説明

ソーラーパネルの固定構造

【課題】 本発明は、太陽光発電モジュールや太陽熱温水器等のソーラーパネル下部への風の侵入を防止すると共に、防水層の貫通箇所を無くすことで簡易に設置工事やメンテナンスが行えるソーラーパネルの固定構造を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 陸屋根面1に張設した防水シート2に接合される柱状部材6と、柱状部材6により陸屋根面1に張設した防水シート2とは非接触で支持され、ソーラーパネル10の対向する2辺を所定の高低差をもって支持する一対の長尺架台7とを有し、該長尺架台7はソーラーパネル10が支持される2辺の全長に亘って該ソーラーパネル10が支持される2辺のそれぞれから陸屋根面1に亘って該ソーラーパネル10と該陸屋根面1との間の空間を覆って該ソーラーパネル10下方へ進入する風を減衰させる風除け部7aを有する構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートを絶縁工法により張設した陸屋根面に対して太陽エネルギーを取得するためにソーラーパネルを固定する際のソーラーパネルの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の屋根面に防水層を形成する方法として軟質塩化ビニル等の合成樹脂製の防水シートをコンクリートスラブ、ALC(軽量気泡コンクリート)パネル等の上面に直接張設したり、或いは硬質の発泡性合成樹脂等を介して張設する方法が広く用いられている。
【0003】
この場合、防水シートを屋根面に対して全面的に接着してしまうと地震等により屋根面に変形や移動が生じた際に防水シートが屋根面の変形や移動に追従してしまい、その結果、防水シートに亀裂が生じてしまう虞がある。この問題の解決策としては特許文献1に記載されているような絶縁(浮かし張り)工法が開発されている。
【0004】
一方、防水シートで防水層を形成した陸屋根面に太陽光発電モジュールや太陽熱温水器等のソーラーパネルの載置物を載置する場合の技術として特許文献2に記載されているように屋根面から複数の外部連結体を突出させて該外部連結体に載置物を載置固定する方法が提案されている。
【0005】
この方法によれば、載置物と屋根面(防水シート)とは縁が切れているので防水シートのメンテナンスを容易に行うことが可能であり、例えば物置のような重量物を載置しても荷重は外部連結体から直接梁に伝達されるので防水シートを傷めることが無いという点で有利である。
【0006】
また、特許文献3には太陽電池モジュール支持体の設置手間を軽減出来、しかも防水層の貫通箇所数を少なく出来る取付構造が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−184157号公報
【特許文献2】特開平08−260642号公報
【特許文献3】特開2005−194771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の従来例において、特許文献2の技術では、(1)梁のフランジ上面に載せて固定するので、設置位置が限定される。(2)載置物の大きさと建物のモジュールが対応していない場合に架台での寸法調整が必要である。(3)円筒形の外部連結体を突出させるので突出部周りの防水の収まりが複雑であり、新築時も防水シートのメンテナンス時も手間がかかる。(4)梁をアンカーとするので事前の準備工事が必要となり、当初予定していない部位に載置することが困難であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3の技術では防水層の貫通箇所が発生するため防水処理が必要となる上、太陽電池モジュールの下部へ風が浸入して引き抜き荷重が大きくなり強固な固定構造が要求されるため固定部材の数が増大し、結果的に防水層の貫通箇所が増大して防水処理に手間がかかるという問題があった。
【0010】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、太陽光発電モジュールや太陽熱温水器等のソーラーパネル下部への風の侵入を防止すると共に、防水層の貫通箇所を無くすことで簡易に設置工事やメンテナンスが行えるソーラーパネルの固定構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1の構成は、防水シートを絶縁工法により張設した陸屋根面へのソーラーパネルの固定構造であって、矩形のソーラーパネルと、前記陸屋根面に張設した防水シートに接合される柱状部材と、前記柱状部材の上面に前記陸屋根面に張設した防水シートとは非接触を保って載置され、平行に対峙する一