説明

センサ装置、センサ管理システム、センサ装置の制御方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】計測の頻度を最適化でき、消費電力の削減と適切な制御に寄与できるセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置1は、計測対象を計測するセンサ部12が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出部1311と、複数の計測値履歴に基づく経過時間に対する計測値の最大変化量を記憶する動作設定パラメータ記憶部16と、算出された差分と最大変化量とに基づいて、計測対象が現在の計測値から所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出部1312と、到達最短時間とセンサ装置1にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、計測対象の次回の計測時刻を決定する計測時刻決定部132と、決定された時刻に、計測対象を計測するようセンサ部12を制御するセンサ制御部13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象を計測するセンサ装置及び、センサ装置とセンサ装置を管理するサーバ装置と備えた管理システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我々の周辺環境には、多種多様なセンサが設置されており、センサによる計測データをサーバ装置(あるいは本体装置)にて収集し解析することが行われている。そして、この解析結果により、周辺環境に設置された機器類を制御することが行われている。
【0003】
1つのサーバ装置が管理するセンサが多数あると、また、センサでの計測回数及びデータ送信回数が増加すると、サーバ装置にて蓄積および解析するデータが大量となり、サーバ装置で処理しきれなくなったり、サーバ装置の処理能力が低下したりする。
【0004】
また、センサでの計測及びデータ送信が多くなると、当然消費電力も多くなる。例えば、センサを電池で動作させる場合、計測及びデータ送信が多くなると、電池の寿命が短くなり、電池を頻繁に交換する必要がある。他方、計測回数を減らすと、機器類の適切な制御を行えなくなる恐れがある。
【0005】
そこで、無駄な計測や送信の防止により消費電力の削減を行っている。例えば、特許文献1には次の技術が開示されている。センサでの計測周期として2つの周期T1(長周期)及びT2(短周期)と、2つの閾値α1及びα2(α1≧α2)とを設定する。そして、現在の計測周期がT1である場合、センサによる計測データの変化率αがα1を超えた時点で、計測周期をT2に変更し、現在の計測周期がT2である場合、計測データの変化率αがα2を下回った時点で、計測周期をT2に変更する。このようにして、計測の即時性と消費電力の低減とを両立させている。
【0006】
また、特許文献2では、センサによる計測値と目標範囲値とを比較し、所定の連続回数あるいは連続時間、比較結果に所定の変化があると(実施の形態では目標範囲値を下回るのが連続3回以上になる場合)、計測周期の変更や機器の動作の停止を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−52415号公報(2008年3月6日公開)
【特許文献2】特開2006−340157号公報(2006年12月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、計測値の管理範囲(例えば、上限値と下限値との間)を設定した場合において、管理範囲内にて上限値や下限値から離れた箇所であっても計測データの変化率が大きければ、短周期にて計測してしまう。よって、無駄な計測が多くなる。
【0009】
また、特許文献2の技術では、所定の変化が所定の連続回数あるまで計測を短周期で行うため、計測回数が多くなり、消費電力も多くなる。また、所定の変化が所定の連続回数あるまで機器の動作の停止が実行されないので、環境の適切な管理が行えず不安定である。よって、機器の制御の実施から環境に反映されるまで時間がかかる場合には適用が困難である。
【0010】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、計測の頻度を最適化でき、消費電力の削減と適切な制御に寄与できるセンサ装置、センサ管理システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のセンサ装置は、上記課題を解決するために、計測対象を計測するセンサ部が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出手段と、上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量を記憶する変化量記憶部と、上記算出された差分と上記記憶された最大変化量とに基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出手段と、上記算出された到達最短時間と、当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔との、いずれか大きい方の時間から、上記計測対象の次回の計測時刻を決定する計測時刻決定手段と、上記決定された時刻に、上記計測対象を計測するようセンサ部を制御するセンサ制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
上記構成によると、センサ部の現在の計測値と所定の閾値との差分と、複数の計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、を基に現在の計測値から所定の閾値に到達するまでの到達最短時間が算出される。そして、この到達最短時間とセンサ装置にて計測可能な最短時間間隔とのうち大きい方の時間から、センサ部による計測対象の次回の計測時刻が、決定される。決定された時刻にセンサ部にて計測対象の計測が行わる。
【0013】
現在の計測値と所定の閾値との差分が大きい、つまり現在の計測値が閾値から離れている場合には、この差分と、経過時間に対する計測値最大変化量とから算出される到達最短時間は長くなる。この場合、現在の時刻から次回の計測時刻までの時間間隔が長くなる。言い換えれば、上記差分が大きいと計測頻度が少なくなるということである。
【0014】
他方、上記差分が小さい、つまり現在の計測値が閾値に近い場合には、差分と最大変化量とから算出される到達最短時間は短くなる。この場合、現在の時刻から次回の計測時刻までの時間間隔が短くなる。言い換えれば、上記差分が小さいと計測頻度が多くなるということである。
【0015】
このように、上記構成によると、現在の計測値と所定の閾値との差分と、複数の過去の計測値である計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって計測頻度を変化させ、計測の頻度を最適化することができる。よって、無駄な計測を省くことができ、消費電力の削減を行うことができる。また、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とすることで、この機器類の適切な制御に寄与することができる。
