説明

センサー

本発明は、一種以上の分析物の存在を検出するのに適切なセンサーに関する。前記センサーは、基板と、前記基板に配置した閉じ込め構造であり、少なくとも第1内部空間を画成する第1境界構造を備えた前記閉じ込め構造と、前記第1内部空間に隣接したトランスデューサーと、前記閉じ込め構造内において第1の分析物に選択的に結合することが可能な第1合成ポリマーを備える。前記閉じ込め構造は、それぞれ内側の内部空間を含む第2内部空間またはさらなる内部空間を画成する第2境界構造またはさらなる境界構造を有することができる。前記センサーは、付加的な分析物の検出、または基準測定の実施を行なうための異なる材料を含む付加的な閉じ込め構造を有することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサー関し、具体的には生物学的に重要な種を検出するセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の医療は、組織サンプルや各種体液に対する一連の化学的・生化学的分析試験に頼るところが大きく、これにより早期発見、診断、処置が可能になる。したがって、センサーを含む体外診断法は重要な市場である。
【0003】
診断用検査の適用範囲は、医学的技術的進歩により大幅に拡大し、人体における分子間相互作用が一層把握されるようになったため、マイクロシステムやナノテクノロジー等の技術開発の出現とあわせて診断技術は大きく変化した。さらに、迅速な対応が最重要視される状況に適切なポイントオブケア(PoC)検査が急増し、治療法の早期決定を可能にしている。
【0004】
近年PoC検査は進歩してきたが、未だ満たされていない切実な要望もある。それは、検査手順の時間短縮や頻度の増加、増え続ける一連の分析物の同時モニター、サンプル調製と結果解釈の容易性等における要件である。
【0005】
現在有効な診断検査の多くは、ほぼ例外なく、酵素、抗体、およびDNA等の高感度な生体レセプターを検査の認識要素として使用することに依存している。このようなレセプターは生物由来なので、これらの生体分子を検知用途に利用する場合、一般的に制限が多いという不都合がある。この制限に含まれるものとしては、不安定性であること、特に製造中および滅菌中の不安定性が明らかであること、生体レセプターが高価なものであること、非水媒体中では機能が低下すること、pH、イオン強度、温度等の環境因子による刺激を受けやすいこと、重要な分析物に用いる天然の生体レセプターは数に限りがあること、変動性であること(誘導方法による)、およびマイクロマシン加工(またはマイクロファブリケーション加工)技術や小型化技法に対し適合性に欠けること等がある。
【0006】
このような問題を克服するものと期待される方法として、分子インプリントポリマー(MIP)等の合成ポリマーベースのレセプターを用いる方法がある。合成レセプターでは、生体レセプターに伴う問題点の多くが回避される。例えば、分子インプリント法は、高親和性、高特異性と頑健性、低製造コストを兼ね備えた合成レセプターを作製する一般的でコスト効率の高い技法である。また、MIPレセプター物質は、既に広範囲にわたる臨床関連化合物や診断マーカーにおいて実証済みのものである。生体レセプターと対照的に、合成レセプター、特にMIPレセプターは、pH、圧、および温度の高低に対し一般的に安定性があり、安価で作製しやすく有機溶媒に耐性であり、比較的設計が単純なため実質的にどのような分析物についても作製でき、またマイクロマシン加工(またはマイクロファブリケーション加工)技術や小型化技術に対し十分な適合性がある。MIPが徹底調査の対象となったのは、際立った三つの特性によるものである。すなわち、高い親和性と選択性という天然レセプターと同様の特性、類のない安定性という天然の生体分子に優る特性、また調整が簡単で様々な実用用途に対し適応しやすいという特性である。
【0007】
分子インプリント法は、物質中の特異的識部位を鋳型により形成する処理と定義でき、自己組織化のメカニズムにより、鋳型がその物質の構造成分の位置や配置の方向付けを行う。図1に示すのは、出発物質であるモノマーが三角形で示す鋳型による特異的結合部位を有するポリマーを形成するというMIPの自己組織化と、その後の鋳型溶離の概略図である。この技法を利用して、有機小分子(例えばグルコース)や薬剤等の小分子(最大1200Da)から巨大タンパク質や細胞まで、幅広い化合物のインプリントに成功している。
【0008】
MIPを含む合成ポリマーベースのレセプターを臨床関連分析物の分析用機器に導入する手法は数多く提案されているが、現在のところ、ある程度の成果しか上げられていない。
【0009】
Petcu M他は、「生物学的に重要な小さな置換フェノールの分子インプリント法(Molecular imprinting of a small substituted phenol of biological importance)」、Analytica Chimica Acta435(2001)49‐55および「バイオセンサーにおける潜在用途を有するプロトフォールのインプリント膜(Propofol‐imprinted membranes with potential applications in biosensors)」、Analytica Chimica Acta504(2004)73‐79において、静脈麻酔薬のプロトフォールを検出するシステムを開示している。これらの文献には、プロポフォールを結合することが可能なMIPの合成が開示されている。前者の文献では、メタノール溶液中のプロポフォールがMIPに取り込まれることについて論じている。後者では、ナイロン、セスロースエステル、ガラス、PTFEを含む様々な支持体にMIPが吸着し、その後、メタノール溶液中のプロポフォールがそのMIPに取り込まれることを開示している。どちらの場合も、高速液クロマトグラフ(HPLC)により、MIP接触前と接触後のサンプル中のプロポフォール濃度を判定している。しかし、この方法は、オフラインであること、実施にあたり煩雑性を伴いやすいこと、他の薬品の使用を要し、また概して使用に手間がかかること等、問題点が多い傾向にある。
【0010】
英国特許出願公開第2337332号は、分析物に特異的に結合する機能を付与した合成ポリマーにより表面を改変した電極を開示している。この文献では、MIPと、フェノール性分析物検出におけるMIPの利用が開示されている。合成ポリマーは、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スクリーン印刷、およびジェット印刷等、様々な技法により電極に吸着させることができる。そこで、検出された分析物にセンサーを接触させ、電気化学的手段により選択的に分析物が検出される。この文献に開示されるようなセンサーには、例えばMIPが基板表面から剥離する等、多くの欠点が潜在している。さらに、尿、血液、間質液、脳脊髄液、透析液(dialyte)等の生体液の直接分析にセンサーを使用する場合、様々な細胞、小板、タンパク質、その他の物質がMIP表面に結合してセンサーの汚染が生じ有効領域を減少させる恐れがあり、これによりセンサーの検出感度も低下してしまう。これは、センサーが連続使用または半連続使用もしくは多目的使用を目的とする場合に特有の問題である。
【0011】
したがって、残るのは、臨床的状況で機能可能なセンサーの技術分野において必要な条件は何か、ということになる。
【0012】
これを受けて、本発明は、基板と、この基板上に配置した閉じ込め構造であり、少なくとも第1内部空間を画成する第1境界構造を備えた前記閉じ込め構造と、前記第1内部空間に隣接したトランスデューサーと、前記閉じ込め構造内において第1の分析物に選択的に結合することが可能な第1合成ポリマーを備えたセンサーを提供する。
【0013】
また、本発明は、ターゲット種を含むか、または含むと推測されるサンプルを上記に明示したセンサーに接触させることからなる、サンプル中のターゲット種を検出する方法を提供する。
【発明を実施する場合の最良の形態】
【0014】
それでは本発明を以下添付の図面に基づいて説明する。
【0015】
図2に示すように、本発明によるセンサー1は、基板2と、この基板上に配置した閉じ込め構造3を含む。この閉じ込め構造は、第1内部空間5を画成する第1境界構造4を有する。これは、「容器」に例えられる。また、第1内部空間5に隣接してトランスデューサー6も配置されている。閉じ込め構造3内には、例えば分子インプリントポリマー(MIP)のように、第1の分析物を選択的に結合することが可能な第1合成ポリマー7も含まれ、好ましくは第1内部空間5内に含まれる。
【0016】
この合成ポリマーは、分析物を選択的に結合することが可能(すなわちレセプターとして機能するもの)であれば、どのような合成ポリマーでもよい。この選択的な結合は、ある特定の分析物と相互作用するポリマー上の官能基によるものでもよい。好ましくは、この合成ポリマーは、一種以上の機能性モノマーと、一種以上の架橋剤からなる。好ましいポリマーは、分子インプリントポリマー(MIP)である。
