらす。過度の焼結もまた、大きい粒径のせいで低い曲げ強度となるなどの望ましくない材料特性を生じさせうる。
【0004】
従来の加熱炉での焼成温度は、任意に短縮することはできない。高い加熱速度が適用される場合、被焼結体の温度は内部よりも表面において高くなる。この温度勾配は緊張および亀裂の原因となりうる。
【0005】
セラミック材料のマイクロ波加熱は、かなり短縮された工程時間を可能とする技術として提案され、より高い加熱速度を実現することができ、焼結を従来の加熱炉と比較して低い温度で行うことができる。
【0006】
マイクロ波エネルギーは被焼結体により消費され、より少ない程度に加熱炉室を直接加熱するのに用いられる。マイクロ波加熱により、被焼結体は容量分析で加熱される。もしマイクロ波エネルギーのみが用いられるならば、表面温度は試料内部の温度よりも低くなり温度勾配を導く。この勾配は、高い加熱速度において、従来の加熱に生じるのと同様の問題を引き起こす可能性があり、温度勾配の方向が従来の焼結技術と反対であるというのみである。
【0007】
この問題の解決策は、マイクロ波と従来の加熱の機構および利点を結合した複合型の加熱炉を用いることにある。この方法では、セラミック体はたとえ高速の加熱速度を適用したとしても均一的に加熱される。しかしながら、マイクロ波焼結方法は、金属熱電対により温度測定することができないので、制御が困難である。その上に、いわゆる「熱散逸」および「ホットスポット」効果が生じる可能性があり、というのは、材料内のマイクロ波吸収は、材料の温度と共に増加するからである。従って、マイクロ波焼結中の信頼性のある温度測定は、従来の焼結燃焼炉におけるよりもさらに重要になるのである。
【0008】
セラミック材料のマイクロ波焼結は、多くのセラミックスが室温でエネルギーを吸収しないという問題に直面する。従って、このようなセラミックスにマイクロ波支援焼成または焼結方法を実施する場合、室温とセラミックが吸収しマイクロ波エネルギーにより加熱される結合温度(Tc)との間の温度差が克服されなければならない。ジルコニアセラミックスでは、Tcは約700℃ないし約750℃である。温度差を埋めるために、従来の抵抗加熱を用いて、Tcまでセラミックを加熱することができる。あるいは、サセプタ材料を利用することができる。サセプタは、室温でマイクロ波放射を吸収することができる材料である。被焼結体のそばに設置される場合、このサセプタは吸収されたマイクロ波エネルギーに放射熱を部分的に照射して試料を加熱するようにする。
【0009】
2つの異なる型のマイクロ波加熱炉が最新技術において知られている。これらの加熱炉は、単一モードまたは多重モードと呼ばれる。
【0010】
単一モードの加熱炉において、内部室、照射装置または焼成室は、共振器として働く。特定の周波数および波長のマイクロ波が共振器に入り、壁から部分的に反射して、該室内で定常波を形成する。これら定常波は、該室内で均一の波動場を提供する傾向がある。
【0011】
多重モード加熱炉では、高密度波が共振器内に生成されるが、必ずしも均一なマイクロ波動場は生成されず、試料により均一なマイクロ波の吸収を達成しようとする。しかしながら、この吸収は、しばしば攪拌器またはターンテーブルが利用される場合にしか満足に均一とならない。例えば、適切な形状の金属場アジテーターである「マイクロ波攪拌器」が利用されて磁場を均一にすることができる。攪拌器は回転し、絶えず振動モードを変化させる加熱炉内部(しばしば適切なカバーの下の加熱炉の「天井」)で複雑に成形された金属製車輪である。あるいは試料は、加熱中に室内のターンテーブル上で回転することができ、これは電子レンジとして知られる。現在セラミックスを焼結するのに用いられるほとんどのマイクロ波加熱炉は、多重モード型の加熱炉である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、最新技術に関連する1つ以上の欠点を任意に扱うものである。
【0013】
一態様によれば、本発明はセラミック体を焼結するための装置を提供し、該装置は、単一モードマイクロ波加熱室を画定する照射装置と;該室内に配置される断熱構造体と;該セラミック体の温度よりも低いマイクロ波結合温度を有する断熱構造体内に配置されたサセプタと;該サセプタに隣接して配置されたセラミック体と;マグネトロンと;温度測定装置とから構成される。
【0014】
他の態様によれば、本発明は、セラミック体の焼結方法を提供し、該方法は、単一モードマイクロ波加熱室を画定する照射装置と;該室内に配置される断熱構造体と;該セラミック体の温度よりも低いマイクロ波結合温度を有する断熱構造体内に配置されたサセプタと;マグネトロンと;温度測定装置とからなる装置を提供する工程と;前記サセプタに隣接して前記セラミック体を設置する工程と;マイクロ波を前記室内に導入して前記サセプタを加熱する工程とからなり、該サセプタは該セラミック体の結合温度に到達するまで放射加熱により該セラミック体を加熱し、該セラミック体が十分な温度までかつ十分な時間マイクロ波で加熱されることによってセラミック体の緻密化をもたらすようにする。
