説明

センサ素子への排ガスガイド装置及びエンジンの排気系構造

【課題】センサ素子への排ガスガイド装置及びエンジンの排気系構造に関し、シンプルな構成により排ガスの成分を排ガスセンサによって応答性よく検出することができるようにする。
【解決手段】エンジンの排気通路31,32内に装備され、排ガスの性状を検知するセンサ素子41へ排ガスを案内するガイド装置であって、センサ素子41を覆うと共に排ガスをセンサ素子41に誘導する複数の排ガス誘導穴61aを有するプロテクタ50と、プロテクタ50よりも排気通路の上流側に装備され、排ガス流をプロテクタ50の中心側に偏向させるガイド部材80と、をそなえているように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気系に装備されるセンサ素子への排ガスをガイドする装置及びそれを備えたエンジンの排気系構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に、車両用エンジンでは、エンジンからの排ガスをクリーン化するためや、燃費の向上を図るために、OセンサやA/Fセンサ(空燃比センサ)等の酸素濃度センサや、NOxセンサといったガスセンサを排気系に設置し、そのセンサで測定した排気ガス中の酸素濃度値やNOx濃度値等のガス濃度検出値をエンジンのフィードバック制御等に利用する技術が普及している。
【0003】
車両用エンジンの場合、通常、多気筒エンジンであり、各気筒から排出された排ガスは排気マニホルドを経てその下流側の排気管に集められて、排気管に設けられた排ガス浄化触媒で適宜浄化されて排出される。上記のガスセンサの多くは、排気マニホルドの下流の排ガスが集合する排気管の排ガス浄化触媒よりも上流部に設けられる。
ところで、排ガス成分を検出するガスセンサの本体(センサ素子)はセラミックで作られているため、排ガス中の異物の衝突による破損のおそれがある。そこで、プロテクタによってセンサ素子を覆っており、センサ素子の破損を防止する技術が開発されている。このプロテクタは、一般に、金属製であり、内部プロテクタと外部プロテクタとからなる二重構造になっている。また、内部プロテクタ及び外部プロテクタには、排ガスが内部のセンサ素子の表面を流通するように、それぞれ複数の通気孔が設けられている。
【0004】
このようなプロテクタの表面には排気ガス中の水分が凝縮した水滴が付着しやすい。このため、プロテクタを二重構造に形成しても、付着した水滴が外側プロテクタの通気孔から外側プロテクタ内に侵入し、さらに内側プロテクタの通気孔からその内側に入って、センサ素子に付着することがある。センサのヒータ装置が稼動しているときに、水滴がセンサ素子に付着した場合には、サーマルショックによる素子割れを起こす可能性がある。
【0005】
そこで、特許文献1には、内側プロテクタの円筒状胴部の壁を、外方に突出する山部と内方に凹む谷部とが周方向に交互に並ぶように、即ち、周方向に波状に形成し、外側プロテクタに付着凝縮した液滴が外側プロテクタの通気孔から内側に侵入したとしても、谷部に案内され円筒状胴部の壁を軸方向に流下し、その液滴がさらに内側プロテクタの通気孔から内側プロテクタ内に入って、センサ素子まで到達するのを抑制できるようにする技術が提案されている。
【0006】
ところで、こうしたプロテクタでは、センサ素子の保護の必要上、その通気孔をあまり大きくすることはできないため、孔を通過する際のガスの流れに対する抵抗により、プロテクタ内外のガス交換が制限されてしまい、ガス流路を流れるガスの成分や濃度の変化に対するガスセンサの応答性の悪化を招いている。特に、保護性能の向上のために内側プロテクタと外側プロテクタとからなる二重構造のプロテクタは、ガスの流通抵抗が更に大きくなるため、より応答遅れを生じ易い。
【0007】
そこで、特許文献2には、排ガス流路におけるプロテクタ配設部位よりも低圧となる下流側とプロテクタの内部とを連通させる連通路を設けて、プロテクタの内部を減圧するように構成し、これにより生じるプロテクタ内外の圧力差によって、プロテクタ内部への排ガスの流入を促進し、ガス流路を流れるガスの成分や濃度の変化に対するガスセンサの応答性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−113727号公報
【特許文献2】特開2004−191096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、エンジンの排ガスについて、各気筒単位で検出できるようにすることが要望されている。例えば、自動車に搭載されコンピュータによって自己故障診断をするOBD[On Board Diagnosis(オンボード・ダイアグノーシス)]において、気筒別にA/F(空燃比、ただし、全域空燃比)を検知し、排ガスを制御できるようにすることが要望されている。
【0010】
このように、気筒別の排ガスを1つのガスセンサで検出するには、複数気筒の排気通路を一箇所に終結させた個所に、ガスセンサを装備し、各気筒の排気タイミングに応じてガスセンサを流通するガスがどの気筒のものか推定しながら、各気筒の排ガスについて検出することが可能である。例えば、4気筒エンジンならば、点火順序(排気順序)は、第1気筒(♯1),第3気筒(♯3),第4気筒(♯4),第2気筒(♯2)の順であるから連続的に出力されるガスセンサの検出値を点火タイミング(排気タイミング)でこの順に分割して各気筒の検出データとすることができる。
【0011】
しかしながら、このようの1つのガスセンサで排ガスを検知する場合、エンジン回転が高速になると、検出対象気筒の排ガスとその前後のタイミングで流通する気筒の排ガスとが互いに影響しあうため、ガスセンサによる各気筒の排ガスに関する検出精度が低下するおそれがある。特に、ガス流路を流れるガスの成分や濃度の変化に対するガスセンサの応答性が悪いと、排気順序で前後する気筒の排ガスの影響が強くなり、検出精度の低下を一層招き易くなる。