対の長尺架台と、前記一対の長尺架台の上面に載置され、前記ソーラーパネルを所定の傾斜角度をもって支持するパネル支持部材とを有し、前記パネル支持部材は、前記傾斜したソーラパネルの上方の辺の付近において、前記一対の長尺架台のうちの一方の長尺架台と協働して前記ソーラーパネルと前記陸屋根面との間の空間を覆って該ソーラーパネル下方へ進入する風を減衰させる風除け部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第2の構成は、前記第1の構成において、前記防水シートが前記陸屋根面のコンクリート構造体に固定部材により固定される接合板に接合されて張設されており、前記柱状部材は前記接合板の真上で且つ該接合板を前記コンクリート構造体に固定する固定部材を避ける位置に配置して前記防水シートに接合されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第3の構成は、前記第1の構成において、前記防水シートが前記陸屋根面のコンクリート構造体に固定部材により固定される接合板に接合されて張設されており、前記柱状部材は前記接合板を避ける位置に配置して前記防水シートに接合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1の構成によれば、パネル支持部材は、傾斜したソーラパネルの上方の辺の付近において、一対の長尺架台のうちの一方の長尺架台と協働してソーラーパネルと陸屋根面との間の空間を覆って該ソーラーパネル下方へ進入する風を減衰させる風除け部を有するので該ソーラーパネルの下面が強風を直接受けて吹き上げられることが抑制される。従って、比較的固定度の小さな絶縁工法により固定された防水シートに対して、特に大がかりな工事を施すことなく、軽量且つ受風面が広く強風で飛ばされ易いソーラーパネルを高い耐風性能をもって固定することが出来る。
【0015】
また、本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第2の構成によれば、接合板をコンクリート構造体に固定する固定部材の上部に柱状部材が載置されないので接合板を固定している固定部材の取り外しが簡単に行え、防水シートの張り替え等のメンテナンスを容易に行うことが出来る。
【0016】
また、本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第3の構成によれば、接合板の上部に柱状部材が載置されない構成とすることが出来、予め設置された接合板の位置とソーラーパネルに対応する柱状部材の位置とがずれた場合にも適用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図により本発明に係るソーラーパネルの固定構造の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成を示す全体斜視図、図2(a)は本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成を示す断面説明図、図2(b)は柱状部材と長尺部材とパネル支持部材の固定構造を示す分解説明図、図2(c)は柱状部材と防水シートとの間に補強シートを介在させた場合の一例を示す分解説明図、図3(a)は接合板の構成を示す平面図及び側面図、図3(b)は接合板の構成を示す断面図、図4(a),(b)は各種柱状部材の構成を示す平面図及び断面図、図5は長尺部材及びパネル支持部材の一例を示す斜視図、図6は柱状部材と接合板との位置をずらした場合の本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成を示す全体斜視図である。
【0018】
先ず、図1〜図6を用いて本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成について説明する。図1及び図2において、陸屋根面1には防水シート2が絶縁工法により張設されている。ここで、絶縁工法とは、陸屋根面1の防水すべきコンクリート構造体3壁面の所要箇所に接合板4を固定し、このコンクリート構造体3壁面の全面に防水シート2を被せて接合板4に固定することによって、防水シート2の一部のみを固定し残りの大部分は放置して防水シート2を張設したものである。このような技術によれば防水シート2は陸屋根面1に対して点状に接着されるので陸屋根面1に変形や移動が生じた場合であっても防水シート2の非接着部分が変位を吸収するので防水シート2に亀裂が生じる可能性を低減させることが出来る。
【0019】
