説明

センサコーティング

【課題】集光及び演算処理のため、特定の方向に放射される信号光の量を増大するセンサコーティングを提供する。
【解決手段】発光センサ材料製ベース層と、球等の光学体の外層とを備えた再帰反射センサコーティング構造体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部品、例えばガスタービンエンジンのエーロホイル又は炉壁の温度の感知に使用するための再帰反射(逆反射)コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
来入誘導光を何らかの方法で変化できるセンサコーティングを使用する様々な技術が知られている。コーティングは、計測されるべき構成部品の表面に適用され、遠隔のプローブによって応答指令信号が送られる。コーティングの例には、以下のものが含まれる。
a)感圧塗料及び感温塗料。これらの塗料は、計測パラメータに従ってスペクトル成分が変化した信号光を発生する、又は誘導光と異なる波長の信号光を発生し、計測パラメータに従って変化する崩壊寿命を示すセンサコーティングを使用する。
b)サーモグラフィック発光体。これは、感温塗料と同様に機能し、放射光の崩壊寿命の変化又は信号光のスペクトル成分の変化のいずれかによって作用できる。
c)液晶。これは、色が変化する誘導光のスペクトル成分を変化することによって温度を計測するのに使用できる。
【0003】
以上の技術では、放射された信号光は、センサコーティングから遠ざかる方向に全ての角度で等しく放射される。収束光学系によって捕捉される非常に狭い角度範囲だけが信号となり、残りは無駄になる。このことは、信号の振幅が1/(プローブから表面までの距離)、即ち1/rで低下するということを意味する。従って、信号は、プローブとターゲットとの間の距離が大きくなるに従って急速に減少し、そのため、計測値のs/n比(信号対雑音比)が低下する。この効果は、計測を行うことができる最大距離が強制的に定められるか或いは、計測の精度又は時間分解能又は温度計測範囲を低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、集光及び演算処理のため、特定の方向に放射される信号光の量を増大するセンサコーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、センサ材料でできたベース層を備えた再帰反射センサコーティング構造体であって、ベース層内又はベース層上に複数の光学体(光学ボディ)が設けられた再帰反射センサコーティング構造体が提供される。
【0006】
好ましくは、センサ材料は、燐光物質(燐光体)、感圧塗料、感温塗料(温度感知塗料)、又は液晶を含む群からなる材料のうちの任意の一つの材料である。
好ましくは、光学体(光学ボディ)は球(球体)又は球形である。
【0007】
好ましくは、光学体は、プラスチック、ガラス又は他のセラミック、石英ガラス、又はサファイヤからなる群から選択された材料のうちの任意の一つ又はそれ以上から形成されている。
【0008】
特定の状況では、例えばガスタービンブレードでは、光学体の直径は5μm乃至50μmである。
好ましくは、ベース層の厚さは最大50μmとしてもよい。ガスタービンブレードで使用する場合、ベース層の厚さは約25μmであるのが好ましい。
【0009】
有利には、光学体は、構成部品に適用したベース層に含まれる。
別の態様では、光学体は、ベース層上に適用したシート材料(の全体又はその一部)に付着しているか、或いは前記シート材料の部分である。
【0010】
別の態様では、光学体は、ベース層に塗布した透明なマトリックス(母材、支持体、又は基材)に含まれる。
本発明を添付図面を参照して例として更に完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ガスタービンエンジンの構成部品を計測するためのルミネセンス温度測定装置の概略図である。
【図2A】図2Aは、本発明による再帰反射センサコーティングの概略図である。
【図2B】図2Bは、再帰反射センサコーティングの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、この図には、ガスタービンエンジンの構成部品12の計測(測定)を行うための使用時のルミネセンス温度測定装置10の概略図が示してある。ルミネセンス温度測定装置10は、光学機器16を備えたレーザー装置14を含む。光学機器16を備えたレーザー装置14によって、そのビームは、光ファイバ18に沿って、また、別の光学系20を通過して、その後、構成部品12のセンサコーティングに案内される(差し向けられる)。この例示の実施例では、センサコーティングは発光材料であるが、当該技術分野で既知の他の材料を使用してもよい。ルミネセンス信号は光学系20を通過し、信号束22に入り、フィルタ24を通過して光電子増倍器(光電子増倍管)26に入る。次いで、光電子増倍器26からの信号が、デジタルオシロスコープ28で処理され、その後、コンピュータ30で画像変換される。
【0013】
レーザー信号及びセンサコーティング出力信号の夫々の代表的な出力信号を参照番号32及び34で示されている。これらのグラフは時間に対する強さを示し、レーザー信号32がほぼ瞬間的であるのに対し、センサコーティング出力34は、比較的長い期間に亘って減衰する。この場合、燐光体材料(発光材料)であるセンサコーティングからの出力34は、その温度に応答し、従って構成部品12の温度を示す。
【0014】
次に図2A及び図2Bを参照すると、本発明は、再帰反射センサコーティング構造体38であり、再帰反射センサコーティング構造体38は、構成部品12と隣接したセンサ材料のベース層40を備えており、また、ベース層40に付着した光学体42でできた外層を備えている。
【0015】
全体に参照番号10を付した同様のルミネセンス温度測定装置10を上文中に説明したように使用してもよい。
来入誘導光ビーム44は光学体42を通過し、センサ層40と相互作用し、ここで信号光46を全ての角度に等しく放射する。しかしながら、信号光46は、光学体42によって屈折され且つ平行化され、ルミネセンス温度測定装置10の方向に差し戻される。
