ゾル・ゲル法によるフィッシャー・トロプシュ合成用リン含有アルミナ支持体の製造及びその触媒の製造
本発明は、ゾル・ゲル法によるリンが含有されたリン−アルミナ支持体の製造方法と、前記リン−アルミナ支持体に活性成分としてコバルトが担持されたコバルト/リン−アルミナ触媒に関する。前記リン−アルミナ支持体はゾル・ゲル法により製造され、二重の細孔分布図を持つ広い比表面積及び高いコバルト分散性を有し、それ故、熱及び物質伝達が増加し、アルミナの表面性質を改善することで構造を安定させ、F−T反応中にコバルト成分の酸化を減少させるため、不活性化が減少する。フィッシャー・トロプシュ(F−T)反応が触媒上で行われる場合、前記触媒が、優れた熱安定性を維持し、F−T反応中に生成された水による不活性化を抑制し、一酸化炭素の高い転換率及び液体炭化水素の安定した選択性も得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾル・ゲル法によるリン含有アルミナ支持体の製造方法、コバルトが活性成分として前記支持体に担持されたフィッシャー・トロプシュ(F−T)合成用触媒、及び前記触媒上で、天然ガス、石炭及びバイオマスのガス化(または改質)により製造された合成ガスを利用して液体炭化水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの液体化(GTL)技術の核心工程であるフィッシャー・トロプシュ(F−T)合成は、ドイツの科学者フィッシャーとトロプシュが石炭のガス化により合成ガスから合成燃料を製造する工程を開発することで初めて紹介された。GTL工程は、天然ガスの改質、合成ガスのF−T合成反応、及びF−T生成物の水素化処理の3段階からなる。これらのうち、鉄及びコバルトを触媒として使用して、200〜350℃の反応温度と10〜30atmの圧力で行われるF−T反応は、次の4つの主要反応にて説明することができる。
【0003】
(a)F−T合成での連鎖成長
CO+2H2→−CH2−+H2O △H(227℃)=−165kJ/mol
(b)メタン化
CO+3H2→CH4+H2O △H(227℃)=−215kJ/mol
(c)水性ガス転換反応
CO+H2O→CO2+H2 △H(227℃)=−40kL/mol
(d)ブードア(Boudouard)反応
2CO→C+CO2 △H(227℃)=−134kJ/mol
【0004】
F−T反応のためには、鉄及びコバルト系列の触媒が一般的に使用される。以前は鉄系触媒が使用されたが、今日では、液体燃料及びワックスの生産を増やし、転換率を向上させるために、コバルト系触媒が主に使用されている。鉄系触媒は、様々なF−T触媒のうち最も低価であり、高温でメタン生成が比較的低く、炭化水素のうちオレフィンの選択性が比較的高い。製品は燃料として使用できるほかに、軽質オレフィンまたはαオレフィンとして化学産業での原料として活用できる。一方、アルコール、アルデヒド及びケトンなどの副産物が炭化水素と共に多量に生成される。
【0005】
更に、鉄系の低温F−T触媒は、サソル社のワックス生成のために主に使用される市販品であり、助触媒としてCu及びKの成分からなり、バインダーとしてSiO2を使用して沈殿法により製造される。サソル社の高温F−T触媒は、マグネタイト、K、アルミナ、MgOなどを溶融させて製造される。
【0006】
コバルト系触媒の価格はFe触媒の約200倍以上であるが、比較的に活性及び安定性が高く、CO2の発生が低いと同時に液体パラフィン系炭化水素の生成収率が高い。
【0007】
更に、CH4は高温で多量に生成されるため、低温でのみ使用でき、コバルトが高価であるため、アルミナ、シリカ、チタニアのような高表面積の安定的な支持体上でよく分散される。これは、少量のPt、Ru及びReなどの貴金属が助触媒として更に添加される形で通常使用される。
【0008】
主要生成物である直鎖炭化水素は、Schulz−Flory重合反応速度式により説明される。F−T工程では、60%以上の1次生成物の沸点がディーゼル燃料よりも高い。それ故、ディーゼル燃料は次の水素化分解工程を経て生産され、ワックス成分は脱ろう工程を経て高品質の潤滑油基油に転換される。
【0009】
一般的に、現在の精製プラントに使用される減圧残油の改質工程は、触媒及び工程技術の改善により信頼性のある工程である。しかし、F−T合成油(ワックス)は、精製プラントの改質工程で使用される原料とは、形状、状態及び物性が大きく異なるため、適切な炭化水素改質工程が必要である。F−T反応の1次生成物を処理する工程例としては、水素化分解、脱ろう、異性化、アリル化を含む。F−T反応の主要生成物は、ナフサ/ガソリン、中間留分(高センタン価)、硫黄及び芳香族を含まない液体炭化水素、αオレフィン、含酸素化物、ワックスなどを含む。
【0010】
高価な活性成分を分散させるために使用される一般的な方法としては、アルミナ、シリカ、チタニアなどの高表面積の支持体に、コバルトまたはその他の活性促進物質を添加することで触媒を製造する。具体的には、活性成分であるコバルトの分散を増進させるために、単一成分または混合成分の支持体を利用して商業用の触媒を製造する。しかしながら、コバルトの粒子サイズが類似する場合、F−T反応の活性は支持体の種類によってわずかに変わる[非特許文献1]。一方、F−T反応の活性は、分散及びコバルト成分の粒子サイズによって大きく影響を受けると報告されている[非特許文献2]。しかし、支持体の表面を前処理して、前記支持体の性質を変化させることで、FTS活性と安定性を増進させるための試みが行われている。
【0011】
例えば、コバルトが担持されたアルミナが使用される場合、反応中に生成される水により、γ−アルミナの表面の性質がベーマイトなどに変化し得る。コバルト成分の酸化速度が増加し、前記触媒の活性及び熱安定性が低下し得る。この問題を解決する方法として、シリコン前駆体を使用してアルミナの表面を前処理するため、触媒の安定性を向上させる工程が発表されている[特許文献1]。更に、支持体の水熱安定性を向上させるために、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、ホウ素、ランタンなどの様々な金属で表面を処理する方法が開示されている[特許文献2]。F−T触媒の活性を改善させる別の方法は、二重の多孔性細孔構造のシリカ−アルミナ触媒の製造方法であり、これにより、F−T反応中に生成される高沸点化合物の物質伝達速度を増加させる[特許文献3及び非特許文献3]。
【0012】
しかしながら、これらの技術は、ポリマー基質を使用して二重の多孔性細孔構造支持体を有する支持体を形成したり、異なる細孔サイズを有するアルミナ−シリカ支持体を製造した後、これらを単純に混合する工程、前記二重の多孔性細孔構造支持体を使用してコバルトなどの活性成分を担持する工程のような複雑な合成工程を含む。
【0013】
シリカ支持体は、アルミナ支持体と比較して、コバルトと支持体との間の強い相互作用を示すが、ケイ酸コバルトの形成によりコバルトが減少するため、F−T活性が低下する。ジルコニウムなどの金属にてシリカの表面を前処理する方法がこの問題を解決するのに効果的であることが報告されている[特許文献4及び非特許文献4]。
【0014】
前述した工程により製造したF−T触媒は多様な比表面積を有するが、F−T反応性は、コバルトの粒子サイズの変化、支持体の細孔分布図及びコバルト成分の還元性と密接に関係していることが知られている。これらの性能を向上させるために、複雑な工程を経て製造された支持体上に、公知方法を経てコバルト成分を含有するF−T触媒の製造方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許公開第2007/009680号A1
【特許文献2】米国特許第7071239号B2
【特許文献3】米国公開特許第2005/0107479号A1
【特許文献4】欧州特許第0167215号A2
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Applied Catalysis A 161 (1997) 59
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society, 128 (2006) 3956
【非特許文献3】Applied Catalysis A 292 (2005) 252
【非特許文献4】Journal of Catalysis 185 (1999) 120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ゾル・ゲル法によるリン含有リン−アルミナ支持体の製造方法及びリン−アルミナ支持体に活性成分としてコバルトが担持されたコバルト/リン−アルミナ触媒に関する。前記リン−アルミナ支持体はゾル・ゲル法により製造され、二重の細孔分布図を持つ高比表面積であり、コバルト分散性が高いため、熱及び物質伝達が増加し、アルミナの表面性質を改変することで構造を安定させ、F−T反応中にコバルト成分の酸化を減少させることにより、不活性化率を減少させることができる。フィッシャー・トロプシュ(F−T)反応は触媒で実施し、前記触媒は熱安定性が優れており、F−T反応中に生成された水による不活性化を抑制し、また、一酸化炭素の高い転換率と液体炭化水素の安定した選択性を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成用リン−アルミナ支持体の製造方法に関し、前記方法は、
アルコール系有機溶媒にアルミニウムアルコキシドを混合して、アルミニウムアルコキシド溶液を製造する段階と、
前記アルミニウムアルコキシド溶液に、アルミニウムアルコキシド1モルに対して、pKa値が3.5〜5である有機カルボン酸0.01〜1モルと水2〜12モルを混合し、リン前駆体0.001〜0.4モルを添加した後、80〜130℃で前記溶液を加熱して、リン含有ベーマイトゾルを製造する段階と、
前記リン含有ベーマイトゾルを蒸留及び乾燥して、アルコールを分離及び回収して、粉末状のリン含有ベーマイトを製造する段階と、
前記粉末状ベーマイトを300〜800℃で焼成して、リン−アルミナ支持体を製造する段階と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1〜4及び比較例1〜3と6の支持体を利用して製造された触媒で行ったF−T反応で、リンの含量による一酸化炭素の転換率を表したグラフである。
【図2】実施例3(ゾル・ゲル法)のリン−アルミナ支持体と比較例1のアルミナ支持体を利用して製造した触媒で行ったF−T反応で、反応時間(TOS)による一酸化炭素の転換率を表したグラフである。
【図3】実施例3と4(ゾル・ゲル法)のリン−アルミナ支持体、比較例3の市販のアルミナ及び比較例6(共沈法)のリン−アルミナ支持体を利用して製造した触媒の細孔分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