【0015】
更なる態様によれば、本発明は、歯科材の形成方法を提供し、当該方法は、セラミック体を成形する工程と;上述の方法によりセラミック体を焼結する工程とからなる方法である。
【発明の詳細】
【0016】
一つの態様によれば、本発明は、均一な高エネルギーマイクロ波場が生成されるマイクロ波加熱炉を含む装置を提供する。該加熱炉は補助材料、またはいわゆるサセプタ要素を含むこともできる。該サセプタ要素は、加熱炉室内で焼結される1つのセラミック体または複数のセラミック体に隣接して設置される。サセプタは、およそ室温でマイクロ波エネルギーを吸収し、こうしてマイクロ波エネルギーを最初に照射するとすぐに急速に加熱する。該サセプタ要素は、被焼結セラミック体に対して放射熱を発し、こうしてセラミック体は該サセプタから放射熱を吸収し、中核温度を上昇させる。該セラミック体がしばしば結合温度(Tc)と呼ばれる一定の温度まで加熱されると、該セラミック体を該室内でマイクロ波エネルギーにより加熱することができる。マイクロ波場およびマイクロ波電力は、被焼結体内の温度勾配が最小限となるように制御される。正確な温度測定は、高温計などの適切な温度測定装置を用いて行われる。本発明に係る加熱炉において、被焼結体の温度差は小さく、全工程時間は大幅に削減されうる。例えば、6−8時間の焼結サイクルの代わりに、本発明の装置で実行される工程時間は、約1時間以下で行いうる焼結サイクルで、高密度焼結されたセラミック部品を得ることができる。本発明に従って焼結されたセラミック体はまた、従来技術により焼結されたセラミック体と同じ物理的特性を示す。
【0017】
本発明の原理により形成された典型的装置10を図1に示す。図1に示す通り、装置10は照射装置12を含む。照射装置12は適切な形状または寸法を有することができ、適切な材料から形成することができる。本発明のある実施形態によれば、照射装置12は円筒状または管状であり、ステンレス鋼から形成される。
【0018】
一実施形態によれば、照射装置12はマイクロ波加熱室14を画定する。この場合もやはり、室14は適切な形状または寸法をとることができ、適切な材料で形成することができる。ある態様によれば、室14は均一な定常マイクロ波を発生させるよう構成された単一モードマイクロ波加熱室の形で提供される。
【0019】
当該室14は、好適には適切な断熱構造体16を含む。該断熱構造体は、マイクロ波加熱工程の効率を改善し、過度の熱損失を防ぐよう働く。該断熱構造体16は、適切な形状をとることができ、適切な材料から構成することができる。この点において、ある実施形態によれば、断熱構造体16は、通常の焼結サイクル中に該室内に含まれるマイクロ波エネルギーと結合することのない1つ以上の材料から構成される。一つの任意的実施形態によれば、該断熱構造体は断熱材料18の複数のリングから形成される。該断熱材料は、酸化アルミニウム材料から任意に構成することができる。
【0020】
更なる態様によれば、1つ以上のサセプタ20を該断熱構造体16内に設置することができる。前述の通り、1つ以上のサセプタ20は、比較的低い温度(例えば室温)でマイクロ波エネルギーを吸収することにより、マイクロ波焼結サイクルの開始から急速に加熱するようにする。1つ以上のサセプタ20により発生する放射熱を用いて、1つ以上のサセプタ20に隣接して配置される1つ以上のセラミック体22の温度を上昇させるようにする。従って、1つ以上の被焼結セラミック体22の温度が、1つ以上のサセプタ20から発せられる放射熱により1つ以上のセラミック体22の結合温度(Tc)に到達する点まで上昇しうる。この時点で、該室14内に含まれるマイクロ波エネルギーは、該室14内に含まれる1つ以上のセラミック体22への内部加熱をもたらす。
【0021】
1つ以上のサセプタは適切な形態、形状または寸法を取りうる。加えて、1つ以上のサセプタ20は、適切な材料から形成することができる。一つの説明的実施形態によれば、サセプタは炭化ケイ素材料から形成される。更なる説明的実施形態によれば、該サセプタは開放円筒状または管状であり、その中に1つ以上のセラミック体22が焼結のために配置される。該サセプタは、空洞および試料の対称性と一致する開放形態を有することができる。該サセプタの形態は、部分的に透明であり、またはマイクロ波のために開放していることによりファラデー箱効果を回避する必要がある。該サセプタは、一定の工程効率を保つのに十分なほど薄い必要がある。該サセプタが厚すぎると、エネルギーがサセプタ内にあまりにも高く集中しすぎることになる。サセプタ材料は、室温においてマイクロ波エネルギーと結合する材料を含むことができる。該サセプタ材料は、急加熱に耐性を持つ必要もある。該材料は、最大1700℃の大気条件および/または中立条件において動作するものが選択される。これらの制約に対応することができる材料が利用可能である。具体例として、V、WOなどの多数の遷移金属酸化物、二元および三元金属酸化物、BaTiOなどのペロブスカイト化合物、Agl、Culなどのハロゲン化物、炭化物、シリサイド、添加炭化ケイ素および非晶質炭素が挙げられる。