【0012】
この点で、特許文献2に記載された技術は、ガスセンサの応答性を確保することができ有効であるが、排ガス流路のプロテクタ配設部位よりも下流側とプロテクタの内部とを連通させる連通路を設ける構成では、連通路を排ガス流路の周囲に突設することになり、排ガス流路の周囲の構造が複雑になり、また、当然ながら連通路を気密に且つ十分な強度に増設する必要があり、コスト増が課題となる。
【0013】
なお、このような課題は、排ガスの成分について検出するガスセンサのセンサ素子に限らず、排ガスの温度を検出するセンサ素子など、排ガスの性状、つまり、性質(例えば、成分の種類や特定成分の量,割合)や状態(例えば、温度)を検出するセンサ素子に関して、何れにも生じうるものである。
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、シンプルな構成により排ガスの性状をセンサ素子によって応答性よく検出することができるようにして、例えば複数気筒を有するエンジンにおいて各気筒からの排ガスの性状を1つのセンサ素子によって精度よく検出することができるようにした、センサ素子への排ガスガイド装置及びそれをそなえたエンジンの排気系構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目標を達成するために、本発明のセンサ素子への排ガスガイド装置は、エンジンの排気通路内に装備され、排ガスの性状を検知するセンサ素子へ排ガスを案内するガイド装置であって、前記センサ素子を覆うと共に排ガスを前記センサ素子に誘導する複数の排ガス誘導穴を有するプロテクタと、前記プロテクタよりも前記排気通路の上流側に装備され、排ガス流を前記プロテクタの中心側に偏向させるガイド部材と、をそなえていることを特徴としている。
【0015】
前記ガイド部材には、前記プロテクタの延在する方向に沿って延び、翼面が下流側に行くに従って互いに接近するように対称配置される一対の翼状ガイドが備えられていることが好ましい。
この場合、前記プロテクタは、前記センサ素子を包囲し前記排ガス誘導穴が形成された筒状のプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の基部に備えられ前記排気通路の壁部に固定される固定部とを有し、前記ガイド部材は、前記一対の翼状ガイドの基部に備えられ前記排気通路の壁部に前記プロテクタの前記固定部と共に固定される環状基部とを有していることが好ましい。
【0016】
さらに、前記ガイド部材は、前記一対の翼状ガイド本体の相互間に、前記プロテクタ本体を包囲するように配置され、排ガス流を前記プロテクタ本体の周面に向けて案内する筒状ガイドを有していることが好ましい。
また、本発明のエンジンの排気系構造は、排気通路に複数の部分流路を隣接して備えると共に、上記の何れかのセンサ素子への排ガスガイド装置を備えたエンジンの排気系構造であって、前記センサ素子は、前記部分流路の隣接壁部の穴部を貫通して装備され、前記各部分流路を流通する排ガスの性状をそれぞれ検知し、前記プロテクタは、前記センサ素子の外側で前記隣接壁部の穴部を貫通して装備されていることを特徴としている。
【0017】
前記部分流路は、何れも、複数の排気マニホルドを集合させた排気集合流路であって、前記センサ素子は、前記各排気集合流路を流通する前記複数の排気マニホルドからの排ガスのガス成分をそれぞれ個別に検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるセンサ素子への排ガスガイド装置及びエンジンの排気系構造によれば、プロテクタよりも排気通路の上流側に装備されたガイド部材が、排ガス流をプロテクタの中心側に偏向させるので、プロテクタの上流側の排ガス圧が高められ、プロテクタの内部への排ガスの流入が促進され、排気流路を流れる排ガスの状態の変化に対するセンサ素子の検出応答性が高められる。この結果、時間経過に応じて変化する排ガスの性状をセンサ素子によって精度よく検出することができるようになる。
【0019】
したがって、例えば、複数気筒を有するエンジンの各気筒の排気マニホルドからの排ガスのガス成分を1つのセンサ素子に燃焼順に流入するものに適用した場合にも、かかるセンサ素子により排ガスの性状を精度よく検出することができる。
ガイド部材に、翼面が下流側に行くに従って互いに接近するように対称配置される一対の翼状ガイドを備えれば、排ガス流をプロテクタの中心側に効率よく偏向させることができる。
【0020】
また、プロテクタを、センサ素子を包囲し排ガス誘導穴が形成された筒状のプロテクタ本体と、プロテクタ本体の基部に備えられ排気通路の壁部に固定される固定部とを有する構成とし、ガイド部材を、一対の翼状ガイドの基部に、排気通路の壁部にプロテクタの固定部と共に固定される環状基部を備えるように構成すれば、ガイド部材を、排気通路の壁部にプロテクタと一体に装着することができ、装着性が向上し、組み付けコストの低減に寄与しうる。
【0021】