コンクリート構造体3としては、ALC(軽量気泡コンクリート)パネル、PC(プレキャスト)パネル、鉄筋コンクリートスラブ等が適用出来、これ等のコンクリート構造体3の上に発泡樹脂製の断熱材、モルタル、不燃板等が積層された陸屋根構造にも適用出来るものである。
【0020】
防水シート2としては、軟質ポリ塩化ビニル製シート、ポリエチレン製シート、ポリプロピレン製シート等の熱可塑性合成樹脂シート、或いは非加硫ゴム系シート、ゴムアスファルト系シート等が適用出来る。防水シート2の厚みは、例えば1mm〜2mm程度が適用出来る。
【0021】
接合板4は図3に示すように、鋼板等の金属板、或いは金属板に防水シート2と同一素材のシート片を上面に取り付けたもの或いは同一素材で表面コーティングしたものが適用出来る。接合板4の形状は円形、矩形、帯状等の種々の形状が適用出来、絶縁工法が可能な形状であれば良い。
【0022】
接合板4の外周近傍には固定部材となる皿ネジ5を通す穴4aが形成されている。本実施形態では、円板状の接合板4の外周近傍の3箇所に穴4aが形成され、図4に示す柱状部材6の外径は接合板4の穴4aを避ける位置の真上に該柱状部材6が配置し得る大きさに設定されている(図2及び図3参照)。尚、穴4aを開ける位置は特に限定しない。
【0023】
接合板4をコンクリート構造体3に固定する固定部材としては、カールプラグ、開脚釘等も適用出来、コンクリート構造体3からなる相手部材との関係で必要な引き抜き強度が得られるものを適宜採用することで良い。また、使用する固定部材の本数も必要な引き抜き強度から決定することで良い。
【0024】
接合板4は柱状部材6の設置位置(即ち、ソーラーパネル10の設置位置)を考慮して陸屋根面1への固定位置が予め計画されていても良いし、既存建物へ適用する場合等は、柱状部材6の設置位置(即ち、ソーラーパネル10の設置位置)に関係なく固定された接合板4の位置に応じて柱状部材6の取付位置が決定されても良い。
【0025】
陸屋根面1のコンクリート構造体3に接合板4が固定部材となる皿ネジ5により固定され、該接合板4に防水シート2が接合されて絶縁工法により張設される。接合板4と防水シート2との接合は接着剤による接着であっても良いが、防水シート2と同じ素材で表面コーティングされた接合板4と、防水シート2との間で同じ素材の溶剤を添加した溶着剤を塗布して接合板4と防水シート2とを溶着することが出来る。例えば塩化ビニル製防水シートからなる防水シート2と、塩化ビニル樹脂を表面コーティングした接合板4との間で塩化ビニル溶着剤を塗布して溶着することが出来る。
【0026】
陸屋根面1に張設した防水シート2上には図4に示す柱状部材6が接合される。本実施形態の柱状部材6は接合板4の真上で且つ接合板4をコンクリート構造体3に固定する固定部材となる皿ネジ5を避ける位置に配置して防水シート2に接合される。
【0027】
柱状部材6は防水シート2と同一の素材とすることが出来る。但し、防水シート2と長尺架台7の垂下片からなる風除け部7bとが非接触状態を維持し得る程度の剛性が必要である。そして、柱状部材6と防水シート2との間で同じ素材の溶剤を添加した溶着剤を塗布して柱状部材6と防水シート2とを溶着することが出来る。例えば塩化ビニル製防水シートからなる防水シート2と、塩化ビニル樹脂からなる柱状部材6との間で塩化ビニル溶着剤を塗布して溶着することが出来る。
【0028】
柱状部材6の形状は特に限定しないが、円柱形等の方向性のないものが好ましい。また、図2に示すように、柱状部材6の上端から長尺架台7を固定するためのアンカーボルト8を予め突出させておくのが好ましい。本実施形態の柱状部材6は図4に示すように、所定の位置に貫通孔6aが設けられ、該貫通孔6aの下部にはアンカーボルト8の六角形の頭部8aを嵌入して係止し得る六角形の係止穴6bが連通されている。図4(a)は柱状部材6の中央部に貫通孔6aが一つ設けられた一例であり、図4(b)は柱状部材6の直径上に貫通孔6aが二つ設けられた一例である。
【0029】
接合板4の真上に柱状部材6をセットする場合においては、固定部材となる皿ネジ5を緩める作業に支障のない位置に配置する。柱状部材6の交換メンテナンスは防水シート2と一体的に行う。
【0030】
また、柱状部材6は防水シート2に直接溶着せず、図2(c)に示すように、予め柱状部材6に溶着シート片9を溶着したものを用意しておき、施工現場では防水シート2と溶着シート片9との溶着作業を行うようにしても良い。
【0031】
溶着シート片9及び柱状部材6は防水シート2と同一の素材とすることが出来、柱状部材6と溶着シート片9との間で同じ素材の溶剤を添加した溶着剤を塗布して柱状部材6と溶着シート片9とを溶着し、更に溶着シート片9と防水シート2との間で同じ素材の溶剤を添加した溶着剤を塗布して溶着シート片9と防水シート2とを溶着することが出来る。例えば塩化ビニル製防水シートからなる防水シート2及び溶着シート片9と、塩化ビニル樹脂からなる柱状部材6とのそれぞれの間で塩化ビニル溶着剤を塗布して溶着することが出来る。
