説明

ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物

【課題】本発明は、ビタミンB2、B12等の有色ビタミンがソフトコンタクトレンズに吸着しないソフトコンタクトレンズ用眼科組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】ビタミンB2、ビタミンB12を含むソフトコンタクトレンズ用眼科組成物において、コンドロイチン硫酸ナトリウムと多価アルコールを配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物に関する。詳しくは、ビタミンB2、ビタミンB12を含むソフトコンタクトレンズ用眼科組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB2、ビタミンB12を含むソフトコンタクトレンズ用点眼剤において、これらの有色ビタミンがソフトコンタクトレンズに吸着・浸透するという問題があった。
【0003】
これまでに、点眼剤中に含有する成分をソフトコンタクトレンズに吸着・浸透させない手段が、種々提案されている。例えば、低pH下でアミノ基を有する塩基性薬物の吸着を両性化合物で抑制する方法(特許文献1参照)、アズレンスルホン酸の吸着を非イオン界面活性剤で抑制する方法(特許文献2参照)、脂溶性ビタミンの吸着を高分子化合物、非イオン界面活性剤で抑制する方法(特許文献3参照)、グリチルリチン酸二カリウムの吸着をアミノ酸等で抑制する方法(特許文献4参照)、アルギン酸の吸着をアミノ酸等で抑制する方法(特許文献5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161455号公報
【特許文献2】特願2009−52967号公報
【特許文献3】特開2001−158734号公報
【特許文献4】特開2001−2563号公報
【特許文献5】特開2008−24701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビタミンB2、B12等の有色ビタミンがソフトコンタクトレンズに吸着しないソフトコンタクトレンズ用眼科組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ビタミンB2、ビタミンB12を含むソフトコンタクトレンズ用眼科組成物において、コンドロイチン硫酸ナトリウムと多価アルコールを配合することにより、ビタミンB2、ビタミンB12のソフトコンタクトレンズへの吸着・浸透が抑制されることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って本発明は、下記ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。
[1](A)ビタミンB2及び/又はビタミンB12
(B)コンドロイチン硫酸又はその塩類
(C)多価アルコール
を含有し、実質的に界面活性剤を含まないソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
[2]pHが5.5〜8である、請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ビタミンB2、B12等の有色ビタミンがソフトコンタクトレンズに吸着しないソフトコンタクトレンズ用眼科組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物は、(A)ビタミンB2類及び/又はビタミンB12類と、(B)コンドロイチン硫酸またはその塩類、及び(C)多価アルコールを含有するものである。
【0010】
(A)ビタミンB2類及び/又はビタミンB12類
本発明のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物に配合するビタミンB2類としては、ビタミンB2類の他に、それらの誘導体、及びそれらの塩が挙げられる。具体的には、フラビンアデニンジヌクレオチド、フラビンモノヌクレオチド、リボフラビン、リン酸リボフラビン、酢酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、これらのナトリウム塩等が例示される。好ましいものとして、フラビンアデニンジヌクレオチドが挙げられる。なお、リボフラビンは、その由来について制限されない。
ビタミンB12類としては、ビタミンB12類の他に、それらの誘導体、及びそれらの塩が挙げられる。具体的には、シアノコバラミン、メコバラミン、ヒドロキソコバラミン、これらの塩酸塩や酢酸塩等が例示される。好ましいものとして、シアノコバラミンが挙げられる。
ビタミンB2類又はビタミンB12類は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、その含有量は、眼科用組成物全量に対して、0.001〜0.5質量%、好ましくは0.002〜0.2質量%、更に好ましくは0.004〜0.1質量%である。ビタミンB2類は角膜の組織呼吸を促進する効果、ビタミンB12類は、調節性眼精疲労の微動調節を改善する効果を有しているが、0.001質量%未満だと、効果が不十分となるおそれがあり、0.5質量%を超えると、副作用の問題が発生するおそれがある。
【0011】
(B)コンドロイチン硫酸またはその塩類
コンドロイチン硫酸またはその塩類としては、コンドロイチン硫酸それ自体の他に、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸の塩も含まれる。コンドロイチン硫酸またはその塩類は、通常眼科用組成物中に0.01〜5.0質量%配合することができ、好ましくは0.05〜1.0質量%の範囲である。
【0012】
(C)多価アルコール
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。特に好ましくは、プロピレングリコール、グリセリンである。多価アルコールの組成物中の配合量は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5.0質量%の範囲である。
【0013】
本発明の眼科用組成物には、前記成分の他、眼科用組成物に配合する各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。これらの成分としては、緩衝剤、粘稠剤、pH調整剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、薬物、水等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、適量を配合することができる。
【0014】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、各種アミノ酸等 (イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等)、トロメタモール等が挙げられる。中でも、低刺激、かつ組成物の防腐効果の点から、トロメタモールが好ましい。さらに、ホウ酸、ホウ砂を併用すると、特に高い防腐効果が得られる。緩衝剤の含有量は、眼科用組成物中0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%である。
【0015】
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤を使用することが好ましい。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。この中でも、塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。本発明の眼科用組成物のpH(20℃)は、4.0〜9.0が好ましく、より好ましくは5.0〜8.0であり、さらに好ましくは5.5〜8.0である。なお、pHの測定は20℃でpH浸透圧計(HOSM−1,東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。pH調整剤の配合量は、例えば、0.00001〜10質量%、好ましくは0.0001〜5質量%、さらに好ましくは0.001〜3質量%である。