【0016】
また、本発明のセンサ装置では、上記構成に加え、上記変化量記憶部は、複数の経過時間毎に上記最大変化量を記憶しており、上記最短時間算出手段は、上記算出された差分の値を含む上記最大変化量に対する経過時間のうちの最も小さい経過時間を、上記到達最短時間として算出してもよい。
【0017】
上記構成によると、複数の経過時間毎に上記最大変化量を記憶しているため、上記差分に応じて、当該差分の値を含む上記最大変化量に対する最も小さい経過時間を選択することで、上記到達最短時間を算出することができる。
【0018】
また、本発明のセンサ装置では、上記構成に加え、上記変化量記憶部は、単位時間当たりの最大変化量を記憶しており、上記最短時間算出手段は、上記差分を上記単位経過時間当たりの最大変化量で割った商を、上記到達最短時間として算出してもよい。
【0019】
上記構成によると、単位時間当たりの上記最大変化量から、上記到達最短時間を決定することができる。よって、記憶しておく上記最大変化量を少なくすることができる。
【0020】
また、本発明のセンサ装置は、上記構成に加え、上記所定の閾値を入力する入力部を備えていてもよい。
【0021】
上記構成によると、ユーザが上記所定の閾値を決定し、センサ装置に入力することができる。よって、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とする場合に、ユーザの経験に基づき、この機器類を適切に制御することができる。
【0022】
また、本発明のセンサ装置では、上記構成に加え、上記算出された到達最短時間が、当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔より大きい場合、上記計測時刻決定手段は、上記算出された到達最短時間未満の時間で次回の計測が行われるように、上記次回の計測時刻を決定してもよい。
【0023】
上記到達最短時間が、上記計測可能な最短時間間隔より大きい場合、到達最短時間以上で計測を行うと、計測時には上記所定の閾値に到達している可能性がある。そのため、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とする場合、上記所定の閾値を大幅に超えてしまい、制御が追いつかなくなる可能性がある。
【0024】
しかし、本願発明の上記構成により、算出された到達最短時間未満の時間で次回の計測が行うと、上記所定の閾値に到達する前に計測を行い、上記機器類の制御を行うことができる。このように、上記構成によると、機器類の制御が追いつかなくなることを防止できる。
【0025】
また、本発明のセンサ装置は、上記構成に加え、上記所定の閾値は複数あり、上記複数の閾値から一つの閾値を選択する選択手段と、選択されている閾値と次に選択される次回閾値とを対応づけた閾値対応情報を記憶する閾値対応情報記憶部と、を備え、上記選択手段は、前回の上記計測値と現在の上記計測値との間に現在選択されている閾値があるとき、上記閾値対応情報から、現在選択されている閾値に対応する次回閾値を抽出して、当該次回閾値を現在選択されている閾値として更新し、上記差分算出手段及び上記最短時間算出手段は、上記現在選択されている閾値を上記算出に用いてもよい。
【0026】
上記構成によると、所定の閾値は複数あり、前回の計測値と現在の計測値との間に現在選択されている閾値があるとき、上記閾値対応情報から現在選択されている閾値に対応する次回閾値が抽出され、現在選択されている閾値として更新され、現在選択されている閾値が差分及び到達最短時間の算出に用いられる。
【0027】
よって、所定の閾値が複数設定されている場合、現在選択されている閾値に対してのみ差分及び到達最短時間を算出の算出を行えばよいので、全ての閾値に対して差分及び到達最短時間を算出するよりも算出回数が減る。
【0028】
また、閾値を選択することで、同じ計測値が同じ推移をたどるのであれば、計測回数は減る。これについて説明する。複数の閾値を差分及び到達最短時間を算出に用いると、計測値がいずれかの閾値に近い場合、次回の計測時刻は、現在時刻との間隔が狭く決定される。他方、選択された一つの閾値を上記算出に用いると、計測値がいずれかの閾値に近い場合であっても、選択されている閾値からは遠く、かつ選択されていない閾値に近い場合には、次回の計測時刻は、現在時刻との間隔が広く決定される。よって、計測の回数は、複数の閾値を差分及び到達最短時間を算出に用いる場合よりも、選択された一つの閾値を用いる方が少なくなる。そのため、さらに無駄な計測による消費電力の削減を行うことができる。
【0029】
本発明のセンサ管理システムは、上記課題を解決するために、上記いずれかに記載のセンサ装置と、当該センサ装置を管理するサーバ装置とを備えたセンサ管理システムにおいて、上記センサ装置は、さらに、上記サーバ装置と通信を行うセンサ通信部と、上記計測対象を計測した計測値を上記サーバ装置に送信するよう上記センサ通信部を制御するとセンサ通信制御手段と、を備え、上記サーバ装置は、上記センサ装置と通信を行うサーバ通信部と、上記センサ装置から受信した上記計測値から上記計測値履歴を作成し、当該計測値履歴に基づき上記最大変化量を更新する変化量更新手段と、上記更新された最大変化量を上記センサ装置に送信するよう上記サーバ通信部を制御するサーバ通信制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0030】
上記構成によると、センサ管理システムは、本願のセンサ装置と当該センサ装置を管理するサーバ装置を備えており、サーバ装置は、センサ装置から受信した上記計測値から上記計測値履歴を作成し、当該計測値履歴に基づき上記最大変化量を更新し、センサ装置に送信する。
【0031】
よって、更新された上記最大変化量と、センサ部での現在の計測値と所定の閾値との差分と、によって計測頻度を変化させ、計測の頻度を最適化することができる。そのため、上記センサ管理システムは、無駄な計測を省くことができ、消費電力の削減を行うことができる。また、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とすることで、この機器類の適切な制御に寄与することができる。
【0032】
本発明のセンサ管理システムでは、上記構成に加え、上記サーバ装置は、上記所定の閾値を、上記計測値履歴を基に決定する閾値決定手段を備え、上記サーバ通信制御手段は、上記決定された所定の閾値を上記センサ装置に送信するよう上記サーバ通信部を制御してもよい。
【0033】
上記構成によると、サーバ装置が、所定の閾値が、過去の計測値である計測値履歴を基に決定する。よって、所定の閾値が最適化される。そのため、所定の閾値が、センサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値である場合に、機器類の制御の回数を減らすことができる。
【0034】
