説明

タイトフレーム及び折板屋根

【課題】折板を強い力で弾性変形させることなく容易に施工することができ、しかも、折板との連結強度を大きくして負圧に対する強度不足を生じないようにすることができるタイトフレームを提供する。
【解決手段】折板を屋根下地4に固定するためのタイトフレームAに関する。断面略逆U字状のフレーム本体7と、フレーム本体7の頂部8に取り付けられる係止体9とを備えて形成される。前記係止体9の側端部は係止部10として形成される。前記係止部10がフレーム本体7の側部11よりも外側方に突出しない状態からフレーム本体7の側部11よりも外側方に突出して折板の被係止部を係止する状態となるように、前記係止体9をフレーム本体7に対して回動自在に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板を屋根下地に固定するためのタイトフレーム及びこれを用いて形成される折板屋根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数枚の折板をタイトフレームで屋根下地に固定することにより折板屋根が形成されている。通常、折板とタイトフレームとを接続するにあたっては吊子が使用されるが、図6に示すように、吊子を使用しないタイプのものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。これに使用されるタイトフレーム50は、断面略逆U字状の支持部51を有し、支持部51の両下端に外側に向いて突出する固定片52を設けて形成されている。また、支持部51の外側面には係止部53が突設されている。一方、折板54は平板状の谷部55と、その両側から斜め上方に向かって突設される山部56、56とを有して形成されており、山部56の側部には裏面側に突出する被係止部57が突設されている。
【0003】
そして、折板屋根を形成するにあたっては、複数個のタイトフレーム50、50…を屋根下地58の上に並べて固定し、隣り合うタイトフレーム50、50の間に折板54を嵌め込んで配置する。このとき、タイトフレーム50の支持部51の係止部53の下に折板54の被係止部57を係止し、タイトフレーム50と折板54とを連結する。このようにして複数枚の折板54、54…を配置した後、支持部51の上側において隣接する折板54、54の山部56、56の端部同士を馳接合する。こうして折板屋根を形成することができる。
【0004】
しかし、上記の場合、折板54を弾性変形させながら支持部51の係止部53に折板54の被係止部57を係止しなければならず、タイトフレーム50と折板54とを連結するのに強い力を必要とし、しかも折板54に塑性変形や傷が生じて折板屋根の外観や防水性が低下するおそれがあった。また、係止部53の突出寸法を小さくすることにより、弱い力でタイトフレーム50と折板54とを連結できるようにすると、タイトフレーム50から折板54が外れやすくなり、負圧に対する強度不足が生じるおそれがあった。
【特許文献1】特開平1−203552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、折板を強い力で弾性変形させることなく容易に施工することができ、しかも、折板との連結強度を大きくして負圧に対する強度不足を生じないようにすることができるタイトフレーム及び折板屋根を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るタイトフレームAは、折板3を屋根下地4に固定するためのタイトフレームAであって、断面略逆U字状のフレーム本体7と、フレーム本体7の頂部8に取り付けられる係止体9とを備えて形成され、前記係止体9の側端部は係止部10として形成され、前記係止部10がフレーム本体7の側部11よりも外側方に突出しない状態からフレーム本体7の側部11よりも外側方に突出して折板3の被係止部5を係止する状態となるように、前記係止体9をフレーム本体7に対して回動自在に形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る折板屋根は、請求項1に記載のタイトフレームAにより折板3を屋根下地4に固定して形成される折板屋根であって、前記折板3は、谷部2の両側端部に上方に突出する山部半体1、1を設けると共に山部半体1に側方に突出する被係止部5を設けることによって形成され、屋根下地4に固定された前記タイトフレームAの係止体9の係止部10がフレーム本体7の側部11よりも外側方に突出しない状態で、折板3をタイトフレームAのフレーム本体7の一側方に配