説明

ソフトコンタクトレンズ用点眼剤

【課題】ソフトコンタクトレンズの濡れ性を高め、装用時の使用感を改善するソフトコンタクトレンズ用点眼剤を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)ビタミンEを含むソフトコンタクトレンズ用点眼剤において、(B)パンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩から選ばれる1種または2種以上、及び(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したことで、ソフトコンタクトレンズの濡れ性を高め、使用感を改善するソフトコンタクトレンズ用点眼剤を提供できる。さらに、コンドロイチン硫酸又はその塩を配合することで、より効果が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤に関する。さらに詳しくは、ビタミンEを配合したソフトコンタクトレンズ用点眼剤について、ソフトコンタクトレンズに対する濡れ性を改善したソフトコンタクトレンズ用点眼剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンEを含むソフトコンタクトレンズ用点眼剤においては、油溶性ビタミンの配合によりコンタクトレンズの濡れ性が低下し、使用感が悪化するという問題があった。
【0003】
コンタクトレンズの濡れ性を向上させる手段は、種々提案されている。例えば、テルペノイドを有効成分として含有したソフトコンタクトレンズの濡れ性を増強させる方法(特許文献1参照)、テルペノイドと粘稠化剤でコンタクトレンズの濡れを改善する方法(特許文献2参照)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと粘稠化剤でコンタクトレンズに持続的な濡れを付与する方法(特許文献3参照)、クロモグリク酸、ソルビン酸及びクロルフェニラミンでコンタクトレンズの濡れを増強する方法(特許文献4参照)、クロモグリク酸、ソルビン酸を含有し、コンタクトレンズの濡れ性を改善する方法(特許文献5参照)が開示されている。
しかしながら、ビタミンEを含むソフトコンタクトレンズ用点眼剤においては、濡れ性が低下する問題がまだ解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−130667号公報
【特許文献2】特開2006−241085号公報
【特許文献3】WO97/28827号公報
【特許文献4】特開2006−39529号公報
【特許文献5】特開2005−309420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビタミンEを含むソフトコンタクトレンズ用点眼剤においても、ソフトコンタクトレンズの濡れ性を高め、装用時の使用感を改善するソフトコンタクトレンズ用点眼剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ビタミンEを含むソフトコンタクトレンズ用点眼剤において、パンテノール及び/又はパントテン酸類、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合することにより、ソフトコンタクトレンズの濡れ性が上がり、使用感が改善することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って本発明は、下記ソフトコンタクトレンズ用点眼剤を提供する。
[1].(A)ビタミンE、(B)パンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩から選ばれる1種または2種以上、及び(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するソフトコンタクトレンズ用点眼剤。
[2].さらに、コンドロイチン硫酸又はその塩を含有する、[1]記載のソフトコンタクトレンズ用点眼剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ソフトコンタクトレンズ装用時におけるソフトコンタクトレンズの濡れ性が高まり、使用感の良好なソフトコンタクトレンズ用点眼剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(A)ビタミンE
本発明に使用されるビタミンEとしては、例えば、ビタミンEアセテート、ビタミンEサクシネートがある。
ビタミンEの含有量は、例えば、点眼剤中0.001〜0.5W/V%(g/100mL、以下同)であり、好ましくは0.01〜0.1W/V%の範囲である。
【0010】
(B)パンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩
本発明に使用されるパンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩としては、例えば、パンテノール、パントテン酸の他に、パンテチン、パンテテイン、パントテニールアルコール、パントテニールエチルエーテル、パンテテインパントテニールアルコール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等が挙げられる。
パンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩は、通常点眼剤中に0.0001〜0.1W/V%配合することができ、好ましくは0.001〜0.1W/V%の範囲である。
【0011】
(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース
本発明で使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メチルセルロースにヒドロキシプロピル基を導入したセルロースエーテルであり、ヒプロメロースの名称で第15改正日本薬局方等に収載されている。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、例えば、点眼剤中0.01〜10W/V%であり、好ましくは0.01〜5W/V%、より好ましくは0.05〜5W/V%の範囲である。
【0012】
本発明に使用されるコンドロイチン硫酸又はその塩としては、コンドロイチン硫酸それ自体のほかに、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸の塩も含まれる。コンドロイチン硫酸又はその塩の含有量は、通常点眼剤中0.01〜5W/V%であり、好ましくは0.05〜1.0W/V%の範囲である。
【0013】
本発明の点眼剤には、前記成分の他、点眼剤に配合する各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。これらの成分としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤、緩衝剤、粘稠剤、pH調整剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、薬物、水等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、適量を配合することができる。
【0014】
界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、N−アルキレンベタイン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(例えばHCO−60などのポリオキシチレンオキシステアリン酸トリグリセライド)、ポリソルベート80(TO−10などのモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)等が挙げられる。界面活性剤の配合量は、例えば、点眼剤中0.01〜1.0W/V%であり、好ましくは0.05〜0.5W/V%の範囲である。
【0015】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、各種アミノ酸等 (イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等)、トロメタモール等が挙げられる。中でも、低刺激、かつ組成物の防腐効果の点から、トロメタモールが好ましい。さらに、ホウ酸、ホウ砂を併用すると、特に高い防腐効果が得られる。緩衝剤の配合量は、例えば、点眼剤中0.001〜10W/V%であり、好ましくは0.01〜5W/V%の範囲である。
【0016】
粘稠剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠化剤の配合量は、例えば、点眼剤中0.001〜10W/V%であり、好ましくは0.001〜5W/V%、さらに好ましくは0.01〜3W/V%の範囲である。
【0017】
