説明

センサ劣化診断装置およびセンサ劣化診断方法

【課題】 熟練度に頼らずに、光ファイバの劣化を容易に診断し、炉内監視装置におけるメンテナンス上の経済的なコスト削減を図る。
【解決手段】 燃焼炉(40)から抜き出したセンサ部(12)の後端側を取り付ける筒状体(23)と、 その筒状体(23)に取り付けたセンサ部(12)の先端に露出した光ファイバ(11)の先端面に診断用光(22)を入射する診断用光源(21)と、 前記センサ部(12)の後端面に露出した光ファイバ(11)の後端面から出射する診断用光(22)を撮像するとともに、前記光ファイバ(11)の透過率を診断するための診断画像(34)を表示する画像診断装置(30)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼炉における炉内の燃焼を監視するために設けられたセンサの劣化診断装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などのボイラや廃棄物処理の焼却炉などの燃焼炉において、バーナーの点火または消火、炉内の燃焼状況などを監視する必要がある。そのために、炉内の火炎を検出する光ファイバスコープを用いた炉内監視装置が使用されている。上記の炉内監視装置には、多くの画像情報を取得するための光センサが設けられている。例えば、100万kWの火力発電所のボイラには、90個以上の光センサが設置されている。
【0003】
従来の炉内監視装置50としては、図6(A)に示されているように、燃焼炉60内で燃焼する火炎の光、例えば赤外線61を検出する光センサとして、光ファイバ51を設けたセンサ部52がロッド部53の先端に取り付けられている。そのロッド部53の中間までが燃焼炉60の中に挿入される。
【0004】
センサ部52の本体には、例えば直径約1mmの光ファイバ51を、上下方向に三本並べられて固定されている。それぞれの光ファイバ51の先端端面から、火炎の赤外線61を導き入れる。
各光ファイバ51の先端面から導かれた赤外線61は、ロッド部53の後方側に延伸された伝送用光ファイバ54を経てプロセス演算装置55に伝播される。そのプロセス演算装置55には、PHD(フォトディテクタ)、アンプ、演算回路等が内蔵されている。
光(赤外線61)は、PHDにより電流(抵抗値)に変更され、アンプで増幅されてから演算回路に入力する。そして、炉内に火炎があるかどうか、完全燃焼しているかどうか等が判断(診断)される。判断の結果として、炉内の燃焼状態をコントロールする必要があれば、燃焼炉60への空気流入量を増やして炎を強めたり、運転を停止したりする。
【0005】
なお、上下方向に並んだ三本の光ファイバ51のうち、一番上に位置する光ファイバ51aが水平方向を向き、その下に位置する光ファイバ51bは、約15°の角度で斜め下方向に傾けてあり、一番下の光ファイバ51cは水平方向から約30°の角度で斜め下方向に傾けてある。これは、ひとつの炉内監視装置50にて炉内上下方向の広い範囲を検知できるようにしたものである。
【0006】
従来の炉内監視装置50としては、特許文献1に示されているものが該当する。その他に、特許文献2、特許文献3などがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−139726号公報
【特許文献2】特開平5−288480号公報
【特許文献3】特開平11−142238号公報
【0008】
さて、図6(B)に示されているように、燃焼炉60の内部に晒されている光ファイバ51の先端面には、何らかの化学反応によって不純物が少しずつ蒸着してしまう。この不純物蒸着のため、センサの感度が時間経過に伴って低下することが経験的に知られている(この現象を以下、光ファイバの「経年劣化」と記す)。経年劣化が生じると光ファイバ51における光の透過率が低下するため、定期的に透過率の点検をする必要がある。燃焼が弱いために赤外線の入光量が少ないのか、経年劣化によって赤外線の入光量が少ないのかは、プロセス演算装置55などを用いても判断できないからである。
【0009】