一対の翼状ガイド本体の相互間に、プロテクタ本体を包囲し、排ガス流をプロテクタ本体の周面に向けて案内する筒状ガイドを有するように構成すれば、プロテクタの内部への排ガスの流入がより促進され、ガス流路を流れるガスの性状の変化に対するセンサ素子の検出応答性が一層高められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるガイド装置を示すもので、(a)はその排ガスセンサ及びガイド装置を示す排気通路の要部縦断面図、(b)は排気通路の排ガスセンサ及びガイド装置の取付部分の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるガイド装置の変形例を示すもので、(a)はその排ガスセンサ及びガイド装置を示す排気通路の要部縦断面図、(b)は排気通路の排ガスセンサ及びガイド装置の取付部分の正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるガイド装置のガイド部材の構成例を示すもので、(a)〜(d)はその第1〜4構成例をそれぞれ示す分解斜視図であり、(e1)はその第5構成例を示す斜視図であり、(e2)はその第5構成例を示す側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる排気通路の構造を示す図であって、(a)はその第1例を示す斜視図、(a)はその第1例を示す斜視図、(b)は図4(a)のA−A矢視断面図、(c)はその第2例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるプロテクタを示す図であって、(a)はその斜視図、(b)はその変形例にかかる側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるシール部材の他の構成例を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるプロテクタの他の構成例を示すもので、(a),(b)はその第1,2構成例をそれぞれ示す縦断面図であり、(c1)はその第3構成例を示す縦断面図、(c2)はその第3構成例を示す側面図であり、(d1)はその第4構成例を示す縦断面図、(d2)はその第4構成例を示す側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかるガイド装置を示すもので、(a)はその排ガスセンサ及びガイド装置を示す排気通路の要部縦断面図、(b)は排気通路の排ガスセンサ及びガイド装置の取付部分の正面図、(c)は排気通路の排ガスセンサ及びガイド装置の取付部分の変形例を示す正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるガイド装置の変形例を示す排気通路の要部縦断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかるガイド装置を示す排気通路の要部断面の斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態にかかるガイド装置を示す排気通路の要部断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態にかかるガイド装置のガイド部材の構成を説明する斜視図である。
【図13】本発明の第3実施形態にかかるガイド装置のガイド部材の作用を説明する排気通路内の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に関し、第1〜第3の実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
本実施形態にかかるエンジンは、4気筒エンジンであって、その排気通路は、図4(a)に示すように、エンジン本体1の各気筒の排気ポート(図示略)に連通するよう各排気マニホルド11〜14が接続され、第1気筒(♯1)の排気マニホルド11と第4気筒(♯4)の排気マニホルド14とは第1排気集合管21に集合されており、第2気筒(♯2)の排気マニホルド12と第3気筒(♯3)の排気マニホルド14とは第2排気集合管22に集合されている。
【0024】
第1排気集合管21と第2排気集合管22とは、二重管構造に形成され、第1排気集合管21は外管部材として、第2排気集合管22は内管部材として構成されている。そして、外管部材の第1排気集合管21と内管部材の第2排気集合管22との間が第1排気集合流路(第1部分流路)31として構成され、内管部材の第2排気集合管22の内部が第2排気集合流路(第2部分流路)32として構成される。
【0025】
重合した第1排気集合管21と第2排気集合管22との流れ方向同位置には、穴部23,24がそれぞれ穿設され、この穴部23,24に、排ガスセンサ(単に、ガスセンサともいう)40のセンサ素子41と、このセンサ素子41を保護するプロテクタ50、排ガス流をプロテクタ50の中心側に偏向させるガイド部材80とが、図4(b)に示すように挿入されている。本実施形態にかかるセンサ素子への排ガスガイド装置(単に、ガイド装置ともいう)8は、このプロテクタ50とガイド部材80とから構成される。
【0026】
なお、図4(a)に示す例では、各排気マニホルド11〜14が互いに同じ流路長になるように、それぞれに湾曲形成されており、各気筒からセンサ素子41までの排気流路長が同等にされているが、各気筒からセンサ素子41までの排気流路長を必ずしも全て同等にしなくてもよく、図4(c)に示すように、互いに、集合される排気マニホルド11,14同士又は12,13同士を同じ流路長に設定するだけでもよい。
【0027】
ガスセンサ40,プロテクタ50及びガイド部材80は、図1又は図2に示すように配置される。
つまり、プロテクタ50は、図1,図2,図5(a)に示すように、センサ素子41との間に一定の隙間を有してセンサ素子41を被覆する略円筒状のプロテクタ本体51と、プロテクタ本体51の基部に備えられた固定用フランジ部(固定部)52とを有し、プロテクタ本体51の中間部外周には環状のシール部材(弁)53が装備される。プロテクタ本体51には、プロテクタ本体51の外部を流通する排ガスをプロテクタ本体51の内部のセンサ素子41の表面に向けて誘導するために、複数の排ガス誘導穴61a,62a,71a,72aが形成されている。
【0028】
