説明

セルロース繊維を用いた触媒支持体、その製造方法、触媒支持体の表面に直接成長した炭素ナノチューブ及び炭素ナノチューブの表面にナノ金属触媒が担持された担持触媒及びその製造方法

【課題】多数のマイクロ細孔を有している多孔性セルロース繊維をナノ金属触媒担持用触媒支持体の材料として用いることで、触媒の製造コストを低減させると共に、多様な触媒反応において少量でも触媒反応活性の増加を極大化し、反応後に高価のナノ金属触媒成分の収集が容易なナノ金属担持触媒を開発する。
【解決手段】本発明は、セルロース繊維を分離して触媒支持体を製造する第1段階と、製造された触媒支持体に炭素ナノチューブを成長させる第2段階と、炭素ナノチューブが成長した触媒支持体にナノ金属触媒を担持する第3段階とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のマイクロ細孔を有している多孔性セルロース繊維をナノ金属触媒担持用触媒支持体の材料として用いることで、多様な触媒反応において少量でも触媒反応活性の増加を極大化できるナノ金属担持触媒の製造方法に関し、より詳しくは、所定の長さに切断されたセルロース繊維を特定の処理過程を経て触媒支持体として製造し、前記触媒支持体の表面に炭素ナノチューブを成長させた後、成長した炭素ナノチューブの表面にナノ金属触媒を担持させるナノ金属担持触媒の製造方法、セルロース繊維触媒支持体を含んでなるナノ金属担持触媒、及びセルロース繊維のナノ金属触媒担持用触媒支持体としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の触媒の研究動向を詳察すると、大きく表面積の広い触媒支持体の開発と、触媒金属のナノサイズ化とに分けられる。その中でも、表面積が広いながらも、製造コストが安価な新しい触媒支持体物質の開発は非常に大きな付加価値を持つと言える。
【0003】
本発明において、触媒支持体用として使用しようとするセルロース繊維は、身の回りで入手し易い非常に安価な素材であって、自らの表面積と気孔度及び物理的強度に非常に優れていることから、軽量複合材料、吸着及びろ過素材や強化剤などに広く用いられてきた。しかしながら、これまでセルロース繊維を一連の過程を経て触媒支持体として活用しようとする研究は国内外を見渡しても皆無であり、従来の触媒支持体として用いられるメソホラス(mesophorous)カーボンや活性炭素、カーボンブラックなどの高い製造コストを考慮すると、セルロース繊維の活用は膨大な付加価値を創出すると共に、新たなナノ−バイオ−環境に優しいハイブリッドエネルギー素材を開発するという意味合いを持つ。また、既に特許出願となっている炭素紙の表面に炭素ナノチューブを直接成長させ、化学気相蒸着法を用いて白金ナノ触媒を担持する技術(下記の特許文献1参照)を本発明に適用する場合、触媒活性を更に大きく増加させることができることは自明であると言える。
【0004】
炭素ナノチューブは、電気伝導度、比表面積、水素貯蔵性に優れており、自らの吸着力に優れているという特性を有しているだけでなく、特有の表面構造により金属粒子を担持する場合、粒子同士の凝集を防止できるという長所から、触媒支持体の用途としての使用が期待される。しかしながら、これまで炭素ナノチューブに関する研究は、主に合成と関連したものが多く、大量生産が困難であることや製造コストの問題から、その応用に関する研究は非常に遅れを取っているのが現状であり、特に炭素ナノチューブを触媒支持体として応用しようとする試みは極めて稀である。
【0005】
本発明では、非常に簡単、かつ、低コストで済む工程を通じてセルロース繊維触媒支持体の表面に炭素ナノチューブを成長させ、それに多様なナノ金属触媒(例えば、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン、ルテニウムなど)を担持することで、最終的に、高性能の担持触媒を開発しようとした。ナノ金属触媒の担持のためには、一般に用いられる含浸法ではなく、特許文献1で提示されているような化学気相蒸着法を用いた。これは、化学的気相蒸着法で金属触媒粒子を担持する場合、触媒粒子の大きさが大幅に減少し、触媒粒子の分散度が非常に優れているからである。貴金属である白金触媒は、各種水素化反応や改質反応などに広く用いられ、他の金属触媒に比べて優れた活性を示すにも拘らず、高い製造コストが問題となっている。従って、このような問題を解決するためには、触媒活性相の白金触媒粒子の大きさをナノサイズに最小化し、高分散状態で担持することで、最少の白金触媒含量を用いて触媒活性点の数を最大化することが重要である。そのためには、触媒を支持している触媒支持体の表面積が優れていなければならず、担持過程で触媒金属粒子が触媒支持体の表面で凝集しないようにしなければならない。
【0006】
これまでセルロース繊維のみを一連の処理工程を経て触媒支持体として活用した例は全くない状態である。類似の研究として、下記の特許文献2ではセルロースマトリクスの間に電気伝導度を示す炭素物質を添加してセルロース複合材料を製造した後、これを燃料電池電極として活用する方法を提示した。また、特許文献3では天然硅藻土(diatomite)、ベントナイト粘土、シリカ、セルロース繊維、トウモロコシ粉、及び水を混合して射出した後、これをペレット状にし、乾燥させた後に焼成して多孔性触媒支持体を製造する方法を提示した。
【0007】
研究論文としては、K. Rajender Reddyらは商用のマイクロ結晶相セルロース(S. D. Fine chemicals., India)を活用してこれを触媒金属が溶解されている溶液に含浸させてセルロース支持パラジウム触媒を製造した(下記の非特許文献4参照)。 B. Azambreらは商用のマイクロ結晶相セルロース(Aldrich)を熱処理して炭素支持体を合成し、これを触媒支持体として適合するように、一連の処理工程を経て支持体表面の親水性を調節するようにした(下記の非特許文献5参照)。
【0008】
上述したように、セルロース繊維そのものを触媒支持体として使用しようとする研究は未だに試みられておらず、本発明は地球上に豊富に存在する資源であるセルロースを高付加価値の触媒支持体として応用しようとする発明であり、ナノ−バイオ−環境に優しい融合技術として非常に重要な意味を持っていると言える。
【特許文献1】韓国特許出願10-2007-0015801号