そこで経年劣化を生じているか否かの判断は、炉内監視装置50の保守員が、ボイラの炉壁からロッド部53を抜き出し、そのロッド部53の先端に取り付けられたセンサ部52の光ファイバ51の先端面を目視点検している。この目視点検は、その光ファイバ51が使用可能か否かを、熟練した判断によって決定している。炉内監視装置50に採用されている光ファイバ51の直径は、約1mmという細さであるので、その先端面を見て判断するには熟練が求められるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さて、現在の経年劣化の判断方法では、保守員の技能によるところが大きく、劣化状況についての判断にばらつきがある、と考えられる。したがって、その劣化判断の精度は、必ずしも高くない可能性がある。 すなわち、劣化判断の精度が良くないために、実際には使えるのに廃棄している可能性がある。この場合は、センサ部52に用いられる光ファイバ51は高価なものであるので、経済的に大きな損失が生じる。一方、光ファイバ51が十分経年劣化しているのに使用可能と判断され、継続使用された場合は、ボイラを運転しようとしても安全装置が働き、運転できないため、この場合も経済的な損失が生じる。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ボイラに用いられるセンサの劣化診断において、熟練度に頼らずに診断が可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、燃焼炉(40)の内部空間からの光(41)を燃焼炉(40)の外部に取り出すために前記燃焼炉(40)に装着するロッド部(13)と、 そのロッド部(13)に装着されるセンサ部(12)と、 そのセンサ部(12)に保持されて燃焼炉(40)内からの光(41)を導き入れて外部に取り出すための一本以上の光ファイバ(11)と、 その光ファイバ(11)にて導かれた光(41)を入力するプロセス演算装置(15)と、を備えた炉内監視装置(10)において、前記光ファイバ(11)の透過率を診断するセンサ劣化診断装置(20)に係る。
そのセンサ劣化診断装置(20)は、 上記の燃焼炉(40)から抜き出したセンサ部(12)の後端側を取り付ける筒状体(23)と、 その筒状体(23)に取り付けたセンサ部(12)の先端に露出した光ファイバ(11)の先端面に診断用光(22)を入射する診断用光源(21)と、 前記センサ部(12)の後端面に露出した光ファイバ(11)の後端面から出射する診断用光(22)を撮像するとともに、前記光ファイバ(11)の透過率を診断するための診断画像(34)を表示する画像診断装置(30)とを備える。
【0013】
(作用)
診断用光源(21)の診断用光(22)が光ファイバ(11)の先端面に入射すると、その光ファイバ(11)内を伝播して当該光ファイバ(11)の後端面から出射する。筒状体(23)の中は真っ暗であるので、光ファイバ(11)の後端面から出射する診断用光(22)は明瞭である。その診断用光(22)は画像診断装置(30)により撮像され、診断画像(34)に表示される。
その診断画像(34)はセンサ部(12)の光ファイバ(11)の透過率を反映しているので客観的であり、劣化診断に熟練していなくても容易にかつ精度良く診断することができる。
【0014】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記診断用光源(21)が発生する診断用光(22)は、光の照度が空間的に一定なフラット照明とする。
【0015】
(作用)
前記診断用光源(21)がフラット照明であるので、特に複数本の光ファイバ(11)を使用しているときは、複数本の光ファイバ(11)に入射する明るさのバラツキが小さいので、複数本の光ファイバ(11)を比較してその透過率を診断することができる。
【0016】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記画像診断装置(30)は、診断画像(34)の輝度を数値化する演算装置(36)と、その演算装置(36)で計算した輝度の測定値を、予め設定した光ファイバ(11)の使用不可能となる輝度のしきい値と比較して光ファイバ(11)の透過率を判断する比較判断装置(37)を備えたセンサ劣化診断装置(20)である。
【0017】
(作用)
単に、人が診断画像(34)を見て診断するのではなく、診断画像(34)の輝度を数値化して自動的に診断することができる。つまり、輝度の測定値(計算値)が「しきい値」を下回る時に光ファイバ(11)が使用不可能(交換時期)であると、自動的に診断することができる。