合成ガスを利用して液体炭化水素を製造する通常のF−T反応において、触媒は、高価な活性成分を分散させるために、アルミナ、シリカ及びチタニアのような高表面積の支持体を利用し、活性成分であるコバルトと同時に促進成分を添加して製造される。しかしながら、製造された触媒は、粉末状のコバルトの分散性及び還元性を低下させ、反応で生成された水により触媒が急激に不活性化するという短所を持つ。
【0021】
特に、最も広く使用されたアルミナが支持体として使用される場合、γ−アルミナの表面性質の一部が、F−T反応中に生成された水によりベーマイトなどに変化し得る。これにより、コバルトの酸化速度を増加させるため、触媒の活性及び熱安定性を低下させる。これらの問題を解決するために、前記支持体に、構造安定剤として多様な金属(例、ホウ素、ジルコニウム、アルカリ土類金属及びランタン)を添加することで、アルミナ表面の変化を最小化させる試みがなされている。
【0022】
そこで、合成ガスから液体炭化水素を製造する本発明は、F−T反応によりリン−アルミナ支持体を製造する最適な方法を提供し、F−T反応中に生成された水によりアルミナの表面性質の変化が、リンの添加により調節され、これにより、コバルトの酸化を抑制し、二重の多孔性細孔構造支持体を使用することにより熱及び物質伝達を促進し、F−T反応中、触媒の水熱安定性を増加させて、触媒の不活性化速度を減少させる。
【0023】
2種の異なる成分を含有する支持体は、含浸法、共沈法、ゾル・ゲル法などにより製造される。本発明において、リン−アルミナ支持体はゾル・ゲル法により製造される。アルミナの合成工程中、リン前駆体はアルミナの表面及び骨格に添加され、これによりリンの添加効果が著しく増加する。特に、ゾル・ゲル法は、リンの添加工程中、アルミナの比表面積の減少がわずかであり、二重の多孔性細孔構造のリン−アルミナ支持体の製造が可能であるため、通常の含浸法及び共沈法に比べて支持体の比表面積が広い。また、アルミナ支持体の表面改質効果及びコバルトの分散性を増加させることで、触媒の水熱安定性及び活性成分の分散性を向上させ、また、F−T反応中に生成された水による触媒の酸化速度により触媒の安定性を確保することができる。
【0024】
以下、本発明によるF−T合成用リン−アルミナ支持体の製造工程について詳しく説明する。まず、アルミニウムアルコキシド溶液は、アルコール系有機溶媒にアルミニウムアルコキシドを混合して製造される。アルミニウムアルコキシドの加水分解は、水溶液で主に研究されているが、アルコキシドから発生したアルコールの回収が難しく、水溶液内のアルミナの乾燥に多くのエネルギーが必要であり、乾燥工程中にアルミナの結晶が、毛細管圧により凝固するため、中空細孔や巨大細孔の形成を抑制し、それ故、触媒または吸着剤としての機能を大きく低下させるという短所を持っている。しかし、アルコールは毛細管圧お呼び凝固性が水より低く、本発明のようにアルコールを使用することにより、アルミナの中空細孔や巨大細孔の発達を促進させる。
【0025】
アルコール系有機溶媒として、アルコキシドへの溶解性と除去の容易性を考慮して、沸点が150℃以下のC1〜C4の範囲の低級アルコールを使用する。このようなアルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノールなどが挙げられる。アルコールは、アルミニウムアルコキシド1モルに対して5〜200モルの量が使用される。前記使用量が5モル未満の場合、アルコールにアルミニウムアルコキシドを溶解することが困難である。前記使用量が200モルを超えると、反応効率性と経済効率性が低下する。
【0026】
反応は80〜130℃で実施される。前記温度が80℃未満の場合、ベーマイト結晶の製造速度が低くなり、ギブサイトのようなアルミニウム水酸化物が不純物として形成される。前記温度が130℃を超過すると、ベーマイト結晶が過度に成長する。
【0027】
次に、pKa値が3.5〜5である有機カルボン酸と水を前記アルミニウムアルコキシド溶液に混合し、リン前駆体[P/Al]0.001〜0.4モル比を添加した後、前記混合液を加熱してリン含有ベーマイトゾルを製造する。このとき、加水分解が水により急激に起き、非晶質アルミニウム水酸化物がアルコールに沈殿されて、沈殿物が有機酸により解膠反応が促進されるため、ナノサイズのベーマイトゾルを形成する。
【0028】
前記ベーマイトゾルは、酸の種類及び含量及び反応温度によって結晶サイズと結晶化度に影響を及ぼす重要因子である。従って、本発明では、弱酸であるpKa3.5〜5値の有機カルボン酸が使用される。前記酸の例は、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸を含む。前記有機カルボン酸は、アルミニウムアルコキシド1モルに対して0.01〜1モル、好ましくは0.01〜0.5モルの量で使用される。前記使用量が0.01モル未満である場合、目的とする効果がわずかである。前記使用量が増加するほど、ベーマイトの結晶サイズが減少し、ゲルが透明となる。これは、酸の量が増加するほど、アルミニウムアルコキシドの加水分解により形成されたアルミニウム水酸化物の解膠反応が同時に急激に進行されるためである。それ故、ベーマイト結晶核が形成され、結晶サイズが小さくなる。従って、添加される酸の量により、結晶サイズ、比表面積及び気孔率のようなベーマイトの物性の調節が容易である。しかし、前記量が1モル未満の場合、アルミニウムは有機カルボン酸と結合して、トリカルボン酸アルミニウムを形成する。有機酸は、低い乾燥温度でも比較的容易に除去することができ、製造したベーマイトの構造及び結晶相の変化がないため、無機酸の使用に比べて有利である。
【0029】
加水分解を行うために、水は最大限少量が使用され、好ましくは2〜12モルが使用される。使用量がアルミニウムアルコキシド1モルに対して2モル未満の場合、加水分解がほとんど行われない。前記使用量が12モルを超過すると、分離及び回収工程が複雑となる。
【0030】
既存のリン前駆体を本発明で使用できる。例えば、リン酸(H3PO4)、オキシ塩化リン(POCl3)、五酸化リン(P2O5)、三塩化リン(PCl3)及びそれらの混合物が含まれる。前記リン前駆体は、0.001〜0.4、好ましくは0.01〜0.3範囲のモル比[P/Al]を維持できる量が使用される。前記モル比が0.001未満の場合、リンの添加によりリン−アルミナ支持体の水熱安定性の増加が微々である。モル比が0.4を超過すると、リン−アルミナ支持体の比表面積が著しく減少するため、コバルトの分散性が減少する。
【0031】
前記加熱は80〜130℃で1〜48時間行う。前記温度が80℃未満である場合、ベーマイト結晶の成長が遅くなり、ギブサイトのようなアルミニウム水酸化物が不純物として形成される。前記温度が48時間を超過すると、反応効率性及び経済効率が低下する。
【0032】
粉末状のリン含有ベーマイトは、リン含有ベーマイトゾルを蒸留及び乾燥して、アルコールを分離及び回収して製造される。このとき、乾燥は通常的に行われる方法で行われ、例えば、真空乾燥法及びスプレー乾燥法で、好ましくは100〜150℃で行われる。アルコールは、既存の水溶媒より低温で乾燥することができるため、反応溶媒として好ましい。乾燥工程で分離及び回収されたアルコールは、反応または加水分解の段階で溶媒として使用される。これは水をあまり含まず、純度が高いため、次の反応に循環して再使用することができる。
【0033】
次の段階として、粉末状のベーマイトは300〜800℃、好ましくは400〜700℃で焼成して、リンーアルミナ支持体を製造する。前記温度が300℃未満の場合、アルミナ表面がリンにより十分に改質されず、アルミナの相転移がF−T反応中に生成された水により起きるため、リン添加効果が微々である。前記温度が800℃を超えると、リン−アルミナ支持体の比表面積が減少し、それ故、コバルトの分散性が低下するため、FTS反応性が減少してしまう。
【0034】
製造されたリン−アルミナ支持体は、比表面積が300〜500m2/gである。比表面積が1〜20nmの比較的に小さい細孔SA1と21〜200nmの比較的大きい細孔SA2の比は5〜10の範囲である。二重の多孔性細孔構造支持体は、相対的に小さい細孔の比が増加するに従って、コバルトの分散性が増加し、大きい細孔の存在により、熱及び物質伝達を促進させるため、F−T反応中に触媒の不活性化が抑制されるという傾向がある。これは、本発明によるゾル・ゲル法によりリン−アルミナ支持体を製造することで達成される。製造された支持体は、従来の含浸法及び共沈法により製造された支持体に比べて、支持体へのコバルト成分の分散性が向上し、二重の細孔構造支持体を持つ比表面積が広い。リンは、F−T反応中に生成された水によるコバルトの酸化を減少させるため、水熱安定性が増加し、初期の触媒の不活性化速度が低下する。
【0035】
リン含有アルミナ支持体の比表面積が300m2/g未満である場合、コバルトの含浸中に比表面積が急激に減少するため、コバルトの分散性が減少する。前記比表面積が500m2/gを超えると、リン含有アルミナ支持体の熱安定性が相対的に低くなるため、反応中に支持体の構造変形が発生する。更に、[SA1/SA2]が5未満の場合、21nm以上の大きい細孔により、触媒の比表面積が減少するため、コバルトの分散性が減少する。前記比が10を超える場合、20nm以下の小さい細孔により、コバルトの含浸中に細孔が塞がれるため、コバルトの分散性もまた減少する。
【0036】
更に、本発明は、ゾル・ゲル法により製造されたリン−アルミナ支持体を利用して製造したF−T用コバルト/リン−アルミナ触媒に関する。
【0037】
前記触媒は、通常の方法で製造されるが、例えば、粉末状のリン含有アルミナ支持体にコバルトを含浸した後、焼成する方法により製造される。
【0038】
本発明で、一例として、コバルト前駆体が焼成されたリン−アルミナ支持体に含浸され、200〜700℃、好ましくは300〜600℃で焼成される。触媒は通常的な方法で製造されるが、例えば、既存の含浸法及び共沈法により含浸が行われる。具体的には、前記含浸法は40〜90℃でアルコール水溶液内で行った後、沈殿物を洗浄して、100℃以上のオーブンで24時間乾燥した後、触媒として使用する。
【0039】