【0022】
1つ以上の被焼結セラミック体22はまた、適切な形態をとることができ、適切な形状または寸法を有し、適切なセラミック材料で形成することもできる。一実施形態によれば、1つ以上のセラミック体22はジルコニアから形成される。ジルコニアには、イットリア安定化正方晶ジルコニアが含まれるが、これに限定されない。更なる実施形態によれば、1つ以上の被焼結セラミック体2を歯科材の形とすることができる。適切な歯科材として(しかしこれに限定されることはない)、べニア、インレー、オンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、固定部分義歯、メリーランドブリッジ、インプラント支台もしくは全インプラント、またはフレームワークが挙げられる。更なる実施形態によれば、歯科材は、CAD/CAM支援成形技術により成形され、あるいはミリング加工された本体を含んでもよい。
【0023】
該装置10はさらに、マイクロ波エネルギー源24を含む。適切なマイクロ波エネルギー源24が本発明で予定される。ある実施形態によれば、マイクロ波エネルギー源はマグネトロンを含む。エネルギー源24から発せられるマイクロ波エネルギーは、適切な周波数、通常は800MHzから30GHzの間の周波数を有することができる。一つの任意的実施形態によれば、エネルギー源から発せられるマイクロ波エネルギーは2.45GHzの波長を含み、およそ12.2cmの波長を有する。該マイクロ波源24は、室14に直接連通してもよい。または、マイクロ波源24は、適応導波管部26に連結されてもよく、それを介してマイクロ波エネルギーがエネルギー源24から室14へと効率のいい方法で通過する。適応導波管26は、エネルギー源24から発せられたマイクロ波が室14内に進入する前にマイクロ波を効率的かつ均一化するという効果がある。
【0024】
マイクロ波焼結工程中の室14内の温度は、適切な温度測定装置により監視することができる。一実施形態によれば、温度測定装置は、高温計28を含む。更なる実施形態によれば、高温計28は光高温計を含む。該高温計28は、室14と直接連通してもよい。あるいは、ガラス繊維、導波管または画面30を介して高温計と室14とを連通してもよい。
【0025】
該装置10はさらに、位置調整機構32を任意に含んでもよい。一実施形態によれば、任意の位置調整機構32が利用されて台34を移動させ、その台上には断熱構造体16、サセプタ20およびセラミック体22が図1の双方向矢印で示す方向に沿って設置される。この位置調整機構により、試料またはセラミック体22を、室14内において、マイクロ波がその波長の最大振幅に一致する点でセラミック体22に影響を与えるような位置に正確に配置することを可能とする。この配置は、セラミック体22がマイクロ波エネルギーを最大限吸収することを促進する。室14内の最適配置は、当業者に周知の適切な技術によって当該装置10を較正することで決定することができる。例えば、該室14内の多様な点におけるマイクロ波エネルギー出力/吸収が測定されうる。これらの測定および計算に基づき、セラミック体22の最適位置を決定しうる。
【0026】
更なる態様によれば、本発明はマイクロ波エネルギーを利用したセラミック体を焼結する方法または技術に関する。一般的に言えば、本発明の方法は、温度勾配が最小限となる方法でマイクロ波場およびマイクロ波電力を制御するように行われる。本発明によれば、1つ以上のセラミック体を、圧力のない環境、および周囲条件と一致する環境で焼結することができる。本発明の原理により焼結されたセラミック体は、従来の焼結技術よりも低い温度にさらすことも可能である。加えて、本発明の原理により実施される焼結方法は、従来の焼結技術よりもかなり短い時間しかかからない。例えば、従来の焼結技術では6ないし8時間かかっていたのが、本発明の原理によれば1時間以下で行うことができる。さらに、本発明により実施される方法は、高密度セラミック材料の形成をもたらす。ある実施形態によれば、本発明により焼結されるセラミック材料は、約99%またはそれ以上の理論密度を有する。
【0027】
一実施形態によれば、本発明により行われる方法は、上述の装置10の1つ以上の態様を有する装置を提供する工程;サセプタに隣接して1つ以上のセラミック体を設置する工程;該室内にマイクロ波を導入して該サセプタを加熱し、該サセプタは該セラミック体の結合温度に達するまで放射熱によりセラミック体を加熱し、その時に該セラミック体をマイクロ波エネルギーで十分な温度まで十分な時間加熱し、該セラミック体の緻密化をもたらすようにする工程を含む。
【0028】
該セラミック体は、適切な速度で加熱することができる。ある実施形態によれば、該セラミック体は、最大約700℃から約750℃の結合温度Tcで1分以内、750℃以上では50°K/分ないし200°K/分の間の制御された速度において最大で焼結温度までオーバーシュートまたは熱散逸することなく加熱することができる。一つの任意的実施形態によれば、該セラミック体は、100°K/分以上の速度、最大200°K/分で、特に140°K/分の速度で結合温度以上に加熱される。