【0032】
陸屋根面1に不陸が形成されている場合には、可撓性のある溶着シート片9と防水シート2同士の溶着作業のほうが不陸に対応し易い。また、溶着シート片9の非溶着部分で切り取ることで防水シート2を剥がすことなく柱状部材6の除去が容易に出来る。
【0033】
図1に示す10は太陽エネルギーを取得するための矩形のソーラーパネルであり、その一例としては太陽光発電モジュールや太陽熱温水器等が適用出来る。一対の長尺架台7は柱状部材6の上面に陸屋根面1に張設した防水シート2とは非接触を保って載置されて平行に対峙されている。一対の長尺架台7の上面にはソーラーパネル10を所定の傾斜角度をもって支持するパネル支持部材13が載置され、長尺架台7と共に柱状部材6に固定されている。そして、パネル支持部材13によってソーラーパネル10の対向する2辺が所定の傾斜角度をもって支持されている。
【0034】
一対の長尺架台7及びパネル支持部材13はソーラーパネル10が支持される2辺の全長に亘って該ソーラーパネル10と該陸屋根面1との間の空間を覆って該ソーラーパネル10下方へ進入する風を減衰させる風除け部7b,13bを有する。
【0035】
即ち、パネル支持部材13の風除け部13aは、傾斜したソーラーパネル10の上方の辺(水が流れる場合の水上辺)の付近において、一対の長尺架台7のうちの一方の長尺架台7と協働してソーラーパネル10と陸屋根面1との間の空間を覆ってソーラーパネル10の下方へ進入する風を減衰させる。
【0036】
図5に示す長尺架台7は水平片7aの両端に垂下片からなる風除け部7bを有して断面コ字形状をなしている。またパネル支持部材13は、長尺架台7の水平辺7aに当接する水平片13aと、該水平片13aの両端から起立する異なる高さの一対の起立片からなる風除け部13bと、夫々の起立片からなる風除け部13bの上端から互いに等しい(同一平面上となる)傾斜角度で延伸した一対の支持片13cと、からなり、その長尺方向の長さは長尺架台7の長尺方向の長さに等しい長さを有している。
【0037】
そして、長尺架台7の垂下片からなる風除け部7b及びパネル支持部材13の支持片13cによりソーラーパネル10が所定の傾斜角度をもって支持されたことによって形成された該ソーラーパネル10と該陸屋根面1との間の空間を起立片からなる風除け部13bにより覆って該ソーラーパネル10の下方へ進入する風を減衰させる。
【0038】
ソーラーパネル10を設置する場合には、先ず、陸屋根面1のコンクリート構造体3に皿ネジ5により接合板4を固定し、該接合板4を含む陸屋根面1上の全面に防水シート2を被せて該接合板4の上面に防水シート2を接合する。
【0039】
次に柱状部材6の下面側からアンカーボルト8を貫通孔6aに挿通して該アンカーボルト8の頭部8aを係止穴6bに嵌入して係止させ、接合板4の真上で皿ネジ5を避ける位置で柱状部材6の下面を防水シート2上に接合する。
【0040】
次に長尺架台7及びパネル支持部材13を柱状部材6の上面に載置すると共に、各水平片7a,13aに設けられた貫通孔7a1,13a1に柱状部材6から突出するアンカーボルト8の軸部8bを挿通し、該軸部8bにナット11を螺合締結して長尺架台7及びパネル支持部材13を固定する。
【0041】
次にソーラーパネル10が支持される辺に取り付けられた接続金物12を高さが異なるパネル支持部材13の支持片13cにボルト止めしてソーラーパネル10を所定の傾斜角度で固定する。
【0042】
長尺架台7及びパネル支持部材13の材質としては、ステンレス、亜鉛めっき処理した鋼材等の防錆処理を施した金属が好ましい。ソーラーパネル10を所定の傾斜角度で支持するパネル支持部材13の支持片13c及び起立片からなる風除け部13bと長尺架台7の垂下片からなる風除け部7bにより風の吹き込みを防止する風除け部14が連続的に形成され、これによりソーラーパネル10の下面が強風を直接受けて吹き上げられることがないように構成することが出来る。
【0043】
パネル支持部材13の一対の支持片13cの高さの差は特に制約はないが、地域や方角によって受光効率等を考慮して設計することが出来る。但し、少なくともソーラーパネル10の表面に滴下した雨が滞留することなく流れ落ちるような勾配を確保するのが好ましい。
【0044】
