説明

セルソータおよびサンプル回収方法

【課題】測定サンプルに大きな負荷を与えることなく測定サンプルを選択的に回収することができるセルソータおよびサンプル回収方法を提供する。
【解決手段】溶液と共に流れる測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの測定サンプルの光情報を基に、測定サンプルを選択的に回収するセルソータであって、それぞれ1つの測定サンプルを収容するための複数の収容室が周に沿って配列形成されると共に中心軸の回りに回転し、第1の回転位置に位置する収容室に外部から測定サンプルが順次供給される回転体と、第2の回転位置に位置する収容室から測定サンプルを選択的に回収する回収手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルソータおよびサンプル回収方法に係り、特に細胞等の測定サンプルを選択的に回収するセルソータおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、様々な細胞種を含む溶液から特定の細胞(測定サンプル)を選別・回収することは、医療効果を高めるための非常に重要な手段である。従来、この手段として、光ピンセットや磁気ビーズが利用されていたが、多くの測定サンプルの中から特定の測定サンプルを回収するのに、非常に多くの手間と時間を要したり、細胞への侵襲性においても問題があった。
【0003】
これに対し、近年では、短時間に多くの測定サンプルについて解析し、高精度に特定の測定サンプルを回収することが可能な、セルソータを備えたフローサイトメータが利用されており、特に、再生医療の分野における幹細胞の選別・回収について注目されている。
【0004】
幹細胞とは、細胞分裂を経ても、再び自らと同じ細胞を複製する能力を維持すると共に、他の種類の細胞に分化する能力を有する細胞のことであり、この能力により組織や臓器を構成する細胞を作り出すことができる。幹細胞は、多くの組織において存在するものであるがその数は少なく、通常、採取した大量の細胞サンプルの中から極微量しかみつけることができない。このため、大量の細胞の中から極微量の幹細胞を高精度に選別・回収することが求められる。
【0005】
ここで、従来、フローセルから噴出する測定サンプルを含む溶液を液滴とし、各測定サンプルから得た光情報を基に、液滴を取り囲むように配置された複数の吸引管から測定サンプルを含む液滴を選択的に真空容器中に回収するセルソータが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の方法は、高い水圧と振動により液滴を形成させ、さらに急激な気圧の変化を与えて回収するため、回収する測定サンプルに高い負荷を与えるといった問題があった。特に幹細胞は、高い負荷を与えられると、うまく分化できなかったり、あるいは不良細胞(例えば癌細胞)が発現してしまうなど、様々な問題が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−1568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、測定サンプルに大きな負荷を与えることなく測定サンプルを選択的に回収することができるセルソータおよびサンプル回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
溶液と共に流れる測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの前記測定サンプルの光情報を基に、前記測定サンプルを選択的に回収するセルソータであって、
それぞれ1つの前記測定サンプルを収容するための複数の収容室が周に沿って配列形成されると共に中心軸の回りに回転し、第1の回転位置に位置する収容室に外部から前記測定サンプルが順次供給される回転体と、
第2の回転位置に位置する前記収容室から前記測定サンプルを選択的に回収する回収手段とを備えたことを特徴とするセルソータを提供するものである。
なお、光情報には前方散乱光の強度、側方散乱光の強度、蛍光の強度、および蛍光寿命のうち少なくとも1つを利用できる。
【0010】
ここで、前記回収手段は、前記第2の回転位置に位置する前記収容室の一部に開閉自在に設けられた開閉部材と、
前記開閉部材を開閉駆動する駆動部と、
前記光情報を基に、前記駆動部を制御して前記開閉部材を選択的に開閉する制御部とを有することが好ましい。
