説明

セレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッド

【課題】真空装置を用いることなく、また、セレン源の利用効率を高く維持した状態でセレン薄膜の蒸着を行うことができるセレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッドを提供する。
【解決手段】セレン薄膜蒸着方法が、プラズマヘッド200を提供するステップと、基板を大気圧下で支持するステップと、プラズマヘッドによって固体セレン源を分解し、セレン薄膜を基板上に蒸着するステップとを含み、セレン薄膜蒸着装置1が、基板を支持する支持台100と、固体セレン源を保持し、支持台と互いに相対的に移動するように支持台上に配置されるプラズマヘッドとを備え、プラズマヘッドが固体セレン源を分解し、セレン薄膜を基板上に蒸着するものであり、プラズマヘッドが、プラズマを発生するチャンバと、チャンバを取り囲むようにチャンバと接続したハウジングと、ハウジング内に配置された固体セレン源とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッドに関し、特に、プラズマを用いて固体セレン源を分解することでセレン薄膜を蒸着する方法、セレン薄膜を蒸着する装置、及びこれらに用いるプラズマヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の発展に伴い、薄膜太陽電池は、簡単な構造であることも含めて多くの利点があり、重視されてきた。さまざまな種類の薄膜太陽電池の中でも、多くの国々がその高いエネルギー変換効率により、銅、インジウム、ガリウム、及びセレン(Cu(In1−xGa)(Se)(即ち’’CIGS’’))薄膜太陽電池への投資を増やしている。しかしながら、CIGS薄膜太陽電池は、組成比、粒度、及び密度など、光吸収層の薄膜の品質が原因で、大量生産することが困難である。薄膜の品質に関しては、セレン化プロセスが重要である。
【0003】
光吸収層を製造する代表的な方法として、スパッタリング法及び共蒸着法が知られている。
【0004】
スパッタリング法は、例えば、米国特許出願公開第2009/0215224号明細書及びCurrent Applied Physics,(2008)の第766頁における、S.J.Ahn他に記述の「Cu(In,Ga)(Se)layers from selenization of spray deposited nanoparticles」に開示されている。スパッタリングプロセスは、2つのチャンバを用いて行われる。スパッタリング技術は十分に開発されているため、光吸収層は、二元ターゲット(binary target)または三元ターゲット(tertiary target)を用いてセレン薄膜の蒸着を行った後、アニーリングを行うことができる。スパッタリング法は、共蒸着法に比べ、太陽電池の大面積製造に適している。
【0005】
共蒸着法は、例えば、米国特許出願公開第2008/0072962号明細書で開示されている。セレン源は、共蒸着法のフィルムコーティングプロセスに用いられる。光吸収層の薄膜の品質を向上させるためには、セレンを供給するためのアニーリング用のもう1つのチャンバが必要とされる。なお、共蒸着法は、スパッタリング法とは異なり、セレン源として、セレン化水素(HSe)ガスでなく、液体セレンが用いられる。また、共蒸着法により、CIGS薄膜太陽電池を生産すれば、比較的高いエネルギー変換効率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0215224号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0072962号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Current Applied Physics,(2008)p766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スパッタリング法と共蒸着法とは、共に真空装置を用いて行わなけれなければならない。また、セレンは、高温プロセスにおいて、放出され易いため、光吸収層の組成比が変化する。また、スパッタリング法と共蒸着法とは、共にセレン源の利用効率が極めて低い。例えば、共蒸着法では、セレン分子の反応性が低いため、500℃よりも高い温度で膜を製造しなければならない。しかしながら、ほとんどのセレンは、蒸着チャンバの内壁または同様の構造箇所に付着するため、チャンバが汚染されて同じプロセスを再現させることが不可能になる。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解消するために、プラズマを用いて固体セレン源を分解することでセレン薄膜を蒸着する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法: 本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法は、プラズマヘッドを提供するステップと、基板を大気圧下で支持するステップと、当該プラズマヘッドによって固体セレン源を分解し、当該セレン薄膜を当該基板上に蒸着するステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法は、前記セレン薄膜が前記基板上に蒸着された時、前記プラズマヘッドと当該基板とが互いに相対的に移動することが好ましい。
