センサ装置の取り付け構造
【課題】異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上できるセンサ装置の取り付け構造を提供する。
【解決手段】バンパに形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置をバンパの内面に設けたホルダを介してバンパに取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、センサ装置とホルダには、バンパの内面側から外面側への一方向の外力の印加により、ホルダに対してセンサ装置を、上記一方向のみへ移動自在とする摺動機構が設けられている。そして、センサ装置の一部が貫通孔内に配置され、センサ装置の頭部がバンパの外面と略面一とされている。
【解決手段】バンパに形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置をバンパの内面に設けたホルダを介してバンパに取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、センサ装置とホルダには、バンパの内面側から外面側への一方向の外力の印加により、ホルダに対してセンサ装置を、上記一方向のみへ移動自在とする摺動機構が設けられている。そして、センサ装置の一部が貫通孔内に配置され、センサ装置の頭部がバンパの外面と略面一とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両バンパなど移動体の壁部材に、センサ装置を取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両バンパなど移動体の壁部材に、センサ装置を取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造として、例えば特許文献1に示されるように、壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けてなる構造が知られている。
【0003】
特許文献1では、孔(貫通孔)の設けられたバンパ(壁部材)の内側に、モジュール(センサ装置)をバンパに固定するための保持部分(保持部)が取り付けられている。そして、この保持部分にモジュールを組み付けた状態で、モジュールの一部が孔内に配置され、モジュールの頭部がバンパの外面とほぼ同一平面に配置されるようになっている。このように、壁部材の外面とセンサ装置の頭部を略面一とすると、意匠的に好ましいものとなる。
【特許文献1】特表2001−527480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動体の壁部材として例えば車両バンパの場合、車種によってバンパの厚さが異なったり、同一のバンパでも場所によって厚さが異なる。これに対し、特許文献1に示されるセンサ装置の取り付け構造では、バンパの外面とセンサ装置の頭部の位置関係を略面一とするために、保持部やセンサ装置などを、車種や取り付け部位のバンパ厚に応じて設計しなければならない。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上できるセンサ装置の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の発明は、移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、センサ装置と保持部には、貫通孔に沿う壁部材の内面側から外面側への一方向の外力の印加により、保持部に対してセンサ装置を、上記一方向のみへ移動自在とする摺動機構が設けられ、センサ装置の一部が貫通孔内に配置され、センサ装置の頭部が壁部材の外面と略面一とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、センサ装置と、該センサ装置を壁部材に保持する保持部とに、外力の印加により、貫通孔に沿う方向であって壁部材の内面側から外面側への一方向のみへセンサ装置を移動自在とする摺動機構を設けている。これにより、壁部材へのセンサ装置の取り付け時に、外力の印加によってセンサ装置を上記一方向へ摺動させることができる。この摺動機構により、壁部材の厚さによらず、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とすることができる。また、摺動機構は、上記一方向のみへセンサ装置を移動自在とするように構成されている。したがって、センサ装置を壁部材に取り付けた状態、すなわち上記センサ装置の取り付け構造では、貫通孔を介して壁部材の外面側へ露出するセンサ装置の頭部に、上記一方向とは反対方向(以下、単に反対方向と示す)へ外力が印加されても、摺動機構がセンサ装置を移動させないように働き(センサ装置の移動を規制し)、センサ装置の頭部の位置を壁部材の外面と略面一の状態で保持することができる。このように本発明によれば、異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。また、摺動機構により、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0008】
摺動機構としては、例えば請求項2に記載のように、センサ装置及び保持部の一方に、センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝を連続して設け、センサ装置及び保持部の他方に、係合溝内に挿入配置され、貫通孔に沿う壁部材の外面側から内面側への外力の印加に対し、係合溝を構成する壁面に係合してセンサ装置の位置を保持する突起を設けた構成とすると良い。
【0009】
上記構成では、係合溝を構成する壁面に対する突起の通過抵抗が、貫通孔に沿う一方向のほうが反対方向よりも小さくなっている。これにより、上記一方向への外力の印加により、突起が係合溝を構成する壁面を乗り越え、センサ装置を一方向に摺動させることができる。そして、センサ装置の位置(頭部の位置)を、係合溝のピッチ分ずつ微調整することができる。また、反対方向への外力の印加に対し、センサ装置の移動を規制することができる。
【0010】
次に、請求項3に記載の発明は、移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、センサ装置と保持部には、貫通孔に沿う方向の外力の印加により、保持部に対してセンサ装置を、貫通孔に沿う両方向へ移動自在とする摺動機構が設けられ、センサ装置の一部が貫通孔内に配置され、センサ装置の頭部が壁部材の外面と略面一とされた状態で、センサ装置は保持部に固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、センサ装置と、該センサ装置を壁部材に保持する保持部とに、外力の印加により、貫通孔に沿う両方向(内面側から外面側及び外面側から内面側)にセンサ装置を移動自在とする摺動機構を設けている。これにより、壁部材へのセンサ装置の取り付け時に、外力の印加によってセンサ装置を上記両方向へ摺動させることができる。この摺動機構により、壁部材の厚さによらず、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とすることができる。また、センサ装置の頭部が壁部材の外面と略面一とされた状態で、センサ装置は保持部に固定されている。したがって、センサ装置を壁部材に取り付けた状態、すなわち上記センサ装置の取り付け構造では、貫通孔を介して壁部材の外面側へ露出するセンサ装置の頭部に、上記一方向とは反対方向(以下、単に反対方向と示す)へ外力が印加されても、センサ装置の頭部の位置を壁部材の外面と略面一の状態で保持することができる。このように本発明によれば、異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。また、摺動機構により、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0012】
また、本発明によれば、貫通孔に沿う両方向にセンサ装置を移動させることができるので、壁部材の外面に対するセンサ装置頭部の位置合わせ不良を、一方向のみにセンサ装置を移動させる構成に比べて低減し、好ましくは無くすことができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記反対方向にセンサ装置を移動させることができるので、摺動機構を壊さずにセンサ装置のみを交換(例えば使用中の故障による交換)することも可能である。
【0014】
摺動機構としては、例えば請求項4に記載のように、センサ装置及び保持部の一方に、センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝を連続して設け、センサ装置及び保持部の他方に、係合溝内に挿入配置される突起を設け、該突起が、センサ装置の移動方向における自身の中心に対して対称な略楔形状とされ、係合溝が突起に対応する形状とされた構成とすると良い。
【0015】
上記構成では、係合溝を構成する壁面に対する突起の通過抵抗が、貫通孔に沿う両方向で略等しくなっている。これにより、貫通孔に沿う外力の印加により、突起が係合溝を構成する壁面を乗り越え、センサ装置を両方向に摺動させることができる。そして、センサ装置の位置(頭部の位置)を、係合溝のピッチ分ずつ微調整することができる。
【0016】
なお、摺動機構は、センサ装置に対する外力の印加を受けて、センサ装置を強制的に移動させるものであり、センサ装置を保持部に固定する前の状態であっても、移動可能な外力の印加がセンサ装置になされない限り、センサ装置の頭部の位置は壁部材の外面と略面一の状態で保持される。したがって、保持部へのセンサ装置の固定構造は特に限定されるものではない。例えば請求項5に記載のように、保持部の外面に設けたクリップ部材のばね性により、保持部がセンサ装置に圧接され、これによりセンサ装置が保持部に固定された構成としてもよい。それ以外にも、センサ装置の後端(頭部とは反対側の端部)に当て止めした蓋部材を保持部に固定することで、センサ装置を保持部に固定するようにしても良い。センサ装置に貫通孔12に沿う長孔を設けるとともに保持部にも孔を設け、両孔を介して螺子締結することで、センサ装置を保持部に固定するようにしても良い。さらには、接着固定や溶着固定するようにしても良い。
【0017】
ただし、センサ装置の交換を考慮すると、上記したクリップ部材の場合、クリップ部材を外し、外力の印加により、センサ装置を貫通孔に沿う外面側から内面側の方向へ移動させることで、センサ装置のみを交換することができる。すなわち、交換作業を簡素化することができる。
【0018】
センサ装置としては、移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けられるものであれば採用することができる。例えば請求項6に記載のように、電気信号を超音波振動に変換又は超音波振動を電気信号に変換する超音波素子を含む超音波センサ装置を採用することができる。それ以外にも、圧電素子などを含み、移動体としての車両に適用される衝突検知用センサなどを採用することができる。
【0019】