【特許文献2】米国特許出願公開US2006/0286434 A1号
【特許文献3】米国特許US4、253、990号
【非特許文献1】Journal of molecular catalysis A:chemical 252(2006)12〜16
【非特許文献2】Journal of analytical and applied pyrolysis 55(2000)105〜117
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、多数のマイクロ細孔を有している多孔性セルロース繊維をナノ金属触媒担持用触媒支持体の材料として用いることで、触媒の製造コストを低減させると共に、多様な触媒反応において少量でも触媒反応活性の増加を極大化し、反応後に高価のナノ金属触媒成分の収集が容易なナノ金属担持触媒を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、表面積と気孔度に優れていながらも、比較的に安価なセルロース繊維を触媒支持体として用いる場合、新たなナノ−バイオ−環境に優しいハイブリッド技術が融合した触媒支持体として利用が可能であるという点に着目して本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、セルロース繊維を分離して触媒支持体を製造する第1段階と、製造された触媒支持体に炭素ナノチューブを成長させる第2段階と、炭素ナノチューブが成長した触媒支持体にナノ金属触媒を担持する第3段階とを含んでなるナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0012】
以下、本発明に係るナノ金属担持触媒の製造方法をより詳細に説明する。
第1段階:セルロース触媒支持体を製造する段階
【0013】
セルロース繊維を分離して触媒支持体を製造する段階は、(A)セルロース繊維をマイクロメータ単位の繊維に分離し、分離された繊維を所定の長さに切断する段階と、(B)切断されたセルロース繊維を炭化させる段階とを含んでなる。
第2段階:炭素ナノチューブを成長させる段階
【0014】
前記第1段階により製造されたセルロース触媒支持体に炭素ナノチューブを成長させる段階は、(C)炭化したセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブ成長用触媒金属を担持する段階と、(D)炭素ナノチューブ成長用触媒金属が担持されたセルロース触媒支持体の表面に炭素源を供給して炭素ナノチューブを成長させる段階とを含んでなる。
第3段階:炭素ナノチューブにナノ金属触媒を担持する段階
【0015】
前記第2段階により製造された炭素ナノチューブの表面にナノ金属触媒を担持する段階は、(E)セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブから炭素ナノチューブ成長用触媒金属成分を除去し、ナノ金属触媒の担持のための前処理を施す段階と、(F)前処理されたセルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブの表面に化学的気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階とを含んでなる。
【0016】
前記のような一連の方法により本発明に係るセルロース触媒支持体にナノ金属触媒が担持されたナノ金属担持触媒を製造する。
【0017】
また、本発明は、セルロース触媒支持体と、前記触媒支持体に直接成長した炭素ナノチューブと、炭素ナノチューブの表面に担持されたナノ金属触媒粒子とを含んでなるナノ金属担持触媒を提供する。
【0018】
さらに具体的には、以下のような発明などを提供する。
【0019】
第一発明では、セルロース繊維を分離して触媒支持体を製造する第1段階と、製造された触媒支持体に炭素ナノチューブを成長させる第2段階と、炭素ナノチューブが成長した触媒支持体にナノ金属触媒を担持する第3段階とを含んでなるナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0020】
第二発明では、第一発明を基本とし、さらに、セルロース触媒支持体を製造する第1段階は、(A)セルロース繊維をマイクロメータ単位の繊維に分離し、分離された繊維を所定の長さに切断する段階と、(B)切断されたセルロース繊維を炭化させる段階と、を含んでなることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0021】
第三発明では、第一発明を基本とし、さらに、前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0022】
第四発明では、第一発明を基本とし、さらに、炭素ナノチューブを成長させる第2段階は、(C)炭化したセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブ成長用触媒金属を担持する段階と、(D)炭素ナノチューブ成長用触媒金属が担持されたセルロース触媒支持体の表面に炭素源を供給して炭素ナノチューブを成長させる段階と、を含んでなることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0023】
第五発明では、第四発明を基本とし、さらに、前記(C)段階は、炭素ナノチューブ成長用触媒金属としてニッケル、コバルト及び鉄からなるグループより選択されるいずれか1つ又は2つ以上の混合金属を前駆体として用いた水溶液を用いて行われることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0024】
第六発明では、第一発明を基本とし、さらに、炭素ナノチューブが成長した触媒支持体にナノ金属触媒を担持する第3段階は、(E)セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブから炭素ナノチューブ成長用触媒金属成分を除去し、ナノ金属触媒の担持のための前処理を施す段階と、(F)前処理されたセルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブの表面に化学気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階と、を含んでなることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0025】