【0017】
分子インプリントポリマー(MIP)は、本質的には、合成ポリマーの分子インプリントを行なうことにより作製した人工高分子レセプターである。MIPは、分子鋳型の役割を果たすインプリント分子の存在下で、機能性モノマーを重合することにより、または機能性モノマーと架橋性モノマーを共重合することにより作製する。これらの機能性モノマーとインプリント分子がまず複合体を形成し、重合後、高度に架橋されたポリマー構造によって機能性モノマーの官能基が適所に保たれる。このようして、ポリマーに分子記憶が導入され、インプリント分子を結合することが可能になる。有機小分子のインプリント法は、当技術分野において既知である。
【0018】
機能性モノマーとしては、その官能基を介してインプリント分子に結合可能なものが必要である。結合については、水素結合やファンデルワールス力等、共有結合または分子内力による結合でもよい。官能基の種類はインプリント分子の種類によって定まるものであるが、適切な官能基としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル中のカルボン酸である。モノマーは、言うまでもなく重合可能であり、架橋剤があれば架橋剤と反応し得ることが必須である。適切なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトル、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N,N‐トリエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルアクリル酸、アクリルアミド、n,n‐メチレンビスアクリルアミド、アクリロニトル、2‐アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸アクロレイン、エチレングリコールジメタクリレート、イミダゾール‐4‐アクリル酸エチルエステル、イミダゾール‐4‐アクリル酸、2‐(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート等のアクリルモノマー;2‐ビニルピリジンおよび4‐ビニルピリジン、m‐ジビニルベンゼンおよびp‐ジビニルベンゼン、スチレン、アミノスチレン、1‐ビニルイミダゾール、アリルアミン等のビニルモノマーおよびアリルモノマー;ウレタン;フェノール;アミノフェニルボロナート等のボロナート;フェニレンジアミン、フェニレンジアミン‐co‐アニリン等のアミン;オルガノシロキサンモノマー;メチレンコハク酸等の炭酸エステル;スルホン酸;およびこれらの混合物(すなわちコポリマー)を含むが、これに限定されない。M.コミヤマ他著、「分子インプリント法:原理から応用まで(Molecular Inprinting:From Fundamentals to Applications)」、Wiley‐VCH Verlag GmbH&Co KGaA社、ワインハイム(2003)、G.Wulff、Angew.Chem.英語国際版(Int.Ed.Engl.)34、1812(1995)、およびS.Subrahmanyam他著、バイオセンサー&バイオエレクトロニクス(Biosensors&Bioelectronics)16、631(2001)を参照のこと。
【0019】
MIPの多孔性を促進する他、鋳型結合部位を所望の構造に堅固に固定するため、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、機能性モノマーと反応してポリマー鎖を架橋することが可能でなければならず、また、好ましくは反応性がモノマーと類似した架橋剤を要する。適切な架橋剤として、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、グリセロールジメタクリレート(GDMA)、トリメチルアクリレート(TRIM)、ジビニルベンゼン(DVB)(特にアクリレート系やビニル含有の機能性モノマーの架橋に適する)、メチレンビスアクリルアミドおよびピペラジンビスアクリルアミド(これらは特にアクリルアミドの架橋に適する)、フィニレンジアミン、(特にアニリンやアミノフェニルボロナート等、アミンの架橋に適する)、ジブロモブタン、エピクロルヒドリン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびN,N’‐メチレンビスアクリルアミドを含むが、これに限定されない。
【0020】
機能性モノマーと架橋剤のモル比は1:1から1:15が好ましい。モノマーと架橋剤の混合物を用いてもよい。
【0021】
機能性モノマーと架橋剤の両方またはいずれか一方を重合反応における溶媒として用いることができ、または別に溶媒を追加することもできる。当該技術分野において適切な溶媒は周知であり、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ギ酸、酢酸、DMF(ジメチルホルムアミド)、メタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、およびシクロヘキサンを含む。所望の溶媒和と細孔形成(porogenic)特性を得るために、これらの溶媒の混合物を用いることもできる。
【0022】
ポリマーの好ましい分子量は1から100,000kDaであり、さらに好ましくは10から10,000kDa、最も好ましいのは10から5,000kDaである。
【0023】
MIPは、臨床関連の検定用やセンサー用として様々なものが開発されている。そのようなMIP一覧の一部を以下に示す。アミノ酸および誘導体[Panasyuk TL他著、容量式化学センサーにおけるレセプター層としての電解重合による分子インプリントポリマー(Electropolymerized molecularly imprinted polymers as receptor layers in capacitive chemical sensors)、Anal Chem 1999;71:4609‐4613;Liao Y他著、鋳型重合による蛍光センサーの構築:L‐トリプトファン用蛍光センサーの作製(Building fluorescent sensors by template polymerization: the preparation of a fluorescent sensor for L-tryptophan)Bioorg Chem 1999;27:463‐476;およびPeng H他著、誘導体化していないアミノ酸を鋳型に用いて電気合成した分子インプリントポリマーに基づく厚みすべりモードの音響センサーの開発(Development of a thickness shear mode acoustic sensor based on an electrosynthesized molecularly imprinted polymer using an underivatized amino acid as the template)、Analyst 2001;126:189‐194];アニリンおよびフェノール誘導体[Piletsky SA他著、分子インプリントホモポリマーのマイクロプレート表面にへの化学結合、β拮抗薬を測定する酵素結合による検定におけるアドレナリン作動性人工レセプターの応用(Chemical grafting of molecularly imprinted homopolymers to the surface of microplates. Application of artificial adrenergic receptor in enzyme-linked assay for β-agonists determination)、Anal Chem 2000;72:4381‐4385、およびモリタ M他著、電気化学センサーとしての微小集積型アレイ電極(Integrated array microelectrodes as electrochemical sensors)、Electrochim Acta 1997;42:3177‐3183];アニオンおよびカチオン[Murray GM他著、イオンを選択的に封鎖および検知する分子インプリントポリマー(Molecularly imprinted polymers for the selective sequestering and sensing of ions)、J Hopkins Apl Tech Dev 1997;18:464‐472、およびHutchins RS他著、電気化学的調節を行なってポリピロールをインプリントおよびドープすることにより開発した硝酸選択性電極(Nitrate-selective electrode developed by