上記構成によれば、ソーラーパネル10を所定の傾斜角度をもって支持する一対のパネル支持部材13と長尺架台7とがソーラーパネル10が支持される辺の全長に亘ってソーラーパネル10と該陸屋根面1との間の空間を覆って該ソーラーパネル10の下方へ進入する風を減衰させる風除け部14を形成することにより該ソーラーパネル10が風によって吹き上げられ難くなり、陸屋根面1に比較的固定力の小さな絶縁工法で固定された防水シート2に対して、軽量且つ受風面が広く風により飛ばされ易いソーラーパネル10を固定する場合であっても、高い耐風性能を維持出来るので安全性が高い。
【0045】
また、接合板4を陸屋根面1のコンクリート構造体3に固定する固定部材となる皿ネジ5の上部に柱状部材6が載置されない構成としたことで接合板4を固定している固定部材となる皿ネジ5の取り外しが簡単に行え、防水シート2の張り替え等のメンテナンスが容易に出来る。
【0046】
また、長尺架台7の垂下片からなる風除け部7bの下部には僅かな隙間が形成されるため陸屋根面1に水勾配があっても水溜りが形成されることが無く、陸屋根面1を屋上として利用する場合にも支障をきたすことがなく美観を損ねることもない。
【0047】
また、長尺架台7の温度変化による伸縮や地震等によって変形が生じても、力が直接接合板4に伝達され防水シート2には伝達されないので、防水シート2が破断する等の虞が無い。
【0048】
図6は防水シート2が陸屋根面1のコンクリート構造体3に固定部材となる皿ネジ5により固定される接合板4に接合されて張設されており、柱状部材6は該接合板4を避ける位置に配置して防水シート2に接合された場合の一例である。また、図2(c)に示して前述したと同様に、防水シート2と柱状部材6との間に補強用の溶着シート片9を介在させることも出来る。
【0049】
上記構成によれば、接合板4の上部に柱状部材6が載置されない構成とすることが出来、予め設置された接合板4の位置とソーラーパネル10に対応する柱状部材6の位置とがずれた場合にも適用出来る。
【0050】
このように構成することにより、長尺架台7の温度変化による伸縮や地震等によって変形が生じても、防水シート2の屋根下地との非接合部(防水シート2の弾性により変形が許容される部分)で変位が吸収されるので、防水シート2に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0051】
次に図7を用いて本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第2実施形態の構成について説明する。図7は本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第2実施形態の構成を示す全体斜視図である。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
本実施形態におけるパネル支持部材21は、一対の長尺架台7の上面に架け渡して載置される水平片21aと、該水平片21aの一端側から起立した起立片21bと、水平片21aの他端側と起立片21bの上端とで支持され所定の傾斜角度を有するパネル支持片21cと、該起立片21bに取り付けられる風除け片21dとを有して構成されている。
【0053】
ソーラーパネル10は、一対の長尺架台7に直交するよう架け渡され固定された一対のパネル支持部材21に傾斜する2辺が支持、固定される。
【0054】
一対のパネル支持部材21の起立片21bには風除け片21dが取り付けられ、該風除け片21dと長尺架台7の垂下片からなる風除け部7bとによって、ソーラーパネル10と陸屋根面1との間の空間を覆って該ソーラーパネル10の下方へ進入する風を減衰させる風除け部14が連続的に形成され、これによりソーラーパネル10と陸屋根面1との空間が覆われ、ソーラーパネル10の下面が強風を直接受けて吹き上げられることがない。
【0055】
即ち、本実施形態のパネル支持部材21も傾斜したソーラーパネル10の上方の辺の付近において、一対の長尺架台7のうちの一方の長尺架台7と協働してソーラーパネル10と陸屋根面1との間の空間を覆ってソーラーパネル10の下方へ進入する風を減衰させる風除け部14を有する構成とされる。
【0056】
パネル支持部材21の水平片21aの両端には長尺架台7の水平片7aにビス固定するための貫通孔21a1が形成されている。貫通孔21a1は起立片21bやパネル支持片21cよりも外側に形成されているため、ビスの着脱が容易で、ソーラーパネル10がパネル支持部材21に取り付けられた状態でも作業することが出来る。
【0057】
パネル支持片21cにはソーラーパネル10をビス固定するための貫通孔21c1が形成されている。貫通孔21c1は水平片21aや起立片21bから幅方向に突出した部分に形成されているため、水平片21aや起立片21bに阻害されることなくビス固定の作業が行える。
【0058】