なお、上記した発明は、請求項7に記載のように、移動体としての車両の、壁部材としてのバンパ、モール、及びボディの少なくとも1つに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態においては、超音波素子を備えるセンサ装置を、移動体としての車両に取り付けてなる取り付け構造を例に挙げて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造が適用された車両のリアバンパ周辺を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。図2においては、保持部材、バンパ、及び保持部材をバンパに固定する接着テープを断面で示している。図3は、図2に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。図3においては、摺動機構を構成する突起及び係止溝のうち、脱落防止用突起の裏に位置するものを破線で示している。図4,5は、センサ装置の概略構成を示す平面図であり、図4は頭部側から見た平面図、図5はケースの側面側から見た平面図である。図6は、保持部材をセンサ装置の挿入側から見た平面図である。図7は、図6に示すVII−VII線に沿う断面図である。図8は、図6に示すVIII−VIII線に沿う断面図である。なお、以下においては、バンパ11の厚さ方向(貫通孔12に沿う方向)を単に貫通方向、該貫通方向に略垂直な方向を単に垂直方向、貫通方向であってバンパ11の内面14側から外面13側への方向を単に前方向、貫通方向であってバンパ11の外面13側から内面14側への方向を単に後方向と示すものとする。
【0021】
センサ装置は、車両の周囲に存在する障害物を検出できるように、車両の前方、後方、或いは四隅側のバンパなどに取り付けられる。本実施形態においては、図1に示すように、センサ装置30が車両10のリア側のバンパ11における両コーナ部とコーナ部間(車両後面)の2箇所の計4箇所に取り付けられている。
【0022】
バンパ11は、ウレタンやポリプロピレン等の樹脂成形品であり、特許請求の範囲に記載の壁部材に相当する。このバンパ11は、センサ装置30の取り付け位置に、外面13から内面14にわたって形成された貫通孔12を有しており、センサ装置30は、その一部が貫通孔12内に挿入された状態でバンパ11の内面14側に配置されている。
【0023】
センサ装置30は超音波センサ装置として構成されており、超音波素子としての圧電素子(図示略)を有している。本実施形態では、内部に圧電素子を有し、一部がバンパ11の貫通孔12内に配置されるセンシング部31、内部に回路基板(図示略)を有する処理部32、及び回路基板(センサ装置30)と外部機器とを電気的に接続するコネクタ部33を有している。
【0024】
センシング部31は、例えばPZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスを焼結体としてなる圧電素子を備えたマイクロフォンや、例えばシリコンゴムからなり、マイクロフォンから周囲への不要振動の伝達を抑制すべく、マイクロフォンの振動面を除く周囲に設けられた防振部材などから構成されている。マイクロフォンは、有底筒状のハウジングの底面部内面に圧電素子を貼り付けた構造となっており、このハウジングの底面部外面が、マイクロフォンの振動面、ひいてはセンサ装置30の頭部34となっている。また、センシング部31は、その外形がバンパ11の貫通孔12の円形断面に対応する略円柱状とされ、その外径は貫通孔12に対して挿入可能に、取り付け公差や製造誤差に基づいて貫通孔12の直径よりも若干小さく設定されている。
【0025】
処理部32は、例えば樹脂からなるケース内に回路基板を有してなる。この回路基板は上記した圧電素子と電気的に接続されており、圧電素子を振動させて超音波を発生するための駆動信号を出力したり、圧電素子に超音波が伝達されて圧電素子に歪みが生じた場合に、圧電効果によって生じる電圧信号を入力処理する回路を有している。また、回路基板は、コネクタ部33を構成する端子とも電気的に接続されており、コネクタ部33の端子を介して図示しないコントローラに接続され、このコントローラにて車両後方及びコーナ部の障害物検出が行われるようになっている。
【0026】
本実施形態において、処理部32を構成するケースの外形は略直方体状とされ、その一面35上にセンシング部31が設けられている。また、センシング部31が設けられた面35に隣接する4つの側面のうちの1つに、コネクタ部33が設けられており、コネクタ部33が設けられた面36を除く側面のうちで相対する一対の側面37に、摺動機構70を構成する突起38がそれぞれ形成されている。なお、突起38(摺動機構70)の詳細については後述する。また、側面37には、脱落防止用突起39が、上記突起38よりも高い高さをもって形成されている。
【0027】
この脱落防止用突起39は、後述するホルダ50を介してセンサ装置30をバンパ11に固定した状態で、摺動機構70によるセンサ装置30の後方向への移動を規制する能力を超える外力が頭部34に印加された際でも、ホルダ50からのセンサ装置30の脱落を防止するためのものである。本実施形態では、図2及び図3に示すように、頭部34側の端部(前端)から貫通方向における所定の範囲が、頭部34から離反するほど垂直方向において側面37から離反するテーパ状とされ、後端側が側面37に略垂直とされた略楔形状となっている。また、貫通方向において、脱落防止用突起39は、図2及び図3に示すように、センサ装置30をバンパ11に固定した状態で、互いに対をなすホルダ50側の脱落防止用突起59よりも前方であって脱落防止用突起59との間に隙間を有する位置となっている。
【0028】
このように構成されるセンサ装置30は、図2に示すように、バンパ11の内面14に設けたホルダ50を介して、バンパ11に固定されている。
【0029】
ホルダ50は、特許請求の範囲に記載の保持部に相当し、センサ装置30をバンパ11の所定位置に保持するためのものである。本実施形態では、バンパ11とは別部材として構成された樹脂成形品のホルダ50を採用している。このホルダ50は、処理部32のケースにおけるセンシング部31が設けられた面35に対応する平面略長方形の底部51を有しており、底部51の略中央にはセンサ装置30(センシング部31)が挿通される貫通孔52が設けられている。また、平面略長方形の底部51の各辺に対応する端面からは、バンパ11との固定面積を増やすためにフランジ部53がそれぞれ延設されている。また、底部51の一面上における周縁には、貫通孔52を取り囲むように所定高さの壁部54が底部51に対して略垂直に設けられている。壁部54は、センサ装置30をホルダ50に取り付ける際には、ガイドとしてセンサ装置30を所定位置に導き、取り付け状態ではセンサ装置30の処理部32を収容する。この壁部54のうち、処理部32のケースにおけるコネクタ部33が設けられた面36と対向する壁部55には、コネクタ部33を外部に引き出すための開口部56が設けられている。また、壁部54のうち、処理部32のケースにおける突起38及び脱落防止用突起39が設けられた側面37と対向する壁部57には、突起38とともに摺動機構70を構成する係合溝58と、脱落防止用突起39に対応する脱落防止用突起59が形成されている。なお、係合溝58(摺動機構70)の詳細については後述する。
【0030】
壁部57は、図7及び図8に示すように、肉厚の厚い厚肉部位57aと、2つの厚肉部位57aに挟まれ、厚肉部位57aよりも肉厚の薄い薄肉部位57bを有しており、これにより、垂直方向において、厚肉部位57aと薄肉部位57bの外面が略面一とされ、内面(センサ装置30との対向面)の位置が互いに異なる位置となっている。この厚肉部位57aの内面には係合溝58がそれぞれ形成され、薄肉部位57bの内面には脱落防止用突起59が形成されている。そして、図3及び図7に示すように、垂直方向において、厚肉部位57aの内面と脱落防止用突起59の頂点位置が略面一となっている。
【0031】
また、脱落防止用突起59は、センサ装置30に設けられた脱落防止用突起39と対をなし、上記したように、ホルダ50を介してセンサ装置30をバンパ11に固定した状態で、摺動機構70によるセンサ装置30の後方向への移動を規制する能力を超える外力が頭部34に印加された際でも、センサ装置30の脱落防止用突起39が当て止まり、ホルダ50からのセンサ装置30の脱落を防止するためのものである。本実施形態では、図2,3,7に示すように、底部51側の端部(前端)が壁部57(薄肉部位57b)の内面に略垂直とされ、後端から貫通方向における所定範囲が、底部51に近いほど垂直方向において壁部57の内面から離反するテーパ状とされた略楔形状となっている。
【0032】
なお、図6及び図7に示す符号60は、射出成形によりホルダ50を形成する際の、脱落防止用突起59を形成するピンの抜き孔を示しており、符号61は、底部51とフランジ部53との間に設けられた凹部を示している。この凹部61により、底部51とフランジ部53との連結部位が薄肉とされ、フランジ部53がバンパ11の内面14に沿って変形しやすいようになっている。
【0033】
このように構成されるホルダ50は、バンパ11の内面14における貫通孔12の周囲に配置された両面接着テープ71により、バンパ11における貫通孔12の中心とホルダ50における貫通孔52の中心が略一致するように、換言すれば貫通孔12の中心とセンサ装置30の頭部34(振動面)の中心が略一致するように、バンパ11の内面14に固定されている。そして、センサ装置30は、後述する摺動機構70により、ホルダ50の所定位置に保持され、貫通孔12の形成されたバンパ11に対し、貫通孔12を介してセンシングが可能(バンパ11を介さずに超音波の送信又は受信が可能)なように、その一部(センシング部31の一部)が貫通孔12の内部に配置された状態で固定されている。また、この固定状態で、バンパ11の外面13と、センサ装置30の頭部34(マイクロフォンの振動面)が略面一となっている。さらには、貫通孔12の壁面(バンパ11)とセンサ装置30の貫通孔12内の配置部位(センシング部31の外周面)との間には、僅かな隙間15が存在している。なお、この隙間15は、意匠性の点から小さいほど良く、上記した防振部材などの構成によっては、隙間15の無い構成としても良い。
【0034】
次に、本実施形態に係るセンサ装置30の取り付け構造の特徴部分である摺動機構70について説明する。摺動機構70は、図2に二点鎖線で示すように、前方向への外力の印加により、バンパ11の内面14に固定されたホルダ50に対して、センサ装置30を前方向のみへ移動自在とすべく、センサ装置30とホルダ50に設けられた機構である。上記したように、本実施形態では、センサ装置30の処理部32におけるケースの側面37に、貫通方向に沿って多数の突起38が連続して設けられ、ホルダ50における壁部57(厚肉部位57a)の内面に、貫通方向に沿って多数の係合溝58が連続して設けられている。
【0035】
突起38は、図3に示すように、貫通方向における頭部34側の端部(前端)から突起頂点までが、頭部34から離反するほど垂直方向において側面37から離反するテーパ状とされ、貫通方向における前端から突起頂点までの長さが後端から突起頂点までの長さよりも長くされた略楔形状となっている。
【0036】
