説明

セルロース化合物を含有する組成物及びセルロース化合物フィルム

【課題】光学異方性が制御され、光学性能に優れたセルロース化合物フィルムを形成でき、かつハロゲン系混合溶媒に良好な溶解性を示すセルロース化合物を含有する組成物を提供する。
【解決手段】セルロース化合物と少なくとも1種の下記一般式(1)で表される化合物とを含有する組成物。


[式中、R1、R2、R4、R5は水素原子または置換基を表し、Q1はアルコキシ置換基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース化合物を含有する組成物および前記セルロース化合物を含有する組成物からなるセルロース化合物フィルムとその光学フィルムとしての利用、さらに該光学フィルムを利用した光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースフィルムの中でも、セルロースアセテートフィルムは、他のポリマーフィルムと比較して光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)という特徴がある。そのため光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板に、セルロースアセテートフィルムを用いることが一般的である。これとは逆に液晶表示装置等の光学補償シート(位相差フィルム)には光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。そこで光学補償シートとしては、一般的にポリカーボネートフィルムやポリスルホンフィルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフィルムが用いられる。
【0003】
一方、最近になって光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフィルムが提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。そのセルローストリアセテートフィルムは、高いレターデーション値を実現するために、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物、中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が添加され、延伸処理が行われている。
一般的にセルローストリアセテートは延伸しにくい高分子素材であり、光学的異方性を十分に高めることは困難である。前記特許文献1では、添加剤を延伸処理で同時に配向させることにより光学的異方性を大きくし、高いレターデーション値を実現している。
【0004】
これらのフィルムが用いられる液晶表示装置についてみると、軽量化、製造コストの低減が求められており、液晶セルの薄膜化が必須となっている。そこで光学補償シートとするフィルムにおいては高い光学性能が求められ、前記の1,3,5−トリアジン環を有する化合物フィルムで実現できる程度の光学的異方性(Re:フィルム面内のレターデーション値、Rth:フィルム厚み方向におけるレターデーション値)では足りず、より高いRe値とより低いRth値とを併せ持つフィルムが要求されている。すなわち、特許文献1で開示された方法では、Re値とRth値を目的の値に組み合わせたフィルムとすることができず、新たな光学性能制御技術の開発が必要となっている。
【0005】
また、製造コストの低減を考えると少ない添加量で高いRe値と、低いRth値を発現する化合物が望ましい。
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開0911656A2号明細書
【特許文献2】特開2003−344655号公報
【特許文献3】特開平12−95877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Re値とRth値の両者の関係で光学異方性が制御され、光学性能に優れたセルロース化合物フィルムを形成でき、かつハロゲン系混合溶媒に良好な溶解性を示すセルロース化合物と、それを含有する組成物、並びに該セルロース化合物を含有する組成物からなるセルロース化合物フィルムを提供することを目的とする。さらに本発明は、これらのセルロース化合物フィルムを使用した光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記手段により達成された。
[1]セルロース化合物と少なくとも1種の下記一般式(1)で表される化合物とを含有する組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、R1、R2、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Q1は下式Q1で表される置換基を表す。
【0011】
【化2】

【0012】
(式Q1中、*はL3に結合する結合手を表す。Rは水素原子または炭素数1以上のアルキル基を表す。mは0以上の整数を表す。rは0以上の整数を表す。Rは水素原子または置換基を表す。)
1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、Ar1、Arはアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、nは1以上の整数を表し、二つ以上のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
[2]セルロース化合物が、セルロースアシレートであることを特徴とする[1]に記載のセルロース化合物を含有する組成物。
[3][1]または[2]に記載の組成物からなることを特徴とするセルロース化合物フィルム。
[4][3]に記載のセルロース化合物フィルムを含むことを特徴とする、光学補償シート。
[5][4]に記載の光学補償シートを含む、偏光板。
[6][5]に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
[7]下記一般式(1)で表される化合物。
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Q1は下式Q1で表される置換基を表す。
【0015】
【化4】