【0011】
また、前記開閉部材は、前記第2の回転位置に位置する前記収容室の側面であって前記回転体の径方向を向いた側面に配置されることが好ましい。
【0012】
また、各収容室は、前記第2の回転位置に位置した時に、開閉部材の方向に向かって重力方向に傾斜している底面を有することが好ましい。
【0013】
また、前記開閉部材は、前記第2の回転位置に位置する前記収容室の底面に配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記回収手段は、さらに、前記測定サンプルを前記収容室から吸引するための吸引装置を有することが好ましい。
【0015】
また、前記回収手段は、さらに、前記回転体の回転方向において前記第2の回転位置の下流側で、かつ前記第1の回転位置の直前に位置する第3の回転位置に達した前記収容室から、未回収の前記測定サンプルを回収することが好ましい。
【0016】
さらに、前記第2の回転位置において、前記回収手段で回収された前記測定サンプルを溜める回収容器を有することが好ましい。
【0017】
さらに、前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間の所定位置に位置する前記収容室で収容された前記測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの前記測定サンプルの前記光情報を取得する光学ユニットを有することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、溶液と共に流れる測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの前記測定サンプルの光情報を基に、前記測定サンプルを選択的に回収するサンプル回収方法であって、
それぞれ1つの前記測定サンプルを収容するための複数の収容室が周に沿って配列形成された回転体をその中心軸の回りに回転し、
第1の回転位置に位置する収容室に外部から前記測定サンプルを順次供給し、
前記光情報を基に、第2の回転位置に位置する前記収容室から前記測定サンプルを選択的に回収することを特徴とするサンプル回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定サンプルを低い負荷で選択的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1にかかるセルソータを備えたフローサイトメータの構成を表す図である。
【図2】図1に示す区分移動手段の固定盤と回転体の構成を表す断面図である。
【図3】図1に示す収容室の構成を表す斜視図である。
【図4】図1に示す区分移動手段の構成を表す上面図である。
【図5】図1に示すセルソータの動作を表すフローチャートである。
【図6】実施形態2で用いられる駆動移動手段の構成を表す斜視図である。
【図7】実施形態3で用いられる貯留部の構成を表す斜視図である。
【図8】実施形態4で用いられる光学ユニットの構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のセルソータおよびサンプル回収方法を詳細に説明する。
【0022】
実施形態1
図1は、本発明の実施形態1に係るセルソータ10を備えたフローサイトメータ12を示す斜視図である。フローサイトメータ12は、溶液と共に測定サンプル14が1列で流れるフローセル16と、測定サンプル14から発する散乱光および蛍光を取得する光学ユニット18と、光学ユニット18で得られた散乱光および蛍光について解析を行う解析部19と、解析部19の解析結果に基づいてフローセル16から供給された測定サンプル14を選択的に回収するセルソータ10とを有して構成される。
【0023】
フローセル16は、鉛直方向に配置された円筒部材からなり、その内部を溶液に含まれた測定サンプル14がそれぞれ間隔をあけて1列に流れる。
【0024】
光学ユニット18は、フローセル16の外側に配置され、フローセル16内を流れる測定サンプル14に向けて測定用のレーザ光を照射する照射部20と、測定サンプル14からの前方散乱光を受光する受光部22aと、測定サンプル14からの側方散乱光や蛍光を受光する受光部22bとを有している。
【0025】
照射部20は、フローセル16に向けて特定波長の測定用レーザ光を照射し、測定サンプル14の有する蛍光色素や蛍光タンパク質を励起させて特定波長範囲の蛍光を発生させる。照射部20には、固体レーザや半導体レーザなどの、公知のレーザ装置が利用される。