electrochemically mediated imprinting doping of polypyrrole)、Anal Chem 1995;67:1654‐1660];バルビツール酸[Mirsky VM他著、分子構造に対するスプレッダーバー手法:人工化学レセプターの構築(Spreader-bar approach to molecular architecture: formation of artificial chemoreceptors)、Angew Chemie Intern Ed 1999;38/8:1108‐1110];カフェイン[コバヤシ T他著、カフェインの分子インプリントおよび水晶振動子微量天秤によるその認識試験(Molecular imprinting of caffeine and its recognition assay by quartz-crystal microbalance)、Anal Chim Acta 2001;435:141‐149、およびLai EPC他著、テオフィリン、カフェイン、およびキサンチンの吸着試験用の分子インプリントポリマーを用いた表面プラスモン共鳴センサー(Surface plasmon resonance sensors using molecularly imprinted polymers for sorbent assay of theophylline, caffeine, and xanthine)、Can J Chem 1998;76:265‐273];クロラムフェニコール[Levi R他著、分子インプリントポリマーを用いたクロラムフェニコールの光学的検出(Optical detection of chloramphenicol using molecularly imprinted polymers)、Anal Chem 1997;69:2017‐2021];コレステロール[Piletsky SA他著、コレステロールに対する特異性をもつ分子インプリントによる自己組織化膜(Molecularly imprinted self-assembled films with specificity to cholesterol)、Sensor Actuat B 1999;60:216‐220];キナアルカロイド[マツイ J他著、2‐(トリフルオロメチル)アクリル酸を用いて作製する分子インプリントによる蛍光変化レセプター(Molecularly imprinted fluorescent-shift receptors prepared with 2-(trifluoromethyl) acrylic acid)、Anal Chem 2000;72:3286‐3290];クレンブテロール[Pizzariello A他著、ウシ肝臓中のクレンブテロール測定用の示差パルスボルタンメトリーを利用した個体結合マトリックス/分子インプリントポリマーによるセンサーシステム(A solid binding matrix/molecularly imprinted polymer-based sensor system for the determination of clenbuterol in bovine liver using differential-pulse voltammetry)、Sensor Actuat B‐Chem 2001;76:286‐294];エピネフリン[Piletsky SA他著、分子インプリントホモポリマーのマイクロプレート表面への化学結合、β拮抗薬を測定する酵素結合による検定におけるアドレナリン作動性人工レセプターの応用(Chemical grafting of molecularly imprinted homopolymers to the surface of microplates. Application of artificial adrenergic receptor in enzyme-linked assay for β-agonists determination)、Anal Chem 2000;72:4381‐4385、β‐エストラジオール[Rachkov A他著、分子インプリントポリマーを用いるベータエストラジオールの蛍光検出(Fluorescence detection of beta-estradiol using a molecularly imprinted polymer)、Anal Chim Act 2000;405:23‐29];フラボノール[Suarez−Rodriguez JL他著、分子インプリントポリマーに基づくフラボノール蛍光フロースルー検出(Flavonol fluorescent flow-through sensing based on a molecular imprinted polymer)、Anal Chim Acta 2000;405:67‐76];ガス[コダカリ,N他著、有機鋳型を用いて酸化スズ上にシリカの化学気相堆積を行なうことにより作製する分子ふるいガスセンサー(Molecular sieving gas sensor prepared by chemical vapour deposition of silica on tin oxide using an organic template)、Bul Chem Soc Jpn 1998;71:513‐519];モルヒネ[Ansell、RJ他著、生物分析用分子インプリントポリマー:クロマトグラフィー、結合試験、およびバイオミメティックセンサー(Molecularly imprinted polymers for bioanalysis: chromatography, binding assays and biomimetic sensors)、Current Opinion in Biotechnology 7(1996)89‐94、Anderson、LI他著、エンケファリンおよびモルヒネの分子インプリントにより得たオピオイドレセプターの結合部位模倣(Mimics of the binding sites of opioid receptors obtained by molecular imprinting of enkephalin and morphine)、Proceedings of the National Academy of Sciences 92(1995)4788‐4792、Kroger、S他著、電気化学的分析用アフィニティー電極(Affinity electrode for electrochemical analysis)、GB2337332、Kriz D他著、アガロースに固定化した分子インプリントポリマーによる競合的な電流検出方式モルヒネセンサー(Competitive amperometric morphine sensor based on an agarose immobilised molecularly imprinted polymer)、Anal Chim Acta 1995;300:71‐75];ニコチン[Tan Y他著、分子インプリントポリマーコーティングを用いる新しいTSMバイオミメティックセンサーの研究とヒト血清および尿中のニコチン測定におけるその応用(A study of a new TSM bio-mimetic sensor using a molecularly imprinted polymer coating and its application for the determination of nicotine in human serum and urine)、Bioelectrochemistry2001;53:141‐148];核酸および誘導体[Turkewitsch P他著、分子インプリント法による蛍光機能性認識部位、cAMP水用ポリマーベース蛍光化学センサー(Fluorescent functional recognition sites through molecular imprinting. A polymer-based fluorescent chemosensor for aqueous cAMP)、Anal Chem 1998;70:2025‐2030、およびSpurlock LD他著、プリンを鋳型とする極薄型過酸化ポリピロールフィルム電極の選択性と検出感度(Selectivity and sensitivity of ultrathin purine-templated overoxidized polypyrrole film electrodes)、Anal Chim Acta 1996;336:37‐46];パラセタモール[Tan YG他著、分子インプリント法によるBAWセンサーの生体模倣認識物質の研究とヒト血清および尿中のパラセタモール測定におけるその応用(A study of a bio-mimetic recognition material for the BAW sensor by molecular