【0012】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法において、前記プラズマヘッドと前記基板との間の相対的移動は、当該プラズマヘッドを移動させることによって実行されることが好ましい。
【0013】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法は、前記セレン薄膜が前記基板上に蒸着された時、当該基板を加熱するステップを更に含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法において、前記基板は、500℃以下の温度範囲で加熱されることが好ましい。
【0015】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法において、前記基板は、ナトリウムを含まない非ガラス基板であり、前記セレン薄膜が当該基板上に蒸着された後、当該基板上にナトリウムを供給するステップを更に含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法において、前記ナトリウムは、前記プラズマヘッド内にフッ化ナトリウムを導入することにより供給されることが好ましい。
【0017】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着方法は、前記セレン薄膜が前記基板上に蒸着された時、当該基板と対向する側から空気を排出するステップを更に含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置: 本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置は、基板を支持する支持台と、固体セレン源を保持し、当該支持台と互いに相対的に移動するように当該支持台上に配置されるプラズマヘッドとを備え、当該プラズマヘッドが当該固体セレン源を分解し、当該セレン薄膜を当該基板上に蒸着するものであることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置において、前記支持台は、前記基板を支持するプラテンと、当該プラテンに配置され、前記セレン薄膜が蒸着された時に当該基板を加熱する加熱装置とを含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置において、前記プラズマヘッドは、注入口を備えることが好ましい。
【0021】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置において、前記注入口と通じているフッ化ナトリウム源を更に含み、前記基板は、ナトリウムを含まない非ガラス基板であり、当該フッ化ナトリウム源からのフッ化ナトリウムが、当該注入口を経て前記プラズマヘッドに導入されることが好ましい。
【0022】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置は、前記プラズマヘッドに接続され、当該プラズマヘッドを前記支持台と相対的に移動させる伝達機構を更に含むことが好ましい。
【0023】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置において、前記プラズマヘッドは、プラズマを発生するチャンバと、前記固体セレン源を保持するハウジングとを含み、当該ハウジングが、当該チャンバを取り囲むように当該チャンバと接続したことが好ましい。
【0024】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置において、前記チャンバは、プラズマ出口を備え、前記固体セレン源を当該プラズマ出口の近辺に配置したことが好ましい。
【0025】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置において、前記ハウジングは、前記プラズマ出口に面するスリット形状の噴出口を備えることが好ましい。
【0026】
本発明に係るセレン薄膜の蒸着装置は、前記支持台の周辺に配置され、当該支持台の上に支持された前記基板と対向する側から空気を排出する排出装置を更に含むことが好ましい。
【0027】
本発明に係るプラズマヘッド: 本発明に係るプラズマヘッドは、セレン薄膜を蒸着するためのプラズマヘッドであって、プラズマを発生するチャンバと、当該チャンバを取り囲むように当該チャンバと接続したハウジングと、当該ハウジング内に配置された固体セレン源とを含むものであることを特徴とする。
【0028】
本発明に係るプラズマヘッドにおいて、前記チャンバは、プラズマ出口を備え、前記固体セレン源を当該プラズマ出口の近辺に配置したことが好ましい。
【0029】
本発明に係るプラズマヘッドにおいて、前記ハウジングは、前記プラズマ出口に面するスリット形状の噴出口を備えることが好ましい。