【0026】
受光部22aは、フローセル16を挟んで照射部20と対向するように配置されており、フローセル16を通過する測定サンプル14によるレーザ光の前方散乱光を連続して受光し、受光した前方散乱光の強度に応じたアナログ電気信号を出力する。一方、受光部22bは、照射部20からのレーザ光の照射方向に対して垂直方向であって、かつ、フローセル16の中心軸に対して垂直方向に配置されており、レーザ光を受けて測定サンプル14から発せられた側方散乱光や蛍光を受光して、受光した側方散乱光や蛍光の強度に応じたアナログ電気信号を出力する。受光部22aは、例えばシリコンフォトダイオードを用いればよく、受光部22bは、例えばPMT(photomultiplier tube)を用いればよい。
【0027】
解析部19は、光学ユニット18の受信部22aおよび22bと電気的に接続されている。解析部19は、光学ユニット18から受信した各測定サンプル14のアナログ電気信号を解析して光情報を取得し、得られた光情報を基にオペレータがあらかじめ入力した目的の測定サンプルであるか否かを判断する。
なお、本発明における光情報とは、前方散乱光の強度、側方散乱光の強度、蛍光の強度、および蛍光寿命のうち少なくとも1つを含むものである。
【0028】
セルソータ10は、フローセル16の下方に配置され、測定サンプル14を1つずつ区分して移動させる区分移動手段24と、回収された測定サンプル14を溜める貯留部26と、光学ユニット18および区分移動手段24に電気的に接続された制御部28とを有する。
【0029】
区分移動手段24は、水平に配置されると共に上方が開放された皿形状の固定盤30と、固定盤30の中で回転自在に配置された回転体32とを有している。固定盤30は、ほぼ円盤形状の底部34と、底部34の周に沿って立設された環状壁36とを有しており、環状壁36に互いに離間して開口部38aおよび38bが形成されている。環状壁36は、さらに開口部38aを開閉するための開閉部材40を有し、開閉部材40に開閉部材40を開閉駆動する駆動部42が接続されている。
【0030】
回転体32は、それぞれ放射状に配置されて固定盤30の内部を一定角度で区分する複数の区分板44と、複数の区分板44を固定して回転する円柱状の回転板46とを有する。なお、回転板46は図示しないモータに接続されており、そのモータには、ステッピングモータや超音波モータ等の公知のモータが利用できる。また、固定盤30と回転体32により、それぞれ測定サンプルを1つずつ収容できる複数の収容室48が形成される。
【0031】
貯留部26は、区分移動手段24の下方に配置されたサンプル回収容器50および廃液回収容器52と、これらの容器と区分移動手段24とを連絡する連絡路54aおよび54bとを有する。
【0032】
連絡路54aおよび54bは、それぞれ区分移動手段24の開口部38aおよび38bとサンプル回収容器50および廃液回収容器52を連絡する。これにより、区分移動手段24の開口部38aおよび38bを通して取り出された測定サンプル14が、それぞれ連絡路54aおよび54bを介して貯留部26の回収容器50および52に流下する。
【0033】
制御部28は、解析部19および区分移動手段24の駆動部42と接続されており、解析部19による目的の測定サンプル14であるか否かの判断を基に、駆動部42を介して開閉部材40を選択的に開閉する機能を有する。また、制御部28は、回転体32の回転板46に接続された上記のモータと電気的に接続されており、モータを介して回転体32の速度を調節する。
【0034】
次に、図2に示す断面図(フローセル16の溶液の流れる方向に対して直交する方向からの断面図)を用いて、区分移動手段24の固定盤30と回転体32について説明する。回転体32は、円柱状の回転板46と、台形で平板状の区分板44を有する。区分板44は、回転体32の回転軸と直交する放射方向に複数配置される。固定盤30の底部34は、回転体32の形状に対応した円錐台の形状を有する。固定盤30の内側に回転体32が入る(矢印yの方向)と、上面以外が隙間なく閉じた収容室48が複数形成される。
【0035】