置し、前記係止体9をフレーム本体7に対して回動して係止部10をフレーム本体7の側部11よりも外側方に突出することによって、前記折板3の被係止部5を係止し、前記フレーム本体7の他側方に他の折板3を配置すると共にこの他の折板3の被係止部5を前記係止体9の係止部10に係止し、係止体9の上方において前記折板3、3の隣接する山部半体1、1を連結して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、係止体9の係止部10をフレーム本体7の側部11よりも側方に突出していない状態で、フレーム本体7の側方に折板3を配置した後、係止体9をフレーム本体7に対して回動させることによって、係止体9の係止部10をフレーム本体7の側部11よりも側方に突出させて折板3の被係止部5を係止することができ、折板3を強い力で弾性変形させることなく係止部10と被係止部5とを係止させることができて容易に施工することができるものである。また、折板3を弾性変形させる必要がないために、係止部10及び被係止部5の突出寸法を大きくすることができ、この結果、タイトフレームAと折板3との連結強度を大きくすることができて負圧に対する強度不足を生じないようにすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
図1に本発明のタイトフレームAを示す。このタイトフレームAはフレーム本体7と係止体9とを備えて形成されている。
【0011】
フレーム本体7は矩形状(帯状)の鋼板などの金属板を断面略逆U字状に折り曲げ加工して形成されるものであって、フレーム本体7の両方の下端には外側(側方)に向かって突出する固定片16、16が形成されている。本発明のタイトフレームAでは、複数のフレーム本体7、7…が固定片16を介して側方に連なって形成されていてもよいし、一つのフレーム本体7で一つのタイトフレームAが形成されていてもよい。また、フレーム本体7の頂部8は幅方向に長い矩形平板状に形成されており、頂部8の両側端から斜め下方に向かってフレーム本体7の側部11が突設されている。また、側部11の下端に延設される上記固定片16には固定孔17が設けられている。
【0012】
係止体9は矩形平板状の底板部18と、底板部18の長手端部に沿って形成される補強部19とで断面略コ字状に形成されている。補強部19は底板部18よりも上方に突出しており、その上端は中央部から側端部に向かって下り傾斜するように形成されている。また、底板部18の側端部も前後方向で傾斜するように形成されている。そして、係止体9の底板部18の両方の側端部が係止部10として形成されている。
【0013】
そして、上記のフレーム本体7の上側に係止体9を取り付けることによって、タイトフレームAを形成することができる。フレーム本体7の上側に係止体9を取り付けるにあたっては、頂部8の上に係止体9を載置し、頂部8の略中央部と係止体9の底板部18の略中央部とを貫通するようにしてボルト等の軸部材21を挿着し、この軸部材21にナットなどの締結具22を螺着するようにする。このようにして係止体9をフレーム本体7の上側に軸部材21を中心として水平面で回動自在に枢着することができる。ここで、図2(a)〜(c)に示すように、係止体9の底板部18の長手方向の寸法は頂部8の幅寸法(側部11、11の上端間の寸法)よりも大きく形成されている。従って、係止体9をフレーム本体7に対して回動させることにより、底板部18の長手方向と頂部8の幅方向とを一致させた場合には、係止体9の両側端の係止部10、10がフレーム本体7の側部11の外側面(表面)よりも側方(外側)に突出した状態となる。一方、係止体9をフレーム本体7に対して回動させることにより、例えば、底板部18の長手方向と頂部8の幅方向とを直交させた場合には、係止体9の両側端の係止部10、10がフレーム本体7の側部11の外側面(表面)よりも側方(外側)に突出しない状態とすることができる。
【0014】
図3に本発明で用いる折板3を示す。折板3は塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成される屋根材であって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板3は断面略U字状に形成されており、平板状の谷部2と、その両側から斜め上方に向かって突出する山部半体1、1とを備えて形成されている。山部半体1、1のうち、一方の山部半体1aの上部は、谷部2と反対側に向かって突出する頂部片23と、頂部片23の端部から上方に向かって突出する断面略逆U字状の嵌合部24とから構成されている。また、山部半体1、1のうち、他方の山部半体1bの上部は、谷部2と反対側に向かって突出する頂部片23と、頂部片23の端部から上方に向かって突出する断面略逆L字状の被嵌合部25とから構成されている。また、山部半体1a、1bの傾斜部分の側部12には被係止部5が設けられている。被係止部5は山部半体1a、1bの側部12の一部を折り曲げて山部1半体a、1bの裏面側(側方)に突出するように形成されている。被係止部5は山部1a、1bの傾斜部分の中央部よりもやや上側に形成することができ、また、折板3の長尺方向の全長にわたって形成することができる。