また、係合溝58は、突起38に対応する略楔形状となっている。すなわち、図3に示すように、貫通方向における底部51側の端部(前端)から溝下点(溝頂点)までが、底部51から離反するほど垂直方向において壁部57(厚肉部位57a)の内面(係合溝58のない部位)から離反するテーパ状とされ、貫通方向における前端から溝下点までの長さが後端から溝下点までの長さよりも長くされた略楔形状となっている。さらに、この係合溝58が貫通方向に沿って連続的に形成された係合溝群の長さは、突起38による同方向の突起群の長さよりも長く設定され、本実施形態では、図2及び図3に示すように、貫通方向における係合溝群の中間領域の係合溝58に突起38が挿入配置されている。
【0037】
このように、本実施形態に係る摺動機構70では、係合溝58を構成する壁面に対する突起38の通過抵抗が、後方向よりも前方向で小さくなる。したがって、前方向への外力の印加により、突起38が係合溝58を構成する壁面を乗り越え、センサ装置30を前方向に摺動させることができる。また、センサ装置30(頭部34)の位置を、係合溝58のピッチ分ずつ微調整することができる。さらには、後方向への外力の印加に対し、センサ装置30の移動を規制することができる。
【0038】
次に、センサ装置30のバンパ11への取り付け手順について説明する。先ず、両面接着テープ71により、ホルダ50をバンパ11の内面14に固定する。次に、前方向(図2に示す二点鎖線の矢印方向)に外力を印加して、センサ装置30を、頭部34を先頭としてホルダ50の壁部54における後端(底部51との連結端とは反対側の端部)側から壁部54に囲まれた収容領域内に挿入する。上記外力の印加により、前方向にセンサ装置30を押し進めると、センサ装置30の頭部34は、ホルダ50の底部51における貫通孔52を通過する。また、センサ装置30の処理部32が、壁部54によってガイドされて上記収容領域内に挿入されるとともに、摺動機構70を構成するセンサ装置30の突起38とホルダ50の係合溝58とが互いに噛み合った状態となり、噛み合う係合溝58を変えながら突起38、すなわちセンサ装置30が前方向に摺動する。そして、センサ装置30の頭部34がバンパ11の外面13と略面一となる位置まで、摺動機構70により、センサ装置30を前方向に摺動させる。これにより、上記したセンサ装置30の取り付け構造とすることができる。なお、本実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、センサ装置30の頭部34を当て止めするための部材100を、貫通孔12を塞ぐように、バンパ11の外面13に接触配置し、センサ装置30の頭部34が上記部材100に接触するまで(センサ装置30が前方向に移動しなくなるまで)外力を印加することで、頭部34がバンパ11の外面13と略面一となるようにしている。
【0039】
次に、本実施形態に係るセンサ装置30の取り付け構造の特徴的な効果について説明する。先ず、センサ装置30と、該センサ装置30をバンパ11の所定位置に保持するホルダ50とに、前方向への外力の印加により、前方向のみへセンサ装置30を移動自在とする摺動機構70を設けている。したがって、バンパ11へのセンサ装置30の取り付け時に、センサ装置30への前方向の外力の印加により、センサ装置30を前方向へ摺動させることができる。また、摺動機構70を構成する突起38及び係合溝58を、それぞれ貫通方向に連続して設けており、特に貫通方向において、移動させる側のセンサ装置30の突起群の長さをホルダ50の係合溝群の長さよりも短くしているので、バンパ11の厚さによらず、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とすることができる。また、上記したように、摺動機構70は、センサ装置30をバンパ11に取り付けた状態で、センサ装置30の頭部34に後方向への外力が印加されても、センサ装置30を移動させないように働くので、センサ装置30の頭部34の位置をバンパ11の外面13と略面一の状態で保持することができる。このように本実施形態に係る摺動機構70によれば、異なる厚さのバンパ11に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。
【0040】
また、センサ装置30に外力を印加することで、ホルダ50に対しセンサ装置30をスライドさせればよいので、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0041】
また、摺動機構70として、センサ装置30に突起38を連続して設け、ホルダ50に係合溝58を連続して設けている。したがって、係合溝58のピッチ分ずつ、貫通方向におけるセンサ装置30の位置を微調整することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る摺動機構70は、ホルダ50に対し、センサ装置30を前方向のみに摺動自在とし、後方向への外力の印加に対し、センサ装置30の移動を規制するように構成されている。しかしながら、ホルダ50の壁部54における後端を、垂直方向外側(センサ装置30とは反対側)に押し開くように外力を印加し、摺動機構70を構成する突起38と係合溝58の噛み合いを解除した状態で、後方向への外力をセンサ装置30に印加することで、摺動機構70を壊さずにセンサ装置30のみを交換することも可能である。これにより、車両に取り付け後、ユーザーの使用中にセンサ装置30に故障が生じても、センサ装置30のみを交換することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図9〜図12に基づいて説明する。図9は、第2実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。図10は、図9に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。図10においても、摺動機構を構成する突起及び係止溝のうち、脱落防止用突起の裏に位置するものを破線で示している。図11,12はクリップ部材の概略構成を示す平面図であり、図11はホルダの後端側から見た平面図、図12は長手方向端部側から見た平面図である。
【0044】
第2実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0045】
第1実施形態では、摺動機構70が、センサ装置30を貫通方向のうちの前方向のみに摺動自在に構成されている例を示した。これに対し、本実施形態では、摺動機構70が、センサ装置30を、貫通方向における両方向(前後方向)に摺動自在に構成されている点を第1の特徴とする。また、後述するクリップ部材72のばね性により、ホルダ50がセンサ装置30に圧接され、これによりセンサ装置30がホルダ50に固定されている点を第2の特徴とする。なお、以下に示す例では、摺動機構70を構成する突起38及び係合溝58の形状と、クリップ部材72を新たに備える点を除く構成は、上記した第1実施形態に示すものと同じとしている。
【0046】
本実施形態においても、図9及び図10に示すように、摺動機構70として、センサ装置30の処理部32を構成するケースの側面37に、貫通方向に沿って多数の突起38が連続して設けられている。また、ホルダ50における壁部57(厚肉部位57a)の内面に、貫通方向に沿って多数の係合溝58が連続して設けられている。
【0047】
突起38は、図10に示すように、貫通方向における頭部34側の端部(前端)から突起頂点までの長さと、後端から突起頂点までの長さが略等しくなっている。そして、貫通方向における前端から突起頂点までが頭部34から離反するほど垂直方向において側面37から離反するテーパ状とされ、貫通方向における後端から突起頂点までが頭部34から離反するほど垂直方向において側面37に近づくテーパ状とされた略楔形状となっている。換言すれば、貫通方向における突起38の中心に対して対称な略楔形状となっている。
【0048】
また、係合溝58は、突起38に対応する略楔形状となっている。すなわち、図10に示すように、貫通方向における底部51側の端部(前端)から溝下点(溝頂点)までの長さと、後端から溝下点までの長さが略等しくなっている。そして、貫通方向における前端から溝下点までが、底部51から離反するほど垂直方向において壁部57(厚肉部位57a)の内面(係合溝58のない部位)から離反するテーパ状とされ、貫通方向における後端から溝下点までが、底部51から離反するほど垂直方向において厚肉部位57aの内面に近づくテーパ状とされた略楔形状となっている。さらに、この係合溝58が貫通方向に沿って連続的に形成された係合溝群の長さは、突起38による同方向の突起群の長さよりも長く設定され、本実施形態でも、図9及び図10に示すように、貫通方向における係合溝群の中間領域の係合溝58に突起38が挿入配置されている。
【0049】
このように、本実施形態に係る摺動機構70では、係合溝58を構成する壁面に対する突起38の通過抵抗が、前方向と後方向で略等しくなる。したがって、前方向への外力の印加により、突起38が係合溝58を構成する壁面を乗り越え、センサ装置30を前方向に摺動させ、後方向への外力の印加により、突起38が係合溝58を構成する壁面を乗り越え、センサ装置30を後方向に摺動させることができる。すなわち、センサ装置30を前後方向に摺動させることができる。また、センサ装置30(頭部34)の位置を、係合溝58のピッチ分ずつ微調整することができる。
【0050】
クリップ部材72は、ホルダ50の外面に配置され、自身のばね性によりホルダ50をセンサ装置30に圧接させて、これによりセンサ装置30をホルダ50、ひいてはバンパ11に固定するためのものである。本実施形態では、図9,11,12に示すように、クリップ部材72が、平面略長方形の平板部位72aと、該平板部位72aの互いに対向する短手辺の端面から延設され、平板部位72aに対して折曲された脚部72bを有している。なお、脚部72bは各辺に対して2本ずつ設けられ、クリップ部材72は計4本の脚部72bを有している。
【0051】
そして、このように構成されたクリップ部材72は、図9に示すように、ホルダ50の壁部54の後端(底部51との連結端とは反対側の端部)上に平板部位72aが配置され、係合溝58の設けられた壁部57の外面に脚部72bがそれぞれ接触されている。そして、自身のばね性により、壁部57に対して、内側(センサ装置30側)方向への応力を付与し、これにより、壁部57がセンサ装置30の処理部32のケース外面に圧接され、より詳しくは、突起38と係合溝58が強く噛み合った状態とされ、これによりセンサ装置30の貫通方向への移動が規制されている。すなわち、頭部34がバンパ11の外面13と略面一とされた状態で、センサ装置30がホルダ50、ひいてはバンパ11に固定されている。
【0052】