図3は、1つの収容室48を示す斜視図である。収容室48は、回転板46の外周面と互いに隣接する一対の区分板44と環状壁36の内周面とで構成される側面と、底部34により構成される底面とを有している。上述したように、底部34は円錐台形状を有しているので、収容室48の底面は環状壁36の方向に向かって下方に傾斜(底面が高低差kだけ傾斜)して配置される。このため、回転体32の回転に伴って収容室48が開口部38aの位置に到達した時に開閉部材40が開くと、収容室48内に収容されていた測定サンプル14は収容室48の傾斜した底面に沿って収容室48から流出するように構成されている。
【0036】
次に、図4に示す上面図を用いて、区分移動手段24について説明する。それぞれ1つの測定サンプル14を収容するための複数の収容室48が、固定盤30の内側に周に沿って配列形成されると共に、回転体32の回転に伴って、回転体32の中心軸の回りに回転する(矢印xの方向)。また、回転体32の回転方向において、フローセル16から測定サンプル14が供給される第1の回転位置P1の下流側の第2の回転位置P2に設けられた開口部38aに開閉部材40を有し、第2の回転位置P2のさらに下流側でかつ第1の回転位置P1の直前の第3の回転位置P3に開口部38bを有する。
【0037】
なお、上記の制御部28、開口部38aおよび38b、開閉部材40および駆動部42は、本発明における回収手段を構成し、これにより収容室48から測定サンプル14を回収することができる。
【0038】
次に、セルソータ10を備えたフローサイトメータ12を用いて行われる、測定サンプル14を回収する時の動作を説明する。
【0039】
まず、図示しない入力手段からオペレータにより測定サンプル回収開始の指示が入力されると、図示しないサンプル供給装置から所定の流量で測定サンプル14を含む溶液がフローセル16に供給され、測定サンプル14が溶液の流れの方向に1列で1つずつ所定の速さV(m/s)で流れていく。
【0040】
一方、フローセル16に供給される溶液の流量は制御部28に伝えられ、制御部28は測定サンプル14の速さV(m/s)を基に収容室48に2つ以上の測定サンプルが入らないように回転体32の回転速度U(m/s)の調節を行う。
【0041】
また、測定サンプル回収開始の指示が入力されると、光学ユニット18は、照射部20からフローセル16へ向けてレーザ光の照射を開始する。フローセル16を1列で1つずつ流れる測定サンプル14が、レーザ光の照射域を通過すると、測定サンプル14の有する蛍光色素や蛍光タンパク質が励起されて蛍光が発生すると共に、測定サンプル14からの散乱により前方散乱光および側方散乱光が生じる。
【0042】
測定サンプル14からの側方散乱光と蛍光は、受光部22bにより受光され、側方散乱光の強度および蛍光の強度に応じたアナログ電気信号が解析部19へ送信される。一方、測定サンプル14からの前方散乱光は、受光部22aにより受光され、前方散乱光の強度に応じたアナログ電気信号が解析部19へ送信される。
【0043】
測定サンプル14は、光学ユニット18を通過すると、フローセル16の下端に形成された供給口56に到達する。
【0044】
セルソータ10は、図5のフローチャートに示すように、本実施形態に関わるサンプル回収方法に従って、以下のステップS1〜S6に示す測定サンプル14の選択的な回収を行う。
【0045】
区分移動手段24には、図4に示すように、固定盤30と回転体32によりそれぞれ1つの測定サンプル14を収容できる複数の収容室48が周に沿って配列形成されている。上記したように、測定サンプル回収開始の指示が入力される(ステップS1)と、配列形成された収容室48が回転体32の中心軸の回りに回転速度U(制御部28により調整された速度)で回転し(ステップS2)、フローセル16の供給口56の直下の第1の回転位置P1に位置する収容室48にフローセル16の供給口56から測定サンプル14が順次供給される(ステップS3)。
【0046】
すなわち、フローセル16の供給口56から測定サンプル14が吐き出されると、配列形成された複数の収容室48が測定サンプル14を順次収容していくことで、高い圧力や振動をかけることなくフローセル16から収容室48に各測定サンプル14を区分して移すことができる。
【0047】
それぞれの測定サンプル14は、収容室48に収容されると回転速度Uで回転体32と共に回転する(図4の矢印x方向)。
【0048】
