説明

センサ装置のためのセンサ要素

本発明は、特に、接触ワイヤから車両へのエネルギー伝達用のセンサ装置のためのセンサ要素およびセンサ要素を備えるカーボン集電器に関する。ここで、センサ要素は、カーボン集電器の長手方向に延びる凹部内に配置された、流体封止されたチューブプロファイルによって形成されており、少なくとも1つの予め定められた切断点が、チューブプロファイルに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置のためのセンサ要素に関し、特に、カテナリーワイヤから車両へのエネルギー伝達用のカーボン集電器のためのセンサ要素、およびセンサ要素を備えるカーボン集電器に関する。ここで、センサ要素は、カーボン集電器の長手方向に延びる凹部内に配置された、流体封止されたチューブプロファイルによって形成されている。
【背景技術】
【0002】
カーボン集電器は、通常、カテナリーワイヤから、例えば電車のような車両へのエネルギー伝達用の、いわゆる摺り板としても用いられる。激しい磨耗または損傷がカーボン集電器に生じている場合、他の事項において、カテナリーワイヤまたは架線に対する大きな損傷が生じ得る。したがって、電車は、通常、センサ装置を備えており、該センサ装置は、カーボン集電器の磨耗限度を超過し、またはカーボン集電器に損傷が発生した場合に、カーボン集電器またはパンタグラフを有する摺り板を降下させる。センサ装置は、カーボン集電器内の流体封止チャネルまたはチューブプロファイルとして構成される、センサ要素を備える。ここで、センサ要素は、圧縮気体によって作動する。磨耗限度に到達してしまった場合、チャネルまたはチューブプロファイルは、粉砕され始め、圧縮気体が流出する。圧力の減少は、センサ装置によって検出され、検出の後に、パンタグラフの降下が実行される。
【0003】
いくつかの事例においては、カーボン集電器において、安定したチューブプロファイルが使用されてきた。このチューブプロファイルは、カーボン集電器の下側部または内部に設けられた、長手方向に延びる凹部内に挿入される。ここで、例えば金属製のチューブによって構成されたチューブプロファイルは、確実に損傷を受けているわけではない、すなわち、センサ装置のトリガと、パンタグラフの降下は、全ての予想される事例においてもたらされるのではないという課題が生じる。例えば、カテナリーワイヤにおける欠陥によって、カーボンの一部がカーボン集電器から脱落した場合、チューブプロファイルは、外部に曝され、ある事例では激しく変形してしまう。特に、十分な弾性を有する金属製のチューブプロファイルの場合、この変形は、圧縮気体の漏れをもたらし得る、チューブプロファイルの壁部に対する直接的な損傷へと必ずしも繋がるものではない。しかしながら、架線への損傷を避けるために、カーボン集電器にこのような損傷が生じた後、パンタグラフを迅速に降下させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、カーボン集電器に損傷が生じた場合において、センサ装置の改善された応答をもたらすセンサ要素、またはセンサ要素を備えるカーボン集電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を備えるセンサ要素、および請求項13の特徴を備えるカーボン集電器によって、解決される。
【0006】
センサ装置用、特に、カテナリーワイヤから車両へのエネルギー伝達用の、本発明に係るセンサ要素は、カーボン集電器の長手方向に延びる凹部に配置可能な、流体封止されたチューブプロファイルから形成され、少なくとも1つの予め定められた切断点が、チューブプロファイルに形成される。
【0007】
深刻な損傷がカーボン集電器に生じた場合のように圧縮気体がチューブプロファイルから流出してしまうことなく、チューブプロファイルが変形することによって、チューブプロファイルに対して張力または曲げ力の負荷が生じる。チューブプロファイル上の予め定められた切断点は、上記のような負荷に反応し、チューブプロファイル壁の開口が予め定められた切断点において迅速且つ高信頼性にて形成されるように、構成される。この開口において、圧縮気体は、チューブプロファイルから流出可能となる。原則として、チューブプロファイルが作製される材料、またはチューブプロファイルが形成される断面形状は、重要な事項ではない。したがって、チューブプロファイルは、円形、多角形、または楕円形の断面形状を有してもよい。
【0008】
ある実施形態において、予め定められた切断点は、他の部分においては均一であるチューブプロファイル壁の厚みが、予め定められた切断点において減ぜられることによって形成される。すなわち、チューブプロファイル壁は、このポイントにて減ぜられた壁の厚みのために、例えばチューブプロファイルの張力または曲げ力が負荷された場合において、チューブプロファイル壁に十分な大きさの開口を形成可能な弱化部を備える。
【0009】
複数の予め定められた切断点がチューブプロファイルの長手方向に沿って形成された場合、特に有利となる。この場合、予め定められた切断点が予想されるカーボン集電器の破断領域に位置することの蓋然性は、単一の予め定められた切断点を備えるチューブプロファイルに比べて、大きく増大することとなる。