このように本実施形態においては、センサ装置30と、該センサ装置30をバンパ11の所定位置に保持するホルダ50とに、前後方向の外力の印加により、前後方向へセンサ装置30を移動自在とする摺動機構70を設けている。したがって、バンパ11へのセンサ装置30の取り付け時に、センサ装置30への前方向及び後方向の少なくとも一方の外力の印加により、センサ装置30を外力の印加方向に摺動させることができる。また、摺動機構70を構成する突起38及び係合溝58を、それぞれ貫通方向に連続して設けており、特に貫通方向において、移動させる側のセンサ装置30の突起群の長さをホルダ50の係合溝群の長さよりも短くしているので、バンパ11の厚さによらず、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とすることができる。また、センサ装置30の頭部34がバンパ11の外面13と略面一とされた状態で、クリップ部材72のばね性により、ホルダ50をセンサ装置30に圧接させ、これによりセンサ装置30をホルダ50に固定している。したがって、センサ装置30の頭部34に後方向への外力が印加されても、センサ装置30の頭部34の位置をバンパ11の外面13と略面一の状態で保持することができる。このように本実施形態に係る摺動機構70及びクリップ部材72によれば、異なる厚さのバンパ11に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。
【0053】
また、センサ装置30に外力を印加することで、ホルダ50に対しセンサ装置30をスライドさせればよいので、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0054】
また、摺動機構70として、センサ装置30に突起38を連続して設け、ホルダ50に係合溝58を連続して設けている。したがって、係合溝58のピッチ分ずつ、貫通方向におけるセンサ装置30の位置を微調整することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る摺動機構70によれば、前後方向にセンサ装置30を移動させることができるので、バンパ11の外面13に対するセンサ装置頭部34の位置合わせ不良を、前方向のみにセンサ装置30を移動自在とする構成に比べて低減し、好ましくは無くすことができる。
【0056】
また、本実施形態に係る摺動機構70によれば、後方向にセンサ装置30を移動させることができるので、摺動機構70を壊さずにセンサ装置30のみを交換することも可能である。したがって、車両に取り付け後、ユーザーの使用中にセンサ装置30に故障が生じても、センサ装置30のみを交換することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、ホルダ50へのセンサ装置30の固定として、クリップ部材72を適用する例を示した。しかしながら、摺動機構70は、センサ装置30に対する外力の印加を受けて、センサ装置30を強制的に移動させるものであり、センサ装置30をホルダ50に固定する前の状態であっても、移動可能な外力の印加がセンサ装置30になされない限り、センサ装置30の頭部34の位置はバンパ11の外面13と略面一の状態で保持される。したがって、ホルダ50へのセンサ装置30の固定は特に限定されるものではない。例えば、上記したクリップ部材72以外にも、センサ装置30の後端(頭部34とは反対側の端部)に当て止めした蓋部材をホルダ50に固定することで、センサ装置30をホルダ50に固定するようにしても良い。また、センサ装置30に貫通孔12に沿う長孔を設けるとともにホルダ50にも孔を設け、両孔を介して螺子締結することで、センサ装置30をホルダ50に固定するようにしても良い。さらには、接着固定や溶着固定するようにしても良い。しかしながら、クリップ部材72の場合、クリップ部材72をホルダ50から外し、後方向の外力の印加によりセンサ装置30を後方向へ移動させることで、センサ装置30のみを交換することができる。すなわち、センサ装置30の交換作業を簡素化することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0059】
本実施形態では、移動体として車両の例を挙げたが、車両以外の移動体に適用することもできる。また、壁部材として車両のバンパを採用する例を示したが、バンパに限定されるものではなく、車両のボディ(金属製の薄板)でも良いし、バンパやボディの一部に配置される樹脂製のモールでも良い。
【0060】
本実施形態では、センサ装置として、超音波素子としての圧電素子を有する超音波センサ装置の例を示したが、センサ素子やセンサ装置は上記例に限定されるものではない。移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けられるものであれば採用することができる。例えば圧電素子による衝突センサ装置や光学的なセンサ装置などに対しても、本発明の取り付け構造を適用することで同等の効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態では、保持部としてのホルダ50が、壁部材としてのバンパ11とは別部材として構成され、両面接着テープ71により、バンパ11の内面14に接着固定される例を示した。しかしながら、保持部としては、バンパ11(壁部材)の一部として一体成形された構成も採用することができる。また、別部材としてのホルダ50のバンパ11への固定方法も上記例に限定されるものではない。例えば、液状の接着剤の塗布や螺子締結などを採用することができる。
【0062】
本実施形態では、摺動機構70として、センサ装置30に突起38が設けられ、ホルダ50に係合溝58が設けられる例を示した。しかしながら、センサ装置30に係合溝が設けられ、ホルダ50に突起が設けられた構成を採用することもできる。いずれにせよ、移動させるセンサ装置30側の摺動機構70の構成要素の形成範囲の長さを、ホルダ50側の摺動機構70の構成要素の形成範囲の長さよりも短くすれば、異なる厚さのバンパ11(壁部材)に対応することができる。したがって、例えばセンサ装置30に設ける突起38の数は、貫通方向において1つでも良い。
【0063】
第1実施形態では、センサ装置30を前方向のみに摺動自在とする摺動機構70を採用し、この摺動機構70により、ホルダ50に対してセンサ装置30が固定される例を示した。たしかに、バンパ11(壁部材)への取り付け状態では、内面14側から前方向の外力がセンサ装置30に印加されることは先ずありえないため、上記摺動機構70によれば、ホルダ50に対してセンサ装置30を固定することができる。しかしながら、第1実施形態に示したセンサ装置30の取り付け構造に、第2実施形態に示したクリップ部材72などの固定方法を適用しても良い。これによれば、固定構造をより強固なものとすることができる。
【0064】
本実施形態では、センサ装置30及びホルダ50に脱落防止用突起39,59をそれぞれ設ける例を示した。しかしながら、脱落防止用突起39,59のない構成としても良い。
【0065】
本実施形態では、摺動機構70を構成する突起38が略楔形状とされ、係止溝58が突起38に対応する形状とされた例を示した。しかしながら、各実施形態に示した摺動機構70の構成はその一例に過ぎない。例えば、前方向のみにセンサ装置30を摺動自在とする構成においては、係止溝58を突起38に対応する楔状ではなく、略矩形状としても良い。また、前後方向にセンサ装置30を摺動自在とする構成においては、突起38の形状を例えば半円状とし、係合溝58を該突起38に対応する形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造が適用された車両のリアバンパ周辺を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。
【図3】図2に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。
【図4】センサ装置の概略構成を示す頭部側から見た平面図である
【図5】センサ装置の概略構成を示すケース側面側から見た平面図である
【図6】保持部材をセンサ装置の挿入側から見た平面図である。
【図7】図6に示すVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6に示すVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】第2実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。
【図10】図9に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。
【図11】クリップ部材の概略構成を示すホルダの後端側から見た平面図である。
【図12】クリップ部材の概略構成を示す長手方向端部側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0067】
11・・・バンパ(壁部材)
12・・・貫通孔
13・・・外面
30・・・センサ装置
34・・・頭部
38・・・突起(摺動機構)
50・・・ホルダ(保持部)
58・・・係合溝(摺動機構)
70・・・摺動機構
72・・・クリップ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両バンパなど移動体の壁部材に、センサ装置を取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両バンパなど移動体の壁部材に、センサ装置を取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造として、例えば特許文献1に示されるように、壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けてなる構造が知られている。
【0003】
特許文献1では、孔(貫通孔)の設けられたバンパ(壁部材)の内側に、モジュール(センサ装置)をバンパに固定するための保持部分(保持部)が取り付けられている。そして、この保持部分にモジュールを組み付けた状態で、モジュールの一部が孔内に配置され、モジュールの頭部がバンパの外面とほぼ同一平面に配置されるようになっている。このように、壁部材の外面とセンサ装置の頭部を略面一とすると、意匠的に好ましいものとなる。
【特許文献1】特表2001−527480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動体の壁部材として例えば車両バンパの場合、車種によってバンパの厚さが異なったり、同一のバンパでも場所によって厚さが異なる。これに対し、特許文献1に示されるセンサ装置の取り付け構造では、バンパの外面とセンサ装置の頭部の位置関係を略面一とするために、保持部やセンサ装置などを、車種や取り付け部位のバンパ厚に応じて設計しなければならない。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上できるセンサ装置の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の発明は、移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、センサ装置と保持部には、貫通孔に沿う壁部材の内面側から外面側への一方向の外力の印加により、保持部に対してセンサ装置を、上記一方向のみへ移動自在とする摺動機構が設けられ、センサ装置の一部が貫通孔内に配置され、センサ装置の頭部が壁部材の外面と略面一とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、センサ装置と、該センサ装置を壁部材に保持する保持部とに、外力の印加により、貫通孔に沿う方向であって壁部材の内面側から外面側への一方向のみへセンサ装置を移動自在とする摺動機構を設けている。これにより、壁部材へのセンサ装置の取り付け時に、外力の印加によってセンサ装置を上記一方向へ摺動させることができる。この摺動機構により、壁部材の厚さによらず、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とすることができる。また、摺動機構は、上記一方向のみへセンサ装置を移動自在とするように構成されている。したがって、センサ装置を壁部材に取り付けた状態、すなわち上記センサ装置の取り付け構造では、貫通孔を介して壁部材の外面側へ露出するセンサ装置の頭部に、上記一方向とは反対方向(以下、単に反対方向と示す)へ外力が印加されても、摺動機構がセンサ装置を移動させないように働き(センサ装置の移動を規制し)、センサ装置の頭部の位置を壁部材の外面と略面一の状態で保持することができる。このように本発明によれば、異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。また、摺動機構により、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0008】