【0030】
本発明に係るプラズマヘッドにおいて、前記ハウジングは、注入口を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のセレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッドは、プラズマを用いて固体セレン源を分解することでセレン薄膜を蒸着する方法、セレン薄膜を蒸着する装置、及びこれらに用いるプラズマヘッドに関するものである。従って、本発明のセレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッドによれば、真空装置を用いることなく、また、セレン源の利用効率を高く維持した状態でセレン薄膜を蒸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置の概略上面図である。
【図2】図1のA−A線における概略断面図である。
【図3】図1のA−A線で切断した装置の概略斜視図である。
【図4】図1のB−B線における概略断面図である。
【図5】図1のB−B線で切断した装置の概略斜視図である。
【図6】図1のC−C線における概略断面図である。
【図7】図1のC−C線で切断した装置の概略斜視図である。
【図8】図2のD1で示した部分の拡大図である。
【図9】図3のD2で示した部分の拡大図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置の概略斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置の概略上面図である。
【図12】図11に示された装置の概略側面図である。
【図13】図11に示された装置の別の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、添付の図面と併せ、以下に説明する実施形態によって、より完全に理解することができる。
【0034】
以下に、本発明の最良の実施形態が開示されている。なお、この実施形態は、本発明の一般原理を例示する目的で開示されるものであり、本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参考にして決定される。
【0035】
本発明は、プラズマを用いて固体セレン源を分解することでセレン薄膜を蒸着する方法、セレン薄膜を蒸着する装置、及びプラズマヘッドを提供するために開示されるものであって、CIGS薄膜太陽電池の光吸収層上にセレンを供給するか、またはセレン薄膜を蒸着する際に用いられる。
【0036】
〈第1の実施形態〉
まず、図1〜7を参照しながら、本発明の第1の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置1について説明する。この実施形態では、セレン薄膜蒸着装置1は、500〜760Torrの圧力環境で動作する。
【0037】
この実施形態では、セレン薄膜蒸着装置1は、本体10、支持台100、プラズマヘッド200、及び伝達機構(transmission mechanism)300を含む。本体10は、セレン薄膜蒸着装置1のベース及びフレームとして用いられ、支持台100、プラズマヘッド200、及び伝達機構300をその中に支持する。
【0038】
支持台100は、本体10内に配置され、その上に基板Sを支持する(図11及び12参考のこと)。一般的に、薄膜太陽電池を製造するプロセスに用いられる基板Sは、ナトリウムを含むアルカリガラスからなるアルカリガラス基板などのガラス基板(a sodium alkaline glass substrate)である。しかしながら、フレキシブル太陽電池の開発には、基板は、例えば金属シート(例えばステンレス鋼またはチタンフォイル)または高分子基板(例えばポリイミド)などのナトリウムを含まない非ガラス基板(a non sodium alkaline glass substrate)とすることもできる。
【0039】
図1に示すように、支持台100は、プラテン110及び加熱装置120を備える。プラテン110は、その上に基板Sを支持する。加熱装置120は、コイル形状に形成されプラテン110内に組み込まれる。加熱装置120は、セレン薄膜が蒸着されている間、または蒸着された後、基板を加熱する。加熱装置120の形状は、プラテン100上の基板Sを加熱できるならばコイル状に限定されない。例えば、加熱装置120は、加熱板または加熱ロッドであってもよい。また、加熱装置120は、この実施形態において、プラテン110内に組み込まれるが、これに限定するものではない。例えば、加熱装置120は、プラテン110の外側に独立して配置されていてもよい。
【0040】
プラズマヘッド200は、当該プラズマヘッド200と支持台100とが互いに相対的に移動できるように支持台100上に配置される。図8及び9に示されるように、プラズマヘッド200は、チャンバ210、ハウジング220、及び固体セレン源230を含む。不活性ガスは、チャンバ210内に導入され、プラズマを発生するために、エネルギー源(不図示)よりエネルギーが与えられる。このエネルギー源には、DC電源、AC電源、またはRF電源を任意に選択して用いることができる。不活性ガスは、Ar、N、またはHeでもよい。チャンバ210には、プラズマ出口211が備えられる。