【0018】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記画像診断装置(30)は、診断画像(34)の輝度がしきい値に対して何%の差があるかを計算し、この計算値が当該しきい値に到達するまでどれ位の使用期間の余裕があるかを予測し、この予測した情報を通常運転のプロセス演算装置(15)にフィードバックする機能を備えたセンサ劣化診断装置(20)である。
【0019】
(作用)
「しきい値」を客観的に決められるため、不必要に「しきい値」を上げるなどの対策を取ることなく、ほぼ「しきい値」に到達するまで使用することができる。また、光ファイバ(11)の劣化情報を通常運転の炉内監視装置(10)にフィードバックできるので、使用限度のほぼ直前まで使用することができるので、光ファイバ(11)の交換時期を適切にすることができる。その結果、メンテナンス上のコスト削減を図ることができる。
【0020】
(第二の発明)
本願における第二の発明は、 燃焼炉(40)の内部空間からの光(41)を燃焼炉(40)の外部に取り出すために前記燃焼炉(40)に装着するロッド部(13)と、 そのロッド部(13)に装着されるセンサ部(12)と、 そのセンサ部(12)の後端側に取り付けられる筒状体(23)と、 前記センサ部(12)に保持されて燃焼炉(40)内からの光を導き入れて外部に取り出すための一本以上の光ファイバ(11)と、 その光ファイバ(11)にて導かれた光を入力するプロセス演算装置(15)と、を備えた炉内監視装置(10)において、 前記燃焼炉(40)から抜き出された前記ロッド部(13)から取り外された前記センサ部(12)の後端側を前記筒状体(23)に取り付け[T1]て前記光ファイバ(11)の透過率を診断するセンサ劣化診断方法に係る。
すなわち、 前記センサ部(12)の先端に露出した光ファイバ(11)の先端面に診断用光(22)を入射する診断用光入射手順と、 その入射した診断用光(22)が前記光ファイバ(11)を伝播して当該光ファイバ(11)の後端面から出射する診断用光(22)を、前記筒状体(23)の後端側に取り付けた画像診断装置(30)にて撮像する撮像手順と、 その撮像手順にて取得した診断画像(34)に基づいて前記光ファイバ(11)の透過率を診断する画像診断手順と、を含むことを特徴とする。
【0021】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、前記診断用光入射手順は、光の照度が空間的に一定なフラット照明となる診断用光(22)を入射する。
【0022】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記画像診断手順は、診断用光(22)を撮像した診断画像(34)の輝度を、予め設定した光ファイバ(11)の使用不可能となる輝度のしきい値と比較して光ファイバ(11)の透過率を判断する手順を含むことを特徴とする。
【0023】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち 前記画像診断手順は、診断画像(34)の輝度がしきい値に対して何%の差があるかを計算し、この計算値が当該しきい値に到達するまでどれ位の使用期間の余裕があるかを予測し、この予測した情報を通常運転のプロセス演算装置(15)にフィードバックする手順を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1から請求項4に記載の発明によれば、熟練度に頼らずにセンサ劣化診断が可能なセンサ劣化診断装置を提供することができた。
請求項5から請求項8に記載の発明によれば、熟練度に頼らずにセンサ劣化診断が可能なセンサ劣化診断方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の炉内監視装置におけるセンサ劣化診断装置を示す概略的な説明図である。
【図2】( A)は、図1の矢視II−II線の平面図で、(B)はセンサ部の斜視図である。
【図3】(A)は、図1筒状体及びレンズの詳細図で、(B)は(A)の矢視III−III線の平面図である。
【図4】診断用光の概略的な波形図である。
【図5】(A)は3本の光ファイバの診断画像の平面図で、(B)は光ファイバがないときの基礎画像の平面図である。