固定用フランジ部52は、第1排気集合管21の穴部23の周囲に外方に向けて突設された取付ボス部25の内周に形成されたネジ部25aと螺合するネジ部52aと、ネジ部52aよりも大径で取付ボス部25の端面に当接し密着するプレート部52bと、ネジ部52aをネジ部25aに螺合する際のトルクを加えるための六角部52cとを一体に備えている。
【0029】
なお、ここでは、プロテクタ本体51の排ガス流上流側の排ガス誘導穴に符号61,71を、排ガス流下流側の排ガス誘導穴(直接的には、排ガス排出穴であるが、当然ながら排ガス誘導の効果もある)に符号62,72を付して区別している。また、第1排気集合流路31内の排ガス誘導穴に符号61,62を、第2排気集合流路32内の排ガス誘導穴に符号71,72を付して区別している。
【0030】
また、本実施形態では、プロテクタ本体51に一定の厚みがある(比較的厚い)ものとしているが、例えば、比較的厚みの薄いプロテクタ本体を用いる場合等には、プロテクタ本体51を、プロテクタ本体51の外周面に対応した外側プロテクタと、プロテクタ本体51の内周面に対応した内側プロテクタとの二重構造としてもよい。
このようなプロテクタ50は、第1排気集合管21の穴部23の周囲に外方に向けて突設された取付ボス部25の内周のネジ部25aに、固定用フランジ部52の外周のネジ部52aを螺合させて取り付けられる。この取付状態では、排ガス誘導穴61,62が第1排気集合流路31内に、排ガス誘導穴71,72が第2排気集合流路32内に、それぞれ位置すると共に、プロテクタ本体51の外周のシール部材53がプロテクタ本体51の外周と第2排気集合管22の管壁(隣接壁部)との隙間24を閉塞するように、配置されている。
【0031】
シール部材53には、排ガスの熱や排ガス成分に侵されることのない特性を有する材料が用いられ、円環状に形成されており、その外周には軸方向内面側(第2排気集合流路32側)に向けて突出した円形突起部53aが形成されている。なお、ここでは、シール部材53に上記の特性を有するステンレスを採用しているが、シール部材53には上記の特性を有するものであれば、他の金属或いは金属以外の他の材料を用いてもよい。
【0032】
第2排気集合管22の穴部24の周囲の外面側(第1排気集合流路31側)には、シール部材53が圧接する受け部材54が装備されている。この受け部材54は、円環状に形成されており、その外面側(第1排気集合流路31側)にはシール部材53の円形突起部53aが圧接する円形環状溝54aが形成されている。
ここでは、シール部材53に、柔軟性の低い(つまり、剛性の高い)ステンレスが採用されているので、シール部材53自体の弾性変形によりシール性を確保することは困難なので、シール部材53の円形突起部53aを受け部材54の円形環状溝54aに圧接する構造としてシール性を確保している。
【0033】
ただし、シール部材53は、第1排気集合流路31と第2排気集合流路32との各部分流路への排ガスの分離効果を確保するためのものなので、完全密閉できるほどのシール性能は要求されない。したがって、シール部材53の円形突起部53aと受け部材54の円形環状溝54aとの圧接部分に僅かな隙間が存在しても許容される。
なお、シール部材としては、上記の排ガスの熱や排ガス成分に侵されることのない特性を有するものであれば、ゴム又は樹脂等の弾性体により、或いは、かかる弾性体を含んだ構成としてもよい。この場合、例えば、図6に示すように、弾性体のシール部材153を構成することができる。
【0034】
つまり、穴部24の周縁に適宜弾性変形しながら当接するシール部材153の当接側外周部には、段部153aが形成され、この段部153aを通じて穴部24周縁の第1排気集合流路31側の面(第2排気集合管22の外周面)と穴部24内周面との双方に密着して隙間を確実にシールするように構成すことができる。
そして、図1,図2に示すように、プロテクタ50のプロテクタ本体51の外周に、各排気集合流路31,32を流通する排ガスをプロテクタ本体51の内部に流入するように案内するガイド部材80が追加されている。
【0035】
本実施形態にかかるガイド部材80は、図3に示すように、環状の基部プレート(環状基部)81と、基部プレート81から円筒状のプロテクタ本体51の母線方向に延びた翼状ガイド部(翼状ガイド)82と、翼状ガイド部82の内周に備えられた円筒状又は部分円筒状の筒状ガイド部(筒状ガイド)83〜86とを備えている。なお、翼状ガイド部82は、プロテクタ本体51の上流側に左右に対を成すようにプロテクタ本体51の軸心線を含む流路平行面に対して対称に形成されている。それぞれの翼状ガイド部82の両面は、排ガスをプロテクタ本体51の内部のセンサ素子41に向かうように配向されている。
【0036】
基部プレート81には、位置決め突起81aが形成され、この突起81aを、第1排気集合管21の穴部23の取付ボス部25の内周の取付面に形成された穴部26に貫通させて装着することにより、所定の位置関係で第1排気集合管21の穴部23に装着される。そして、基部プレート81は、プロテクタ本体51の外周に外装され固定用フランジ部52のプロテクタ本体51側の環状面に当接されて、固定用フランジ部52が取付ボス部25に螺合締結されることにより、固定用フランジ部52を通じて取付ボス部25の内側の第1排気集合管21の外周面に挟装される。
【0037】
図3(a)に示す例では、一対の翼状ガイド部82,82の上流側の結ぶように部分円筒状の筒状ガイド部83が形成され、図3(b)に示す例では、一対の翼状ガイド部82,82の下流側の結ぶように部分円筒状の筒状ガイド部(筒状ガイド)84が形成され、図3(c)に示す例では、一対の翼状ガイド部82,82の上下流側の結ぶように円筒状の筒状ガイド部85が形成されている。
【0038】