更に、共沈法は、pH7〜8の水溶液下でリン−アルミナ支持体のスラリーにコバルトを共沈して、40〜90℃で前記沈殿物を熟成した後、ろ過及び洗浄し、前記コバルトの含量をリンで処理したアルミナ支持体に対して5〜40質量%で調節することで行われる。pH7〜8に調節するために、塩基性沈殿剤が使用され、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニア及び水酸化アンモニウム溶液が含まれる。触媒の熟成時間は、活発なコバルトを含有する支持体の形成に有利であるため、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜8時間が適切である。前記時間が0.1時間未満である場合、コバルトの分散性が減少するため、F−T反応において不利である。前記時間が10時間を超過すると、コバルトの粒子サイズが大きくなると同時に、活性点が減少するため、合成時間が増加して経済的ではない。コバルトが担持されたF−T触媒は、前述した方法により製造されたコバルト/リン−アルミナ触媒を洗浄及び乾燥して製造される。製造された沈殿物を洗浄して、1日間100℃のオーブンで乾燥した後、F−T反応用触媒の合成に即座に使用するか、貴金属触媒成分を含浸した後、焼成して使用できる。
【0040】
既存のコバルト前駆体が本発明で使用される。コバルト前駆体の例として、硝酸塩、酢酸塩、塩化物及びこれらの混合物を含む。この場合、レニウム、ルテニウム及び白金のような触媒促進剤が、優れた触媒活性を達成するために、支持体に対して0.05〜1質量%の量で追加的に使用される。
【0041】
前記焼成温度が200℃未満である場合、コバルト及び支持体の不十分な相互作用により、反応中に粒子サイズが増加する。前記温度が600℃を超えると、コバルトの粒子サイズが増加して、不活性のアルミン酸コバルトが形成され、分散性が減少するため、触媒活性が低下する。
【0042】
このようなコバルト/リン−アルミナ触媒は、リン−アルミナ支持体に対してコバルトが5〜40質量%含まれる。5質量%未満の場合、F−T反応を達成するのに不十分である。前記量が40質量%を超過すると、製造費用が増加するため経済的でなくなる。
【0043】
更に、本発明によると、液体炭化水素は、前記で製造された触媒の存在下で、合成ガスを利用してF−T反応を行い製造される。前記F−T反応は、従来遂行される反応である。前記触媒は、水素条件下で200〜700℃で還元した後、本発明で使用される。前記で還元されたF−T反応用触媒は、固定層、流動層及びスラリー反応器、F−T反応で用いる条件下、例えば、200〜400℃、5〜50kg/cm2、500〜10000h-1の空間速度で使用されるが、特別に限定されない。
【実施例】
【0044】
本発明は下記実施例に依拠して説明される。しかし、本発明は下記実施例に限定されない。
【0045】
実施例1
ゾル・ゲル法により高表面積のリン含有アルミナを製造するために、アルミニウムイソプロポキシドを2−プロパノール溶液と混合してスラリーを製造した。前記スラリーに酢酸と水を添加して、加水分解により非晶質アルミニウム酸化物を製造する過程で、リン酸(H3PO4)を、P/Alのモル比を0.01に調節するように添加した。スラリー溶液は、アルミニウムイソプロポキシド:2−プロパノール:酢酸:水を1:25:0.1:3モル比に調節して製造した。製造されたスラリー溶液を90℃のフラスコで24時間以上還流して真空乾燥した後、100℃の乾燥機で24時間以上乾燥することで、リン含有ベーマイト粉末を得た。前記リン含有ベーマイト粉末を500℃で5時間焼成することで、高表面積のリン含有アルミナを製造した。前記製造されたリン−アルミナ支持体は、比表面積が380m2/gであった。
【0046】
コバルト前駆体として、エタノール60mLに溶解された硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)溶液3.1gをリン−アルミナ支持体3gに添加し、前記混合物を室温で12時間以上攪拌して、コバルト/リン−アルミナ触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、500℃の空気雰囲気で5時間焼成した。前記コバルト/リン−アルミナ触媒は、金属を基準として20質量%Co/0.6質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.01モル/モル)であり、比表面積が248m2/gであることを確認した。
【0047】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0048】
実施例2
実施例1と同様に実施するが、P/Alのモル比を0.02に維持してリン−アルミナ支持体を製造した。リン−アルミナ支持体の比表面積は365m2/gであった。
【0049】
硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)をリン−アルミナ支持体に含浸した。前記で製造された触媒は、20質量%Co/1.2質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.02モル/モル)であり、比表面積が247m2/gであることを確認した。
【0050】
実施例1のように触媒を還元し、F−T反応を実施した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0051】
実施例3
実施例1と同様に実施するが、P/Alのモル比を0.05に維持してリン−アルミナ支持体を製造した。リン−アルミナ支持体の比表面積は340m2/gであった。
【0052】
硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)をリン−アルミナ支持体に含浸した。前記で製造された触媒は、20質量%Co/3.0質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.05モル/モル)であり、比表面積が231m2/gであることを確認した。
【0053】
実施例1のように触媒を還元し、F−T反応を実施した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0054】
実施例4
実施例1と同様に実施するが、P/Alのモル比を0.1に維持してリン−アルミナ支持体を製造した。リン−アルミナ支持体の比表面積は326m2/gであった。
【0055】
硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)をリン−アルミナ支持体に含浸した。前記で製造された触媒は、20質量%Co/6.1質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.1モル/モル)であり、比表面積が194m2/gであることを確認した。
【0056】
実施例1のように触媒を還元し、F−T反応を実施した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0057】
実施例5
実施例1と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0058】
実施例6
実施例2と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0059】
実施例7
実施例3と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0060】
実施例8
実施例4と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0061】
実施例9
実施例3と同様に実施するが、触媒を700℃の空気雰囲気下で5時間焼成し、前記触媒は、比表面積が153m2/gであることを確認した。240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で反応を行う前に、1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0062】
比較例1:含浸法
市販のアルミナ支持体(3g、ストレム社、比表面積=200m2/g)と硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gを脱イオン水60mLに溶解させ、室温で12時間以上攪拌して、コバルト/アルミナ触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、400℃の空気雰囲気下で5時間焼成した。前記触媒は、比表面積が140m2/gであり、金属を基準として20質量%Co/γ−Al2O3を含有することを確認した。
【0063】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0064】
比較例2:含浸法
比較例1と同様に実施するが、比表面積が198m2/g(カタパルB、サソル社)のアルミナ支持体5gとリン酸(H3PO4)0.37gを利用してリン−アルミナ支持体を製造した。
【0065】
前記リン−アルミナ支持体3gと硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gを脱イオン水60mLに溶解させ、室温で12時間以上攪拌して、コバルト/アルミナ触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、400℃の空気雰囲気下で5時間焼成した。前記触媒は、比表面積が156m2/gであり、金属を基準として20質量%Co/2質量%P/γ−Al2O3を含有することを確認した。
【0066】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0067】
比較例3:含浸法
比較例1と同様に実施するが、市販のアルミナ(ストレム社、比表面積=200m2/g)5gとリン酸(H3PO4)0.93gを利用してリン−アルミナ支持体を製造した。
【0068】
前記リン−アルミナ支持体3gと硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gを脱イオン水60mLに溶解させ、室温で12時間以上攪拌して、コバルト/アルミナ触媒を得た。前記触媒は、比表面積が36m2/gであり、金属を基準として20質量%Co/5質量%P/γ−Al2O3を含有することを確認した。
【0069】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0070】
比較例4:含浸法
比較例2と同様に実施するが、240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下でF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0071】
比較例5:含浸法
比較例3と同様に実施するが、240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下でF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0072】