【図6】従来の炉内監視装置を示す概略的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に基づいて説明する。この実施の形態に係る炉内監視装置10は、燃焼炉40内で燃焼する火炎の光の中の例えば赤外線41を検出するセンサとして1本以上の光ファイバ11を保持するセンサ部12がロッド部13の先端に取り付けられている。そのロッド部13の中間までが燃焼炉40の中に挿入されて燃焼炉40に装着される。
【0027】
上記のセンサ部12の本体には、図2(A),(B)に示されているように、例えば3本の直径約1mmの光ファイバ11が上下方向に並べられて保持されており、それぞれの光ファイバ11の先端が露出しており、その先端面から火炎の赤外線41を導光させる。
【0028】
上記の3本のうち、上の光ファイバ11は例えば15°の角度で斜め上方向に傾けており、中間の光ファイバ11は横方向に延びており、下の光ファイバ11は例えば15°の角度で斜め下方向に傾けている。このような配置は、炉内の火炎を上下方向で広範囲に検出することが目的である。なお、センサ部12の本体の直径は15mmで、センサ部12の長さは70mmで、ロッド部13の長さは5m(メートル)である。
【0029】
上記のセンサ部12の光ファイバ11で導光した火炎の赤外線41を伝播する3本の伝送用光ファイバ14がロッド部13の後部側から燃焼炉40の外へ延伸され、プロセス演算装置15に接続されている。そのプロセス演算装置15には図示しないPHD(フォトディテクタ)、アンプ、演算回路等が内蔵されている。各伝送用光ファイバ14を伝播した光(赤外線41)はPHDにより電流(抵抗値)に変えられ、アンプで増幅されてから演算回路により火炎の光の状態を監視する。例えば、炉内に火炎があるかどうか、完全燃焼しているかどうかなどが判断(診断)できる。
その診断結果に基づいて、燃焼炉40の運転を停止したり、炎を強めたりすることで、炉内の燃焼状態をコントロールすることができる。
【0030】
本実施形態のセンサ劣化診断装置20では、上記の炉内監視装置10におけるセンサ部12の光ファイバ11の透過率を診断するために、図1の点線の矢印で示されているように、上記の燃焼炉40から抜き出したセンサ部12の後端側に筒状体23が取り付けられている。
【0031】
その筒状体23は、図3(A)に示されているように、本実施形態ではその長さが約90mmの円筒状をなしており、その先端側〔図3(A)において左端側〕にセンサ部12の後端側を着脱可能となっている。なお、センサ部12の後端面には、図3(B)に示されているように、3本の光ファイバ11の後端面が露出している。
【0032】
再び図1を参照する。上記の筒状体23にセンサ部12を取り付けた後に、そのセンサ部12の先端に露出した光ファイバ11の先端面に診断用光22を入射するための診断用光源21が設けられている。なお、本実施形態では、診断用光源21とセンサ部12の先端面との距離は約20mmである。
【0033】
診断用光源21としては、光の照度が空間的に一定なフラット照明となる診断用光22を発生する構成であることが望ましい。そのために、例えば反射板などを用いて診断用光源21の光を反射して均一な明るさの診断用光22にすることができる。あるいは、診断用光源21として、青色、赤色、白色等の光を発光するLED(発光ダイオード)を多数配置し、かつその裏面から反射板を用いて反射して均一な明るさにすることができる。以上のように、面発光の照明となる面発光装置を用いることができる。
【0034】
更に詳しく説明する。照度が空間的にフラットな診断用光22の波形24は、例えば、図4に示されているように、診断用光22の直径方向の各位置における光強度(照度)で表すと、診断用光22の直径Dの外周側+R、−Rから中心Oに向けて光強度が比較的急な勾配で大きくなり、中心付近の光強度がほぼ同じ平行光、つまり中心付近の照度がフラットな領域25となる。したがって、中心付近の平行光を光ファイバ11の先端面に入射することになる。
【0035】
センサ部12の直径が15mmであるので、上記の診断用光22のフラットな領域25の中心付近の平行光だけが光るように、例えば他の領域をカバーなどで覆うようにして、約40mm四方が光るように小さくしても良い。
以上のように光の照度が空間的に均一な診断用光22を必要とするのは、例えば、図1のように3本の光ファイバ11に照射される明るさがばらついていると、3本の光ファイバ11の劣化状態を適切に比較できないためである。
【0036】
診断用光源21としては、上述した多数のLEDを使用した面発光装置とすることが望ましい。その理由としては、ハロゲンランプやメタルハライドランプは、使わなくても自然劣化してしまうが、LEDは寿命が長く、経年的な劣化が少ないためである。