第七発明では、第六発明を基本とし、さらに、前記(E)前処理を施す段階は、塩酸溶液で処理した後、水洗及び乾燥させ、窒酸と硫酸の混合酸溶液で50〜70℃で5〜360分間処理して行われることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0026】
第八発明では、第一発明を基本とし、さらに、前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とするナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0027】
第九発明では、セルロース繊維をマイクロメータ単位の繊維に分離した後、分離された繊維を所定の長さに切断する段階と、切断されたセルロース繊維を熱処理により炭化させてナノ金属触媒担持用触媒支持体として製造する段階と、製造されたセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブ成長用触媒金属を担持した後、一定温度で炭素源を供給して炭素ナノチューブを直接成長させる段階と、炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体を酸で処理した後、化学的気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階と、を含んでなるナノ金属担持触媒の製造方法を提供する。
【0028】
第十発明では、セルロース触媒支持体と、前記触媒支持体に直接成長した炭素ナノチューブと、炭素ナノチューブの表面に担持されたナノ金属触媒粒子と、を含んでなるナノ金属担持触媒を提供する。
【0029】
第十一発明では、第十発明を基本とし、さらに、前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とするナノ金属担持触媒を提供する。
【0030】
第十二発明では、第十発明を基本とし、さらに、前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とするナノ金属担持触媒を提供する。
【0031】
第十三発明では、ナノ金属触媒担持用触媒支持体の製造方法であって、セルロース繊維をマイクロメータ単位に分離する段階と、分離されたセルロース繊維を所定の単位に切断する段階と、切断されたセルロース繊維を熱処理して炭化させる段階と、を含んでなるナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法を提供する。
【0032】
第十四発明では、第十三発明を基本とし、さらに、前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とするナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法を提供する。
【0033】
第十五発明では、第十三発明を基本とし、さらに、前記分離されたセルロース繊維は1〜2mmに切断し、切断されたセルロース繊維を水素:窒素の体積比が1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、収得物を500〜1500℃で0.5〜2時間熱処理して触媒支持体として製造する段階を更に含んでなることを特徴とするナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法を提供する。
【0034】
第十六発明では、第十三発明を基本とし、さらに、前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とするナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法を提供する。
【0035】
第十七発明では、ナノ金属触媒を担持するための触媒支持体用セルロース繊維を提供する。
【0036】
第十八発明では、第十七発明を基本とし、さらに、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とするセルロース繊維。
【0037】
第十九発明では、第十七発明を基本とし、さらに、前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とするセルロース繊維を提供する。
【発明の効果】
【0038】
本発明は従来の触媒支持体として一般に用いられるシリカ、アルミナ、ゼオライト、多様な炭素系の触媒支持体などに替わる新しい多孔性触媒支持体の開発に関するものであり、既存の多様な不均一系触媒(heterogeneous catalyst)の一般的な触媒支持体として用いられるγ-アルミナに比べて原価が略1/130であり、シリカに比べて原価は略1/310であり、カーボンブラック(Vulcan XC−72R)に比べて原価が1/150である、顕著に安価なセルロース素材を触媒支持体として用いる。本発明に係るセルロース繊維を用いた触媒支持体の製造方法は、工程が非常に単純、かつ、簡単であるので、製造コストの面でも非常に有利であるという効果を奏する。それだけでなく、本発明に係るセルロース繊維は自ら多くの細孔を有しており、広い表面積(へネケ麻の場合、BET表面積が200m/g以上)により、触媒支持体として適用される際に多様な触媒反応に非常に有利である。
【0039】
本発明において、セルロース繊維を触媒支持体として用いると共に、特許文献1に開示されているように、炭素ナノチューブの直接成長技術及び化学気相蒸着法を用いたナノ金属触媒の担持技術を応用することで、高付加価値の触媒を達成するようになり、特に触媒の性能向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明に係るナノ金属担持触媒の製造方法の一実施形態を詳細に説明する。
【0041】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る概略図である。
【0042】