imprinting and its application for the determination of paracetamol in the human serum and urine)、Talanta 2001;55:337‐347];フェナセチン[Tan Y他著、分子インプリントポリマーコーティングを有する生体模擬バルク弾性波センサーを用いるフェナセチン用の新システム(A new system for phenacetin using biomimic bulk acoustic wave sensor with a molecularly imprinted polymer coating)、Sensor Actuat B−Chem 2001;73:179‐184];プロプラノロール[Ye L他著、分子インプリントと近接シンチレーションの組み合わせにより生体分子を認識するポリマー:センサーの新コンセプト(Polymers recognizing biomolecules based on a combination of molecular imprinting and proximity scintillation: a new sensor concept)、J Am Chem Soc 2001;123:2901‐2902];糖類および誘導体[Piletsky SA他著、センサー技術のインプリント膜‐共有結合型および非共有結合型インプリント膜の逆作用(Imprinted membranes for sensor technology-opposite behavior of covalently and noncovalently imprinted membranes)、Macromolecules 1998;31:2137‐2140;Cheng Z他著、分子インプリントポリマーを用いるグルコースの容量検出(Capacitive detection of glucose using molecularly imprinted polymers)、Biosens Bioelectron 2001;16:179‐185;Chen G他著、グルコース検出ポリマー(A glucose-sensing polymer)、Nat Biotechnol 1997;15:354‐357;およびWang W他著、鋳型重合による蛍光センサーの構築:D‐フルクトース用蛍光センサーの作製(Building fluorescent sensors by template polymerization: the preparation of a fluorescent sensor for D-fructose)、Org Lett 1999;1:1209‐1212];テルペン[Percival CJ他著、分子インプリントおよびポリマーコーティングによるテルペン検出用水晶振動子微量天秤(Molecular-imprinted, polymer-coated quartz crystal microbalances for the detection of terpenes)、Anal Chem 2001;73:4225‐4228];ビタミンK1[Andersson LI他著、オクタデシルシリル化シリコン表面における偏光解析法を用いたゲスト分子の選択的認識の研究(Studies on guest selective molecular recognition on an octadecyl silylated silicon surface using ellipsometry)、Tetrahed
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【0024】
基板は、湾曲させてもよいが、実質的に平面基板であることが好ましい。シリコンウエハ、セラミック、ガラス、金属、またはプラスチック等を基板とすることができる。
【0025】
適切なトランスデューサーは当技術分野において周知であり、本発明のセンサーに採用することができる原理は、電気化学的(例えば電位差検出によるもの、具体的にはイオン感応電界効果トランジスタ(ISFET)、または電流検出によるもの)、電気伝導度的、光学的、蛍光的、発光的、吸収的、飛行時間的、重量法的、変形または置換的、弾性表面波的、共鳴的、あるいは熱的原理である。トランスデューサー6は、第1内部空間5に隣接して配置する。つまり、トランスデューサー6と第1内部空間5が十分に近くにあり、閉じ込め構造3内で発生した信号をトランスデューサー6が受信できるということである。トランスデューサー6は、好ましくは基板2上または基板2中(例えば埋込型トランスデューサー)に配置するが、より好ましいのは基板2上である。
【0026】
センサー1は、電流検出または電位差検出によるトランスデューサーの電極間の電流等、物質サンプル中またはポリマー中の電流の流れに左右されるため、第1合成ポリマー7とトランスデューサー6は電気的に連絡していなければならない。すなわち、分析物とトランスデューサー6間に直流を流すように、どちらもトランスデューサー6に十分に近くなければならないということ、もしくは、前記センサーは伝導性物質を伴なう必要があるということである。この伝導性物質は、例えば食塩水中のサンプルのように、分析するサンプル中に存在するものでよく、または第1内部空間5が伝導性物質を含んでもよい。例えば、この伝導物質は、PVDFのような導電性ポリマー、N‐メチルフェナジニウムカチオンとテトラシアノキノジメタンラジカルアニオン等の電気導電性有機塩、または電解質でよい。導電性ポリマーの場合は、分析物を結合可能な合成ポリマーに導電性ポリマーを組み込むこともできる。
【0027】
前記閉じ込め構造には、メディエーターすなわちある物質を例えば最内部に溶液の形で前記閉じ込め構造内に含むこともでき、その物質は、検出すべき分析物とサンプル中に存在する例えば溶存酸素のような他の物質の、両方またはいずれか一方と反応して中間種を形成し、それから前記トランスデューサーに伝播し、そこで検出される。好ましい実施例の一例では、前記トランスデューサーを用いた反応により中間種はメディエーターに戻る。この具体的な一例として電気化学的メディエーターが挙げられ、これはターゲット種を酸化または還元するために電子を電極からターゲット種に、またその逆に転送するものである。このようなメディエーターの例としてはフェロセンが含まれるが、当技術分野では他にも多くが周知である。
【0028】
電解質の適切な組成は、当技術分野では多く知られている。好ましい電解質を構成するのは、トリエチレングリコールを含む緩衝液およびリン酸緩衝液である。この一例として、緩衝液(濃度100mmol/L、pH7)120μLとトリエチレングリコール30μLの溶液がある。ポリビニルピロリドン(PVP)等の平坦化用の添加剤を含むことも好ましい。平坦化剤の添加は、この層の上に他の物質を堆積する場合に特に都合がよい。適切な電解質には、他にNaCl水溶液を含むリン酸緩衝水溶液がある。選択的には、電解質中の総イオン濃度は約100mMとすべきである。繰り返すが、溶液にはPVPを添加することが好ましい。
【0029】
電解質溶液は、結晶またはゲル状になるまで十分に乾燥させる。操作条件下でサンプルに接触すると、電解質は湿気を帯び得る。
【0030】
図3に示すセンサーも閉じ込め構造3を一つ有するが、(a)では第1境界構造4のみを有し、(b)では第1境界構造4および第2境界構造8を有する閉じ込め構造3を示している。第2境界構造8により、閉じ込め構造3がさらなるカバー層を含むことが可能である(図7参照)。
【0031】
前記センサーは、周知の技法を利用して加工する。当該構造の構築を説明している米国特許第5,376,255号公報および同5,376,2565号公報を参照いただきたい。前記閉じ込め構造は、いわゆる「バックエンドプロセス」により製作することができる。つまり、前記トランスデューサーをシリコンウエハ中に組み込むか、またはシリコンウエハ上に製作した後に行なうということである。この段階では、前記ウエハは、プラズマ支援化学気相堆積法(PECVD)により堆積したSiNから作る層等の保護層、または酸化物、オキシナイトライド、あるいはレジスト層等の他の保護層に覆われている。前記トランスデューサー周辺部の保護層は除去し、測定する分析物に到達できるようにする。
【0032】
その後、第1閉じ込め構造、または随意的に更に付加される閉じ込め構造をトランスデューサー(単数または複数)周辺に加工する。これらの構造は、レジスト等、的確な厚さに堆積が可能なあらゆる層、またはフォトパターニングやエッチング等のマイクロファブリケーション加工の技法を利用してパターン形成が可能なその他の材料から加工することができ、金属層、シリコン酸化物、シリコン窒化物、レジスト材料を含み、例えばマイクロファブリケーション加工に一般的に用いられるレジスト材料でポリイミド(PI)およびSU8を含むが、これに限定されない。このような材料は市販のものである。エンボシング、スタンピング、レーザーアブレーション等、他の技法も利用することができる。一般的に、前記閉じ込め構造は、レジスト材料をウエハ上に堆積して製作する。好ましいレジスト材料は、例えばDurimide7510のようなPIである。