【0037】
上記の筒状体23の後端側には、前記センサ部12の後端面に露出した光ファイバ11の後端面から出射する診断用光22を撮像し、前記光ファイバ11の透過率を診断するための診断画像34を表示する画像診断装置30が設けられている。
その画像診断装置30としては、上記の診断用光22を撮像する撮像手段としての例えばカメラ31(VTR)が設けられている。そのカメラ31(VTR)は、図3(A)に示されているように、マクロレンズやテレセントリックレンズなどのレンズ32を、例えば複数枚備えている。つまり、レンズ32の本体が筒状体23の後端側に着脱可能に取り付けられている。
【0038】
筒状体23の先端側にセンサ部12の後端側を取り付けると共に筒状体23の後端側にレンズ32の本体を取り付けると、筒状体23の内部は真っ暗になる。そのために光ファイバ11の後端面から出射する診断用光22は明瞭になり、図5(A)に示されているように、そのレンズ32で拡大した診断画像34をカメラ31(VTR)により得ることができる。診断画像34は、例えば複数枚を重ね合わせてS/Nを上げるとよい。
【0039】
その診断画像34に基づいて光ファイバ11の透過率を診断するために診断画像34を表示するモニタ38が備えられている。
上記のレンズ32としては、例えば拡大率が0.75倍のマクロレンズを使用し、カメラ31(VTR)は撮像素子が1/2インチ〜1/3インチの大きさであり、その中に幾百ピクセルが入っている。
【0040】
上記の診断画像34について、さらに詳しく説明する。光ファイバ11が劣化しているとき、つまりセンサ部12の光ファイバ11の先端面に蒸着物42が付いているときは、光ファイバ11内を伝播した診断用光22の輝度が低くなるので、この時検出された診断画像34は図5(A)に示されているように、暗くなり輝度が低下する。
光ファイバ11の先端面における蒸着物42の付き状態に応じて診断画像34の輝度が変化してくるので、その診断画像34の輝度により蒸着物42の付き状態を診断することができる。なお、3本の光ファイバ11の診断画像34A,34B,34Cの輝度には、互いに差があるのが一般的である。
【0041】
診断画像34の診断(判断)の方法について説明する。
新品の光ファイバ11を購入し、その場合の診断画像34の輝度を基準値とすることが理想的である。しかし、新品の光ファイバ11は非常に高価であるので、現在の使用中の状態で診断する方法を採用している。
【0042】
その一例としては、上記の3つの診断画像34A,34B,34Cの輝度を互いに比較して相対的に判断する。例えば、診断画像34Aと34Bを比較し、次に診断画像34Bと34Cを比較し、さらに診断画像34Cと34Aを比較することにより相対的な絶対値を出してから「しきい値」を設定する。なお、「しきい値」とは、光ファイバ11が使用不可能となる透過率に対応する診断画像34の輝度をいう。
【0043】
各診断画像34A,34B,34Cが「しきい値」を下回っているか否かで、センサ部12の3本の光ファイバ11を交換するか否かを判断する。例えば、3つのうちの2つの診断画像34が使用できる輝度であれば、交換せずにそのまま使用できると診断(判断)する。
また、3つのうちの2つの診断画像34が使用できない状態で、かつ1つの診断画像34の劣化がかなり進んでいるときは、交換する必要があると診断(判断)する。
以上の二例は診断基準の例示であり、このように判断の基準はどのようにするかを予め設定し、それに基づいて判断することができる。
【0044】
他の診断画像34の診断(判断)の方法を説明する。
図5(B)に示されているように、センサ部12に光ファイバ11が入っていない状態を予め画像に撮っておき、これを一つの判断基準の基礎画像39A,39B,39Cとする。この基礎画像39A,39B,39Cは光ファイバ11が入っていないので診断用光22のそれ自体を撮像することになり、その輝度を100%とする。
【0045】
診断画像34A,34B,34Cに対応する位置の基礎画像39A,39B,39Cと比較することにより各診断画像34A,34B,34Cが何%の輝度であるかを診断することができる。予め「しきい値」の輝度を設定しておくことにより、各診断画像34A,34B,34Cの輝度が前記「しきい値」を下回っているか否かで、センサ部12の3本の光ファイバ11を交換するか否かを判断する。