他の構成については、長尺架台7の水平片7aにパネル支持部材21取り付け用の貫通孔21a1が形成されている以外は、前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【0059】
長尺架台7を3列以上所定間隔で平行に配置してソーラーパネル10を複数列近接して設置する場合、最も風の進入を受け易いのは起立片21b側が他のソーラーパネル10と近接しない列(通常はソーラーパネル10の受光面を南側に向けて配置するので一般には最も北側の列)のソーラーパネル10であり、その他のソーラーパネル10はあまり影響を受けない。従って、風除け片21dは起立片21b側が他のソーラーパネル10と近接しない列にのみ取り付けても良い。このように構成することによりソーラーパネル10設置の手間やコストを低減させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の活用例として、防水シートを絶縁工法により張設した陸屋根面に対して太陽エネルギーを取得するための太陽光発電モジュールや太陽熱温水器等のソーラーパネルを固定する際の該ソーラーパネルの固定構造に適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成を示す全体斜視図である。
【図2】(a)は本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成を示す断面説明図、(b)は柱状部材と長尺部材とパネル支持部材の固定構造を示す分解説明図、(c)は柱状部材と防水シートとの間に補強シートを介在させた場合の一例を示す分解説明図である。
【図3】(a)は接合板の構成を示す平面図及び側面図、(b)は接合板の構成を示す断面図である。
【図4】(a),(b)は各種柱状部材の構成を示す平面図及び断面図である。
【図5】長尺部材及びパネル支持部材の一例を示す斜視図である。
【図6】柱状部材と接合板との位置をずらした場合の本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第1実施形態の構成を示す全体斜視図である。
【図7】本発明に係るソーラーパネルの固定構造の第2実施形態の構成を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1…陸屋根面
2…防水シート
3…コンクリート構造体
4…接合板
4a…穴
5…皿ネジ
6…柱状部材
6a…貫通孔
6b…係止穴
7…長尺架台
7a…水平片
7a1…貫通孔
7b…風除け部
8…アンカーボルト
8a…頭部
8b…軸部
9…溶着シート片
10…ソーラーパネル
11…ナット
12…接続金物
13…パネル支持部材
13a…水平片
13a1…貫通孔
13b…風除け部
13c…支持片
14…風除け部
21パネル支持部材
21a…水平片
21a1…貫通孔
21b…起立片
21c…パネル支持片
21c1…貫通孔
21d…風除け片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートを絶縁工法により張設した陸屋根面へのソーラーパネルの固定構造であって、
矩形のソーラーパネルと、
前記陸屋根面に張設した防水シートに接合される柱状部材と、
前記柱状部材の上面に前記陸屋根面に張設した防水シートとは非接触を保って載置され、平行に対峙する一対の長尺架台と、
前記一対の長尺架台の上面に載置され、前記ソーラーパネルを所定の傾斜角度をもって支持するパネル支持部材と、
を有し、
前記パネル支持部材は、前記傾斜したソーラパネルの上方の辺の付近において、前記一対の長尺架台のうちの一方の長尺架台と協働して前記ソーラーパネルと前記陸屋根面との間の空間を覆って該ソーラーパネル下方へ進入する風を減衰させる風除け部を有することを特徴とするソーラーパネルの固定構造。
【請求項2】
前記防水シートが前記陸屋根面のコンクリート構造体に固定部材により固定される接合板に接合されて張設されており、前記柱状部材は前記接合板の真上で且つ該接合板を前記コンクリート構造体に固定する固定部材を避ける位置に配置して前記防水シートに接合されることを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの固定構造。
【請求項3】
前記防水シートが前記陸屋根面のコンクリート構造体に固定部材により固定される接合板に接合されて張設されており、前記柱状部材は前記接合板を避ける位置に配置して前記防水シートに接合されることを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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