【0010】
また、予め定められた切断点は、規則的な態様で互いに離隔してもよい。例えば、予め定められた切断点は、チューブプロファイル上において等間隔の距離で離隔して形成されてもよい。ここで、カーボン集電器からカーボン片の欠損が生じた場合に、予め定められた切断点が損傷部の直近傍に存在することを保証するために、上記距離が選択されてもよい。
【0011】
予め定められた切断点は、チューブプロファイルの外側部に形成された場合、容易に形成され得る。チューブプロファイルは、特に容易には材料を除去することによって、部分的に弱化されてもよい。
【0012】
ある実施形態において、予め定められた切断点は、螺旋(helix)状に形成されてもよい。例えば、螺旋状またはネジ形状、一条または多条ネジ形状であってもよく、また、これらは、異なる傾斜または反対方向に設けられてもよい。
【0013】
また、予め定められた切断点は、チューブプロファイルを横断する方向に形成されてもよい。例えば、チューブプロファイルの弱化部分は、チューブプロファイルを領域で引くことによって形成されてもよい。
【0014】
さらに、予め定められた切断点は、周囲溝として形成されてもよい。周囲溝は、例えば、旋盤加工、ミル加工、研削加工、打撃加工、エッチング、レーザ加工等によって、特に容易に形成することができる。または、周囲溝は、ローリング加工、プレス加工、ローレット加工、スタンピング加工、延伸加工、アップセット加工等によりチューブプロファイルに切り欠き加工を施すことによっても、特に容易に形成することができる。断面形状において、溝は、チューブプロファイルの外側部および/または内側部上において、矩形、三角形、台形、Y字状またはX字状の断面形状を有してもよい。
【0015】
チューブプロファイルは、少なくとも部分的に、波状のチューブとして構成されてもよい。例えば、チューブプロファイルは、連続的または領域において、蛇腹状の形態で、または、いわゆる折り畳みチューブとして構成されてもよい。
【0016】
代替的には、予め定められた切断点は、例えば、チューブプロファイルの長手方向に沿って一以上の部分において壁の厚みを減ずることによって、チューブプロファイルの長手方向に形成されてもよい。長手方向に設けられた予め定められた切断点は、横断方向に設けられた予め定められた切断点と組み合わされてもよく、または、チューブプロファイル上にて自身の上に形成されてもよい。
【0017】
樹脂材料からチューブプロファイルを形成するのみならず、チューブプロファイルは、金属製のチューブによって構成されてもよい。金属製のチューブは、好ましくは、銅から作製される。
【0018】
チューブプロファイルは、円形断面を有するように形成された場合、特にコスト上効率的且つ容易に作成可能である。このようなチューブプロファイルは、準完成品として容易に得ることができ、その後に、予め定められた切断点を、単にチューブプロファイル上に形成すればよい。
【0019】
本発明に係るカーボン集電器は、特に、カテナリーワイヤから車両へエネルギーを伝達するためのものであって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の独創的センサ要素を備える。ここで、センサ要素の予め定められた切断点は、カーボン集電器の摺動接触領域の内側に配置される。これにより、カテナリーワイヤによって引き起こされるカーボン集電器への損傷が生じた場合、センサ要素の迅速な起動が促進されることとなる。
【0020】
カーボン集電器のさらなる有利な実施形態は、請求項1に記載の装置に関連する従属請求項の特徴の記載から現出する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図4の線I−Iに沿って切断した摺り板の断面図を示す。
【図2】チューブプロファイルの側面図を示す。
【図3】図2に示すチューブプロファイルを長手方向に切断した断面図を示す。
【図4】摺り板の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明する。
【0023】
図1は、図4に示す摺り板10の断面図を示しており、摺り板10は、カーボン集電器11および支持プロファイル12から、本質的に構成されている。摺り板10は、固定ブラケット13および14によって、パンタグラフ(図示せず)に固定される。そして、摺動接触領域Aにおいて、カテナリーワイヤ(同様に図示せず)は、電力伝達のために、カーボン集電器11の摺動接触面15に接触可能となっている。さらに、カーボン集電器11の下側部16には、長手方向に延びる凹部17が形成され、該凹部17内に、チューブプロファイル18が挿入される。チューブプロファイル18は、連結線19によって電車のセンサ装置(図示せず)に連結される。圧縮気体は、チューブプロファイル18のチューブプロファイル壁20における開口または貫通孔が存在する部分において、チューブプロファイル18から外部へ流出する。その結果、センサ装置は、摺り板10を有するパンタグラフを降下させ、それによりカテナリーワイヤから分離させる。
【0024】