本発明のナノ金属担持触媒の製造方法は、(A)セルロース繊維をマイクロメータ単位の繊維に分離し、分離された繊維を所定の長さに切断する段階と、(B)切断されたセルロース繊維を熱処理により炭化させてナノ金属触媒担持用触媒支持体として製造する段階と、(C)炭化したセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブ成長用触媒金属を担持する段階と、(D)炭素ナノチューブ成長用触媒金属が担持されたセルロース触媒支持体の表面に炭素源を供給して炭素ナノチューブを成長させる段階と、(E)セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブから炭素ナノチューブ成長用触媒金属成分を除去し、ナノ金属触媒の担持のための前処理を施す段階と、(F)前処理されたセルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブの表面に化学的気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階とを含んでなる。
【0043】
(A)段階は、セルロース原試料を触媒支持体の形態に製作するために、数マイクロメータの厚さの細い繊維に分離した後、一定の長さに切断する段階である。
【0044】
セルロース原試料としては、へネケ麻(henequen;龍舌蘭)、ケナフ(kenaf)、アバカ(abaca)、竹(bamboo)、大麻(hemp)、亜麻(flax)、苧麻(jute)、パイナップル、カラムシ(ramie)、サイザル(sisal)麻などを用いることができ、これらを直径数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さに切断する。
【0045】
(B)段階は、切断されたセルロース繊維を一連の前処理過程を経て炭化させて触媒支持体として製造する段階である。
【0046】
前記(A)段階により触媒支持体の形態に製作されたセルロース繊維を水素:窒素=1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、続いて500〜1500℃で0.5〜2時間維持することで、炭化した状態の触媒支持体を製造する。この過程でセルロース繊維が有している不純物成分が除去されて繊維自らの壁厚さが減少し、不純物(主に、ワックス、脂肪成分)が存在していた空間は内部気孔に維持される。
【0047】
次に、セルロース触媒支持体の表面の濡れ性を増加させるために、セルロース触媒支持体を0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸した後、−0.15〜1.3Vで掃引速度(sweep rate)を50mV/sにして10〜60サイクル処理した。ここで、硫酸水溶液の濃度はセルロース触媒支持体の材質及び構造によって異なり、0.1molより低ければ表面処理効果が低下し、0.5molより大きければセルロース触媒支持体を腐食させるおそれがある。適用電圧の範囲は、−0.15〜1.3Vの間であり、これ以上の範囲ではセルロース支持体の損傷をもたらし得る。処理する回数も触媒支持体の材質や硫酸溶液の濃度によって調節され、10サイクル以下では処理効果が殆どなく、60サイクル以上では表面の損傷をもたらし得る。
【0048】
(C)段階は、炭化したセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブを成長させるために、触媒金属であるニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属粒子を担持する段階である。
【0049】
前記(B)段階において、硫酸処理後に乾燥したセルロース触媒支持体をナイトレート又はアセテート系のニッケル、コバルト、鉄化合物、又はこれらの混合物を前駆体として用いて濃度が0.1〜1molの水溶液に浸した後、超音波を加える段階を1〜10回繰り返して金属粒子をセルロース触媒支持体の表面に均等に分散させる。ここで前駆体溶液の濃度が0.1mol以下であれば、セルロース触媒支持体の表面への担持が困難になり、1mol以上の場合には担持量は大きくても金属粒子が大きい塊状になる傾向が強まる。担持回数の増加により、セルロース触媒支持体の表面の金属担持量が増加し、担持段階を繰り返す場合には途中で大気中で乾燥させる過程を経て金属粒子が効果的に担持されるようにする。
【0050】
(D)段階は、セルロース触媒支持体の表面に気相の炭素源を供給し、適正温度を維持することで、炭素ナノチューブを成長させる段階である。
【0051】
前記(C)段階において、ニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物が担持されたセルロース触媒支持体を加熱炉(Furnace)内に位置する石英管(Quartz tube)の中央に設置し、内部の圧力は6〜10Torrに減圧した状態で30分以上維持することで、石英管内部の不純物を除去する。続いて、常温で50〜300sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、以下、「sccm」という)の窒素を1時間以上流して内部を非活性状態にする。窒素の流量が50sccm以下と少なければ、石英管内の流れが不均一になるおそれがあり、300sccm以上の場合には、反応が起こるための滞留時間を確保し難い。
【0052】
次に、酸化物状態のニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属の還元及び金属の前駆体化合物から官能基を除去し、純粋な触媒金属のみを残すために、30〜150sccmの水素を更に流しながら、金属成分の還元温度(400〜500℃)まで上昇させた後、この温度で2時間維持して金属成分の完全な還元が起こるようにする。続いて、温度を10℃/分の速度で継続的に上昇させる。その後、石英管内部の温度が炭素ナノチューブの活発な成長が起こる600〜800℃に到達する時点で炭素源として用いられたメタン、ベンゼン、エタノール、キシレン(2〜300sccm)などを流すと、セルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブが成長し始める。用いられた炭素源のうち、分子内の炭素数が多いほど、流量を2〜3sccmに近く減少させ、メタンのように炭素数が少ない場合には100sccm以上の高い流量を適用するのが有利になる。この状態で10分〜6時間維持し、反応時間は用いられた炭素源と所望の炭素ナノチューブの成長形態(長さ、密度、太さなど)に応じて調節する。