【0029】
本発明により行われる方法を利用して、適切な最大温度までセラミック材料を加熱することができる。例えば、該セラミック体は、約700℃ないし約1700℃の最大温度まで加熱することができる。一つの任意的実施形態によれば、該セラミック体は約1400℃ないし1500℃の最大温度まで加熱される。
【0030】
本発明の技術によれば、該セラミック体は適切な時間周期において最大温度に保つことができる。一例として、セラミック体は約20ないし約40分間最大温度に保つことができる。一つの任意の実施形態によれば、該セラミック体は約30分間最大温度に保たれる。
【0031】
追加的な態様によれば、本発明の原理により行われる方法は、適切な速度で実行しうる冷却段階を含む。一つの説明的非制限的例によれば、該セラミック体は約40°K/分ないし約150°K/分の速度で冷却することができる。さらに説明的例によれば、該セラミック体は約50°K/分の速度で最大温度から冷却される。
【0032】
追加的態様によれば、上述の冷却速度は一定の時間周期、または一定の目標温度に到達するまで制御することができ、その後、干渉なしに冷却を進行させることが可能となる。説明のために、該セラミック体は約500℃の温度に到達するまで上述の速度で冷却することができる。
【0033】
上述のように、本発明の技術により焼結されたセラミック体は、かなり高い理論密度を備えうる。例えば、本発明の技術により焼結されたセラミック体はその理論密度の少なくとも約99%となりうる。
【0034】
さらに上述の通り、本発明の焼結方法および技術は従来の焼結技術よりもかなり短い時間しか必要としない。説明のために、セラミック体は本発明の方法によりその理論密度の約99%またはそれ以上まで約1時間以内で焼結することができる。
【0035】
本発明の焼結方法および技術は、多数の型のセラミック体に応用することができる。一つの任意的実施形態によれば、被焼結セラミック体は、少なくとも一部がジルコニアから形成される。さらに任意的な実施形態によれば、ジルコニアはYTZジルコニアを含む。追加選択的実施形態によれば、該セラミック体は適切な形態または形状をとることができる。一つの選択的実施形態によれば、該セラミック体は歯科材を含む。適切な歯科材として(しかしこれに限定されることはないが):べニア、インレー、オンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、固定部分入れ歯、メリーランドブリッジ、インプラント支台またはホールインプラント、またはフレームワークが挙げられる。
【0036】
本発明の原理により行われる焼結方法はさらに、該室内に該セラミック体を設置することを含む1つ以上の工程を含み、マイクロ波室内に含まれるマイクロ波の最大振幅の位置と一致する位置に該セラミック体を設置するようにする。
【0037】
本発明のマイクロ波焼結技術は、任意的に1つ以上のサセプタを利用して該セラミック体の温度をその結合温度まで上昇させる放射熱を発生させることができる。適切なサセプタ要素を、本明細書に既に記載したように利用することができる。一つの選択的実施形態によれば、該サセプタは炭化ケイ素から形成される開放円筒状部材または管状部材を含む。選択的実施形態によれば、該セラミック体の温度は選択的方法により上昇させることができる。例えば、加熱炉室内に含まれる電気抵抗要素が利用されて、該セラミック体の温度が結合温度に到達するまで上昇させることができる。
【0038】
追加的選択的実施形態によれば、被焼結セラミック体はCAD/CAM支援成形またはミリング加工技術により成形されたセラミック体の形となりうる。
【実施例】
【0039】
ジルコニアブリッジフレームワークは、予備焼結された多孔質ジルコニアブロックからミリング加工され、次に1400°KCの最大温度で単一モード焼結加熱炉のプロトタイプ内で焼結された。より詳細には、材料はY−PSC(ZirCAD、イボクラール・ビバデント社、FL−9494シャーン)であった。該ブロックをミリング加工するのに用いる機械は、市販の歯科CAD/CAMミリング加工機械(CEREC InLab、シロナ社、0−64625ベンスハイム)であった。ミリング加工されたブロックまたはフレームワークは、サセプタとして用いられる炭化ケイ素管内に設置された。利用される加熱速度は140°K/分であった。最大温度の滞留時間は30分であり、50°K/分に制御された冷却速度で1400℃から500℃まで冷却された。全サイクル時間は52分であった。この実施例の焼結分析結果は、図2に記載される。
【0040】