【0016】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸又はその塩、パラオキシ安息香酸エステル(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等)、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。防腐剤の配合量は、例えば、0.00001〜5質量%、好ましくは0.0001〜3質量%、さらに好ましくは0.001〜2質量%である。
【0017】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。等張化剤の配合量は、例えば、0.001〜5重慮%、好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
【0018】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。安定化剤の配合量は、例えば、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
【0019】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール等が挙げられる。清涼化剤の含有量は、眼科用組成物中、化合物の総量として、0.0001〜5質量%が好ましく、0.001〜2質量%がより好ましく、0.005〜1質量%がさらに好ましく、0.007〜0.8質量%が特に好ましい。
【0020】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、他のビタミン類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール)、充血除去剤(例えば、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、エピネフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硝酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン等)、消炎・収斂剤(例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム等)、抗ヒスタミン剤(例えば、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル、マレイン酸クロルフェニラミン等)、アミノ酸(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸等)、サルファ剤、殺菌剤(例えば、イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、抗アレルギー剤(例えば、クロモグリク酸ナトリウム等)を適宜配合することができる。
【0021】
眼科用組成物中のこれらの成分の配合量は製剤の種類、薬物の種類などに応じて適宜選択され、各種成分の配合量は当該技術分野で既知である。例えば、製剤全体に対して0.0001〜30質量%、好ましくは、0.001〜10質量%程度の範囲から選択できる。より具体的には、各成分の含有量は、例えば眼科用組成物について以下の通りである。
【0022】
ビタミン類であれば、0.0001〜1質量%、好ましくは、0.0001〜0.5質量%である。充血除去剤であれば、例えば、0.0001〜0.5質量%、好ましくは、0.0005〜0.3質量%、さらに好ましくは0.001〜0.1質量%である。消炎・収斂剤であれば、例えば、0.0001〜10質量%、好ましくは0.0001〜5質量%である。抗ヒスタミン剤であれば、例えば、0.0001〜10質量%、好ましくは0.001〜5質量%である。アミノ酸であれば、0.0001〜10質量%、好ましくは0.001〜3質量%である。サルファ剤、殺菌剤であれば、例えば、0.00001〜10質量%、好ましくは、0.0001〜10質量%である。局所麻酔剤であれば、例えば、0.001〜1質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。抗アレルギー剤であれば、例えば、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%である。
【0023】
本発明の眼科用組成物の使用形態としては、具体的には、ソフトソフトコンタクトレンズ用点眼剤、ソフトコンタクトレンズ装着液、ソフトコンタクトレンズ取り外し液等が挙げられる。
【0024】
本発明の眼科用組成物は液状であって、その粘度は、点眼剤の場合、1〜50mPasが好ましく、1〜20mPasがより好ましく、1〜5mPasがさらに好ましい。なお、粘度測定は20℃でE型粘度計(VISCONIC ELD−R,東京計器(株))を用いて行う。
【0025】
本発明の眼科用組成物は、その調製方法については特に制限されるものではないが、例えば、精製水等の水性溶媒等に上記成分(A)(B)(C)、必要に応じて他の成分を所定濃度加えてpHを調整して得ることができる。その後、適当な容器、例えばポリエチレンテレフタレート製の容器等に無菌充填することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定
されるものではない。
【0027】
<レンズ吸着の評価方法>
表1及び表2に記載の組成物を常法により調製した。組成物5mLに1枚のソフトコンタクトレンズを37℃、7日間浸漬後、レンズの薬物吸着性を評価した。
ソフトコンタクトレンズについては、FDA(米国食品医薬局)の4分類から、グループ4に分類されるアキュビュー(ジョンソン&ジョンソンメディカル(株)製)を用いて評価を行った。
【0028】
<レンズ吸着量の測定>
レンズへの成分吸着量は、HPLCにより組成物中の薬物の定量を行い、浸漬前の薬物の量に対する、浸漬後の薬物の減量分を薬物の吸着量とした。
【0029】
(評価基準)
○:レンズへの浸透・吸着無し
△:レンズへの浸透・吸着がわずかにあり
×:レンズへの浸透・吸着がかなりあり
評価結果は、表中に記載した。
【0030】
【表1】



【0031】
(使用原料)
使用した原料は以下の通りである。
・フラビンアデニンジヌクレオチド:日局規格品、協和発酵バイオ(株)
・シアノコバラミン:日局規格品、DSMニュートリションジャパン(株)
・コンドロイチン硫酸ナトリウム:局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム、(株)マルハニチロ食品
・プロピレングリコール:日局プロピレングリコール、(株)ADEKA
・グリセリン:日局グリセリン、(株)ADEKA
・ポリソルベート80:医薬グレード、日光ケミカルズ(株)
【0032】
【表2】

【0033】
実施例は、比較例に比べ、ソフトコンタクトレンズへの吸着が抑制できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンB2及び/又はビタミンB12
(B)コンドロイチン硫酸又はその塩類
(C)多価アルコール
を含有し、実質的に界面活性剤を含まないソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項2】
pHが5.5〜8である、請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。



【公開番号】特開2011−111420(P2011−111420A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270156(P2009−270156)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】