【0016】
(式Q1中、*はL3に結合する部分で、L3は単結合又は二価の連結基を表す。Rは水素原子または炭素数1以上のアルキル基を表す。mは0以上の整数を表す。rは0以上の整数を表す。Rは水素原子または置換基を表す。)L1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、Ar1、Arはアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、nは1以上の整数を表し、二つ以上のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のセルロース化合物を含有する組成物はハロゲン系混合溶媒に良好な溶解性を示し、少ないリターデーション制御剤の添加量で高いRe値と低いRth値とを併有して高い光学異方性を実現することができ、光学性能の優れたフィルムを形成できる。このように本発明のセルロース組成物より形成したフィルムは光学性能に優れるので、本発明のセルロース化合物フィルムは、液晶表示装置用光学フィルムとして、また光学補償シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[一般式(1)で表される化合物]
まず、本発明のセルロース化合物を含有する組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物に関して詳細に説明する。
【0019】
一般式(1)中の、R1、R2、R4、R5及び一般式Q1中のRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。L1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、Ar1はアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、Ar2はアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、nは0以上の整数を表し、二つ以上のL2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、二つ以上のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
一般式(1)において、R1として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、アシルアミノ基又はスルホニルアミノ基であり、更に好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は水酸基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくはメトキシ基)又は水素原子である。
【0021】
2として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基又は水酸基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基である。)又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基又はメトキシ基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0022】
4として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基又は水酸基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基である。)又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基又はメトキシ基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0023】
5として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基又は水酸基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基である。)又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基又はメトキシ基である。最も好ましくは水素原子である。
【0024】
Ar1はアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、−(−Ar−≡−)−nで表される繰り返し単位中のAr1は、すべて同一であっても異なっていてもよい。Ar2はアリール基または芳香族へテロ環を表す。
一般式(1)中、Ar1、Arで表されるアリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar1で表されるアリーレン基は、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、o−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0025】
一般式(1)中、Ar1、Ar2で表される芳香族ヘテロ環は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む2価の芳香族ヘテロ環であることができ、好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましいものは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。また、可能な場合にはさらに置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
【0026】
一般式(1)中、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、または2価の連結基を表す。L1、L2は、同じであってもよく異なっていてもよい。
2価の連結基の例としては、−O−、−NR’−(R’は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基をあらわす)、−CO−、−SO2−、−S−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、またはこれらの二価の基を2つ以上組み合わせて得られる基である。R’は好ましくは水素原子、炭素数1〜12の無置換のアルキル基、炭素数6〜12の無置換のアリール基を表し、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4の無置換のアルキル基を表し、もっとも好ましくは水素原子を表す。
1として、より好ましくは−O−、−NR−、−NRSO2−、−NRCO−又は−OCO−であり、特に好ましくは−O−である。L2として、より好ましくは単結合、−O−、−CO−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−又はアルキニレン基であり、最も好ましくは単結合、−O−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、−OCO−又はアルキニレン基である。
【0027】
本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物において、Ar1は−≡−又はLと結合するが、Ar1がフェニレン基である場合、−L1−Ar1−≡−においてL1又は−≡−が互いにパラ位(1,4−位)の関係にあることが最も好ましい。
【0028】
一般式(1)中、nは1以上の整数を表し、好ましくは1〜7であり、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは3〜6である。
【0029】
式Q1中、*はL3に結合する部分であり、L3は、単結合または二価の連結基を表す。二価の連結基の例としては、−O−、−NR’−(R’は水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)、−CO−、−SO−、−S−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、またはこれらの二価の基を2つ以上組み合わせて得られる基である。L3は単結合であることが最も好ましい。
【0030】
式Q1中、Rは水素原子または炭素数1以上のアルキル基を表す。Rは、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
式Q1中、Rとして好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基、アシルアミノ基又はスルホニルアミノ基であり、更に好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は水酸基であり、特に好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくはメチル基)である。
【0031】
式Q1中、mは0以上の整数を表し、好ましくは1〜7であり、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜3である。式Q1中、rは0以上の整数を表し、好ましくは0〜7であり、より好ましくは0〜4であり、さらに好ましくは0である。
【0032】
一般式(1)であらわされる化合物のうち特に好ましくは、L1が−O−、−NR’−であり、L2、Lが、単結合、−O−、−CO−、−NR’−、−SO2NR’−、−NR’SO2−、−CONR’−、−NR’CO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基であり、nが3〜6である化合物である(R’は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)。
【0033】
一般式(1)で表される化合物の好ましいものは、Lが単結合、−CO−、−OCO−であり、Rはメチル基であり、mは2〜3であり、rは0であり、Rはメチル基であり、L1が−O−または−NR’−(R’は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、L2が、単結合、−O−、−CO−、−NR’−、−SO2NR’−、−NR’SO2−、−CONR’−、−NR’CO−、−COO−、−OCO−、またはアルキニレン基(R’は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。好ましくは水素原子である。)であり、Ar1がアリーレン基であり、nが3以上6以下であるものを挙げることができる。
【0034】
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとして好ましくは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
【0035】
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
【0036】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、
【0037】
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0038】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、
【0039】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、
【0040】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、
【0041】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、
【0042】
アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表す。
【0043】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0044】