焼結されたフレームワークの結果として生じる密度は、6.04g/cm、またはその理論密度の99.2%と測定された。焼結ジルコニアフレームワークの微細構造は、1500℃または約6時間のサイクル時間で従来技術により焼結された同様のセラミック体の微細構造と比較された。この実施例の焼結されたフレームワークの微細構造は、図3に記載される顕微鏡写真により示される。比較例の微細構造は、図4に記載される顕微鏡写真により示される。図3および図4に示される微細構造を比較すると、マイクロ波焼結装置と本発明のこの実施例により実施される技術によっては微細構造には著しい相違はないということが示される。
【0041】
本発明の1つ以上の実施形態の装置、方法および技術は、以下の1つ以上の利点を任意に提供することができる:
被焼結セラミック体が設置される加熱容器の容積ではなく、該被焼結セラミック体の選択的加熱;
焼結サイクル時間の最小化;
焼結サイクル中に消費されるエネルギーの最小化;加熱慣性の最小化(すなわち、マイクロ波放射を断った後、該サセプタの限定された熱慣性および低い温度(500℃)の耐熱材料を除き、ほぼすぐに加熱停止する);および
かなり均一的なマイクロ波場を含むマイクロ波室内(すなわち、単一モード、つまり単一モードマイクロ波室を利用する装置、方法および技術)でセラミック体を焼結する。
【0042】
本明細書に用いた量またはパラメータを示す全ての数値は、全ての場合に、「約」を付けて修正される。数値範囲およびパラメータが設定されているにもかかわらず、本明細書に示される広い範囲の主題は概算であり、設定される数値は可能な限り正確に示される。例えば、各測定技術、または丸め誤差および間違いに関連する標準偏差により明らかなように、数値は、固有に一定の誤差を含みうる。
【0043】
本発明を好適な実施形態に関して説明したが、当業者は特に説明していない追加、削除、修正および置き換えを添付の請求項に規定される発明の精神および範囲から逸脱せずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一態様によるマイクロ波焼結装置の概略図である。
【図2】本発明の他の態様により実施される焼結技術の時間対温度の図表である。
【図3】本発明の原理により焼結されたセラミックの微細構造の顕微鏡写真である。
【図4】従来技術により焼結されたセラミックの微細構造の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一モードマイクロ波加熱室を画定する照射装置と;前記室内に配置される断熱構造体と;
セラミック体よりも低いマイクロ波結合温度を有する断熱構造体内に配置されるサセプタと;前記サセプタに隣接して配置されるセラミック体と;
マグネトロンと;および
温度測定装置とから構成されるセラミック体の焼結装置。
【請求項2】
前記セラミック体は、ジルコニアを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記セラミック体は、歯科材を含むことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記歯科材は、べニア、インレー、オンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、固定部分入れ歯、メリーランドブリッジ、インプラント支台または全インプラント、またはフレームワークのうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記室は、管状であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記室は、その最大振幅を示す均一な定常マイクロ波を発生するように構成されおよび寸法付けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記照射装置は、ステンレス鋼から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記断熱構造体は、アルミナから形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記サセプタは円筒状であり、かつ前記セラミック体が前記シリンダー内に設置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記サセプタは、炭化ケイ素、V、WO、BaTiO、Agl、Culまたは非晶質炭素から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記マグネトロンは、約2.45GHzの周波数のマイクロ波を発生させることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記マグネトロンは、導波管に連結され、前記導波管は前記室と連通することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記温度測定装置は、光高温計であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記セラミック体が前記室内で所望の位置に移動することを可能とするように構成された調整機構をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項15】