一方、解析部19には、光学ユニット18から測定サンプル14により得られた散乱光および蛍光の強度に応じたアナログ電気信号が順次送信されている。ここで、制御部28は、解析部19から受信した各測定サンプル14の前方散乱光を検出した時刻を基に、測定サンプル14が光学ユニット18によるレーザ光照射域を通過してから開閉部材40の設けられた第2の回転位置P2に到達するまでの到達時間tをあらかじめ算出している。なお、到達時間tは、フローセル16の測定サンプル14の速さV(m/s)と収容室48の回転速度U(m/s)から算出される。
【0049】
解析部19は、光学ユニット18から受信した各測定サンプル14の前方散乱光および蛍光を解析して光情報を取得する。解析部19は、得られた光情報とあらかじめオペレータにより入力されている目的の測定サンプル14の有する光情報とを比較し、同様の光情報であると判断すると、同じ測定サンプル14から得られた受光部22aからの前方散乱光を特定し、その前方散乱光を受光した時刻を制御部28に送信する。次に、制御部28は、その時刻(目的の測定サンプル14がレーザ光照射域を通過した時刻)から到達時間tが経過した時点で、駆動部42を介して開閉部材40を開ける(図4の矢印h方向)。これにより、検出された測定サンプル14が収容室48で収容されて第2の回転位置P2に到達した時に選択的に開閉部材40が開けられることになる。
なお、光情報とは、前方散乱光の強度、側方散乱光の強度、蛍光の強度、および蛍光寿命のことであり、オペレータはこれら光情報のうち1つ以上の光情報を目的の測定サンプル14に応じてあらかじめ入力している。
【0050】
続いて、回転速度Uで回転し第2の回転位置P2に到着した収容室48は、その底部34は開閉部材40に向かって下方に傾斜(図3の矢印k)している。このため、選択的に開閉部材40が開けられた収容室48の測定サンプル14は、開口部38aを通って収容室48の外側へと排出される(図4の矢印i方向)。収容室48の外側へ排出された測定サンプル14は、開口部38aに連結された連絡路54aを流下し、その流下方向に配置されたサンプル回収容器50に溜められる(ステップS4)。
【0051】
すなわち、回転速度Uで回転する収容室48の底面が傾斜していることにより、測定サンプル14が遠心力と重力により傾斜を流れ、効率よく外部へと排出されることで、高い圧力を与えることなく測定サンプル14を回収することができる。
【0052】
また、制御部28は、測定サンプル14が収容室48の外側に排出されると、次の収容室48が第2の回転位置P2に到達する前に開閉部材40を閉めることで、目的の測定サンプル14のみを回収する(目的の測定サンプル14以外のサンプルの混入を防ぐ)。
【0053】
一方、光学ユニット18で検出されなかった測定サンプル14は、収容室44に収容されたまま第2の回転位置P2を通過し、第2の回転位置P2の下流側で、かつ第1の回転位置P1の直前に位置する第3の回転位置P3に到達する。第3の回転位置P3では、開口部38bを介して固定盤30が常に開口しており、第2の回転位置P2で未回収の測定サンプル14は、全て第3の回転位置P3に位置する収容室48から外側へ排出され、連絡路54bを流下して廃液回収容器52に溜められる(図4の矢印jの方向)(ステップS5)。
【0054】
その後、第3の回転位置P3を通過した収容室48は、第1の回転位置P1(ステップS3)に戻り、上記の動作を繰り返し行う。そして、所望の結果が得られた段階で測定サンプル14の回収を終了する(ステップS6)。
【0055】
本実施形態のセルソータ10によれば、測定サンプル14に高い圧力や振動を与えることがない。そのため、測定サンプル14に高い負荷を与えることなく回収することができる。
【0056】
また、環状壁36に複数の開口部38aを形成して、それぞれの開口部38aに開閉部材40を設け(区別移動手段24に第2の回転位置P2を複数設ける)、その下方にそれぞれの開口部38aに対応するサンプル回収容器50を配置することができる。すなわち、複数の開口部38aに対応して複数のサンプル回収容器50を配置する。これにより、選択的に回収する測定サンプル14の種類を簡便に数多く増やすことができ、どの種類の測定サンプル14にも高い負荷を与えることなく回収することができる。
【0057】
さらに、フローセル16に新たな細工を施すことなく、容易かつ安価にセルソータ10を備えることができる。例えば、フローセル16から噴出する溶液を液滴とする場合、新たにフローセル16の下端を振動させるために圧電素子などを設置することとなり、新たな細工が必要となるだけでなく、長期の使用に際してフローセル16の消耗も進むおそれがある。本実施形態のセルソータ10によれば、フローセル16の下端にセルソータ10を備えればよく、費用や維持費が安くすむ。