【0053】
(E)段階は、セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブから触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属を除去し、ナノ金属触媒の担持のために、炭素ナノチューブの表面を前処理する段階である。
【0054】
前記(D)段階において、セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブで触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物成分を除去するために塩酸処理を施すが、炭素ナノチューブが成長した状態のセルロース触媒支持体を塩酸溶液(6〜10mol)に浸し、6〜24時間維持した後、蒸留水で洗って100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させる。前記オーブン温度が100℃以下の場合には水分が除去され難く、120℃以上になると、試料の変形をもたらすおそれがあり、少なくとも12時間、多くは24時間乾燥させることで、水分を完全に除去できる。塩酸溶液の濃度が6mol以下の場合には処理効果が低下し、10mol以上の場合にはセルロース触媒支持体の表面を腐食させるおそれがある。
【0055】
その後、炭素ナノチューブの表面の濡れ性を向上させ、酸化基を置き換え、ナノ金属触媒の効果的な蒸着のための欠陥を作るために、混合酸溶液(14Mの窒酸と98%の硫酸を体積比1:1で混合)に試料を浸し、50〜70℃で還流させながら、5〜300分間処理させる。混合酸溶液は、窒酸と硫酸を1:1で混合した場合に最も処理効果に優れており、混合酸溶液の濃度が前記値より低ければ、処理効果が低下し、逆に、高い場合には表面を深刻に腐食させ得る。常温でも処理効果が現れるが、適用温度が50℃以上である場合に処理効果に優れ、70℃以上では混合酸の深刻な気化が起こり得る。処理時間は炭素ナノチューブ及び炭素紙の構造に応じて変化させ、軽い欠陥(defect)の形成には5分前後に調節する。300分以上の処理では、セルロース触媒支持体及び炭素ナノチューブの深刻な変形を起こし得る。処理された試料は、蒸留水で複数回洗い、100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させて水分を除去する。
【0056】
(F)段階は、セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブの表面に化学的気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階である。
【0057】
ナノ金属触媒としては、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上を用いることができる。
【0058】
前記(E)段階において、炭素ナノチューブが成長したセルロース支持体を石英管の中央に位置させ、前記(C)段階と同様に、100〜120℃で圧力を6〜10Torrに30分間維持して石英管内の不純物を除去した後、それに窒素(50〜300sccm)を流しながら、1時間以上維持する。化学気相蒸着法を用いたナノ金属触媒の担持のために、石英管内部の温度を10℃/分の昇温速度で80〜300℃まで変化させ、反応温度に到達する時点で気相のナノ金属触媒の前駆体を流し始めることで、炭素ナノチューブの表面にナノ金属触媒粒子が担持されるようにする。
【0059】
セルロース触媒支持体の上に成長した炭素ナノチューブの表面にナノ金属触媒粒子を担持するために、オーブン内に設置されている気化器にナノ金属触媒の前駆体を入れ、60〜80℃で加熱して前駆体が気化するようにする。
【0060】
その後、前駆体の温度が一定温度に到達すれば、石英管の内側に直接流していた窒素が気化器を介して流れるように経路を変更することで、気相のナノ金属触媒の前駆体が運搬気体である窒素の流れに沿って石英管内に位置するセルロース触媒支持体まで伝達されるようにし、気化器が位置するオーブンと石英管を加熱する加熱炉を連結する連結管の温度を同一に維持し、ナノ金属触媒の前駆体が石英管内に流れ始める時点はセルロース触媒支持体の温度が反応温度に到達する時点と一致するようにする。
【0061】
より好ましくは、前駆体の温度が60〜80℃に到達すれば、石英管の内側に直接流していた窒素(10〜300sccm)が気化器を介して流れるように経路を変更することで、気相のナノ金属触媒の前駆体が運搬気体である窒素の流れに沿って石英管内に位置するセルロース触媒支持体まで伝達されるようにする。このとき、気化器が位置するオーブンと石英管を加熱する加熱炉を連結する連結管の温度も前駆体の完全な気化が起こる60〜80℃に維持し、ナノ金属触媒の前駆体が石英管内に流れ始める時点はセルロース触媒支持体の温度が反応温度である80〜300℃に到達する時点と一致するようにし、この温度で一定時間(0.5〜24時間)維持する。反応時間は担持しようとするナノ金属触媒の担持量に応じて調節し、担持量を最大にしようとする場合には24時間以上に維持することもできる。
【0062】
本発明の結果として、セルロース繊維を触媒支持体として用い、それに炭素ナノチューブを直接成長させた後、ナノ金属触媒を担持した担持触媒は従来のアルミナ又はカーボンブラックなどの触媒支持体を用い、一般的な含浸法を用いて製造された担持触媒に比べて製造コストが顕著に減少した。また、触媒支持体として用いられるセルロース繊維の優れた気孔度と表面積により、触媒反応面積が大きく増加し、化学気相蒸着法によりナノ金属触媒の粒子を高分散状態で担持できるようになり、これにより、触媒活性点が大きく増加し、少量のナノ金属触媒の前駆体を使用するだけでも優れた性能の触媒が製作可能である。
【0063】
以下、本発明の理解を助けるために、好適な実施形態を提示するが、下記の実施形態は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するのはもちろんである。
<実施形態>
実施例1
【0064】