比較例6:含浸法
硝酸アルミニウム(Al(NO3)39H2O)60.0gとリン酸(H2PO4)0.09gを脱イオン水400mLに溶解させ、pH5.5の溶液を得た。沈殿剤として炭酸ナトリウム(Na2CO3)26.4gを脱イオン水400mLに溶解させ、pHは10.5であった。前記2種類の溶液は、70℃で200mLの脱イオン水が攪拌されたフラスコ(2000mL)に徐々に入れて、pHは約7.5〜8.0に維持した。前記スラリー溶液を70℃で3時間攪拌し、製造された混合触媒を脱イオン水2000mLで3回以上洗浄した後、ろ過及び乾燥した。P/Alは0.01比であり、リン含有ベーマイト粉末を500℃で5時間焼成することで、リン−アルミナ支持体を得た。
【0073】
前記で製造されたリン−アルミナ支持体3gとコバルト前駆体として硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gをエタノール60mLに溶解し、室温で12時間以上攪拌して、担持された触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、500℃の空気雰囲気下で5時間焼成した。前記触媒の組成は、金属を基準として20質量%Co/0.6質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.01モル/モル)であり、比表面積は178m2/gであった。
【0074】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0075】
比較例7
比較例6と同様に実施するが、240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrでF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0076】
比較例8
前記実施例1と同様に実施するが、P/Alモル比を0.5に維持し、リン−アルミナ支持体の比表面積は185m2/gである。前記リン−アルミナ支持体に硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)を含浸して、触媒を製造した。前記で製造された触媒の組成は、20質量%Co/30.4質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.5モル/モル)であり、比表面積は120m2/gであった。
【0077】
実施例1と同様な方法で還元過程を行った後、F−T反応を遂行した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0078】
比較例9
実験手順は比較例4と同様に実施するが、700℃で5時間触媒を焼成した。1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrでF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0079】
表1は、実施例1〜9と比較例1〜9で製造した支持体を利用して製造した触媒の存在下で、F−T反応を行ったときの結果を表している。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に表されるように、コバルト系触媒がゾル・ゲル法で製造したリン−アルミナを利用して製造された実施例1〜9は、市販のアルミナを使用して製造した比較例1〜5に比べて、F−T反応で液体炭化水素の選択性及び一酸化炭素の転換率が優れている。
【0082】
更に、実施例によるリン含有アルミナを利用して製造されたF−T触媒は、二重の多孔性細孔分布を見せ、相対的にサイズが小さい細孔SA1(1〜20nm)と大きい細孔SA2(21〜200nm)の比表面積比SA1/SA2は、5〜10の範囲であった。前記SA1/SA2比が前述した範囲である場合、小さい細孔の適切な存在によりコバルトの分散性が増加するため、F−T反応性が優れていた。更に、リンによるアルミナ支持体の改質及びリン−アルミナ支持体の二重の多孔性細孔分布により、熱安定性及び物質伝達が得られる。
【0083】
表1と実施例1〜4で表すように、活性成分(コバルト成分)がゾル・ゲル法により製造されたリン−アルミナ支持体に担持され、F−T反応で使用されるとき、液体炭化水素の選択性及び一酸化炭素の転換率が、アルミナに対するリンの比(P/Al)が0.01〜0.1モル/モルが増加することを確認した。しかしながら、比較例8のように、P/Al比が非常に高く[P/Al=0.5モル比(30.4質量%)]、リン−アルミナの比表面積が著しく減少するため、F−T反応性は低下する。また、過量のリンを含有するアルミナ支持体を使用する場合、1〜20nmの微細細孔の一部とコバルトの分散性が減少するため、F−T反応性がかなり低下した。
【0084】
リンが共沈法により含浸された比較例6〜7は、ゾル・ゲル法による実施例に比べて低い反応性を見せる。これは、共沈法は、支持体の二重の多孔性細孔分布を形成するのに役に立たず、支持体の比表面積の減少によりコバルトの分散性が一部減少するためである。
【0085】
図2は、リン−アルミナ支持体が使用された実施例3と支持体としてアルミナのみを使用された比較例1とを比較したものである。これら支持体を利用したF−T反応の結果として、リン−アルミナ支持体の水熱安定性が増加し、F−T反応中に生成された水によりアルミナの表面性質の変化が減少し、これにより、触媒の不活性化を抑制し、触媒の長期安定性が増加する。
【0086】
更に、実施例9と比較例9で見られるように、不活性化した触媒を700℃で焼成し、F−T反応に適用した。触媒がゾル・ゲル法により製造された実施例9は、触媒活性変化が比較的小さく表れる。反面、市販のアルミナが使用された比較例9は、触媒活性の変化が比較的高く、転換率及び液体炭化水素の選択性が減少する。これは主にリン−アルミナ支持体でのコバルトの高温安定性と連関があり、本発明の触媒では、高温でコバルト焼結現象が小さい。
【0087】
図3は、本発明のリン−アルミナ支持体を利用して製造したF−T触媒(実施例3と4)、市販のアルミナ支持体を利用した触媒(比較例3)及び共沈法により製造された支持体を利用した触媒(比較例6)の細孔分布を表している。二重の多孔性細孔分布をもつ微細細孔は、本発明の触媒でのみ観察される。特に、F−T反応性は、比表面積比[SA1/SA2]は5〜10範囲内であるときに優れていることを確認した。これは、前述した特性を有するリン含有アルミナ支持体がF−T反応で使用される場合に、コバルト分散性、熱安定性、物質伝達及びリン−アルミナ支持体の水熱安定性が向上するためであり、これにより、F−T反応中に生成された水によるアルミナ表面性質の変化が減少し、コバルトの安定性の増加による触媒の不活性化を減少させる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
近年の急激な油価上昇に対処するためのGTL技術の開発において、F−T合成用触媒の改善は、GTL技術の競争力向上と密接に関係している。特に、改善された触媒は、GTL工程での熱効率及びカーボン活用を増加させることができ、F−T反応工程を最適化することもできる。従って、本発明によるゾル・ゲル法により製造されたリン−アルミナ支持体は、液体炭化水素に対して安定した選択性を増加させ、不活性化を抑制することができるため、C5以上の液体炭化水素に対して安定した選択性を確保し、競争力のあるGTL工程の開発を可能とする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾル・ゲル法によるリン含有アルミナ支持体の製造方法、コバルトが活性成分として前記支持体に担持されたフィッシャー・トロプシュ(F−T)合成用触媒、及び前記触媒上で、天然ガス、石炭及びバイオマスのガス化(または改質)により製造された合成ガスを利用して液体炭化水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの液体化(GTL)技術の核心工程であるフィッシャー・トロプシュ(F−T)合成は、ドイツの科学者フィッシャーとトロプシュが石炭のガス化により合成ガスから合成燃料を製造する工程を開発することで初めて紹介された。GTL工程は、天然ガスの改質、合成ガスのF−T合成反応、及びF−T生成物の水素化処理の3段階からなる。これらのうち、鉄及びコバルトを触媒として使用して、200〜350℃の反応温度と10〜30atmの圧力で行われるF−T反応は、次の4つの主要反応にて説明することができる。
【0003】
(a)F−T合成での連鎖成長
CO+2H2→−CH2−+H2O △H(227℃)=−165kJ/mol
(b)メタン化
CO+3H2→CH4+H2O △H(227℃)=−215kJ/mol
(c)水性ガス転換反応
CO+H2O→CO2+H2 △H(227℃)=−40kL/mol
(d)ブードア(Boudouard)反応
2CO→C+CO2 △H(227℃)=−134kJ/mol
【0004】
F−T反応のためには、鉄及びコバルト系列の触媒が一般的に使用される。以前は鉄系触媒が使用されたが、今日では、液体燃料及びワックスの生産を増やし、転換率を向上させるために、コバルト系触媒が主に使用されている。鉄系触媒は、様々なF−T触媒のうち最も低価であり、高温でメタン生成が比較的低く、炭化水素のうちオレフィンの選択性が比較的高い。製品は燃料として使用できるほかに、軽質オレフィンまたはαオレフィンとして化学産業での原料として活用できる。一方、アルコール、アルデヒド及びケトンなどの副産物が炭化水素と共に多量に生成される。
【0005】
更に、鉄系の低温F−T触媒は、サソル社のワックス生成のために主に使用される市販品であり、助触媒としてCu及びKの成分からなり、バインダーとしてSiO2を使用して沈殿法により製造される。サソル社の高温F−T触媒は、マグネタイト、K、アルミナ、MgOなどを溶融させて製造される。
【0006】
コバルト系触媒の価格はFe触媒の約200倍以上であるが、比較的に活性及び安定性が高く、CO2の発生が低いと同時に液体パラフィン系炭化水素の生成収率が高い。
【0007】
更に、CH4は高温で多量に生成されるため、低温でのみ使用でき、コバルトが高価であるため、アルミナ、シリカ、チタニアのような高表面積の安定的な支持体上でよく分散される。これは、少量のPt、Ru及びReなどの貴金属が助触媒として更に添加される形で通常使用される。
【0008】
主要生成物である直鎖炭化水素は、Schulz−Flory重合反応速度式により説明される。F−T工程では、60%以上の1次生成物の沸点がディーゼル燃料よりも高い。それ故、ディーゼル燃料は次の水素化分解工程を経て生産され、ワックス成分は脱ろう工程を経て高品質の潤滑油基油に転換される。