【0016】
このようにして、放射されたかなり大量の信号光46が集光機器(即ち信号束22の端部)に入射する。従って、集光された信号光46は、比較的強く、特にガスタービンエンジン及び他の汚染された環境で見られるような様々な条件で比較的容易に観測(実測あるいは観察)できる。同様に、信号の改良により、読みが従来の装置よりも正確になる。幾つかの状況では、光ファイバ18及び信号束を、計測(測定)されるべき構成要素、例えば特に高温の環境から、大きく離して配置できるという利点がある。
【0017】
センサ材料は、燐光物質(燐光体)、感圧塗料、感温塗料、又は液晶を含む群からなる材料のうちの任意の一つの材料であってもよい。
光学体は、ガスタービンエンジンの用途に特に有用な、高温特性が特に良好なサファイヤから形成されている。しかしながら、プラスチック、ガラス、又は石英ガラスからなる群の任意の一つ又はそれ以上の材料を含むこの他の材料を使用してもよい。
【0018】
光学体42の直径は、誘導及び信号光/放射線の波長よりも大きいように選択される。その結果、干渉効果及び回折効果が最小であり、好ましくは全くない。光学体42の直径は、更に、構成部品とその周囲との間で伝導手段又は輻射手段(放射手段)のいずれかによる熱交換効果を適切に制限するのに十分に小さいように選択される。タービンブレードに対する用途の場合には、光学体は、表面上の空気流に悪影響を及ぼさないのに十分に小さいことが好ましい。タービンブレードについて、光学体の直径の一つの可能な直径範囲は、5μm乃至50μmである。
【0019】
実際には、光学体は、センサ材料の適用後、固まる前に(その硬化前に)、センサ材料に亘って拡がらさせることができ、かくして光学体を固定する。別の特徴では光学体がセンサ材料に含まれていてもよく、センサ材料が構成部品に塗布される。幾つかの光学体がセンサ材料によって完全に覆われていてもよく、又は実質的に覆われていてもよく、従って本質的に無駄なものであってもよいということに着目すべきである。しかしながら、かなりの部分が誘導及び信号光/放射線に対して露呈(さら)されている。
【0020】
タービンブレードの用途について、センサコーティングの厚さは、好ましくは、約25μmであるが、特に、最大50μmの厚さでも有用である。これは、空力学的破壊を制限するために、特に薄くなっている。
【0021】
変形例では、光学体をシート材料(の全体又は一部)に付着してもよいし、光学体はシート材料の一部であってもよく、これは、ベース層/センサコーティングに適用される。更に詳細には、光学体42は透明なマトリックス(母材、支持体、又は基材)に含まれていてもよい。マトリックスは、ベース層に塗布される。
【符号の説明】
【0022】
10 ルミネセンス温度測定装置
12 構成部品
14 レーザー装置
16 光学機器
18 光ファイバ
20 光学系
22 信号束
24 フィルタ
26 光電子増倍器
28 デジタルオシロスコープ
30 コンピュータ
32 レーザー信号
34 センサコーティング出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射センサコーティング構造体であって、
センサ材料からなるベース層と、
前記ベース層内に又は前記ベース層上に設けられた複数の光学体とを備えた、ことを特徴とする再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記センサ材料は、燐光物質、感圧塗料、感温塗料、又は液晶を含む群からなる材料のうちの任意の一つの材料である、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記光学体は球形である、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記光学体は、プラスチック、ガラスや他のセラミック、石英ガラス、又はサファイヤからなる群から選択された材料のうちの一つ又はそれ以上から形成されている、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記光学体の直径は、5μm乃至50μmである、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記ベース層の厚さは最大50μmである、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記ベース層の厚さは約25μmである、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記光学体は、前記構成部品に適用した前記ベース層に含まれる、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記光学体は、前記ベース層に適用されたシート材料に付着しているか、或いは前記シート材料の部分である、再帰反射センサコーティング構造体。
【請求項10】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の再帰反射センサコーティング構造体において、
前記光学体は、前記ベース層に塗布した透明なマトリックスに含まれる、再帰反射センサコーティング構造体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2010−527041(P2010−527041A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507963(P2010−507963)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001296
【国際公開番号】WO2008/139136
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(591005785)ロールス・ロイス・ピーエルシー (88)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】