【0041】
ハウジング220は、固体セレン源230を保持し、チャンバ210が当該ハウジング220によって取り囲まれるように当該チャンバ210と接続される。図9に示されるように、ハウジング220は、プラズマ出口211に面するスリット形状の噴出口221を備える。
【0042】
ハウジング220に保持される固体セレン源230は、プラズマ出口211の近辺に配置される。固体セレン源230は、プラズマ出口211から噴出されるプラズマによって分解され、セレン薄膜が基板S上に蒸着される。具体的に言えば、当該プラズマヘッド200における固体セレン源230は、励起状態のプラズマの電子またはイオンによって励起されて、固体セレン源230の大きな分子が活性を持つ小さな分子及びラジカルに分解され、反応性及び利用効率が高められる。
【0043】
また、図8及び9に示されるように、固体セレン源230は、チャンバ210内に配置されないため、反応物がチャンバ210内の電極に付着するのを防止する。
【0044】
図8及び9には、固体セレン源230が、複数のセレンタブレットによりハウジング220の内壁に配置されているのが示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、リング形状の固体セレンがハウジング220の内壁に配置されたり、または固体セレンがハウジング220の内壁に塗布されてもよい。
【0045】
また、ハウジング220の噴出口221と基板Sとの間の距離は、プロセス条件に基づいて調整される。
【0046】
この実施形態では、プラズマヘッドがCIGS薄膜太陽電池の光吸収層にセレンを供給するように用いられ、セレン源は、プラズマヘッド内に配置される。なお、分解される材料源は、セレン源に限定されるものではない。必要なプロセスに基づき、非セレン源(non−selenium source)がプラズマヘッド内に配置されてもよい。例えば、炭素源が、表面改質プロセスに用いられてもよい。
【0047】
プロセス条件が異なる場合、プラズマヘッドの構造は、具体的なプロセス条件に応じて適切に調整することができる。例えば、基板Sがナトリウムを含まない非ガラス基板の場合、プラズマヘッド200を、ハウジング220の側辺に配置させ、図12に示されたフッ化ナトリウム源240と通じている注入口222を更に備える構成としてもよい。フッ化ナトリウム源240からのフッ化ナトリウムは、注入口222によってプラズマヘッド200に導入され、基板S上のナトリウム成分を増加すべく、プラズマによって分解される。ナトリウムが供給されることで、光吸収層の薄膜品質は向上し、エネルギー変換効率が高くなる。更に、ナトリウムは、セレン薄膜が基板上に蒸着される時、または蒸着された後に供給することができる。ナトリウムを供給するナトリウム源は、ナトリウムが供給されるならばフッ化ナトリウム源に限定されない。例えば、ナトリウム源は、セレン酸ナトリウム源であってもよい。
【0048】
図1〜7を参照すると、伝達機構300は、本体10に配置され、プラズマヘッド200を支持台100と相対的に移動させるために、当該プラズマヘッド200と接続される。この実施形態では、伝達機構300は、コンベヤー320、プラズマヘッド200と接続した接合部(joint)330、及びモーター(不図示)を含む。コンベヤー320は、プラズマヘッド200を相互に移動させるようにモーターによって駆動される。これにより、太陽電池の大面積製造を実現することができる。図4に示されるように、伝達機構300は、コンベヤー320(図1参照のこと。)がガイドレールを含むが、プラズマヘッド200を相互に移動することが可能ならば、これに限定されるものではない。例えば、コンベヤー320は、ベルトまたはギアを含んでもよい。
【0049】
この実施形態では、プラズマヘッド200は、伝達機構300によって移動されるがこれに限定されるものではない。例えば、支持台100を駆動させて、プラズマヘッド200と基板Sとを互いに相対的に移動させてもよい。
【0050】
〈第2の実施の形態〉
図10は、本発明の第2の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置の概略斜視図である。第2の実施形態では、第1の実施形態のセレン薄膜蒸着装置1とは異なり、セレン薄膜蒸着装置1’は、プラズマヘッドモジュール200’を備えている。具体的に言えば、プラズマヘッドモジュール200’は、支持台100上に並べて配置された3つのプラズマヘッドを備え、伝達機構300によって駆動されて太陽電池の大面積製造を実現する。プラズマヘッドモジュール200’が複数のプラズマヘッドを備えるため、各プラズマヘッドのハウジングの噴出口は、スリット形状に限定されない。例えば、当該噴出口は、プラズマヘッドの数に対応して、点形状または線形状でもよい。
【0051】
〈第3の実施形態〉