(A)へネケ麻(henequen;龍舌蘭)を触媒支持体の形態に製作するために、直径数十〜数百μmの厚さの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さに切断した。用いる繊維は、断面の直径を数μm前後に分離する場合、表面積の増加により、更に有利になるが、本発明では手作業の特性上、数十〜数百μmの厚さに分離した。
【0065】
(B)前記(A)段階により一定の厚さと長さに切断されたセルロース繊維を水素:窒素=1:1の雰囲気で700℃まで10℃/分の昇温速度で加熱した後、続いて700℃で30分間維持することで、炭化した状態の触媒支持体を製造した。その後、セルロース触媒支持体を0.1molの硫酸水溶液に浸した後、−0.15〜1.3Vで掃引速度を50mV/sにし、60サイクル処理した。処理されたセルロース触媒支持体を走査顕微鏡で分析し、その結果を図2に示した。
【0066】
(C)前処理されたセルロース支持体の表面に炭素ナノチューブを成長させるために、硫酸処理後に乾燥したセルロース触媒支持体をナイトレート又はアセテート系のニッケルを前駆体として用いた0.1mol濃度の水溶液に浸した後、超音波を加える段階を3回繰り返して金属粒子をセルロース触媒支持体の表面に均等に分散させた。金属粒子が担持されたセルロース触媒支持体の表面を走査顕微鏡で分析し、その結果を図3に示した。
【0067】
(D)ニッケル粒子が担持されたセルロース触媒支持体を加熱炉内に位置する石英管の中央に設置し、内部の圧力は10Torrに減圧した状態で30分以上維持して石英管内部の不純物を除去した。その後、常温で100sccmの窒素を1時間以上流し、内部を非活性状態にした。
【0068】
次に、酸化物状態であるニッケル金属の還元のために、100sccmの水素を更に流しながら、金属成分の還元温度である500℃まで上昇させた後、この温度で2時間維持して金属成分の完全な還元が起こるようにした。続いて温度を10℃/分の速度で継続的に上昇させ、700℃に到達する時点で炭素源であるアセチレンを2sccm流してセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブを成長させた。炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体を走査顕微鏡で分析し、その結果を図4に示した。
【0069】
(E)セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブで触媒として用いられたニッケル金属成分を除去するために、セルロース電極を6molの塩酸溶液に浸し、24時間維持した後、蒸留水で洗い、110℃のオーブンで12時間乾燥させた。
【0070】
その後、14Mの窒酸と98%の硫酸を体積比1:1で混合した混合酸溶液に試料を浸し、50〜70℃で還流させながら、5分間処理した。
【0071】
(F)前記(A)〜(E)段階を経て炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体を石英管の中央に位置させ、前記(C)段階と同様に、110℃で圧力を10Torrに30分間維持して石英管内の不純物を除去した後、それに100sccmの窒素を流しながら、1時間以上維持した。化学的気相蒸着法を用いた白金触媒の担持のために、石英管内部の温度を10℃/分の昇温速度で140℃まで変化させ、反応温度に到達する時点で気相の白金前駆体を流し始めることで、炭素ナノチューブの表面に白金触媒粒子が担持されるようにした。
【0072】
オーブン内に設置されている気化器に白金前駆体を入れ、60℃で加熱して前駆体が気化するようにした。前駆体の温度が60℃に到達すると、石英管の内側に直接流していた100sccmの窒素が気化器を介して流れるように経路を変更することで、気相の白金前駆体が運搬気体である窒素の流れに沿って石英管内に位置するセルロース触媒支持体まで伝達されるようにした。このとき、気化器が位置するオーブンと石英管を加熱する加熱炉を連結する連結管の温度も前駆体の完全な気化が起こる60℃に維持し、白金前駆体が石英管内に流れ始める時点はセルロース触媒支持体の温度が140℃に到達する時点と一致するようにし、この温度で2時間維持させた。白金触媒がセルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブに担持された担持触媒を透過電子顕微鏡で分析し、その結果を図5に示した。
【0073】
図5に示すように、前記のような工程により製造された担持触媒は、セルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブを直接成長させ、このとき、表面構造が改善された炭素ナノチューブの表面にナノ白金触媒粒子が担持されることを確認した。

比較例1
【0074】
従来の炭素系触媒支持体として最も一般に用いられるカーボンブラック(Vulcan XC-72、Carbot)を110℃のオーブンで12時間乾燥させて水分を除去した後、触媒支持体として用いた。
【0075】
乾燥した0.1gのカーボンブラック触媒支持体を用いて前記実施例1の(F)段階と同一の化学気相蒸着法で白金触媒を担持して担持触媒を製造した。

比較例2
【0076】
不均一系触媒の最も一般的な触媒支持体の1つであるγ-Al(97.7%、strem chemical Inc.)を110℃のオーブンで12時間乾燥させて水分を除去した後、触媒支持体として用いた。
【0077】
乾燥した0.1gのγ-Alを用いて前記実施例1の(F)段階と同一の化学気相蒸着法で白金触媒を担持して担持触媒を製造した。
試験例1.BET表面積、細孔体積及び細孔面積の測定
【0078】
前記実施例1の(B)段階により製造されたセルロース触媒支持体と(D)段階により炭素ナノチューブが成長した状態のセルロース触媒支持体、比較例1で乾燥により水分が除去された状態のカーボンブラック(Vulcan XC-72、Carbot)触媒支持体、及び比較例2で乾燥により水分が除去された状態のγ-Al触媒支持体のBET表面積 、細孔体積(micropore volume)及び細孔面積 (micropore area)を測定し、その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0079】
