説明

センサ素子の取付構造

【課題】センサ素子が周囲温度の影響を受けて変位し難くし、微小変位を精度良く検出できるようにする。
【解決手段】シャフト11の形成した切削面16に、ホール素子12の表面の平担部が密着するように接着剤により接着し、回路基板13をリードフレーム14により中空に支持する。このような構造により、リードフレーム14や半田15に熱膨張があっても、或いは回路基板13が変形しても、ホール素子12がシャフト11に対して変位することなく、シャフト11の回転角の測定精度に及ぼす影響は少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホール素子等のセンサ素子の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の薄片から成る一般的なホール素子においては、図3に示すように磁束密度検出面であるチップ面Tに直交する磁界の磁束密度をBとし、ホール素子1に定電流Iを流すと、磁束密度Bによりローレンツ力を受けて起電力が発生する。ホール素子1の出力Vは、Kをホール係数、dをホール素子の厚みとすると、次の(1)式となる。
V=(K/d)B・I …(1)
【0003】
ホール素子1から成る角度センサでは、磁界方向に対するチップ面Tの角度を検出している。
【0004】
しかし、この角度等を検出するためのホール素子1は、周囲温度等により取付位置が変位することがあり、検出精度への影響が生じ易い。
【0005】
一般に図4に示すように、ホール素子1からは複数本のリードフレーム2が引き出され、半田3を介して回路基板4に固定されている。そして、例えば被固定体であるシャフト5の切削面等に取り付ける場合には、回路基板4をシャフト5に接着し、ホール素子1はリードフレーム2を介して中空に支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このホール素子1を用いてシャフト5の回転角度を測定する場合に、シャフト5の回転角度が極めて小さく、例えば5秒程度の分解能が必要な場合には、ホール素子1を搭載する回路基板4、半田3、リードフレーム2の熱膨張等による変形が検出精度に影響してくる。
【0007】
つまり、回路基板4が温度により変形し易い材料であったり、リードフレーム2の長さや半田3の量に差があると、周囲温度の影響により回路基板4が反ったり、或いは図5に示すように半田3やリードフレーム2が熱膨張し、ホール素子1が傾いて変位し、高精度の測定が困難となる。
【0008】
この課題の1つの解決法として、ホール素子1のパッケージ部を回路基板4に接着し、ホール素子1が動かないようにする方法が考えられるが、熱膨張を阻害されたリードフレーム2がホール素子1のパッケージを歪ませ、この歪みがパッケージ内部の回路基板4を歪ませ、更にはホール素子1を変位させるという新たな問題が生ずる。回路基板4が歪んでも、ホール素子1が単結晶の場合には歪みが少ないが、石英ガラス上にGaAsをスパッタリングしたホール素子1のような場合は歪み易いため、その影響が顕著となる。
【0009】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、センサ素子のリードフレームや、リードフレームと回路基板とを接続する半田等の熱膨張の影響を受け難くし、微小変位の検出を精度良く実施できるセンサ素子の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るセンサ素子の取付構造は、回路基板にリードフレームを介して取り付けたセンサ素子を被固定体に取り付けるセンサ素子の取付構造において、前記被固定体に前記センサ素子の面を接着剤により接着し、前記回路基板を前記リードフレームを介して中空に支持したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るセンサ素子の取付構造によれば、センサ素子を直接に被固定体に接着するので周囲環境の温度が変化してもセンサ素子の変位が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の構成図である。
【図2】実施例2の構成図である。
【図3】ホール素子の原理的構成図である。
【図4】従来のホール素子の取付方法の説明図である。
【図5】ホール素子が傾いた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図1、図2に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本実施例におけるセンサ素子としてのホール素子の取付構造の構成図を示している。例えば、フロート式液面計においては、フロートの上下位置を検出して液位を検出しているが、フロートの上下動をシャフト11の回転に変換し、シャフト11の回転角度から液位を求めることがある。
【0015】
このシャフト11の回転角度を検出する場合に、被固定体として非磁性体である金属製のシャフト11にホール素子12を取り付け、磁界中においてホール素子12に定電流を流すことにより、ホール素子12の出力値からホール素子12の角度変位、つまりシャフト11の回転角を知ることができる。
【0016】
本実施例1における回路基板13は、ホール素子12のリードフレーム14の膨張や収縮を阻害しないようにするために、例えば変形し易いフレキシブル基板を用い、この回路基板13にホール素子12は例えば4本のリードフレーム14、半田15を介して接続されている。
【0017】
リードフレーム14の回路基板13への接続に際しては、半田15の量は均一となるようにし、回路基板13にホール素子12を搭載する際には、ホール素子12に永久歪を生じさせるような外力を加えないように注意する必要がある。
【0018】
シャフト11に形成した平坦な切削面16に、ホール素子12の表面の平担部が密着するように接着剤により接着し、回路基板13をリードフレーム14により中空に支持する。このとき、接着剤が熱膨張しても接着剤の厚み差によりホール素子12の傾きが生じないように、接着剤はできる限り薄く均一に塗布することが好ましい。また、ホール素子12は電気絶縁層によりコーティングされているが、ホール素子12とシャフト11の間に絶縁板等を介在してもよい。
【0019】
なお、回路基板13上のIC等の回路素子は回路基板13の表面又は裏面或いは双方に配置してもよい。
【0020】
更に、必要に応じて回路基板13、ホール素子12、リードフレーム14の周囲には樹脂17をモールドし、電気絶縁性等を確保すると共に、他物品の衝突から保護することが好ましい。
【0021】
このような構造にすることにより、リードフレーム14や半田15に熱膨張が生じても、或いは回路基板13が変形しても、シャフト11の切削面16に接着したホール素子12はシャフト11に対して変位することはなく、シャフト11の回転角の測定精度に及ぼす影響は少ない。
【実施例2】
【0022】
図2は実施例2におけるホール素子12の取付構造の構成図を示し、実施例1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0023】
本実施例2においては、ホール素子12をシャフト11に接着し、リードフレーム14を介して回路基板13を中空に配置することは実施例1と同様である。
【0024】
しかし、回路基板13にはホール素子12を非接触で収容するための孔部18が形成されており、ホール素子12はこの孔部18内に配置されている。このように構成することにより、全体として高さが低くなり、構造的に安定する。また、これらの上に樹脂17をモールドすることが好ましいことは、実施例1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本実施例1、2においては、センサ素子として角度を検出するためのホール素子を用いて説明したが、ホール素子以外にも、磁気抵抗素子、装着位置関係の安定性を要求する他の位置検出センサ、更にはセンサに光を供給するための光ダイオード等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
11 シャフト
12 ホール素子
13 回路基板
14 リードフレーム
15 半田
16 切削面
17 樹脂
18 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板にリードフレームを介して取り付けたセンサ素子を被固定体に取り付けるセンサ素子の取付構造において、前記被固定体に前記センサ素子の面を接着剤により接着し、前記回路基板を前記リードフレームを介して中空に支持したことを特徴とするセンサ素子の取付構造。
【請求項2】
前記回路基板はフレキシブル基板としたことを特徴とする請求項1に記載のセンサ素子の取付構造。
【請求項3】
前記回路基板に孔部を形成し、前記センサ素子を前記孔部内に非接触で収容することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ素子の取付構造。
【請求項4】
前記センサ素子、回路基板、リードフレームを樹脂によりモールドしたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のセンサ素子の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198049(P2012−198049A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60880(P2011−60880)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(390026996)東京計装株式会社 (57)
【Fターム(参考)】