その結果、上記のような診断画像34の診断(判断)の方法により、モニタ38の画面に拡大された診断画像34に基づいてセンサ部12の光ファイバ11の透過率を熟練者でなくても容易にかつ精度良く診断することができる。
【0046】
上記の画像診断装置30には、光ファイバ11の劣化状態を自動的に診断するために、カメラ31で撮像した診断画像34を輝度などの処理データに変換する画像処理装置33が備えられている。さらに、その処理データにより光ファイバ11の劣化状態を診断するための機能を備えた制御装置35が設けられている。
したがって、カメラ31で撮像した診断用光22の診断画像34は、画像処理装置33により輝度の処理データに変換され、その処理データが制御装置35で分析、比較されることにより光ファイバ11の劣化状態が自動的に診断される。
【0047】
より詳しく説明する。
前述したように上記の診断画像34の輝度は光ファイバ11の先端面の蒸着物42の付き状態に応じて変化してくるので、その診断画像34の輝度により蒸着物42の付き状態を診断することができる。そこで、制御装置35には演算装置36が備えられており、その演算装置36により輝度の処理データの数値化が行われる。
センサ部12の光ファイバ11の使用の可否の診断基準としては、前述したような診断画像34の診断(判断)の方法に基づいて予め「しきい値」を設定しておく。
【0048】
前述した幾つかの診断画像34の診断(判断)の方法では蒸着物42が全く付いていない状態の新品の光ファイバ11を用いないで、基準となる輝度の絶対値並びに「しきい値」を設定することについて説明している。その他の方法としては、一回は新品の光ファイバ11を用いて蒸着物42が全く付いていない状態の透過率を絶対値とし、この絶対値に基づいて予め「しきい値」を設定しておくことができる。
【0049】
前記の制御装置35には比較判断装置37が備えられており、その比較判断装置37では、上記のように測定した診断画像34の輝度が上記の「しきい値」を下回る時は光ファイバ11が使用不可であると判断(診断)する。この診断により、該当する光ファイバ11を新たに交換する。あるいは、新たなセンサ部12に交換する。
【0050】
以上説明したように、いわゆる保守員の判断に頼ることなく、使用限度のほぼ直前まで使用することができるので、メンテナンス上の経済的なコスト削減を図ることができる。単に、人が診断画像34を見て診断するのではなく、診断画像34の輝度を数値化して自動的に診断することもできる。
【0051】
また、上記の「しきい値」に使用期限の余裕を持たせる(「しきい値」のレベルを上げる)ことによって、例えば測定した診断画像34の輝度が「しきい値」を下回ったとしても使用できない状態ではなく、その時点で使用可能な状態の程度や範囲を判断することもできる。
また、上記の画像診断装置30では、演算装置36により、診断画像34の輝度が「しきい値」に対して何%の差があるかを計算し、この計算値が「しきい値」に到達するまでどれ位の使用期間の余裕があるかを予測し、プロセス演算装置15にフィードバックする機能を持たせることができる。
【0052】

上記のことから、「しきい値」を上げるなどの対策を取ることなく、ほぼ「しきい値」に到達するまで使用することができる。また、光ファイバ11の劣化情報を通常運転の炉内監視装置10にフィードバックできるので、使用限度のほぼ直前まで使用することができるので、光ファイバ11の交換時期を適切にすることができ、メンテナンス上の経済的なコスト削減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、火力発電所などのボイラ、廃棄物処理の焼却炉、鉄鋼や非鉄金属に関わる溶鉱炉、コークス炉、アルミ反射炉、ガラス溶解炉や各種焼成炉などのように、いわゆる燃焼火炎を発生する燃焼炉に用いられる炉内監視装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 炉内監視装置 11 光ファイバ
12 センサ部 13 ロッド部
14 伝送用光ファイバ 15 プロセス演算装置
20 センサ劣化診断装置 21 診断用光源
22 診断用光 23 筒状体
24 波形(診断用光22の) 25 フラットな領域
30 画像診断装置 31 カメラ(撮像手段)
32 レンズ 33 画像処理装置
34,34A,34B,34C 診断画像
35 制御装置 36 演算装置