図2および図3に示されているように、複数の周囲溝22は、チューブプロファイル18、特にその外側部21に形成されており、チューブプロファイル18の長手方向に沿って互いに等間隔の距離で配置されている。溝22の壁領域23において、チューブプロファイル壁20は、チューブプロファイル20の通常の壁領域24と比較して減ぜられた壁の厚みを有するので、溝22は、それぞれ、予め定められた切断点を形成する。チューブプロファイル18に対する張力または曲げ力の負荷によって、溝22の領域において、チューブプロファイル壁20の破断または開口が生じる。チューブプロファイル18は、説明されている実施例では、比較的に弾性的である銅から作製されているので、この構成は、特に有利となる。チューブプロファイル18の内部空間25に存在する圧縮気体は、このような損傷がチューブプロファイル18に生じた場合、該内部空間25から容易に流出し得る。溝22の周囲形状によって、特に、チューブプロファイル18の完全な破断と、その結果生じる圧縮気体の急速な流出が促進される。これにより、狭いクラックが形成されたときと比較して、センサ装置の迅速な応答をもたらすこととなる。
【0025】
カテナリーワイヤの、カーボン集電器11または摺動接触面15に対する全ての接触位置において、信頼性の高いセンサ装置の機能を保障するために、溝22は、チューブプロファイル18の長手方向に亘る摺動接触領域Aの全域に沿って、分配または配置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン集電器(11)の長手方向に延びる凹部(17)に配置可能な、流体封止されたチューブプロファイル(18)によって形成された、センサ装置用、特に、カテナリーワイヤから車両へエネルギーを伝達するためのカーボン集電器用のセンサ要素であって、
少なくとも1つの予め定められた切断点が、前記チューブプロファイルに形成されることを特徴とする、センサ要素。
【請求項2】
前記予め定められた切断点は、均一なチューブプロファイル壁(20)の厚みが、前記予め定められた切断点において減ぜられることによって形成されることを特徴とする、請求項1に記載のセンサ要素。
【請求項3】
複数の前記予め定められた切断点が、前記チューブプロファイル(18)の長手方向に沿って形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のセンサ要素。
【請求項4】
前記予め定められた切断点は、規則的な態様で互いに離隔することを特徴とする、請求項3に記載のセンサ要素。
【請求項5】
前記予め定められた切断点は、前記チューブプロファイル(18)の外側部(21)に形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項6】
前記予め定められた切断点は、螺旋状に形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項7】
前記予め定められた切断点は、前記チューブプロファイル(18)を横断する方向に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項8】
前記予め定められた切断点は、周囲溝(22)として形成されることを特徴とする、請求項6に記載のセンサ要素。
【請求項9】
前記チューブプロファイルは、少なくとも部分的に波状のチューブとして構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項10】
前記予め定められた切断点は、前記チューブプロファイルの長手方向に形成されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項11】
前記チューブプロファイル(18)は、金属製のチューブによって構成されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項12】
前記チューブプロファイル(18)は、円形断面を有するように形成されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のセンサ要素。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のセンサ要素を備えるカーボン集電器(11)、特に、カテナリーワイヤから車両へエネルギーを伝達するためのカーボン集電器であって、
前記センサ要素の予め定められた切断点は、前記カーボン集電器の摺動接触領域(A)の内側に配置されることを特徴とする、カーボン集電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−514048(P2013−514048A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542426(P2012−542426)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067358
【国際公開番号】WO2011/069776
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512139836)ホフマン ウント コンパニー,エレクトロコーレ アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】