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0045】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されるものではない。なお、下記式中Meはメチルを示す。
【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、J.Am.Chem.Soc, Vol.124, No43 (2002), pp. 12472-12751に記載の合成法等を参考にして製造することができる。
【0049】
本発明のセルロース化合物を含有する組成物においては、一般式(1)で表される化合物を、少なくとも1種をセルロース化合物に対して、0.1〜20質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜16質量%、さらに好ましくは1〜12質量%、さらに好ましくは1〜8質量%であり、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0050】
[セルロース化合物を含有する組成物]
本発明のセルロース化合物を含有する組成物は、少なくとも1種のセルロース化合物と、一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種とを含むセルロース化合物を含有する組成物である。本発明において、セルロース化合物とは、セルロース、またはセルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物をいう。セルロース化合物として好ましくはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いてもよい。
なお、本発明において、セルロース化合物を含有する組成物は、液体(例えば、セルロース化合物溶液)であっても、固体(例えば、セルロース化合物フィルム)であってもよい。
本発明のセルロース化合物を含有する組成物に用いられるセルロース化合物は、上述のように好ましくはセルロースアシレートであり、以下セルロースアシレートを例にして、その好ましい態様を説明する。
【0051】
[セルロースアシレート原料綿]
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ特に限定されるものではない。
【0052】
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基及び/又は炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(4)及び(5)を満足するセルロースアシレートであることが好ましい。
数式(4):2.0≦A+B≦3.0
数式(5):0<B
ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
【0053】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1、2、3、6位全ての置換度、すなわち全置換度は、各位全てが100%の場合3となる。)を意味する。
【0054】
[セルロースアシレートの重合度]
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては180〜550が好ましく、180〜400がより好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著,「繊維学会誌」,第18巻,第1号,105〜120頁,1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、セルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることが特に好ましい。
【0055】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。このセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。これらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単独あるいは2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0056】
[セルロースアシレートへの添加剤]
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において透湿性を低下する化合物以外にも用途に応じた種々の慣用の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を常法に従って加えることができる。またその添加する量、時期は特に制限がなく、例えば、ドープ作製工程において何れを添加してもよく、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0057】
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができ、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。
【0058】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
【0059】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0060】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0061】
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
【0062】
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0063】
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
【0064】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
【0065】
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であればフィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
【0066】
また紫外線吸収剤は、セルロースアシレート溶解時に同時に添加してもよいし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができるので好ましい。
【0067】
[劣化防止剤]
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物が挙げられる。その添加量に特に制限はない。
【0068】
[可塑剤]
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。可塑剤の添加量は特に制限するものではないが、セルロースアシレートに対し好ましくは0〜30質量%より好ましくは0〜20質量%である。
【0069】
[剥離促進剤]
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる、適宜の量が加えられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されているものが挙げられる。
[染料]
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
【0070】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0071】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させることができる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。なお1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径としてもよい。
【0072】
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)社製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0073】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0074】
2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化ケイ素微粒子の分散性がよく、二酸化ケイ素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0075】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0076】
[化合物添加の比率]
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート重量に対して5〜45%であることが好ましい。より好ましくは10〜40%であり、さらに好ましくは15〜30%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が好ましく、2000以下がより好ましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁(フィルムからの泣き出し)しやすくなる。
【0077】
[セルロースアシレート溶液の有機溶媒]
ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。ジクロロメタンが特に好ましい主溶媒である。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。ハロゲン系溶媒75乃至89質量部に対してアルコール系溶媒11乃至25質量部の混合溶媒が最も好ましい。アルコールは一価であることが好ましい。アルコールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を有していても、環状であってもよい。炭化水素部分は、飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。メタノールが特に好ましい。
【0078】
セルロースアシレートフィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよく特に限定されるものではない。
【0079】
その他、溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許文献に開示されており、例えば、特開2000−95876号、特開平12−95877号、特開平10−324774号、特開平8−152514号、特開平10−330538号、特開平9−95538号、特開平9−95557号、特開平10−235664号、特開平12−63534号、特開平11−21379号、特開平10−182853号、特開平10−278056号、特開平10−279702号、特開平10−323853号、特開平10−237186号、特開平11−60807号、特開平11−152342号、特開平11−292988号、特開平11−60752号、特開平11−60752号などの各公報に記載されているものが挙げられる。これらの特許文献は、溶液物性や共存させる共存物質についても記載しており参考にすることができる。
【0080】
[セルロースアシレートフィルムの製造工程]
(溶解工程)
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。セルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0081】
セルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることが好ましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。セルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認することができる。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、商品名、島津製作所社製)で550nmの吸光度を測定することができ、溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出することができる。