摺動機構としては、例えば請求項2に記載のように、センサ装置及び保持部の一方に、センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝を連続して設け、センサ装置及び保持部の他方に、係合溝内に挿入配置され、貫通孔に沿う壁部材の外面側から内面側への外力の印加に対し、係合溝を構成する壁面に係合してセンサ装置の位置を保持する突起を設けた構成とすると良い。
【0009】
上記構成では、係合溝を構成する壁面に対する突起の通過抵抗が、貫通孔に沿う一方向のほうが反対方向よりも小さくなっている。これにより、上記一方向への外力の印加により、突起が係合溝を構成する壁面を乗り越え、センサ装置を一方向に摺動させることができる。そして、センサ装置の位置(頭部の位置)を、係合溝のピッチ分ずつ微調整することができる。また、反対方向への外力の印加に対し、センサ装置の移動を規制することができる。
【0010】
次に、請求項3に記載の発明は、移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、センサ装置と保持部には、貫通孔に沿う方向の外力の印加により、保持部に対してセンサ装置を、貫通孔に沿う両方向へ移動自在とする摺動機構が設けられ、センサ装置の一部が貫通孔内に配置され、センサ装置の頭部が壁部材の外面と略面一とされた状態で、センサ装置は保持部に固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、センサ装置と、該センサ装置を壁部材に保持する保持部とに、外力の印加により、貫通孔に沿う両方向(内面側から外面側及び外面側から内面側)にセンサ装置を移動自在とする摺動機構を設けている。これにより、壁部材へのセンサ装置の取り付け時に、外力の印加によってセンサ装置を上記両方向へ摺動させることができる。この摺動機構により、壁部材の厚さによらず、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とすることができる。また、センサ装置の頭部が壁部材の外面と略面一とされた状態で、センサ装置は保持部に固定されている。したがって、センサ装置を壁部材に取り付けた状態、すなわち上記センサ装置の取り付け構造では、貫通孔を介して壁部材の外面側へ露出するセンサ装置の頭部に、上記一方向とは反対方向(以下、単に反対方向と示す)へ外力が印加されても、センサ装置の頭部の位置を壁部材の外面と略面一の状態で保持することができる。このように本発明によれば、異なる厚さの壁部材に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。また、摺動機構により、センサ装置の頭部を壁部材の外面と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0012】
また、本発明によれば、貫通孔に沿う両方向にセンサ装置を移動させることができるので、壁部材の外面に対するセンサ装置頭部の位置合わせ不良を、一方向のみにセンサ装置を移動させる構成に比べて低減し、好ましくは無くすことができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記反対方向にセンサ装置を移動させることができるので、摺動機構を壊さずにセンサ装置のみを交換(例えば使用中の故障による交換)することも可能である。
【0014】
摺動機構としては、例えば請求項4に記載のように、センサ装置及び保持部の一方に、センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝を連続して設け、センサ装置及び保持部の他方に、係合溝内に挿入配置される突起を設け、該突起が、センサ装置の移動方向における自身の中心に対して対称な略楔形状とされ、係合溝が突起に対応する形状とされた構成とすると良い。
【0015】
上記構成では、係合溝を構成する壁面に対する突起の通過抵抗が、貫通孔に沿う両方向で略等しくなっている。これにより、貫通孔に沿う外力の印加により、突起が係合溝を構成する壁面を乗り越え、センサ装置を両方向に摺動させることができる。そして、センサ装置の位置(頭部の位置)を、係合溝のピッチ分ずつ微調整することができる。
【0016】
なお、摺動機構は、センサ装置に対する外力の印加を受けて、センサ装置を強制的に移動させるものであり、センサ装置を保持部に固定する前の状態であっても、移動可能な外力の印加がセンサ装置になされない限り、センサ装置の頭部の位置は壁部材の外面と略面一の状態で保持される。したがって、保持部へのセンサ装置の固定構造は特に限定されるものではない。例えば請求項5に記載のように、保持部の外面に設けたクリップ部材のばね性により、保持部がセンサ装置に圧接され、これによりセンサ装置が保持部に固定された構成としてもよい。それ以外にも、センサ装置の後端(頭部とは反対側の端部)に当て止めした蓋部材を保持部に固定することで、センサ装置を保持部に固定するようにしても良い。センサ装置に貫通孔12に沿う長孔を設けるとともに保持部にも孔を設け、両孔を介して螺子締結することで、センサ装置を保持部に固定するようにしても良い。さらには、接着固定や溶着固定するようにしても良い。
【0017】
ただし、センサ装置の交換を考慮すると、上記したクリップ部材の場合、クリップ部材を外し、外力の印加により、センサ装置を貫通孔に沿う外面側から内面側の方向へ移動させることで、センサ装置のみを交換することができる。すなわち、交換作業を簡素化することができる。
【0018】
センサ装置としては、移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けられるものであれば採用することができる。例えば請求項6に記載のように、電気信号を超音波振動に変換又は超音波振動を電気信号に変換する超音波素子を含む超音波センサ装置を採用することができる。それ以外にも、圧電素子などを含み、移動体としての車両に適用される衝突検知用センサなどを採用することができる。
【0019】
なお、上記した発明は、請求項7に記載のように、移動体としての車両の、壁部材としてのバンパ、モール、及びボディの少なくとも1つに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態においては、超音波素子を備えるセンサ装置を、移動体としての車両に取り付けてなる取り付け構造を例に挙げて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造が適用された車両のリアバンパ周辺を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。図2においては、保持部材、バンパ、及び保持部材をバンパに固定する接着テープを断面で示している。図3は、図2に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。図3においては、摺動機構を構成する突起及び係止溝のうち、脱落防止用突起の裏に位置するものを破線で示している。図4,5は、センサ装置の概略構成を示す平面図であり、図4は頭部側から見た平面図、図5はケースの側面側から見た平面図である。図6は、保持部材をセンサ装置の挿入側から見た平面図である。図7は、図6に示すVII−VII線に沿う断面図である。図8は、図6に示すVIII−VIII線に沿う断面図である。なお、以下においては、バンパ11の厚さ方向(貫通孔12に沿う方向)を単に貫通方向、該貫通方向に略垂直な方向を単に垂直方向、貫通方向であってバンパ11の内面14側から外面13側への方向を単に前方向、貫通方向であってバンパ11の外面13側から内面14側への方向を単に後方向と示すものとする。
【0021】
センサ装置は、車両の周囲に存在する障害物を検出できるように、車両の前方、後方、或いは四隅側のバンパなどに取り付けられる。本実施形態においては、図1に示すように、センサ装置30が車両10のリア側のバンパ11における両コーナ部とコーナ部間(車両後面)の2箇所の計4箇所に取り付けられている。
【0022】
バンパ11は、ウレタンやポリプロピレン等の樹脂成形品であり、特許請求の範囲に記載の壁部材に相当する。このバンパ11は、センサ装置30の取り付け位置に、外面13から内面14にわたって形成された貫通孔12を有しており、センサ装置30は、その一部が貫通孔12内に挿入された状態でバンパ11の内面14側に配置されている。
【0023】
センサ装置30は超音波センサ装置として構成されており、超音波素子としての圧電素子(図示略)を有している。本実施形態では、内部に圧電素子を有し、一部がバンパ11の貫通孔12内に配置されるセンシング部31、内部に回路基板(図示略)を有する処理部32、及び回路基板(センサ装置30)と外部機器とを電気的に接続するコネクタ部33を有している。
【0024】
センシング部31は、例えばPZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスを焼結体としてなる圧電素子を備えたマイクロフォンや、例えばシリコンゴムからなり、マイクロフォンから周囲への不要振動の伝達を抑制すべく、マイクロフォンの振動面を除く周囲に設けられた防振部材などから構成されている。マイクロフォンは、有底筒状のハウジングの底面部内面に圧電素子を貼り付けた構造となっており、このハウジングの底面部外面が、マイクロフォンの振動面、ひいてはセンサ装置30の頭部34となっている。また、センシング部31は、その外形がバンパ11の貫通孔12の円形断面に対応する略円柱状とされ、その外径は貫通孔12に対して挿入可能に、取り付け公差や製造誤差に基づいて貫通孔12の直径よりも若干小さく設定されている。
【0025】
処理部32は、例えば樹脂からなるケース内に回路基板を有してなる。この回路基板は上記した圧電素子と電気的に接続されており、圧電素子を振動させて超音波を発生するための駆動信号を出力したり、圧電素子に超音波が伝達されて圧電素子に歪みが生じた場合に、圧電効果によって生じる電圧信号を入力処理する回路を有している。また、回路基板は、コネクタ部33を構成する端子とも電気的に接続されており、コネクタ部33の端子を介して図示しないコントローラに接続され、このコントローラにて車両後方及びコーナ部の障害物検出が行われるようになっている。