【0058】
なお、図1に示した区分移動手段24の固定盤30は、上方が開放された皿形状を有していたが、フローセル16から収容室48へ測定サンプル14を供給できる形状であれば特に限定されない。例えば、固定盤30の上方は、第1の回転位置P1(フローセル16から測定サンプル14が供給される部分)以外の部分を開放せず、閉じた形状としてもよい。すなわち、固定盤30は、第1の回転位置P1以外の部分が閉じられた皿形状を有することになる。
【0059】
実施形態2
実施形態1の区分移動手段24は、第2の回転位置P2および第3の回転位置P3において、固定盤30の側面に開口部38aおよび38bを設けているが、測定サンプル14を収容室48から(区分移動手段24の内部から)回収できるものであれば特に限定されず、同様の機能を果たすものが利用できる。
【0060】
例えば、図6に示すように、開口部38aおよび38bは、回転体の回転方向において、区分移動手段24の第2の回転位置P2および第3の回転位置P3における底部34に配置してもよい。また、本実施形態において、開口部38aは下方に開く(矢印hの方向)開閉部材40を有している。目的の測定サンプル14を収容した収容室48が第2の回転位置P2に到達すると、制御部28により駆動部42を介して開閉部材40が開かれ、測定サンプル14が収容室48から落下する。そこで、開口部38aおよび38bの直下に配置されたサンプル回収容器50および廃液回収容器52により測定サンプル14が溜められる。なお、第3の回転位置P3の開口部40からの回収については同様であり、繰り返しの説明は省略する。
【0061】
実施形態3
また、実施形態1では、収容室48の底部34が開閉部材40の方向に向かって重力方向に傾斜させることにより測定サンプル14を回収したが、図7に示すように、貯留部26の連絡路54aに、吸引装置58を連結し、測定サンプル14を収容室48からサンプル回収容器50の方向へ吸引することで、測定サンプル14を回収(矢印iの方向)するようにしてもよい。このように、収容室48の底部34の傾斜による下方への力と吸引装置58の吸引による下方への力により、回収しにくい測定サンプル14であっても高い負荷を与えずに回収することができる。また、収容室48の底部34には傾斜を設けずに、吸引装置58の吸引による下方への力のみで回収することもできる。なお、本実施形態の吸引装置58は、本発明における回収手段を構成する。
【0062】
実施形態4
また、実施形態1の光学ユニット18は、フローセル16の外側に設けられているが、測定サンプル14が回転体32の回転方向における第2の回転位置P2に到達する前にその測定サンプル14の光情報を取得できるものであれば特に限定されない。
【0063】
例えば、図8に示すように、回転体32の回転方向における第1の回転位置P1と第2の回転位置P2との間の所定位置に光学ユニット18を設けてもよい。照射部20から照射される測定用のレーザ光は、第1の回転位置P1と第2の回転位置P2との間の所定位置に位置する収容室48で収容される測定サンプル14に向けて照射される(矢印Lの方向)。受光部22aは、収容室48を挟んで照射部20と対向するように配置されており、収容室48に収容されている測定サンプル14によるレーザ光の前方散乱光を連続して受光(矢印Mの方向)し、受光した前方散乱光の強度に応じたアナログ電気信号を出力する。
【0064】
一方、受光部22bは、回転体32の径方向に配置されており、測定サンプル14による側方散乱光や蛍光を受光(矢印Nの方向)して、受光した側方散乱光や蛍光の強度に応じたアナログ電気信号を出力する。
【0065】
受光部22aおよび22bから送信された電気信号は、制御部28で受信され、収容室48の回転速度U(m/s)から測定サンプル14が第2の回転位置P2へ到達する到達時間tをあらかじめ算出し、測定サンプル14が光学ユニット18で検出されてから到達時間tが経過した時点で、駆動部42を介して開閉部材40を開ける。
【0066】
なお、実施形態1と同様の構成について、繰り返しの説明は省略する。また、照射部20からレーザ光を照射される区分移動手段24の材質は、透光性を有するものであれば特に限定されるものではないが、アクリル樹脂やガラスにより構成されるのが望ましい。
【0067】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
10 セルソータ