【0082】
(流延、乾燥、巻き取り工程)
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロース化合物フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。以下、これを具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。セルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
【0083】
[延伸処理]
セルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することが好ましい。特に、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
【0084】
フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。通常は1〜200%の延伸を行うが、好ましくは1〜100%、特に好ましくは1〜50%の延伸を行うのがよい。
【0085】
上記の偏光板を斜めから見たときの光漏れの抑制のためには、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
【0086】
乾燥後得られるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常、5〜500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0087】
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0088】
フィルムの幅方向のRe値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また幅方向のRth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも、幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0089】
〔セルロースアシレートフィルムの光学特性〕
本発明において、Re(λ)、Rth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)は“KOBRA 21ADH”{商品名、王子計測機器(株)社製}において、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定するこができる。Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、合計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、“KOBRA 21ADH”により算出することができる。
【0090】
ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)などが挙げられる。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHによりnx、ny、nzを算出することができる。
【0091】
Re(λ)レターデーション値、Rth(λ)レターデーション値が、それぞれ、以下の数式(2)、(3)を満たすことが、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置の視野角を広くするために好ましい。また特にセルロースアシレートフィルムが、偏光板の液晶セル側の保護膜に用いられる場合に好ましい。
数式(2):0nm≦Re≦200nm
数式(3):0nm≦Rth≦400nm
[上記式中、Re、Rthは、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である(本発明において、ReまたはRthとは、特に断らない限り、この波長におけるそれぞれの値をいう。)]
【0092】
セルロース化合物フィルムをVAモードに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2通りがある。
2枚型の場合、Reは20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rthについては70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Reは30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rthについては100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
【0093】
[フィルムの透湿度]
光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを超えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。またセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じることがある。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株)製)にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
【0094】
[フィルムの残留溶剤量]
セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。透明支持体の残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
【0095】
[フィルムの吸湿膨張係数]
セルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0096】
[表面処理]
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく適用することができる。
【0097】
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
【0098】
[機能層]
セルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、後述する、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。セルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており好ましく用いることができる。
【0099】
[偏光板]
光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0100】
[光学補償フィルム]
セルロースアシレートフィルムは様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0101】
(液晶表示装置の構成)
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、例えば、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、例えば、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成することができる。透明電極層は、例えば、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成することができる。液晶セルには、例えば、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、基板上に設けることができる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さにすることが好ましい。
【0102】
(液晶表示装置の種類)
セルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効であり、また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0103】
(TN型液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0104】
(STN型液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0105】
(VA型液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いることができる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0106】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いることができる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)にセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のリターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
【0107】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0108】
(反射型液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いることができる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO98/48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00/65384号に記載がある。
【0109】
(その他の液晶表示装置)
セルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いることができる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
【0110】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
セルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
【0111】
(写真フィルム支持体)
セルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、該特許文献に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
【0112】
(透明基板)
セルロースアシレートフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、セルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
【0113】
セルロース化合物フィルムのRe値とRth値をそれぞれ好ましい範囲に制御するためには、含有する一般式(1)または(2)で表される化合物(以下、レターデーション制御剤ともいう。)の種類および添加量、ならびにフィルムの延伸倍率を適宜調整することが好ましい。すなわち、本発明のセルロース化合物フィルムにおいては、レターデーション制御剤を選択してRth値を目的の範囲に制御し、かつ該レターデーション制御剤の添加量およびフィルムの延伸倍率を適宜設定することによりRe値を目的の範囲に制御して、所望のRe値、Rth値、およびその組み合わせを有するセルロース化合物フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0114】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
実施例1
<例示化合物(1)の作製>
下記スキームに従い、例示化合物(1)を作製した。
【0116】
【化7】