単一モードマイクロ波加熱室を画定する照射装置と;前記室内に配置される断熱構造体と;セラミック体よりも低いマイクロ波結合温度を有する断熱構造体内に配置されたサセプタと;マグネトロンと;および温度測定装置とから構成される装置を提供する工程と;
前記サセプタに隣接して前記セラミック体を設置する工程と;
前記室内にマイクロ波を導入して前記サセプタを加熱し、前記サセプタは前記セラミック体の結合温度に到達するまで放射熱により前記セラミック体を加熱し、その時に前記セラミック体をマイクロ波で十分な温度まで十分な時間加熱し、前記セラミック体の緻密化をもたらすようにする工程から構成されるセラミック体を焼結する方法。
【請求項16】
前記セラミック体は、結合温度に到達した後に50°K/分ないし150°K/分の速度で最大温度まで加熱されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記速度は、約140°K/分であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記セラミック体は、約1200℃ないし約1700℃の最大温度まで加熱されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記セラミック体は、約1400℃の最大温度まで加熱されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミック体は、約20ないし約40分間最大温度に保たれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記セラミック体は、約30分間最大温度に保たれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記セラミック体は、約40°K/分ないし約150°K/分の速度で最大温度から冷却されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記セラミック体は、約50°K/分の速度で最大温度から冷却されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記セラミック体は、約500℃の温度に到達するまで前記速度で冷却されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記セラミック体は、その理論密度の少なくとも約99%まで焼結されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項26】
全焼結工程は、約1時間より少ない時間で行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記セラミック体は、ジルコニアであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、セラミック体を成形し、かつ請求項15に記載の方法により前記セラミック体を焼結することからなる歯科材の成形方法。
【請求項29】
前記セラミック体は、べニア、インレー、オンレー、クラウン、部分クラウン、ブリッジ、固定部分入れ歯、メリーランドブリッジ、インプラント支台または全インプラント、またはフレームワークのうち1つ以上の形状に成形されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記室を構成してその最大振幅を示す均一な定常マイクロ波を発生させるようにする工程をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記室内で前記セラミック体の位置を操作して、前記セラミック体を前記室に含まれる均一なマイクロ波の最大振幅の位置と一致する位置に設置するようにすることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記サセプタは炭化ケイ素から形成される管状部材であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記セラミック体は、CAD/CAM支援成形技術により成形されることを特徴とする請求項32に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−25452(P2010−25452A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−187983(P2008−187983)
【出願日】平成20年7月19日(2008.7.19)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)
【Fターム(参考)】