前記表1に示すように、実施例1の(B)段階により熱処理を経たへネケ麻セルロース触媒支持体は、比較例1のカーボンブラック及び比較例2のγ-Al触媒支持体と類似の範囲の表面積を有しているが、細孔体積と細孔面積が顕著に大きい値を示した。従って、実施例1のへネケ麻セルロース触媒支持体が有しているこのような細孔特性は触媒反応に非常に有利に作用するので、触媒支持体として用いるのに非常に優れていることが分かる。また、実施例1の(D)段階により炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体の場合、(B)段階により製造されたセルロース触媒支持体に比べて炭素ナノチューブの成長による表面積の増加が大きく現れる一方、細孔体積と細孔面積の値には殆ど変化がないことが分かる。これは、炭素ナノチューブ自らの微細細孔によって細孔体積と細孔面積が増加し得るが、炭素ナノチューブの成長過程でセルロース支持体表面の微細細孔の一部が塞がることもあるので、2通りの影響が互いに相殺効果を発揮したものと考えられる。
試験例2.担持触媒のCO化学吸着の分析
【0080】
前記実施例1、比較例1及び比較例2で製造されたそれぞれの白金担持触媒に対する触媒質量当たりのCO吸着量を測定し、その結果を図6に示した。
【0081】
図6に示すように、実施例1の炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体の場合、一般的な商用の支持体である比較例1のカーボンブラック(Vulcan XC-72、Carbot)又は比較例2のγ-Al触媒支持体と比較して単位白金質量当たりのCO吸着量は類似に得られたが、担持触媒の質量全体に当たる白金の吸着量はカーボンブラックの場合より1.4倍、そしてγ-Al場合より1.21倍高くなることが分かる。これは、炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体の場合、カーボンブラックとγ-Alの場合に比べて単位触媒質量当たりの表面積が大きく現れるので、ここに担持できるナノ白金触媒粒子の量が増加し、結果として、白金触媒の活性相に吸着するCOの量が増加するからである。一方、単位白金質量当たりのCO吸着量は、前記3種類の触媒支持体の場合にいずれも類似に現れており(白金担持量は、icp-oes成分分析で測定)、これは同一の化学気相蒸着法を用いて担持された触媒の場合、白金粒子の大きさと分布が3種類のいずれの場合にも類似に現れるからである。
試験例3.メタンの二酸化炭素改質反応試験
【0082】
前記実施例1、比較例1及び比較例2で製造されたそれぞれの担持触媒を用いてメタンの二酸化炭素改質反応を下記のような方法で行い、その結果を互いに比較した。
【0083】
実施例1で製造された炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体を用いた白金担持触媒、比較例1で製造されたカーボンブラック触媒支持体を用いた白金担持触媒、及び比較例2で製造されたγ-Al触媒支持体を用いた白金担持触媒を110℃のオーブンで12時間以上乾燥させた後、それぞれの0.1gの担持触媒をメタンの二酸化炭素改質反応を行うための反応器に入れた。触媒が充填された反応器に50sccmの窒素を流しながら、10℃/分の昇温速度で反応温度である700℃まで昇温させた。反応器が反応温度に到達すると、メタンと二酸化炭素のモール比を1:1にして、それぞれ20sccmを反応器の内部に流した。前記反応条件で72時間改質反応を行い、反応器の出口から出る気体はガスクロマトグラフィシステムに直接連結して熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector;TCD)と炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector;FID)を用いて成分分析を行った。ガスクロマトグラフィ結果からそれぞれの触媒に対する反応時間当りの転換率を計算し、その結果を図7に示した。
【0084】
図7に示すように、時間の経過に伴う改質反応活性を詳察すると、実施例1の炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体の場合、反応初期から反応48時間経過後の間で最も高い値を示し、その後、比較例1のカーボンブラック(Vulcan XC-72、Carbot)、次いで、比較例2のγ-Al触媒支持体の順となった。あらゆる触媒支持体で反応時間の経過によって触媒活性の減少現象が現れたが、これは改質反応が700℃の高温で行われるので、白金ナノ触媒の一部で凝集(coagulation)する現象が生じ、また改質反応の副産物として触媒の表面にコークス成分が沈積して触媒活性相を遮るからであると考えられる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の製造方法に対する概略的なフローチャートである。
【図2】実施例1の(A)段階によってセルロース繊維を切断した後、(B)段階によって炭化したセルロース支持体の走査顕微鏡写真である。
【図3】実施例1の(C)段階によって炭化したセルロース繊維に炭素ナノチューブを成長させるためのニッケル触媒を担持した後、表面を分析した走査顕微鏡写真である。
【図4】実施例1の(D)段階によって製造されたセルロース支持体の表面に炭素ナノチューブを成長させた後、表面を分析した走査顕微鏡写真である。
【図5】実施例1の(F)段階によって製造されたセルロース支持体の表面に成長した炭素ナノチューブの表面に白金ナノ触媒を担持させた後の試料を分析した透過電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例1、比較例1及び比較例2で製造された担持触媒の質量当たりのCO吸着量を測定したグラフである。
【図7】本発明の実施例1、比較例1及び比較例2で製造された担持触媒を用いてメタンの二酸化炭素改質反応を行い、その結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を分離して触媒支持体を製造する第1段階と、
製造された触媒支持体に炭素ナノチューブを成長させる第2段階と、
炭素ナノチューブが成長した触媒支持体にナノ金属触媒を担持する第3段階と