翼状ガイド部82,82は、上流側端部から下流側端部にかけて、排ガス流方向に対して排ガス流がプロテクタ本体51の軸心、即ち、センサ素子41に集まるように、傾斜して配置され、翼状ガイド部82,82と直行する方向にスリット83a〜85aが複数形成されている。両翼状ガイド部82,82により集められた排ガスは、各筒状ガイド部83〜85に沿って流れながらスリット83a〜85aから、その内部のプロテクタ本体51に進入し、排ガス誘導穴からセンサ素子41に向かうようになっている。
【0039】
なお、図1は図3(a)に対応し、図2は図3(c)に対応する。また、図1の例では、筒状ガイド部83の内周をプロテクタ本体51の外周に接合させているが、図2の例では、筒状ガイド部85の内周をプロテクタ本体51の外周から離隔させている。筒状ガイド部の内周をプロテクタ本体51の外周に接合(接近)させれば、排ガスの案内効果が高まり、筒状ガイド部の内周をプロテクタ本体51の外周から離隔させれば、プロテクタ本体51の内部への水分進入抑止効果が高まる。したがって、筒状ガイド部の内周とプロテクタ本体51の外周とのクリアランスを、排ガス案内効果と水分進入抑止効果とをバランスさせた大きさに設定することが好ましい。
【0040】
また、図3(d)に示すガイド部材80Dでは、一対の翼状ガイド部82,82の上下流側の各相互間を結ぶように円筒状の筒状ガイド部86が形成され、筒状ガイド部86にはスリットに替えてプロテクタ本体51の排ガス誘導穴(例えば、61a,62a,71a,72a)と同様な穴部86aが複数形成され,排ガスは筒状ガイド部86の表面に沿って流れてこれらの穴部86aから筒状ガイド部86の内部に進入し、プロテクタ本体51の排ガス誘導穴からその内部のセンサ素子41に向かう。
【0041】
また、図3(e1),(e2)に示すガイド部材80Eでは、センサ素子41を収容したプロテクタ50にガイド部材80Eを予め一体化してアセンブリ化したものである。この場合、プロテクタ50の構成やガイド部材80Eの構成には、上記の各実施形態で説明したものを適宜組み合わせることができる。ただし、ガイド部材80Eは、その両翼状ガイド部82,82の各面が排ガスをロテクタ本体51の内部のセンサ素子41に向けるように所定方向を設定する必要がある(つまり、ガイド部材80Eが所定の回転方向位相で装備する必要がある)。そこで、プロテクタ50の螺合装着時にガイド部材80Eは、その位置決め突起81a取付ボス部25の穴部26に貫入させた所定の回転方向位相に保持できるように、ガイド部材80Eはプロテクタ50に回転可能に保持されている。
【0042】
また、シール部材53は、ガイド部材80を含んで、穴部24内の隙間をシールするように備えられている。
また、本実施形態では、ガスセンサ40は、各気筒からの排ガスの空燃比を検出する空燃比センサ[全域空燃比センサ、LAFS(リニアA/Fセンサ)]として構成されるが、1つの空燃比センサ40により、各気筒からの排ガスの空燃比を検出するには、各気筒の排ガスが順次センサ素子41を流通する点に着目して、検出タイミングで、排気管をセンサ素子41で検出している検出値(空燃比)が何れの気筒のものかを判別して、各気筒からの排ガスの空燃比を得るようにしている。なお、かかるガスセンサとしては、空燃比センサに限定されるものではなく、NOx等の他の排ガス成分について気筒別に検出するもの(気筒別ガス成分検出用ガスセンサ)でも適用できる。
【0043】
本発明の第1実施形態にかかるセンサ素子への排ガスガイド装置及びそれを備えたエンジンの排気系は、上述のように構成されているので、複数の排気マニホルド11〜14を集合させた各排気集合流路31,32を流通する排ガスについて、センサ素子41がそのガス成分(ここでは、空燃比)を検知する。この検知情報は、その検出タイミングと、各気筒の点火順序、即ち、排気順序とに応じて、検知した情報を何れの気筒のものであるかを特定して、各気筒からの排ガスのガス成分をそれぞれ個別に検知する。
【0044】
本ガスセンサの場合、各気筒の排気マニホルド11〜14からの排ガスは、第1気筒及び第4気筒の排気マニホルド11,14を集合させた第1排気集合流路31と、第2気筒及び第3気筒の排気マニホルド12,13を集合させた第2排気集合流路32とに流入し、センサ素子41を通過するが、点火順序(排気順序)は、第1気筒(♯1),第3気筒(♯3),第4気筒(♯4),第2気筒(♯2)の順であるから、第1排気集合流路31に第1気筒の排気マニホルド11からの排ガスが流通すると、次は、第2排気集合流路32に第3気筒の排気マニホルド13からの排ガスが流通し、次は、第1排気集合流路31に第4気筒の排気マニホルド14からの排ガスが流通し、次に、第2排気集合流路32に第2気筒の排気マニホルド12からの排ガスが流通する。
【0045】
したがって、各排気集合流路31,32には、交互に排ガスが流入するので、各排気集合流路31,32における排気干渉が抑制されて、センサ素子41に流入する排ガスのガス成分の値(ここでは、空燃比)を各気筒毎に確実に分離して把握することができる。特に、エンジン回転が高速になると、検出対象気筒の排ガスとその前後のタイミングで流通する気筒の排ガスとが互いに影響しあうため、ガスセンサ40による各気筒の排ガスに関する検出精度が低下するおそれがあるが、2系統の排気集合流路31,32にそれぞれ集合するので、このような不具合も回避される。
【0046】
もちろん、いわゆるデュアルエキゾースト構造による効果、つまり、排気干渉の影響を受けにくく、排気干渉によるエンジン出力の低下を回避することができ、また、棒状のセンサ素子51の長手方向に、複数の排気集合流路31,32を併設することにより、排ガス流路断面積の縮小を抑えながら、センサ素子41を排ガス流の流心に配置することが可能になり、排ガス流路断面積の縮小によるエンジン出力の低下を抑制しながら排ガスの検出精度を高めることが可能になる、といった効果を得ることができる。また、排ガスの集合部が複数の分散されるため、集合部31,32における排ガス温度の上昇が抑制されて、ガスセンサ40の熱負荷を軽減できる。