本発明のセンサ管理システムでは、上記構成に加え、上記サーバ装置は、上記計測対象の計測値が所定の管理値を超えないように、上記計測対象の現在の計測値が上記所定の閾値を超えると、上記計測対象の計測環境を変化させる環境制御手段を備え、上記閾値決定手段は、上記計測値履歴から求められた、上記環境制御手段が計測環境を変化させてから変動する計測値の最大量を、上記所定の管理値から引いた値を、上記所定の閾値として決定してもよい。
【0035】
上記構成によると、上記所定の閾値は、所定の管理値から、計測値履歴から求められた計測環境が変化されてから変動する計測値の最大量を、引いた値として、決定される。このように、上記所定の閾値を、ユーザの経験則ではなく、上記計測値履歴に基づき決定することで、計測対象の計測環境を変化させる制御の回数を減らすことができる。なお、次回の計測時までに計測値が最大量変動しても、所定の管理値までは到達しないので、計測対象の計測環境が所定の管理値を超えること、あるいは、下回ることはない。
【0036】
本発明のセンサ管理システムでは、上記構成に加え、上記サーバ装置は、上記計測対象の計測値が所定の管理値を超えないように、上記計測対象の現在の計測値が上記所定の閾値を超えると、上記計測対象の計測環境を変化させる環境制御手段を備え、上記閾値決定手段は、上記計測値履歴から求められた、上記環境制御手段が上記計測環境を変化させてから変動する計測値の最大量を、上記所定の管理値から引いた第1の値を求め、さらに、上記計測値履歴から求められた、上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔における計測値の最大変化量を、上記第1の値から引いた第2の値を、上記所定の閾値として決定してもよい。
【0037】
上記構成によると、上記所定の閾値は、所定の管理値から、計測値履歴から求められた計測環境が変化されてから変動する計測値の最大量を引き、さらに、センサ装置にて計測可能な最短時間間隔における計測値の最大変化量を引いた値として、決定される。
【0038】
よって、管理値まで到達することなく、より適切に機器類の制御の回数を減らすことができる。
【0039】
本発明のセンサ装置の制御方法は、上記課題を解決するために、計測対象を計測するセンサ装置が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出ステップと、上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量と、上記算出された差分と、に基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出ステップと、上記算出された到達最短時間と上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、上記センサ装置の計測時間間隔を決定する決定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0040】
上記方法によると、上記センサ装置と同様の効果を奏し、センサ部での現在の計測値と所定の閾値との差分と、複数の過去の計測値である計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって計測時間間隔を変化させ、計測の頻度を最適化することができる。よって、無駄な計測を省くことができ、消費電力の削減を行うことができる。また、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とすることで、この機器類の適切な制御に寄与することができる。
【0041】
本発明のセンサ装置の制御方法は、上記課題を解決するために、計測対象を計測するセンサ装置が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出ステップと、上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量と、上記算出された差分と、に基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出ステップと、上記算出された到達最短時間と、上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔との、いずれか大きい方の時間から、上記計測対象の次回の計測時刻を決定する計測時刻決定ステップと、上記決定された時刻に、上記計測対象を計測するようセンサ装置を制御するセンサ制御ステップと、を含むことを特徴としている。
【0042】
上記方法によると、上記センサ装置と同様の効果を奏し、センサ部での現在の計測値と所定の閾値との差分と、複数の過去の計測値である計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって計測頻度を変化させ、計測の頻度を最適化することができる。よって、無駄な計測を省くことができ、消費電力の削減を行うことができる。また、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とすることで、この機器類の適切な制御に寄与することができる。
【0043】
なお、本発明のセンサ装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記センサ装置をコンピュータにて実現させるプログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0044】
これらの構成によれば、上記プログラムを、コンピュータに読み取り実行させることによって、上記センサ装置と同一の作用効果を実現することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明のセンサ装置は、以上のように、計測対象を計測するセンサ部が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出手段と、上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量を記憶する変化量記憶部と、上記算出された差分と上記記憶された最大変化量とに基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出手段と、上記算出された到達最短時間と、当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔との、いずれか大きい方の時間から、上記計測対象の次回の計測時刻を決定する計測時刻決定手段と、上記決定された時刻に、上記計測対象を計測するようセンサ部を制御する計測制御手段と、を備えている。
【0046】
上記構成によると、センサ部の現在の計測値と所定の閾値との差分が大きい、つまり現在の計測値が閾値から離れている場合には、この差分と、経過時間に対する計測値最大変化量とから算出される到達最短時間は長くなる。この場合、現在の時刻から次回の計測時刻までの時間間隔が長くなる。言い換えれば、上記差分が大きいと計測頻度が少なくなるということである。
【0047】