【0009】
一般的に、現在の精製プラントに使用される減圧残油の改質工程は、触媒及び工程技術の改善により信頼性のある工程である。しかし、F−T合成油(ワックス)は、精製プラントの改質工程で使用される原料とは、形状、状態及び物性が大きく異なるため、適切な炭化水素改質工程が必要である。F−T反応の1次生成物を処理する工程例としては、水素化分解、脱ろう、異性化、アリル化を含む。F−T反応の主要生成物は、ナフサ/ガソリン、中間留分(高センタン価)、硫黄及び芳香族を含まない液体炭化水素、αオレフィン、含酸素化物、ワックスなどを含む。
【0010】
高価な活性成分を分散させるために使用される一般的な方法としては、アルミナ、シリカ、チタニアなどの高表面積の支持体に、コバルトまたはその他の活性促進物質を添加することで触媒を製造する。具体的には、活性成分であるコバルトの分散を増進させるために、単一成分または混合成分の支持体を利用して商業用の触媒を製造する。しかしながら、コバルトの粒子サイズが類似する場合、F−T反応の活性は支持体の種類によってわずかに変わる[非特許文献1]。一方、F−T反応の活性は、分散及びコバルト成分の粒子サイズによって大きく影響を受けると報告されている[非特許文献2]。しかし、支持体の表面を前処理して、前記支持体の性質を変化させることで、FTS活性と安定性を増進させるための試みが行われている。
【0011】
例えば、コバルトが担持されたアルミナが使用される場合、反応中に生成される水により、γ−アルミナの表面の性質がベーマイトなどに変化し得る。コバルト成分の酸化速度が増加し、前記触媒の活性及び熱安定性が低下し得る。この問題を解決する方法として、シリコン前駆体を使用してアルミナの表面を前処理するため、触媒の安定性を向上させる工程が発表されている[特許文献1]。更に、支持体の水熱安定性を向上させるために、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、ホウ素、ランタンなどの様々な金属で表面を処理する方法が開示されている[特許文献2]。F−T触媒の活性を改善させる別の方法は、二重の多孔性細孔構造のシリカ−アルミナ触媒の製造方法であり、これにより、F−T反応中に生成される高沸点化合物の物質伝達速度を増加させる[特許文献3及び非特許文献3]。
【0012】
しかしながら、これらの技術は、ポリマー基質を使用して二重の多孔性細孔構造支持体を有する支持体を形成したり、異なる細孔サイズを有するアルミナ−シリカ支持体を製造した後、これらを単純に混合する工程、前記二重の多孔性細孔構造支持体を使用してコバルトなどの活性成分を担持する工程のような複雑な合成工程を含む。
【0013】
シリカ支持体は、アルミナ支持体と比較して、コバルトと支持体との間の強い相互作用を示すが、ケイ酸コバルトの形成によりコバルトが減少するため、F−T活性が低下する。ジルコニウムなどの金属にてシリカの表面を前処理する方法がこの問題を解決するのに効果的であることが報告されている[特許文献4及び非特許文献4]。
【0014】
前述した工程により製造したF−T触媒は多様な比表面積を有するが、F−T反応性は、コバルトの粒子サイズの変化、支持体の細孔分布図及びコバルト成分の還元性と密接に関係していることが知られている。これらの性能を向上させるために、複雑な工程を経て製造された支持体上に、公知方法を経てコバルト成分を含有するF−T触媒の製造方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許公開第2007/009680号A1
【特許文献2】米国特許第7071239号B2
【特許文献3】米国公開特許第2005/0107479号A1
【特許文献4】欧州特許第0167215号A2
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Applied Catalysis A 161 (1997) 59
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society, 128 (2006) 3956
【非特許文献3】Applied Catalysis A 292 (2005) 252
【非特許文献4】Journal of Catalysis 185 (1999) 120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ゾル・ゲル法によるリン含有リン−アルミナ支持体の製造方法及びリン−アルミナ支持体に活性成分としてコバルトが担持されたコバルト/リン−アルミナ触媒に関する。前記リン−アルミナ支持体はゾル・ゲル法により製造され、二重の細孔分布図を持つ高比表面積であり、コバルト分散性が高いため、熱及び物質伝達が増加し、アルミナの表面性質を改変することで構造を安定させ、F−T反応中にコバルト成分の酸化を減少させることにより、不活性化率を減少させることができる。フィッシャー・トロプシュ(F−T)反応は触媒で実施し、前記触媒は熱安定性が優れており、F−T反応中に生成された水による不活性化を抑制し、また、一酸化炭素の高い転換率と液体炭化水素の安定した選択性を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成用リン−アルミナ支持体の製造方法に関し、前記方法は、
アルコール系有機溶媒にアルミニウムアルコキシドを混合して、アルミニウムアルコキシド溶液を製造する段階と、
前記アルミニウムアルコキシド溶液に、アルミニウムアルコキシド1モルに対して、pKa値が3.5〜5である有機カルボン酸0.01〜1モルと水2〜12モルを混合し、リン前駆体0.001〜0.4モルを添加した後、80〜130℃で前記溶液を加熱して、リン含有ベーマイトゾルを製造する段階と、
前記リン含有ベーマイトゾルを蒸留及び乾燥して、アルコールを分離及び回収して、粉末状のリン含有ベーマイトを製造する段階と、
前記粉末状ベーマイトを300〜800℃で焼成して、リン−アルミナ支持体を製造する段階と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1〜4及び比較例1〜3と6の支持体を利用して製造された触媒で行ったF−T反応で、リンの含量による一酸化炭素の転換率を表したグラフである。
【図2】実施例3(ゾル・ゲル法)のリン−アルミナ支持体と比較例1のアルミナ支持体を利用して製造した触媒で行ったF−T反応で、反応時間(TOS)による一酸化炭素の転換率を表したグラフである。
【図3】実施例3と4(ゾル・ゲル法)のリン−アルミナ支持体、比較例3の市販のアルミナ及び比較例6(共沈法)のリン−アルミナ支持体を利用して製造した触媒の細孔分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
合成ガスを利用して液体炭化水素を製造する通常のF−T反応において、触媒は、高価な活性成分を分散させるために、アルミナ、シリカ及びチタニアのような高表面積の支持体を利用し、活性成分であるコバルトと同時に促進成分を添加して製造される。しかしながら、製造された触媒は、粉末状のコバルトの分散性及び還元性を低下させ、反応で生成された水により触媒が急激に不活性化するという短所を持つ。
【0021】
特に、最も広く使用されたアルミナが支持体として使用される場合、γ−アルミナの表面性質の一部が、F−T反応中に生成された水によりベーマイトなどに変化し得る。これにより、コバルトの酸化速度を増加させるため、触媒の活性及び熱安定性を低下させる。これらの問題を解決するために、前記支持体に、構造安定剤として多様な金属(例、ホウ素、ジルコニウム、アルカリ土類金属及びランタン)を添加することで、アルミナ表面の変化を最小化させる試みがなされている。
【0022】
そこで、合成ガスから液体炭化水素を製造する本発明は、F−T反応によりリン−アルミナ支持体を製造する最適な方法を提供し、F−T反応中に生成された水によりアルミナの表面性質の変化が、リンの添加により調節され、これにより、コバルトの酸化を抑制し、二重の多孔性細孔構造支持体を使用することにより熱及び物質伝達を促進し、F−T反応中、触媒の水熱安定性を増加させて、触媒の不活性化速度を減少させる。
【0023】
2種の異なる成分を含有する支持体は、含浸法、共沈法、ゾル・ゲル法などにより製造される。本発明において、リン−アルミナ支持体はゾル・ゲル法により製造される。アルミナの合成工程中、リン前駆体はアルミナの表面及び骨格に添加され、これによりリンの添加効果が著しく増加する。特に、ゾル・ゲル法は、リンの添加工程中、アルミナの比表面積の減少がわずかであり、二重の多孔性細孔構造のリン−アルミナ支持体の製造が可能であるため、通常の含浸法及び共沈法に比べて支持体の比表面積が広い。また、アルミナ支持体の表面改質効果及びコバルトの分散性を増加させることで、触媒の水熱安定性及び活性成分の分散性を向上させ、また、F−T反応中に生成された水による触媒の酸化速度により触媒の安定性を確保することができる。
【0024】
以下、本発明によるF−T合成用リン−アルミナ支持体の製造工程について詳しく説明する。まず、アルミニウムアルコキシド溶液は、アルコール系有機溶媒にアルミニウムアルコキシドを混合して製造される。アルミニウムアルコキシドの加水分解は、水溶液で主に研究されているが、アルコキシドから発生したアルコールの回収が難しく、水溶液内のアルミナの乾燥に多くのエネルギーが必要であり、乾燥工程中にアルミナの結晶が、毛細管圧により凝固するため、中空細孔や巨大細孔の形成を抑制し、それ故、触媒または吸着剤としての機能を大きく低下させるという短所を持っている。しかし、アルコールは毛細管圧お呼び凝固性が水より低く、本発明のようにアルコールを使用することにより、アルミナの中空細孔や巨大細孔の発達を促進させる。
【0025】
アルコール系有機溶媒として、アルコキシドへの溶解性と除去の容易性を考慮して、沸点が150℃以下のC1〜C4の範囲の低級アルコールを使用する。このようなアルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノールなどが挙げられる。アルコールは、アルミニウムアルコキシド1モルに対して5〜200モルの量が使用される。前記使用量が5モル未満の場合、アルコールにアルミニウムアルコキシドを溶解することが困難である。前記使用量が200モルを超えると、反応効率性と経済効率性が低下する。
【0026】
反応は80〜130℃で実施される。前記温度が80℃未満の場合、ベーマイト結晶の製造速度が低くなり、ギブサイトのようなアルミニウム水酸化物が不純物として形成される。前記温度が130℃を超過すると、ベーマイト結晶が過度に成長する。
【0027】