37 比較判断装置 38 モニタ
39A,39B,39C 基礎画像
40 燃焼炉 41 赤外線(火炎の光)
42 蒸着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉の内部空間からの光を燃焼炉の外部に取り出すために前記燃焼炉に装着するロッド部と、 そのロッド部に装着されるセンサ部と、 そのセンサ部に保持されて燃焼炉内からの光を導き入れて外部に取り出すための一本以上の光ファイバと、 その光ファイバにて導かれた光を入力するプロセス演算装置と、を備えた炉内監視装置において、前記光ファイバの透過率を診断するセンサ劣化診断装置であって、
上記の燃焼炉から抜き出したセンサ部の後端側を取り付ける筒状体と、
その筒状体に取り付けたセンサ部の先端に露出した光ファイバの先端面に診断用光を入射する診断用光源と、
前記センサ部の後端面に露出した光ファイバの後端面から出射する診断用光を撮像するとともに、前記光ファイバの透過率を診断するための診断画像を表示する画像診断装置と、
を備えたセンサ劣化診断装置。
【請求項2】
前記診断用光源は、光の照度が空間的に一定なフラット照明となる診断用光を発生する構成であることを特徴とする請求項1記載のセンサ劣化診断装置。
【請求項3】
前記画像診断装置は、診断画像の輝度を数値化する演算装置と、その演算装置で計算した輝度の測定値を、予め設定した光ファイバの使用不可能となる輝度のしきい値と比較して光ファイバの透過率を判断する比較判断装置を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のセンサ劣化診断装置。
【請求項4】
前記画像診断装置は、診断画像の輝度がしきい値に対して何%の差があるかを計算し、この計算値が当該しきい値に到達するまでどれ位の使用期間の余裕があるかを予測し、この予測した情報を通常運転のプロセス演算装置にフィードバックする機能を備えていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ劣化診断装置。
【請求項5】
燃焼炉の内部空間からの光を燃焼炉の外部に取り出すために前記燃焼炉に装着するロッド部と、 そのロッド部に装着されるセンサ部と、 そのセンサ部の後端側に取り付けられる筒状体と、 前記センサ部に保持されて燃焼炉内からの光を導き入れて外部に取り出すための一本以上の光ファイバと、 その光ファイバにて導かれた光を入力するプロセス演算装置と、を備えた炉内監視装置において、 前記燃焼炉から抜き出された前記ロッド部から取り外された前記センサ部の後端側を前記筒状体に取り付けて前記光ファイバの透過率を診断するセンサ劣化診断方法であって、
前記センサ部の先端に露出した光ファイバの先端面に診断用光を入射する診断用光入射手順と、
その入射した診断用光が前記光ファイバを伝播して当該光ファイバの後端面から出射する診断用光を、前記筒状体の後端側に取り付けた画像診断装置にて撮像する撮像手順と、
その撮像手順にて取得した診断画像に基づいて前記光ファイバの透過率を診断する画像診断手順と、を含むセンサ劣化診断方法。
【請求項6】
前記診断用光入射手順は、光の照度が空間的に一定なフラット照明となる診断用光を入射することを特徴とする請求項5に記載の炉内監視装置におけるセンサ劣化診断方法。
【請求項7】
前記画像診断手順は、診断用光を撮像した診断画像の輝度を、予め設定した光ファイバの使用不可能となる輝度のしきい値と比較して光ファイバの透過率を判断する手順を含むことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれか記載のセンサ劣化診断方法。
【請求項8】
前記画像診断手順は、診断画像の輝度がしきい値に対して何%の差があるかを計算し、この計算値が当該しきい値に到達するまでどれ位の使用期間の余裕があるかを予測し、この予測した情報を通常運転のプロセス演算装置にフィードバックする手順を含むことを特徴とする請求項7に記載のセンサ劣化診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190754(P2010−190754A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35969(P2009−35969)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】