他方、上記差分が小さい、つまり現在の計測値が閾値に近い場合には、差分と最大変化量とから算出される到達最短時間は短くなる。この場合、現在の時刻から次回の計測時刻までの時間間隔が短くなる。言い換えれば、上記差分が小さいと計測頻度が多くなるということである。
【0048】
このように、上記構成によると、現在の計測値と所定の閾値との差分と、複数の過去の計測値である計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって計測頻度を変化させ、計測の頻度を最適化することができる。よって、無駄な計測を省くことができ、消費電力の削減を行うことができる。また、上記所定の閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とすることで、この機器類の適切な制御に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態のセンサ装置及びセンサ管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は従来の計測頻度を説明するための図、(b)は本発明の計測頻度を説明するための図である。
【図3】上記センサ装置及び当該センサ装置を管理するサーバ装置でのデータの流れを説明する図である。
【図4】過去の計測値の履歴から経過時間に対する最大変化量のデータを作成する方法について説明するための図である。
【図5】上記センサ装置における計測の処理の流れを示す図である。
【図6】比較例のセンサ装置を用いた場合の計測結果を示す図である。
【図7】実施例1のセンサ装置を用いた場合の計測結果を示す図である。
【図8】実施例2のセンサ装置を用いた場合の計測結果を示す図である。
【図9】実施例3のセンサ装置を用いた場合の計測結果を示す図である。
【図10】実施例4のセンサ装置を用いた場合の計測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に本発明の実施の形態、実施例、比較例について図面に基づいて説明する。以下の実施の形態、実施例、比較例では、温度によるハウス内の窓の開閉制御について説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、各種のセンサ装置に適用できる。
〔実施の形態〕
本実施形態のセンサ管理システム100は、図1に示すように、センサ装置1とセンサ装置1を管理するサーバ装置2とを含んでおり、これらが通信を行う。この通信は無線回線を利用しても有線回線を利用してもよい。あるいは、センサ装置1にサーバ装置2の機能が組み込まれていてもよい。なお、本実施形態では、1つのセンサ装置1がサーバ装置2と通信しているものとして説明するが、サーバ装置2と通信するセンサ装置1の数は限定されない。
【0051】
センサ装置1は、電源部11、センサ部12、センサ制御部(センサ制御手段)13、センサ通信部14、計測データ記憶部15、動作設定パラメータ記憶部(変化量記憶部)16、入力部17、を備えている。
【0052】
電源部11は、センサ装置1の駆動源であり、本実施形態では交換可能な電池である。なお、電池はなく、外部から電力を供給されるようになっていてもよい。
【0053】
センサ部12は、計測対象を計測するセンサである。例えば、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、フローセンサ、圧力センサ、地温センサ、パーティクルセンサ等の物理系センサで、COセンサ、pHセンサ、ECセンサ、土壌水分センサ等の化学系センサが用いられる。
【0054】
センサ制御部13は、センサ装置1における各種構成の動作を統括的に制御するブロックである。センサ制御部13は、センサ装置1での制御プログラム、OS(Operating System)プログラム、その他の各種プログラム等が格納されている記憶部(図示せず)に、記憶されている情報に基づいて、センサ装置1を制御する。
【0055】
また、センサ制御部13は、動作設定管理部131、計測時刻決定部(計測時刻決定手段)132、センサ通信制御部(センサ通信制御手段)133を備えている。
【0056】
動作設定管理部131は、動作設定パラメータ記憶部16に記憶された動作設定パラメータを基に、計測対象の計測におけるセンサ部12の動作設定を行うブロックである。
【0057】
動作設定管理部131は、差分算出部(差分算出手段)1311及び最短時間算出部(最短時間算出手段)1312を備えており、差分算出部1311は、センサ部12が計測した現在の計測値と閾値との差分を算出する。最短時間算出部1312は、動作設定パラメータ記憶部16に記憶された、経過時間に対する計測値の最大変化量のデータを参照して、差分算出部1311にて算出された差分から、計測対象が現在の計測値から閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する。この経過時間に対する計測値の最大変化量のデータは、動作設定パラメータの一つであり、過去の計測対象の計測値である複数の計測値履歴に基づいて作成されるものである。この計測値履歴の作成は、サーバ装置2で行われる。
【0058】
計測時刻決定部132は、算出された到達最短時間とセンサ装置1にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、センサ装置1の計測時間間隔を決定するブロックである。具体的には、計測時刻決定部132は、到達最短時間と最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、計測対象の次回の計測時刻を決定する。
【0059】
そして、センサ制御部13は、計測時刻決定部132で決定された時刻に、計測対象を計測するようセンサ部12を制御する。
【0060】
図2(a)に従来のセンサ装置、(b)に本実施形態のセンサ装置1の計測時刻と計測値と関係の一例を示す。人の経験やノウハウに基づき一定時間間隔(一定タイミング)で計測する従来のセンサ装置に比べて、本実施形態のセンサ装置1は、計測回数が減る。
【0061】
本実施形態のセンサ装置1は、現在の計測値と閾値との差分と、計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって到達最短時間を算出し、計測頻度を変化させる。センサ装置1では、現在の計測値と所定の閾値との差分が大きい、つまり、現在の計測値が閾値から離れている場合には、この差分と、経過時間に対する計測値最大変化量とから算出される到達最短時間が長くなる。この場合、現在の時刻から次回の計測時刻までの時間間隔が長くなる。言い換えれば、上記差分が大きいと計測頻度が少なくなる。他方、上記差分が小さい、つまり現在の計測値が閾値に近い場合には、差分と最大変化量とから算出される到達最短時間は短くなる。この場合、現在の時刻から次回の計測時刻までの時間間隔が短くなる。言い換えれば、上記差分が小さいと計測頻度が多くなる。
【0062】