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤を使用することが好ましい。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。この中でも、塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。本発明の点眼剤のpH(20℃)は、4.0〜9.0が好ましく、より好ましくは5.0〜8.0であり、さらに好ましくは5.5〜8.0である。なお、pHの測定は20℃でpH浸透圧計(HOSM−1,東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。pH調整剤の配合量は、例えば、点眼剤中0.00001〜10W/V%、好ましくは0.0001〜5W/V%、さらに好ましくは0.001〜3W/V%の範囲である。
【0018】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等)、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。防腐剤の配合量は、例えば、点眼剤中0.00001〜5W/V%であり、好ましくは0.0001〜3W/V%、さらに好ましくは0.001〜2W/V%の範囲である。
【0019】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。等張化剤の配合量は、例えば、点眼剤中0.001〜5W/V%であり、好ましくは0.01〜3W/V%、さらに好ましくは0.1〜2W/V%の範囲である。
【0020】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。安定化剤の配合量は、例えば、0.001〜5W/V%であり、好ましくは0.01〜3W/V%、さらに好ましくは0.1〜2W/V%の範囲である。
【0021】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール等が挙げられる。清涼化剤の含有量は、例えば、点眼剤中、化合物の総量として、0.0001〜5W/V%であり、より好ましくは0.001〜2W/V%、さらに好ましくは0.005〜1W/V%の範囲である。
【0022】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、他のビタミン類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、)、充血除去剤(例えば、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、エピネフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硝酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン等)、消炎・収斂剤(例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム等)、抗ヒスタミン剤(例えば、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル、マレイン酸クロルフェニラミン等)、アミノ酸(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸等)、サルファ剤、殺菌剤(例えば、イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、抗アレルギー剤(例えば、クロモグリク酸ナトリウム等)を適宜配合することができる。
【0023】
点眼剤中のこれらの成分の含有量は製剤の種類、薬物の種類などに応じて適宜選択され、各種成分の配合量は当該技術分野で既知である。例えば、製剤全体に対して0.0001〜30W/V%、好ましくは、0.001〜10W/V%程度の範囲から選択できる。より具体的には、各成分の含有量は、例えば点眼剤について以下の通りである。
【0024】
ビタミン類であれば、0.0001〜1W/V%であり、好ましくは、0.0001〜0.5W/V%の範囲である。充血除去剤であれば、例えば、0.0001〜0.5W/V%であり、好ましくは、0.0005〜0.3W/V%、さらに好ましくは0.001〜0.1W/V%の範囲である。消炎・収斂剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%であり、好ましくは0.0001〜5W/V%の範囲である。抗ヒスタミン剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%であり、好ましくは0.001〜5W/V%の範囲である。アミノ酸であれば、0.0001〜10W/V%であり、好ましくは0.001〜3W/V%の範囲である。サルファ剤、殺菌剤であれば、例えば、0.00001〜10W/V%であり、好ましくは0.0001〜10W/V%の範囲である。局所麻酔剤であれば、例えば、0.001〜1W/V%であり、好ましくは0.01〜1W/V%の範囲である。抗アレルギー剤であれば、例えば、0.001〜5W/V%であり、好ましくは0.01〜3W/V%の範囲である。
【0025】
本発明の点眼剤の使用形態としては、具体的には、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤、ソフトコンタクトレンズ取り外し液等が挙げられる。
【0026】
本発明の点眼剤は液状であって、その粘度は、点眼剤の場合、1〜50mPa・sが好ましく、1〜20mPa・sがより好ましく、1〜5mPa・sがさらに好ましい。なお、粘度測定は、20℃でE型粘度計(VISCONIC ELD−R,東京計器(株)製)を用いて行う。
【0027】
本発明の点眼剤は、その調製方法については特に制限されるものではないが、例えば、精製水等の水性溶媒等に上記成分、必要に応じて他の成分を所定濃度加えてpHを調整して得ることができる。その後、適当な容器、例えばポリエチレンテレフタレート製の容器等に無菌充填することができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1〜19・比較例1]
<実施例・比較例の調製>
表1〜表5に示す処方に従い、実施例及び比較例の調製を行った。具体的には、実施例1の調製方法を示す。
精製水80mLにパンテノール0.05g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5gを攪拌しながら加えて溶解した後、70℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.2gとビタミンEアセテート0.05gの混合液を攪拌しながら加えて溶解し、pHを調製して点眼剤を調製した。
【0030】
<ソフトコンタクトレンズ濡れ性試験>
コンタクトレンズの装用感に大きく関与するうるおい感の指標として、コンタクトレンズ表面の接触角を測定した。使い捨てソフトコンタクトレンズ(ワンデーアキュビュー,ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)製)上に各実施例を1滴滴下し、その10秒後の接触角を、接触角計(CA−A型,協和界面科学(株)製)にて測定した。接触角は60°以下になると濡れ性の向上によりレンズ装用時の不快感が解消され、潤い感などの使用感が向上することから、接触角60°以下を良好と判定した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】


上記の表1〜3の結果からも明らかなように、比較例に対し、実施例ではソフトコンタクトレンズの濡れ性が顕著に向上していることが確認された。
【0034】
<使用原料>
実施例・比較例にて使用した原料は下記の通りである。
ビタミンEアセテート:理研ビタミン(株)、局外規品
パンテノール:第一ファインケミカル(株)、局外規品
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学工業(株)、メトローズ60SH−4000(日局規格品)
コンドロイチン硫酸ナトリウム:(株)マルハニチロ食品、局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム
【0035】
【表4】

【0036】
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンE、(B)パンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩から選ばれる1種または2種以上、及び(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するソフトコンタクトレンズ用点眼剤。
【請求項2】
さらに、コンドロイチン硫酸又はその塩を含有する、請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ用点眼剤。




【公開番号】特開2011−136923(P2011−136923A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296644(P2009−296644)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】