【0026】
本実施形態において、処理部32を構成するケースの外形は略直方体状とされ、その一面35上にセンシング部31が設けられている。また、センシング部31が設けられた面35に隣接する4つの側面のうちの1つに、コネクタ部33が設けられており、コネクタ部33が設けられた面36を除く側面のうちで相対する一対の側面37に、摺動機構70を構成する突起38がそれぞれ形成されている。なお、突起38(摺動機構70)の詳細については後述する。また、側面37には、脱落防止用突起39が、上記突起38よりも高い高さをもって形成されている。
【0027】
この脱落防止用突起39は、後述するホルダ50を介してセンサ装置30をバンパ11に固定した状態で、摺動機構70によるセンサ装置30の後方向への移動を規制する能力を超える外力が頭部34に印加された際でも、ホルダ50からのセンサ装置30の脱落を防止するためのものである。本実施形態では、図2及び図3に示すように、頭部34側の端部(前端)から貫通方向における所定の範囲が、頭部34から離反するほど垂直方向において側面37から離反するテーパ状とされ、後端側が側面37に略垂直とされた略楔形状となっている。また、貫通方向において、脱落防止用突起39は、図2及び図3に示すように、センサ装置30をバンパ11に固定した状態で、互いに対をなすホルダ50側の脱落防止用突起59よりも前方であって脱落防止用突起59との間に隙間を有する位置となっている。
【0028】
このように構成されるセンサ装置30は、図2に示すように、バンパ11の内面14に設けたホルダ50を介して、バンパ11に固定されている。
【0029】
ホルダ50は、特許請求の範囲に記載の保持部に相当し、センサ装置30をバンパ11の所定位置に保持するためのものである。本実施形態では、バンパ11とは別部材として構成された樹脂成形品のホルダ50を採用している。このホルダ50は、処理部32のケースにおけるセンシング部31が設けられた面35に対応する平面略長方形の底部51を有しており、底部51の略中央にはセンサ装置30(センシング部31)が挿通される貫通孔52が設けられている。また、平面略長方形の底部51の各辺に対応する端面からは、バンパ11との固定面積を増やすためにフランジ部53がそれぞれ延設されている。また、底部51の一面上における周縁には、貫通孔52を取り囲むように所定高さの壁部54が底部51に対して略垂直に設けられている。壁部54は、センサ装置30をホルダ50に取り付ける際には、ガイドとしてセンサ装置30を所定位置に導き、取り付け状態ではセンサ装置30の処理部32を収容する。この壁部54のうち、処理部32のケースにおけるコネクタ部33が設けられた面36と対向する壁部55には、コネクタ部33を外部に引き出すための開口部56が設けられている。また、壁部54のうち、処理部32のケースにおける突起38及び脱落防止用突起39が設けられた側面37と対向する壁部57には、突起38とともに摺動機構70を構成する係合溝58と、脱落防止用突起39に対応する脱落防止用突起59が形成されている。なお、係合溝58(摺動機構70)の詳細については後述する。
【0030】
壁部57は、図7及び図8に示すように、肉厚の厚い厚肉部位57aと、2つの厚肉部位57aに挟まれ、厚肉部位57aよりも肉厚の薄い薄肉部位57bを有しており、これにより、垂直方向において、厚肉部位57aと薄肉部位57bの外面が略面一とされ、内面(センサ装置30との対向面)の位置が互いに異なる位置となっている。この厚肉部位57aの内面には係合溝58がそれぞれ形成され、薄肉部位57bの内面には脱落防止用突起59が形成されている。そして、図3及び図7に示すように、垂直方向において、厚肉部位57aの内面と脱落防止用突起59の頂点位置が略面一となっている。
【0031】
また、脱落防止用突起59は、センサ装置30に設けられた脱落防止用突起39と対をなし、上記したように、ホルダ50を介してセンサ装置30をバンパ11に固定した状態で、摺動機構70によるセンサ装置30の後方向への移動を規制する能力を超える外力が頭部34に印加された際でも、センサ装置30の脱落防止用突起39が当て止まり、ホルダ50からのセンサ装置30の脱落を防止するためのものである。本実施形態では、図2,3,7に示すように、底部51側の端部(前端)が壁部57(薄肉部位57b)の内面に略垂直とされ、後端から貫通方向における所定範囲が、底部51に近いほど垂直方向において壁部57の内面から離反するテーパ状とされた略楔形状となっている。
【0032】
なお、図6及び図7に示す符号60は、射出成形によりホルダ50を形成する際の、脱落防止用突起59を形成するピンの抜き孔を示しており、符号61は、底部51とフランジ部53との間に設けられた凹部を示している。この凹部61により、底部51とフランジ部53との連結部位が薄肉とされ、フランジ部53がバンパ11の内面14に沿って変形しやすいようになっている。
【0033】
このように構成されるホルダ50は、バンパ11の内面14における貫通孔12の周囲に配置された両面接着テープ71により、バンパ11における貫通孔12の中心とホルダ50における貫通孔52の中心が略一致するように、換言すれば貫通孔12の中心とセンサ装置30の頭部34(振動面)の中心が略一致するように、バンパ11の内面14に固定されている。そして、センサ装置30は、後述する摺動機構70により、ホルダ50の所定位置に保持され、貫通孔12の形成されたバンパ11に対し、貫通孔12を介してセンシングが可能(バンパ11を介さずに超音波の送信又は受信が可能)なように、その一部(センシング部31の一部)が貫通孔12の内部に配置された状態で固定されている。また、この固定状態で、バンパ11の外面13と、センサ装置30の頭部34(マイクロフォンの振動面)が略面一となっている。さらには、貫通孔12の壁面(バンパ11)とセンサ装置30の貫通孔12内の配置部位(センシング部31の外周面)との間には、僅かな隙間15が存在している。なお、この隙間15は、意匠性の点から小さいほど良く、上記した防振部材などの構成によっては、隙間15の無い構成としても良い。
【0034】
次に、本実施形態に係るセンサ装置30の取り付け構造の特徴部分である摺動機構70について説明する。摺動機構70は、図2に二点鎖線で示すように、前方向への外力の印加により、バンパ11の内面14に固定されたホルダ50に対して、センサ装置30を前方向のみへ移動自在とすべく、センサ装置30とホルダ50に設けられた機構である。上記したように、本実施形態では、センサ装置30の処理部32におけるケースの側面37に、貫通方向に沿って多数の突起38が連続して設けられ、ホルダ50における壁部57(厚肉部位57a)の内面に、貫通方向に沿って多数の係合溝58が連続して設けられている。
【0035】
突起38は、図3に示すように、貫通方向における頭部34側の端部(前端)から突起頂点までが、頭部34から離反するほど垂直方向において側面37から離反するテーパ状とされ、貫通方向における前端から突起頂点までの長さが後端から突起頂点までの長さよりも長くされた略楔形状となっている。
【0036】
また、係合溝58は、突起38に対応する略楔形状となっている。すなわち、図3に示すように、貫通方向における底部51側の端部(前端)から溝下点(溝頂点)までが、底部51から離反するほど垂直方向において壁部57(厚肉部位57a)の内面(係合溝58のない部位)から離反するテーパ状とされ、貫通方向における前端から溝下点までの長さが後端から溝下点までの長さよりも長くされた略楔形状となっている。さらに、この係合溝58が貫通方向に沿って連続的に形成された係合溝群の長さは、突起38による同方向の突起群の長さよりも長く設定され、本実施形態では、図2及び図3に示すように、貫通方向における係合溝群の中間領域の係合溝58に突起38が挿入配置されている。
【0037】
このように、本実施形態に係る摺動機構70では、係合溝58を構成する壁面に対する突起38の通過抵抗が、後方向よりも前方向で小さくなる。したがって、前方向への外力の印加により、突起38が係合溝58を構成する壁面を乗り越え、センサ装置30を前方向に摺動させることができる。また、センサ装置30(頭部34)の位置を、係合溝58のピッチ分ずつ微調整することができる。さらには、後方向への外力の印加に対し、センサ装置30の移動を規制することができる。
【0038】
次に、センサ装置30のバンパ11への取り付け手順について説明する。先ず、両面接着テープ71により、ホルダ50をバンパ11の内面14に固定する。次に、前方向(図2に示す二点鎖線の矢印方向)に外力を印加して、センサ装置30を、頭部34を先頭としてホルダ50の壁部54における後端(底部51との連結端とは反対側の端部)側から壁部54に囲まれた収容領域内に挿入する。上記外力の印加により、前方向にセンサ装置30を押し進めると、センサ装置30の頭部34は、ホルダ50の底部51における貫通孔52を通過する。また、センサ装置30の処理部32が、壁部54によってガイドされて上記収容領域内に挿入されるとともに、摺動機構70を構成するセンサ装置30の突起38とホルダ50の係合溝58とが互いに噛み合った状態となり、噛み合う係合溝58を変えながら突起38、すなわちセンサ装置30が前方向に摺動する。そして、センサ装置30の頭部34がバンパ11の外面13と略面一となる位置まで、摺動機構70により、センサ装置30を前方向に摺動させる。これにより、上記したセンサ装置30の取り付け構造とすることができる。なお、本実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、センサ装置30の頭部34を当て止めするための部材100を、貫通孔12を塞ぐように、バンパ11の外面13に接触配置し、センサ装置30の頭部34が上記部材100に接触するまで(センサ装置30が前方向に移動しなくなるまで)外力を印加することで、頭部34がバンパ11の外面13と略面一となるようにしている。
【0039】
次に、本実施形態に係るセンサ装置30の取り付け構造の特徴的な効果について説明する。先ず、センサ装置30と、該センサ装置30をバンパ11の所定位置に保持するホルダ50とに、前方向への外力の印加により、前方向のみへセンサ装置30を移動自在とする摺動機構70を設けている。したがって、バンパ11へのセンサ装置30の取り付け時に、センサ装置30への前方向の外力の印加により、センサ装置30を前方向へ摺動させることができる。また、摺動機構70を構成する突起38及び係合溝58を、それぞれ貫通方向に連続して設けており、特に貫通方向において、移動させる側のセンサ装置30の突起群の長さをホルダ50の係合溝群の長さよりも短くしているので、バンパ11の厚さによらず、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とすることができる。また、上記したように、摺動機構70は、センサ装置30をバンパ11に取り付けた状態で、センサ装置30の頭部34に後方向への外力が印加されても、センサ装置30を移動させないように働くので、センサ装置30の頭部34の位置をバンパ11の外面13と略面一の状態で保持することができる。このように本実施形態に係る摺動機構70によれば、異なる厚さのバンパ11に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。
【0040】