よって、本実施形態のセンサ装置1は、現在の計測値と閾値との差分と、複数の過去の計測値である計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって計測頻度を変化させ、計測の頻度を最適化することができる。そのため、無駄な計測を省くことができ、消費電力の削減を行うことができる。また、上記閾値をセンサ装置が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とすることで、この機器類の適切な制御に寄与することができる。
【0063】
ここで、最大変化量について説明する。最大変化量は複数の経過時間毎に記憶されていてもよい。この場合、最短時間算出部1312は、算出された差分の値を含む最大変化量に対する経過時間のうちの最も小さい経過時間を、到達最短時間として算出する。この場合、複数の経過時間毎に最大変化量を記憶しているため、差分に応じて、当該差分の値を含む最大変化量に対する最も小さい経過時間を選択することで、到達最短時間を算出することができる。
【0064】
あるいは、単位時間当たりの最大変化量が記憶されていてもよい。単位時間当たりの最大変化量であると、最短時間算出部1312は、差分を単位経過時間当たりの最大変化量で割った商を、到達最短時間として算出する。この場合、動作設定パラメータ記憶部24、動作設定パラメータ記憶部16にて記憶しておく上記最大変化量を少なくすることができる。
【0065】
なお、動作設定パラメータ記憶部16に記憶された動作設定パラメータには、初期設定パラメータが含まれていてもよい。この場合、上記計測値履歴が無い、あるいは少ないときには、初期設定パラメータを基に、動作設定管理部131がセンサ部の各設定を行い、初期設定パラメータを基に、計測時刻決定部が、計測時刻を決定する。そして計測データが所定数蓄積されると、上記差分及び上記到達最短時間の算出による計測時刻の決定に切り替える。
【0066】
なお、図3に示すように、計測値が32.6℃で、閾値の上限値が35℃、下限値が30℃である場合、それぞれ差分は、+2.4℃、−2.6℃となり、それぞれの到達最短時間は、10分、15分となる。この場合、最短時間算出部1312は、小さい方の10分を選択し、さらに10分未満の5分を到達最短時間として算出する。これは、次の理由による。
【0067】
到達最短時間以上で計測を行うと、計測時には閾値に到達している可能性がある。そのため、閾値をセンサ装置1が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための閾値とする場合、閾値を大幅に超えてしまい、制御が追いつかなくなる可能性がある。しかし、算出された到達最短時間未満の時間で次回の計測が行うと、所定の閾値に到達する前に計測を行い、機器類の制御を行うことができる、機器類の制御が追いつかなくなることを防止できる。なお、到達最短時間で次の計測を行ってもよい。
【0068】
センサ通信部14は、サーバ装置2などの外部との通信を行うブロックであり、通信は、センサ通信制御部133によって制御される。
【0069】
入力部17は、ユーザから設定や動作指示に対する操作入力を受け付けるブロックである。ユーザが閾値を決定し、入力部17から、センサ装置1に入力してもよい。閾値をセンサ装置1が計測した計測値によって制御される機器類を制御するための制御閾値とする場合に、ユーザの経験に基づき、この機器類を適切に制御することができる。さらに、センサ装置1は、ユーザに情報を提示する表示部等を備えていてもよい。
【0070】
サーバ装置2は、センサ装置1を管理するサーバであり、サーバ制御部21、サーバ通信部22、計測データ履歴記憶部23、動作設定パラメータ記憶部24を備えている。
【0071】
サーバ制御部21は、サーバ装置2における各種構成の動作を統括的に制御するブロックである。サーバ制御部21は、サーバ装置2での制御プログラム、OS(Operating System)プログラム、その他の各種プログラム等が格納されている記憶部(図示せず)に、記憶されている情報に基づいて、サーバ装置2を制御する。
【0072】
サーバ制御部21は、変化量更新部(変化量更新手段)211と、閾値決定部(閾値決定手段)212とを備えている。閾値決定部212は、閾値を上記計測値履歴を基に決定し、サーバ通信制御部(サーバ通信制御手段)213は、閾値決定部212により決定された閾値をセンサ装置1に送信する。
【0073】
変化量更新部211は、センサ装置1から受信した計測値から上記計測値履歴を作成し、当該計測値履歴に基づき上記最大変化量を更新するブロックである。計測値履歴は計測データ履歴記憶部23に蓄積される。
【0074】
更新した最大変化量は動作設定パラメータ記憶部24に記憶される。また、この更新した最大変化量を、サーバ通信制御部213による制御の下、サーバ通信部22がセンサ装置1に送信する。
【0075】
サーバ通信部22は、センサ装置1などの外部との通信を行うブロックであり、通信は、サーバ通信制御部213によって制御される。
【0076】
さらに、サーバ装置2は、図示しない、ユーザから設定や動作指示に対する操作入力を受け付ける入力部、ユーザに情報を提示する表示部等を備えたユーザーインターフェース(UI)等を備えている。
【0077】
また、サーバ装置2は、計測対象の計測値が閾値を超えると、計測対象の計測環境を変化させる環境制御部(図示せず)を備えている。環境制御部は、サーバ通信部22を介して機器類と接続しており、この機器類を制御することで計測環境を変化させる。具体例を挙げて説明すると、計測対象が温室の温度であり、機器類が温室の窓を開閉するためのモータである場合、上記環境制御部は、モータを制御して窓を開閉して、温室を窓が開いた状態から窓が閉じた状態に変化、あるいは窓が閉じた状態から窓を開けた状態に変化させる、ということである。
【0078】
このとき、上記環境制御部は、計測対象の現在の計測値が閾値を超えると、計測対象の計測環境を変化させて、計測対象の計測値が管理値(管理閾値)を超えないように、してもよい。このような機器類の制御を行う場合、閾値決定部212は、上記計測値履歴から求められた、環境制御部が計測環境を変化させてから変動する計測値の最大量を、管理値から引いた値を、上記閾値として決定する。あるいは、閾値決定部212は、上記計測値履歴から求められた、環境制御部が計測環境を変化させてから変動する計測値の最大量を、管理値から引いた第1の値を求め、さらに、上記計測値履歴から求められた、上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔における計測値の最大変化量を、上記第1の値から引いた第2の値を、上記閾値として決定する。この閾値決定部212の計測値履歴を基に閾値を決定する手法の詳細は、後段の実施例3,4で具体的に説明する。
【0079】
図3に示すように、センサ管理システム100では、センサ部12が計測対象を計測した測測値のデータ(計測データ)を、センサ装置1からサーバ装置2に送信する。そして、サーバ装置2は、受信した計測データを蓄積して計測値履歴のデータを作成し、この計測値記暦に基づき上記最大変化量のデータを更新し、センサ装置1に送信する。センサ装置1は、受信した最大変化量と、上記差分とに基づき、次回の計測時刻を決定し、決定された時刻に計測対象を計測する。これらが繰り返される。