を含んでなるナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項2】
セルロース触媒支持体を製造する第1段階は、
(A)セルロース繊維をマイクロメータ単位の繊維に分離し、分離された繊維を所定の長さに切断する段階と、
(B)切断されたセルロース繊維を炭化させる段階と
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とする請求項1に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項4】
炭素ナノチューブを成長させる第2段階は、
(C)炭化したセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブ成長用触媒金属を担持する段階と、
(D)炭素ナノチューブ成長用触媒金属が担持されたセルロース触媒支持体の表面に炭素源を供給して炭素ナノチューブを成長させる段階と
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項5】
前記(C)段階は、炭素ナノチューブ成長用触媒金属としてニッケル、コバルト及び鉄からなるグループより選択されるいずれか1つ又は2つ以上の混合金属を前駆体として用いた水溶液を用いて行われることを特徴とする請求項4に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項6】
炭素ナノチューブが成長した触媒支持体にナノ金属触媒を担持する第3段階は、
(E)セルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブから炭素ナノチューブ成長用触媒金属成分を除去し、ナノ金属触媒の担持のための前処理を施す段階と、
(F)前処理されたセルロース触媒支持体の表面に成長した炭素ナノチューブの表面に化学気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階と
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項7】
前記(E)前処理を施す段階は、塩酸溶液で処理した後、水洗及び乾燥させ、窒酸と硫酸の混合酸溶液で50〜70℃で5〜360分間処理して行われることを特徴とする請求項6に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項8】
前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項9】
セルロース繊維をマイクロメータ単位の繊維に分離した後、分離された繊維を所定の長さに切断する段階と、
切断されたセルロース繊維を熱処理により炭化させてナノ金属触媒担持用触媒支持体として製造する段階と、
製造されたセルロース触媒支持体の表面に炭素ナノチューブ成長用触媒金属を担持した後、一定温度で炭素源を供給して炭素ナノチューブを直接成長させる段階と、
炭素ナノチューブが成長したセルロース触媒支持体を酸で処理した後、化学的気相蒸着法を用いてナノ金属触媒を担持する段階と
を含んでなるナノ金属担持触媒の製造方法。
【請求項10】
セルロース触媒支持体と、
前記触媒支持体に直接成長した炭素ナノチューブと、
炭素ナノチューブの表面に担持されたナノ金属触媒粒子と
を含んでなるナノ金属担持触媒。
【請求項11】
前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とする請求項10に記載のナノ金属担持触媒。
【請求項12】
前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項10に記載のナノ金属担持触媒。
【請求項13】
ナノ金属触媒担持用触媒支持体の製造方法であって、
セルロース繊維をマイクロメータ単位に分離する段階と、
分離されたセルロース繊維を所定の単位に切断する段階と、
切断されたセルロース繊維を熱処理して炭化させる段階と
を含んでなるナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法。
【請求項14】
前記セルロース繊維は、へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とする請求項13に記載のナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法。
【請求項15】
前記分離されたセルロース繊維は1〜2mmに切断し、
切断されたセルロース繊維を水素:窒素の体積比が1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、
収得物を500〜1500℃で0.5〜2時間熱処理して触媒支持体として製造する段階を更に含んでなることを特徴とする請求項13に記載のナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法。
【請求項16】
前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項13に記載のナノ金属触媒担持用セルロース触媒支持体の製造方法。
【請求項17】
ナノ金属触媒を担持するための触媒支持体用セルロース繊維。
【請求項18】
へネケ麻、ケナフ、アバカ、竹、大麻、亜麻、苧麻、パイナップル、カラムシ及びサイザル麻からなるグループより選択されることを特徴とする請求項17に記載のセルロース繊維。
【請求項19】
前記ナノ金属触媒は、白金、パラジウム、コバルト、モリブデン及びルテニウムからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項17に記載のセルロース繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−160569(P2009−160569A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179432(P2008−179432)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(507403551)韓国エネルギー技術研究院 (5)
【Fターム(参考)】