【0047】
そして、本プロテクタ50によってセンサ素子41を覆うことにより、排ガス中の異物の衝突によるセンサ素子41の破損のおそれを低減することができる。
また、排気集合流路31,32の隣接壁部(第2排気集合管22の管壁)の穴部24を貫通するようにセンサ素子41及びプロテクタ本体51を装備するので、製造誤差を考慮して穴部24とプロテクタ本体51の外周との間にはクリアランス(隙間)を確保する必要があるが、このクリアランスは、上記の排気干渉の低減効果や、検出対象気筒の排ガスとその前後のタイミングで流通する気筒の排ガスとをより分離できる効果を、いずれも低下させることになる。
【0048】
この点、本プロテクタによれば、シール部材53により、プロテクタ本体51の外周と穴部24との隙間が閉塞されているので、排気干渉の低減効果や、各気筒の排ガスをより分離して検出できる効果を、確保することができる。
なお、図5(b)に示すように、排ガス流下流側の排ガス誘導穴62,72を、排ガス流上流側の排ガス誘導穴61,71よりも大径に形成すれば、プロテクタ本体51の内部の排ガスの滞留を抑制することができ、円滑な排ガス流通を実現できる上に、センサ素子41の周辺への水分の進入や滞留を抑制することができる。
【0049】
そして、ガイド部材80の翼状ガイド部82,82及び筒状ガイド部83〜85により流通する排ガスを偏向しプロテクタ本体51の内部に流入するように案内するので、プロテクタ本体51の上流側の排ガス圧が高められ、プロテクタ本体51の内部への排ガスの流入が促進され、ガス流路を流れるガスの成分や濃度の変化に対するガスセンサ40のセンサ素子41の応答性が高められる。この結果、時間経過に応じて変化する排ガスの成分を1つのガスセンサ40によって精度よく検出することができるようになるしたがって、複数気筒を有するエンジンにおいて各気筒からの排ガスの成分を1つのガスセンサ40によって精度よく検出することができる。
【0050】
また、ガイド部材80を、一対の翼状ガイド本体82と、排気通路21の壁部にプロテクタ本体51の固定用フランジ部52と共に固定される基部プレート81とを有するように構成しているので、排気通路21の壁部にプロテクタ50と一体に装着することができ、装着性が向上し、組み付けコストの低減に寄与しうる。
また、プロテクタ本体51の排ガス誘導穴61a,62a,71a,72aについては、図7に変形例として示すような構成も適用できる。
【0051】
図7(a)に示すものでは、排ガス誘導穴61b,71b,62b,72bが、排ガス流の方向に対して傾斜して設定されている。
つまり、第1排気集合流路31内の上流側の排ガス誘導穴61bは、第1排気集合流路31を流通する排ガスをセンサ素子41に対して第2排気集合流路32側に偏向させるように傾斜され、第2排気集合流路32内の上流側の排ガス誘導穴71bは、第2排気集合流路32を流通する排ガスをセンサ素子41に対して第1排気集合流路31側に偏向させるように傾斜されている。また、第1排気集合流路31内の下流側の排ガス誘導穴(排ガス排出穴)62bは、第2排気集合流路32を流通する排ガスをセンサ素子41に対して第1排気集合流路31側に偏向させるように傾斜され、第2排気集合流路32内の下流側の排ガス誘導穴(排ガス排出穴)72bは、第1排気集合流路31を流通する排ガスをセンサ素子41に対して第2排気集合流路32側に偏向させるように傾斜されている。
【0052】
本発明の第2実施形態にかかるエンジンの排気系構造は、そのプロテクタが上述のように構成されているので、第1排気集合流路31を流通してプロテクタ本体51の排ガス誘導穴61bからその内部に進入する排ガスは、排ガス誘導穴61b及び排ガス誘導穴(排ガス排出穴)72bの傾斜構造によって、第1排気集合流路31側から第2排気集合流路32側に偏向されるため、センサ素子41の軸方法中心に向けてセンサ素子41の周囲に満遍なく排ガスを送り込むことが可能になる。同様に、第2排気集合流路32を流通してプロテクタ本体51の排ガス誘導穴71bからその内部に進入する排ガスは、排ガス誘導穴71b及び排ガス誘導穴(排ガス排出穴)62bの傾斜構造によって、第2排気集合流路32側から第1排気集合流路31側に偏向されるため、センサ素子41の軸方法中心に向けてセンサ素子41の周囲に満遍なく排ガスを送り込むことが可能になる。したがって、ガスセンサの検出精度を向上させることができる。
【0053】
また、図7(b)に示すように、排ガス誘導穴61c,62cの内周上面のみを、71c,72cの内周下面のみを、それぞれ傾斜させて排ガス流れを偏向させるようにしてもよい。この場合、上流側の排ガス誘導穴61c,71cは流れ方向に縮径するため、流通抵抗は増えるものの、排ガス中の水分のセンサ素子41への進入を抑制できる効果がある。
【0054】
また、図7(a),(b)では、プロテクタ本体51は一定の厚みがある(比較的厚い)ものとしているが、この場合も、プロテクタ本体51を、外側プロテクタと内側プロテクタとからなる二重構造としてもよい。
また、比較的厚みの薄いプロテクタ本体を用いる場合には、図7(c1),(c2)及び(d1),(d2)に示すように、排ガス誘導穴161,171,162,172,261,271,262,272及び排ガスを内部のセンサ素子41の表面に向けて誘導する誘導面161a,171a,162a,172a,261a,271a,262a,272aを有するプロテクタ本体151,251を形成することができる。
【0055】
図7(c1),(c2)に示すプロテクタ本体151では、排ガス誘導穴161,171及び162,172の穿設部を内方に折り込んで、プロテクタ本体151の外側を向いた面(平面或いは略平面)のみからなる誘導面161a,171a及び162a,172aを形成している。図7(d1),(d2)に示すプロテクタ本体251では、排ガス誘導穴161,171及び162,172の穿設部を内方に折り込んで、の表面から内方のセンサ素子41表面に向かう筒状面によりなるプロテクタ本体251の誘導面261a,271a及び262a,272aを形成している。