【0117】
[中間体(1−A)の合成]
3−メトキシ−1−ブタノール200g(1.92mol)の酢酸エチル(AcOEt)溶液にトリエチルアミン(Et3N)185g(1.83mol)を加えた。反応系を2℃に冷却した後、メタンスルホン酸クロライド(MsCl)209g(1.83mol)を、反応系の温度を15℃以下に保ちつつ滴下した。滴下終了後、10℃以下で30分攪拌した後、室温まで昇温し、3時間攪拌した。水を加えて分液し、有機層を水、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することで292.2gの中間体(1−A)の粗製物を得た(収率88%)。
【0118】
[中間体(1−B)の合成]
パラヒドロキシ安息香酸メチル60g(0.394mol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1600ml溶液に炭酸カリウム70.8g(0.512mol)を加え、中間体(1−A)89g(0.488mol)を加えた。反応系を100℃まで昇温し、6時間攪拌した。反応終了後、系を冷却したところに水、酢酸エチル1Lを加え分液した。有機層を、水、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗製物にメタノール(MeOH)85mlを加え、水酸化カリウム66.4g(1.182mol)の水溶液240mlを滴下した。反応系を50℃まで加熱し、そのまま4時間攪拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)にて反応終了を確認し、反応系を5℃に冷却した。5℃に冷却した1N塩酸水1Lに反応液をゆっくりと滴下した。生成した結晶をろ取し、乾燥することで73gの中間体(1−B)を得た。
【0119】
[中間体(1−C)の合成]
中間体(1−B)50g(0.223mol)のテトラヒドロフラン500ml溶液に氷冷下にてメタンスルホン酸クロライド17.3ml(0.224mol)を加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(IPr2NEt)40ml(0.230mol)をゆっくりと滴下した。1時間攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン40ml(0.230mol)、パラブロモフェノール38g(0.223mol)のテトラヒドロフラン100ml溶液を滴下した。その後、N,N−ジメチルアミノピリジンを0.2gのテトラヒドロフラン100ml溶液を滴下した。氷冷下にて1時間攪拌した後、室温まで昇温し、6時間攪拌した。水を加えて分液し、有機層を水、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残査をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い中間体(1−C)を60gを得た。
【0120】
[例示化合物(1)の合成]
中間体(1−C)14.0g、パラジエチニルベンゼン2.1g、トリフェニルホスフィン0.26g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.14gおよびヨウ化銅(I)0.06gをトリエチルアミン100mlに溶解させ、窒素雰囲気下で6時間還流した。反応終了後、系を冷却したところに水、酢酸エチル1Lを加え分液した。有機層を、1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残査をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い例示化合物(1)を9.0gを得た。
【0121】
化合物の同定は1H−NMRにより行った。
1H−NMR(CDCl3):δ1.20(d,6H),1.95(m,4H),3.35(s,6H),3.60(m,2H),4.15(m,4H),7.00(d,4H),7.20(d,4H),7.50(s,4H),7.60(d,4H),8.15(d,4H)
下記のセルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0122】
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
【0123】
別のミキシングタンクに、例示化合物(1)または比較化合物16質量部、メチレンクロライド87質量部およびメタノール13質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション制御剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション制御(上昇)剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション調整剤は、セルロースアセテート100質量部に対して表2に記載の質量部を添加した。
【0124】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルム(光学補償シート)について、エリプソメーター(M−150、商品名、日本分光(株)製)を用いて、波長633nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。結果を表1に示す。
【0125】
<Rth、Reの測定>
エリプソメーター(AEP−100、商品名、島津製作所(株)製)を用いて、波長632.8nmで測定した面内の縦横の屈折率差にフィルム膜厚を乗じた値として、下記式に従って求めた。
Re=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
nx:遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率
ny:遅相軸に直交する方向の屈折率
nz:厚さ方向の屈折率
d :フィルムの厚さ(単位:nm)
【0126】
【表1】