次に、pKa値が3.5〜5である有機カルボン酸と水を前記アルミニウムアルコキシド溶液に混合し、リン前駆体[P/Al]0.001〜0.4モル比を添加した後、前記混合液を加熱してリン含有ベーマイトゾルを製造する。このとき、加水分解が水により急激に起き、非晶質アルミニウム水酸化物がアルコールに沈殿されて、沈殿物が有機酸により解膠反応が促進されるため、ナノサイズのベーマイトゾルを形成する。
【0028】
前記ベーマイトゾルは、酸の種類及び含量及び反応温度によって結晶サイズと結晶化度に影響を及ぼす重要因子である。従って、本発明では、弱酸であるpKa3.5〜5値の有機カルボン酸が使用される。前記酸の例は、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸を含む。前記有機カルボン酸は、アルミニウムアルコキシド1モルに対して0.01〜1モル、好ましくは0.01〜0.5モルの量で使用される。前記使用量が0.01モル未満である場合、目的とする効果がわずかである。前記使用量が増加するほど、ベーマイトの結晶サイズが減少し、ゲルが透明となる。これは、酸の量が増加するほど、アルミニウムアルコキシドの加水分解により形成されたアルミニウム水酸化物の解膠反応が同時に急激に進行されるためである。それ故、ベーマイト結晶核が形成され、結晶サイズが小さくなる。従って、添加される酸の量により、結晶サイズ、比表面積及び気孔率のようなベーマイトの物性の調節が容易である。しかし、前記量が1モル未満の場合、アルミニウムは有機カルボン酸と結合して、トリカルボン酸アルミニウムを形成する。有機酸は、低い乾燥温度でも比較的容易に除去することができ、製造したベーマイトの構造及び結晶相の変化がないため、無機酸の使用に比べて有利である。
【0029】
加水分解を行うために、水は最大限少量が使用され、好ましくは2〜12モルが使用される。使用量がアルミニウムアルコキシド1モルに対して2モル未満の場合、加水分解がほとんど行われない。前記使用量が12モルを超過すると、分離及び回収工程が複雑となる。
【0030】
既存のリン前駆体を本発明で使用できる。例えば、リン酸(H3PO4)、オキシ塩化リン(POCl3)、五酸化リン(P2O5)、三塩化リン(PCl3)及びそれらの混合物が含まれる。前記リン前駆体は、0.001〜0.4、好ましくは0.01〜0.3範囲のモル比[P/Al]を維持できる量が使用される。前記モル比が0.001未満の場合、リンの添加によりリン−アルミナ支持体の水熱安定性の増加が微々である。モル比が0.4を超過すると、リン−アルミナ支持体の比表面積が著しく減少するため、コバルトの分散性が減少する。
【0031】
前記加熱は80〜130℃で1〜48時間行う。前記温度が80℃未満である場合、ベーマイト結晶の成長が遅くなり、ギブサイトのようなアルミニウム水酸化物が不純物として形成される。前記温度が48時間を超過すると、反応効率性及び経済効率が低下する。
【0032】
粉末状のリン含有ベーマイトは、リン含有ベーマイトゾルを蒸留及び乾燥して、アルコールを分離及び回収して製造される。このとき、乾燥は通常的に行われる方法で行われ、例えば、真空乾燥法及びスプレー乾燥法で、好ましくは100〜150℃で行われる。アルコールは、既存の水溶媒より低温で乾燥することができるため、反応溶媒として好ましい。乾燥工程で分離及び回収されたアルコールは、反応または加水分解の段階で溶媒として使用される。これは水をあまり含まず、純度が高いため、次の反応に循環して再使用することができる。
【0033】
次の段階として、粉末状のベーマイトは300〜800℃、好ましくは400〜700℃で焼成して、リンーアルミナ支持体を製造する。前記温度が300℃未満の場合、アルミナ表面がリンにより十分に改質されず、アルミナの相転移がF−T反応中に生成された水により起きるため、リン添加効果が微々である。前記温度が800℃を超えると、リン−アルミナ支持体の比表面積が減少し、それ故、コバルトの分散性が低下するため、FTS反応性が減少してしまう。
【0034】
製造されたリン−アルミナ支持体は、比表面積が300〜500m2/gである。比表面積が1〜20nmの比較的に小さい細孔SA1と21〜200nmの比較的大きい細孔SA2の比は5〜10の範囲である。二重の多孔性細孔構造支持体は、相対的に小さい細孔の比が増加するに従って、コバルトの分散性が増加し、大きい細孔の存在により、熱及び物質伝達を促進させるため、F−T反応中に触媒の不活性化が抑制されるという傾向がある。これは、本発明によるゾル・ゲル法によりリン−アルミナ支持体を製造することで達成される。製造された支持体は、従来の含浸法及び共沈法により製造された支持体に比べて、支持体へのコバルト成分の分散性が向上し、二重の細孔構造支持体を持つ比表面積が広い。リンは、F−T反応中に生成された水によるコバルトの酸化を減少させるため、水熱安定性が増加し、初期の触媒の不活性化速度が低下する。
【0035】
リン含有アルミナ支持体の比表面積が300m2/g未満である場合、コバルトの含浸中に比表面積が急激に減少するため、コバルトの分散性が減少する。前記比表面積が500m2/gを超えると、リン含有アルミナ支持体の熱安定性が相対的に低くなるため、反応中に支持体の構造変形が発生する。更に、[SA1/SA2]が5未満の場合、21nm以上の大きい細孔により、触媒の比表面積が減少するため、コバルトの分散性が減少する。前記比が10を超える場合、20nm以下の小さい細孔により、コバルトの含浸中に細孔が塞がれるため、コバルトの分散性もまた減少する。
【0036】
更に、本発明は、ゾル・ゲル法により製造されたリン−アルミナ支持体を利用して製造したF−T用コバルト/リン−アルミナ触媒に関する。
【0037】
前記触媒は、通常の方法で製造されるが、例えば、粉末状のリン含有アルミナ支持体にコバルトを含浸した後、焼成する方法により製造される。
【0038】
本発明で、一例として、コバルト前駆体が焼成されたリン−アルミナ支持体に含浸され、200〜700℃、好ましくは300〜600℃で焼成される。触媒は通常的な方法で製造されるが、例えば、既存の含浸法及び共沈法により含浸が行われる。具体的には、前記含浸法は40〜90℃でアルコール水溶液内で行った後、沈殿物を洗浄して、100℃以上のオーブンで24時間乾燥した後、触媒として使用する。
【0039】
更に、共沈法は、pH7〜8の水溶液下でリン−アルミナ支持体のスラリーにコバルトを共沈して、40〜90℃で前記沈殿物を熟成した後、ろ過及び洗浄し、前記コバルトの含量をリンで処理したアルミナ支持体に対して5〜40質量%で調節することで行われる。pH7〜8に調節するために、塩基性沈殿剤が使用され、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニア及び水酸化アンモニウム溶液が含まれる。触媒の熟成時間は、活発なコバルトを含有する支持体の形成に有利であるため、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜8時間が適切である。前記時間が0.1時間未満である場合、コバルトの分散性が減少するため、F−T反応において不利である。前記時間が10時間を超過すると、コバルトの粒子サイズが大きくなると同時に、活性点が減少するため、合成時間が増加して経済的ではない。コバルトが担持されたF−T触媒は、前述した方法により製造されたコバルト/リン−アルミナ触媒を洗浄及び乾燥して製造される。製造された沈殿物を洗浄して、1日間100℃のオーブンで乾燥した後、F−T反応用触媒の合成に即座に使用するか、貴金属触媒成分を含浸した後、焼成して使用できる。
【0040】
既存のコバルト前駆体が本発明で使用される。コバルト前駆体の例として、硝酸塩、酢酸塩、塩化物及びこれらの混合物を含む。この場合、レニウム、ルテニウム及び白金のような触媒促進剤が、優れた触媒活性を達成するために、支持体に対して0.05〜1質量%の量で追加的に使用される。
【0041】
前記焼成温度が200℃未満である場合、コバルト及び支持体の不十分な相互作用により、反応中に粒子サイズが増加する。前記温度が600℃を超えると、コバルトの粒子サイズが増加して、不活性のアルミン酸コバルトが形成され、分散性が減少するため、触媒活性が低下する。
【0042】
このようなコバルト/リン−アルミナ触媒は、リン−アルミナ支持体に対してコバルトが5〜40質量%含まれる。5質量%未満の場合、F−T反応を達成するのに不十分である。前記量が40質量%を超過すると、製造費用が増加するため経済的でなくなる。
【0043】
更に、本発明によると、液体炭化水素は、前記で製造された触媒の存在下で、合成ガスを利用してF−T反応を行い製造される。前記F−T反応は、従来遂行される反応である。前記触媒は、水素条件下で200〜700℃で還元した後、本発明で使用される。前記で還元されたF−T反応用触媒は、固定層、流動層及びスラリー反応器、F−T反応で用いる条件下、例えば、200〜400℃、5〜50kg/cm2、500〜10000h-1の空間速度で使用されるが、特別に限定されない。
【実施例】
【0044】
本発明は下記実施例に依拠して説明される。しかし、本発明は下記実施例に限定されない。
【0045】
実施例1
ゾル・ゲル法により高表面積のリン含有アルミナを製造するために、アルミニウムイソプロポキシドを2−プロパノール溶液と混合してスラリーを製造した。前記スラリーに酢酸と水を添加して、加水分解により非晶質アルミニウム酸化物を製造する過程で、リン酸(H3PO4)を、P/Alのモル比を0.01に調節するように添加した。スラリー溶液は、アルミニウムイソプロポキシド:2−プロパノール:酢酸:水を1:25:0.1:3モル比に調節して製造した。製造されたスラリー溶液を90℃のフラスコで24時間以上還流して真空乾燥した後、100℃の乾燥機で24時間以上乾燥することで、リン含有ベーマイト粉末を得た。前記リン含有ベーマイト粉末を500℃で5時間焼成することで、高表面積のリン含有アルミナを製造した。前記製造されたリン−アルミナ支持体は、比表面積が380m2/gであった。
【0046】
コバルト前駆体として、エタノール60mLに溶解された硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)溶液3.1gをリン−アルミナ支持体3gに添加し、前記混合物を室温で12時間以上攪拌して、コバルト/リン−アルミナ触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、500℃の空気雰囲気で5時間焼成した。前記コバルト/リン−アルミナ触媒は、金属を基準として20質量%Co/0.6質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.01モル/モル)であり、比表面積が248m2/gであることを確認した。
【0047】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0048】