【0056】
プロテクタ本体を、外側プロテクタと内側プロテクタとの二重構造とする場合、内側プロテクタの厚さが厚い場合も薄い場合も外側プロテクタは薄いものとし、内側プロテクタの穴のみ方向性をもたせ、外側プロテクタの穴には方向性をもたせないことが好ましい。これは、外側プロテクタに方向性をもたせても排ガスをプロテクタ本体内部のセンサ素子41の表面に向けて誘導する効果は弱く、加工コストの割にメリットが少ないためである。
【0057】
また、プロテクタ本体が二重構造の場合、外側プロテクタの穴と内側プロテクタの穴の位置は重なっても重ならなくてもよい。重ならせる場合、排ガスをセンサ素子表面に向けて誘導する効果が高まり応答性は良くなるが被水には弱くなり、二重構造にする恩恵があまり受けられないことになり、重ならせない場合は被水に強いが排ガスをセンサ素子表面に向けて誘導する効果が低下しその分応答性は低下することになる。したがって、二重構造の場合、外側プロテクタの穴と内側プロテクタの穴の位置はこれらを考慮して設定すればよい。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図8,図9を参照して説明する。
第1実施形態のガスセンサ40が重合する第1排気集合管21と第2排気集合管22との双方にわたって設けられているのに対して、図8,9に示すように、本実施形態にかかるガスセンサ40は単一の排気集合管21に設けられている点のみ相違する。したがって、本実施形態では、第1実施形態のシール部材(弁)53は省略されている。また、本実施形態にかかる排ガスセンサ用ガイド装置(ガイド装置)8、つまり、ガイド装置8を構成するプロテクタ50及びガイド部材80自体は、第1実施形態のものと同様に構成される。
【0059】
なお、取付ボス部25は、図8(b)に示すように、第1実施形態と同様に、ガイド部材80の基部プレート81の位置決め突起81aが貫通する穴部26を設ける構成とする。ただし、例えば、ガイド部材80の翼状ガイド部82の先端を、排ガス流の上流側、つまり、円筒状又は部分円筒状の筒状ガイド部83から周外方に向けてより長く延設すると基部プレート81が翼状ガイド部82の先端と干渉する場合があるが、この場合には、基部プレート81の翼状ガイド部82の先端が干渉する箇所に切り欠き27を設ければよい。この構成は、第1実施形態のものにも適用できる。
【0060】
本発明の第2実施形態にかかる気筒別ガス成分検出用ガスセンサは、上述のように構成されているので、複数の排気マニホルド11〜14を集合させた各排気集合流路31を流通する排ガスについて、センサ素子41がそのガス成分(ここでは、空燃比)を検知する。この検知情報は、その検出タイミングと、各気筒の点火順序、即ち、排気順序とに応じて、検知した情報を何れの気筒のものであるかを特定して、各気筒からの排ガスのガス成分をそれぞれ個別に検知する。
【0061】
そして、本プロテクタ50によってセンサ素子41を覆うことにより、排ガス中の異物の衝突によるセンサ素子41の破損のおそれを低減することができる。
そして、ガイド部材80の翼状ガイド部82,82及び筒状ガイド部83〜85により流通する排ガスを偏向しプロテクタ本体51の内部に流入するように案内するので、プロテクタ本体51の上流側の排ガス圧が高められ、プロテクタ本体51の内部への排ガスの流入が促進され、ガス流路を流れるガスの成分や濃度の変化に対するガスセンサ40のセンサ素子41の応答性が高められる。この結果、時間経過に応じて変化する排ガスの成分を1つのガスセンサ40によって精度よく検出することができるようになるしたがって、複数気筒を有するエンジンにおいて各気筒からの排ガスの成分を1つのガスセンサ40によって精度よく検出することができる。
【0062】
また、ガイド部材80を、一対の翼状ガイド本体82と、排気通路21の壁部にプロテクタ本体51の固定用フランジ部52と共に固定される基部プレート81とを有するように構成しているので、排気通路21の壁部にプロテクタ50と一体に装着することができ、装着性が向上し、組み付けコストの低減に寄与しうる。
【0063】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図10〜図13を参照して説明する。
図10〜図13に示すように、本実施形態では、第1実施形態の翼状ガイド部82,82に相当するガイド部材90が、プロテクタ50のプロテクタ本体51とは別個に設けられている。なお、ガスセンサ40及びプロテクタ50は、第1実施形態と同様に構成され、本実施形態にかかるガイド装置8´を構成するガイド部材80が、第1実施形態のものと異なっている。
【0064】
つまり、ガイド部材90は、翼状ガイド部91,91と、翼状ガイド部91の一端に形成された取付用ネジ軸(固定部)92,92とを有し、取付用ネジ軸92,92を各排気集合流路31,32の内壁部(第1排気集合管21の内壁部及び第2排気集合管22の内壁部)に形成されたネジ穴に挿入しナット93により固定することによって、ガイド部材90が取り付けられる。
【0065】
これらのガイド部材90は、図13に示すように、翼状ガイド部91,91が、上流側端部から下流側端部にかけて、排ガス流方向に対して排ガス流がプロテクタ本体51の軸心、即ち、センサ素子41に集まるように、傾斜して配置される。両翼状ガイド部91,91により集められた排ガスは、プロテクタ本体51の内部に進入し、排ガス誘導穴からセンサ素子41に向かうようになっている。
【0066】