12 フローサイトメータ
14 測定サンプル
16 フローセル
18 光学ユニット
19 解析部
20 照射部
22a、22b 受光部
24 区分移動手段
26 貯留部
28 制御部
30 固定盤
32 回転体
34 底部
36 環状壁
38a、38b 開口部
40 開閉部材
42 駆動部
44 区分板
46 回転板
48 収容室
50 サンプル回収容器
52 廃液回収容器
54a、54b 連絡路
56 供給口
58 吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液と共に流れる測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの前記測定サンプルの光情報を基に、前記測定サンプルを選択的に回収するセルソータであって、
それぞれ1つの前記測定サンプルを収容するための複数の収容室が周に沿って配列形成されると共に中心軸の回りに回転し、第1の回転位置に位置する収容室に外部から前記測定サンプルが順次供給される回転体と、
第2の回転位置に位置する前記収容室から前記測定サンプルを選択的に回収する回収手段とを備えたことを特徴とするセルソータ。
【請求項2】
前記回収手段は、前記第2の回転位置に位置する前記収容室の一部に開閉自在に設けられた開閉部材と、
前記開閉部材を開閉駆動する駆動部と、
前記光情報を基に、前記駆動部を制御して前記開閉部材を選択的に開閉する制御部とを有することを特徴とする請求項1に記載のセルソータ。
【請求項3】
前記開閉部材は、前記第2の回転位置に位置する前記収容室の側面であって前記回転体の径方向を向いた側面に配置されることを特徴とする請求項2に記載のセルソータ。
【請求項4】
各収容室は、前記第2の回転位置に位置した時に、開閉部材の方向に向かって重力方向に傾斜している底面を有することを特徴とする請求項3に記載のセルソータ。
【請求項5】
前記開閉部材は、前記第2の回転位置に位置する前記収容室の底面に配置されることを特徴とする請求項2に記載のセルソータ。
【請求項6】
前記回収手段は、さらに、前記測定サンプルを前記収容室から吸引するための吸引装置を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のセルソータ。
【請求項7】
前記回収手段は、さらに、前記回転体の回転方向において前記第2の回転位置の下流側で、かつ前記第1の回転位置の直前に位置する第3の回転位置に達した前記収容室から、未回収の前記測定サンプルを回収することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のセルソータ。
【請求項8】
さらに、前記第2の回転位置において、前記回収手段で回収された前記測定サンプルを溜める回収容器を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセルソータ。
【請求項9】
さらに、前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間の所定位置に位置する前記収容室で収容された前記測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの前記測定サンプルの前記光情報を取得する光学ユニットを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のセルソータ。
【請求項10】
溶液と共に流れる測定サンプルに向けて光ビームを照射した時に得られるそれぞれの前記測定サンプルの光情報を基に、前記測定サンプルを選択的に回収するサンプル回収方法であって、
それぞれ1つの前記測定サンプルを収容するための複数の収容室が周に沿って配列形成された回転体をその中心軸の回りに回転し、
第1の回転位置に位置する収容室に外部から前記測定サンプルを順次供給し、
前記光情報を基に、第2の回転位置に位置する前記収容室から前記測定サンプルを選択的に回収することを特徴とするサンプル回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210546(P2010−210546A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59028(P2009−59028)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】