実施例2
実施例1と同様に実施するが、P/Alのモル比を0.02に維持してリン−アルミナ支持体を製造した。リン−アルミナ支持体の比表面積は365m2/gであった。
【0049】
硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)をリン−アルミナ支持体に含浸した。前記で製造された触媒は、20質量%Co/1.2質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.02モル/モル)であり、比表面積が247m2/gであることを確認した。
【0050】
実施例1のように触媒を還元し、F−T反応を実施した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0051】
実施例3
実施例1と同様に実施するが、P/Alのモル比を0.05に維持してリン−アルミナ支持体を製造した。リン−アルミナ支持体の比表面積は340m2/gであった。
【0052】
硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)をリン−アルミナ支持体に含浸した。前記で製造された触媒は、20質量%Co/3.0質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.05モル/モル)であり、比表面積が231m2/gであることを確認した。
【0053】
実施例1のように触媒を還元し、F−T反応を実施した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0054】
実施例4
実施例1と同様に実施するが、P/Alのモル比を0.1に維持してリン−アルミナ支持体を製造した。リン−アルミナ支持体の比表面積は326m2/gであった。
【0055】
硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)をリン−アルミナ支持体に含浸した。前記で製造された触媒は、20質量%Co/6.1質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.1モル/モル)であり、比表面積が194m2/gであることを確認した。
【0056】
実施例1のように触媒を還元し、F−T反応を実施した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0057】
実施例5
実施例1と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0058】
実施例6
実施例2と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0059】
実施例7
実施例3と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0060】
実施例8
実施例4と同様に実施するが、反応条件を240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrに維持した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0061】
実施例9
実施例3と同様に実施するが、触媒を700℃の空気雰囲気下で5時間焼成し、前記触媒は、比表面積が153m2/gであることを確認した。240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で反応を行う前に、1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0062】
比較例1:含浸法
市販のアルミナ支持体(3g、ストレム社、比表面積=200m2/g)と硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gを脱イオン水60mLに溶解させ、室温で12時間以上攪拌して、コバルト/アルミナ触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、400℃の空気雰囲気下で5時間焼成した。前記触媒は、比表面積が140m2/gであり、金属を基準として20質量%Co/γ−Al2O3を含有することを確認した。
【0063】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0064】
比較例2:含浸法
比較例1と同様に実施するが、比表面積が198m2/g(カタパルB、サソル社)のアルミナ支持体5gとリン酸(H3PO4)0.37gを利用してリン−アルミナ支持体を製造した。
【0065】
前記リン−アルミナ支持体3gと硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gを脱イオン水60mLに溶解させ、室温で12時間以上攪拌して、コバルト/アルミナ触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、400℃の空気雰囲気下で5時間焼成した。前記触媒は、比表面積が156m2/gであり、金属を基準として20質量%Co/2質量%P/γ−Al2O3を含有することを確認した。
【0066】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0067】
比較例3:含浸法
比較例1と同様に実施するが、市販のアルミナ(ストレム社、比表面積=200m2/g)5gとリン酸(H3PO4)0.93gを利用してリン−アルミナ支持体を製造した。
【0068】
前記リン−アルミナ支持体3gと硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gを脱イオン水60mLに溶解させ、室温で12時間以上攪拌して、コバルト/アルミナ触媒を得た。前記触媒は、比表面積が36m2/gであり、金属を基準として20質量%Co/5質量%P/γ−Al2O3を含有することを確認した。
【0069】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0070】
比較例4:含浸法
比較例2と同様に実施するが、240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下でF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0071】
比較例5:含浸法
比較例3と同様に実施するが、240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下でF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0072】
比較例6:含浸法
硝酸アルミニウム(Al(NO3)39H2O)60.0gとリン酸(H2PO4)0.09gを脱イオン水400mLに溶解させ、pH5.5の溶液を得た。沈殿剤として炭酸ナトリウム(Na2CO3)26.4gを脱イオン水400mLに溶解させ、pHは10.5であった。前記2種類の溶液は、70℃で200mLの脱イオン水が攪拌されたフラスコ(2000mL)に徐々に入れて、pHは約7.5〜8.0に維持した。前記スラリー溶液を70℃で3時間攪拌し、製造された混合触媒を脱イオン水2000mLで3回以上洗浄した後、ろ過及び乾燥した。P/Alは0.01比であり、リン含有ベーマイト粉末を500℃で5時間焼成することで、リン−アルミナ支持体を得た。
【0073】
前記で製造されたリン−アルミナ支持体3gとコバルト前駆体として硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)3.1gをエタノール60mLに溶解し、室温で12時間以上攪拌して、担持された触媒を得た。前記粉末を100℃で12時間以上乾燥し、500℃の空気雰囲気下で5時間焼成した。前記触媒の組成は、金属を基準として20質量%Co/0.6質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.01モル/モル)であり、比表面積は178m2/gであった。
【0074】
1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。反応物を、220℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrの条件下で、一酸化炭素:水素:二酸化炭素:アルゴン(内部標準物質)を28.4:57.3:9.3:5モル比に維持しながら、反応器に注入し、F−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0075】
比較例7
比較例6と同様に実施するが、240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrでF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0076】
比較例8
前記実施例1と同様に実施するが、P/Alモル比を0.5に維持し、リン−アルミナ支持体の比表面積は185m2/gである。前記リン−アルミナ支持体に硝酸コバルト(Co(NO3)26H2O)を含浸して、触媒を製造した。前記で製造された触媒の組成は、20質量%Co/30.4質量%P−(γ−Al2O3)(P/Al=0.5モル/モル)であり、比表面積は120m2/gであった。
【0077】
実施例1と同様な方法で還元過程を行った後、F−T反応を遂行した。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0078】
比較例9
実験手順は比較例4と同様に実施するが、700℃で5時間触媒を焼成した。1/2インチのステンレス固定層反応器に触媒0.3gを入れて、400℃の水素(5vol%H2/95vol%He)条件下で12時間還元した。240℃、20kg/cm2、空間速度2000L/kgcat/hrでF−T反応を行った。60時間の反応後に結果が得られ、触媒活性が安定したときの10時間の平均値を表1に示した。
【0079】
表1は、実施例1〜9と比較例1〜9で製造した支持体を利用して製造した触媒の存在下で、F−T反応を行ったときの結果を表している。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に表されるように、コバルト系触媒がゾル・ゲル法で製造したリン−アルミナを利用して製造された実施例1〜9は、市販のアルミナを使用して製造した比較例1〜5に比べて、F−T反応で液体炭化水素の選択性及び一酸化炭素の転換率が優れている。
【0082】