本発明の第3実施形態にかかるガイド装置8´は、ガイド部材90が上述のように構成されているので、ガイド部材90の翼状ガイド部91,91により流通する排ガス(矢印F1参照)をプロテクタ本体51の内部に集めて流入するように案内する(矢印F2参照)ので、排ガスをセンサ素子41の周囲に集めることができ、ガスセンサ40の検出精度を確保することができる。
【0067】
しかも、既成の排気通路に容易にガイド部材90を装備することができる上、この際、図10に矢印で示すように、穴部23,24を通じてガイド部材90を排気通路内に挿入して後付けすることも可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態を適宜変更して実施することができる。
【0068】
例えば、上記第1,3実施形態では、第1排気集合管21と第2排気集合管22とを二重管構造に形成する例を示したが、本発明に適用しうる排気管構造はこれに限定されるものではない。また、通常、排気集合管(排気集合流路)は2系統であるが、それ以上の多系統に排気集合させるものへの適用も考えら、また、第2実施形態のように、排気集合管が1系統であってもよい。
【0069】
さらに、本発明に適用しうるセンサ素子は、上記の各実施形態で説明したような排ガスの成分について検出するガスセンサのセンサ素子に限らず、排ガスの温度を検出するセンサ素子など、排ガスの性状、つまり、性質(例えば、成分の種類や特定成分の量,割合)や状態(例えば、温度)を検出するセンサ素子に適用しうる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、エンジン、特に、自動車用エンジンの排気系統の製造に適用するのに好適であり、エンジン性能を確保しながら排気浄化を促進するために、エンジンの排気系製造にかかる産業に広く適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジン本体
8,8´ 排ガスセンサ用ガイド装置
11〜14 排気マニホルド
21 第1排気集合管
22 第2排気集合管
23,24 穴部
25a ネジ部
31 第1排気集合流路(第1部分流路)
32 第2排気集合流路(第2部分流路)
40 排ガスセンサ(全域空燃比センサ)
41 センサ素子
50 プロテクタ
51,151,251 プロテクタ本体
52 固定用フランジ部(固定部)
52a ネジ部
52b プレート部
52c 六角部
53,153 環状のシール部材(弁)
61a,71a,61b,71b,61c,71c 排ガス誘導穴
62a,72a,62b,72b,62c,72c 排ガス誘導穴(排ガス排出穴)
80,80A〜80E,90 排ガスセンサ用ガイド部材
82,91 翼状ガイド部(翼状ガイド本体)
81 環状の基部プレート(環状基部)
92 取付用ネジ軸(固定部)
151,251 プロテクタ本体
161,171,261,271 排ガス誘導穴
162,172,262,272 排ガス誘導穴(排ガス排出穴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路内に装備され、排ガスの性状を検知するセンサ素子へ排ガスを案内するガイド装置であって、
前記センサ素子を覆うと共に排ガスを前記センサ素子に誘導する複数の排ガス誘導穴を有するプロテクタと、
前記プロテクタよりも前記排気通路の上流側に装備され、排ガス流を前記プロテクタの中心側に偏向させるガイド部材と、をそなえている
ことを特徴とする、センサ素子への排ガスガイド装置。
【請求項2】
前記ガイド部材には、前記プロテクタの延在する方向に沿って延び、翼面が下流側に行くに従って互いに接近するように対称配置される一対の翼状ガイドが備えられている
ことを特徴とする、請求項1記載のセンサ素子への排ガスガイド装置。
【請求項3】
前記プロテクタは、前記センサ素子を包囲し前記排ガス誘導穴が形成された筒状のプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の基部に備えられ前記排気通路の壁部に固定される固定部とを有し、
前記ガイド部材は、前記一対の翼状ガイドの基部に備えられ前記排気通路の壁部に前記プロテクタの前記固定部と共に固定される環状基部とを有している
ことを特徴とする、請求項2記載のセンサ素子への排ガスガイド装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記一対の翼状ガイド本体の相互間に、前記プロテクタ本体を包囲するように配置され、排ガス流を前記プロテクタ本体の周面に向けて案内する筒状ガイドを有している
ことを特徴とする、請求項3記載のセンサ素子への排ガスガイド装置。
【請求項5】
排気通路に複数の部分流路を隣接して備えると共に、請求項1〜4の何れか1項に記載のセンサ素子への排ガスガイド装置を備えたエンジンの排気系構造であって、
前記センサ素子は、前記部分流路の隣接壁部の穴部を貫通して装備され、前記各部分流路を流通する排ガスの性状をそれぞれ検知し、
前記プロテクタは、前記センサ素子の外側で前記隣接壁部の穴部を貫通して装備されている
ことを特徴とする、エンジンの排気系構造。
【請求項6】
前記部分流路は、何れも、複数の排気マニホルドを集合させた排気集合流路であって、
前記センサ素子は、前記各排気集合流路を流通する前記複数の排気マニホルドからの排ガスのガス成分をそれぞれ個別に検知する
ことを特徴とする、請求項5記載のエンジンの排気系構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−21994(P2011−21994A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167065(P2009−167065)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】