また、センサ装置30に外力を印加することで、ホルダ50に対しセンサ装置30をスライドさせればよいので、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0041】
また、摺動機構70として、センサ装置30に突起38を連続して設け、ホルダ50に係合溝58を連続して設けている。したがって、係合溝58のピッチ分ずつ、貫通方向におけるセンサ装置30の位置を微調整することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る摺動機構70は、ホルダ50に対し、センサ装置30を前方向のみに摺動自在とし、後方向への外力の印加に対し、センサ装置30の移動を規制するように構成されている。しかしながら、ホルダ50の壁部54における後端を、垂直方向外側(センサ装置30とは反対側)に押し開くように外力を印加し、摺動機構70を構成する突起38と係合溝58の噛み合いを解除した状態で、後方向への外力をセンサ装置30に印加することで、摺動機構70を壊さずにセンサ装置30のみを交換することも可能である。これにより、車両に取り付け後、ユーザーの使用中にセンサ装置30に故障が生じても、センサ装置30のみを交換することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図9〜図12に基づいて説明する。図9は、第2実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。図10は、図9に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。図10においても、摺動機構を構成する突起及び係止溝のうち、脱落防止用突起の裏に位置するものを破線で示している。図11,12はクリップ部材の概略構成を示す平面図であり、図11はホルダの後端側から見た平面図、図12は長手方向端部側から見た平面図である。
【0044】
第2実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0045】
第1実施形態では、摺動機構70が、センサ装置30を貫通方向のうちの前方向のみに摺動自在に構成されている例を示した。これに対し、本実施形態では、摺動機構70が、センサ装置30を、貫通方向における両方向(前後方向)に摺動自在に構成されている点を第1の特徴とする。また、後述するクリップ部材72のばね性により、ホルダ50がセンサ装置30に圧接され、これによりセンサ装置30がホルダ50に固定されている点を第2の特徴とする。なお、以下に示す例では、摺動機構70を構成する突起38及び係合溝58の形状と、クリップ部材72を新たに備える点を除く構成は、上記した第1実施形態に示すものと同じとしている。
【0046】
本実施形態においても、図9及び図10に示すように、摺動機構70として、センサ装置30の処理部32を構成するケースの側面37に、貫通方向に沿って多数の突起38が連続して設けられている。また、ホルダ50における壁部57(厚肉部位57a)の内面に、貫通方向に沿って多数の係合溝58が連続して設けられている。
【0047】
突起38は、図10に示すように、貫通方向における頭部34側の端部(前端)から突起頂点までの長さと、後端から突起頂点までの長さが略等しくなっている。そして、貫通方向における前端から突起頂点までが頭部34から離反するほど垂直方向において側面37から離反するテーパ状とされ、貫通方向における後端から突起頂点までが頭部34から離反するほど垂直方向において側面37に近づくテーパ状とされた略楔形状となっている。換言すれば、貫通方向における突起38の中心に対して対称な略楔形状となっている。
【0048】
また、係合溝58は、突起38に対応する略楔形状となっている。すなわち、図10に示すように、貫通方向における底部51側の端部(前端)から溝下点(溝頂点)までの長さと、後端から溝下点までの長さが略等しくなっている。そして、貫通方向における前端から溝下点までが、底部51から離反するほど垂直方向において壁部57(厚肉部位57a)の内面(係合溝58のない部位)から離反するテーパ状とされ、貫通方向における後端から溝下点までが、底部51から離反するほど垂直方向において厚肉部位57aの内面に近づくテーパ状とされた略楔形状となっている。さらに、この係合溝58が貫通方向に沿って連続的に形成された係合溝群の長さは、突起38による同方向の突起群の長さよりも長く設定され、本実施形態でも、図9及び図10に示すように、貫通方向における係合溝群の中間領域の係合溝58に突起38が挿入配置されている。
【0049】
このように、本実施形態に係る摺動機構70では、係合溝58を構成する壁面に対する突起38の通過抵抗が、前方向と後方向で略等しくなる。したがって、前方向への外力の印加により、突起38が係合溝58を構成する壁面を乗り越え、センサ装置30を前方向に摺動させ、後方向への外力の印加により、突起38が係合溝58を構成する壁面を乗り越え、センサ装置30を後方向に摺動させることができる。すなわち、センサ装置30を前後方向に摺動させることができる。また、センサ装置30(頭部34)の位置を、係合溝58のピッチ分ずつ微調整することができる。
【0050】
クリップ部材72は、ホルダ50の外面に配置され、自身のばね性によりホルダ50をセンサ装置30に圧接させて、これによりセンサ装置30をホルダ50、ひいてはバンパ11に固定するためのものである。本実施形態では、図9,11,12に示すように、クリップ部材72が、平面略長方形の平板部位72aと、該平板部位72aの互いに対向する短手辺の端面から延設され、平板部位72aに対して折曲された脚部72bを有している。なお、脚部72bは各辺に対して2本ずつ設けられ、クリップ部材72は計4本の脚部72bを有している。
【0051】
そして、このように構成されたクリップ部材72は、図9に示すように、ホルダ50の壁部54の後端(底部51との連結端とは反対側の端部)上に平板部位72aが配置され、係合溝58の設けられた壁部57の外面に脚部72bがそれぞれ接触されている。そして、自身のばね性により、壁部57に対して、内側(センサ装置30側)方向への応力を付与し、これにより、壁部57がセンサ装置30の処理部32のケース外面に圧接され、より詳しくは、突起38と係合溝58が強く噛み合った状態とされ、これによりセンサ装置30の貫通方向への移動が規制されている。すなわち、頭部34がバンパ11の外面13と略面一とされた状態で、センサ装置30がホルダ50、ひいてはバンパ11に固定されている。
【0052】
このように本実施形態においては、センサ装置30と、該センサ装置30をバンパ11の所定位置に保持するホルダ50とに、前後方向の外力の印加により、前後方向へセンサ装置30を移動自在とする摺動機構70を設けている。したがって、バンパ11へのセンサ装置30の取り付け時に、センサ装置30への前方向及び後方向の少なくとも一方の外力の印加により、センサ装置30を外力の印加方向に摺動させることができる。また、摺動機構70を構成する突起38及び係合溝58を、それぞれ貫通方向に連続して設けており、特に貫通方向において、移動させる側のセンサ装置30の突起群の長さをホルダ50の係合溝群の長さよりも短くしているので、バンパ11の厚さによらず、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とすることができる。また、センサ装置30の頭部34がバンパ11の外面13と略面一とされた状態で、クリップ部材72のばね性により、ホルダ50をセンサ装置30に圧接させ、これによりセンサ装置30をホルダ50に固定している。したがって、センサ装置30の頭部34に後方向への外力が印加されても、センサ装置30の頭部34の位置をバンパ11の外面13と略面一の状態で保持することができる。このように本実施形態に係る摺動機構70及びクリップ部材72によれば、異なる厚さのバンパ11に対応でき、且つ、意匠性を向上することができる。
【0053】
また、センサ装置30に外力を印加することで、ホルダ50に対しセンサ装置30をスライドさせればよいので、センサ装置30の頭部34をバンパ11の外面13と略面一とする作業を簡素化することができる。
【0054】
また、摺動機構70として、センサ装置30に突起38を連続して設け、ホルダ50に係合溝58を連続して設けている。したがって、係合溝58のピッチ分ずつ、貫通方向におけるセンサ装置30の位置を微調整することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る摺動機構70によれば、前後方向にセンサ装置30を移動させることができるので、バンパ11の外面13に対するセンサ装置頭部34の位置合わせ不良を、前方向のみにセンサ装置30を移動自在とする構成に比べて低減し、好ましくは無くすことができる。
【0056】
また、本実施形態に係る摺動機構70によれば、後方向にセンサ装置30を移動させることができるので、摺動機構70を壊さずにセンサ装置30のみを交換することも可能である。したがって、車両に取り付け後、ユーザーの使用中にセンサ装置30に故障が生じても、センサ装置30のみを交換することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、ホルダ50へのセンサ装置30の固定として、クリップ部材72を適用する例を示した。しかしながら、摺動機構70は、センサ装置30に対する外力の印加を受けて、センサ装置30を強制的に移動させるものであり、センサ装置30をホルダ50に固定する前の状態であっても、移動可能な外力の印加がセンサ装置30になされない限り、センサ装置30の頭部34の位置はバンパ11の外面13と略面一の状態で保持される。したがって、ホルダ50へのセンサ装置30の固定は特に限定されるものではない。例えば、上記したクリップ部材72以外にも、センサ装置30の後端(頭部34とは反対側の端部)に当て止めした蓋部材をホルダ50に固定することで、センサ装置30をホルダ50に固定するようにしても良い。また、センサ装置30に貫通孔12に沿う長孔を設けるとともにホルダ50にも孔を設け、両孔を介して螺子締結することで、センサ装置30をホルダ50に固定するようにしても良い。さらには、接着固定や溶着固定するようにしても良い。しかしながら、クリップ部材72の場合、クリップ部材72をホルダ50から外し、後方向の外力の印加によりセンサ装置30を後方向へ移動させることで、センサ装置30のみを交換することができる。すなわち、センサ装置30の交換作業を簡素化することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0059】
本実施形態では、移動体として車両の例を挙げたが、車両以外の移動体に適用することもできる。また、壁部材として車両のバンパを採用する例を示したが、バンパに限定されるものではなく、車両のボディ(金属製の薄板)でも良いし、バンパやボディの一部に配置される樹脂製のモールでも良い。
【0060】