図11〜13には、本発明の第3の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置1’’の概略上面図を示している。この実施形態のセレン薄膜蒸着装置1’’と第1の実施形態のセレン薄膜蒸着装置1との違いは、セレン薄膜蒸着装置1’’は、本体10’と支持台100の周辺に配置されて、基板Sの周辺の空気の流れの均一性を向上すべく、支持台100上で支持された基板Sと対向する側から空気を排出する排出装置400を更に含む点である。排出装置400に対応し、本体100は、複数の排出孔11を含む。このように、排出装置400は、支持台100上に支持された基板Sと対向する側から排出孔11を通して空気を排出することができる。
【0052】
上述の実施形態では、セレン薄膜蒸着装置1、1’、または1’’は、開放された大気圧環境下で動作されるが、これに限定されるものではない。これら全てのセレン薄膜蒸着装置は、周囲環境の圧力が500から760Torrの範囲であれば、密閉された環境下で動作可能である。
【0053】
本発明の実施形態に基づくセレン薄膜を蒸着する装置は、上述の通りである。上述のセレン薄膜蒸着装置を用いてセレン薄膜を蒸着する方法は、以下に説明される。その方法は、以下のステップを含む。まず、図11に示すように、基板Sは、大気圧環境下において、ロボットアーム(不図示)によって、セレン薄膜蒸着装置1’’の支持台100に支持される。次いで、固体セレン源230は、プラズマヘッド200のチャンバ210から発生されたプラズマによって分解され、セレン分子が図12に示された矢印Dに沿って基板Sに向けて移動する。同時にプラズマヘッド200は、図11に示された矢印M1に沿って移動され、プラズマヘッド200が図13に示される位置に移動されるまで、プラズマヘッド200と基板Sとが互いに相対的に移動する。その結果、セレン薄膜が基板S上に蒸着される。
【0054】
上述の方法は、図11〜13におけるセレン薄膜蒸着装置1’’を用いてセレン薄膜を蒸着させる方法であるが、本発明はこの方法に限定されるものではない。上述の方法は、図1〜7におけるセレン薄膜蒸着装置1または図10におけるセレン薄膜蒸着装置1’を用いることで実行することができる。また、セレン薄膜の蒸着は、上述の説明では、プラズマヘッドを単一方向に一度移動させることで完了するが、これに限定されるものではない。セレン薄膜の蒸着は、プロセス条件に基づき、プラズマヘッドを前後に一度か二度移動させて完了させることもできる。
【0055】
セレン薄膜が基板S上に蒸着された時、基板Sは、500℃以下の温度の範囲で同時に加熱することができる。また、排出装置400は、セレン薄膜が基板S上に蒸着された時、基板Sと対向する側から空気を同時に排出することができる。
【0056】
基板Sがナトリウムを含まない非ガラス基板である場合、セレン薄膜が基板S上に蒸着された後、フッ化ナトリウム源240からのフッ化ナトリウムが、注入口222を経てプラズマヘッド200内に導入され、基板上にナトリウムが供給される。ナトリウムの供給は、セレン薄膜の蒸着のように、プラズマヘッドを移動させることで完成することができ、その詳細は省略される。
【0057】
以上、本発明を望ましい実施の形態によって説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定して解釈すべきではない。本発明は、(当業者であれば明らかであるように)各種の変更及び類似のアレンジが包含される。よって、添付の特許請求の範囲は、このような変更及び類似のアレンジが全て包含されるように、最も広義な解釈が与えられるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のセレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッドは、真空装置を用いず、また、セレン源の利用効率を高く維持した状態でセレン薄膜を蒸着する。そのため、本発明のセレン薄膜の蒸着方法、セレン薄膜の蒸着装置、及びプラズマヘッドによれば、従来よりも光吸収層の薄膜の品質の向上が図られた薄型太陽電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1、1’、1’’ セレン薄膜蒸着装置
10、10’ 本体
100 支持台
110 プラテン
120 加熱装置
200、200’ プラズマヘッド
210 チャンバ
211 プラズマ出口
220 ハウジング
221 噴出口
222 注入口
230 固体セレン源
240 フッ化ナトリウム源
300 伝達機構
320 コンベヤー
330 接合部
400 排出装置
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレン薄膜を蒸着するための方法であって、
プラズマヘッドを提供するステップと、
基板を大気圧下で支持するステップと、
当該プラズマヘッドによって固体セレン源を分解し、当該セレン薄膜を当該基板上に蒸着するステップとを含むことを特徴とするセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項2】
前記セレン薄膜が前記基板上に蒸着された時、前記プラズマヘッドと当該基板とが互いに相対的に移動する請求項1に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項3】