【0015】
そして、本発明の折板屋根を形成するあたっては、次のようにして施工することができる。まず、図4(a)に示すように、複数個のタイトフレームA、A…を建物の母屋などの屋根下地4の上に固定する。このとき、タイトフレームAの固定片16を屋根下地4の上に載せ、固定孔17にボルトなどの固定具を上側から挿通すると共にこの固定具を屋根下地4にねじ込んで螺着することによって、タイトフレームAを屋根下地4に固定することができる。タイトフレームAは屋根下地4の長手方向に並べて複数個取り付けることができ、これにより、屋根下地4の長手方向(屋根の傾斜方向と直交する方向)のほぼ全長にわたって複数個のタイトフレームA…を並設することができる。また、この場合、フレーム本体7の頂部8の幅方向が屋根下地4の長手方向と一致している。尚、複数個のフレーム本体7、7…が連なって一つのタイトフレームAが形成されている場合は、フレーム本体7及び係止体9が必要な個数に足りれば、一つのタイトフレームAのみを屋根下地4に取り付ければよい。
【0016】
次に、図4(b)に示すように、屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地4、4…の上に一枚の折板3Aを架設する。このとき、フレーム本体7に取り付けた係止体9の長手方向がフレーム本体7の頂部8の幅方向と直交するように、すなわち、折板3の長手方向と係止体9の長手方向とが一致するように、係止体9をフレーム本体7に対して回動させている。従って、この係止体9の係止部10はフレーム本体7の側部11の外側面(表面)よりも側方(外側)に突出しない状態となっている。また、屋根下地4に取り付けたタイトフレームAの隣り合うフレーム本体7、7の間に折板3Aの谷部2を位置させて屋根下地4の上に載置する。また、この折板3Aの一方(被嵌合部25を設けた方)の山部半体1bの被係止部5を一つのフレーム本体7Aに近接して配置するが、この被係止部5はフレーム本体7Aの頂部8よりも僅かに低い位置(下側)に配置されるようになっている。また、この一方の山部半体1bに形成される頂部片23及び被嵌合部25は近接させた上記フレーム本体7Aに設けた係止体9Aの上側に位置するようになっている。
【0017】
次に、図4(c)に示すように、被係止部5を近接させた上記フレーム本体7Aに設けた係止体9Aを回動させることによって、係止体9Aの係止部10の下側に上記被係止部5を係止させる。すなわち、上記フレーム本体7Aに設けた係止体9Aを回動させることによって、係止体9Aの長手方向とフレーム本体7Aの頂部8の幅方向とを一致させることにより、この係止体9Aの係止部10をフレーム本体7Aの側部11の外側面(表面)よりも側方(外側)に突出する状態にすることによって、突出した係止部10の下側に上記被係止部5を係止させることができる。
【0018】
次に、図5(a)に示すように、上記とは別の他の折板3Bを屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地4、4…の上に架設する。ここで、新たに架設するこの折板3Bは上記既設の折板3Aに隣接して配置され、上記フレーム本体7Aとこれに隣り合うフレーム本体7Bとの間に配置される。また、新たに架設するこの折板3Bの一方の山部半体(既設の折板3Aに近い方の山部半体)1aの被係止部5は、上記フレーム本体7Aの係止体9Aの係止部10の下側に係止される。このとき、折板3Bの反対側の山部半体(既設の折板3Aに遠い方の山部半体)1bの被係止部5は、他のフレーム本体7Bの係止体9Bの係止部10には固定されていないので、折板3を強い力で弾性変形させることなくフレーム本体7Aに設けた係止体9Aの係止部10と被係止部5とを係止させることができる。また、折板3Bの上記反対側の山部半体1bに形成される頂部片23及び被嵌合部25は近接させた上記フレーム本体7Bに設けた係止体9Bの上側に位置するようになっている。また、新たに架設する折板3Bの既設の折板3Aに近い方の山部半体1aの嵌合部24を、既設の折板3Aの上記山部半体1bの被嵌合部25に上側から嵌め込んだ後、折り曲げて馳締め(ハゼ締め)する。これにより、隣接する山部半体1a、1bを連結して山部6を形成し、隣接する折板3A、3Bを接続することができる。