本実施形態では、センサ装置として、超音波素子としての圧電素子を有する超音波センサ装置の例を示したが、センサ素子やセンサ装置は上記例に限定されるものではない。移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、壁部材の内面に設けた保持部を介して壁部材に取り付けられるものであれば採用することができる。例えば圧電素子による衝突センサ装置や光学的なセンサ装置などに対しても、本発明の取り付け構造を適用することで同等の効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態では、保持部としてのホルダ50が、壁部材としてのバンパ11とは別部材として構成され、両面接着テープ71により、バンパ11の内面14に接着固定される例を示した。しかしながら、保持部としては、バンパ11(壁部材)の一部として一体成形された構成も採用することができる。また、別部材としてのホルダ50のバンパ11への固定方法も上記例に限定されるものではない。例えば、液状の接着剤の塗布や螺子締結などを採用することができる。
【0062】
本実施形態では、摺動機構70として、センサ装置30に突起38が設けられ、ホルダ50に係合溝58が設けられる例を示した。しかしながら、センサ装置30に係合溝が設けられ、ホルダ50に突起が設けられた構成を採用することもできる。いずれにせよ、移動させるセンサ装置30側の摺動機構70の構成要素の形成範囲の長さを、ホルダ50側の摺動機構70の構成要素の形成範囲の長さよりも短くすれば、異なる厚さのバンパ11(壁部材)に対応することができる。したがって、例えばセンサ装置30に設ける突起38の数は、貫通方向において1つでも良い。
【0063】
第1実施形態では、センサ装置30を前方向のみに摺動自在とする摺動機構70を採用し、この摺動機構70により、ホルダ50に対してセンサ装置30が固定される例を示した。たしかに、バンパ11(壁部材)への取り付け状態では、内面14側から前方向の外力がセンサ装置30に印加されることは先ずありえないため、上記摺動機構70によれば、ホルダ50に対してセンサ装置30を固定することができる。しかしながら、第1実施形態に示したセンサ装置30の取り付け構造に、第2実施形態に示したクリップ部材72などの固定方法を適用しても良い。これによれば、固定構造をより強固なものとすることができる。
【0064】
本実施形態では、センサ装置30及びホルダ50に脱落防止用突起39,59をそれぞれ設ける例を示した。しかしながら、脱落防止用突起39,59のない構成としても良い。
【0065】
本実施形態では、摺動機構70を構成する突起38が略楔形状とされ、係止溝58が突起38に対応する形状とされた例を示した。しかしながら、各実施形態に示した摺動機構70の構成はその一例に過ぎない。例えば、前方向のみにセンサ装置30を摺動自在とする構成においては、係止溝58を突起38に対応する楔状ではなく、略矩形状としても良い。また、前後方向にセンサ装置30を摺動自在とする構成においては、突起38の形状を例えば半円状とし、係合溝58を該突起38に対応する形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造が適用された車両のリアバンパ周辺を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。
【図3】図2に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。
【図4】センサ装置の概略構成を示す頭部側から見た平面図である
【図5】センサ装置の概略構成を示すケース側面側から見た平面図である
【図6】保持部材をセンサ装置の挿入側から見た平面図である。
【図7】図6に示すVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6に示すVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】第2実施形態に係るセンサ装置の取り付け構造の概略を示す部分断面図である。
【図10】図9に示すセンサ装置の取り付け構造のうち、摺動機構周辺を拡大した図である。
【図11】クリップ部材の概略構成を示すホルダの後端側から見た平面図である。
【図12】クリップ部材の概略構成を示す長手方向端部側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0067】
11・・・バンパ(壁部材)
12・・・貫通孔
13・・・外面
30・・・センサ装置
34・・・頭部
38・・・突起(摺動機構)
50・・・ホルダ(保持部)
58・・・係合溝(摺動機構)
70・・・摺動機構
72・・・クリップ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を前記壁部材の内面に設けた保持部を介して前記壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、
前記センサ装置と前記保持部には、前記貫通孔に沿う前記壁部材の内面側から外面側への一方向の外力の印加により、前記保持部に対して前記センサ装置を、前記一方向のみへ移動自在とする摺動機構が設けられ、
前記センサ装置の一部が前記貫通孔内に配置され、前記センサ装置の頭部が前記壁部材の外面と略面一とされていることを特徴とするセンサ装置の取り付け構造。
【請求項2】
前記摺動機構として、
前記センサ装置及び前記保持部の一方には、前記センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝が連続して設けられ、
前記センサ装置及び前記保持部の他方には、前記係合溝内に挿入配置され、前記貫通孔に沿う前記壁部材の外面側から内面側への外力の印加に対し、前記係合溝を構成する壁面に係合して前記センサ装置の位置を保持する突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項3】
移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を前記壁部材の内面に設けた保持部を介して前記壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、
前記センサ装置と前記保持部には、前記貫通孔に沿う方向の外力の印加により、前記保持部に対して前記センサ装置を、前記貫通孔に沿う両方向へ移動自在とする摺動機構が設けられ、
前記センサ装置の一部が前記貫通孔内に配置され、前記センサ装置の頭部が前記壁部材の外面と略面一とされた状態で、前記センサ装置は前記保持部に固定されていることを特徴とするセンサ装置の取り付け構造。
【請求項4】
前記摺動機構として、
前記センサ装置及び前記保持部の一方には、前記センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝が連続して設けられ、
前記センサ装置及び前記保持部の他方には、前記係合溝内に挿入配置される突起が設けられ、
前記突起は、前記センサ装置の移動方向における自身の中心に対して対称な略楔形状とされ、前記係合溝は、前記突起に対応する形状とされていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項5】
前記センサ装置は、前記保持部の外面に設けたクリップ部材のばね性により、前記保持部に固定されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項6】
前記センサ装置は、電気信号を超音波振動に変換又は超音波振動を電気信号に変換する超音波素子を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項7】
前記移動体は車両であり、
前記壁部材は、バンパ、モール、及びボディの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項1】
移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を前記壁部材の内面に設けた保持部を介して前記壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、
前記センサ装置と前記保持部には、前記貫通孔に沿う前記壁部材の内面側から外面側への一方向の外力の印加により、前記保持部に対して前記センサ装置を、前記一方向のみへ移動自在とする摺動機構が設けられ、
前記センサ装置の一部が前記貫通孔内に配置され、前記センサ装置の頭部が前記壁部材の外面と略面一とされていることを特徴とするセンサ装置の取り付け構造。
【請求項2】
前記摺動機構として、
前記センサ装置及び前記保持部の一方には、前記センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝が連続して設けられ、
前記センサ装置及び前記保持部の他方には、前記係合溝内に挿入配置され、前記貫通孔に沿う前記壁部材の外面側から内面側への外力の印加に対し、前記係合溝を構成する壁面に係合して前記センサ装置の位置を保持する突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項3】
移動体の壁部材に形成された貫通孔を介してセンシングするように、センサ装置を前記壁部材の内面に設けた保持部を介して前記壁部材に取り付けてなるセンサ装置の取り付け構造であって、
前記センサ装置と前記保持部には、前記貫通孔に沿う方向の外力の印加により、前記保持部に対して前記センサ装置を、前記貫通孔に沿う両方向へ移動自在とする摺動機構が設けられ、
前記センサ装置の一部が前記貫通孔内に配置され、前記センサ装置の頭部が前記壁部材の外面と略面一とされた状態で、前記センサ装置は前記保持部に固定されていることを特徴とするセンサ装置の取り付け構造。
【請求項4】
前記摺動機構として、
前記センサ装置及び前記保持部の一方には、前記センサ装置の移動方向に沿って多数の係合溝が連続して設けられ、
前記センサ装置及び前記保持部の他方には、前記係合溝内に挿入配置される突起が設けられ、
前記突起は、前記センサ装置の移動方向における自身の中心に対して対称な略楔形状とされ、前記係合溝は、前記突起に対応する形状とされていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項5】
前記センサ装置は、前記保持部の外面に設けたクリップ部材のばね性により、前記保持部に固定されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項6】
前記センサ装置は、電気信号を超音波振動に変換又は超音波振動を電気信号に変換する超音波素子を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【請求項7】
前記移動体は車両であり、
前記壁部材は、バンパ、モール、及びボディの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のセンサ装置の取り付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−71956(P2010−71956A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243079(P2008−243079)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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