更に、実施例によるリン含有アルミナを利用して製造されたF−T触媒は、二重の多孔性細孔分布を見せ、相対的にサイズが小さい細孔SA1(1〜20nm)と大きい細孔SA2(21〜200nm)の比表面積比SA1/SA2は、5〜10の範囲であった。前記SA1/SA2比が前述した範囲である場合、小さい細孔の適切な存在によりコバルトの分散性が増加するため、F−T反応性が優れていた。更に、リンによるアルミナ支持体の改質及びリン−アルミナ支持体の二重の多孔性細孔分布により、熱安定性及び物質伝達が得られる。
【0083】
表1と実施例1〜4で表すように、活性成分(コバルト成分)がゾル・ゲル法により製造されたリン−アルミナ支持体に担持され、F−T反応で使用されるとき、液体炭化水素の選択性及び一酸化炭素の転換率が、アルミナに対するリンの比(P/Al)が0.01〜0.1モル/モルが増加することを確認した。しかしながら、比較例8のように、P/Al比が非常に高く[P/Al=0.5モル比(30.4質量%)]、リン−アルミナの比表面積が著しく減少するため、F−T反応性は低下する。また、過量のリンを含有するアルミナ支持体を使用する場合、1〜20nmの微細細孔の一部とコバルトの分散性が減少するため、F−T反応性がかなり低下した。
【0084】
リンが共沈法により含浸された比較例6〜7は、ゾル・ゲル法による実施例に比べて低い反応性を見せる。これは、共沈法は、支持体の二重の多孔性細孔分布を形成するのに役に立たず、支持体の比表面積の減少によりコバルトの分散性が一部減少するためである。
【0085】
図2は、リン−アルミナ支持体が使用された実施例3と支持体としてアルミナのみを使用された比較例1とを比較したものである。これら支持体を利用したF−T反応の結果として、リン−アルミナ支持体の水熱安定性が増加し、F−T反応中に生成された水によりアルミナの表面性質の変化が減少し、これにより、触媒の不活性化を抑制し、触媒の長期安定性が増加する。
【0086】
更に、実施例9と比較例9で見られるように、不活性化した触媒を700℃で焼成し、F−T反応に適用した。触媒がゾル・ゲル法により製造された実施例9は、触媒活性変化が比較的小さく表れる。反面、市販のアルミナが使用された比較例9は、触媒活性の変化が比較的高く、転換率及び液体炭化水素の選択性が減少する。これは主にリン−アルミナ支持体でのコバルトの高温安定性と連関があり、本発明の触媒では、高温でコバルト焼結現象が小さい。
【0087】
図3は、本発明のリン−アルミナ支持体を利用して製造したF−T触媒(実施例3と4)、市販のアルミナ支持体を利用した触媒(比較例3)及び共沈法により製造された支持体を利用した触媒(比較例6)の細孔分布を表している。二重の多孔性細孔分布をもつ微細細孔は、本発明の触媒でのみ観察される。特に、F−T反応性は、比表面積比[SA1/SA2]は5〜10範囲内であるときに優れていることを確認した。これは、前述した特性を有するリン含有アルミナ支持体がF−T反応で使用される場合に、コバルト分散性、熱安定性、物質伝達及びリン−アルミナ支持体の水熱安定性が向上するためであり、これにより、F−T反応中に生成された水によるアルミナ表面性質の変化が減少し、コバルトの安定性の増加による触媒の不活性化を減少させる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
近年の急激な油価上昇に対処するためのGTL技術の開発において、F−T合成用触媒の改善は、GTL技術の競争力向上と密接に関係している。特に、改善された触媒は、GTL工程での熱効率及びカーボン活用を増加させることができ、F−T反応工程を最適化することもできる。従って、本発明によるゾル・ゲル法により製造されたリン−アルミナ支持体は、液体炭化水素に対して安定した選択性を増加させ、不活性化を抑制することができるため、C5以上の液体炭化水素に対して安定した選択性を確保し、競争力のあるGTL工程の開発を可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール系有機溶媒にアルミニウムアルコキシドを混合して、アルミニウムアルコキシド溶液を製造する工程と、
前記アルミニウムアルコキシド溶液に、アルミニウムアルコキシド1モルに対して、pKa値が3.5〜5である有機カルボン酸0.01〜1モルと水2〜12モルを混合し、リン前駆体0.001〜0.4モルを添加した後、80〜130℃で前記溶液を加熱して、リン含有ベーマイトゾルを製造する工程と、
前記リン含有ベーマイトゾルを蒸留及び乾燥して、アルコールを分離及び回収して、粉末状のリン含有ベーマイトを製造する工程と、
前記粉末状のベーマイトを300〜800℃で焼成して、リン−アルミナ支持体を製造する工程と、
を含むフィッシャー・トロプシュ(F−T)合成用リン−アルミナ支持体の製造方法。
【請求項2】
アルコール系有機溶媒が、アルミニウムアルコキシド1モルに対して5〜200モルの量で使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機カルボン酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記リン前駆体が、リン酸(H3PO4)、オキシ塩化リン(POCl3)、五酸化リン(P2O5)、三塩化リン(PCl3)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記リン−アルミナ支持体は、比表面積が300〜500m2/gであり、1〜20nmの小さい細孔比表面積SA1と21〜200nmの大きい細孔比表面積SA2の比[SA1/SA2]が5〜10である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のリン−アルミナ支持体に、活性成分としてコバルト前駆体5〜40質量%が担持されているF−T合成用コバルト/リン−アルミナ触媒。
【請求項7】
比表面積が150〜400m2/gであるF−T合成用コバルト/リン−アルミナ触媒。
【請求項8】
前記コバルト前駆体が、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト及びそれらの混合物からなる群から選択されるF−T合成用コバルト/リン−アルミナ触媒。
【請求項1】
アルコール系有機溶媒にアルミニウムアルコキシドを混合して、アルミニウムアルコキシド溶液を製造する工程と、
前記アルミニウムアルコキシド溶液に、アルミニウムアルコキシド1モルに対して、pKa値が3.5〜5である有機カルボン酸0.01〜1モルと水2〜12モルを混合し、リン前駆体0.001〜0.4モルを添加した後、80〜130℃で前記溶液を加熱して、リン含有ベーマイトゾルを製造する工程と、
前記リン含有ベーマイトゾルを蒸留及び乾燥して、アルコールを分離及び回収して、粉末状のリン含有ベーマイトを製造する工程と、
前記粉末状のベーマイトを300〜800℃で焼成して、リン−アルミナ支持体を製造する工程と、
を含むフィッシャー・トロプシュ(F−T)合成用リン−アルミナ支持体の製造方法。
【請求項2】
アルコール系有機溶媒が、アルミニウムアルコキシド1モルに対して5〜200モルの量で使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機カルボン酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記リン前駆体が、リン酸(H3PO4)、オキシ塩化リン(POCl3)、五酸化リン(P2O5)、三塩化リン(PCl3)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記リン−アルミナ支持体は、比表面積が300〜500m2/gであり、1〜20nmの小さい細孔比表面積SA1と21〜200nmの大きい細孔比表面積SA2の比[SA1/SA2]が5〜10である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のリン−アルミナ支持体に、活性成分としてコバルト前駆体5〜40質量%が担持されているF−T合成用コバルト/リン−アルミナ触媒。
【請求項7】
比表面積が150〜400m2/gであるF−T合成用コバルト/リン−アルミナ触媒。
【請求項8】
前記コバルト前駆体が、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト及びそれらの混合物からなる群から選択されるF−T合成用コバルト/リン−アルミナ触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公表番号】特表2010−532245(P2010−532245A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506092(P2010−506092)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004569
【国際公開番号】WO2009/031760
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(305026873)コリアリサーチインスティテュートオブケミカルテクノロジー (7)
【出願人】(509300706)デリム インダストリアル カンパニー リミテッド (3)
【出願人】(509300751)ドゥサン メカテック カンパニー リミテッド (3)
【出願人】(509300739)コーリア ナショナル オイル コーポレイション (3)
【出願人】(509300717)ヒュンダイ エンジニアリング カンパニー リミテッド (4)
【出願人】(507419079)エスケイ エナジー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004569
【国際公開番号】WO2009/031760
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(305026873)コリアリサーチインスティテュートオブケミカルテクノロジー (7)
【出願人】(509300706)デリム インダストリアル カンパニー リミテッド (3)
【出願人】(509300751)ドゥサン メカテック カンパニー リミテッド (3)
【出願人】(509300739)コーリア ナショナル オイル コーポレイション (3)
【出願人】(509300717)ヒュンダイ エンジニアリング カンパニー リミテッド (4)
【出願人】(507419079)エスケイ エナジー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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