【0080】
ここで、複数の過去の計測値である計測値履歴から最大変化量のデータを更新あるいは作成する方法について、図4を用いて説明する。まず、経過時間に対する計測値の最大変化量について説明する。計測値が温度であり、計測値履歴から1分経過すると(1分後には)−0.2℃から+0.4℃まで変化することがわかっているとする。この場合、1分後に対する最大変化量は、−0.2(最大マイナス変化量)、+0.4(最大プラス変化量)である。2分後には、−0.4℃から+0.9℃まで変化すことが分かっていると、2分後に対する最大変化量は、−0.4(最大マイナス変化量)、+0.9(最大プラス変化量)である。図4では、1,2,5,10,15分後の最大変化量をそれぞれ求めて、これらを集めた経過時間に対する最大変化量のデータが開示されている。このように、計測値履歴から経過時間に対する最大変化量が求められる。本実施形態では、この経過時間に対する最大変化量と上記差分とから計測時刻を決定して、計測対象の計測を行い、計測した計測値に基づき、計測対象の計測環境を制御する。つまり、計測値履歴から求めた最大変化量を計測対象の計測環境にフィードバックする。
【0081】
図5にセンサ装置1における計測処理の流れを示す。各処理の制御はセンサ制御部13が行う。
【0082】
初めに、センサ部12にて計測対象の計測を行い、センサ通信制御部133により、計測値(計測データ)をセンサ通信部14からサーバ装置2へ送信する(ステップS1)。
【0083】
次に、計測値と閾値との差分を算出する(ステップS2)。閾値が複数ある場合には、それぞれにつき差分を算出する。
【0084】
次に、動作設定パラメータ記憶部16に記憶された経過時間に対する計測値の最大変化量データを参照して、計測値が閾値に到達するまでの到達最短時間を算出する(ステップS3)。閾値が複数ある場合には、それぞれにつき到達最短時間を算出する。
【0085】
次に、到達最短時間と当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、上記計測対象の次回の計測時刻を決定する(ステップS4)。そして、決定された次回の時刻に到達したかを検出する(ステップS5)。到達していない場合(S5でNO)、センサ部12をスリープさせておき、到達すると(S5でYES)、S1に戻り、計測対象の計測及びサーバ装置2に計測データの送信を行う。
【0086】
以上の処理により、現在の計測値と閾値との差分と、複数の過去の計測値である計測値履歴に基づいた経過時間に対する計測値の最大変化量と、によって計測頻度を変化させ、無駄な計測を省くことができる。よって、計測の頻度を最適化できる。
【0087】
(実施例)
次に、具体例として、本実施の形態のセンサ装置にて、温室の温度(室温)を計測し、温室窓の開閉を制御する際に用いる場合の実施例及び比較例を説明する。これらは、単なる例示であり、本実施の形態のセンサ装置の使用はこれらに限定されない。
【0088】
温室では、センサ装置にて温度を計測し、温度が、40℃を超えることがないよう、かつ、25℃を下回ることがないよう、窓の開閉が制御される。以下の比較例及び実施例1〜4では、同じ構成のセンサ装置を用い、異なる構成についてのみ説明する。全てのセンサ装置は、電池からの電力で動作する。
【0089】
(比較例)
比較例として、常に一定の時間間隔で計測する比較例のセンサ装置における計測結果について説明する。比較例のセンサ装置は、1分毎に計測を行い、計測毎にサーバ装置に計測結果を送信する。
【0090】
図6は、比較例のセンサ装置を用いた場合の、9時30分から13時30分までの計測値を示すグラフである。制御閾値の上限を35℃、下限を30℃としており、計測値が35℃を超えると窓を開けるように制御し、計測値が30℃を下回ると温室の窓を閉じるように制御するよう設定されている。
【0091】
比較例のセンサ装置では、1日の計測回数は1440回、送信回数も同様に1440回であった。このときの消費電力量は、0.168mA・hであった。また、電池寿命は298日であった。
【0092】
(実施例1)
実施例1のセンサ装置では、現在の計測値と閾値との差分を算出し、差分と最大変化量とに基づいて、閾値までの到達最短時間を算出し、到達最短時間と当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔(1分)とのいずれか大きい方の時間から、次回の計測時刻を決定した。
【0093】
図7は、実施例1のセンサ装置を用いた場合の、9時30分から13時30分までの計測値を示すグラフである。制御閾値の上限を35℃、下限を30℃としており、計測値が35℃を超えると窓を開けるように制御し、計測値が30℃を下回ると温室の窓を閉じるように制御するよう設定されている。この30℃、35℃という制御閾値の決定は、ユーザの経験即に基づくものである。制御閾値から離れる程、計測頻度が下がっていることがわかる。
【0094】
ここでの制御閾値は30℃と35℃の2つあり、それぞれの計測において、30℃との差分及び35℃との差分を求めて、到達最短時間を算出する(図3参照)。
【0095】
実施例1のセンサ装置では、1日の計測回数および送信回数は比較例の約38%の回数となった。つまり、比較例に対して測定及び送信を約62%削減できた。このときの消費電力量は、比較例の約41.1%であった。また、電池寿命は比較例の約2.4倍であった。
【0096】
なお、日中に比べ、夜間では計測値と閾値との差分が大きくなる。そのため、夜間では計測頻度が下がり消費電力を抑えることができる。一方、日中では、計測値が閾値付近まで上昇する。ただし、実施例1では、日中であっても、上限および下限の閾値の間の中央付近では計測頻度が下がり消費電力を抑えることができる。9時から17時30分までの間に着目したとしても、計測回数および送信回数は、比較例の510回と比べ、約21%も削減できることが確認された。実施例1のセンサ装置を用いると、仮に9時から17時30分の状態が1日中継続するとした場合でも、消費電力量は比較例のセンサの約82%になり、電池寿命は比較例のセンサの約1.2倍になる。
【0097】
(実施例2)
実施例2のセンサ装置では、実施例1のセンサ装置の構成に加え、複数の閾値から一つの閾値を選択し、この選択した閾値を用いて、上記差分及び到達最短時間を算出する。
【0098】
制御閾値の上限を35℃、下限を30℃としており、35℃が現在の閾値として選択されている場合、計測値が35℃を超えた場合、30℃を現在の閾値として選択する。また、計測値が30℃を下回った場合、35℃を現在の閾値として選択する。そして、選択した閾値を用いて、上記差分及び到達最短時間を算出する。
【0099】