【0033】
図4は、単一の閉じ込め構造3を有し、閉じ込め構造3自体が第1内部空間5と第2内部空間9をそれぞれ画成する第1境界構造4と第2境界構造8を有するセンサー1を表し、図4に基づいてこの工程の具体的な一実施形態を説明するが、用いる技法は、あらゆる境界構造および閉じ込め構造3に同様に適用される。
【0034】
第1境界構造4および第2境界構造8による二重構造について閉じ込め構造を製作するため、ウエハ上にPI層を回転成形する。ベーキング後、一般的にこの層は厚さが約10nmから5mmであり、好ましくは約1‐40μm、さらに好ましいのは約1‐10μmである。次にこれをフォトリソグラフィでパターン形成し、現像して所望の特性を残す。図4(a)は、第1内部空間5を画成する第1境界構造4と第2境界構造8の前駆体8’を含む二つの環状構造を示す。
【0035】
次に、スピンコート法により第2層目のPI層をウエハ上に堆積する。通常、この層は第1層より厚く、一般的にベーキング処置後の厚さは約10nmから5mmであり、好ましくは約1‐500μm、さらに好ましいのは約1‐100μmである。これを更にフォトリソグラフィでパターン形成し、現像して所望の形状に製作する。図4(b)は、図4(a)に示した二つの環状構造のうち外側の構造の上部に加工した第2境界構造8を示す。図4(b)の第2境界構造8は、陥凹部10を含む。陥凹部10は、以下に説明するとおりMIPを塗布する際に役立ち、前駆体8’が存在することにより保護層が前記基板の全域にわたり、液体が前記基板に接触することを防止する。
【0036】
前記閉じ込め構造の深度、寸法、面積、容積、および形状は、個々の用途により異なる。しかし、単一の境界構造を有する閉じ込め構造の一般的な内径は、約1‐500μmであり、好ましくは約10‐350μmである。二重の境界構造を有する閉じ込め構造の場合、第1境界構造の一般的な直径も約10‐350μmであるが、第2境界構造の一般的な内径は約5‐600μmでさらに大きく、好ましくは50‐600μmである。第1境界構造および第2境界構造の高さは、堆積する第1および第2の層の厚さにより左右される。
【0037】
トランスデューサー6の周辺に、三重または四重等の境界構造をさらに製作するため、同様に前記基板に層を付加してパターン形成をすることもできる。つまり、前記閉じ込め構造は、一つ以上のさらなる内部空間を画成する一つ以上のさらなる境界構造をさらに備え、前記一つ以上のさらなる内部空間がそれぞれ内側の内部空間を含むということである。
【0038】
前記閉じ込め構造およびこのような第1境界構造、第2境界構造、およびさらなる境界構造はどのような形状でもよいが、環状が好ましい。複数の境界構造があって環状である場合、これらは同心円を形成する。
【0039】
図6に示すのは、第1境界構造4および第2境界構造8を有する閉じ込め構造3に取り囲まれた電流検出トランスデューサーの写真である。
【0040】
MIPを一例とする第1合成ポリマー7は、手動または自動の分注法により閉じ込め構造3内に堆積することができる。どちらの手法においても、小さなシリンジを用いて、所望の溶液一滴または二滴以上の小滴をそれぞれの閉じ込め構造3に堆積する。液滴の大きさは前記閉じ込め構造の容積により異なるが、おそらくは0.1‐200nLの領域である。手動のシリンジで採用されるのはピストンの物理的移動であるが、自動システムでは所望量を精密に分注する空圧システムを用いる。他の例として、インクジェット印刷法、スポット法、ドロップ法等がある。
【0041】
MIP等の合成ポリマーを閉じ込め構造内に堆積するには、好ましい三つの手法がある。
【0042】
まず第一には、選択されたモノマー、鋳型、可塑剤、架橋剤、重合開始剤等、ポリマーを形成するために必要な全構成成分を含む溶液を調製する。次に、この溶液を各閉じ込め構造に分注し、重合する。重合は様々な方法で行なうことができる。例えば、電磁波放射による開始(可視線、UV線、または赤外線等)、化学的開始[2,2’‐アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、または2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)を開始剤として使用する等]、または加熱による開始(温度60‐80℃で12‐48時間加熱する等)等である。ポリマー形成後、チップ表面を洗浄してMIPから鋳型を除去することができる。
【0043】
また、完成した溶液を一度に堆積するよりも、むしろ異なる構成成分を重合前に閉じ込め構造内に連続的に堆積してもよい。その後の処置については、最初の方法と同じことである。
【0044】
第二として、堆積前に重合によりMIPを形成してもよい。この場合、MIPは砕いて小粒子にすることが好ましい。ポリマーを粉砕する技法は周知であり、例えば遠心式ボールミルの使用等がある。所望の粒度を得るには、ふるいを使用するとよい。MIPの粒度の最小限度は、好ましくは直径10nm、さらに好ましく100nmである。MIPの粒度の最大限度は、好ましくは直径40μmであり、さらに好ましくは10μm、もっとも好ましいのは1μmである。次に、MIPを液体に懸濁し、この液体を閉じ込め構造内に分注する。また、モールディング、押し出し、フォーミング、またはスタンピング等により、MIPの粒子を特定の形状に生成してもよく、その後にトランスデューサー素子上に堆積することができる。この粒子は、一次粒子または一次粒子が構成する構造体/凝集体でもよい。
【0045】
第三としては、セルロース、PVC、ナイロン、HEMAおよびポリHEMA、シリコン、シロキサン、またはポリエステル等の架橋したポリマーまたは膜に前記MIP粒子を封入することができる。この場合は、好ましくはこのMIP粒子を前駆体溶液に混合し、その後、この溶液を前記閉じ込め構造内に堆積する。
【0046】
堆積させる第1合成ポリマー7を単一または複数の溶媒中に溶解または懸濁すると、例えば、懸濁液の形で粒子を堆積させることが可能になったり、沈殿する液体の粘度を調整できたりするという利点がある場合もある。溶媒は堆積後に留去することができる。このような場合、閉じ込め構造3内に、センサー素子の稼働に要する最大量よりも多量に堆積することが望ましいことがある。この手法を図5に示す。図5(a)は、閉じ込め構造3を有する本発明によるセンサー1を示す。続いて、第1合成ポリマー7が前記閉じ込め構造に堆積される。第1境界構造4内の陥凹部10は、表面張力等により第1合成ポリマー7が境界構造の表面に沿ってさらに広がることを防止する。図5(c)に示すように、堆積後、必要に応じて例えば加温加湿環境等でウエハを乾燥することができる。
【0047】
大量生産には、好ましくは自動分注機を使用する。この機器では、分注処理に必要な位置的精度を達成するため、パターン認識システムを用いて各基板上の個々の閉じ込め構造を確認する。極めて低量のポリマーまたはカバー層溶液、もしくは懸濁液(ナノリットルという領域で)が高い再現性(2%超)で分注可能である。分注機器は大量生産用に拡張可能であり、毎分約200滴の分注速度を達成することができる。
【0048】
MIPを閉じ込め構造内に「捕捉」することに加え、必要に応じて、基板2の表面(閉じ込め構造3内)に多様なやり方でMIPを固定することもできる。適当な官能基または遊離基開始剤のセンサー表面上における固定化は、前記基板の表面に付着する連結分子により実現することができる。そして、この化学修飾した表面とMIP間のカップリング反応を経て、MIPの前記基板に対する共有結合が行なわれる。
【0049】
固定化は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、および金属等、多様な物質に対して、様々な化学的性質を利用して達成することができる[例えば、Bartlett PN著、センサー表面の修飾(Modification of sensor surfaces)、化学的および生物学的表面ハンドブック(Handbook of chemical and biological surfaces)、Taylor RFおよびSchultz JS編、英国物理学会出版局(1996)参照のこと]。便利な方法として例を二つ挙げると、シランまたはチオールである。このレベルでMIPの重合を進めることにより、安定的で強固なセンサーの作製が確保される。
【0050】