前記プラズマヘッドと前記基板との間の相対的移動は、当該プラズマヘッドを移動させることによって実行される請求項2に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項4】
前記セレン薄膜が前記基板上に蒸着された時、当該基板を加熱するステップを更に含む請求項1に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項5】
前記基板は、500℃以下の温度範囲で加熱される請求項4に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項6】
前記基板は、ナトリウムを含まない非ガラス基板であり、
前記セレン薄膜が当該基板上に蒸着された後、当該基板上にナトリウムを供給するステップを更に含む請求項1に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項7】
前記ナトリウムは、前記プラズマヘッド内にフッ化ナトリウムを導入することにより供給される請求項6に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項8】
前記セレン薄膜が前記基板上に蒸着された時、当該基板と対向する側から空気を排出するステップを更に含む請求項1に記載のセレン薄膜の蒸着方法。
【請求項9】
セレン薄膜を蒸着するための装置であって、
基板を支持する支持台と、
固体セレン源を保持し、当該支持台と互いに相対的に移動するように当該支持台上に配置されるプラズマヘッドとを備え、
当該プラズマヘッドが当該固体セレン源を分解し、当該セレン薄膜を当該基板上に蒸着するものであることを特徴とするセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項10】
前記支持台は、
前記基板を支持するプラテンと、
当該プラテンに配置され、前記セレン薄膜が蒸着された時に当該基板を加熱する加熱装置とを含む請求項9に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項11】
前記プラズマヘッドは、注入口を備える請求項9に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項12】
前記注入口と通じているフッ化ナトリウム源を更に含み、前記基板は、ナトリウムを含まない非ガラス基板であり、当該フッ化ナトリウム源からのフッ化ナトリウムが、当該注入口を経て前記プラズマヘッドに導入される請求項11に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項13】
前記プラズマヘッドに接続され、当該プラズマヘッドを前記支持台と相対的に移動させる伝達機構を更に含む請求項9に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項14】
前記プラズマヘッドは、
プラズマを発生するチャンバと、
前記固体セレン源を保持するハウジングとを含み、
当該ハウジングが、当該チャンバを取り囲むように当該チャンバと接続した請求項9に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項15】
前記チャンバは、プラズマ出口を備え、前記固体セレン源を当該プラズマ出口の近辺に配置した請求項14に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項16】
前記ハウジングは、前記プラズマ出口に面するスリット形状の噴出口を備える請求項15に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項17】
前記支持台の周辺に配置され、当該支持台の上に支持された前記基板と対向する側から空気を排出する排出装置を更に含む請求項9に記載のセレン薄膜の蒸着装置。
【請求項18】
セレン薄膜を蒸着するためのプラズマヘッドであって、
プラズマを発生するチャンバと、
当該チャンバを取り囲むように当該チャンバと接続したハウジングと、
当該ハウジング内に配置された固体セレン源とを含むものであることを特徴とするプラズマヘッド。
【請求項19】
前記チャンバは、プラズマ出口を備え、前記固体セレン源を当該プラズマ出口の近辺に配置した請求項18に記載のプラズマヘッド。
【請求項20】
前記ハウジングは、前記プラズマ出口に面するスリット形状の噴出口を備える請求項19に記載のプラズマヘッド。
【請求項21】
前記ハウジングは、注入口を備える請求項18に記載のプラズマヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−255206(P2012−255206A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109612(P2012−109612)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(390023582)財團法人工業技術研究院 (524)
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】