実施例2のセンサ装置の場合、閾値が複数設定されていても、現在選択されている閾値に対してのみ差分及び到達最短時間を算出の算出を行えばよいので、全ての閾値に対して差分及び到達最短時間を算出する実施例1よりも算出回数が減る。また、閾値を1つ選択することで、同じ計測値が同じ推移をたどるのであれば、計測回数は減る。これについて説明する。複数の閾値を差分及び到達最短時間を算出に用いると、計測値がいずれかの閾値に近い場合、次回の計測時刻は、現在時刻との間隔が狭く決定される。他方、選択された一つの閾値を上記算出に用いると、計測値がいずれかの閾値に近い場合であっても、選択されている閾値からは遠く、かつ選択されていない閾値に近い場合には、次回の計測時刻は、現在時刻との間隔が広く決定される。よって、計測の回数は、複数の閾値を差分及び到達最短時間を算出に用いる場合よりも、選択された一つの閾値を用いる方が少なくなる。そのため、さらに無駄な計測による消費電力の削減を行うことができる。
【0100】
図8は、実施例2のセンサ装置を用いた場合の、9時30分から13時30分までの計測値を示すグラフである。制御閾値の上限を35℃、下限を30℃としており、計測値が35℃を超えると窓を開けるように制御し、計測値が30℃を下回ると温室の窓を閉じるように制御するよう設定されている。この30℃、35℃という制御閾値の決定は、ユーザの経験即に基づくものである。実施例1に比べて計測回数が減っていることがわかる。
【0101】
実施例2のセンサ装置では、1日の計測回数および送信回数は比較例の約15%の回数、実施例1の約39%の回数となった。このときの消費電力量は、比較例の約18%、実施例1の約43%であった。また、電池寿命は比較例の約5.6倍、実施例1の約2.3倍)であった。
【0102】
特に、実施例2のセンサ装置では、計測値が閾値付近まで上昇する日中であっても、計測頻度をより低く抑えることができる。9時から17時30分までの間に着目した場合、実施例1の計測回数の約36%となり、大幅に削減できることが確認された。実施例2のセンサ装置を用いると、仮に9時から17時30分の状態が1日中継続するとした場合でも、消費電力量は比較例のセンサの約31%になり、電池寿命は比較例のセンサの約3.2倍となる。
【0103】
(実施例3)
実施例3のセンサ装置では、実施例1のセンサ装置の構成に加え、計測値履歴から求めた、窓を開けてから変動する計測値の最大量を、管理値(40℃)から引いた計測閾値(第1の値、37.5℃)を求め、さらに、計測値履歴から求めたセンサ装置にて計測可能な最短時間間隔における計測値の最大変化量を、上記計測閾値から引いた制御閾値(第2の値、37℃)を、窓を開ける制御の閾値として決定した。同様に、計測値履歴から求めた、窓を閉めてから変動する計測値の最大量を、管理値から引いた計測閾値(第1の値、27.5℃)を求め、さらに、計測値履歴から求めたセンサ装置にて計測可能な最短時間間隔における計測値の最大変化量を、上記計測閾値から引いた制御閾値(第2の値、28℃)を、窓を閉める制御の閾値として決定した。
【0104】
図9は、実施例3のセンサ装置を用いた場合の、9時30分から13時30分までの計測値を示すグラフである。グラフにおける横の実線が管理値、点線が計測閾値、一点鎖線が管理値である。なお、図9では、これら閾値は一定(直線)であるが、例えば、計測値履歴を基に、天気、季節、時間帯等によって、計測閾値、管理値を変動させてもよい。
【0105】
実施例3のセンサ装置では、実施例1のセンサ装置と比較して、計測回数および送信回数が少なくなり、電池寿命が長くなる。
【0106】
なお、上記では、上記制御閾値を、窓の開閉のための閾値としているが、上記計測閾値を窓の開閉のための閾値として決定してもよい。
【0107】
(実施例4)
実施例1のセンサ装置では、実施例3のセンサ装置の構成に加え、複数の閾値から一つの閾値を選択し、選択した閾値を用いて、差分及び到達最短時間を算出する。(選択の仕方は実施例2と同様である。)
図10は、実施例4のセンサ装置を用いた場合の、9時30分から13時30分までの計測値を示すグラフである。
【0108】
実施例4のセンサ装置では、実施例2のセンサ装置と比較して、計測回数および送信回数が少なくなり、電池寿命が長くなる。
【0109】
上記では、温度を計測して温室の窓の開閉制御する例を用いて説明したが、センサ装置1、センサ管理システム100は、計測データが緩やかな変化で推移する環境の制御において有用である。有用な環境として、例えば、クリーンルーム、サーバルーム、ビル、オフィス等が挙げられる。クリーンルームにおける温度、湿度、クリーン度を管理範囲に保つために、空調やFFUを制御する場合に有用である。また、サーバルームやビルやオフィスにおける温度、湿度を管理範囲に保つために、空調を制御する場合に有用である。これらは単なる例であり、これら以外でも利用可能である。
【0110】
また、センサ装置1、センサ管理システム100は、緩やかな変化で推移する計測対象を計測するセンサに有用であり、例えば、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、フローセンサ、圧力センサ、地温センサ、パーティクルセンサ等の物理系センサ、COセンサ、pHセンサ、ECセンサ、土壌水分センサ等の化学系センサに、有用である。これらも単なる例であり、これら以外でも適用可能である。
【0111】
なお、センサ装置1及びサーバ装置2の各ブロック、特に、センサ制御部13及びサーバ制御部21は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0112】
すなわち、センサ装置1及びサーバ装置2は、それぞれ、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるセンサ装置1及びサーバ装置2のそれぞれの制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記センサ装置1及びサーバ装置2にそれぞれ供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0113】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0114】
また、上記プログラムコードをネットワークを介して供給してもよい。このネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0115】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、緩やかな変化で推移する計測対象を計測するセンサ、センサ管理システムに有用であり、計測データが緩やかな変化で推移する環境の制御に利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 センサ装置
2 サーバ装置
11 電源部
12 センサ部
13 センサ制御部(センサ制御手段)
14 センサ通信部
15 計測データ記憶部
16 動作設定パラメータ記憶部(変化量記憶部)
17 入力部
21 サーバ制御部
22 サーバ通信部
23 計測データ履歴記憶部
100 センサ管理システム
131 動作設定管理部
132 計測時刻決定部(計測時刻決定手段)
133 センサ通信制御部(センサ通信制御手段)
211 変化量更新部(変化量更新手段)
212 閾値決定部(閾値決定手段)
213 サーバ通信制御部(サーバ通信制御手段)
1311 差分算出部(差分算出手段)