シラン化処理は、例えばシリコン、シリコン酸化物、およびシリコン窒化物等、水酸基を露呈した全てのタイプの表面に対して行なうことができる。この処理は、クロロシランまたはアルキルオキシシラン(alkyloxysilane)のシランが表面に共有結合する形で起こる。シラン化処理により、アミン、チオール、およびカルボキシル基等の多様な官能基による表面終端をもたらすことができる。例えば、Pavlovic E著、空間的に調節したシリコン表面上への生体分子固定化(Spatially controlled immobilization of biomolecules on silicon surfaces)、Acta Universitatis Upsaliensis、科学技術学部ウプサラ研究論文概要(Summaries of Uppsala Dissertionas from the Faculty of Science and Technology)867、ISBN91‐554‐5691‐X(2003)を参照いただきたい。このとき、これらの基は適切に修飾された官能基または重合開始剤と反応し、MIPを表面に固定し、結果として層が生じる。
【0051】
別の固定手法としては、基板上のシラノール基(Si‐O‐H)とエタノールアミン間の自己エステル化を用いるアミン終端表面の製作である。この最初の修飾処置の後、表面に露出した第一アミンは、この後他の官能基の結合に用いることができる。
【0052】
図7に示すような本発明の好ましい実施形態では、カバー層11を第1合成ポリマー7の上部に堆積する。一実施形態においては、このカバー層11は、検出する分析物、または分析物検出につながる反応または相互作用に関与する物質に対し透過性をもつ一方、サンプル中に存在するタンパク質や他の化学物質等の不要な干渉物質が通過するのを防止し、またはそのような干渉物質の堆積に対する抵抗力を与える選択的透過膜である。また、この膜は分析物を選択的に分配することもできる。これは、概念的には「容器」上の「蓋」構造と例えることができる。
【0053】
カバー層11の構成に用いることができる材料は、シリコン、PVC、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)樹脂等と多い。重合可能な材料は、レセプターを損傷しない条件下、または必要な用途に対するレセプターの効果を無効にすることのない条件下において重合または硬化するものであれば、幅広い範囲で用いることができる。材料の選択は、ポリマーと分析物により大幅に異なる。好ましい膜は、UV架橋型のコーティングである。例えば、トリエチレングリコール60μl中にHEMA2.374g、ジメトキシフェニルアセトフェノン(DMAP)0.025g、およびテトラエチレングリコールメタクリレート(TEGM)0.075gを含む溶液で構成するような光組織化可能なHEMA樹脂である。
【0054】
他の実施形態ではこのカバー層は第1合成ポリマー7であり、それは前記合成ポリマーを第2内部空間またはさらに一つ以上の内部空間内に堆積するということである。この実施形態では、分析物は自由にまたは選択的にこの層中に溶解または拡散され得る。このとき前記第1内部空間には、伝導性物質が含まれるか、または例えばサンプル自体が伝導性物質である場合には、センサー1を使用中に伝導性物質を組み込む空間が含まれる。したがって、この伝導性物質により、第1合成ポリマー7は前記トランスデューサーと電気的に連絡することができる。使用中、分析物は前記合成ポリマーに選択的に結合し、前記トランスデューサーは伝導性物質を通して電子またはイオン交換により信号を検出する。上述したように、メディエーターを含むこともできる。
【0055】
センサー1の性能を改善するために、第1内部空間5内の第1合成ポリマー7と同様に、第1合成ポリマー7周辺に特異的環境を作製する一種以上の構成成分をさらに含むこともできる。例えば、多くのMIPは、非水媒体等の非極性媒体中で機能するように設計されている。これらのMIPは、限局的に非極性の媒体を前記閉じ込め構造内に配することにより、極性環境下で機能するセンサー1に用いることができる。このことは、サンプルが一般的に尿や血液等の水性サンプルであるセンサーには特に意義がある。このとき閉じ込め構造3上部には半透過膜を形成する。
【0056】
この手法は、極性溶媒中にエマルジョンとして存在する物質を検出する場合に特に都合がよいといえる。具体的な一例としては特定の医療用薬剤であり、例えばプロポフォール等の麻酔薬である。
【0057】
好ましい実施形態では、本文中に明示するとおりセンサー1は少なくとも一つのさらなる閉じ込め構造3を含むが、これはすなわち複数の閉じ込め構造3を備えるということである。各閉じ込め構造3は、少なくとも一つが付加された閉じ込め構造3それぞれの第1内部空間5内に第1合成ポリマー7を含むのと同様に、少なくとも一つが付加された閉じ込め構造3それぞれの第1内部空間5内に基板2上に配置したトランスデューサー6を含み、ここで第1合成ポリマー7は、第1または第2以降の分析物、標準物質、または電解質を選択的に結合することが可能な合成ポリマーである。図8にこのようなセンサー1の例を示す。
【0058】
図8は、基板2上に4つの第1閉じ込め構造3a乃至第4閉じ込め構造3dを有し、第1または第2以降の分析物、標準物質、または電解質を選択的に結合することが可能なセンサー1であり、前記合成ポリマー組み込み前(a)と組み込み後(b)の双方について示す。第1閉じ込め構造3a乃至第4閉じ込め構造3dはそれぞれトランスデューサー6a乃至トランスデューサー6dを含む。第1閉じ込め構造3aは第1境界構造4aおよび第2境界構造8aにより作られ、トランスデューサー6aを含む。第2閉じ込め構造3bは、第1閉じ込め構造3aの第2境界構造8aと同時に作られる第1境界構造4bのみを有する。前記センサーの図面の切れ目は、さらなる閉じ込め構造をいくつでも組み込むことができるということを示唆するものである。第3閉じ込め構造3cおよび第4閉じ込め構造3dは、それぞれ第2閉じ込め構造3bおよび第1閉じ込め構造3aと同様のものである。
【0059】
図8(b)に関し、第1閉じ込め構造3aは、例えば、第1の分析物を選択的に結合することが可能なMIP7aとカバー層11aを含む。第2閉じ込め構造3bは、例えば、第2の分析物を選択的に結合することが可能なMIP7bのみを含む。第3閉じ込め構造3cには、基準測定を行なうために、構成成分がMIP7bと同一でありインプリントされていないポリマーを含むことができる。第4閉じ込め構造3dには、第3の分析物を選択的に結合することが可能なMIP7dとカバー層11dを含むことができる。
【0060】
第3閉じ込め構造3c内で基準測定を行なうことができるということは、本発明によるセンサーのさらなる利点である。基準測定は、二つのトランスデューサー6bおよびトランスデューサー6cにおける示差測定実施により行なうことができ、トランスデューサーのうち一つはMIP7bでコーティングし、もう一つは同一の構成成分であり鋳型分子を欠いた状態で重合および架橋の両方またはどちらか一方を行なったもの、すなわち合致するポリマーであるが非インプリントの物質7cでコーティングしたものである。この測定を行なう理由は、MIPが、検出する分析物(単数または複数)に特異的な結合部位の他に、別の分子を結合することが可能な非特異的部位を有する恐れがあるためである。一方、鋳型を欠いた状態で重合した物質が有するのは非特異的部位のみである。したがって、分析物(単数または複数)以外の分子が原因となり得る干渉であり、非特異的相互作用によりMIP7bに結合されるような干渉を完全にまたは部分的に補正することが可能である。これは一般的にはMIPと同じ構成成分から作られた物質でインプリントされていないもの、すなわち鋳型を欠いて重合した物質である。
【0061】
最も簡易な実施形態では、機能化したポリマー、つまりMIPによる信号から基準信号を差し引けばよい。しかし、当技術分野ではさらに精巧な補正の仕組みが周知である。
【0062】
本発明によるセンサー1は、対象となる分析物(単数または複数)の関連代謝産物を個別にまたは同時に測定して、分析物(単数または複数)の生理通過/薬物動態の情報を提供することができる。例えば、プロポフォールの場合、プロトフォール‐グルクロニド、2,6‐ジイソプロピル‐1,4‐キノール、4‐(2,6‐ジイソプロピル‐1,4‐キノール)‐サルフェート、1‐または4‐(2,6‐ジイソプロピル‐1,4‐キノール)‐グルクロニド等のプロトフォールの代謝産物または代謝産物の派生物を検出することが可能である。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態では、同じポリマーを用いた二つのトランスデューサーにおける示差測定を採用し、そのうちの一方は分配物質(partitioning material)を使用し、他方は分配物質(partitioning material)を使用せずに作る。
【0064】
本発明の閉じ込め構造は、米国特許第5,376,255号公報および同5,376,2565号公報に記載されたセンサー等、当技術分野において周知の他のバイオセンサーおよび化学的センサーを有するセンサーに含むこともできる。