【0127】
【化8】

【0128】
表1の結果から分かるように、比較化合物1未含有のフィルム、比較化合物1を2質量部含有するフィルム、比較化合物1を5質量部含有するフィルムは、いずれも、
Rth=Re×3.6+43 (式1)
を満たす。
すなわち、比較化合物1を含有するフィルムは延伸によりReは発現し、Rthはさほど変化させないため、比較化合物1を添加することにより、
Rth≧Re×3.6+43 (式2)
の領域の光学特性を満足するフィルムを作製できることがわかる。
これに対し、一般式(1)で表される化合物(例示化合物(1))を添加したフィルムは、比較化合物1を添加したフィルムでは実現できなかったより大きなRe発現性を有する(つまりRth<Re×3.6+43の領域)新規なセルロースフィルムを作製できることが分かる。
【0129】
表1の結果から分かるように、一般式(1)で表される化合物を添加することにより、公知の円盤状化合物(比較化合物1)では実現できなかった、よりRe発現性の高い領域の光学特性を有する新規なセルロースフィルムの作製が可能になることがわかった。
【0130】
表1の結果から分かるように、本発明の例示化合物を用いると少ない添加量で比較化合物に比べ優れたRe発現性を示す。このことは製造コストの低減という観点でも有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース化合物と少なくとも1種の下記一般式(1)で表される化合物とを含有する組成物。
【化1】

[式中、R1、R2、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Q1は下式Q1で表される置換基を表す。
【化2】

(式Q1中、*はL3に結合する結合手を表す。Rは水素原子または炭素数1以上のアルキル基を表す。mは0以上の整数を表す。rは0以上の整数を表す。Rは水素原子または置換基を表す。)
1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、Ar1、Arはアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、nは1以上の整数を表し、二つ以上のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
セルロース化合物が、セルロースアシレートであることを特徴とする請求項1に記載のセルロース化合物を含有する組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物からなることを特徴とするセルロース化合物フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のセルロース化合物フィルムを含むことを特徴とする、光学補償シート。
【請求項5】
請求項4に記載の光学補償シートを含む、偏光板。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化3】

[式中、R1、R2、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Q1は下式Q1で表される置換基を表す。
【化4】

(式Q1中、*はL3に結合する結合手を表す。Rは水素原子または炭素数1以上のアルキル基を表す。mは0以上の整数を表す。rは0以上の整数を表す。Rは水素原子または置換基を表す。)
1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、Ar1、Arはアリーレン基または芳香族へテロ環を表し、nは1以上の整数を表し、二つ以上のAr1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]

【公開番号】特開2007−262321(P2007−262321A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92112(P2006−92112)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】