1312 最短時間算出部(最短時間算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象を計測するセンサ部が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出手段と、
上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量を記憶する変化量記憶部と、
上記算出された差分と上記記憶された最大変化量とに基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出手段と、
上記算出された到達最短時間と当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、上記計測対象の次回の計測時刻を決定する計測時刻決定手段と、
上記決定された時刻に、上記計測対象を計測するようセンサ部を制御するセンサ制御手段と、を備えたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
上記変化量記憶部は、複数の経過時間毎に上記最大変化量を記憶しており、
上記最短時間算出手段は、上記算出された差分の値を含む上記最大変化量に対する経過時間のうちの最も小さい経過時間を、上記到達最短時間として算出することを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
上記変化量記憶部は、単位時間当たりの最大変化量を記憶しており、
上記最短時間算出手段は、上記差分を上記単位時間当たりの最大変化量で割った商を、上記到達最短時間として算出することを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
上記所定の閾値を入力する入力部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
上記算出された到達最短時間が、当該センサ装置にて計測可能な最短時間間隔より大きい場合、
上記計測時刻決定手段は、上記算出された到達最短時間未満の時間で次回の計測が行われるように、上記次回の計測時刻を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
上記所定の閾値は複数あり、
上記複数の閾値から一つの閾値を選択する選択手段と、
選択されている閾値と次に選択される次回閾値とを対応づけた閾値対応情報を記憶する閾値対応情報記憶部と、を備え、
上記選択手段は、前回の上記計測値と現在の上記計測値との間に現在選択されている閾値があるとき、上記閾値対応情報から、現在選択されている閾値に対応する次回閾値を抽出して、当該次回閾値を現在選択されている閾値として更新し、
上記差分算出手段及び上記最短時間算出手段は、上記現在選択されている閾値を上記算出に用いることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ装置と、当該センサ装置を管理するサーバ装置とを備えたセンサ管理システムにおいて、
上記センサ装置は、さらに、
上記サーバ装置と通信を行うセンサ通信部と、
上記計測対象を計測した計測値を上記サーバ装置に送信するよう上記センサ通信部を制御するとセンサ通信制御手段と、を備え、
上記サーバ装置は、
上記センサ装置と通信を行うサーバ通信部と、
上記センサ装置から受信した上記計測値から上記計測値履歴を作成し、当該計測値履歴に基づき上記最大変化量を更新する変化量更新手段と、
上記更新された最大変化量を上記センサ装置に送信するよう上記サーバ通信部を制御するサーバ通信制御手段と、を備えたことを特徴とするセンサ管理システム。
【請求項8】
上記サーバ装置は、上記所定の閾値を、上記計測値履歴を基に決定する閾値決定手段を備え、
上記サーバ通信制御手段は、上記決定された所定の閾値を上記センサ装置に送信するよう上記サーバ通信部を制御することを特徴とする請求項7に記載のセンサ管理システム。
【請求項9】
上記サーバ装置は、上記計測対象の計測値が所定の管理値を超えないように、上記計測対象の現在の計測値が上記所定の閾値を超えると、上記計測対象の計測環境を変化させる環境制御手段を備え、
上記閾値決定手段は、上記計測値履歴から求められた、上記環境制御手段が計測環境を変化させてから変動する計測値の最大量を、上記所定の管理値から引いた値を、上記所定の閾値として決定することを特徴とする請求項8に記載のセンサ管理システム。
【請求項10】
上記サーバ装置は、上記計測対象の計測値が所定の管理値を超えないように、上記計測対象の現在の計測値が上記所定の閾値を超えると、上記計測対象の計測環境を変化させる環境制御手段を備え、
上記閾値決定手段は、上記計測値履歴から求められた、上記環境制御手段が上記計測環境を変化させてから変動する計測値の最大量を、上記所定の管理値から引いた第1の値を求め、さらに、上記計測値履歴から求められた、上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔における計測値の最大変化量を、上記第1の値から引いた第2の値を、上記所定の閾値として決定することを特徴とする請求項8に記載のセンサ管理システム。
【請求項11】
計測対象を計測するセンサ装置が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出ステップと、
上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量と、上記算出された差分と、に基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出ステップと、
上記算出された到達最短時間と上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、上記センサ装置の計測時間間隔を決定する決定ステップと、を含むことを特徴とするセンサ装置の制御方法。
【請求項12】
計測対象を計測するセンサ装置が計測した現在の計測値と所定の閾値との差分を算出する差分算出ステップと、
上記計測対象を計測した複数の計測値履歴に基づく、経過時間に対する計測値の最大変化量と、上記算出された差分と、に基づいて、上記計測対象が上記現在の計測値から上記所定の閾値に到達するまでの最短時間である到達最短時間を算出する最短時間算出ステップと、
上記算出された到達最短時間と上記センサ装置にて計測可能な最短時間間隔とのいずれか大きい方の時間から、上記計測対象の次回の計測時刻を決定する計測時刻決定ステップと、
上記決定された時刻に、上記計測対象を計測するようセンサ装置を制御するセンサ制御ステップと、を含むことを特徴とするセンサ装置の制御方法。
【請求項13】
請求項1から6の何れか1項に記載のセンサ装置が備える上記各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79106(P2012−79106A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223906(P2010−223906)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】