【0065】
MIPを一例とする前記合成ポリマーにより検出される分析物は、通常は分析対象であるターゲット種と同じである。例えば、ターゲット種がプロトフォールである分析では、プロポフォール自体もまた、選択的にプロポフォールと結合するように前もって合成された前記合成ポリマーと相互作用する分析物である。しかし、本発明のセンサーは、対象となるターゲット種と同じではない分析物の検出に用いることもできる。例えば、分析物は、対象となるターゲット種の代謝産物またはその他の派生物でもよい。
【0066】
また、前記センサーは、競合測定法として用いることもできる。この実施例では、前記合成ポリマーは、ターゲット種に反応し、分析物を前記合成ポリマーから転位させる。この場合、対象となるターゲット種の存在下において、分析物が合成ポリマーから転位すると検出器が受信する信号は低下する。具体的な一実施形態では、対象となるターゲット種は分析物に反応し得る。前記センサーはまた、サンドイッチ測定法として用いることもできる。すなわち、分析物を前記合成ポリマーに結合し、その後、その分析物または分析物とポリマーの複合体に標識を結合する。
【0067】
本発明のセンサーは、一般的にサンプリングシステムおよび信号処理ユニット内に組み込まれる。図9に、このようなシステムの例を示す。このシステムは、センサー1の上手において血管ライン14でつながりサンプリングポート13に連結するセンサー1を組み込んだハウジング12を備える。サンプリングポート13には、例えばシリンジ等のサンプリング装置15が連結する。測定を行なうため、操作者は、サンプリング装置15を用いて血液をセンサー1に流しながら採血する。測定完了後、血液は患者に流し戻すか、または流して捨てる。別の実施形態では、前記センサーは、例えば一つ以上の圧力センサー等の他のセンサーとともに、静脈流ライン(intravascular-flushing line)内に組み込むことができる。サンプルは、周期的に、定期的に、容態次第で、要望対応で、または操作者の診療に従って採取することができる。
【0068】
センサー1は、患者監視装置17に接続することができる表示部付き信号処理ユニット16に接続される。また、センサー1は、当技術分野において周知の技法を用いてハウジング12に電子的に接続される。
【0069】
上述のシステムに加え、前記センサーは、当業者に周知である様々な他の検知システムに採用することができる。例えば、患者に直接接続せずに、サンプルを患者から採取し、サンプル分析を行なうために分析器へ移送して注入することができ、前記センサーはこの分析器内に組み込まれている。
【0070】
本発明によるセンサーは、マーカー、物質、または薬剤の検出および測定の提供だけではなく、行なわれた分析の結果に基づいて患者治療のフィードバックを提供する。このフィードバックは、直接操作者に提供することもでき、または患者に治療を施す装置を含む閉ループ制御システムの一部とすることもできる。具体的な一例は、プロポフォール等の麻酔剤用のセンサーであり、血液や血漿等の一種以上の体液または画分中の麻酔剤の濃度を測定するものであり、これらの測定に基づいて、シリンジポンプを経由して患者に投入する量を制御する等、麻酔剤のさらなる投入について直接、または操作者に対し示す。
【0071】
また、前記センサーは、患者の健康特性を明らかにしたり、病状を示唆する特定のマーカーを監視したり、患者の治療法を示したりする他のパラメーター、例えば血液ガス、pH、体温等を監視するシステムとともに用いることもできる。
【0072】
本発明の一実施形態は、プロポフォールセンサーに関するものである。ここでは、エチレンジメチルアクリル酸(EDMA)を架橋剤とし、1,1’‐アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル(ABCHC)を重合開始剤として用いてメタクリル酸(MAA)溶液を重合することにより、プロポフォールをインプリントしたMIPを作製した。プロポフォール:MAA:EDMA:ABCHCが1:4:30:0.17(ヘキサン1.65ml/gにおいて)となる割合で化学物質全てをヘキサンに溶解した。この溶液一滴を前記基板上の電流検出トランスデューサー周辺に形成した二重境界構造内に堆積し、60‐80℃で24時間、熱重合した。重合後、チップ表面をメタノールおよびヘキサンで洗浄し、ポリマーからプロポフォール鋳型を除去した。
【0073】
次に、トリエチレングリコール60μl中に、ヒドロキシメチルメタクリレート(HEMA)樹脂2.374g、ジメトキシフェニルアセトフェノン(DMAP)0.025g、およびテトラエチレングリコールメタクリレート(TEGM)0.075gを含む溶液一滴を、前記第2内部空間内のプロポフォールをインプリントしたMIPの上部に堆積した。次に、UV光を用いてこの物質を重合し、プロポフォールをインプリントしたMIPを覆う膜を形成した。
【0074】
前記センサーをプロポフォール6μlの食塩水と接触させた。プロポフォールは、前記電流検出トランスデューサー上部のポリマー層に結合し、ボルタンメトリーを用いて検出された。図10を参照いただきたい。
【0075】
日常臨床的な測定の大部分は血液測定であるが、他の体液のサンプルを採取することもできる。また、本発明によるセンサー1は、呼気中の分析物の存在を検出することに用いることもできる。呼気中分析物の測定には、呼気中濃度と肺胞における血中濃度に密接な関係があり、急激な変化をリアルタイムで測定し得るという利点がある。したがって、本発明のセンサーは、患者の気管内チューブ、麻酔回路、または人工呼吸器回路内に収容することもできる。このようなシステムでは、人工気道内の呼気に対し攪拌または振動の両方またはいずれか一方を行ない、対象とする分析物が肺胞から拡散するのを補助し、前記センサーにおける分析物の濃度増加を促進するには都合がよい。また、前記センサーは、呼気中の分析物を集中させるカバー層を採用することもできる。
【0076】
さらに別の実施形態では、本発明によるセンサーを虚血により変性したアルブミン(ischaemia modified albumin)(IMA)の検出に用いることができる。急性心筋梗塞(AMI)は、心筋に血液を供給する血管が閉塞することにより起きる病気である。結果として生じる酸素不足により、心筋に永久的損傷(梗塞)が起こる可能性があり、疾病や、多くの場合、死につながる。迅速な治療により、AMIの影響は制限もしくは回避することができる。
【0077】
患者がAMIを罹患しているか否かを判定する技法は多く存在するが、これらは、特異度が低い傾向にあって偽陰性診断の原因にもつながり、また時間がかかるため心筋に対するさらなる損傷を容認することになる。
【0078】
AMIの早期発見において出現するマーカーがIMAである。ヒト血清アルブミン(アルブミン)は、全血の有意な構成成分であり(1リットルにつき40g以下)、脂質の運搬および浸透圧の調整に重要な役割を果たす。アルブミンの特異的結合部位は虚血により変化し、アルブミンがこの部位において金属イオンと結合する能力が、変性することがみとめられている。これにより、虚血事象の早期発見のため、血中のIMA濃度を測定するアルブミンコバルト結合(Albumin Cobalt Binding)(ACB(R))試験が開発されることとなり、この試験がAMI発見に効果的であるという評価が高まっている。
【0079】
ACB(R)試験は、血液サンプル中のアルブミンの全体濃度を判定するものであり、十分な量のコバルトイオンを加えてアルブミンと結合させた後、比色分析により非結合コバルトの量を測定し、IMA濃度を推測する。この手法については様々な改変型の叙述もあり、変性していないアルブミンに結合する他の金属イオンまたは蛍光マーカーの使用も含み、測定法は同様である。どの手法も、相当量のサンプル調製を要し、分析実験室の環境下で実施される種類のものである。
【0080】
直接IMAを測定する方法か、あるいは異なるやり方でIMA濃度が推測される測定を二回行なう方法か、どちらが好ましいかということは、多くの理由により明白である。第一に、特定のターゲットを直接測定する方が、二種の高濃度群(アルブミン濃度、コバルト濃度)間の差異を測定するよりも、本質的に、生じるエラーが少ない。第二に、このような方法は、実験室の熟練者よりむしろ第一線に立つ臨床スタッフが、ポイントオブケア(PoC)機器により容易に組み込んで使用することができる。患者治療が功を奏するためには、結果を早く出すことが非常に重要であり、PoC機器は、実験室へのサンプル移送に使われる時間と臨床スタッフに結果が戻るまでに使われる時間を排除する。第三に、このような方法は、患者に取り付けた動脈ライン、静脈ライン、または他のライン(ドレーン等)において、繰り返し測定を行なうような使用に対応できる。患者はこのような連結物を取り付けている場合が多く、概して何時間にも何日間にもわたり多くの測定を要する。オンライン、オンデマンドのシステムには利益が多く、試験所要時間が非常に短かいこと、傾向分析を得るため付加的に利用することも含め測定頻度が増加していること、患者と介護者双方における感染リスクが低下すること、および血液量の管理をすることが含まれる。