【0019】
次に、図5(b)に示すように、折板3Bの被係止部5を近接させた上記フレーム本体7Bに設けた係止体9Bを回動させることによって、係止体9Bの係止部10の下側に折板3Bの被係止部5を係止させる。すなわち、上記フレーム本体7Bに設けた係止体9Bを回動させることによって、係止体9Bの長手方向とフレーム本体7Bの頂部8の幅方向とを一致させることにより、この係止体9Bの係止部10をフレーム本体7Bの側部11の外側面(表面)よりも側方(外側)に突出する状態にすることによって、突出した係止部10の下側に折板3Bの上記被係止部5を係止させることができる。
【0020】
この後、図5(c)に示すように、さらに上記とは別の折板3Cを屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地4、4…の上に架設し、上記折板3Bと同じ要領で敷設する。このようにして複数枚の折板3、3…を敷設していくことにより、山部6と谷部2とを交互に連続して有する折板屋根を形成することができる。
【0021】
上記のように、本発明のタイトフレームAを用いた折板屋根では、係止体9の係止部10をフレーム本体7の側部11よりも側方に突出していない状態で、タイトフレームAの側方に折板3を配置し、この後、係止体9をフレーム本体7に対して回動させて、折板3の被係止部5を係止するので、折板3を強い力で弾性変形させることなく係止部10と被係止部5とを係止させることができて容易に施工することができる。また、折板3を弾性変形させる必要がないために、係止部10及び被係止部5の突出寸法を大きくすることができ、この結果、タイトフレームAと折板3との連結強度を大きくすることができて負圧に対する強度不足を生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のタイトフレームの一例を示す斜視図である。
【図2】同上の(a)(b)は正面図、(c)は一部の平面図である。
【図3】同上の折板の一例を示す斜視図である。
【図4】同上の折板屋根の施工途中の一例を示し、(a)〜(c)は断面図である。
【図5】同上の折板屋根の施工途中の一例を示し、(a)〜(c)は断面図である。
【図6】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
A タイトフレーム
1 山部半体
2 谷部
3 折板
4 屋根下地
5 被係止部
7 フレーム本体
8 頂部
9 係止体
10 係止部
11 側部
12 側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板を屋根下地に固定するためのタイトフレームであって、断面略逆U字状のフレーム本体と、フレーム本体の頂部に取り付けられる係止体とを備えて形成され、前記係止体の側端部は係止部として形成され、前記係止部がフレーム本体の側部よりも外側方に突出しない状態からフレーム本体の側部よりも外側方に突出して折板の被係止部を係止する状態となるように、前記係止体をフレーム本体に対して回動自在に形成して成ることを特徴とするタイトフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のタイトフレームにより折板を屋根下地に固定して形成される折板屋根であって、前記折板は、谷部の両側端部に上方に突出する山部半体を設けると共に山部半体に側方に突出する被係止部を設けることによって形成され、屋根下地に固定された前記タイトフレームの係止体の係止部がフレーム本体の側部よりも外側方に突出しない状態で、折板をタイトフレームのフレーム本体の一側方に配置し、前記係止体をフレーム本体に対して回動して係止部をフレーム本体の側部よりも外側方に突出することによって、前記折板の被係止部を係止し、前記フレーム本体の他側方に他の折板を配置すると共にこの他の折板の被係止部を前記係止体の係止部に係止し、係止体の上方において前記折板の隣接する山部半体を連結して成ることを特徴とする折板屋根。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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