【0081】
本発明によるセンサーでは、血液、血漿、血清、唾液、間質液、透析液、または他の液体等であって随時精製して例えば赤血球や血小板等を取り出すことができるような、患者の生体サンプル中のIMA濃度を測定することができる。前記センサーは、上述のように、患者に接続した装置に組み込むことができる。
【0082】
好ましい一実施形態による方法では、IMAを直接測定するセンサーを使用する。このセンサーは、MIP等のIMA感受性の合成ポリマーを含む。
【0083】
別の実施形態では、分析する液体のサンプルと、サンプル中のアルブミンの全体濃度を上回る遷移金属イオンの既知量を混合する。好ましくは、この金属イオンは元素周期表の1b‐7b群または8から選択し、VグループのAs、Co、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、Au、およびAgを含む。サンプルは、変性していないアルブミンが金属イオンに反応するための十分な時間をとって放置する。非結合金属イオンの残留濃度をセンサーを用いて測定する。この非結合金属イオンは、センサー内の合成ポリマーに結合するか、または他の相互作用を起こす。合成ポリマーは、例えば、MIP、またはCo2+イオン検出用にPVCマトリックス中に含まれたポルフィリンイオノフォアがよい。
【0084】
前記センサーにおいて組み合わせ可能な範囲は、IMAと全アルブミンの検出、IMAと一種以上の干渉種の検出、全アルブミンと残留金属イオンの検出、またはこれらの組み合わせを含む。前記センサーは、IMAのみに対する機能、または好ましくは例えば心筋マーカーの心筋トロポニンを含む一連の分析物に対する機能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】自己組織化の過程の概略図を示す。
【図2】本発明によるセンサーを示す。
【図3】(a)に単一の境界構造を有する本発明によるセンサー、(b)に二重の境界構造を有する本発明によるセンサーを示す。
【図4】本発明によるセンサーの加工段階を示す。
【図5】本発明による閉じ込め構造内に物質を付加する段階を示す。
【図6】電流検出トランスデューサーを組み込んだ本発明によるセンサーの写真である。
【図7】有蓋容器構造を有する本発明によるセンサーを示す。
【図8】複数の閉じ込め構造を有する本発明によるセンサーを示す。
【図9】点滴モニターシステムに組み込まれた本発明によるセンサーである。
【図10】本発明によるセンサーを使用して得られた6μMのプロポフォール溶液にボルタンメトリースキャンを行なったものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置した閉じ込め構造であり、第1内部空間を画成する少なくとも第1境界構造を備えた前記閉じ込め構造と、
前記第1内部空間に隣接したトランスデューサーと、
前記閉じ込め構造内において、第1の分析物に選択的に結合することが可能な第1合成ポリマーと、
を備えたセンサー。
【請求項2】
前記閉じ込め構造は、第2内部空間を画成する第2境界構造をさらに備え、前記第2内部空間が前記第1内部空間を含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記閉じ込め構造は、一つ以上のさらなる内部空間を画成する一つ以上のさらなる境界構造をさらに備え、前記一つ以上のさらなる内部空間がそれぞれ内側の内部空間を含む、請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
第1の分析物に選択的に結合することが可能な前記第1合成ポリマーを前記第1内部空間内に配置した、請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサー。
【請求項5】
第1の分析物に選択的に結合することが可能な前記第1合成ポリマーを前記第2内部空間内またはさらに一つ以上のさらなる内部空間内に配置した、請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサー。
【請求項6】
前記第1境界構造の内径は約10乃至350μmである、請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサー。
【請求項7】
前記第1境界構造の高さは約1乃至10μmである、請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサー。
【請求項8】
前記第2境界構造の内径は約50乃至600μmである、請求項2乃至7のいずれかに記載のセンサー。
【請求項9】
前記第2境界構造の高さは約1乃至100μmである、請求項2乃至8のいずれかに記載のセンサー。
【請求項10】
前記閉じ込め構造の前記全境界構造は環状である、請求項1乃至9のいずれかに記載のセンサー。
【請求項11】
前記センサーは、
請求項1乃至10に明示するとおり、少なくとも一つの付加的な閉じ込め構造と、
前記少なくとも一つの付加的な閉じ込め構造それぞれの前記第1内部空間に隣接したトランスデューサーと、
前記少なくとも一つの付加的な閉じ込め構造内に含まれた物質をさらに備え、
前記物質が第1の分析物に選択的に結合することが可能な前記合成ポリマーであり、さらなる合成ポリマーがさらなる分析物、または標準物質に選択的に結合することが可能な、請求項1乃至10のいずれかに記載のセンサー。
【請求項12】
前記第1合成ポリマーは分子インプリントポリマーである、請求項1乃至11のいずれかに記載のセンサー。
【請求項13】
前記第1合成ポリマーは、モルヒネ、プロポフォール、抗生物質、またはIMAに選択的に結合可能な、請求項1乃至12のいずれかに記載のセンサー。
【請求項14】
前記さらなる合成ポリマーは分子インプリントポリマーである、請求項11に記載のセンサー。
【請求項15】
前記センサーは、標準物質を内部に有する少なくとも一つの付加的な閉じ込め構造を備え、前記第1合成ポリマーは、分子インプリントポリマーであり、前記標準物質は、合致するポリマーであるが非インプリントである、請求項11に記載のセンサー。
【請求項16】
前記第1内部空間、前記第2内部空間、または前記さらなる内部空間は、伝導性物質およびメディエーターの両方またはいずれか一方を含む、請求項1乃至15のいずれかに記載のセンサー。
【請求項17】
前記伝導性物質は電解質である、センサー16に記載のセンサー。
【請求項18】
前記少なくとも一つの閉じ込め構造は、前記閉じ込め構造の内部に特異的環境を提供する一種以上の付加的な物質をさらに備える、請求項1乃至17のいずれかに記載のセンサー。
【請求項19】
前記特異的環境は非水環境である、請求項18に記載のセンサー。
【請求項20】
前記トランスデューサーは前記基板上に配置される、請求項1乃至19のいずれかに記載のセンサー。
【請求項21】
前記トランスデューサーは、電気化学的、電気伝導度的、光学的、蛍光的、発光的、吸収的、飛行時間的、重量法的、変形または置換的、弾性表面波的、共鳴的、または熱的なトランスデューサー、もしくは前記いずれかを組み合わせたトランスデューサーある、請求項1乃至20のいずれかに記載のセンサー。
【請求項22】
前記基板はシリコンウエハである、請求項1乃至21のいずれかに記載のセンサー。
【請求項23】
前記基板は実質的に平面状である、請求項1乃至22のいずれかに記載のセンサー。
【請求項24】
前記閉じ込め構造はポリイミドから作られる、請求項1乃至23のいずれかに記載のセンサー。
【請求項25】
ターゲット種を含むか、または含むと推測されるサンプルを、請求項1乃至24のいずれかに記載のセンサーに接触させることからなる、サンプル中のターゲット種を検出する方法。
【請求項26】
前記サンプルは患者に戻される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記サンプルは患者に戻されない、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−520715(P2007−520715A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551911(P2006−551911)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000367
【国際公開番号】WO2005/075995
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(504003189)スフェア メディカル リミテッド (5)
【Fターム(参考)】